(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154759
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
F02M 26/30 20160101AFI20241024BHJP
F02M 26/15 20160101ALI20241024BHJP
F02M 26/29 20160101ALI20241024BHJP
F02M 26/35 20160101ALI20241024BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20241024BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20241024BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241024BHJP
B01D 53/58 20060101ALI20241024BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F02M26/30
F02M26/15
F02M26/29
F02M26/35 Z
F01N3/08 Z
F01N3/20 B
B01D53/94 222
B01D53/58
B01D53/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068785
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】江本 元
(72)【発明者】
【氏名】福富 駿祐
(72)【発明者】
【氏名】丹 功
【テーマコード(参考)】
3G062
3G091
4D002
4D148
【Fターム(参考)】
3G062BA04
3G062CA01
3G062CA08
3G062ED08
3G062ED09
3G062ED10
3G091AB09
3G091BA14
3G091BA20
3G091HB05
4D002AA13
4D002AC10
4D002BA02
4D002DA35
4D002EA05
4D148AA06
4D148AA13
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB09
4D148CC32
4D148CD02
4D148DA01
4D148DA02
4D148DA20
4D148EA04
(57)【要約】
【課題】酸性の凝縮水による排ガス再循環装置の構成部品の腐食を防止でき、かつ、NOx吸蔵触媒から発生するアンモニアの大気への放出を防止することが可能な排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】排ガス浄化装置1は、NOx吸蔵触媒202の下流側に配設され、排ガス中の水分から生成される凝縮水を捕集するとともに、該凝縮水にNOx吸蔵触媒202において発生するアンモニアを溶解させてアンモニア水を生成するアンモニア水生成部45と、アンモニア水生成部45とEGRクーラ43とを連通する第1配管471に介装され、生成されたアンモニア水をEGRクーラ43に供給する第1ポンプ481及び開閉バルブ49とを備え、ECU50が、エンジン始動時に、第1ポンプ481を駆動するとともに開閉バルブ49を開弁して、生成されたアンモニア水をEGRクーラ43に供給し、EGRクーラ43の底部に貯留されている凝縮水に混入する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気系に配設され、リーン運転時に排ガス中のNOxを吸蔵し、所定の条件で空燃比が一時的にリッチ化されたときに、吸蔵しているNOxをN2に還元するNOx吸蔵触媒と、
前記NOx吸蔵触媒の上流側において前記エンジンの排気系に接続され、前記エンジンの排気系と吸気系とを連通するEGR配管と、該EGR配管に介装され、該EGR配管を通して前記エンジンの吸気系に再循環される排ガスを冷媒との熱交換により冷却するEGRクーラと、前記EGRクーラの下流側において前記EGR配管に介装され、再循環される排ガスの量を調節するEGRバルブと、を有し、前記エンジンから排出される排ガスの一部を前記エンジンの吸気系に再循環させる排ガス再循環装置と、
前記NOx吸蔵触媒の下流側に配設され、排ガス中の水分から生成される凝縮水を捕集するとともに、該凝縮水に前記NOx吸蔵触媒において発生するアンモニアを溶解させてアンモニア水を生成するアンモニア水生成部と、
