(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154770
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池システムの制御方法及び固体酸化物形燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04746 20160101AFI20241024BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20241024BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20241024BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20241024BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20241024BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241024BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20241024BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20241024BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20241024BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/0432
H01M8/249
H01M8/04 J
H01M8/04 Z
H01M8/04313
H01M8/0438
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068817
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 瑛介
(72)【発明者】
【氏名】武田 大
(72)【発明者】
【氏名】野田 哲史
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB04
5H127AB16
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA34
5H127BA58
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB19
5H127BB23
5H127BB37
5H127DA02
5H127DB12
5H127DB16
5H127DB22
5H127DB26
5H127DB32
5H127DB36
5H127DB42
5H127DB47
5H127DC02
5H127DC22
5H127DC74
5H127EE01
(57)【要約】
【課題】暖機時間を短縮可能な固体酸化物形燃料電池システムの制御方法及び固体酸化物形燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃焼器2と、内部改質機能を有するとともに、燃焼器2に熱的に接触する固体酸化物形燃料電池スタックである第1スタック1aとを備える固体酸化物形燃料電池システム100の制御方法が提供される。この固体酸化物形燃料電池システムの制御方法は、固体酸化物形燃料電池システム100起動時の暖機中において、燃焼器2近傍における第1スタック1aの最高温度T
maxが、部分酸化反応開始可能な温度を超えた場合に、第1スタック1aのアノード流路に燃料及び空気を供給し、部分酸化反応を開始する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器と、内部改質機能を有するとともに、前記燃焼器に熱的に接触する固体酸化物形燃料電池スタックである第1スタックとを備える固体酸化物形燃料電池システムの制御方法であって、
前記固体酸化物形燃料電池システム起動時の暖機中において、前記燃焼器近傍における前記第1スタックの最高温度が、部分酸化反応開始可能な温度を超えた場合に、前記第1スタックのアノード流路に燃料及び空気を供給し、部分酸化反応を開始する、
固体酸化物形燃料電池システムの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法であって、
前記固体酸化物形燃料電池システムは、前記燃焼器に熱的に接触する、前記第1スタックよりも熱容量が小さい固体酸化物形燃料電池スタックである第2スタックをさらに備え、
空気は、前記第2スタックのカソード流路、前記第1スタックのカソード流路、前記燃焼器の順に通過するように供給され、
燃料は、前記第1スタックのアノード流路、前記第2スタックのアノード流路、前記燃焼器の順に通過するように供給され、
前記部分酸化反応は、前記第1スタックのアノード流路を流れる燃料に空気を供給することで実行される、
固体酸化物形燃料電池システムの制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法であって、
前記第1スタックの最高温度は、前記固体酸化物形燃料電池システムの起動時における前記第1スタックのスタック温度と、前記燃焼器から前記第1スタックへの熱伝導量と、前記第1スタックに供給される空気から前記第1スタックへの熱伝達量と、前記第1スタック全体の熱容量と、前記第1スタックの底面部の熱容量とに基づき推定する、
固体酸化物形燃料電池システムの制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法であって、
前記固体酸化物形燃料電池システムは、前記燃焼器と前記第1スタックとの間に熱流束センサを備え、
前記燃焼器から前記第1スタックへの熱伝導量を、前記熱流束センサにより取得する、
固体酸化物形燃料電池システムの制御方法。
【請求項5】
