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特開2024-154744監視装置、監視方法、及び監視プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154744
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】監視装置、監視方法、及び監視プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068756
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059CC20
2G059EE01
2G059EE12
2G059FF04
2G059KK04
2G059MM03
(57)【要約】
【課題】測定対象中の気泡の状態について容易に監視すること。
【解決手段】監視装置100は、取得部121と演算部122とを備える。取得部121は、測定対象を透過した光の測定により得られた所定時間ごとのスペクトルを取得する。演算部122は、取得部121により取得された複数のスペクトルのそれぞれにおける所定の波長の光強度に基づき、複数の光強度の標準偏差である気泡発生度を演算する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象を透過した光の測定により得られた所定時間ごとのスペクトルを取得する取得部と、
前記取得部により取得された複数のスペクトルのそれぞれにおける所定の波長の光強度に基づき、複数の光強度の標準偏差である気泡発生度を演算する演算部と
を備えることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記所定の波長として、所定条件下での光強度が最も強い波長の光強度に基づき、前記気泡発生度を演算する
ことを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記気泡発生度を演算する度に気泡発生度の移動平均をさらに演算し、
正常状態における複数の前記気泡発生度に応じて設定された、前記気泡発生度の上限値および下限値を記憶する記憶部と、
前記演算部によって演算された前記移動平均が、前記記憶部によって記憶された前記上限値または前記下限値を超える場合に異常状態であると判定する判定部とをさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記上限値として、前記正常状態における複数の前記気泡発生度における最大値を記憶し、前記下限値として、前記正常状態における複数の前記気泡発生度における最小値を記憶する
ことを特徴とする請求項3に記載の監視装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記上限値および前記下限値として、前記正常状態における複数の前記気泡発生度における平均値と標準偏差とから算出される値を記憶する
ことを特徴とする請求項3に記載の監視装置。
【請求項6】
前記判定部によって異常状態と判定された場合に、異常状態である旨を外部に通知する通知部をさらに備える
ことを特徴とする請求項3に記載の監視装置。
【請求項7】
監視装置で実行される監視方法であって、
測定対象を透過した光の測定により得られた所定時間ごとのスペクトルを取得する取得工程と、
前記取得工程により取得された複数のスペクトルのそれぞれにおける所定の波長の光強度に基づき、複数の光強度の標準偏差である気泡発生度を演算する演算工程と
を含むことを特徴とする監視方法。
【請求項8】
測定対象を透過した光の測定により得られた所定時間ごとのスペクトルを取得する取得手順と、
前記取得手順により取得された複数のスペクトルのそれぞれにおける所定の波長の光強度に基づき、複数の光強度の標準偏差である気泡発生度を演算する演算手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置、監視方法、及び監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を用いて半導体のエッチング液や洗浄液といった水溶液の濃度を測定する技術が知られている。このような技術の一例として、LED(Light Emitting Diode)から出射された光を水溶液に照射し、水溶液を介して受光した光の強度から水溶液の濃度を測定する技術が知られている。また、LEDから照射された光を光学系により測定セルに導き、測定セルを通過した光を光ファイバにより分光器に導いて光を検出する技術が知られている。
【0003】
そして、前述の従来技術において、測定対象の水溶液の中に気泡が含まれている場合がある。また、気泡が含まれている水溶液の測定を行う場合には、気泡によって光の過剰透過や散乱が生じることにより、検出されるスペクトルが測定対象とは異なるスペクトルとなり、算出される濃度値に誤差が生じる場合があることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-37936号公報