前記アンモニア水生成部と前記EGRクーラとを連通する第1配管に介装され、前記アンモニア水生成部により生成されたアンモニア水を前記EGRクーラに供給する供給手段と、
前記エンジンの混合気の空燃比を制御するとともに、前記供給手段の駆動を制御するコントロールユニットと、を備え、
前記EGRクーラは、底部に凝縮水を貯留可能に構成されており、
前記コントロールユニットは、エンジン始動時に、前記供給手段を駆動して、前記アンモニア水生成部により生成されたアンモニア水を前記EGRクーラに供給し、前記EGRクーラの底部に貯留されている凝縮水に混入する
ことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記供給手段は、
前記第1配管に介装され、前記アンモニア水生成部により生成されたアンモニア水を昇圧して前記EGRクーラへ圧送する第1ポンプと、
前記第1ポンプの下流側において前記第1配管に介装され、前記第1配管を開閉する開閉バルブと、を有して構成されており、
前記コントロールユニットは、エンジン始動時に、前記第1ポンプを駆動するとともに、前記開閉バルブを開弁することを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記アンモニア水生成部と、前記エンジンの排気系の前記アンモニア生成部との接続箇所よりも下流側とを連通する第2配管に介装され、前記アンモニア水生成部内を負圧にして排ガスを吸引する第2ポンプを備え、
前記コントロールユニットは、空燃比をリッチ化して前記NOx吸蔵触媒に吸蔵されているNOxを還元する際に、前記第2ポンプを駆動して、前記NOx吸蔵触媒において発生するアンモニアを、前記アンモニア水生成部内の凝縮水に通してアンモニア水を生成することを特徴とする請求項2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記コントロールユニットは、前記第1ポンプを駆動するとともに前記開閉バルブを開弁した後、アンモニア水を所定量供給した場合、又は、開弁後所定時間が経過した場合に、前記開閉バルブを閉弁するとともに、前記第1ポンプの駆動を停止することを特徴とする請求項3に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記EGRクーラの内部には、再循環される排ガスを、アンモニア水が混入された凝縮水の中を通すように仕切り板が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOx吸蔵触媒と排ガス再循環装置とを備え、エンジンから排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンから排出されるNOx(窒素酸化物)の低減を図るために、NOx吸蔵触媒(LNT(Lean NOx Trap)触媒)と、エンジンから排出された排ガスの一部を吸気通路(吸気系)に再循環させる排ガス再循環装置(EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置)とを備えたエンジンが開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1の排ガス再循環装置は、エンジンの排気系と吸気系とを接続するEGR配管と、該EGR配管に設けられEGRガスの供給量を制御するEGRバルブと、EGR配管の排気系とEGRバルブとの間に設けられEGRガスの圧力を検出するEGR圧力センサとを備え、吸気マニホールド内の圧力およびEGRガスの圧力に基づいてEGRバルブの前後の圧力差を算出し、該EGRバルブ前後の圧力差に基づき、目標とするEGRガス量が流れるように、EGRバルブの開度を制御する。
【0004】
また、NOx吸蔵触媒(LNT触媒)は、通常運転時(リーン運転時)にNOxを吸蔵し、所定の条件が満足されたときに(所定のタイミングで)実行されるリッチパージ(すなわち、燃料噴射量の増大による空燃比の一時的なリッチ化)により、排ガス中の酸素(O2)を減少させる一方、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)等を増加させ、吸蔵したNOxと反応させてN2に還元する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エンジンの排ガス中には、ガソリン等の燃焼により生じた水分(水蒸気)が多く含まれており、排ガス中の水分(水蒸気)が凝縮して凝縮水が生成される。そして、その凝縮水に排ガス中のNOx(NO2等)が溶解することで硝酸等の酸性の凝縮水が生成され、その酸性の凝縮水により、排ガス再循環装置の構成部品、例えば、EGR圧力センサ(特に配線等の金属部分)やEGRクーラ等が腐食することがある。