請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃焼器から前記第1スタックへの熱伝導量を、前記燃焼器に供給する燃焼ガスの流量と、前記燃焼器の上流及び下流の温度から求められる前記燃焼器の入口と出口のエンタルピー差と、前記固体酸化物形燃料電池システムの暖機開始からの時間とに基づき演算する、
固体酸化物形燃料電池システムの制御方法。
【請求項6】
請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法であって、
前記第1スタックに供給される空気から前記第1スタックへの熱伝達量は、空気と前記第1スタックとの間の熱伝達率と、前記第1スタックのカソード流路の表面積と、前記第1スタックに供給される空気の温度と、前記第1スタックのスタック出口温度と、前記固体酸化物形燃料電池システムの暖機開始からの時間とに基づき推定する、
固体酸化物形燃料電池システムの制御方法。
【請求項7】
請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法であって、
前記第1スタックに供給される空気から前記第1スタックへの熱伝達量は、前記第1スタックに供給される空気の流量と、前記第1スタックのカソード流路の上流及び下流の温度から求められる前記第1スタックの入口と出口のエンタルピー差と、前記固体酸化物形燃料電池システムの暖機開始からの時間とに基づき推定する、
固体酸化物形燃料電池システムの制御方法。
【請求項8】
請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法であって、
前記第1スタックの底面部の熱容量は、前記第1スタックのエンドプレートの熱容量を含む、
固体酸化物形燃料電池システムの制御方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法であって、
前記固体酸化物形燃料電池システムは前記燃焼器近傍の前記第1スタック内に温度センサを備え、
前記第1スタックの最高温度を前記温度センサにより取得する、
固体酸化物形燃料電池システムの制御方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法であって、
前記第1スタックの最高温度を、前記固体酸化物形燃料電池システムの起動時における前記第1スタックのスタック温度と、前記固体酸化物形燃料電池システムの暖機時間とに基づき推定する、
固体酸化物形燃料電池システムの制御方法。
【請求項11】
燃焼器と、
内部改質機能を有するとともに、前記燃焼器に熱的に接触する固体酸化物形燃料電池スタックである第1スタックと、
前記第1スタックに供給する燃料及び空気の量を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記固体酸化物形燃料電池システム起動時の暖機中において、前記燃焼器近傍における前記第1スタックの最高温度が、部分酸化反応開始可能な温度を超えた場合に、前記第1スタックのアノード流路に燃料及び空気を供給し、部分酸化反応を開始する、
固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項12】
請求項11に記載の固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃焼器に熱的に接触する、前記第1スタックよりも熱容量が小さい固体酸化物形燃料電池スタックである第2スタックと、
上流側から前記第2スタック、前記第1スタック、前記燃焼器の順に空気が通過するように構成されたガス流路と、
上流側から前記第1スタック、前記第2スタック、前記燃焼器の順に燃料が通過するように構成されたガス流路と、
前記第1スタックのアノード流路に接続し、前記第1スタックのアノード流路に空気を供給可能なPOx流路と、をさらに備える、
固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載の固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃焼器は、燃料と燃料を燃焼するための空気が供給される加熱層と、前記加熱層と対向するとともに、空気が供給される被加熱層とが交互に積層して構成される熱交換器一体型燃焼器であり、
前記被加熱層は、前記加熱層における燃焼による熱により加熱される、
固体酸化物形燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池システムの制御方法及び固体酸化物形燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、熱交換器アセンブリの上下に、当該熱交換器アセンブリに熱的に接触する燃料電池スタックを配置した燃料電池システムを開示している。この燃料電池システムでは、燃料電池から出ていく空気や燃料の熱エネルギー、及び熱源を用いて熱交換器アセンブリに入ってくる空気を加熱している。
【0003】
ところで、燃料電池システムの中には、システム起動時に、燃料電池スタックの暖機を促進するために、部分酸化反応(POx:Partial Oxidation)を行うものがある。POxは、燃料電池スタックがPOx可能な温度に達してから、スタックのアノード流路に、燃料と空気とを供給することで実行される。そして、通常、POx可能か否かは、スタックから排出されるカソードガスのカソード流路出口における温度(スタック出口温度)がPOx可能な温度に達したか否かにより判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の燃料電池システムのように、燃料電池スタックが熱交換器や燃焼器等のアセンブリに熱的に接触する場合、燃料電池スタック内の熱交換器や燃焼器等アセンブリ近傍の温度がスタック出口温度よりも高くなる場合がある。このため、スタック出口温度が、POx可能な温度に達していなくても、スタック内部では局所的にPOx開始可能な温度になっている場合がある。