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特開2024-154765高分子膜、管状定着部材、定着装置及び画像形成装置
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  • 特開-高分子膜、管状定着部材、定着装置及び画像形成装置 図1
  • 特開-高分子膜、管状定着部材、定着装置及び画像形成装置 図2
  • 特開-高分子膜、管状定着部材、定着装置及び画像形成装置 図3
  • 特開-高分子膜、管状定着部材、定着装置及び画像形成装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154765
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】高分子膜、管状定着部材、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241024BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241024BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20241024BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G03G15/20 515
C08L101/00
C08K3/013
C08L79/08
C08L83/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068797
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶原 賢志
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】吉川 亮平
(72)【発明者】
【氏名】永松 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 智丈
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 真路
【テーマコード(参考)】
2H033
4J002
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033BB02
2H033BB03
2H033BB06
2H033BE00
2H033BE03
4J002AA001
4J002BD121
4J002CF161
4J002CL001
4J002CM041
4J002CP031
4J002DA016
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE146
4J002DF016
4J002DJ016
4J002DK006
4J002FA046
4J002GM01
4J002GQ00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】膜厚方向の熱伝導性に優れる高分子膜を提供する。
【解決手段】樹脂及びゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子と高分子に分散したフィラーとを含有する高分子膜であり、高分子膜をFIB-SEMで3次元解析し、高分子膜の膜厚をTmとし、フィラーの高分子膜の膜厚方向の長さをLfとしたとき、Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの全フィラーに占める個数割合が40%超100%未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂及びゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子と、前記高分子に分散したフィラーと、を含有する高分子膜であり、
前記高分子膜をFIB-SEMで3次元解析し、前記高分子膜の膜厚をTmとし、前記フィラーの前記高分子膜の膜厚方向の長さをLfとしたとき、Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの全フィラーに占める個数割合が40%超100%未満である、
高分子膜。
【請求項2】
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーのアスペクト比の平均値が15以上500以下である、請求項1に記載の高分子膜。
【請求項3】
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーのアスペクト比の平均値が25以上400以下である、請求項1に記載の高分子膜。
【請求項4】
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの長軸と前記高分子膜の面方向とがなす角度θの平均値が10度以上80度未満である、請求項1に記載の高分子膜。
【請求項5】
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの長軸と前記高分子膜の面方向とがなす角度θの平均値が15度以上75度以下である、請求項1に記載の高分子膜。
【請求項6】
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの体積の平均値が0.1μm以上500μm以下である、請求項1に記載の高分子膜。
【請求項7】
前記高分子がポリイミド樹脂又はシリコーンゴムを含む、請求項1に記載の高分子膜。
【請求項8】
前記高分子膜に含まれる前記高分子と前記フィラー全体の質量比が40:60~95:5である、請求項1に記載の高分子膜。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の高分子膜を備える、管状定着部材。
【請求項10】
第1回転体と、前記第1回転体の外面に接触して配置される第2回転体と、を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体の少なくとも一方が、請求項9に記載の管状定着部材であり、
トナー像が表面に形成された記録媒体を前記第1回転体と前記第2回転体との接触部に通して前記トナー像を定着する、
定着装置。