【0007】
また、NOx吸蔵触媒では、リッチパージ時、すなわち、NOxをリッチガスで還元する際に、過還元により(副生成物として)アンモニアが生成される(発生する)。しかしながら、アンモニアは特有の刺激臭を持つ物質であることから、アンモニアの大気(外気)への放出(排出)は防止したいという要望がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、排ガス中の水分(水蒸気)が凝縮して生成される凝縮水に排ガス中のNOx(NO2等)が溶解することで生成される硝酸等の酸性の凝縮水による排ガス再循環装置の構成部品(例えばEGR圧力センサやEGRクーラ等)の腐食を防止でき、かつ、NOx吸蔵触媒から発生するアンモニアの大気への放出を防止することが可能な排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る排ガス浄化装置は、エンジンの排気系に配設され、リーン運転時に排ガス中のNOxを吸蔵し、所定の条件で空燃比が一時的にリッチ化されたときに、吸蔵しているNOxをN2に還元するNOx吸蔵触媒と、NOx吸蔵触媒の上流側においてエンジンの排気系に接続され、エンジンの排気系と吸気系とを連通するEGR配管、該EGR配管に介装され、該EGR配管を通してエンジンの吸気系に再循環される排ガスを冷媒との熱交換により冷却するEGRクーラ、及び、EGRクーラの下流側においてEGR配管に介装され、再循環される排ガスの量を調節するEGRバルブを有し、エンジンから排出される排ガスの一部をエンジンの吸気系に再循環させる排ガス再循環装置と、NOx吸蔵触媒の下流側に配設され、排ガス中の水分から生成される凝縮水を捕集するとともに、該凝縮水にNOx吸蔵触媒において発生するアンモニアを溶解させてアンモニア水を生成するアンモニア水生成部と、アンモニア水生成部とEGRクーラとを連通する第1配管に介装され、アンモニア水生成部により生成されたアンモニア水をEGRクーラに供給する供給手段と、エンジンの混合気の空燃比を制御するとともに、供給手段の駆動を制御するコントロールユニットとを備え、EGRクーラが、底部に凝縮水を貯留可能に構成されており、コントロールユニットが、エンジン始動時に、供給手段を駆動して、アンモニア水生成部により生成されたアンモニア水をEGRクーラに供給し、EGRクーラの底部に貯留されている凝縮水に混入することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る排ガス浄化装置によれば、NOx吸蔵触媒の下流側に配設され、排ガス中の水分から生成される凝縮水を捕集するとともに、該凝縮水にNOx吸蔵触媒において発生するアンモニアを溶解させてアンモニア水を生成するアンモニア水生成部と、アンモニア水生成部とEGRクーラとを連通する第1配管に介装され、アンモニア水生成部により生成されたアンモニア水をEGRクーラに供給する供給手段とを備え、エンジン始動時に、供給手段が駆動されて、アンモニア水生成部により生成されたアンモニア水がEGRクーラに供給され、EGRクーラの底部に貯留されている凝縮水に混入される。そのため、エンジン始動後、排ガスがEGRクーラを通る際に、該排ガス中のNOxが、アンモニア水が混入されたアルカリ性の凝縮水に溶解して中和されるため、EGRクーラから出て再循環される排ガスはNOxが除去されている。よって、その下流に取り付けられたEGR圧力センサの腐食を防止できる。また、EGRクーラ内で凝縮水が硝酸等になることが防止されるので、EGRクーラの腐食も防止できる。また、NOx吸蔵触媒で発生するアンモニアを凝縮水に溶解してアンモニア水として利用するため、外気に放出されるアンモニアを低減できる。
【発明の効果】
【0011】
その結果、本発明によれば、排ガス中の水分(水蒸気)が凝縮して生成される凝縮水に排ガス中のNOx(NO2等)が溶解することで生成される硝酸等の酸性の凝縮水による排ガス再循環装置の構成部品(例えばEGR圧力センサやEGRクーラ等)の腐食を防止でき、かつ、NOx吸蔵触媒から発生するアンモニアの大気への放出を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る排ガス浄化装置、及び、該排ガス浄化装置が適用されたエンジンの構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る排ガス浄化装置の要部を模式的に示した図である。
【