従って、スタック出口温度に基づきPOx可能か否かを判断すると、POxの開始が遅れ、暖機に時間がかかってしまう虞がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、暖機時間を短縮可能な固体酸化物形燃料電池システムの制御方法及び固体酸化物形燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、燃焼器と、内部改質機能を有するとともに、燃焼器に熱的に接触する固体酸化物形燃料電池スタックである第1スタックとを備える固体酸化物形燃料電池システムの制御方法が提供される。この制御方法は、固体酸化物形燃料電池システム起動時の暖機中において、燃焼器近傍における第1スタックの最高温度が、部分酸化反応開始可能な温度を超えた場合に、第1スタックのアノード流路に燃料及び空気を供給し、部分酸化反応を開始する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固体酸化物形燃料電池システム起動時の暖機中において、燃焼器近傍における第1スタックの最高温度が、部分酸化反応開始可能な温度を超えた場合に、部分酸化反応を開始する。このように、第1スタックの内部(燃焼器近傍)の最高温度に基づきPOxを開始するため、第1スタックのスタック出口温度に基づきPOxを開始する場合に比べ、固体酸化物形燃料電池システムの暖機時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による制御方法が用いられる固体酸化物形燃料電池システムの概略構成図である。
【
図4】
図4は、燃焼器からの伝熱を示す模式図である。
【
図5】
図5は、POx開始制御を説明するタイムチャートである。
【
図6】
図6は、POx開始制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(実施形態)
図1は、本発明の一実施形態による制御方法が用いられる固体酸化物形燃料電池システム(以下、単に、燃料電池システムとも言う)100を示す概略構成図である。燃料電池システム100は、車両等に搭載され、固体酸化物形燃料電池スタック(以下、SOFCスタックともいう)1に対して発電に必要となる燃料(アノードガス)及び空気(カソードガス)を供給し、SOFCスタック1を車両走行用の電動モータ等の電気負荷に応じて発電させるシステムである。
【0012】
図1に示すように、燃料電池システム100は、SOFCスタック1(第1スタック1a及び第2スタック1b)、燃焼器と熱交換器を一体化したGPU(Gas Processing Unit)2、及び各種のガス流路等から構成される。ガス流路は、燃料供給路31、空気供給路34及び燃焼ガス供給路38と、ガス通路32,35,36、オフガス通路33,37及び排気通路39と、POx流路40とを含む(
図3を参照)。また、燃料電池システム100は、SOFCスタック1及びGPU2に供給する燃料及び空気の量を制御するコントローラ10を備える(
図3を参照)。
【0013】
第1スタック1a及び第2スタック1bは、それぞれ複数の燃料電池または燃料電池単位セル(以下、燃料電池と言う)を積層して構成される。第1スタック1a及び第2スタック1bは、内部にアノードガスが流れるアノード流路と、カソードガスが流れるカソード流路とを有し、アノードガスとカソードガスの供給を受けて発電する。燃料電池スタック1a,1bの発電源である個々の燃料電池は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)であり、高温で稼働する。
【0014】
第1スタック1aと第2スタック1bとは、GPU2を介して積層されている。即ち、燃料電池システム100は、2段に積層されたSOFCスタック1(1a,1b)を含み、積層された第1スタック1aと第2スタック1bとの間には、GPU2が介在している。
【0015】
また、第1スタック1aは、上端及び下端にそれぞれエンドプレート11a,12aを有し、第2スタック1bは、上端及び下端にそれぞれエンドプレート11b,12bを有している。第1スタック1aの下端の12a及び第2スタック1bの上端のエンドプレート11bは、それぞれGPU2に接触している。
【0016】
第1スタック1aを構成する燃料電池は、内部に改質触媒を備える。即ち、第1スタック1aは、内部改質機能を有している。燃料電池システム100の運転時に、外部の燃料タンク(不図示)に接続された燃料供給路31から第1スタック1aのアノード流路に燃料が供給される。また、第2スタック1bのカソード流路と第1スタック1aのカソード流路とを接続するガス通路36から第1スタック1aのカソード流路に空気(カソードガス)が供給される(
図3を参照)。第1スタック1aに供給された燃料は、第1スタック1aの内部で改質され、発電に必要なアノードガスが生成される。これにより、第1スタック1aは発電する。
【0017】
なお、第1スタック1aのカソード流路の入口には、第1スタック1aのスタック入口温度を検出する温度センサが、第1スタック1aのカソード流路の出口には、第1スタック1aのスタック出口温度を検出する温度センサがそれぞれ備えられている(いずれも不図示)。当該温度センサにより検出された第1スタック1aのスタック入口及び出口温度は、後述のコントローラ10に送信される。
【0018】
第2スタック1bは、第1スタック1aよりも熱容量が小さいSOFCスタックであり、また、第2スタック1bは、内部改質機能を有していない。燃料電池システム100の運転時に、第1スタック1aのアノード流路と第2スタック1bのアノード流路とを接続するガス通路32から第2スタック1bのアノード流路にアノードガスが供給される。また、GPU2の空気流路221(
図2を参照)と第2スタック1bのカソード流路とを接続するガス通路35から第2スタック1bのカソード流路に空気(カソードガス)が供給される(
図3を参照)。これにより、第2スタック1bは発電する。
【0019】
GPU2は、SOFCスタック1からのオフガスを燃焼する燃焼器(排気燃焼器)と、燃焼されたオフガスの熱によりSOFCスタック1に供給する空気(カソードガス)を加熱する熱交換器(空気熱交換器)を一体化して構成される。GPU2は、第1スタック1aと第2スタック1bとの間に介在し、第1スタック1a及び第2スタック1bのそれぞれに接触している。
【0020】
図2は、GPU2の断面斜視図である。
