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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154767
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】駆動装置及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20241024BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241024BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068811
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】木口 龍雅
(72)【発明者】
【氏名】田久保 拡
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB02
5H740BB05
5H740BB08
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH06
5H740JA01
5H740JB01
5H740JB02
5H740KK01
5H740MM11
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA44
5H770GA02
5H770GA03
5H770GA04
5H770GA06
5H770GA13
5H770JA10X
5H770LB02
(57)【要約】
【課題】スイッチング素子の劣化を抑制すること。
【解決手段】
第1スイッチング素子の制御電極に接続される第1制御線を第1正電源線に接続するか否かを切り替える第1切り替え部と、前記第1制御線を第1負電源線に接続するか否かを切り替える第2切り替え部と、前記第1制御線を第1基準線に接続するか否かを切り替える第3切り替え部と、前記第1制御線がデッドタイムに前記第1基準線に接続されるように前記第3切り替え部を動作させる第1制御回路と、第2スイッチング素子の制御電極に接続される第2制御線を第2正電源線に接続するか否かを切り替える第4切り替え部と、前記第2制御線を第2負電源線に接続するか否かを切り替える第5切り替え部と、前記第2制御線を第2基準線に接続するか否かを切り替える第6切り替え部と、前記第2制御線が前記第2基準線に接続されるように前記第6切り替え部を動作させる第2制御回路と、を有する、駆動装置。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を同時にオフするデッドタイムを挟んで、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にスイッチングする駆動装置であって、
前記第1スイッチング素子を駆動する第1駆動回路と、
前記第2スイッチング素子を駆動する第2駆動回路と、を備え、
前記第1駆動回路は、
前記第1スイッチング素子の制御電極に電気的に接続される第1制御線と、
第1正電源電圧に設定された第1正電源線と、
第1負電源電圧に設定された第1負電源線と、
前記第1スイッチング素子の第1主電極に電気的に接続され、前記第1負電源電圧よりも高く前記第1スイッチング素子の閾値電圧よりも低い第1中間電圧に設定された第1基準線と、
前記第1制御線を前記第1正電源線に電気的に接続するか否かを切り替える第1切り替え部と、
前記第1制御線を前記第1負電源線に電気的に接続するか否かを切り替える第2切り替え部と、
前記第1制御線を前記第1基準線に電気的に接続するか否かを切り替える第3切り替え部と、
前記第1制御線が前記デッドタイムに前記第1基準線に電気的に接続されるように前記第3切り替え部を動作させる第1制御回路と、を有し、
前記第2駆動回路は、
前記第2スイッチング素子の制御電極に電気的に接続される第2制御線と、
第2正電源電圧に設定された第2正電源線と、
第2負電源電圧に設定された第2負電源線と、
前記第2スイッチング素子の第1主電極に電気的に接続され、前記第2負電源電圧よりも高く前記第2スイッチング素子の閾値電圧よりも低い第2中間電圧に設定された第2基準線と、
前記第2制御線を前記第2正電源線に電気的に接続するか否かを切り替える第4切り替え部と、
前記第2制御線を前記第2負電源線に電気的に接続するか否かを切り替える第5切り替え部と、
前記第2制御線を前記第2基準線に電気的に接続するか否かを切り替える第6切り替え部と、
前記第2制御線が前記第2基準線に電気的に接続されるように前記第6切り替え部を動作させる第2制御回路と、を有する、駆動装置。
【請求項2】
前記第1駆動回路は、前記第1制御線と前記第1基準線との間において前記第3切り替え部に直列に接続された第1抵抗素子を有し、
または、
前記第2駆動回路は、前記第2制御線と前記第2基準線との間において前記第6切り替え部に直列に接続された第2抵抗素子を有する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1駆動回路は、前記第1制御線と前記第1正電源線との間において前記第1切り替え部に直列に接続された第3抵抗素子を有し、
または、
前記第2駆動回路は、前記第2制御線と前記第2正電源線との間において前記第4切り替え部に直列に接続された第4抵抗素子を有する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第1駆動回路は、前記第1抵抗素子を有する場合、前記第1抵抗素子に並列に接続された第1ダイオードを有し、
または、
前記第2駆動回路は、前記第2抵抗素子を有する場合、前記第2抵抗素子に並列に接続された第2ダイオードを有する、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第1駆動回路は、
前記第1抵抗素子を有する場合、
前記第1抵抗素子に並列に接続された第1コンデンサと、
前記第1コンデンサに直列に接続された第3ダイオードと、
前記第1コンデンサに並列に接続された第5抵抗素子と、を有し、
または、
前記第2駆動回路は、
前記第2抵抗素子を有する場合、
前記第2抵抗素子に並列に接続された第2コンデンサと、
前記第2コンデンサに直列に接続された第4ダイオードと、
前記第2コンデンサに並列に接続された第6抵抗素子と、を有する、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第1切り替え部及び前記第2切り替え部は、双方向スイッチを有する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の駆動装置、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を備える電力変換装置。
【請求項8】
前記第1制御線に直列に接続又は挿入された第7抵抗素子を備え、
または、
前記第2制御線に直列に接続又は挿入された第8抵抗素子を備える、請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子は、ワイドバンドギャップ半導体により形成された素子である、請求項7に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動装置及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直列接続された二つのスイッチング素子が直流電源に並列接続された電力変換回路がある。このような電力変換回路は、下記の特許文献1のように、デッドタイム期間において、スイッチング素子が同時にオンしないように、二つのスイッチング素子のゲート電圧を共に負方向にバイアスすることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-51049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SiC-MOSFET等のスイッチング素子は、ボディダイオードに電流が流れると、特性が劣化するという問題がある。特許文献1の駆動方法をそのようなスイッチング素子の駆動に適用すると、電流がデッドタイムにスイッチング素子のボディダイオードに流れ、スイッチング素子の劣化が進行するおそれがある。
【0005】
本開示は、スイッチング素子の劣化を抑制する駆動装置及び当該駆動装置を備える電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様では、