図3】実施形態に係る排ガス浄化装置を構成するEGRクーラの内部を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、特に区別する必要がある場合を除いて、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0014】
まず、
図1~
図3を併せて用いて、実施形態に係る排ガス浄化装置1の構成について説明する。
図1は、排ガス浄化装置1、及び、排ガス浄化装置1が適用されたエンジン10の構成を示す図である。
図2は、排ガス浄化装置1の要部を模式的に示した図である。また、
図3は、排ガス浄化装置1を構成するEGRクーラ43の内部を模式的に示した図である。
【0015】
エンジン10は、例えば水平対向型の4気筒ガソリンエンジンである。また、エンジン10は、シリンダ内(筒内)に燃料を直接噴射する筒内噴射式のエンジンである。エンジン10では、エアクリーナ16から吸入された空気が、吸気管15に設けられた電子制御式スロットルバルブ(以下、単に「スロットルバルブ」ともいう)13により絞られ、インテークマニホールド11を通り、エンジン10に形成された各気筒に吸入される。ここで、エアクリーナ16から吸入された空気の量は、エアクリーナ16とスロットルバルブ13との間に配置されたエアフローメータ14により検出される。また、インテークマニホールド11を構成するコレクター部(サージタンク)の内部には、インテークマニホールド11内の圧力(吸気マニホールド圧力)を検出するバキュームセンサ30が配設されている。さらに、スロットルバルブ13には、該スロットルバルブ13の開度を検出するスロットル開度センサ31が配設されている。
【0016】
シリンダヘッドには、気筒毎に吸気ポート22と排気ポート23とが形成されている(
図1では片バンクのみ示した)。各吸気ポート22、排気ポート23それぞれには、該吸気ポート22、排気ポート23を開閉する吸気バルブ24、排気バルブ25が設けられている。吸気バルブ24を駆動する吸気カム軸と吸気カムプーリとの間には、吸気カムプーリと吸気カム軸とを相対回動してクランク軸10aに対する吸気カム軸の回転位相(変位角)を連続的に変更して、吸気バルブ24のバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構26が配設されている。この可変バルブタイミング機構26により吸気バルブ24の開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0017】
同様に、排気カム軸と排気カムプーリとの間には、排気カムプーリと排気カム軸とを相対回動してクランク軸10aに対する排気カム軸の回転位相(変位角)を連続的に変更して、排気バルブ25のバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構27が配設されている。この可変バルブタイミング機構27により排気バルブ25の開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0018】
エンジン10の各気筒には、シリンダ内に燃料を噴射するインジェクタ12が取り付けられている。インジェクタ12は、高圧燃料ポンプ(図示省略)により加圧された燃料を各気筒の燃焼室内へ直接噴射する。
【0019】
また、各気筒のシリンダヘッドには、混合気に点火する点火プラグ17、及び該点火プラグ17に高電圧を印加するイグナイタ内蔵型コイル21が取り付けられている。エンジン10の各気筒では、吸入された空気とインジェクタ12によって噴射された燃料との混合気が点火プラグ17により点火されて燃焼する。燃焼後の排ガスは排気管18を通して排出される。
【0020】
排気管18の集合部の下流かつ排気浄化触媒201の上流には、空燃比センサ19が取り付けられている。空燃比センサ19としては、排ガス中の酸素濃度、未燃ガス濃度に応じた信号(すなわち混合気の空燃比に応じた信号)を出力でき、空燃比をリニアに検出することができるリニア空燃比センサ(LAFセンサ)が用いられる。
【0021】
LAFセンサ19の下流には排気浄化触媒201が配設されている。排気浄化触媒201は三元触媒であり、排ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行い、排ガス中のこれらのガス成分を無害な二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)及び窒素(N2)に清浄化するものである。
【0022】
