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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154766
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】長尺部材の保持具
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/12 20060101AFI20241024BHJP
   F16L 3/22 20060101ALI20241024BHJP
   F16L 3/223 20060101ALI20241024BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20241024BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F16L3/12 Z
F16L3/22 Z
F16L3/223
F16B2/22 C
F16B7/04 302B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068798
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】井上 正俊
(72)【発明者】
【氏名】其阿彌 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】末冨 喬大
【テーマコード(参考)】
3H023
3J022
3J039
【Fターム(参考)】
3H023AA04
3H023AA05
3H023AB01
3H023AC23
3H023AC35
3H023AD02
3H023AD13
3J022DA15
3J022EA32
3J022EB14
3J022EC14
3J022EC22
3J022FB04
3J022FB08
3J022FB12
3J022FB22
3J022HA05
3J022HB02
3J022HB06
3J039AA05
3J039BB01
3J039FA01
3J039MA01
(57)【要約】
【課題】高温雰囲気下でも長尺部材に対する保持力を低下しにくい、長尺部材の保持具を提供する。
【解決手段】この長尺部材の保持具10は保持部21を有し、該保持部21は底部30と第1側壁31と第2側壁33と開口部35とを有し、第1側壁31内面から保持爪40が延出し、第2側壁33内面からは、第1側壁31に向かって突出部50が突出し、第2側壁33内面であって、突出部50よりも底部30側の位置からは圧接部57が突出しており、突出部50は、第2側壁33内面からの突出量が圧接部57の突出量よりも大きい頂部51を有しており、頂部51は、保持部21に長尺部材が保持された状態で、長尺部材外周から開口部35側に離間するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部材を保持する保持部を有する長尺部材の保持具であって、
前記保持部は、底部と、該底部の一側部から立設した第1側壁と、前記底部の他側部から立設した第2側壁と、前記底部の反対側に位置する開口部とを有しており、
前記第1側壁の内面から保持爪が延出しており、その先端部が、前記保持部に保持された前記長尺部材の外周に当接可能とされており、
前記第2側壁の内面からは、前記第1側壁に向かって突出部が突出しており、
前記第2側壁の内面であって、前記突出部よりも前記底部側の位置からは、前記長尺部材の外周に圧接する圧接部が突出しており、
前記突出部は、前記第2側壁の内面からの突出量が、前記圧接部の、前記第2側壁の内面からの突出量よりも大きい、頂部を有しており、
前記頂部と前記保持爪の先端との間隔が前記長尺部材の外径よりも小さくされており、
前記頂部は、前記保持部に前記長尺部材が保持された状態で、前記長尺部材の外周から前記開口部側に離間するように構成されていることを特徴とする長尺部材の保持具。
【請求項2】
前記圧接部は、前記第2側壁に沿って延び、前記突出部に連設するリブ状をなしている請求項1記載の長尺部材の保持具。
【請求項3】
前記突出部は、前記頂部から、前記底部側に向けて、前記第2側壁の内面からの突出量が次第に小さくなる斜面を有している請求項1又は2記載の長尺部材の保持具。
【請求項4】
前記突出部の、前記長尺部材の軸方向に沿った厚さは、
前記圧接部の、前記長尺部材の軸方向に沿った厚さよりも、大きくなっている請求項1又は2記載の長尺部材の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状、管状又は棒状の長尺部材を保持するための、長尺部材の保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車には、パイプや、チューブ、ワイヤ、ケーブル、ハーネス等が用いられているが、これらは絡まったり、他部材と干渉したり、破損したり等の不都合が生じることがある。そのため、通常は何らかの保持具に収容保持されて、該保持具を介して車内の所定位置に配設されることが多い。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、車両の被取付部に取り付けられ、一対の側壁と底壁とを備えたクランプ部と、一方の側壁に設けられた円弧状のパイプ支持部と、他方の側壁からパイプ支持部へ向かって延びて、パイプ支持部へ支持されるパイプに撓み変形され該パイプをパイプ支持部側へ付勢する付勢手段と、パイプ支持部から他方の側壁側へ突出したリブと有する、パイプクランプが記載されている。