【請求項11】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する、請求項10に記載の定着装置と、を備える、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高分子膜、管状定着部材、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリイミド樹脂中に熱伝導性フィラーを含有するフィラー含有ポリイミド樹脂層を少なくとも1層有する絶縁層と、絶縁層の片面又は両面に積層された金属層とを有する熱伝導性積層体において、フィラー含有ポリイミド樹脂層における熱伝導性フィラーの含有割合が35~80vol%であり、熱伝導性フィラーの最大粒子径が15μm未満であり、熱伝導性フィラーは板状フィラーと球状フィラーとを含有し、板状フィラーの平均長径DLが0.1~2.4μmであり、絶縁層の厚み方向での熱伝導率λzが0.8W/mK以上である、熱伝導性積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/111684号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの全フィラーに占める個数割合が40%以下である場合に比べて、膜厚方向の熱伝導性に優れる高分子膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための具体的手段には下記の態様が含まれる。
<1>
樹脂及びゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子と、前記高分子に分散したフィラーと、を含有する高分子膜であり、
前記高分子膜をFIB-SEMで3次元解析し、前記高分子膜の膜厚をTmとし、前記フィラーの前記高分子膜の膜厚方向の長さをLfとしたとき、Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの全フィラーに占める個数割合が40%超100%未満である、
高分子膜。
<2>
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーのアスペクト比の平均値が15以上500以下である、<1>に記載の高分子膜。
<3>
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーのアスペクト比の平均値が25以上400以下である、<1>に記載の高分子膜。
<4>
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの長軸と前記高分子膜の面方向とがなす角度θの平均値が10度以上80度未満である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の高分子膜。
<5>
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの長軸と前記高分子膜の面方向とがなす角度θの平均値が15度以上75度以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の高分子膜。
<6>
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの体積の平均値が0.1μm以上500μm以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の高分子膜。
<7>
前記高分子がポリイミド樹脂又はシリコーンゴムを含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の高分子膜。
<8>
前記高分子膜に含まれる前記高分子と前記フィラー全体の質量比が40:60~95:5である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の高分子膜。
<9>
<1>~<8>のいずれか1つに記載の高分子膜を備える、管状定着部材。
<10>
第1回転体と、前記第1回転体の外面に接触して配置される第2回転体と、を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体の少なくとも一方が、<9>に記載の管状定着部材であり、
トナー像が表面に形成された記録媒体を前記第1回転体と前記第2回転体との接触部に通して前記トナー像を定着する、
定着装置。
<11>
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する、<10>に記載の定着装置と、を備える、
画像形成装置。
【発明の効果】
【0006】
<1>、<2>、<3>、<4>、<5>、<6>、<7>又は<8>によれば、Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの全フィラーに占める個数割合が40%以下である場合に比べて、膜厚方向の熱伝導性に優れる高分子膜が提供される。
<9>によれば、膜厚方向の熱伝導性に優れる管状定着部材が提供される。
<10>によれば、膜厚方向の熱伝導性に優れる管状定着部材を備えた定着装置が提供される。
<11>によれば、膜厚方向の熱伝導性に優れる管状定着部材を備えた定着装置を備えた画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】フィラーのLf、Tm及び角度θを説明するための模式図である。
図2】本開示の定着装置の第1実施形態の一例を示す概略構成図である。
図3】本開示の定着装置の第2実施形態の一例を示す概略構成図である。
図4】本開示の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0009】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
本開示において実施形態を、図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0012】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0013】
本開示において、管状部材の「軸方向」とは、管状部材の回転軸が延びる方向を意味し、管状部材の「周方向」とは、管状部材の回転方向を意味する。
【0014】
<高分子膜>