排気管18の排気浄化触媒(三元触媒)201の下流側には、NOx吸蔵触媒(LNT触媒)202が配設されている。NOx吸蔵触媒202は、リーン運転時に排ガス中のNOxを吸蔵し、所定の条件(所定のタイミング)で空燃比が一時的にリッチ化されたときに(すなわち、排ガス中の酸素(O2)が減少する一方、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)等が増加したときに)、吸蔵しているNOxをN2に還元する。
【0023】
排気管18には、エンジン10から排出された排ガスの一部を、エンジン10のインテークマニホールド11(吸気系)に再循環させる排ガス再循環装置(以下「EGR装置」という)40が設けられている。EGR装置40は、主として、EGR配管41と、EGRクーラ43と、EGRバルブ42とを備えて構成されている。
【0024】
EGR配管41は、排気浄化触媒(三元触媒)201及びNOx吸蔵触媒202の上流側において排気管18に接続され、エンジン10の排気管18(排気系)とインテークマニホールド11(吸気系)とを連通する。
【0025】
EGRクーラ43は、EGR配管41に介装され、EGR配管41を通してエンジン10の吸気系に再循環される排ガス(EGRガス)を冷媒との熱交換により冷却する。なお、EGRクーラ43の冷媒には、例えばエンジン冷却水(クーラント)が用いられる。
【0026】
EGRクーラ43は、例えば、略有底円筒状又は略有底角筒状に形成されており、その底部に、例えばエンジン停止中に生成される凝縮水を貯留可能に構成されている。また、EGRクーラ43の内部には、再循環される排ガス(EGRガス)を、アンモニア水が混入された凝縮水の中を通す(バブリングする)ように仕切り板43aが設けられている。より具体的には、EGRクーラ43の内部には、例えば、EGRクーラ43の入口の上側から底面方向(下側)に向けて傾斜した仕切り板43aが設けられている。仕切り板43aは、その先端が、貯留される凝縮水の中に浸かるように(すなわち、凝縮水の液面よりも下になるように)設定される。なお、より少ない凝縮水(アンモニア水)でEGRガスをバブリングできるようにするため、EGRクーラ43の底部をすり鉢状とすることが好ましい。
【0027】
EGRバルブ42は、EGRクーラ43の下流側において、EGR配管41に介装され、再循環される排ガスの量(EGRガスの流量)を調節する。EGRバルブ42は、後述する電子制御装置(以下「ECU」という)50によって開度(EGRSTP)が制御される。
【0028】
EGRクーラ43の下流側には、EGRクーラ43により冷却された後、EGR配管41を通してエンジン10の吸気系に再循環される排ガス(EGRガス)の圧力を検出するEGR圧力センサ44が取り付けられている。EGR圧力センサ44は、後述するECU50に接続されており、再循環される排ガス(EGRガス)の圧力に応じた電気信号(例えば電圧値)がECU50で読み込まれる。
【0029】
一方、NOx吸蔵触媒202の下流側には、アンモニア水生成部45が配設されている。アンモニア水生成部45は、排気管18の鉛直下方(下側)に配設される。ここで、凝縮水を効率よく集めるため、排気管18のアンモニア水生成部45との接続箇所は、鉛直下方(下側)に凸状(すなわち谷状)に折曲又は湾曲していることが好ましい。
【0030】
アンモニア水生成部45は、排ガス中の水分(水蒸気)から生成される凝縮水を捕集するとともに、該凝縮水にNOx吸蔵触媒202において発生する(すなわち、空燃比がリッチ化されているときに過還元により発生する)アンモニアを溶解させてアンモニア水を生成する。そのため、アンモニア水生成部45は、一端が排気管18と接続され、他端が鉛直下方に伸びるパイプ部45aと、該パイプ部45aを覆い、凝縮水を捕集する(一時的に貯留する)有底円筒状又は有底角筒状のタンク部45bとを有して構成されている。なお、パイプ部45aは、その他端(先端)が、捕集された凝縮水の中に浸かるように設定される。
【0031】
アンモニア水生成部45の下部と、アンモニア水を貯留するアンモニア水貯留タンク46と、EGRクーラ43の下部とは、第1配管471により連通されている。第1配管471(アンモニア水生成部45とアンモニア水貯留タンク46との間)には、アンモニア水生成部45により生成されたアンモニア水を、アンモニア水貯留タンク46を介してEGRクーラ43に供給する(送る)第1ポンプ481が介装されている。また、アンモニア水貯留タンク46とEGRクーラ43(下部)との間には開閉バルブ49が介装されている。なお、アンモニア水生成部45でアンモニア水を貯留できる場合には、アンモニア水貯留タンク46を省略してもよい。
【0032】