【0004】
上記パイプクランプでは、クランプ部でパイプを保持した状態では、パイプ支持部から突出したリブが、パイプに食い込むようになっている(特許文献1の図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-105673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のパイプクランプでは、上述したように、クランプ部でパイプを保持した状態で、リブがパイプに食い込んでいるが、この状態をリブ側から見ると、リブは、パイプから押圧力を受けている、と言える。
【0007】
そのため、パイプが高温雰囲気下で長期間に亘って晒されて、パイプからの熱がリブに長時間作用すると、合成樹脂よりなるリブが熱変形して、初期形状が維持されず、パイプに対する保持力が低下するおそれがあった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、高温雰囲気下であっても、長尺部材に対する保持力を低下しにくくすることができる、長尺部材の保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、長尺部材を保持する保持部を有する長尺部材の保持具であって、前記保持部は、底部と、該底部の一側部から立設した第1側壁と、前記底部の他側部から立設した第2側壁と、前記底部の反対側に位置する開口部とを有しており、前記第1側壁の内面から保持爪が延出しており、その先端部が、前記保持部に保持された前記長尺部材の外周に当接可能とされており、前記第2側壁の内面からは、前記第1側壁に向かって突出部が突出しており、前記第2側壁の内面であって、前記突出部よりも前記底部側の位置からは、前記長尺部材の外周に圧接する圧接部が突出しており、前記突出部は、前記第2側壁の内面からの突出量が、前記圧接部の、前記第2側壁の内面からの突出量よりも大きい、頂部を有しており、前記頂部と前記保持爪の先端との間隔が前記長尺部材の外径よりも小さくされており、前記頂部は、前記保持部に前記長尺部材が保持された状態で、前記長尺部材の外周から前記開口部側に離間するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、保持部に長尺部材を収容すると、保持爪の先端部が長尺部材の外周に当接可能とされ、圧接部が長尺部材の外周に圧接するので、長尺部材を保持することができると共に、長尺部材に引き抜き力が作用した場合は、突出部の頂部が長尺部材の外周に引っ掛かって、長尺部材が突出部の頂部を通り超えない限りは、保持部から長尺部材を引き抜けないため、長尺部材を抜け止めすることができる。
【0011】
そして、この長尺部材の保持具においては、保持部に長尺部材が抜け止め保持された状態では、突出部の頂部は、長尺部材の外周から開口部側に離間しているので、高温雰囲気下となって、圧接部が熱変形したとしても、突出部の頂部を熱変形しにくくすることができ、その結果、高温雰囲気下における、保持部による長尺部材に対する保持力を低下しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る長尺部材の保持具の、一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】同保持具の組付け斜視図である。
図3】同保持具を構成する保持部材の、要部拡大斜視図である。
図4】同保持具の保持部材に、長尺部材を保持する前の状態を示す、拡大説明図である。
図5】同保持具の保持部材に、長尺部材を保持する途中の状態を示す、拡大説明図である。
図6】同保持具の保持部材で長尺部材を保持した場合の、拡大説明図である。
図7図6の状態から、長尺部材に引き抜き力が作用した場合の、拡大説明図である。
図8】実施例と比較例における、保持部材からの長尺部材の引き抜き量と、引き抜き荷重との関係を示す、グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(長尺部材の保持具の一実施形態)
以下、図1~7を参照して、本発明に係る長尺部材の保持具の一実施形態について説明する。
【0014】
図6に示すように、この実施形態の長尺部材の保持具10(以下、単に「保持具10」ともいう)は、長尺部材1を保持するものである。この実施形態における保持具10は、図示しない被固定部材(車体パネルや車体フレーム等)から突出した軸部材(スタッドボルト等)に固定されることで、被固定部材に長尺部材1を保持するものとなっている。
【0015】
そして、図1に示すように、この保持具10は、保持部21及び固定部23を有する保持部材20と、枠状部61を有する防振部材60と、挿入部71を有する固定部材70とから主として構成されている。
【0016】
前記長尺部材1は、例えば、パイプや、チューブ、ホース、ロッド、ワイヤ、ケーブル、ハーネス、コード等の、線状、管状又は棒状の部材となっている。また、この実施形態における長尺部材1は、芯材3と、その外周に配置された軟質樹脂等からなる外層5とかなる。なお、以下の説明において、長尺部材1の外周とは、特に断りのない限り、長尺部材1を構成する外層5の外周を意味する。