【特許文献2】特開2015-137983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術では、測定対象中の気泡の状態について容易に監視することができないという課題がある。例えば、測定対象の種類によっては、化学反応により定常的に測定対象中に気泡が発生する場合があり、また、測定対象の温度や濃度の違いにより、測定対象中の気泡の発生状態は変化する場合があるため、測定対象中の気泡の状態について容易に監視することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の監視装置は、測定対象を透過した光の測定により得られた所定時間ごとのスペクトルを取得する取得部と、取得部により取得された複数のスペクトルのそれぞれにおける所定の波長の光強度に基づき、複数の光強度の標準偏差である気泡発生度を演算する演算部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、測定対象中の気泡の状態について容易に監視することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る気泡監視システムの概要を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る気泡発生度と気泡の大きさとの関連を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る気泡発生度と測定対象の温度との関連を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る監視装置の構成例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る監視装置の記憶部に記憶されるデータの具体例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る監視装置の処理の流れの一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る演算処理により演算された気泡発生度の具体例を示す図である。
図8図8は、実施形態に係る正常状態の光強度と異常状態の光強度とを示す図である。
図9図9は、実施形態に係る異常判定処理の具体例を示す図である。
図10図10は、実施形態に係る処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、ハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願に係る監視装置、監視方法及び監視プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る監視装置、監視方法及び監視プログラムが限定されるものではない。
【0010】
〔1.気泡監視システムの概要〕
図1は、本実施形態に係る気泡監視装置を含む気泡監視システムの概要を示す図である。図1の例では、本実施形態に係る監視装置100を含む気泡監視システムの構成例を示しており、監視装置100は、分光装置250によって分光されたそれぞれの波長のスペクトルを所定時間ごとに取得し、後述する気泡発生度を演算して、上位機器300に通知する。
【0011】
また、図1の例において、濃度測定装置200は、薬液供給ユニット400から薬液を使用する装置500へと流れる測定対象の薬液に対して、光源210から照射された光を、投光部220を介して、フローセル230を流れる薬液へと投光する。そして、濃度測定装置200は、薬液を透過した光を、受光部240を介して、分光装置250により受光・分光し、分光された波長データから処理部260によって演算処理が行われて、濃度の測定値が算出される。その後、算出された測定値は、出力部270により、上位機器300へと出力される。
【0012】
監視装置100は、測定対象を透過した光の測定により得られた所定時間ごとのスペクトルを取得し、取得された複数のスペクトルのそれぞれにおける所定の波長の光強度に基づき、複数の光強度の標準偏差である気泡発生度を演算する。
【0013】
監視装置100は、まず、測定対象を透過した光の測定により得られた所定時間ごとのスペクトルを取得する。例えば、監視装置100は、濃度測定装置200における光源210から照射されて測定対象の薬液を透過した光を、分光装置250が分光することにより得られた各波長についての光強度を所定時間ごとに複数回取得する。
【0014】
そして、監視装置100は、取得された複数のスペクトルのそれぞれにおける所定の波長の光強度に基づき、複数の光強度の標準偏差である気泡発生度を演算する。例えば、監視装置100は、取得された複数のスペクトルそれぞれについての、ユーザが設定した特定の波長における光強度の測定値から、光強度の標準偏差である気泡発生度を演算する。
【0015】
ここで、図2を参照し、複数の光強度の標準偏差である気泡発生度と、薬液に生じる気泡の大きさとの関連について説明する。図2は、実施形態に係る気泡発生度と気泡の大きさとの関連を示す図である。図2のグラフは、横軸に取得した光の波長(nm)が示され、縦軸に気泡発生度が示されている。
【0016】