直列に接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を同時にオフするデッドタイムを挟んで、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にスイッチングする駆動装置であって、
前記第1スイッチング素子を駆動する第1駆動回路と、
前記第2スイッチング素子を駆動する第2駆動回路と、を備え、
前記第1駆動回路は、
前記第1スイッチング素子の制御電極に電気的に接続される第1制御線と、
第1正電源電圧に設定された第1正電源線と、
第1負電源電圧に設定された第1負電源線と、
前記第1スイッチング素子の第1主電極に電気的に接続され、前記第1負電源電圧よりも高く前記第1スイッチング素子の閾値電圧よりも低い第1中間電圧に設定された第1基準線と、
前記第1制御線を前記第1正電源線に電気的に接続するか否かを切り替える第1切り替え部と、
前記第1制御線を前記第1負電源線に電気的に接続するか否かを切り替える第2切り替え部と、
前記第1制御線を前記第1基準線に電気的に接続するか否かを切り替える第3切り替え部と、
前記第1制御線が前記デッドタイムに前記第1基準線に電気的に接続されるように前記第3切り替え部を動作させる第1制御回路と、を有し、
前記第2駆動回路は、
前記第2スイッチング素子の制御電極に電気的に接続される第2制御線と、
第2正電源電圧に設定された第2正電源線と、
第2負電源電圧に設定された第2負電源線と、
前記第2スイッチング素子の第1主電極に電気的に接続され、前記第2負電源電圧よりも高く前記第2スイッチング素子の閾値電圧よりも低い第2中間電圧に設定された第2基準線と、
前記第2制御線を前記第2正電源線に電気的に接続するか否かを切り替える第4切り替え部と、
前記第2制御線を前記第2負電源線に電気的に接続するか否かを切り替える第5切り替え部と、
前記第2制御線を前記第2基準線に電気的に接続するか否かを切り替える第6切り替え部と、
前記第2制御線が前記第2基準線に電気的に接続されるように前記第6切り替え部を動作させる第2制御回路と、を有する、駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、スイッチング素子の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電力変換装置の構成例を示す図である。
図2】一比較例に係る駆動方法による動作を示すタイミングチャートである。
図3】SiC-MOSFETのボディダイオードの特性の一例を示す図である。
図4】本開示の第1駆動方法による動作を示すタイミングチャートである。
図5】第1実施形態の駆動装置を備える電力変換装置の構成例を示す図である。
図6】第1実施形態の駆動装置による第1駆動方法を示すタイミングチャートである。
図7】第1制御回路及び第2制御回路の一構成例を示す図である。
図8】第1実施形態の駆動装置による第2駆動方法を示すタイミングチャートである。
図9】第2実施形態の駆動装置を備える電力変換装置の構成例を示す図である。
図10】第3実施形態の駆動装置を備える電力変換装置の構成例を示す図である。
図11】第4実施形態の駆動装置を備える電力変換装置の構成例を示す図である。
図12】第4実施形態の駆動装置の動作例を示すタイミングチャートである。
図13】第5実施形態の駆動装置の動作例を示すタイミングチャートである。
図14】第3切り替え部または第6切り替え部の一構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、電力変換装置の構成例を示す図である。図1に示す電力変換装置100は、直流を交流に変換するインバータでも、交流を直流に又は直流を直流に変換するコンバータでもよい。例えば、電力変換装置100は、直流電源400から供給される直流電圧Eの電力を、モータ等の負荷300に供給する交流電力に変換するインバータである。電力変換装置100は、制御装置10と、駆動装置20と、上アームQ1と、下アームQ2と、直流電源400と、を備える。
【0010】
図1は、上アームQ1と下アームQ2とが直列に接続された一相分のアームと、当該アームを駆動する一相分の駆動装置20とを示す。電力変換装置100が例えばU,V,Wの三相の交流電力を生成するインバータの場合、電力変換装置100は、図1に示すアームと同じ構成の三相分のアームと、図1に示す駆動装置20と同じ構成の三相分の駆動装置とを備える。ハイサイドの上アームQ1とローサイドの下アームQ2との間の接続点は、負荷300に接続される。
【0011】
駆動装置20は、制御装置10から供給される指令信号Q1sig,Q2sigに従って、直列に接続された上アームQ1及び下アームQ2を同時にオフするデッドタイムを挟んで、上アームQ1及び下アームQ2を交互にスイッチングする。"同時"は、"同期間"と同義でよい。指令信号Q1sigは、上アームQ1のオン又はオフの期間を指令する制御信号である。指令信号Q2sigは、下アームQ2のオン又はオフの期間を指令する制御信号である。駆動装置20は、第1駆動回路21及び第2駆動回路22を有する。
【0012】
第1駆動回路21は、指令信号Q1sig,Q2sigに従って、上アームQ1を駆動する。第1駆動回路21は、上アームQ1のゲートソース間電圧VGS1を、第1正電源電圧V1P、第1負電源電圧V1N又は第1中間電圧VM1に切り替える。第1中間電圧VM1は、第1負電源電圧V1Nよりも高く第1正電源電圧V1Pよりも低い電圧であり、より詳しくは、第1負電源電圧V1Nよりも高く上アームQ1の閾値電圧よりも低い電圧である。
【0013】
第2駆動回路22は、指令信号Q1sig,Q2sigに従って、下アームQ2を駆動する。第2駆動回路22は、下アームQ2のゲートソース間電圧VGS2を、第2正電源電圧V2P、第2負電源電圧V2N又は第2中間電圧VM2に切り替える。第2中間電圧VM2は、第2負電源電圧V2Nよりも高く第2正電源電圧V2Pよりも低い電圧であり、より詳しくは、第2負電源電圧V2Nよりも高く下アームQ2の閾値電圧よりも低い電圧である。
【0014】
上アームQ1及び下アームQ2は、それぞれ、電圧駆動型の半導体素子であり、制御電極と、第1主電極と、第2主電極とを有するスイッチング素子である。上アームQ1及び下アームQ2の具体例として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などが挙げられる。図1は、上アームQ1及び下アームQ2が、それぞれ、ゲートとドレソースとドレインとを有するNチャネル型のMOSFETの場合を例示する。ゲートは、制御電極の一例である。ソースは、第1主電極の一例である。ドレインは、第2主電極の一例である。
【0015】
上アームQ1の制御電極は、第1駆動回路21の第1制御線54に電気的に接続されている。上アームQ1の第1主電極は、第1駆動回路21の第1基準線57、下アームQ2の第2主電極及び負荷300に電気的に接続されている。下アームQ2の第2主電極は、直流電源400の正極側に電気的に接続されている。
【0016】
下アームQ2の制御電極は、第2駆動回路22の第2制御線64に電気的に接続されている。下アームQ2の第1主電極は、第2駆動回路22の第2基準線67及び直流電源400の負極側に電気的に接続されている。下アームQ2の第2主電極は、第1駆動回路21の第1基準線57、上アームQ1の第1主電極及び負荷300に電気的に接続されている。
【0017】
上アームQ1及び下アームQ2は、シリコン半導体により形成された素子でもよいし、バンドギャップがシリコンよりも大きなワイドバンドギャップ半導体により形成された素子でもよい。ワイドバンドギャップ半導体の例としては、例えば窒化ガリウム、炭化ケイ素、ダイヤモンドなどが挙げられる。上アームQ1及び下アームQ2がワイドバンドギャップ半導体により形成された素子であると、電力変換装置100の電力変換効率を高めることができる。
【0018】
上アームQ1及び下アームQ2は、例えば、ゲートとソースとドレインを有するSiC-MOSFETである。SiCは、炭化ケイ素、MOSFETは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタの略語である。SiC-MOSFET等のスイッチング素子は、ソースとドレインとの間のチャネル部と、ソースからドレインへの向きを順方向とするボディダイオードとを有する。上アームQ1は、第1スイッチング素子又は第1SiC-MOSFETの一例である。下アームQ2は、第2スイッチング素子又は第2SiC-MOSFETの一例である。
【0019】