【0017】
なお、長尺部材1が延びる方向を軸方向とし、これを軸方向Xとする。なお、保持具10を構成する各部材における「軸方向」も、長尺部材1の軸方向Xに沿った方向を意味する。更に、長尺部材1の軸方向Xに直交する方向を、幅方向Yとして説明する。
【0018】
そして、保持部材20の固定部23の内側に、防振部材60の枠状部61が挿入され、更に枠状部61の内側に、固定部材70の挿入部71が挿入されることで、図2に示すように、保持部材20、防振部材60、及び固定部材70が組付けられるようになっている。
【0019】
まず、防振部材60について説明する。
【0020】
この実施形態における防振部材60は、保持部材20の固定部23の内側に挿入される枠状部61と、該枠状部61の基端部に連設され、図示しない被固定部材上に設置される台座部63とを有しており、全部分がゴムや弾性エラストマー等の防振性能を有する弾性材料から一体形成されている。
【0021】
また、枠状部61は、軸方向Xに沿って延び、且つ、互いに平行に対向配置された一対の壁部61a,61aと、これらの一対の壁部61a,61aに対して直交するように対向配置された一対の壁部61b,61bとを有しており、略四角枠状をなしている。更に、各壁部61bの先端外面からは、複数の係合突部65が突設されている。
【0022】
そして、保持部材20の固定部23の内側に防振部材60の枠状部61が挿入されると、図2に示すように、固定部23の壁部24,25の基端部に台座部63が係合すると共に、固定部23の壁部25の先端面に複数の係合突部65が係合することで、保持部材20に防振部材60が抜け止め保持されるようになっている。
【0023】
次に、固定部材70について説明する。
【0024】
この固定部材70は、防振部材60の枠状部61の内側に挿入されると共に、図示しない軸部材を受け入れる挿入部71と、挿入部71の先端側から張り出すフランジ部73とを有している。
【0025】
挿入部71は、所定長さで延びる長板状をなし、且つ、互いに平行に対向配置された一対の壁部71a,71aを有している。
【0026】
また、各壁部71aの延出方向先端部の外面からは、突起状をなした係合部75がそれぞれ突設されている。そして、防振部材60の枠状部61の内側に、固定部材70の挿入部71が挿入されると、上記係合部75が、防振部材60に設けた図示しない被係合部に係合して、防振部材60に固定部材70が抜け止め保持されるようになっている。
【0027】
更に、挿入部71の内側には、複数の係止部77が設けられている。そして、挿入部71の内側に図示しない軸部材が挿入されると、複数の係止部77が軸部材に係止する。その結果、軸部材を介して、被固定部材に保持具10全体が固定されるようになっている。
【0028】
次に、保持部材20について説明する。
【0029】
この実施形態における保持部材20は、長尺部材1を保持する一対の保持部21,21と、それらの間に配置され、防振部材60や固定部材70を抜け止め保持して、被固定部材に固定される固定部23とを有している。
【0030】
固定部23は、軸方向Xに沿って延び、且つ、互いに平行に対向配置された一対の壁部24,24と、これらの一対の壁部24,24に対して直交するように対向配置された一対の壁部25,25とを有しており、略四角枠状をなしている。
【0031】
また、各壁部24,25の内面からは、突条をなした複数のリブ27が、固定部23の内側への、枠状部61の挿入方向(以下、単に「枠状部挿入方向」ともいう)に沿って延設されている。各リブ27は、固定部23の内側に挿入される防振部材60の枠状部61の外面に当接して、保持部21等からの振動を防振部材60側へと伝達する。
【0032】
図1図4等に示すように、各保持部21は、底部30と、該底部30の一側部から立設した第1側壁31と、底部30の他側部から立設した第2側壁33と、底部30の反対側に位置する開口部35とを有している。
【0033】
また、第1側壁31の内面から保持爪40が所定方向に延出しており、その先端部41が、保持部21に保持された長尺部材1の外周に当接可能とされている(図6)。なお、保持爪40が延びる方向を、「延出方向E」とする。
【0034】
更に図4に示すように、第2側壁33の内面からは、第1側壁31に向かって突出部50が突出している。また、第2側壁33の内面であって、突出部50よりも底部30側の位置からは、長尺部材1の外周に圧接する圧接部57が突出している。
【0035】
図1図4等に示すように、この実施形態における底部30は、固定部23を構成する壁部24の基端部側に配置された、所定幅でもって幅方向Yに沿って延びている。
【0036】
この底部30の幅方向Yの一側部、すなわち、固定部23の壁部24から離間した側部から、第1側壁31が立設している。また、底部30の幅方向Yの他側部、すなわち、固定部23の壁部24に近接した側部から、第2側壁33が立設しており、該第2側壁33は固定部23の壁部24の外面に連結されている。
【0037】
そして、底部30と、第1側壁31と、第2側壁33とで囲まれた内側空間に、長尺部材1を収容保持可能とする収容空間34が画成されている(底部30及び一対の側壁31,33の内側に収容空間34が設けられている)。
【0038】
また、収容空間34の上方であって、底部30の反対側(底部30との対向位置)に、開口部35が形成されており、この開口部35を通過して、収容空間34内に長尺部材1が挿入されて収容されるようになっている。