本開示の高分子膜は、樹脂及びゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子と、高分子に分散したフィラーとを含有し、高分子膜をFIB-SEMで3次元解析し、高分子膜の膜厚をTmとし、フィラーの高分子膜の膜厚方向の長さをLfとしたとき、Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの全フィラーに占める個数割合が40%超100%未満である。
【0015】
高分子膜をFIB-SEM(Focused Ion Beam Scanning Electron Microscopes)で3次元解析する方法を説明する。
高分子膜を幅1mmの直方体に切り出し、エポキシ樹脂で包埋する。包埋物にミクロトームで断面加工を施し、膜厚方向の断面が見えるブロック断面を形成する。ブロック断面を形成した試料をFIB-SEM装置(FIB-SEM Helios NanoLab 600i、米国FEI Company)の試料台に固定し、蒸着処理を施す。FIB-SEM装置にてブロック断面のFIB加工とSEM観察を繰り返し、2次元スタッキング画像を得る。少なくとも30個のフィラーを観察するまでFIB加工とSEM観察を繰り返す。SEM観察は、高分子膜中に分散するフィラーが観察可能な拡大倍率で行う。
2次元スタッキング画像を3次元画像解析ソフトウェア(Avizo-Fire、VSG社)に取り込ませ、3次元画像を構成する。構成した3次元画像から、個々のフィラーのLf、Tm、角度θ、アスペクト比及び体積の値を取得する。そして、Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの全フィラーに占める個数割合を求める。また、Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーについて、角度θ、アスペクト比及び体積の平均値を算出する。
【0016】
フィラーのLf、Tm及び角度θの求め方は下記のとおりである。
図1は、フィラーのLf、Tm及び角度θを説明する模式図である。図1は、高分子膜10の内部にフィラー20が分散した状態を示している。
Lfは、フィラー20の、高分子膜10の膜厚方向の長さである。
Tmは、Lfと同じ直線上にあり、個々のフィラー20ごとに計測される、高分子膜10の膜厚である。
角度θは、フィラー20の長軸と高分子膜10の面方向とがなす角度である。
【0017】
フィラーのアスペクト比の求め方は下記のとおりである。
X軸・Y軸・Z軸のX軸をフィラーの長軸方向にあてはめ、X軸・Y軸・Z軸それぞれのフィラー長さを計測する。3軸のフィラー長さのうち、最長の長さ(X軸のフィラー長さ、つまり長軸の長さ)と最短の長さ(Y軸のフィラー長さ又はZ軸のフィラー長さ)との比をアスペクト比とする。
【0018】
Lf/Tmが0.01以上であることは、フィラーが高分子膜の膜厚方向に向かって配置されていることを意味する。Lf/Tmが0.01未満であるフィラーは、高分子膜の面方向とほぼ水平である。
以下、「Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラー」を「フィラー(S)」という。
【0019】
本開示の高分子膜は、フィラー(S)の全フィラーに占める個数割合が40%超であることによって、膜厚方向の熱伝導性に優れる。この観点から、フィラー(S)の全フィラーに占める個数割合は40%超であり、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることが更に好ましい。
一方、フィラー(S)の全フィラーに占める個数割合が100%であると(つまり、全フィラーがフィラー(S)であると)、高分子膜の面方向の熱伝導性が低下し、面方向に温度ムラが発生することがある。この観点から、フィラー(S)の全フィラーに占める個数割合は100%未満であり、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
【0020】
全フィラーのLf/Tmの平均値は、膜厚方向の熱伝導性に優れ且つ面方向の温度ムラを抑制する観点から、0.01以上0.99以下が好ましく、0.03以上0.98以下がより好ましく、0.05以上0.97以下が更に好ましい。
【0021】
フィラー(S)のアスペクト比の平均値は、膜厚方向の熱伝導性に優れる観点から、15以上500以下が好ましく、20以上450以下がより好ましく、25以上400以下が更に好ましい。
【0022】
フィラー(S)の角度θの平均値は、膜厚方向の熱伝導性に優れる観点から、10度以上80度未満が好ましく、15度以上78度以下がより好ましく、20度以上75度以下が更に好ましい。
【0023】
フィラー(S)の体積の平均値は、膜厚方向の熱伝導性に優れる観点から、0.1μm以上500μm以下が好ましく、1μm以上490μm以下がより好ましく、1.5μm以上480μm以下が更に好ましい。
【0024】
フィラーの素材としては、熱伝導性の観点から、炭素材料、窒化アルミニウム、窒化ホウ素及び炭化ケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。フィラーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
フィラーの実施形態の一例として、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素繊維が挙げられる。
【0026】
フィラーの実施形態の一例として、窒化アルミニウム、窒化ホウ素及び炭化ケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種のセラミックス繊維又はセラミックス粒子が挙げられる。
【0027】
フィラーの実施形態の一例として、アルミナ、べーマイト(アルミナ1水和物)、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化バリウム等の金属酸化物粒子が挙げられる。
【0028】
フィラーの形状は、粒子状、繊維状、板状、フレーク状などのいずれでもよい。
フィラーの形状は、フィラー1個あたりの熱伝導路が比較的長い観点から、繊維状フィラーが好ましい。繊維状フィラーの平均長は、例えば、5μm以上100μm以下である。
【0029】