次に、駆動装置20が行う駆動方法を、電力変換装置101の一相分(例えばU相アーム)の駆動に適用したときの動作について説明する。なお、以下で説明する一相以外の他の2つの相(例えばV相及びW相)もこの一相と同様に動作するので、一相分の動作についての以下の説明は、他の相の動作に援用される。
【0020】
最初に、本開示の駆動方法と比較するため、一比較例に係る駆動方法について説明する。
【0021】
図2は、一比較例に係る駆動方法による動作を示すタイミングチャートである。なお、図2についての以下の説明では、便宜上、図1に示す電力変換装置100の参照符号を援用して説明する。電力変換装置100の一相分のスイッチング動作は、図2に示すように、モードMD1、モードMD2、モードMD3及びモードMD4の4つの動作に区分される。
【0022】
時点t1から時点t2までのモードMD1の動作では、指令信号Q1sigがハイレベルであり、指令信号Q2sigがローレベルとなっている。このため、上アームQ1のゲートソース間電圧VGS1は、第1正電源電圧V1Pと同電圧となり、下アームQ2のゲートソース間電圧VGS2は、第2負電源電圧V2Nと同電圧となる。
【0023】
このため、上アームQ1はオン状態となり、下アームQ2はオフ状態となり、上アームQ1のドレイン電流ID1が出力電流Iuとして負荷300のU相コイルに流れる。これにより、上アームQ1のドレイン電流ID1が増加するとともに、出力電流Iuも徐々に増加する。また、出力電流Iuは正の値となる。モードMD1では、下アームQ2は、オフ状態であるので、ドレイン電流ID2の値は、0〔A〕となる。
【0024】
次いで、時点t2で電力変換装置100の一相分のスイッチング動作がモードMD1からモードMD2に切り替わる。モードMD2は、第1デッドタイムDT1を形成するために、上アームQ1をオン状態からオフ状態に切り替えて、上アームQ1及び下アームQ2を両方ともオフ状態にするモードである。第1デッドタイムDT1は、上アームQ1及び下アームQ2が同時にオン状態になって上アームQ1及び下アームQ2間に貫通電流が流れるのを防止するための期間である。
【0025】
モードMD2の動作では、上アームQ1のゲートソース間電圧VGS1は、ミラー期間を経て、第1負電源電圧V1Nと同電圧となり、下アームQ2のゲートソース間電圧VGS2は、第2負電源電圧V2Nと同電圧となる。このため、上アームQ1はオン状態からオフ状態に切り替わり、下アームQ2はオフ状態を維持する。このため、上アームQ1及び下アームQ2は、両方ともオフ状態になる。
【0026】
このとき、下アームQ2に内蔵されたボディダイオードを介して流れる還流電流が出力電流Iuとして負荷300に流れる。この還流電流は、負荷300のインダクタンス等に基づく電流であるため、出力電流Iuは、正の値を維持しつつ徐々に低下する。この還流電流は、下アームQ2に内蔵されたボディダイオードを経由する電流であり、下アームQ2のソースからドレインに向かって流れるドレイン電流ID2に相当する。一方、モードMD2では、上アームQ1はオフ状態となるため、上アームQ1のドレイン電流ID1は、0〔A〕まで減少する。
【0027】
その後、時点t3で電力変換装置100の一相分のスイッチング動作がモードMD2からモードMD3に切り替わる。モードMD3は、下アームQ2がオフ状態からオン状態に切り替わり、還流電流が下アームQ2のチャネル部及びボディダイオードの両方に流れるモードである。
【0028】
モードMD3では、指令信号Q2sigが、ローレベルからハイレベルに反転する。このため、下アームQ2のゲートソース間電圧VGS2は、第2正電源電圧V2Pとなる。これにより、下アームQ2のゲートソース間電圧VGS2には順バイアス電圧が出力されるので、下アームQ2はオフ状態からオン状態に切り替わる。下アームQ2がオン状態となると、還流電流は、下アームQ2のチャネル部及びボディダイオードの両方に流れる。このため、モードMD3における下アームQ2は、チャネル部のオン抵抗とボディダイオードのオン抵抗が並列に接続されることになり、還流電流がボディダイオードのみを流れるモードMD2と比較して低抵抗となる。なお、モードMD3では、上アームQ1はオフ状態を維持する。
【0029】
モードMD3における還流電流は、モードMD2の場合と同様に、負荷300のインダクタンス等に基づく電流であるため、還流電流の電流値は徐々に0(A)に近付く。これに伴い、出力電流Iuは、正の値を維持しつつ徐々に低下する。
【0030】
その後、時点t4でモードMD3からモードMD4に切り替わる。モードMD4は、前述したモードMD2と同様に、第2デッドタイムDT2を形成するために、下アームQ2をオン状態からオフ状態に切り替えて、上アームQ1及び下アームQ2を両方ともオフ状態にするモードである。第2デッドタイムDT2は、上アームQ1及び下アームQ2が同時にオン状態になって上アームQ1及び下アームQ2間に貫通電流が流れるのを防止するための期間である。
【0031】
モードMD4の動作では、下アームQ2のゲートソース間電圧VGS2は、ミラー期間を経て、第2負電源電圧V2Nと同電圧となり、上アームQ1のゲートソース間電圧VGS1は、第1負電源電圧V1Nと同電圧となる。このため、下アームQ2はオン状態からオフ状態に切り替わり、上アームQ1はオフ状態を維持する。このため、上アームQ1及び下アームQ2は、両方ともオフ状態になる。
【0032】
このとき、下アームQ2に内蔵されたボディダイオードを介して流れる還流電流が出力電流Iuとして負荷300に流れる。この還流電流は、負荷300のインダクタンス等に基づく電流であるため、出力電流Iuは、正の値を維持しつつ徐々に低下する。また、モードMD4では、上アームQ1はオフ状態となるため、上アームQ1のドレイン電流ID1は、0〔A〕を維持する。一方、この還流電流は、下アームQ2に内蔵されたボディダイオードを経由する電流であり、下アームQ2のソースからドレインに向かって流れるドレイン電流ID2に相当する。
【0033】
その後、時点t5で電力変換装置100の一相分のスイッチング動作がモードMD4からモードMD1に切り替わる。このモードMD1では、前述したように、上アームQ1がオン状態となり、下アームQ2がオフ状態を維持する。
【0034】
このモードMD1では、指令信号Q1sigが、ローレベルからハイレベルに反転し、指令信号Q2sigが、ローレベルを維持する。このため、上アームQ1がオフ状態からオン状態に切り替わり、上アームQ1のドレインソース間電圧VDS1が、直流電源400の直流電圧Eから"0"に低下し、ドレイン電流ID1は、ゼロから正方向(ドレインからソースへの方向)に増加する。
【0035】
一方、ローサイドでは、下アームQ2がオフ状態を継続しているが、上アームQ1がターンオンすることにより、下アームQ2に高dv/dtが発生し(ドレインソース間電圧VDS2が急上昇し)、高dv/dtによる逆回復電流が下アームQ2のボディダイオードに流れる。逆回復電流の収束後に、ドレイン電流ID2は、ゼロとなる。
【0036】
ところが、上述の説明の通り、デッドタイムDT1,DT2では、下アームQ2のボディダイオードのみに還流電流が流れるので、SiC-MOSFET等のスイッチング素子である下アームQ2が劣化する要因となり得る。また、ボディダイオードのオン電圧(順方向電圧)も比較的高いので、下アームQ2の損失も大きくなる要因となり得る。
【0037】
図3は、SiC-MOSFETのボディダイオードの特性の一例を示す図である。図3の横軸のドレイン-ソース間電圧(ボディダイオードの両端電圧)は、ソースからドレインを見た電圧で示しているので、負の値で表されている。ゲート-ソース間電圧を上げると、ドレイン-ソース間電圧(ボディダイオードの両端電圧)が低下するので、損失が低下する。上述の図2の駆動方法では、デッドタイムでは、ゲート-ソース間に、逆バイアス(負電源電圧)が印加されているので、損失が大きい。この点に着目し、本開示の駆動方法は、デッドタイムにおいて、SiC-MOSFET等のスイッチング素子のゲート-ソース間に印加する電圧(ゲート電圧)を、負電源電圧よりも高く当該スイッチング素子の閾値電圧よりも低い中間電圧に設定する。
【0038】
図4は、本開示の第1駆動方法による動作を示すタイミングチャートである。なお、図4についての以下の説明では、図1に示す電力変換装置100の参照符号を援用して説明する。電力変換装置100の一相分のスイッチング動作は、図4に示すように、モードMD1、モードMD2、モードMD3及びモードMD4の4つの動作に区分される。
【0039】