【0039】
更に、収容空間34の、一対の側壁31,33の間には、軸方向Xに開口する軸方向開口36(側方開口とも言える)が形成されており、長尺部材1は、この軸方向開口36から挿出された状態で保持部21に収容保持される。
【0040】
また、図1図4に示すように、底部30の底面30a(収容空間34に向く内面)は、略円弧状をなしている。
【0041】
更に、第1側壁31の外面(収容空間34とは反対側の面)は、枠状部挿入方向に沿って、平行な平坦面状をなしている。
【0042】
一方、第1側壁31の内面(収容空間34に向く面)は、図4に示すように、底部30側に配置された底部側内面31aと、該底部側内面31aの先端から、第1側壁31の外面側に向けて延びる斜面及び円弧状面からなる段状をなした段状部31bと、該段状部31bの先端から、第1側壁31の立設方向に沿って平行に延びて開口部35に至る開口部側内面31cとを有している。
【0043】
すなわち、第1側壁31の内面であって開口部35には、段状部31bを介して、一段低くなった部分(開口部側内面31c)を有している、とも言える。
【0044】
なお、底部側内面31aは、図4に示すように保持部21を軸方向Xから見たときに、底部30の底面30aの周方向一端から、開口部35に向けて、第1側壁31を次第に拡開するように傾斜した傾斜面状をなしており、突出部50の第1斜面53に対して平行となっている。
【0045】
また、第1側壁31の、開口部側内面31cの先端部から、底部30の底面30aに向けて斜め内方に、撓み変形可能とされた保持爪40が所定長さで延びている(すなわち、保持爪40は延出方向Eに沿って延びている)。
【0046】
更に図3に示すように、この実施形態における保持爪40は、第1側壁31の軸方向Xの一端よりもやや内側に位置する箇所から、軸方向Xの他端よりもやや内側に位置する箇所に至る長さでもって延設されている(第1側壁31の軸方向Xの全域に亘って設けられていない)。
【0047】
なお、保持爪40は、上記のように、第1側壁の、一段低くなった開口部側内面31cの先端部から延出しているので、保持部21内方への撓み変形量が確保されるようになっている(図5参照)。
【0048】
また、保持爪40の延出方向の先端部41は、先端部41の手前側部分よりも、やや幅広に形成されており、その先端43は略円弧状をなしている。図6に示すように、保持爪40の先端部41の先端43が、長尺部材1の外周に当接して、長尺部材1を保持部21から抜け止め保持するようになっている。
【0049】
更に図4に示すように、突出部50の頂部51と保持爪40の先端43との間隔が、長尺部材1の外径Dよりも小さくされている。この実施形態の場合、突出部50の頂部51と、保持爪40の先端43の、頂部51に対応する箇所との間隔は、長尺部材1の外径Dよりも小さく形成されている。
【0050】
また、図4に示すように保持部21を軸方向Xから見たときに、保持爪40の先端部41は、突出部50の頂部51を通り且つ第2側壁33の立設方向に対して直交するラインL上に位置するように配置されている。この実施形態の場合、先端部41は、先端43の幅方向中心位置よりも開口部35寄りの箇所を、前記ラインLが通るように配置されている。
【0051】
一方、第2側壁33の内面(収容空間34に向く面)は、底部30側に配置され、第2側壁33の立設方向に沿って平行に延びる底部側内面33aと、該底部側内面33aの先端から、第2側壁33を次第にやや肉薄とするように傾斜して延びて開口部35に至る開口部側内面33bとを有している。
【0052】
次いで、上記の突出部50について詳述する。
【0053】
この突出部50は、第2側壁33の内面からの突出量が、圧接部57の、第2側壁33の内面からの突出量よりも大きい、頂部51を有している。すなわち、図4に示すように、突出部50の頂部51における、第2側壁33の内面からの突出量は、圧接部57の、第2側壁33の内面から最も突出した部分である、突出縁部57aの、第2側壁33の内面からの突出量よりも大きくなるように設定されている。
【0054】
また、突出部50は、上記の頂部51の他、当該頂部51から、底部30側に向けて、第2側壁33の内面からの突出量が次第に小さくなる斜面(第1斜面53)を有している。
【0055】
より具体的には、この実施形態における突出部50は、保持部21を軸方向から見たときに、底部側内面33aと開口部側内面33bとに亘る内面から、略三角形状(略山形状とも言える)をなすように、第1側壁31側の内面に向けて突出した突起形状となっている。
【0056】
また、図1~3に示すように、この実施形態における突出部50は、第2側壁33における、軸方向Xの中央部分に配置されると共に、軸方向Xに所定幅で突出する、リブ状をなしている。
【0057】
更に図3に示すように、突出部50の、長尺部材1の軸方向Xに沿った厚さ(板厚)は、圧接部57の、長尺部材1の軸方向Xに沿った厚さ(板厚)よりも、大きくなっている(厚くなっている)。
【0058】
そして、突出部50における、第2側壁33の内面から、第1側壁31の内面に向けての突出量が最も大きい部分が、頂部51をなしている。また、略三角形状をなす突出部50は、頂部51を介して一方の側面(一側面)と他方の側面(他側面)とを有している。
【0059】