そして、図2のグラフには、薬液中の気泡について「気泡大」、「気泡中」、「気泡小」、「気泡無し」の4つの場合の各波長における気泡発生度を表す曲線が示されている。図2のグラフから、各波長において、「気泡大」についての気泡発生度の値が最も大きくなり、気泡の大きさが小さくなるに連れ気泡発生度も小さくなり、「気泡無し」については、気泡発生度が0付近の値を示すことが把握される。
【0017】
つまり、気泡発生度と薬液中の気泡の大きさとについて関連があることから、監視装置100は、気泡発生度を演算することにより、薬液中の気泡の状態について容易に監視することができるといえる。
【0018】
また、図3を参照し、光強度の標準偏差である気泡発生度と、薬液の温度との関連について説明する。図3は、実施形態に係る気泡発生度と測定対象の温度との関連を示す図である。図3のグラフも図2のグラフと同様に、横軸に取得した光の波長(nm)が示され、縦軸に気泡発生度が示されている。
【0019】
図3のグラフには、薬液の温度について「30℃」、「70℃」の2つの場合の各波長における気泡発生度を表す曲線が示されている。図3のグラフから、各波長において、「70℃」の気泡発生度の値の方が「30℃」の気泡発生度の値よりも大きいことが把握される。
【0020】
つまり、気泡発生度と測定対象の薬液の温度とについて関連があることから、監視装置100は、気泡発生度を演算することにより、薬液の状態について容易に監視することができるといえる。
【0021】
よって、監視装置100により演算された気泡発生度の値が正常時よりも大きい場合には、薬液中に正常時よりも大きい気泡が発生している場合や、薬液の温度が正常時よりも高い場合が考えられるため、ユーザは、監視装置100により演算された気泡発生度を把握することにより、薬液の状態について把握することができるといえる。
【0022】
〔2.監視装置100の構成〕
次に、図4を参照し、図1に示した監視装置100の構成を説明する。図4は、実施形態に係る監視装置の構成例を示す図である。図4に示すように、実施形態に係る監視装置100は、通信部110と、制御部120と、記憶部130とを有する。
【0023】
通信部110は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。通信部110は、例えば、監視装置100の監視対象である薬液の濃度を測定する濃度測定装置200と、演算した気泡発生度を出力する上位機器300と、有線又は無線により通信可能に接続される。
【0024】
記憶部130は、例えば、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の記憶装置によって実現され、制御部120による各種処理に必要なデータ及びプログラムを格納する。また、記憶部130は、後述する取得部121によって取得されたスペクトルデータごとの各波長における光強度を記憶する。
【0025】
ここで、図5を参照し、記憶部130が記憶するデータの具体例について説明する。図5は、実施形態に係る監視装置の記憶部に記憶されるデータの具体例を示す図である。図5(1)では、取得部121によって取得されたスペクトルデータにおける各波長の光強度が記憶されていることが示されている。ここで、スペクトルデータは、所定時間ごとに複数回取得されるため、1回目のデータ、2回目のデータ・・・というように取得回数ごとに記憶される。
【0026】
また、1回のスペクトルデータから、各波長における光強度が取得される。そのため、1回のスペクトルデータについて、各波長の光強度がそれぞれ記憶される。図5(1)の例では、1回目のスペクトルデータについて、「波長900nm:光強度5000」や、「波長1100nm:光強度49000」が記憶されていることが示されている。なお、「900nm」と「1100nm」以外の各波長についても同様に光強度が記憶される。つまり、記憶部130は、所定時間ごとに取得したスペクトルデータを順に記憶し、そのスペクトルデータごとに、各波長に対応する光強度を記憶する。
【0027】
また、記憶部130は、正常状態における複数の気泡発生度に応じて設定された、気泡発生度の上限値および下限値を記憶する。ここで、記憶部130は、上限値として、正常状態における複数の気泡発生度における最大値を記憶し、下限値として、正常状態における複数の気泡発生度における最小値を記憶してもよい。
【0028】
さらに、記憶部130は、上限値および下限値として、正常状態における複数の気泡発生度における平均値と標準偏差とから算出される値を記憶してもよい。例えば、記憶部130は、正常状態の期間について複数回演算された気泡発生度の値から平均値と標準偏差とを演算し、上限値として「平均値+(標準偏差×予め設定された係数)」を記憶し、下限値として「平均値―(標準偏差×予め設定された係数)」を記憶する。
【0029】
ここで、記憶部130が記憶する気泡発生度や後述する移動平均等の具体例について説明する。図5(2)では、演算部122によって演算された気泡発生度と移動平均、判定部123による判定結果が記憶されていることが示されている。ここで、演算回数とは、気泡発生度の演算された回数を示し、例えば、演算回数「14」の欄には、14回目に演算された気泡発生度に関連する情報が記憶される。
【0030】