本開示の高分子膜は、樹脂及びゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子を含む。高分子として、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、サーモトロピック液晶ポリマー、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム等が挙げられる。高分子は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。高分子膜の耐熱性の観点から、ポリイミド樹脂又はシリコーンゴムが好ましい。
【0030】
高分子膜に含まれる高分子とフィラー全体の質量比は、柔軟性、耐久性、熱伝導性などのバランスの観点から、40:60~95:5であることが好ましく、50:50~90:10であることがより好ましく、60:40~85:15であることが更に好ましい。
【0031】
本開示の高分子膜の平均厚は、用途に応じて設定してよく、例えば、10μm以上1000μm以下、15μm以上800μm以下、20μm以上500μm以下である。
【0032】
本開示の高分子膜は、平膜でもよく、管状膜でもよい。本開示の高分子膜の用途として、熱吸収及び熱放出を目的として電子機器に設置されるシート、画像形成装置の管状定着部材などが挙げられる。
【0033】
本開示の高分子膜の製造方法として、例えば、下記の工程(1)~工程(3)を順次行う製造方法が挙げられる。
【0034】
工程(1):高分子とフィラーとを混合して、塗布液を調製する。必要に応じて、溶媒又は分散媒も混合する。
工程(2):塗布液を基体上に塗布し、乾燥して塗膜を形成する。
工程(3):塗膜を焼成し、高分子膜を得る。
【0035】
工程(2)における基体を円筒状金型にすることで、管状の高分子膜を製造することができる。
【0036】
高分子膜の膜厚方向に向かって配置されているフィラー(S)の個数割合を40%超に制御する方法として、例えば、下記の方法が挙げられる。
工程(1)において高分子とフィラーとを混合する際に、フィラーが寸断されないように攪拌条件を比較的穏やかにする。
工程(1)において調製する塗布液の粘度を比較的高くする。
工程(2)において基体に塗布液を塗布する際、ブレード圧を比較的低くする。
【0037】
<管状定着部材>
本開示の管状定着部材は、本開示の高分子膜を備える。
本開示の管状定着部材は、本開示の高分子膜のみからなる部材であってもよく、本開示の高分子膜と他の膜とが積層した部材であってもよく、本開示の高分子膜を複数積層した部材であってもよい。本開示の高分子膜を複数積層する場合、複数の高分子膜どうしは成分及び/又は組成において同じでもよく異なっていてもよい。
【0038】
管状定着部材が備える高分子膜の平均厚は、耐久性と熱伝導性との観点から、20μm以上300μm以下が好ましく、30μm以上250μm以下がより好ましく、40μm以上200μm以下が更に好ましい。
【0039】
管状定着部材が備える高分子膜の平均厚は、管状定着部材の軸方向に均等に10か所および周方向に90°刻みの合計40か所において、渦電流膜厚計で層厚を測定し、算術平均した値である。
【0040】
本開示の管状定着部材は、本開示の高分子膜の外周側に、外周面となる離型層を有していてもよい。
離型層は、耐熱性を有する離型材料を含有することが望ましい。耐熱性を有する離型材料としては、例えば、フッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレン・テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
【0041】
離型層には、各種の添加剤が含有されていてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤(炭酸カルシウム等)、機能性充填剤(アルミナ等)、軟化剤(パラフィン等)、加工助剤(ステアリン酸等)、老化防止剤(アミン等)、架橋剤等が挙げられる。
【0042】
離型層の平均厚は、5μm以上30μm以下が好ましく、10μm以上25μm以下がより好ましく、15μm以上20μm以下が更に好ましい。
【0043】
本開示の管状定着部材の実施形態の一例として、基材層と弾性層と離型層とをこの順に積層し、基材層及び弾性層の少なくとも一方が本開示の高分子膜である形態が挙げられる。
上記の実施形態の好ましい形態として、基材層が樹脂を含有する本開示の高分子膜である、及び/又は、弾性層がゴムを含有する本開示の高分子膜である形態が挙げられる。
【0044】
基材層の平均厚は、耐久性と熱伝導性の観点から、20μm以上200μm以下が好ましく、30μm以上150μm以下がより好ましく、40μm以上100μm以下が更に好ましい。
【0045】
弾性層の平均厚は、耐久性と熱伝導性の観点から、30μm以上300μm以下が好ましく、50μm以上250μm以下がより好ましく、80μm以上200μm以下が更に好ましい。
【0046】
本開示の管状定着部材の形状として、例えば、円筒状、ベルト状が挙げられる。
本開示の管状定着部材は、定着ベルトであってもよいし、定着ロールであってもよい。
【0047】
<定着装置>
本開示の定着装置は、第1回転体と、第1回転体の外面に接触して配置される第2回転体とを備え、トナー像が表面に形成された記録媒体を第1回転体と第2回転体との接触部に通してトナー像を記録媒体に定着する。第1回転体及び第2回転体の少なくとも一方が記録媒体に熱を印加する回転体であって、本開示の管状定着部材である。
【0048】
本開示の定着装置の実施形態例として、第1実施形態及び第2実施形態を挙げる。
第1実施形態に係る定着装置は、加熱ロールと加圧ベルトとを備え、少なくとも加熱ロールが本開示の管状定着部材である。
第2実施形態に係る定着装置は、加熱ベルトと加圧ロールとを備え、少なくとも加熱ベルトが本開示の管状定着部材である。
【0049】
[第1実施形態]
図2は、第1実施形態に係る定着装置60を示す概略図である。
定着装置60は、加熱ロール61(第1回転体の一例)と、加圧ベルト62(第2回転体の一例)とを備える。
【0050】
加熱ロール61の内部には、ハロゲンランプ66(加熱手段の一例)が配置されている。加熱ロール61の表面には、感温素子69が接触して配置されている。感温素子69による温度計測値に基づいて、ハロゲンランプ66の点灯が制御され、加熱ロール61の表面温度が目的とする設定温度(例えば150℃)に維持される。
【0051】
加圧ベルト62は、内部に配置された押圧パッド64とベルト走行ガイド63とによって回転自在に支持されている。
【0052】
押圧パッド64は、加圧ベルト62を加熱ロール61に押圧している。加圧ベルト62が押圧パッド64により加熱ロール61に対して押圧され、挟込領域N(ニップ部)が形成されている。