上記の頂部51は、上述したように、保持爪40の先端43との間隔が、長尺部材1の外径Dよりも小さくなる突出量とされており、保持爪40の先端43と協働して、保持部21に収容された長尺部材1を抜け止め保持する部分となっている。
【0060】
すなわち、図6に示すように、保持部21に長尺部材1が収容され且つ保持された状態で、図6に示すように、長尺部材1に対して、保持部21の開口部35から引き抜かれる方向の力F(以下、単に「引き抜き力F」ともいう)が作用したときに、長尺部材1は、突出部50の頂部51を通り超えない限りは、保持部21から長尺部材1を引き抜けないため、保持部21に長尺部材1を抜け止め保持可能となっている。
【0061】
また、突出部50の、底部30側に向く一側面は、頂部51から、底部30の底面30a側に向けて、第2側壁33の内面からの突出量が次第に小さくなるテーパ面状をなした傾斜面となっており、これが第1斜面53をなしている。図4に示すように、この第1斜面53全体は、第2側壁33の底部側内面33aに位置するようになっている。
【0062】
上記の第1斜面53は、保持部21に長尺部材1が保持された状態から、図6に示すように、長尺部材1に引き抜き力Fが作用したときに、長尺部材1の外周に当接して、長尺部材1をガイドして、保持爪40の先端部41側に誘導するものとなっている。
【0063】
なお、上記の第1斜面53が、本発明における「斜面」をなしている。
【0064】
一方、突出部50の、開口部35側に向く他側面は、頂部51から、開口部35側に向けて、第2側壁33の内面からの突出量が次第に小さくなるテーパ面状をなした傾斜面となっており、これが第2斜面55をなしている。
【0065】
図4に示すように、第2斜面55の、頂部51近傍の基端部分は、第2側壁33の底部側内面33aに位置し、第2斜面55の、基端部以外の部分は、開口部側内面33bに位置するようになっている。
【0066】
上記の第2斜面55は、保持部21の開口部35から長尺部材1を挿入する際に、長尺部材1を、保持部21の収容空間34の内方側に向けてガイドすると共に、保持爪40の外側面に当接させやすくする役割をなしている。
【0067】
なお、突出部50を構成する第1斜面53及び第2斜面55は、共に同一長さで延びており、図4に示すように、突出部50は、保持部21を軸方向から見たときに、略二等辺三角形状をなしている。
【0068】
次いで、上記の圧接部57について詳述する。
【0069】
すなわち、この圧接部57は、第2側壁33の内面であって、突出部50よりも底部30側から、突出部50の頂部51よりも小さい突出量で突出すると共に、第2側壁33に沿って延びて、突出部50に連設するリブ状をなしている。
【0070】
図1~3に示すように、この実施形態における圧接部57は、第2側壁33の内面であって、突出部50の軸方向Xの中央部分に配置されており、リブ状をなした突出部50よりも薄肉とされた(すなわち、圧接部57の板厚は、突出部50の板厚よりも薄い)細長板状をなしたリブとなっている。
【0071】
また、圧接部57は、その延出方向の一端部が第1斜面53に連結されていると共に、底部30の底面30a側に向けて延びており、延出方向の他端部が、底部30の底面30aに連結されている。
【0072】
更に、圧接部57は、第2側壁33を構成する開口部側内面33bから、突出部50の頂部51よりも小さい突出量で突出しており、その突出縁部57aは、第2側壁33の開口部側内面31cに対して平行となるように延びている。すなわち、圧接部57は、突出部50の頂部51よりも低くなるように第2側壁33の内面に沿って延びている。
【0073】
また、上記の圧接部57は、図6に示すように、保持部21の収容空間34内に長尺部材1が収容され、保持爪40の先端部41の先端43が長尺部材1の外周に当接可能とされた状態で、長尺部材1の外周に圧接することで(ここでは、圧接部57の突出縁部57aが、長尺部材1の外周に食い込むようになっている)、保持部21に長尺部材1を保持するものとなっている。
【0074】
なお、圧接部57における、長尺部材1の外周に圧接するとは、圧接部57が、長尺部材1の外周に所定圧力で当接・接触(圧接)していればよく、圧接部57が長尺部材1の外周に対して圧接部57が隙間なく当接したり接触したり(いわゆるゼロタッチ)、或いは、圧接部57が長尺部材1の外周に食い込むこと(この場合、圧接部57の突出縁部57aが、長尺部材1における食い込んだ部分の表層に当接することになる)も含む概念である。
【0075】
そして、図6に示すように、突出部50の頂部51は、保持部21に長尺部材1が保持された状態で、長尺部材1の外周から開口部35側に離間するように構成されている。
【0076】
すなわち、突出部50の頂部51は、保持部21に長尺部材1が保持された状態で、長尺部材1の外周から開口部35側に離間して、長尺部材1の外周との間にクリアランスが設けられるように構成されている、とも言える。
【0077】
この実施形態の場合、図6に示すように、保持部21の収容空間34内に長尺部材1が収容されて、当該長尺部材1が保持爪40の先端部41の先端43によって抜け止め保持された状態で、圧接部57の突出縁部57aが、長尺部材1の外層5の外周に食い込むと共に、突出部50の頂部51が、長尺部材1の外層5の外周に対して、開口部35側に離間するように(クリアランスを設けるように)構成されている。
【0078】