図2に示すように、GPU2は、加熱層21と、加熱層21と対向する被加熱層22とが交互に積層して構成される。加熱層21は、燃焼ガスが供給される複数の燃焼ガス流路211を含む。また、燃焼ガス流路211内には、燃焼触媒(不図示)が塗布されている。被加熱層22は、SOFCスタック1に供給するための空気(カソードガス)が供給される複数の空気流路221を含む。
【0021】
燃料電池システム100の運転時には、加熱層21の燃焼ガス流路211にアノードオフガス及びカソードオフガス(燃焼ガス)が供給され、被加熱層22の空気流路221に空気が供給される。燃焼ガス流路211にオフガスが供給されると、触媒燃焼により発熱し、燃焼ガスと、被加熱層22の空気流路221を流れる空気との間で熱交換が行われる。これにより、空気流路221を流れる、SOFCスタック1に供給するための空気(カソードガス)が加熱される。
【0022】
一方、燃料電池システム100の起動時には、加熱層21の燃焼ガス流路211に燃料及び燃料を燃焼するための空気(燃焼ガス)が供給され、触媒燃焼により発熱する。これにより、SOFCスタック1が暖機される。
【0023】
このように、GPU2は、オフガスを燃焼して無害化する燃焼器としての機能と、空気を加熱する熱交換器としての機能とを有する熱交換器一体型の燃焼器である。また、GPU2は、燃料電池システム100の起動時に、燃料及び空気を燃焼してSOFCスタック1を暖機する機能も有している。
【0024】
なお、GPU2と第1スタック1aとの間には、GPU2から第1スタック1aへの熱伝導量を検出する熱流束センサ(不図示)が備えられている。当該流束センサにより検出されたGPU2から第1スタック1aへの熱伝導量は、後述のコントローラ10に送信される。
【0025】
図3は、各種のガス流路を模式的に示した図である。
図3に示すように、燃料電池システム100のガス流路は、燃料供給路31、アノードガス通路32、アノードオフガス通路33、空気供給路34、第1カソードガス通路35、第2カソードガス通路36、カソードオフガス通路37、燃焼ガス供給路38、排気通路39及びPOx流路40を含む。
【0026】
燃料供給路31は、外部の燃料タンク(不図示)と、第1スタック1a内のアノード流路の入口とを接続する通路であり、第1スタック1aに燃料を供給する。燃料タンクと第1スタック1aとの間の燃料供給路31上には、インジェクタ(不図示)が配置されており、インジェクタの噴射量を調節することで、第1スタック1aに供給する燃料の量を制御することができる。なお、インジェクタの噴射量は、後述のコントローラ10により制御される。燃料供給路31から第1スタック1aに供給された燃料は、第1スタック1a内で改質され、発電に必要なアノードガスが生成される。
【0027】
アノードガス通路32は、第1スタック1a内のアノード流路の出口と、第2スタック1b内のアノード流路の入口とを接続する通路であり、第1スタック1a内で改質されたアノードガスを第2スタック1bに供給する。
【0028】
アノードオフガス通路33は、第2スタック1b内のアノード流路の出口と、燃焼ガス供給路38とを接続する通路であり、第2スタック1bから排出されるアノードオフガスを燃焼ガス供給路38に供給する。
【0029】
空気供給路34は、外部の空気を取り込むコンプレッサ(不図示)と、GPU2の空気流路221の入口とを接続する通路であり、GPU2に空気を供給する。前述のとおり、GPU2に供給された空気は、GPU2内で燃焼ガスと熱交換され加熱される。コンプレッサとGPU2との間の空気供給路34上には、GPU2に供給する空気の量を調節可能なバルブ(不図示)等が配置されている。当該コンプレッサ及びバルブの動作は、後述のコントローラ10により制御される。
【0030】
第1カソードガス通路35は、GPU2の空気流路221の出口と、第2スタック1b内のカソード流路の入口とを接続する通路であり、GPU2で加熱された空気(カソードガス)を第2スタック1bに供給する。即ち、第2スタック1bには、アノードガス通路32からアノードガスが供給され、第1カソードガス通路35からカソードガスが供給される。これにより、第2スタック1bは発電する。
【0031】
第2カソードガス通路36は、第2スタック1b内のカソード流路の出口と、第1スタック1a内のカソード流路の入口とを接続する通路であり、第1スタック1aにカソードガスを供給する。即ち、第1スタック1aには、燃料供給路31から燃料が供給され、第1スタック1a内で発電可能なアノードガスに改質され、第2カソードガス通路36からカソードガスが供給される。これにより、第1スタック1aは発電する。
【0032】
カソードオフガス通路37は、第1スタック1a内のカソード流路の出口と、燃焼ガス供給路38とを接続する通路であり、第1スタック1aから排出されるカソードオフガスを燃焼ガス供給路38に供給する。
【0033】
燃焼ガス供給路38は、アノードオフガス通路33及びカソードオフガス通路37と、GPU2の燃焼ガス流路211の入口とを連結する通路である。燃焼ガス供給路38内では、アノードオフガス通路33から供給されるアノードオフガスと、カソードオフガス通路37から供給されるカソードオフガスとが混合される。燃焼ガス供給路38内の混合ガスは、燃焼ガスとしてGPU2の燃焼ガス流路211に供給される。燃焼ガス供給路38からGPU2に供給された燃焼ガスは、GPU2内で触媒燃焼され、無害化された排ガスとして排気通路39を介して外部に排出される。また、触媒燃焼による燃焼ガスの熱により、GPU2の空気流路221を流れる空気(カソードガス)が加熱される。
【0034】
なお、燃料電池システム100の起動時には、GPU2の燃焼ガス流路211に燃料及び燃料を燃焼するための空気を混合した燃焼ガスが供給され、触媒燃焼により燃焼ガスが発熱する。これにより、SOFCスタック1が暖機される。燃料電池システム100の起動時におけるGPU2への燃料及び空気の供給は、オフガス通路33,37を用いてもよいが、燃焼ガス供給路38に接続するガス流路を別途設けて、当該ガス流路から燃焼ガス供給路38を介してGPU2に供給してもよい。
【0035】