【0053】
押圧パッド64は、挟込部材64aと挟込部材64bとを備える。挟込部材64aは、幅の広い挟込領域Nを確保するために、挟込領域Nの入口側に配置されている。挟込部材64bは、加熱ロール61に歪みを与え記録媒体の剥離を容易にするために、挟込領域Nの出口側に配置されている。
【0054】
押圧パッド64と加圧ベルト62との間には、加圧ベルト62の内周面と押圧パッド64との摺動抵抗を小さくするために、シート状の摺動部材68が配置されている。押圧パッド64と摺動部材68とは、金属製の保持部材65に保持されている。保持部材65にベルト走行ガイド63が取り付けられている。ベルト走行ガイド63には、加圧ベルト62の内周面に潤滑剤(オイル)を供給する手段である潤滑剤供給装置67が取り付けられている。
【0055】
剥離部材70は、記録媒体を定着装置60から剥離する補助手段であり、挟込領域Nの下流側に配置されている。剥離部材70は、剥離爪71と保持部材72とを備える。剥離爪71は、加熱ロール61と近接する位置に保持部材72によって保持されている。
【0056】
加熱ロール61は、駆動モータ(不図示)によって回転駆動する。加熱ロール61は駆動モータにより矢印S方向に回転し、この回転に従動して加圧ベルト62は矢印R方向に回転する。未定着のトナー像を有する紙K(記録媒体の一例)は、ガイド56に導かれて挟込領域Nに搬送され、挟込領域Nを通過する際に、紙K上のトナー像が圧力と熱とによって定着する。
【0057】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係る定着装置定着装置80を示す概略図である。
定着装置80は、加熱ベルト84(第1回転体の一例)を備える定着ベルトモジュール86と、加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)に押圧して配置された加圧ロール88(第2回転体の一例)とを備える。
【0058】
加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)と加圧ロール88との接触部には挟込領域N(ニップ部)が形成されている。
【0059】
定着ベルトモジュール86は、加熱ベルト84と、加熱押圧ロール89と、支持ロール90と、支持ロール92と、姿勢矯正ロール94と、支持ロール98とを備える。加熱ベルト84は、加熱押圧ロール89と支持ロール90とに巻き掛けられている。加熱押圧ロール89は、駆動モータ(不図示)によって回転駆動すると共に、加熱ベルト84をその内周面から加圧ロール88側へ押し付ける。支持ロール92は、加熱ベルト84の外側に配置されており、加熱ベルト84の周回経路を規定する。姿勢矯正ロール94は、支持ロール90から加熱押圧ロール89までの加熱ベルト84の姿勢を矯正し、加熱ベルト84の蛇行を抑制する。支持ロール98は、挟込領域Nの下流側において加熱ベルト84に内周面から張力を付与する。
【0060】
加熱ベルト84と加熱押圧ロール89との間には、加熱ベルト84の内周面と加熱押圧ロール89との摺動抵抗を小さくするために、シート状の摺動部材82が配置されている。摺動部材82は、その両端が支持部材96により支持された状態で配置されている。
【0061】
加熱押圧ロール89の内部には、ハロゲンヒータ89A(加熱手段の一例)が配置されており、加熱ベルト84を内周面側から加熱する。
支持ロール90の内部には、ハロゲンヒータ90A(加熱手段の一例)が配置されており、加熱ベルト84を内周面側から加熱する。
支持ロール92の内部には、ハロゲンヒータ92A(加熱手段の一例)が配置されており、加熱ベルト84を外周面側から加熱する。
【0062】
加圧ロール88は、回転自在に支持されると共に、付勢手段(不図示)によって加熱ベルト84が加熱押圧ロール89に巻き回された部位に押圧されて設けられている。加熱押圧ロール89の回転駆動によって加熱ベルト84が矢印S方向へ回転移動し、この回転移動に従動して加圧ロール88が矢印R方向に回転移動する。
【0063】
未定着のトナー像を有する紙K(記録媒体の一例)は、矢印P方向に搬送され、定着装置80の挟込領域Nに導かれる。紙Kが挟込領域Nを通過する際に、紙K上のトナー像が圧力と熱とによって定着する。
【0064】
<画像形成装置>
本開示の画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、トナーを含む現像剤により、像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、トナー像を記録媒体に定着する、本開示の定着装置と、を備える。定着装置は、画像形成装置に着脱可能なカートリッジでもよい。
【0065】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置100の構成を示す概略図である。画像形成装置100は、先述の第1実施形態に係る定着装置60を備える。画像形成装置100は、定着装置60に替えて、先述の第2実施形態に係る定着装置80を備えてもよい。
【0066】
画像形成装置100は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置である。画像形成装置100は、電子写真方式により各色のトナー像が形成される画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各色のトナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)する一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である紙Kに一括転写(二次転写)する二次転写部20と、二次転写された画像を紙K上に定着させる定着装置60と、各装置(各部)の動作を制御する制御部40と、を備える。
【0067】
画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、1Y(イエロー用ユニット)、1M(マゼンタ用ユニット)、1C(シアン用ユニット)、1K(ブラック用ユニット)の順に、略直線状に配置されている。
画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kはそれぞれ、感光体11(像保持体の一例)を備える。感光体11は、矢印Aの方向に回転する。
【0068】