具体的には、気泡発生度の取得回数14回目の欄に、気泡発生度は「1700」と、移動平均は「2300」とが記憶されている。また、予め上限値として「4200」及び下限値として「500」が記憶されている。そして、移動平均が「2300」に対応して、上限値判定結果及び下限値判定結果のどちらも「範囲内」として記憶される。
【0031】
制御部120は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、監視装置100内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部120は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路により実現される。制御部120は、取得部121と、演算部122とを有し、必要に応じて、判定部123と、通知部124とを有してもよい。
【0032】
取得部121は、測定対象を透過した光の測定により得られた所定時間ごとのスペクトルを取得する。そして、取得部121は、取得したスペクトルの波長ごとの光強度を記憶部130に格納する。例えば、取得部121は、濃度測定装置200が有する分光装置250によって分光された波長の光強度を取得し、記憶部130に格納する。また、取得部121は、当該取得処理を予め設定された任意の時間ごとに複数回行い、スペクトルの取得ごとに記憶部130にデータを格納する。
【0033】
演算部122は、取得部121により取得された複数のスペクトルのそれぞれにおける所定の波長の光強度に基づき、複数の光強度の標準偏差である気泡発生度を演算する。例えば、演算部122は、記憶部130に記憶された100個のスペクトルデータについて、所定の波長における光強度をスペクトルの取得順に並べて標準偏差を演算する。
【0034】
ここで、気泡発生度の演算に使用されるスペクトル数は100個に限定されるものではなく、演算部122は、例えば、ユーザが設定した数や、濃度測定装置200による濃度測定に使用されるスペクトル数を使用して、気泡発生度を演算してもよい。また、所定の波長は、スペクトルのうち比較的光強度が強い波長であり、予めユーザが設定した波長や、後述する条件下での光強度が最も強い波長が設定される。
【0035】
また、演算部122は、所定の波長として、所定条件下での光強度が最も強い波長の光強度に基づき、気泡発生度を演算してもよい。例えば、演算部122は、気泡発生度の演算における所定の波長について、取得したスペクトルの中で光強度が最も強い波長、濃度測定装置200による濃度測定に使用される波長の中で光強度が最も強い波長、測定対象に吸収されにくい波長の中で光強度が最も強い波長、のいずれかが設定され、設定された波長の光強度を使用して気泡発生度を演算する。
【0036】
さらに、演算部122は、気泡発生度を演算する度に気泡発生度の移動平均をさらに演算してもよい。例えば、演算部122は、気泡発生度を演算した後、直近の10個の気泡発生度を使用して移動平均を演算する。なお、移動平均の演算に使用される気泡発生度のデータ数は10個に限られるものではなく、予め設定されたデータ数を使用してもよい。
【0037】
判定部123は、演算部122によって演算された移動平均が、記憶部130によって記憶された上限値または下限値を超える場合に異常状態であると判定する。例えば、判定部123は、前述の移動平均と、記憶部130に記憶された上限値及び下限値とをそれぞれ比較し、上限値及び下限値の間の範囲から移動平均が外れた場合に、測定対象の薬液における気泡の状態が異常であると判定する。そして、判定部123は、異常状態を判定した場合には、後述する通知部124にその旨を通知する。なお、判定部123は、移動平均が上限値または下限値の範囲内であるか否かの判定結果を記憶部130に格納する。
【0038】
通知部124は、判定部123によって異常状態と判定された場合に、異常状態である旨を外部に通知する。例えば、通知部124は、前述の判定部123からの通知により、DO(Digital Output)や、通信部110を介した通信により、測定対象の薬液における気泡の状態が異常であることを上位機器300に通知する。
【0039】
なお、通知部124は、前述の異常判定を、表示器やLEDを使用することにより、ユーザに通知してもよいし、異常状態の通知とともに、異常判定が行われた付近のデータ等を上位機器300等に通知してもよい。
【0040】
〔3.実施例〕
ここで、図6を参照し、本実施形態における監視装置100の処理の流れについて説明する。図6は、実施形態に係る監視装置の処理の流れの一例を示す図である。例えば、まず、取得部121は、分光装置250から分光されたスペクトルデータを100個取得する。その後、演算部122は、それぞれのスペクトルデータから、予め設定された1100nmにおける光強度を使用して、気泡発生度を演算する。
【0041】
ここで、図7を参照して、気泡発生度の具体例について説明する。図7は、実施形態に係る演算処理により演算された気泡発生度の具体例を示す図である。図7(1)は、取得したそれぞれのデータにおける波長1100nmの光強度をプロットしたグラフが示されている。また、図7(2)は、気泡発生度の演算回数における気泡発生度の値をプロットしたグラフが示されている。
【0042】