排気通路39は、GPU2の燃焼ガス流路211の出口と、燃料電池システム100の外部とを接続する通路であり、GPU2から排出された排ガスを外部に排出する。
【0036】
POx流路40は、空気供給路34から分岐して燃料供給路31に連結する通路であり、燃料電池システム100(SOFCスタック1)の暖機時に、燃料供給路31を介して第1スタック1aのアノード流路に部分酸化(POx)反応用の空気を供給する。POxは発熱反応であるため、POx流路40から第1スタック1aのアノード流路を流れる燃料に空気が供給され、POxが実行されると、SOFCスタック1の暖機が促進される。なお、空気供給路34から分岐してPOx流路40内に流入する空気の量は、三方弁(不図示)等により調節される。当該三方弁の動作は、後述のコントローラ10により制御される。
【0037】
コントローラ10は、1または複数のコンピュータを含み、例えば、中央演算装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等を備える。コントローラ10は、各種センサによる検出値を取得する。また、コントローラ10は、インジェクタやバルブ等の動作を制御し、これにより、SOFCスタック1とGPU2に供給する空気及び燃料の量を制御する。また、コントローラ10は、特定のプログラムを実行することにより燃料電池システム100の制御のための処理を実行する。例えばコントローラ10は、後述するPOx開始制御を実行する。
【0038】
以上のとおり、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム100は、GPU2を介して第1スタック1aと第2スタック1bとが積層され、燃料電池システム100の運転時には、燃料が、第1スタック1aのアノード流路、第2スタック1bのアノード流路、GPU2の順に通過するように供給され、空気が、第2スタック1bのカソード流路、第1スタック1aのカソード流路、GPU2の順に通過するように供給される。また、燃料電池システム100の起動時には、GPU2に燃料及び燃料を燃焼するための空気を混合した燃焼ガスが供給され、燃焼ガスが燃焼されることで燃料電池システム100(SOFCスタック1)が暖機される。
【0039】
ところで、燃料電池システムの中には、システム起動時に、燃料電池スタックの暖機を促進するために、部分酸化反応(POx)を行うものがある。本実施形態においても、前述のとおり、燃料電池システム100起動時の暖機中において、POx流路40から第1スタック1aのアノード流路を流れる燃料に空気を供給し、POxを実行することで暖機を促進している。
【0040】
ここで、POxは、燃料電池スタックがPOx可能な温度に達してから、燃料電池スタックのアノード流路に、燃料と空気とを供給することで実行される。そして、通常、POx可能か否かは、燃料電池スタックから排出されるカソードガスのカソード流路出口における温度(スタック出口温度)がPOx可能な温度に達したか否かにより判断される。
【0041】
しかしながら、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム100のように、燃料電池スタック(SOFCスタック1)がGPU2のような燃焼器に接触する場合、燃料電池スタック内部の燃焼器近傍の温度がスタック出口温度よりも高くなる場合がある。このため、スタック出口温度が、POx可能な温度に達していなくても、スタック内部では局所的にPOx開始可能な温度になっている場合がある。従って、スタック出口温度で、POx可能か否かを判断すると、POxの開始が遅れ、暖機に時間がかかってしまう虞がある。
【0042】
そこで、本実施形態においては、GPU2(燃焼器)近傍における第1スタック1aの最高温度Tmaxが、POx開始可能な温度を超えた場合に、POxを開始することとした。このように、第1スタック1aの内部(GPU2近傍)の最高温度Tmaxに基づきPOxを開始するため、第1スタック1aのスタック出口温度に基づきPOxを開始する場合に比べ、固体酸化物形燃料電池システム100(SOFCスタック1)の暖機時間を短縮することができる。
【0043】
以下、本実施形態における固体酸化物形燃料電池システム100の制御方法の詳細を説明する。
【0044】
【0045】
前述のとおり、燃料電池システム100の起動時においては、第1スタック1a及び第2スタック1bを含む燃料電池システム100を暖機するために、GPU2に燃焼ガスが供給され、触媒燃焼される。
【0046】
また、燃料電池システム100起動時の暖機中において、第1スタック1aがPOx可能な温度に達すると、POx流路40から第1スタック1aのアノード流路を流れる燃料に空気を供給し、POxを行い、暖機を促進する。
【0047】
ここで、本実施形態の燃料電池システム100では、GPU2が第1スタック1a及び第2スタック1bのそれぞれに接触している。従って、燃料電池システム100の起動時に、GPU2において燃焼ガスが燃焼されると、GPU2と第1スタック1a及び第2スタック1bとの直接の熱交換により、第1スタック1a及び第2スタック1bが暖機される。
【0048】
このように、燃料電池システム100では、GPU2と第1スタック1a及び第2スタック1bとの直接の熱交換により第1スタック1a及び第2スタック1bが暖機されるため、暖機中において、第1スタック1a及び第2スタック1bは、GPU2近傍における温度が最も高くなる。例えば、
図4に示すように、暖機中において第1スタック1aは、GPU2近傍(
図4のHで示した領域)の底面側の温度が最も高くなると推定される。従って、燃料電池システム100起動時の暖機中、第1スタック1aは、GPU2近傍の底面側の温度が、最も早くPOx可能な温度に達すると想定される。このため、POx可能か否かを、第1スタック1aのカソード流路出口における温度がPOx可能な所定温度に達したか否かにより判断すると、スタック内部がPOx開始可能な温度であっても、POx可能な温度に達していないと判断される虞がある。即ち、POxの開始が遅れ、暖機に時間がかかってしまう虞がある。従って、本実施形態の燃料電池システム100では、GPU2近傍における第1スタック1aの最高温度T