感光体11の周囲には、帯電器12(帯電装置の一例)と、レーザー露光器13(静電潜像形成装置の一例)と、現像器14(現像装置の一例)と、一次転写ロール16と、感光体クリーナ17とが、感光体11の回転方向に沿って順次配設されている。
【0069】
帯電器12は、感光体11の表面を帯電させる。
レーザー露光器13は、露光ビームBmを発して、感光体11上に静電潜像を形成する。
現像器14は、各色のトナーを収容しており、感光体11上の静電潜像をトナーにより可視像化する。
一次転写ロール16は、感光体11上に形成されたトナー像を、一次転写部10において、中間転写ベルト15に転写する。
感光体クリーナ17は、感光体11上の残留トナーを除去する。
【0070】
中間転写ベルト15は、ポリイミド又はポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を添加した材料からなるベルトである。中間転写ベルト15は、体積抵抗率が例えば1×10Ω・cm以上1×1014Ω・cm以下であり、厚さが例えば0.1mmである。
【0071】
中間転写ベルト15は、駆動ロール31、支持ロール32、張力付与ロール33、背面ロール25、及びクリーニング背面ロール34によって支持され、駆動ロール31の回転に従って矢印Bの方向に循環駆動(回転)される。
駆動ロール31は、定速性に優れたモータ(不図示)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる。
支持ロール32は、4個の感光体11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を、駆動ロール31と共に支持する。
張力付与ロール33は、中間転写ベルト15に一定の張力を与えると共に、中間転写ベルト15の蛇行を抑制する補正ロールとして機能する。
背面ロール25は、二次転写部20に設けられ、クリーニング背面ロール34は、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられる。
【0072】
一次転写ロール16は、中間転写ベルト15を挟んで感光体11に圧接配置されて、一次転写部10を形成する。
一次転写ロール16には、トナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同じ。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加される。これにより、各感光体11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上に重畳されたトナー像が形成される。
一次転写ロール16は、シャフト(例えば鉄、SUS等の金属の円柱棒)と、シャフトの周囲に固着した弾性層(例えば、カーボンブラック等の導電剤を配合したブレンドゴムのスポンジ層)とで構成された円筒ロールである。一次転写ロール16は、体積抵抗率が例えば1×107.5Ω・cm以上1×108.5Ω・cm以下である。
【0073】
二次転写ロール22は、中間転写ベルト15を挟んで背面ロール25に圧接配置されて、二次転写部20を形成する。
二次転写ロール22は、背面ロール25との間に二次転写バイアスを形成し、二次転写部20に搬送される紙K(記録媒体)上にトナー像を二次転写する。
二次転写ロール22は、シャフト(例えば鉄、SUS等の金属の円柱棒)と、シャフトの周囲に固着した弾性層(例えば、カーボンブラック等の導電剤を配合したブレンドゴムのスポンジ層)とで構成された円筒ロールである。二次転写ロール22は、体積抵抗率が例えば1×107.5Ω・cm以上1×108.5Ω・cm以下である。
【0074】
背面ロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写ロール22との間に転写電界を形成する。
背面ロール25は、例えば、ゴム基材をカーボンを分散したブレンドゴムのチューブで被覆して構成される。背面ロール25は、表面抵抗率が例えば1×10Ω/□以上1×1010Ω/□以下であり、硬度が例えば70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同じ。)である。
背面ロール25には、金属製の給電ロール26が接触配置されている。給電ロール26は、トナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)を印加し、二次転写ロール22と背面ロール25との間に転写電界を形成させる。
【0075】
中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、中間転写ベルトクリーナ35が、中間転写ベルト15に対し接離自在に設けられている。中間転写ベルトクリーナ35は、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去する。
【0076】
画像形成ユニット1Yの上流側には、基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。基準センサ42は、各画像形成ユニットにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する。基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生し、この基準信号を認識した制御部40からの指示により、画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは画像形成を開始する。
画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。
【0077】
画像形成装置100は、紙Kを搬送する搬送手段として、用紙収容部50と、給紙ロール51と、搬送ロール52と、搬送ガイド53と、搬送ベルト55と、定着入口ガイド56とを備える。
用紙収容部50は、画像形成前の紙Kを収容する。
給紙ロール51は、用紙収容部50に収容されていた紙Kを取り出す。
搬送ロール52は、給紙ロール51により取り出された紙Kを搬送する。
搬送ガイド53は、搬送ロール52により搬送された紙Kを二次転写部20へ送り込む。
搬送ベルト55は、二次転写部20で画像が転写された紙Kを定着装置60へ搬送する。
定着入口ガイド56は、紙Kを定着装置60に導く。
【0078】
画像形成装置100による画像形成方法について説明する。