そして、図7の例では、100個のスペクトルデータから1個の気泡発生度が演算されるため、演算部122は、データ取得数が0~100(図7(1)において、実線で囲んだ範囲)のデータから、1回目の気泡発生度:3200(図7(2)において、実線で囲んだ点)を演算する。
【0043】
また、演算部122は、同様に、データ取得数が101~200(図7(1)において、点線で囲んだ範囲)のデータから、2回目の気泡発生度:2000(図7(2)において、点線で囲んだ点)を演算する。そして、演算部122は、その後に取得されたデータについても同様の処理を繰り返す。
【0044】
図6に戻り、処理の流れについて説明する。その後、演算部122は、例えば、直近10個の気泡発生度の値から移動平均を演算する。そして、判定部123は、移動平均の演算の度に異常判定を行った結果、演算数:17で異常判定を行う。これにより、通知部124は、異常判定がされた演算数:17付近のデータ等を上位機器300に通知し、ユーザに異常状態であることを知らせる。
【0045】
ここで、図8図9を参照して、異常判定処理の具体例について説明する。図8は、実施形態に係る正常状態の光強度と異常状態の光強度とを示す図である。また、図9は、実施形態に係る異常判定処理の具体例を示す図である。
【0046】
図8は、波長1100nmの光強度について、測定対象の薬液の気泡が正常状態である場合と、異常状態である場合とが示されている。具体的には、データ取得数が0~1400の範囲は、正常状態でありデータのばらつきが比較的少ないことが示されている。一方で、データ取得数が1400以降の範囲は、異常状態でありデータのばらつきが比較的大きいことが示されている。
【0047】
そして、図9には、図8に示した光強度のデータを使用して演算された気泡発生度と、予め正常状態の最大値が設定された上限値と、直近10データの気泡発生度から演算される移動平均とが示されている。図9の例では、演算部122は、演算数:10から移動平均を演算している。そして、判定部123は、演算数:17の時点で、移動平均が上限値:4200を超えたことにより異常状態を判定している。
【0048】
つまり、判定部123は、異常状態である1601~1700の光強度により、演算数:17の気泡発生度が演算された際に、異常状態を判定しているため、測定対象の薬液における気泡が異常状態となったことを適切に判定することができるといえる。
【0049】
〔4.監視装置による処理の一例〕
次に、図10を用いて、監視装置100よる処理について説明する。図10は、実施形態に係る処理手順の一例を示すフローチャートである。監視装置100は、例えば、光源から光を射出する(ステップS101)。その後、取得部121は、測定対象を透過した光から得られるスペクトルを複数取得する(ステップS102)。そして、監視装置100は、取得したスペクトル数が気泡発生度の演算に使用されるスペクトル数に達したか否かを判断する(ステップS103)。
【0050】
取得したスペクトル数が気泡発生度の演算に使用されるスペクトル数に達した場合には(ステップS103;Yes)、演算部122は、各スペクトルから所定の波長における光強度を選択する(ステップS104)。一方で、取得したスペクトル数が気泡発生度の演算に使用されるスペクトル数に達していない場合には(ステップS103;No)、監視装置100は、S101に戻り処理を継続する。
【0051】
そして、演算部122は、S104の処理の後、選択した複数の光強度から標準偏差(気泡発生度)を演算する(ステップS105)。その後、演算部122は、演算した気泡発生度から、移動平均を演算する(ステップS106)。そして、判定部123は、演算された移動平均が上限値と下限値との範囲内であるか否かを判定する(ステップS107)。
【0052】
演算された移動平均が上限値と下限値との範囲内でない場合には(ステップS107;No)、通知部124は、異常状態を外部に通知して(ステップS108)、監視装置100は工程を終了する。一方、演算された移動平均が上限値と下限値との範囲内である場合には(ステップS107;Yes)、監視装置100は工程を終了する。
【0053】
〔5.実施形態の効果〕
前述してきたように、本実施形態に係る監視装置100は、取得部121と演算部122とを備える。取得部121は、測定対象を透過した光の測定により得られた所定時間ごとのスペクトルを取得する。演算部122は、取得部121により取得された複数のスペクトルのそれぞれにおける所定の波長の光強度に基づき、複数の光強度の標準偏差である気泡発生度を演算する。
【0054】
これにより、監視装置100は、取得したスペクトルにおける所定の波長の光強度から、測定対象中の気泡の状態と関連がある光強度の標準偏差を演算することにより、測定対象中の気泡の状態について容易に監視することができるという効果を奏する。
【0055】
また、監視装置100の演算部122は、所定の波長として、所定条件下での光強度が最も強い波長の光強度に基づき、気泡発生度を演算する。これにより、監視装置100は、光強度が最も強い波長の光強度により気泡発生度を演算することで、より特徴的な気泡発生度を演算することができるという効果を奏する。
【0056】