第1ポンプ481は、第1配管471に介装され、アンモニア水生成部45により生成されたアンモニア水を昇圧してアンモニア水貯留タンク46(EGRクーラ43)へ圧送する。開閉バルブ49は、第1ポンプ481の下流側(アンモニア水貯留タンク46とEGRクーラ43との間)において第1配管471に介装され、第1配管471を開閉する。なお、第1ポンプ481としては、電動式のポンプが好適に用いられる。また、開閉バルブ49には電磁式のオン、オフ弁が好適に用いられる。第1ポンプ481及び開閉バルブ49は、ECU50によって駆動が制御される。
【0033】
一方、アンモニア水生成部45の上部空間と、排気管18(アンモニア水生成部45との接続箇所よりも下流側)とは、第2配管472により連通されている。第2配管472には、アンモニア水生成部45の上部空間内を負圧にして排ガスを吸引する第2ポンプ482が介装されている。なお、第2ポンプ482としては、電動式のポンプが好適に用いられる。第2ポンプ482はECU50によって駆動が制御される。
【0034】
上述したエアフローメータ14、LAFセンサ19、バキュームセンサ30、スロットル開度センサ31、EGR圧力センサ44に加え、エンジン10のカム軸近傍には、エンジン10の気筒判別を行うためのカム角センサ32が取り付けられている。また、エンジン10のクランク軸10a近傍には、クランク軸10aの回転位置を検出するクランク角センサ33が取り付けられている。ここで、クランク軸10aの端部には、例えば、2歯欠歯した34歯の突起が10°間隔で形成されたタイミングロータ33aが取り付けられており、クランク角センサ33は、タイミングロータ33aの突起の有無を検出することにより、クランク軸10aの回転位置を検出する。カム角センサ32及びクランク角センサ33としては、例えば電磁ピックアップ式のものなどが用いられる。
【0035】
これらのセンサは、ECU50に接続されている。さらに、ECU50には、エンジン10の冷却水の温度を検出する水温センサ34、潤滑油の温度を検出する油温センサ35、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ36、及び、車両の速度を検出する車速センサ37等の各種センサも接続されている。
【0036】
ECU50は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリ等によってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び、入出力I/F等を有して構成されている。また、ECU50は、インジェクタ12を駆動するインジェクタドライバ、点火信号を出力する出力回路、及び、電子制御式スロットルバルブ13を開閉する電動モータ13aを駆動するモータドライバ等を備えている。さらに、ECU50は、EGRバルブ42のステッピングモータを駆動するドライバ回路等も備えている。
【0037】
ECU50では、カム角センサ32の出力から気筒が判別され、クランク角センサ33の出力から回転角速度およびエンジン回転数が求められる。また、ECU50では、上述した各種センサから入力される検出信号に基づいて、吸入空気量、混合気の空燃比、吸気管負圧、アクセルペダル開度、EGRガスの圧力、及び、エンジン10の水温や油温等の各種情報が取得される。そして、ECU50は、取得したこれらの各種情報に基づいて、燃料噴射量(リッチパージを含む混合気の空燃比)や点火時期、及び、スロットルバルブ13やEGRバルブ42等の各種デバイスを制御することによりエンジン10を総合的に制御する。
【0038】
なお、ここで、ECU50は、所定の条件が成立したときに(所定のタイミングで)空燃比を一時的にリッチ化して(リッチパージを実行して)、NOx吸蔵触媒202に吸蔵されているNOxをN2に還元する。また、ECU50は、EGR圧力センサ44により検出されたEGRガスの圧力に基づいて(より詳細にはEGRガスの圧力と吸気マニホールド内の圧力との差圧に応じて)、EGRバルブ42の開度を制御し、エンジン10の吸気系に再循環させる排ガスの量を調節する。
【0039】
特に、ECU50を含む排ガス浄化装置1は、排ガス中の水分(水蒸気)が凝縮して生成される凝縮水に排ガス中のNOx(NO2等)が溶解することで生成される硝酸等の酸性の凝縮水によるEGR装置40の構成部品(例えばEGR圧力センサ44やEGRクーラ43等)の腐食を防止するとともに、NOx吸蔵触媒202から発生するアンモニアの大気への放出を防止する機能を有している。ECU50では、EEPROM等に記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、当該機能が実現される。ECU50は、特許請求の範囲に記載のコントロールユニットとして機能する。なお、EGR配管41が排気浄化触媒(三元触媒)201及びNOx吸蔵触媒202の上流側に接続されていると、再循環される排ガスに含まれるNOxが多く、EGR圧力センサ44やEGRクーラ43等が腐食されやすい。