maxが、POx開始可能な温度を超えた場合に、第1スタック1aのアノード流路に燃料及び空気を供給して、POxを開始する。これにより、第1スタック1aのカソード流路出口における温度に基づきPOxを開始する場合に比べ、燃料電池システム100(SOFCスタック1)の暖機時間を短縮することができる。
【0049】
ここで、第1スタック1a内のGPU2近傍に温度センサを設けて第1スタック1a内の最高温度Tmaxを取得する場合、耐熱性の高い温度センサを用いる必要があり、コストが上昇する恐れがある。従って、本実施形態では、第1スタック1aに供給される熱量から第1スタック1aの最高温度Tmaxを推定する。これにより、第1スタック1a内のGPU2近傍に温度センサを設けることなく、第1スタック1aの最高温度Tmaxを取得することができる。
【0050】
具体的には、以下の式(1)により燃料電池システム100の起動時の暖機中における第1スタック1aの最高温度Tmaxを推定し、推定された第1スタック1aの最高温度TmaxがPOx可能な所定温度を超えた場合にPOxを開始する。なお、式(1)におけるTst0は燃料電池システム100の起動時(以下、単に起動時とも言う)における第1スタック1aのスタック温度(カソード流路出口の温度)、Qcaは第1スタック1aのカソード流路に供給される空気(カソードガス)から第1スタック1aへの熱伝達量、Callは第1スタック1a全体の熱容量、QGPUはGPU2から第1スタック1aへの熱伝導量、Cboは第1スタック1aの底面部(GPU2に隣接する部分)の熱容量、tは暖機開始時からの時間を表す。
【0051】
【0052】
起動時における第1スタック1aのスタック温度Tst0は、第1スタック1aのカソード流路出口に設けられた温度センサにより取得することができる。また、GPU2から第1スタック1aへの熱伝導量QGPUは、GPU2と第1スタック1aとの間に設けられた熱流束センサにより取得することができる。また、暖機開始時からの時間tは、コントローラ10のタイマ機能により取得することができる。
【0053】
第1スタック1a全体の熱容量Call及び第1スタック1aの底面部の熱容量Cboは、予め算出または実験等により取得することができる。なお、第1スタック1aの底面部の熱容量Cboは、第1スタック1aのエンドプレート12aの熱容量を含むように算出される。例えば、第1スタック1aの底面部の熱容量Cboは、エンドプレート12aの熱容量と、第1スタック1a内の積層された電池セルの下から10パーセント分の熱容量を足して算出されるが、これに限られない。このように第1スタック1aの底面部の熱容量Cboを、エンドプレート12aの熱容量を含むように算出することで、底面部の熱容量Cboをより正確に取得することができる。
【0054】
第1スタック1aのカソード流路に供給される空気(カソードガス)から第1スタック1aへの熱伝達量Qcaは、熱伝達の伝熱式である以下の式(2)から推定することができる。なお、式(2)におけるAは第1スタック1aのカソード流路の表面積(伝熱面積)、hは空気と第1スタック1aとの間の熱伝達率、Tcaは第1スタック1aのカソード流路入口における空気(カソードガス)の温度、Tstは第1スタック1aのカソード流路出口における空気(カソードガス)の温度を表す。ここで、第1スタック1aのカソード流路の表面積Aは、予め取得することができ、空気と第1スタック1aとの間の熱伝達率hは、実験等により予め取得、または流路形状とガス条件から推定することができる。また、第1スタック1aのカソード流路入口における空気(カソードガス)の温度Tca及びカソード流路出口における空気(カソードガス)の温度Tstは、第1スタック1aのカソード流路入口及び出口に設けられた温度センサにより、それぞれ取得することができる。
【0055】
【0056】
このように、第1スタック1aに供給される熱量から第1スタック1a内部の最高温度Tmaxを推定するため、第1スタック1a内のGPU2近傍に耐熱性の高い温度センサを設けることなく第1スタック1a内部の最高温度をTmax取得することができる。従って、燃料電池システム100を低コスト化することができる。
【0057】
図5は、本実施形態におけるPOx開始時間の制御(以下、POx開始制御という)を説明するタイムチャートである。
【0058】
図5に示すように、時刻t
0において燃料電池システム100が起動され、暖機が開始されると、第1スタック1aのカソード流路出口温度(スタック出口温度)T
stが上昇していく。
【0059】
ここで、第1スタック1aのスタック出口温度Tstに基づきPOxを開始する場合、スタック出口温度がPOx可能な所定温度T2に達する時刻t2において、POxが開始され、時刻t4において第1スタック1aのスタック出口温度Tstが暖機完了温度T3に達し、暖機が完了する。
【0060】
一方、本実施形態においては、GPU2近傍における第1スタック1aの最高温度Tmaxに基づきPOxを開始する。例えば、第1スタック1a内の最高温度TmaxがPOx可能な所定温度T2に達する時刻をt1とする。時刻t1において、第1スタック1aのスタック出口温度TstはT2より低いT1であるが、第1スタック1a内の最高温度TmaxがPOx可能な所定温度T2に達しているため、時刻をt1において、POxが開始される。これにより、時刻t1以降、POxにより暖機が促進され、第1スタック1aの温度がより急速に上昇する。時刻t3において第1スタック1aのスタック出口温度Tstが暖機完了温度T3に達すると、暖機が完了する。即ち、第1スタック1aのスタック出口温度Tstに基づきPOxを開始する場合に比べ、Δt(=t4-t3)分だけ早く暖機が完了する。
【0061】