時点t1から時点t2までのモードMD1の動作では、指令信号Q1sigがハイレベルであり、指令信号Q2sigがローレベルとなっている。このため、上アームQ1のゲートソース間電圧VGS1は、第1正電源電圧V1Pと同電圧となり、下アームQ2のゲートソース間電圧VGS2は、第2負電源電圧V2Nと同電圧となる。
【0040】
このため、上アームQ1はオン状態となり、下アームQ2はオフ状態となり、上アームQ1のドレイン電流ID1が出力電流Iuとして負荷300のU相コイルに流れる。これにより、上アームQ1のドレイン電流ID1が増加するとともに、出力電流Iuも徐々に増加する。また、出力電流Iuは正の値となる。モードMD1では、下アームQ2は、オフ状態であるので、ドレイン電流ID2の値は、0〔A〕となる。
【0041】
このように、モードMD1では、第1駆動回路21は、上アームQ1のゲート電圧を第1正電源電圧V1Pに設定し、第2駆動回路22は、下アームQ2のゲート電圧を第2負電源電圧V2Nに設定する。
【0042】
次いで、時点t2で電力変換装置100の一相分のスイッチング動作がモードMD1からモードMD2に切り替わる。モードMD2は、第1デッドタイムDT1を形成するためのモードである。第1デッドタイムDT1は、指令信号Q1sigによる上アームQ1のオン指令期間の直後かつ指令信号Q2sigによる下アームQ2のオン指令期間の直前の期間である。
【0043】
モードMD2の動作では、上アームQ1のゲートソース間電圧VGS1は、ミラー期間を経て、第1中間電圧VM1となり、下アームQ2のゲートソース間電圧VGS2は、第2中間電圧VM2となる。第1中間電圧VM1は、第1負電源電圧V1Nよりも高く上アームQ1の閾値電圧よりも低い電圧であり、図4に示す例では、ゼロである。第2中間電圧VM2は、第2負電源電圧V2Nよりも高く下アームQ2の閾値電圧よりも低い電圧であり、図4に示す例では、ゼロである。
【0044】
このとき、第2中間電圧VM2はほぼゼロなので、下アームQ2のチャネル部が僅かに開く。これにより、モードMD2に流れる循環電流(還流電流)は、下アームQ2のチャネル部及びボディダイオードの両方に流れる。このため、モードMD2における下アームQ2は、チャネル部のオン抵抗とボディダイオードのオン抵抗が並列に接続されることになる。これにより、下アームQ2のドレインソース間の電圧が低下するので、下アームQ2の損失が低下する。また、整流電流(還流電流)がボディダイオードとチャネル部に分流するので、ボディダイオードに流れる分の電流が減少し、ボディダイオードに電流が流れることによる劣化の進行を抑制できる。
【0045】
モードMD2で下アームQ2のチャネル部及びボディダイオードを介して流れる還流電流が出力電流Iuとして負荷300に流れる。この還流電流は、負荷300のインダクタンス等に基づく電流であるため、出力電流Iuは、正の値を維持しつつ徐々に低下する。この還流電流は、下アームQ2のチャネル部及びボディダイオードを経由する電流であり、下アームQ2のソースからドレインに向かって流れるドレイン電流ID2に相当する。一方、モードMD2では、上アームQ1はオフ状態となるため、上アームQ1のドレイン電流ID1は、0〔A〕まで減少する。
【0046】
このように、モードMD2では、第1駆動回路21は、第1デッドタイムDT1が開始すると、上アームQ1のゲート電圧を、第1正電源電圧V1Pから第1中間電圧VM1に変更する。一方、第2駆動回路22は、第1デッドタイムDT1が開始すると、下アームQ2のゲート電圧を、第2負電源電圧V2Nから第2中間電圧VM2に変更する。
【0047】
その後、時点t3で電力変換装置100の一相分のスイッチング動作がモードMD2からモードMD3に切り替わる。モードMD3は、下アームQ2がオフ状態からオン状態に切り替わり、還流電流が下アームQ2のチャネル部及びボディダイオードの両方に流れるモードである。
【0048】
モードMD3では、指令信号Q2sigが、ローレベルからハイレベルに反転する。このため、下アームQ2のゲートソース間電圧VGS2は、第2正電源電圧V2Pとなる。これにより、下アームQ2のゲートソース間電圧VGS2には順バイアス電圧が出力されるので、下アームQ2はオフ状態からオン状態に切り替わる。下アームQ2がオン状態となると、還流電流は、下アームQ2のチャネル部及びボディダイオードの両方に流れる。このため、モードMD3における下アームQ2は、チャネル部のオン抵抗とボディダイオードのオン抵抗が並列に接続されることになり、還流電流がボディダイオードのみを流れるモードMD2と比較して低抵抗となる。なお、モードMD3では、上アームQ1はオフ状態を維持する。
【0049】
モードMD3における還流電流は、モードMD2の場合と同様に、負荷300のインダクタンス等に基づく電流であるため、還流電流の電流値は徐々に0(A)に近付く。これに伴い、出力電流Iuは、正の値を維持しつつ徐々に低下する。
【0050】
このように、モードMD3では、第1駆動回路21は、第1デッドタイムDT1が終了すると、上アームQ1のゲート電圧を、第1中間電圧VM1から第1負電源電圧V1Nに変更する。一方、第2駆動回路22は、第1デッドタイムDT1が終了すると、下アームQ2のゲート電圧を、第2中間電圧VM2から第2正電源電圧V2Pに変更する。
【0051】
その後、時点t4でモードMD3からモードMD4に切り替わる。モードMD4は、前述したモードMD2と同様に、第2デッドタイムDT2を形成するためのモードである。第2デッドタイムDT2は、指令信号Q2sigによる下アームQ2のオン指令期間の直後かつ指令信号Q1sigによる上アームQ1のオン指令期間の直前の期間である。
【0052】
モードMD4の動作では、下アームQ2のゲートソース間電圧VGS2は、ミラー期間を経て、第2中間電圧VM2となり、上アームQ1のゲートソース間電圧VGS1は、第1中間電圧VM1となる。第1中間電圧VM1は、第1負電源電圧V1Nよりも高く上アームQ1の閾値電圧よりも低い電圧であり、図4に示す例では、ゼロである。第2中間電圧VM2は、第2負電源電圧V2Nよりも高く下アームQ2の閾値電圧よりも低い電圧であり、図4に示す例では、ゼロである。
【0053】
このとき、第2中間電圧VM2はほぼゼロなので、下アームQ2のチャネル部が僅かに開く。これにより、モードMD4に流れる循環電流(還流電流)は、下アームQ2のチャネル部及びボディダイオードの両方に流れる。このため、モードMD4における下アームQ2は、チャネル部のオン抵抗とボディダイオードのオン抵抗が並列に接続されることになる。これにより、下アームQ2のドレインソース間の電圧が低下するので、下アームQ2の損失が低下する。また、整流電流(還流電流)がボディダイオードとチャネル部に分流するので、ボディダイオードに流れる分の電流が減少し、ボディダイオードに電流が流れることによる劣化の進行を抑制できる。
【0054】
モードMD4で下アームQ2のチャネル部及びボディダイオードを介して流れる還流電流が出力電流Iuとして負荷300に流れる。この還流電流は、負荷300のインダクタンス等に基づく電流であるため、出力電流Iuは、正の値を維持しつつ徐々に低下する。この還流電流は、下アームQ2のチャネル部及びボディダイオードを経由する電流であり、下アームQ2のソースからドレインに向かって流れるドレイン電流ID2に相当する。一方、モードMD4では、上アームQ1はオフ状態となるため、上アームQ1のドレイン電流ID1は、0〔A〕を維持する。
【0055】
このように、モードMD4では、第1駆動回路21は、第2デッドタイムDT2が開始すると、上アームQ1のゲート電圧を、第1負電源電圧V1Nから第1中間電圧VM1に変更する。一方、第2駆動回路22は、第1デッドタイムDT1が開始すると、下アームQ2のゲート電圧を、第2正電源電圧V2Pから第2中間電圧VM2に変更する。
【0056】
その後、時点t5で電力変換装置100の一相分のスイッチング動作がモードMD4からモードMD1に切り替わる。このモードMD1では、前述したように、上アームQ1がオン状態となり、下アームQ2がオフ状態を維持する。
【0057】
このモードMD1では、指令信号Q1sigが、ローレベルからハイレベルに反転し、指令信号Q2sigが、ローレベルを維持する。このため、上アームQ1がオフ状態からオン状態に切り替わり、上アームQ1のドレインソース間電圧VDS1が、直流電源400の直流電圧Eから"0"に低下し、ドレイン電流ID1は、ゼロから正方向(ドレインからソースへの方向)に増加する。
【0058】
一方、ローサイドでは、下アームQ2がオフ状態を継続しているが、上アームQ1がターンオンすることにより、下アームQ2に高dv/dtが発生し(ドレインソース間電圧VDS2が急上昇し)、高dv/dtによる逆回復電流が下アームQ2のボディダイオードに流れる。逆回復電流の収束後に、ドレイン電流ID2は、ゼロとなる。