また、この実施形態では、突出部50の第1斜面53も、長尺部材1の外層5の外周に対して、開口部35側に離間するようになっている。
【0079】
更に、長尺部材1は、その外周が、保持爪40の先端部41と、圧接部57と、第1側壁31の底部側内面31aとで、保持されるようになっている。
【0080】
この実施形態の場合、図6に示すように、長尺部材1の外層5の外周に、保持爪40の先端部41の先端43が当接すると共に、圧接部57が所定深さ食い込み、更に、第1側壁31の底部側内面31aが当接することで、長尺部材1が、保持爪40の先端部41と、圧接部57と、第1側壁31の底部側内面31aとの3か所で保持されるようになっている。
【0081】
(変形例)
保持部材は、全ての部分(保持部、固定部、底部、保持爪、突出部、圧接部等)は、周知の合成樹脂材料で一体形成されている。また、保持部材の上記各部分の形状や構造、レイアウト等は、特に限定されない。
【0082】
また、防振部材や固定部材の各部分の、形状や構造、レイアウト等は、特に限定されない。
【0083】
また、この実施形態における第1側壁31の底部側内面31aは、突出部50の第1斜面53に対して平行となっているが、第1側壁の底部側内面は、開口部側に向けて広がる形状であってもよい。
【0084】
更に、この実施形態における突出部50は、保持部を軸方向から見たときに略二等辺三角形状をなした突起状となっているが、突出部としては、例えば、保持部を軸方向から見たときに、底部側に向く一側面だけを斜面とし、開口部側に向く他側面を水平面とした略直角三角形状や、略台形形状等としたりしてもよく、頂部及び斜面を有する形状であればよい。
【0085】
また、この実施形態における突出部50の斜面(第1斜面53)は、直線状に延びるテーパ面となっているが、凹曲面状や凸曲面状等をなしてもよい。
【0086】
更に、この実施形態における突出部50及び圧接部57は、共に長尺部材の軸方向に沿って所定厚さで設けられたリブ状となっているが、突出部及び/圧接部は、第2側壁の軸方向全域に亘って形成したり、第2側壁の軸方向一端側や他端側に偏位して設けたりしてもよい。
【0087】
(作用効果)
次に、上記構成からなる保持具10の使用方法について説明する。
【0088】
まず、保持部材20の固定部23の内側に、防振部材60の枠状部61を挿入すると共に、枠状部61の内側に、固定部材70の挿入部71を挿入して、図2に示すように、保持部材20、防振部材60、及び固定部材70を組付ける。
【0089】
次に、図4の矢印に示すように、保持部21の開口部35側から、長尺部材1を挿入して、底部30側に向けて押し込んでいく。
【0090】
すると、突出部50の第2斜面55によって、長尺部材1が保持部21の収容空間34の内方側にガイドされると共に、長尺部材1が保持爪40の外側面に当接して、保持爪40が第1側壁31の内面に近接する方向に撓み変形する。
【0091】
更に長尺部材1を押し込んでいくと、図5に示すように、長尺部材1が、突出部50の頂部51に当接すると共に、保持爪40が最大限に撓み変形する。
【0092】
その後、長尺部材1が突出部50の頂部51を通過して(通り超えて)、底部30側に移動すると、保持爪40が弾性復帰して、その先端部41の先端43が、長尺部材1の外周に当接する。また、長尺部材1の外周に、第1側壁31の底部側内面31aが当接すると共に、長尺部材1の外周に、圧接部57が食い込む。その結果、長尺部材1が、保持爪40の先端部41と、圧接部57と、第1側壁31の底部側内面31aとで保持される。
【0093】
図6に示すように、上記状態では、突出部50の頂部51と、突出部50の第1斜面53とは、保持部21に長尺部材1が保持された状態で、長尺部材1の外周から開口部35側に離間するように構成されている。
【0094】
上記のようにして、保持部21に長尺部材1を保持した後、被固定部材か突出したスタッドボルト等の軸部材を、固定部23の内側に保持された固定部材70の挿入部71の内側に挿入して、複数の係止部77に係止させることで、軸部材を介して、被固定部材に保持具10全体が固定されて、図示しない被固定部材に対して長尺部材1が保持される。
【0095】
そして、図6に示すように、保持部21に長尺部材1が保持された状態から、長尺部材1に対して、開口部35から引き抜かれる方向に引き抜き力Fが作用すると、圧接部57や第1斜面53に長尺部材1の外周が当接して、長尺部材1をガイドし、保持爪40の先端部41側に誘導して、保持爪40の先端43が長尺部材1に押される。すなわち、第1斜面53によって、保持爪40の先端部41側に誘導された長尺部材1は、保持爪40の延出方向Eに沿った方向から、保持爪40の先端43を押圧する。
【0096】
その結果、保持爪40の延出方向Eに沿った方向に、長尺部材1からの押圧力F´が作用して、この押圧力F´が、保持爪40の基端部を介して、第1側壁31の開口部側内面31cに作用することになるので、図7に示すように、第1側壁31全体が、第2側壁33から離間する方向に撓み変形する。また、この状態では、長尺部材1は、突出部50の頂部51に当接する。
【0097】
その後、更に長尺部材1に引き抜き力Fが作用すると、保持爪40が長尺部材1に押し上げられて、保持爪40自体が捲り上げるようにして撓み変形すると共に、長尺部材1が突出部50の頂部51を通り超えるので、保持部21から長尺部材1が抜き出されるようになる。
【0098】