このように、本実施形態においては、GPU2近傍における第1スタック1aの最高温度Tmaxに基づきPOxを開始するため、第1スタック1aのスタック出口温度Tstに基づきPOxを開始する場合に比べ、暖機時間を短縮することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、第1スタック1aと、第1スタック1aよりも熱容量が小さい第2スタック1bの間にGPU2が介在している。従って、GPU2において燃焼ガスが燃焼され、暖機が開始されると、第1スタック1aの暖機が完了するよりも前(POxt中)に、第2スタック1bの暖機が完了する。即ち、第1スタック1aの暖機が完了する前に、第2スタック1bによる発電を開始することができる。このように、第1スタック1aよりも熱容量が小さい第2スタック1bを燃焼器(GPU2)に隣接させることで、より早期に発電を開始することができる。
【0063】
図6は、POx開始制御を説明するフローチャートである。以下の制御は、いずれもコントローラ10により実行される。
【0064】
燃料電池システム100が起動されると、ステップS101において、コントローラ10は、燃料電池システム100の起動時における第1スタック1aのスタック温度(カソード流路出口の温度)Tstを取得する。
【0065】
ステップS102において、コントローラ10は、前述の式(2)を用いて、第1スタック1aに供給される空気(カソードガス)から第1スタック1aへの熱伝達量(以下、カソードからの熱伝達量とも言う)Qcaを推定する。
【0066】
ステップS103において、コントローラ10は、GPU2から第1スタック1aへの熱伝導量(以下、GPU2からの熱伝導量とも言う)QGPUを取得する。
【0067】
ステップS104において、コントローラ10は、GPU2近傍における第1スタック1aの最高温度Tmaxを推定する。具体的には、起動時における第1スタック1aのスタック温度Tst0、カソードガスからの熱伝達量Qca、GPU2からの熱伝導量QGPU、予め取得しておいた第1スタック1a全体の熱容量Call及び第1スタック1aの底面部の熱容量Cbo、及び暖機開始時からの時間tに基づき、前述の式(1)を用いて第1スタック1aの最高温度Tmaxを推定する。
【0068】
ステップS105において、コントローラ10は、ステップS104で推定したGPU2近傍における第1スタック1aの最高温度Tmaxが、POx開始可能な所定温度T2よりも大きいか否かを判断する。
【0069】
GPU2近傍における第1スタック1aの最高温度Tmaxが、POx開始可能な所定温度T2よりも大きい場合、コントローラ10は、ステップS106において、POxを開始する。即ち、燃料供給路31から第1スタック1aのアノード流路に燃料を供給するとともに、POx流路40から第1スタック1aのアノード流路を流れる燃料に空気を供給する。なお、第1スタック1aに供給される燃料は、例えばメタンを90パーセント以上含む燃料ガスであるが、これに限られない。また、POx可能な所定温度T2は、例えば300℃であるが、これに限られない。
【0070】
一方、GPU2近傍における第1スタック1aの最高温度Tmaxが、POx開始可能な所定温度T1以下の場合、コントローラ10は、ステップS102に戻り、第1スタック1aの最高温度Tmaxが、POx開始可能な所定温度T1を超えるまで、ステップS102~S105の処理を繰り返す。
【0071】
なお、本実施形態においては、第1スタック1aと第2スタック1bとが、GPU2に接触しているものとしたが、必ずしもこれに限られず、第1スタック1aと第2スタック1bは、GPU2に物理的に接していなくても、熱的に接触していればよい。
【0072】
また、本実施形態においては、第1スタック1aと第2スタック1bとが、GPU2を介して積層されている構成としたが、必ずしもこれに限られない。即ち、第1スタック1aと第2スタック1bは、GPU2と熱的に接触していれば、どのような位置関係であってもよい。
【0073】
また、本実施形態においては、第2スタック1bが改質機能を有していないものとしたが必ずしもこれに限られず、第2スタック1bが改質機能を有していてもよい。
【0074】
また、本実施形態の
図3では、第1スタック1a、第2スタック1b及びGPU2のいずれも空気(カソードガス)と燃料(アノードガス)、または空気(カソードガス)と燃焼ガスとが反対方向に流れるカウンターフローの構成としたが、必ずしもこれに限られない。即ち、第1スタック1a、第2スタック1b及びGPU2は、空気(カソードガス)と燃料(アノードガス)、または空気(カソードガス)と燃焼ガスとが同一方向に流れるコフローの構成を含んでいてもよい。
【0075】
上記した実施形態の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法及び固体酸化物形燃料電池システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0076】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法によれば、第1スタック1aがGPU2(燃焼器)に熱的に接触する固体酸化物形燃料電池システム100において、固体酸化物形燃料電池システム100の起動時の暖機中に、GPU2(燃焼器)近傍における第1スタック1aの最高温度Tmaxが、POx(部分酸化反応)開始可能な温度を超えた場合に、POx(部分酸化反応)を開始する。このように、第1スタック1a内部(燃焼器近傍)の最高温度Tmaxに基づきPOxを開始するため、第1スタック1aのスタック出口温度Tstに基づきPOxを開始する場合に比べ、固体酸化物形燃料電池システム100の暖機時間を短縮することができる。
【0077】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法によれば、固体酸化物形燃料電池システム100は第1スタック1aよりも熱容量が小さい第2スタック1bを備え、空気は、第2スタック1bのカソード流路、第1スタック1aのカソード流路、GPU2(燃焼器)の順に通過するように供給される。また、燃料は、第1スタック1aのアノード流路、第2スタック1bのアノード流路、GPU2(燃焼器)の順に通過するように供給され、POx(部分酸化反応)は、第1スタック1aのアノード流路を流れる燃料に空気を供給することで実行される。このように、熱容量が小さい第2スタック1bを設け、熱容量の大きい第1スタック1aにおいてPOxを実行することで、熱容量が小さい第2スタック1bは、POx中に暖機が完了し、発電可能となる。これにより、より早期に発電を開始することができる。