画像形成装置100では、画像読取装置(不図示)やコンピュータ(不図示)等から出力された画像データが画像処理装置(不図示)により画像処理され、画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kによって作像作業が実行される。
【0079】
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザー露光器13に出力される。
【0080】
レーザー露光器13は、入力された色材階調データに応じて、露光ビームBmを画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの各感光体11に照射する。
画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの各感光体11は、帯電器12によって表面が帯電された後、レーザー露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。各感光体11上に形成された静電潜像は、各画像形成ユニットによって各色のトナー像として現像される。
【0081】
画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの各感光体11上に形成されたトナー像は、各感光体11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。一次転写部10では、一次転写ロール16により中間転写ベルト15にトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加され、トナー像が中間転写ベルト15上に順次重ねて転写される。
【0082】
中間転写ベルト15上に一次転写されたトナー像は、中間転写ベルト15が移動することによって、二次転写部20に搬送される。
トナー像が二次転写部20に到達するタイミングに合わせ、用紙収容部50に収容されていた紙Kが、給紙ロール51、搬送ロール52及び搬送ガイド53によって搬送され、二次転写部20に供給され、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。
そして、転写電界が形成されている二次転写部20において、中間転写ベルト15上のトナー像が、紙K上に静電転写(二次転写)される。
【0083】
トナー像が静電転写された紙Kは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離され、搬送ベルト55によって定着装置60まで搬送される。
定着装置60に搬送された紙Kは、定着装置60によって加熱及び加圧され、未定着トナー像が定着する。
以上の工程を経て、画像形成装置100によって記録媒体上に画像が形成される。
【実施例0084】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。
以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
以下の説明において、合成、処理、製造などは、特に断りのない限り、室温(25℃±3℃)で行った。
【0085】
<高分子膜の製造>
[実施例1]
ポリアミック酸溶液(TX-HMM、ユニチカ株式会社)とカーボンナノチューブとを混合し、3本ロールミルで練りまぜ、塗布液(1)を調製した。ポリアミック酸溶液が硬化したときの固形分とカーボンナノチューブの質量比が85:15になる量で混合した。ポリアミック酸溶液とカーボンナノチューブとを練りまぜる際にロールミル間の距離とロールミルの回転速度とを調整することで、カーボンナノチューブの分散状態を制御した。
【0086】
アルミニウム製の円筒状金型(直径30mm)の外周面上に塗布液(1)を塗布し、温度100℃で80分間乾燥した。塗布液(1)の塗布量は、高分子膜の膜厚が表1に示す厚さになるように調整した。次いで、塗膜を有する円筒状金型を加熱炉に入れ、温度380℃で40分間加熱し、高分子膜を焼成した。高分子膜の下の円筒状金型を引き抜き、管状の高分子膜を得た。
【0087】
[実施例2~9、比較例1、比較例3]
実施例1と同様にして、ただし、フィラーの種類及び/又は長さを表1に記載のとおりに変更して、管状の高分子膜を製造した。ポリアミック酸溶液とフィラーとを練りまぜる際にロールミル間の距離とロールミルの回転速度とを調整することで、フィラーの分散状態を制御した。
【0088】
[実施例10]
液状シリコーンゴム(2液型、X-34-2826-A/B、信越化学工業株式会社)とカーボンナノチューブとを混合し、3本ロールミルで練りまぜ、塗布液(10)を調製した。液状シリコーンゴムが硬化したときの固形分とカーボンナノチューブの質量比が85:15になる量で混合した。液状シリコーンゴムとカーボンナノチューブとを練りまぜる際にロールミル間の距離とロールミルの回転速度とを調整することで、カーボンナノチューブの分散状態を制御した。
【0089】
アルミニウム製の円筒状金型(直径30mm)の外周面上に塗布液(10)を塗布し、温度115℃で15分間乾燥した。塗布液(10)の塗布量は、高分子膜の膜厚が表1に示す厚さになるように調整した。次いで、塗膜を有する円筒状金型を加熱炉に入れ、温度200℃で2時間加熱し、高分子膜を焼成した。高分子膜の下の円筒状金型を引き抜き、管状の高分子膜を得た。
【0090】
[実施例11~13、比較例2]
実施例10と同様にして、ただし、フィラーの種類及び/又は長さを表1に記載のとおりに変更して、管状の高分子膜を製造した。液状シリコーンゴムとカーボンナノチューブとを練りまぜる際にロールミル間の距離とロールミルの回転速度とを調整することで、カーボンナノチューブの分散状態を制御した。
【0091】
<高分子膜の断面解析>
管状高分子膜の軸方向の中央部から、軸方向、周方向及び膜厚方向を3辺とする直方体であって周方向1mmで軸方向に長い直方体を切り出し、エポキシ樹脂で包埋した。包埋物にミクロトームで断面加工を施し、膜厚方向の断面が見えるブロック断面を形成した。ブロック断面を形成した試料をFIB-SEM装置(FIB-SEM Helios NanoLab 600i、米国FEI Company)の試料台に固定し、蒸着処理を施した。FIB-SEM装置にてブロック断面のFIB加工とSEM観察を繰り返し、2次元スタッキング画像を得た。少なくとも30個のフィラーを観察するまでFIB加工とSEM観察を繰り返した。SEM観察は、高分子膜中に分散するフィラーが観察可能な拡大倍率で観察した。