【0059】
このように、モードMD1では、第1駆動回路21は、第2デッドタイムDT2が終了すると、上アームQ1のゲート電圧を、第1中間電圧VM1から第1正電源電圧V1Pに変更する。一方、第2駆動回路22は、第2デッドタイムDT2が終了すると、下アームQ2のゲート電圧を、第2中間電圧VM2から第2負電源電圧V2Nに変更する。
【0060】
したがって、図4に示す駆動方法によれば、デッドタイム中の下アームQ2のゲート電圧は第2中間電圧VM2に設定される。これにより、下アームQ2のボディダイオードに還流電流が流れる還流モードでは、当該環流電流は、デッドタイム中の下アームQ2のゲート電圧が第2負電源電圧V2Nに設定される場合に比べて減少する。したがって、下アームQ2の劣化を抑制することができる。同様に、デッドタイム中の上アームQ1のゲート電圧は第1中間電圧VM1に設定される。これにより、上アームQ1のボディダイオードに還流電流が流れる還流モードでは、当該環流電流は、デッドタイム中の上アームQ1のゲート電圧が第1負電源電圧V1Nに設定される場合に比べて減少する。したがって、上アームQ1の劣化を抑制することができる。
【0061】
次に、より具体的な駆動装置及び電力変換装置の構成例について説明する。
【0062】
図5は、第1実施形態の駆動装置を備える電力変換装置の構成例を示す図である。図5において、電力変換装置101は、上記の電力変換装置100の一実施形態であり、駆動装置201は、上記の駆動装置20の一実施形態である。
【0063】
駆動装置201は、上アームQ1を駆動する第1駆動回路21と、下アームQ2を駆動する第2駆動回路22とを備える。第2駆動回路22は、第1駆動回路21と同じ構成を有する。
【0064】
第1駆動回路21は、第1制御回路30と第1ゲート駆動回路50を備える。第1制御回路30は、指令信号Q1sig,Q2sigの指令内容に基づいて、第1ゲート駆動回路50を駆動するための駆動信号S51,S52,S53を生成する。第1ゲート駆動回路50は、第1制御回路30から供給される駆動信号S51,S52,S53に従って、上アームQ1を駆動する。第1ゲート駆動回路50は、第1制御線54、第1正電源線55、第1負電源線56、第1基準線57、第1切り替え部51、第2切り替え部52及び第3切り替え部53を有する。
【0065】
第1制御線54は、上アームQ1の制御電極に電気的に接続される駆動配線である。第1正電源線55は、上アームQ1をオン状態に維持するための正電圧である第1正電源電圧V1Pに設定された基準電位線であり、第1正電源電圧V1Pを生成する正電源に接続されている。第1負電源線56は、上アームQ1をオフ状態に維持するための負電圧である第1負電源電圧V1Nに設定された基準電位線であり、第1負電源電圧V1Nを生成する負電源に接続されている。第1基準線57は、上アームQ1の第1主電極に電気的に接続される基準電位線であり、第1負電源電圧V1Nよりも高く上アームQ1の閾値電圧よりも低い第1中間電圧VM1に設定されている。
【0066】
第1切り替え部51は、第1制御回路30により生成される駆動信号S51に従って、第1制御線54を第1正電源線55に接続するか否かを切り替える回路又は素子である。第1切り替え部51は、駆動信号S51に従ってオン又はオフとなる第1スイッチを有する。第1スイッチがオンすることで、第1制御線54と第1正電源線55との間は電気的に接続され、第1スイッチがオフすることで、第1制御線54と第1正電源線55との間は電気的に遮断される。
【0067】
第2切り替え部52は、第1制御回路30により生成される駆動信号S52に従って、第1制御線54を第1負電源線56に接続するか否かを切り替える回路又は素子である。第2切り替え部52は、駆動信号S52に従ってオン又はオフとなる第2スイッチを有する。第2スイッチがオンすることで、第1制御線54と第1負電源線56との間は電気的に接続され、第2スイッチがオフすることで、第1制御線54と第1負電源線56との間は電気的に遮断される。
【0068】
第3切り替え部53は、第1制御回路30により生成される駆動信号S53に従って、第1制御線54を第1基準線57に接続するか否かを切り替える回路又は素子である。第3切り替え部53は、駆動信号S53に従ってオン又はオフとなる第3スイッチを有する。第3スイッチがオンすることで、第1制御線54と第1基準線57との間は電気的に接続され、第3スイッチがオフすることで、第1制御線54と第1基準線57との間は電気的に遮断される。
【0069】
第1制御回路30は、指令信号Q1sig,Q2sigの指令内容に基づいて、デッドタイムDT1,DT2を検出する。第1制御回路30は、第1制御線54がデッドタイムDT1,DT2に第1基準線57に電気的に接続されるように第3切り替え部53を動作させる。第1制御回路30は、例えば、検出されたデッドタイムDT1,DT2の各期間のみに第3切り替え部53の第3スイッチをオンさせる。これにより、第1ゲート駆動回路50は、電圧値がほぼゼロの第1中間電圧VM1を、上アームQ1のゲート-ソース間に印加する。
【0070】
なお、デッドタイムが既知であれば、第1制御回路30は、ワンショット回路などを使用して、デッドタイムDT1,DT2を推定してもよい。
【0071】
第2駆動回路22は、第2制御回路40と第2ゲート駆動回路60を備える。第2制御回路40は、指令信号Q1sig,Q2sigの指令内容に基づいて、第2ゲート駆動回路60を駆動するための駆動信号S61,S62,S63を生成する。第2ゲート駆動回路60は、第2制御回路40から供給される駆動信号S61,S62,S63に従って、下アームQ2を駆動する。第2ゲート駆動回路60は、第2制御線64、第2正電源線65、第2負電源線66、第2基準線67、第4切り替え部61、第5切り替え部62及び第6切り替え部63を有する。
【0072】
第2制御線64は、下アームQ2の制御電極に電気的に接続される駆動配線である。第2正電源線65は、下アームQ2をオン状態に維持するための正電圧である第2正電源電圧V2Pに設定された基準電位線であり、第2正電源電圧V2Pを生成する正電源に接続されている。第2負電源線66は、下アームQ2をオフ状態に維持するための負電圧である第2負電源電圧V2Nに設定された基準電位線であり、第2負電源電圧V2Nを生成する負電源に接続されている。第2基準線67は、下アームQ2の第1主電極に電気的に接続される基準電位線であり、第2負電源電圧V2Nよりも高く下アームQ2の閾値電圧よりも低い第2中間電圧VM2に設定されている。
【0073】
第4切り替え部61は、第2制御回路40により生成される駆動信号S61に従って、第2制御線64を第2正電源線65に接続するか否かを切り替える回路又は素子である。第4切り替え部61は、駆動信号S61に従ってオン又はオフとなる第4スイッチを有する。第4スイッチがオンすることで、第2制御線64と第2正電源線65との間は電気的に接続され、第4スイッチがオフすることで、第2制御線64と第2正電源線65との間は電気的に遮断される。
【0074】
第5切り替え部62は、第2制御回路40により生成される駆動信号S62に従って、第2制御線64を第2負電源線66に接続するか否かを切り替える回路又は素子である。第5切り替え部62は、駆動信号S62に従ってオン又はオフとなる第5スイッチを有する。第5スイッチがオンすることで、第2制御線64と第2負電源線66との間は電気的に接続され、第5スイッチがオフすることで、第2制御線64と第2負電源線66との間は電気的に遮断される。
【0075】
第6切り替え部63は、第2制御回路40により生成される駆動信号S63に従って、第2制御線64を第2基準線67に接続するか否かを切り替える回路又は素子である。第6切り替え部63は、駆動信号S63に従ってオン又はオフとなる第6スイッチを有する。第6スイッチがオンすることで、第2制御線64と第2基準線67との間は電気的に接続され、第6スイッチがオフすることで、第2制御線64と第2基準線67との間は電気的に遮断される。
【0076】
第2制御回路40は、指令信号Q1sig,Q2sigの指令内容に基づいて、デッドタイムDT1,DT2を検出する。第2制御回路40は、第2制御線64がデッドタイムDT1,DT2に第2基準線67に電気的に接続されるように第6切り替え部63を動作させる。第2制御回路40は、例えば、検出されたデッドタイムDT1,DT2の各期間のみに第6切り替え部63の第6スイッチをオンさせる。これにより、第2ゲート駆動回路60は、電圧値がほぼゼロの第2中間電圧VM2を、下アームQ2のゲート-ソース間に印加する。