【0040】
上述した機能を実現するため、ECU50は、第1ポンプ481並びに開閉バルブ49、及び、第2ポンプ482の駆動を制御する。
【0041】
より具体的には、ECU50は、空燃比をリッチ化してNOx吸蔵触媒202に吸蔵されているNOxを還元する際(すなわち、NOx吸蔵触媒202でアンモニアが発生するリッチパージ時)に、第2ポンプ482を駆動して排ガスを一部バイパスし、NOx吸蔵触媒202において発生するアンモニアを、アンモニア水生成部45内の凝縮水に通して(バブリングして)アンモニア水を生成する。すなわち、凝縮水をアルカリ性のアンモニア水に変える。なお、ECU50は、リッチパージ時以外(すなわち、NOx吸蔵触媒202からアンモニアが発生しないとき)には、第2ポンプ482の駆動を停止する。
【0042】
また、ECU50は、エンジン始動時に、第1ポンプ481を駆動するとともに、開閉バルブ49を開弁する。
【0043】
すなわち、ECU50は、エンジン始動時に、第1ポンプ481を駆動するとともに開閉バルブ49を開弁して、アンモニア水生成部45により生成されたアンモニア水をEGRクーラ43に供給し、EGRクーラ43の底部に貯留されている凝縮水に混入する。
【0044】
なお、ECU50は、第1ポンプ481を駆動するとともに開閉バルブ49を開弁した後、アンモニア水を所定量供給し終えた場合、又は、開弁後所定時間が経過した場合に、開閉バルブ49を閉弁するとともに、第1ポンプ481の駆動を停止する。
【0045】
次に、上述したように構成される排ガス浄化装置1の動作について説明する。
(1)まず、エンジン運転時又は停止時に、排気管18の谷間部分に生じた(集まった)凝縮水が自重によって流れ、アンモニア水生成部45で捕集(一時的に貯留)される。
【0046】
(2)次に、リッチパージ実行時に、第2ポンプ482が駆動されて、NOx吸蔵触媒202から発生したアンモニアを含む排ガスの一部が、アンモニア水生成部45内に貯留されている凝縮水に通され(バブリングされ)、効率よくアンモニア水が生成される。
【0047】
(3)その後、第1ポンプ481が駆動され、アンモニア水生成部45において生成されたアンモニア水が、アンモニア水貯留タンク46に圧送される。
【0048】
(4)一方、例えばエンジン停止中に、EGRクーラ43内で凝縮水が発生し、自重で滴下して、EGRクーラ43の底部に貯留される。
【0049】
(5)次に、エンジン始動のタイミングで、第1ポンプ481が駆動され、アンモニア水貯留タンク46内のアンモニア水が加圧状態にされる。
【0050】
(6)そして、エンジン始動時に、開閉バルブ49が開弁され、アンモニア水貯留タンク46内のアンモニア水がEGRクーラ43内に注入される。すなわち、EGRクーラ43に貯留されている凝縮水にアンモニア水が混入される。なお、開閉バルブ49は、アンモニア水が所定量注入された場合、又は、開弁後所定時間が経過した場合に閉じられる。
【0051】
(7)その後、EGRクーラ43内を通って再循環される排ガス中のNOx(NO2)やSOx等が、アンモニア水が混入されたアルカリ性の凝縮水に溶け、排ガスが浄化される。すなわち、アンモニア水が混入されたアルカリ性の凝縮水にすることで、硝酸等が中和される。そのため、EGRクーラ43内の腐食も抑制される。
【0052】
(8)さらに、その後、エンジン10が高回転になり排ガスの温度が上昇すると、EGRクーラ43内の凝縮水が気化し、再び上記(1)の状態へ戻る。
【0053】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、NOx吸蔵触媒202の下流側に配設され、排ガス中の水分(水蒸気)から生成される凝縮水を捕集するとともに、該凝縮水にNOx吸蔵触媒202において発生するアンモニアを溶解させてアンモニア水を生成するアンモニア水生成部45と、第1配管471に介装され、生成されたアンモニア水をEGRクーラ43に供給する第1ポンプ481及び開閉バルブ49とを備え、エンジン始動時に、第1ポンプ481が駆動されるとともに開閉バルブ49が開弁されて、アンモニア水生成部45により生成されたアンモニア水がEGRクーラ43に供給され、EGRクーラ43の底部に貯留されている凝縮水に混入される。そのため、エンジン始動後、排ガスがEGRクーラ43を通る際に、排ガス中のNOxが、アンモニア水が混入されたアルカリ性の凝縮水に溶解して中和されるため、EGRクーラ43から出て再循環される排ガスはNOxが除去されている。よって、その下流に取り付けられているEGR圧力センサ44の腐食を防止できる。また、EGRクーラ43内で凝縮水が硝酸等になることが防止されるので、EGRクーラ43の腐食も防止できる。また、NOx吸蔵触媒202で発生するアンモニアを凝縮水に溶解してアンモニア水として利用するため、外気に放出されるアンモニアを低減できる(アンモニアの放出を抑制できる)。