さらに、監視装置100は、記憶部130と判定部123とをさらに備える。演算部122は、気泡発生度を演算する度に気泡発生度の移動平均をさらに演算する。記憶部130は、正常状態における複数の気泡発生度に応じて設定された、気泡発生度の上限値および下限値を記憶する。判定部123は、演算部122によって演算された移動平均が、記憶部130によって記憶された上限値または下限値を超える場合に異常状態であると判定する。
【0057】
これにより、監視装置100は、気泡発生度の移動平均を演算し、正常状態の範囲内であるか否かを判定することにより、測定対象中の気泡が正常か異常かを判断することができるという効果を奏する。
【0058】
また、監視装置100の記憶部130は、上限値として、正常状態における複数の気泡発生度における最大値を記憶し、下限値として、正常状態における複数の気泡発生度における最小値を記憶する。これにより、監視装置100は、正常状態における気泡発生度の範囲を適切に設定することができるという効果を奏する。
【0059】
さらに、監視装置100の記憶部130は、上限値および下限値として、正常状態における複数の気泡発生度における平均値と標準偏差とから算出される値を記憶する。これにより、監視装置100は、正常状態における気泡発生度の範囲を適切に設定することができるという効果を奏する。
【0060】
また、監視装置100は、通知部124をさらに備える。通知部124は、判定部123によって異常状態と判定された場合に、異常状態である旨を外部に通知する。これにより、監視装置100は、移動平均が正常状態の範囲を超えて、測定対象中の気泡が異常状態であることが判定されたことを、ユーザに通知することができるという効果を奏する。
【0061】
[6.ハードウェア構成]
前述した、実施形態に係る監視装置100は、例えば、図11に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。図11は、ハードウェア構成の一例を示す図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、補助記憶装置1400、通信I/F(インタフェース)1500、入出力I/F(インタフェース)1600が、バス1800により接続された形態を有する。
【0062】
CPU1100は、ROM1300又は補助記憶装置1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0063】
補助記憶装置1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、および、係るプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信I/F1500は、所定の通信網を介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを所定の通信網を介して他の機器へ送信する。
【0064】
CPU1100は、入出力I/F1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入出力装置1700を制御する。CPU1100は、入出力I/F1600を介して、入出力装置1700からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータについて入出力I/F1600を介して入出力装置1700へ出力する。
【0065】
例えば、コンピュータ1000が本実施形態に係る監視装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部120の機能を実現する。
【0066】
[7.その他]
前述の実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0067】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の通り構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0068】
前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述してきた実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0069】
また、前述してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」等に読み替えることができる。例えば、制御部は、制御手段や制御回路に読み替えることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
100 監視装置
110 通信部
120 制御部
121 取得部
122 演算部
123 判定部
124 通知部
130 記憶部
200 濃度測定装置
210 光源
220 投光部
230 フローセル
240 受光部
250 分光装置
260 処理部
270 出力部
300 上位機器
400 薬液供給ユニット
500 薬液を使用する装置
図1
図2
図3
図4
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図9
図10
図11