【0077】
なお、デッドタイムが既知であれば、第2制御回路40は、ワンショット回路などを使用して、デッドタイムDT1,DT2を推定してもよい。
【0078】
図6は、第1実施形態の駆動装置による第1駆動方法を示すタイミングチャートである。駆動信号S51,S52,S53は、それぞれ、第1論理レベル(この例では、ハイレベル)のとき、駆動対象の切り替え部のスイッチをオンとし、第2論理レベル(この例では、ローレベル)のとき、駆動対象の切り替え部のスイッチをオフとする。
【0079】
第1制御回路30は、制御装置10から入力される指令信号Q1sigに従って、第1切り替え部51の第1スイッチをオン又はオフとする駆動信号S51を生成する。第1制御回路30は、指令信号Q1sigがハイレベルのとき、第1切り替え部51の第1スイッチをオンとする駆動信号S51を生成し、指令信号Q1sigがローレベルのとき、第1切り替え部51の第1スイッチをオフとする駆動信号S51を生成する。
【0080】
第1制御回路30は、制御装置10から入力される指令信号Q2sigに従って、第2切り替え部52の第2スイッチをオン又はオフとする駆動信号S52を生成する。第1制御回路30は、指令信号Q2sigがハイレベルのとき、第2切り替え部52の第2スイッチをオンとする駆動信号S52を生成し、指令信号Q2sigがローレベルのとき、第2切り替え部52の第2スイッチをオフとする駆動信号S52を生成する。
【0081】
第1制御回路30は、制御装置10から入力される指令信号Q1sig,Q2sigに従って、デッドタイムDT1,DT2のみに第3切り替え部53の第3スイッチをオンとする駆動信号S53を生成する。第1制御回路30は、例えば、指令信号Q1sigと指令信号Q2sigの反転信号との排他的論理和に従って、第3切り替え部53の第3スイッチをオン又はオフとする駆動信号S53を生成する。
【0082】
切り替え部51,52,53がこのようにオン動作又はオフ動作することで、デッドタイム中の上アームQ1のゲート電圧を第1中間電圧VM1に設定できる。これにより、上アームQ1のボディダイオードに還流電流が流れる還流モードでは、当該環流電流は、デッドタイム中の上アームQ1のゲート電圧が第1負電源電圧V1Nに設定される場合に比べて減少する。したがって、上アームQ1の劣化を抑制することができる。
【0083】
第2制御回路40は、制御装置10から入力される指令信号Q2sigに従って、第4切り替え部61の第1スイッチをオン又はオフとする駆動信号S61を生成する。第2制御回路40は、指令信号Q2sigがハイレベルのとき、第4切り替え部61の第4スイッチをオンとする駆動信号S61を生成し、指令信号Q2sigがローレベルのとき、第4切り替え部61の第4スイッチをオフとする駆動信号S61を生成する。
【0084】
第2制御回路40は、制御装置10から入力される指令信号Q1sigに従って、第5切り替え部62の第5スイッチをオン又はオフとする駆動信号S62を生成する。第2制御回路40は、指令信号Q1sigがハイレベルのとき、第5切り替え部62の第5スイッチをオンとする駆動信号S62を生成し、指令信号Q1sigがローレベルのとき、第5切り替え部62の第5スイッチをオフとする駆動信号S62を生成する。
【0085】
第2制御回路40は、制御装置10から入力される指令信号Q1sig,Q2sigに従って、デッドタイムDT1,DT2のみに第6切り替え部63の第6スイッチをオンとする駆動信号S63を生成する。第2制御回路40は、例えば、指令信号Q2sigと指令信号Q1sigの反転信号との排他的論理和に従って、第6切り替え部63の第6スイッチをオン又はオフとする駆動信号S63を生成する。
【0086】
切り替え部61,62,63がこのようにオン動作又はオフ動作することで、デッドタイム中の下アームQ2のゲート電圧を第2中間電圧VM2に設定できる。これにより、下アームQ2のボディダイオードに還流電流が流れる還流モードでは、当該環流電流は、デッドタイム中の下アームQ2のゲート電圧が第2負電源電圧V2Nに設定される場合に比べて減少する。したがって、下アームQ2の劣化を抑制することができる。
【0087】
なお、第1駆動回路21は、デッドタイム中の上アームQ1のゲート電圧を、電圧値がゼロの第1中間電圧VM1に設定するのではなく、電圧値が正又は負の第1中間電圧VM1に設定してもよい。同様に、第2駆動回路22は、デッドタイム中の下アームQ2のゲート電圧を、電圧値がゼロの第2中間電圧VM2に設定するのではなく、電圧値が正又は負の第2中間電圧VM2に設定してもよい。
【0088】
例えば、第1中間電圧VM1は、ゼロよりも高く上アームQ1の閾値電圧よりも低い正電圧でもよく、第2中間電圧VM2は、ゼロよりも高く下アームQ2の閾値電圧よりも低い正電圧でもよい。これにより、デッドタイム中に印加される中間電圧が、アームがオンしない程度の正電圧となる。よって、チャネル部にも流れる電流が僅かに増え、アームのドレインソース間の電圧が低下し、損失が低減し、劣化の進行が抑制される。
【0089】
例えば、第1中間電圧VM1は、第1負電源電圧V1Nよりも高くゼロよりも低い負電圧でもよく、第2中間電圧VM2は、第2負電源電圧V2Nよりも高くゼロよりも低い負電圧でもよい。これにより、デッドタイム中に印加される中間電圧が、アームがオンしない程度の負電圧となる。よって、ノイズ等によって、アームがデッドタイム中に誤ってオンすることを抑制できる。
【0090】
図7は、第1制御回路30及び第2制御回路40の一構成例を示す図である。
【0091】
第1制御回路30は、反転回路33及び排他的論理和ゲート34と、を有する。第2制御回路40は、反転回路43及び排他的論理和ゲート44と、を有する。各反転回路は、入力される信号の論理を反転させて出力する。排他的論理和ゲートは、入力される二つの論理レベルの排他的論理和を出力する。これにより、図6に示す駆動信号S51,S52,S53,S61,S62,S63が生成される。そして、生成された各駆動信号は図示しない信号絶縁素子(フォトカプラなど)を介し各切り替えスイッチに入力される。
【0092】
図8は、第1実施形態の駆動装置による第2駆動方法を示すタイミングチャートである。第1制御回路30は、デッドタイムDT2が開始する時点t4から所定の遅延時間d1経過時に、駆動信号S52をハイレベルからローレベルに変更し、かつ、駆動信号S53をローレベルからハイレベルに変更してもよい。これにより、デッドタイムDT2の途中においてデッドタイムDT2の開始から遅延時間d1だけ遅れて、第2切り替え部52の第2スイッチがターンオフし、かつ、第3切り替え部53の第3スイッチがターンオンする。つまり、デッドタイムDT2の途中においてデッドタイムDT2の開始から遅延時間d1だけ遅れて、デッドタイムDT2中の上アームQ1のゲート電圧が、第1負電源電圧V1Nから第1中間電圧VM1に切り替わる。
【0093】
第2制御回路40は、デッドタイムDT1が開始する時点t2から所定の遅延時間d2経過時に、駆動信号S62をハイレベルからローレベルに変更し、かつ、駆動信号S63をローレベルからハイレベルに変更してもよい。これにより、デッドタイムDT1の途中においてデッドタイムDT1の開始から遅延時間d2だけ遅れて、第5切り替え部62の第5スイッチがターンオフし、かつ、第6切り替え部63の第6スイッチがターンオンする。つまり、デッドタイムDT1の途中においてデッドタイムDT1の開始から遅延時間d2だけ遅れて、デッドタイムDT1中の下アームQ2のゲート電圧が、第2負電源電圧V2Nから第2中間電圧VM2に切り替わる。
【0094】
上アームQ1及び下アームQ2のうち自身に対向するアームがオンからオフに切り替わる期間(オン状態から、VGS=ゼロ、ID=ゼロまたはVDS=Eになるまで)では、自身に対向するアームは、完全にオフしていなく誤ってオンする可能性がある。図8に示す駆動方法は、自身に対向するアームがオンからオフに切り替わる期間では、自身のゲート電圧を負バイアスさせることで自身のオンを抑制する。これにより、自身に対向するアームがオンからオフに切り替わる期間において、自身に対向するアームが誤ってオンしても、自身のオンが抑制されているので、上アームQ1及び下アームQ2を貫通する電流の発生が抑制される。
【0095】
なお、遅延時間d1,d2は、自身に対向するアームがオンからオフに切り替わる期間に基づき決まる固定値でもよいし、自身に対向するアームのゲートソース間電圧VGS=ゼロ、ドレイン電流ID=ゼロまたはドレインソース間電圧VDSを検知する時点に応じて決まる可変値でもよい。
【0096】