そして、この保持具10においては、開口部33から保持部21に長尺部材1を挿入して、保持部21に長尺部材1を収容した状態では、図6に示すように、保持爪40の先端部41が長尺部材1の外周に当接可能とされ、圧接部57が長尺部材1の外周に圧接するので、長尺部材1を保持することができると共に、長尺部材1に引き抜き力Fが作用した場合は、突出部50の頂部53が長尺部材1の外周に引っ掛かって、長尺部材1が突出部50の頂部53を通り超えない限りは、保持部21から長尺部材1を引き抜けないため、長尺部材1を抜け止めすることができる。
【0099】
上記のように、保持部21によって長尺部材1が抜け止め保持された状態では、図6に示すように、突出部50の頂部51は、長尺部材1の外周から開口部35側に離間しているので、高温雰囲気下となって、圧接部57が熱変形したとしても、突出部50の頂部51を熱変形しにくくすることができる。
【0100】
すなわち、長尺部材1は高温に晒されると高熱となりやすいところ、上記のように、突出部50の頂部51は長尺部材1の外周から離間しているので、長尺部材1からの熱が伝達されにくくなり、頂部51が高熱によって変形しにくくすることができるのである。
【0101】
その結果、高温雰囲気下における、保持部21による長尺部材1に対する保持力を低下しにくくすることができる。すなわち、高温雰囲気下における、保持部21による長尺部材1の保持力を、高温雰囲気下ではない常温状態における、保持部21による長尺部材1の保持力になるべく近づけることができる。
【0102】
また、この保持具10においては、突出部50の頂部51は、長尺部材1の外周から開口部35側に離間する構成、すなわち、突出部50の頂部51と長尺部材1の外周との間にクリアランスを有する構成であるので、保持部21の開口部35側から長尺部材1を挿入して、保持爪40を撓み変形させつつ突出部50の頂部51を通過させる際に、長尺部材1を通過させやすくすることができ、保持部21に対する長尺部材1の挿入抵抗を低減することができる。
【0103】
つまり、頂部と長尺部材外周との間にクリアランスを有しない構成の場合、基本的には、長尺部材が保持爪の先端部と突出部の頂部との間を通過すると同時に、長尺部材の外周に突出部の頂部が当接する構成となるため、保持爪の先端部と突出部の頂部との間隔を狭くする必要があり、保持部に対する長尺部材の挿入抵抗が大きくなる。
【0104】
これに対して本保持具10のように、頂部51と長尺部材1の外周との間にクリアランスを有する構成では、保持爪40の先端部41と突出部50の頂部51との間隔を比較的広く確保することができるので、長尺部材1を保持爪40の先端部41と突出部50の頂部51との間を通過させやすくなり、保持部21に対する長尺部材1の挿入抵抗を低減しやすい。
【0105】
また、この実施形態においては、突出部50は、頂部51から、底部30側に向けて、第2側壁33の内面からの突出量が次第に小さくなる斜面(ここでは第1斜面53)を有している。
【0106】
そのため、保持部21に長尺部材1が保持された状態で、長尺部材1に、開口部35から引き抜かれる方向の、引き抜き力Fが作用すると、上述したように、長尺部材1は、第1斜面53によって、保持爪40の先端部41側に向けて誘導されて、保持爪40は、長尺部材1からの押圧力F´(押圧荷重)を一旦受け止める。すなわち、保持爪40は、その延出方向Eに沿った方向に付与された押圧荷重によって、延出方向Eに圧縮された後に、撓み変形することになる。
【0107】
ところで、合成樹脂からなる保持爪40は、上記のような圧縮荷重に対しては強い抵抗力を有する。しかし、例えば、図6の矢印Gに示すように、先端部41に対して下面側から垂直方向に、長尺部材1の押圧力が作用する場合には、図6の矢印G´に示すように、保持爪40が、延出方向基端部側を起点としてすぐに撓み変形することになる。
【0108】
これに対して、この実施形態における突出部50においては、上記構成をなした第1斜面53によって、長尺部材1の引き抜き経路が垂直方向ではなく、保持爪40の延出方向Eに向くように変更されるので、保持爪40は、長尺部材1からの押圧荷重を一旦受け止めて圧縮された後に、撓み変形することになる。その結果、第1斜面53を有する突出部50においては、このような引き抜き経路ではない場合と比べて、長尺部材1の引き抜き時における、保持爪40の保持力を高めることができる。
【0109】
すなわち、突出部50に、上記のような第1斜面53を設けたことで、長尺部材1に引き抜き力Fが作用したときに、保持爪40側に寄せやすくすることができるので、保持部21から長尺部材1を抜けにくくすることができる。
【0110】
したがって、第1斜面53による、長尺部材1の引き抜き経路変更に起因する、保持爪40の保持力向上によって、高温雰囲気下における長尺部材1に対する保持力を、より低下しにくくすることができる。
【0111】
更に、この実施形態においては、図3等に示すように、圧接部57は、第2側壁33に沿って延びて、突出部50に連設するリブ状をなしている。
【0112】
上記態様によれば、保持部21に長尺部材1が保持された状態で、長尺部材1に引き抜き力Fが作用したときに、圧接部57によって長尺部材1が第1斜面53側にガイドされやすくなるので、保持爪40の先端部41に向けて、長尺部材1をより誘導されやすくなり、保持爪40の保持力をより高めることができる。
【0113】