【0054】
その結果、本実施形態によれば、排ガス中の水分(水蒸気)が凝縮して生成される凝縮水に排ガス中のNOx(NO2等)が溶解することで生成される硝酸等の酸性の凝縮水によるEGR装置40の構成部品(例えばEGR圧力センサ44やEGRクーラ43等)の腐食を防止でき、かつ、NOx吸蔵触媒202から発生するアンモニアの大気への放出を防止することが可能となる。
【0055】
本実施形態によれば、第1配管471に介装され、アンモニア水生成部45により生成されアンモニア水貯留タンク46に貯留されているアンモニア水を昇圧してEGRクーラ43へ圧送する第1ポンプ481と、第1ポンプ481の下流側(EGRクーラ43との間)において第1配管471に介装され、第1配管471を開閉する開閉バルブ49とを有し、エンジン始動時に、第1ポンプ481が駆動されるとともに、開閉バルブ49が開弁される。そのため、アンモニア水生成部45において生成されアンモニア水貯留タンク46に貯留されているアンモニア水を、エンジン始動時に、EGRクーラ43に適確に供給することができる。よって、特に、エンジン始動時のNOxを低減することができる。
【0056】
本実施形態によれば、アンモニア水生成部45の上部空間と排気管18(アンモニア水生成部45との接続箇所よりも下流側)とを連通する第2配管472に介装され、アンモニア水生成部45の上部空間内を負圧にして排ガスを吸引する第2ポンプ482を備え、空燃比がリッチ化されてNOx吸蔵触媒202に吸蔵されているNOxが還元される際(NOx吸蔵触媒202でアンモニアが発生するリッチパージ時)に、第2ポンプ482が駆動されて、排ガスの一部がバイパスされ、NOx吸蔵触媒202において発生したアンモニアが、アンモニア水生成部45内の凝縮水に通されて(バブリングされて)アンモニア水が生成される(すなわち、凝縮水がアンモニア水に変えられる)。よって、リッチパージ時に、排ガスの一部をアンモニア水生成部45から第2配管472を通してバイパスさせること、すなわち、排ガスをアンモニア水生成部45内の凝縮水の中を通すことができ、排ガス中のアンモニアを効率よく凝縮水に溶解させることができる。すなわち、効率よくアンモニア水を生成することができる。
【0057】
本実施形態によれば、第1ポンプ481が駆動されるとともに開閉バルブ49が開弁された後、アンモニア水が所定量供給された場合、又は、開弁後所定時間が経過した場合に、開閉バルブ49が閉弁されるとともに、第1ポンプ481の駆動が停止される。そのため、第1ポンプ481及び開閉バルブ49の駆動を適切に停止することができる(すなわち、不必要な駆動を防止することができる)。
【0058】
本実施形態によれば、EGRクーラ43の内部に、再循環される排ガス(EGRガス)を、アンモニア水が混入された凝縮水の中を通す(バブリングする)ように仕切り板43aが設けられている。そのため、再循環される排ガス(EGRガス)をアンモニア水(アルカリ性の凝縮水)の中へ導き、該アンモニア水の中を通すことで、効率よくNOxを溶解させて中和することができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、アンモニア水生成部45やEGRクーラ43の内部構造(凝縮水にEGRガスを通す構造)は、上記実施形態には限られない。
【0060】
また、上記実施形態では、本発明を、ガソリンエンジンに適用した場合を例にして説明したが、本発明は、NOx吸蔵触媒を備えているエンジンであれば、例えば、ディーゼルエンジンや水素エンジンにも適用することができる。さらに、ターボチャージャ等の過給機を備えるエンジンや、HEV(ハイブリッド車)等のエンジンにも適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 排ガス浄化装置
10 エンジン
201 排気浄化触媒(三元触媒)
202 NOx吸蔵触媒(LNT触媒)
40 排ガス再循環装置
41 EGR配管
42 EGRバルブ
43 EGRクーラ
43a 仕切り板
44 EGR圧力センサ
45 アンモニア水生成部
45a パイプ部
45b タンク部
46 アンモニア水貯留タンク
471 第1配管
472 第2配管
481 第1ポンプ
482 第2ポンプ
49 開閉バルブ
50 ECU