図9は、第2実施形態の駆動装置を備える電力変換装置の構成例を示す図である。図9において、電力変換装置102は、上記の電力変換装置100の一実施形態であり、駆動装置202は、上記の駆動装置20の一実施形態である。第2実施形態において、上記の実施形態と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。
【0097】
スイッチング素子の特性や回路によっては、スイッチング素子の動作速度を調整することが求められる場合がある。第2実施形態では、第1駆動回路21は、上アームQ1の制御電極から第1基準線57までの経路において第3切り替え部53に直列に接続された第1抵抗素子71を有する。この例では、第1抵抗素子71は、第1制御線54と第1基準線57との間において第3切り替え部53に直列に接続されている。同様に、第2実施形態では、第2駆動回路22は、下アームQ2の制御電極から第2基準線67までの経路において第6切り替え部63に直列に接続された第2抵抗素子72を有する。この例では、第2抵抗素子72は、第2制御線64と第2基準線67との間において第6切り替え部63に直列に接続されている。
【0098】
第1駆動回路21は、上アームQ1の制御電極から第1正電源線55までの経路において第1切り替え部51に直列に接続された第3抵抗素子73を有してもよい。この例では、第3抵抗素子73は、第1制御線54と第1正電源線55との間において第1切り替え部51に直列に接続されている。同様に、第2駆動回路22は、下アームQ2の制御電極から第2正電源線65までの経路において第4切り替え部61に直列に接続された第4抵抗素子74を有してもよい。この例では、第4抵抗素子74は、第2制御線64と第2正電源線65との間において第4切り替え部61に直列に接続されている。
【0099】
第1抵抗素子71と第3抵抗素子73は、上アームQ1のゲート抵抗としての役割を有する。具体的には、第1抵抗素子71の抵抗値を調整することにより、ターンオフ時の上アームQ1の動作速度を調整することができる。第3抵抗素子73の抵抗値を調整することにより、ターンオン時の上アームQ1の動作速度を調整することができる。抵抗値を大きく調整すると、上アームQ1の動作速度は遅くなり、抵抗値を小さく調整すると、上アームQ1の動作速度は速くなる。
【0100】
第2抵抗素子72と第4抵抗素子74は、下アームQ2のゲート抵抗としての役割を有する。具体的には、第2抵抗素子72の抵抗値を調整することにより、ターンオフ時の下アームQ2の動作速度を調整することができる。第4抵抗素子74の抵抗値を調整することにより、ターンオン時の下アームQ2の動作速度を調整することができる。抵抗値を大きく調整すると、下アームQ2の動作速度は遅くなり、抵抗値を小さく調整すると、下アームQ2の動作速度は速くなる。
【0101】
第2実施形態によれば、第1実施形態によって得られる効果に加えて、スイッチング素子の動作速度を調整できる効果が得られる。
【0102】
なお、第1抵抗素子71と第3抵抗素子73のうち一方のみが設けられてもよく、第2抵抗素子72と第4抵抗素子74のうち一方のみが設けられてもよい。
【0103】
第1制御線54と第1負電源線56との間において抵抗素子が第2切り替え部52に直列に接続されてもよいが(図9では不図示)、不図示の当該抵抗素子は、抵抗値が第1抵抗素子71よりも小さいことが好ましく、無くてもよい。これにより、上アームQ1のゲート電圧が第1中間電圧VM1と第1負電源電圧V1Nとの間で遷移する速度が速くなるので、無駄時間が低減する。また、上アームQ1の制御電極と第1負電源電圧V1Nが低い抵抗値で接続されることにより、切り替え部52がオンしている期間における上アームQ1のゲート電圧の変動を抑制できるため上アームQ1が誤ってオンすることを抑制できる。不図示の当該抵抗素子は、第2切り替え部52又は上アームQ1の制御電極に流れる過電流を抑制する程度の抵抗値を有してもよい。
【0104】
第2制御線64と第2負電源線66との間において抵抗素子が第5切り替え部62に直列に接続されてもよいが(図9では不図示)、不図示の当該抵抗素子は、抵抗値が第2抵抗素子72よりも小さいことが好ましく、無くてもよい。これにより、下アームQ2のゲート電圧が第2中間電圧VM2と第2負電源電圧V2Nとの間で遷移する速度が速くなるので、無駄時間が低減する。また、下アームQ2の制御電極と第2負電源電圧V2Nが低い抵抗値で接続されることにより、切り替え部62がオンしている期間における下アームQ2のゲート電圧の変動を抑制できるため下アームQ2が誤ってオンすることを抑制できる。不図示の当該抵抗素子は、第5切り替え部62又は下アームQ2の制御電極に流れる過電流を抑制する程度の抵抗値を有してもよい。
【0105】
図10は、第3実施形態の駆動装置を備える電力変換装置の構成例を示す図である。図10において、電力変換装置103は、上記の電力変換装置100の一実施形態であり、駆動装置203は、上記の駆動装置20の一実施形態である。第3実施形態において、上記の実施形態と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。
【0106】
図6及び図8に示すゲートソース間電圧VGS1が逆バイアス電圧(第1負電源電圧V1N)から零電圧(第1中間電圧VM1)まで変化する期間tdon1が長いと、スイッチング素子の動作周波数が期間tdon1により制限され、電力変換回路の設計仕様を満たさない虞がある。よって、期間tdon1が長いことを許容できない場合がある。同様の理由から、ゲートソース間電圧VGS2が逆バイアス電圧(第2負電源電圧V2N)から零電圧(第2中間電圧VM2)まで変化する期間tdon2が長いことを許容できない場合がある。
【0107】
図10に示す第3実施形態では、第1駆動回路21は、第1抵抗素子71に並列に接続される第1ダイオード81を有する。第1ダイオード81は、第1抵抗素子71の第1基準線57に近い方の一端に接続されるアノードと、第1抵抗素子71の第1制御線54に近い方の他端に接続されるカソードとを有する。第1ダイオード81の接続により、逆バイアス電圧(第1負電源電圧V1N)から零電圧(第1中間電圧VM1)までの期間tdon1を、スイッチング特性に及ぼす影響を抑えて短縮できる。
【0108】
図10に示す第3実施形態では、第2駆動回路22は、第2抵抗素子72に並列に接続される第2ダイオード82を有する。第2ダイオード82は、第2抵抗素子72の第2基準線67に近い方の一端に接続されるアノードと、第1抵抗素子71の第2制御線64に近い方の他端に接続されるカソードとを有する。第2ダイオード82の接続により、逆バイアス電圧(第2負電源電圧V2N)から零電圧(第2中間電圧VM2)までの期間tdon2を、スイッチング特性に及ぼす影響を抑えて短縮できる。
【0109】
なお、第1ダイオード81又は第2ダイオード82は、整流作用のある素子であればよく、ダイオード素子以外の素子(例えば、同期整流制御されるMOSFET等の半導体スイッチ)でもよい。また、第1ダイオード81と第2ダイオード82のうち一方のみが設けられてもよい。
【0110】
図11は、第4実施形態の駆動装置を備える電力変換装置の構成例を示す図である。図11において、電力変換装置104は、上記の電力変換装置100の一実施形態であり、駆動装置204は、上記の駆動装置20の一実施形態である。第4実施形態において、上記の実施形態と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。
【0111】
第4実施形態では、第1駆動回路21は、第1抵抗素子71に並列に接続された第1コンデンサ91と、第1コンデンサ91に直列に接続された第3ダイオード83と、第1コンデンサ91に並列に接続された第5抵抗素子75と、を有する。第3ダイオード83は、第1制御線54に電気的に接続されたアノードと、第1コンデンサ91と第5抵抗素子75との並列回路の一端に電気的に接続されたカソードとを有する。同様に、第2駆動回路22は、第2抵抗素子72に並列に接続された第2コンデンサ92と、第2コンデンサ92に直列に接続された第4ダイオード84と、第2コンデンサ92に並列に接続された第6抵抗素子76と、を有する。第4ダイオード84は、第2制御線64に電気的に接続されたアノードと、第2コンデンサ92と第6抵抗素子76との並列回路の一端に電気的に接続されたカソードとを有する。なお、第1駆動回路21は、第1コンデンサ91と第3ダイオード83と第5抵抗素子75とを有しなくてもよく、第2駆動回路22は、第2コンデンサ92と第4ダイオード84と第6抵抗素子76とを有しなくてもよい。
【0112】