2次元スタッキング画像を3次元画像解析ソフトウェア(Avizo-Fire、VSG社)に取り込ませ、3次元画像を構成した。構成した3次元画像から、個々のフィラーのLf、Tm、角度θ、アスペクト比及び体積の値を取得した。Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの個数割合を求めた。Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーについて、角度θ、アスペクト比及び体積の平均値を算出した。これらの値を表1に示す。
【0092】
<高分子膜の熱伝導率>
管状高分子膜を軸方向2mm且つ周方向2mmの正方形に切り出し、これを測定用試料とした。熱拡散率測定装置ai-phase(株式会社アイフェイズ)を用いて、室温(25℃±3℃)で熱拡散率を測定し、熱拡散率に比熱と密度を乗算して熱伝導率(W/m・K)を算出した。算出した熱伝導率を下記のとおり分類した。
A+:1.3W/m・K以上
A :0.8W/m・K以上、1.3W/m・K未満
B :0.5W/m・K以上、0.8W/m・K未満
C :0.5W/m・K未満
【0093】
表1中の略語は下記の意味である。
・PI:ポリイミド樹脂
・Siゴム:シリコーンゴム
・CNT:カーボンナノチューブ
・AlN:窒化アルミニウム
【0094】
【表1】
【0095】
本開示の高分子膜、管状定着部材、定着装置及び画像形成装置には下記の態様が含まれる。
(((1)))
樹脂及びゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子と、前記高分子に分散したフィラーと、を含有する高分子膜であり、
前記高分子膜をFIB-SEMで3次元解析し、前記高分子膜の膜厚をTmとし、前記フィラーの前記高分子膜の膜厚方向の長さをLfとしたとき、Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの全フィラーに占める個数割合が40%超100%未満である、
高分子膜。
(((2)))
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーのアスペクト比の平均値が15以上500以下である、(((1)))に記載の高分子膜。
(((3)))
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーのアスペクト比の平均値が25以上400以下である、(((1)))に記載の高分子膜。
(((4)))
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの長軸と前記高分子膜の面方向とがなす角度θの平均値が10度以上80度未満である、(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の高分子膜。
(((5)))
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの長軸と前記高分子膜の面方向とがなす角度θの平均値が15度以上75度以下である、(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の高分子膜。
(((6)))
前記Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの体積の平均値が0.1μm以上500μm以下である、(((1)))~(((5)))のいずれか1つに記載の高分子膜。
(((7)))
前記高分子がポリイミド樹脂又はシリコーンゴムを含む、(((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の高分子膜。
(((8)))
前記高分子膜に含まれる前記高分子と前記フィラー全体の質量比が40:60~95:5である、(((1)))~(((7)))のいずれか1つに記載の高分子膜。
(((9)))
(((1)))~(((8)))のいずれか1つに記載の高分子膜を備える、管状定着部材。
(((10)))
第1回転体と、前記第1回転体の外面に接触して配置される第2回転体と、を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体の少なくとも一方が、(((9)))に記載の管状定着部材であり、
トナー像が表面に形成された記録媒体を前記第1回転体と前記第2回転体との接触部に通して前記トナー像を定着する、
定着装置。
(((11)))
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する、(((10)))に記載の定着装置と、を備える、
画像形成装置。
【0096】
(((1)))、(((2)))、(((3)))、(((4)))、(((5)))、(((6)))、(((7)))又は(((8)))によれば、Lf/Tmが0.01以上1.0未満であるフィラーの全フィラーに占める個数割合が40%以下である場合に比べて、膜厚方向の熱伝導性に優れる高分子膜が提供される。
(((9)))によれば、膜厚方向の熱伝導性に優れる管状定着部材が提供される。
(((10)))によれば、膜厚方向の熱伝導性に優れる管状定着部材を備えた定着装置が提供される。
(((11)))によれば、膜厚方向の熱伝導性に優れる管状定着部材を備えた定着装置を備えた画像形成装置が提供される。
【符号の説明】
【0097】
60 定着装置
61 加熱ロール
62 加圧ベルト
63 ベルト走行ガイド
64 押圧パッド
64a 挟込部材
64b 挟込部材
65 保持部材
66 ハロゲンランプ
67 潤滑剤供給装置
68 摺動部材
69 感温素子
70 剥離部材
71 剥離爪
72 保持部材
【0098】
80 定着装置
82 摺動部材
84 加熱ベルト
86 定着ベルトモジュール
88 加圧ロール
89 加熱押圧ロール
89A ハロゲンヒータ
90 支持ロール
90A ハロゲンヒータ
92 支持ロール
92A ハロゲンヒータ
94 姿勢矯正ロール
96 支持部材
98 支持ロール
【0099】
100 画像形成装置
1Y、1M、1C、1K 画像形成ユニット
11 感光体(像保持体の一例)
12 帯電器(帯電装置の一例)
13 レーザー露光器(静電潜像形成装置の一例)
14 現像器(現像装置の一例)
15 中間転写ベルト
16 一次転写ロール(転写装置の一例)
22 二次転写ロール(転写装置の一例)
K 紙(記録媒体の一例)
図1
図2
図3
図4