また、長尺部材1の外周が柔軟な材質である場合には、圧接部57が、長尺部材1の外周に食い込むので、長尺部材1を軸方向Xに抜きにくくすることができる(長尺部材1に作用するスラスト荷重に対抗しやすくなって、長尺部材1が保持部21の軸方向開口36から抜きにくくなって、スラスト保持力を高める、とも言える)。
【0114】
更に、圧接部57は、突出部50に連設するリブ状をなしているので、突出部50が補強されて、突出部50の剛性を高めることができる。そのため、長尺部材1に引き抜き力Fが作用したときに、保持部21から長尺部材1をより抜けにくくすることができる。
【0115】
また、この実施形態においては、図3に示すように、突出部50の、長尺部材1の軸方向Xに沿った厚さは、圧接部57の、長尺部材1の軸方向Xに沿った厚さよりも、大きくなっている。逆に言えば、圧接部57の長尺部材1の軸方向Xに沿った厚さは、突出部50の、長尺部材1の軸方向Xに沿った厚さよりも、小さくなっている。
【0116】
上記態様によれば、保持部21の開口部35側から長尺部材1を挿入して、保持爪40を撓み変形させつつ突出部50の頂部51を通過させて、保持爪40の先端部41と圧接部57とで長尺部材1を保持する際に、圧接部57の厚さは、突出部50の厚さよりも小さく(薄く)なっているので、圧接部57を長尺部材1の外周に当接させやすくなり、保持部21に対する長尺部材1の挿入抵抗を軽減しやすくすることができる。
【0117】
また、突出部50の厚さは、圧接部57の厚さよりも大きいので、長尺部材1に引き抜き力Fが作用して、長尺部材1が突出部50の頂部51を通り超えようとしたきに、長尺部材1をしっかりと押さえ込んで抜けにくくすることができ、保持部21による、長尺部材1に対する保持力を高めることができる。
【0118】
更に、この実施形態においては、突出部50はリブ状をなしているので、保持部21に長尺部材1を保持すべく、保持部21の開口部35側から長尺部材1を挿入する際の、挿入抵抗を低減することができる。
【0119】
また、この実施形態においては、図4に示すように、保持爪40の延出方向の先端部41は、突出部50の頂部51を通り且つ第2側壁33の立設方向に対して直交するラインL上に位置するように配置されている。
【0120】
上記態様によれば、保持爪40の先端部41は、上記のレイアウトとなっているので、保持部21に長尺部材1が保持された状態で、長尺部材1に引き抜き力Fが作用したときに、引き抜き経路の変更がより確実になされて、保持爪40の保持力向上をより確実に図ることができる。
【0121】
更に、この実施形態においては、図4に示すように、第1側壁31の内面であって底部30側には、第1斜面53に対して平行とされた、底部側内面31aが設けられている。
【0122】
上記態様によれば、上記のような底部側内面31aが設けられているので、保持部21の開口部35側から長尺部材1を挿入する際に、長尺部材1に干渉しにくくなり(長尺部材1の挿入経路の邪魔となりにくい)、保持部21に対する長尺部材1の挿入抵抗を、より低減することができる。なお、第1側壁の内面であって底部側に、開口部側に向けて広がる、底部側内面が設けられている場合も、同様の効果を得ることができる。
【0123】
また、この実施形態においては、図6に示すように、長尺部材1は、その外周が、保持爪40の先端部41と、圧接部57と、底部側内面31aとで保持されるようになっている。
【0124】
上記態様によれば、長尺部材1は、その外周が、保持爪40の先端部41と、圧接部57と、底部側内面31aとで保持されるので、長尺部材1に対するスラスト保持力を高めつつ、突出部50の頂部51を、長尺部材1の外周から確実に離間した状態となるように、長尺部材1を保持することができる。
【0125】
(実施例)
突出部を設けたことによる、引き抜き量と引き抜き荷重との関係を、周知の構造解析ソフトで解析した。
【0126】
(実施例1)
図1~7に示す長尺部材の保持具と同様の形状をなした、実施例1の長尺部材の保持具をモデリングした。
【0127】
(比較例1)
図1~7に示す長尺部材の保持具から、突出部を削除した形状とした、比較例1の長尺部材の保持具をモデリングした。
【0128】
(試験方法)
実施例1及び比較例1において、長尺部材を保持した状態として、長尺部材を所定の引っ張り速度で引っ張ったときの、引き抜き荷重を計測した。その結果が図8に示されている。横軸は、保持部材からの長尺部材の引き抜き量であり、縦軸は、引き抜き荷重である。また、実線が実施例1であり、破線が比較例1である。
【0129】
図8に示すように、比較例1は、引き抜き荷重が一旦ピーク(P1)になった後は、下がるのみであるが、実施例1は、引き抜き荷重が一旦ピークになった後(図8のP2参照)、更に上昇して2つ目のピーク(P2)を有するものとなっており、長尺部材の引き抜き力が向上していることを確認できた。
【0130】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0131】
1 長尺部材
10,10A 長尺部材の保持具(保持具)
20 保持部材
21 保持部
30 底部
31 第1側壁
31a 底部側内面
33 第2側壁
35 開口部
40 保持爪
41 先端部
43 先端
50 突出部
51 頂部
53 第1斜面(斜面)
57 圧接部
60 防振部材
70 固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8