図12は、第4実施形態の駆動装置の動作例を示すタイミングチャートである。図12を用いて第4実施形態における上アームQ1のターンオフ動作について説明する。
【0113】
期間T1では、第1切り替え部51がオン状態で、第2切り替え部52と第3切り替え部53がオフ状態である。よって、第1駆動回路21の出力電圧は、第1正電源電圧V1Pに等しく、上アームQ1はオン状態である。
【0114】
期間T2では、第3切り替え部53がオン状態で、第1切り替え部51と第2切り替え部52がオフ状態である。第3実施形態の駆動装置203とは異なり、期間T2では、上アームQ1から流れ出るゲート電流Ig1の大半は、第1抵抗素子71を経由せずに、第3ダイオード83を経由して第1コンデンサ91を通る。そのため、第2実施形態及び第3実施形態と比べて、第1抵抗素子71の抵抗値の大小によらずに、上アームQ1のゲートソース間電圧VGS1は速やかに低下する。
【0115】
期間T3では、期間T2と同様に、第3切り替え部53がオン状態で、第1切り替え部51と第2切り替え部52がオフ状態である。一方、期間T2では、第1コンデンサ91はゲート電流Ig1により電荷が供給され、第1コンデンサ91のコンデンサ電圧VCは上昇するが、期間T3では、上アームQ1のゲートソース間電圧VGS1がコンデンサ電圧VCよりも低下し、第3ダイオード83が逆阻止動作する。この逆阻止動作により、第1コンデンサ91は、上アームQ1の制御電極から切り離され、第5抵抗素子75により放電される。よって、期間T3以降のゲート電流Ig1が通る経路は、第1抵抗素子71を通る経路のみとなる。なお、この期間T3において、上アームQ1のスイッチング動作(MOSFETであれば、ドレインソース間電圧VDS1やドレイン電流ID1の変化)がなされる。
【0116】
期間T4では、期間T3と同様に、第3切り替え部53がオン状態で、第1切り替え部51と第2切り替え部52がオフ状態である。この期間T4は、デッドタイムTD1に含まれる期間に相当し、ゲートソース間電圧VGS1がほぼ零となる期間である。また、期間T4以降、上アームQ1はオフ状態である。なお、期間T4の終了するタイミングは、上アームQ1がターンオフ動作した際のデッドタイムTD1の終了するタイミングと同一である。
【0117】
期間T5では、第2切り替え部52がオン状態で、第3切り替え部53と第1切り替え部51がオフ状態である。
【0118】
したがって、第4実施形態の第1駆動回路21によれば、上アームQ1がターンオフ動作する際にスイッチング特性に影響を及ぼすことなく、スイッチング動作を開始するまでの遅れ時間(期間tdoff1(図6)及び期間T2(図12))を短縮できる。
【0119】
なお、図12の上述の説明を第4実施形態における下アームQ2のターンオフ動作について説明に援用する。第4実施形態の第2駆動回路22によれば、下アームQ2がターンオフ動作する際にスイッチング特性に影響を及ぼすことなく、スイッチング動作を開始するまでの遅れ時間(期間tdoff2(図6))を短縮できる。
【0120】
図13は、第5実施形態の駆動装置を備える電力変換装置の構成例を示す図である。図13において、電力変換装置105は、上記の電力変換装置100の一実施形態であり、駆動装置205は、上記の駆動装置20の一実施形態である。第3実施形態において、上記の実施形態と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。
【0121】
図13は、一つの第1駆動回路21によって駆動される上アームQ1が、並列に接続された複数(この例では、3個)の上アーム素子により構成されている場合を示している。図13は、一つの第2駆動回路22によって駆動される下アームQ2が、並列に接続された複数(この例では、3個)の下アーム素子により構成されている場合を示している。
【0122】
一つの駆動回路に対して複数のスイッチング素子が接続されると、複数のスイッチング素子の間で電気的な振動が生じる場合があり、最悪の場合、素子が破壊する可能性がある。
【0123】
第5実施形態では、電力変換装置105は、第1制御線54に直列に接続又は挿入された第7抵抗素子77と、第2制御線64に直列に接続又は挿入された第8抵抗素子78とを備える。第7抵抗素子77は、上アームQ1の制御電極から、第1切り替え部51と第2切り替え部52との間の中間接続点までの経路において直列に挿入されている。第7抵抗素子77は、第1制御線54の分岐点と複数の上アーム素子の各制御電極との間を結ぶ複数の分岐線のそれぞれに直列に挿入された抵抗素子を含む。第8抵抗素子78は、下アームQ2の制御電極から、第4切り替え部61と第5切り替え部62との間の中間接続点までの経路において直列に挿入されている。第8抵抗素子78は、第2制御線64の分岐点と複数の下アーム素子の各制御電極との間を結ぶ複数の分岐線のそれぞれに直列に挿入された抵抗素子を含む。なお、第7抵抗素子77と第8抵抗素子78のうち一方のみが設けられてもよい。
【0124】
第7抵抗素子77を設けることにより、複数の上アーム素子の間での電気的振動を抑制し、上アームQ1の破壊を防ぐことができる。第8抵抗素子78を設けることにより、複数の下アーム素子の間での電気的振動を抑制し、下アームQ2の破壊を防ぐことができる。
【0125】
なお、上アーム素子又は下アーム素子の並列数は、3に限られず、2以上であれば、同様の効果が得られる。また、複数の上アーム素子もしくは複数の下アーム素子が並列に接続される構成、または、第7抵抗素子77もしくは第8抵抗素子78が追加される構成は、第1から第4の他の実施形態の構成に適用可能である。また、図13に示す第1駆動回路21及び第2駆動回路22は、第1から第4の実施形態を組み合わせた構成を有するが、第1から第4の実施形態のうち、一つの形態の構成又は複数の形態を組み合わせた構成を有してもよい。
【0126】
図14は、第3切り替え部53または第6切り替え部63の一構成例を示す図である。第1~第5実施形態において、第3切り替え部53または第6切り替え部63は、ドレイン端子が共通する複数のMOSFET601,602により形成された双方向スイッチを有する構成でもよい。双方向スイッチは、第1制御線54と第1基準線57との間または第2制御線64と第2基準線67との間において、電流を双方向に流すことが可能な素子である。しかし、第3切り替え部53は、第1制御線54から第1基準線57への一方向のみに電流を流す単方向スイッチを有する構成でもよく、第6切り替え部63は、第2制御線64から第2基準線67への一方向のみに電流を流す単方向スイッチを有する構成でもよい。第3切り替え部53または第6切り替え部63の構成は、これらの構成に限られず、種々のトランジスタの組み合せにより構成されてもよい。
【0127】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0128】
例えば、ハイサイドの駆動回路は、ローサイドの駆動回路と同じ構成に限られず、異なる構成でもよい。
【0129】
また、上記実施形態では、一相分のアームが上アームQ1と下アームQ2とが直列に接続された2レベル回路の素子を駆動する装置について説明した。しかし、本開示の技術は、出力電圧レベルが3レベル以上のマルチレベル回路の素子を駆動する駆動装置に適用されてもよい。
【0130】
なお、"または"という用語に関して、「AまたはB」を備える構成は、「AとBの少なくとも一方のみ」を含む構成でも、「AおよびBの両方」を含む構成でもよい。
【符号の説明】
【0131】
10 制御装置
20 駆動装置
21 第1駆動回路
22 第2駆動回路
30 第1制御回路
33 反転回路
34 排他的論理和ゲート
40 第2制御回路
43 反転回路
44 排他的論理和ゲート
50 第1ゲート駆動回路
51 第1切り替え部
52 第2切り替え部
53 第3切り替え部
54 第1制御線
55 第1正電源線
56 第1負電源線
57 第1基準線
60 第2ゲート駆動回路
61 第4切り替え部
62 第5切り替え部
63 第6切り替え部
64 第2制御線
65 第2正電源線
66 第2負電源線
67 第2基準線
71 第1抵抗素子
72 第2抵抗素子
73 第3抵抗素子
74 第4抵抗素子
75 第5抵抗素子
76 第6抵抗素子
81 第1ダイオード
82 第2ダイオード
83 第3ダイオード
84 第4ダイオード
91 第1コンデンサ
92 第2コンデンサ
100,101,102。103.104,105 電力変換装置
201,202,203,204,205 駆動装置
300 負荷
400 直流電源
601,602 MOSFET
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14