【0078】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法によれば、第1スタック1aの最高温度Tmaxは、固体酸化物形燃料電池システム100の起動時における第1スタック1aのスタック温度Tst0と、GPU2(燃焼器)から第1スタック1aへの熱伝導量QGPUと、第1スタック1aに供給される空気から第1スタック1aへの熱伝達量Qcaと、第1スタック1a全体の熱容量Callと、第1スタック1aの底面部の熱容量Cboとに基づき推定する。これにより、第1スタック1a内のGPU2近傍に温度センサを設けることなく、第1スタック1aの最高温度Tmaxを取得することができる。即ち、耐熱性の高い温度センサを用いる必要が無いため、固体酸化物形燃料電池システム100を低コスト化することができる。
【0079】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法によれば、固体酸化物形燃料電池システム100は、GPU2(燃焼器)と第1スタック1aとの間に流束センサを備え、GPU2(燃焼器)から第1スタック1aへの熱伝導量QGPUを当該流束センサにより取得する。これにより、第1スタック1aの底面部に供給される熱量を高精度に取得することができる。
【0080】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法によれば、第1スタック1aに供給される空気から第1スタック1aへの熱伝達量Qcaは、空気と第1スタック1aとの間の熱伝達率hと、第1スタック1aのカソード流路の表面積Aと、第1スタック1aに供給される空気の温度Tcaと、第1スタック1aのスタック出口温度Tstと、固体酸化物形燃料電池システム100の暖機開始からの時間tとに基づき推定する。これにより、第1スタック1aに供給される熱量を簡易に推定することができる。
【0081】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池システムの制御方法によれば、第1スタック1aの最高温度Tmaxを推定する際に用いる第1スタック1aの底面部の熱容量Cboは、第1スタック1aのエンドプレート12aの熱容量を含む。これにより、第1スタック1aの底面部の熱容量Cbをより正確に取得することができる。
【0082】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム100は、GPU2(燃焼器)に熱的に接触する第1スタック1aと、コントローラ10とを備える。コントローラ10は、固体酸化物形燃料電池システム100起動時の暖機中において、GPU2(燃焼器)近傍における第1スタック1aの最高温度Tmaxが、POx(部分酸化反応)開始可能な温度を超えた場合に、POx(部分酸化反応)を開始する。これにより、第1スタック1aのスタック出口温度Tstに基づきPOxを開始する場合に比べ、固体酸化物形燃料電池システム100の暖機時間を短縮することができる。
【0083】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム100は、GPU2(燃焼器)に熱的に接触する、第1スタック1aよりも熱容量が小さい第2スタック1bを備える。また、上流側から第2スタック1b、第1スタック1a、GPU2(燃焼器)の順に空気が通過するように構成されたガス流路と、上流側から第1スタック1a、第2スタック1b、GPU2(燃焼器)の順に燃料が通過するように構成されたガス流路と、第1スタック1aのアノード流路に接続するPOx流路40とを備える。このように、GPU2(燃焼器)に熱的に接触する、熱容量が小さい第2スタック1bを備えるため、固体酸化物形燃料電池システム100起動時の暖機中に、熱容量の大きい第1スタック1aにおいてPOxを実行すると、熱容量が小さい第2スタック1bは、POx中に暖機が完了し、発電可能となる。従って、第1スタック1aの暖機完了前に、第2スタック1bにより、より早期に発電を開始することができる。
【0084】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム100は、GPU2(燃焼器)が、燃料と燃料を燃焼するための空気が供給される加熱層21と、加熱層21と対向するとともに、空気が供給される被加熱層22とが交互に積層して構成される熱交換器一体型燃焼器であり、被加熱層22が加熱層21における燃焼による熱により加熱される。このように、熱交換器一体型燃焼器であるGPU2を用いているため、システムをコンパクト化することができる。
【0085】
なお、より早期に発電を開始できるように、本実施形態のように、燃料電池システム100は、第1スタック1aと、第1スタック1aよりも熱容量が小さい第2スタック1bとを備えることが好ましいが、必ずしもこれに限られない。即ち、第1スタック1aのみを備える構成であってもよい。また、逆に、SOFCスタックを3つ以上備える構成であってもよい。
【0086】
また、本実施形態のGPU2のように、燃焼器は、熱交換器一体型燃焼器であることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、熱交換器の機能を有していない燃焼器を用いてもよい。
【0087】
また、本実施形態においては、GPU2(燃焼器)から第1スタック1aへの熱伝導量QGPUを流束センサにより取得しているが、必ずしもこれに限られない。例えば、GPU2(燃焼器)に供給する燃焼ガスの流量とGPU2(燃焼器)の上流及び下流の温度とから求められるGPU2(燃焼器)の入口と出口のエンタルピー差と、固体酸化物形燃料電池システム100の暖機開始からの時間とに基づき演算して取得してもよい。
【0088】
具体的には、まず、GPU2(燃焼器)入口(上流)の温度から、エンタルピーH°の近似式である以下の式(3)を用いて、GPU2(燃焼器)入口における燃焼ガス(燃料及び空気)の各ガス成分の1モル当たりのエンタルピーH°(J/mol)を算出する。このエンタルピーH°(J/mol)に、GPU2(燃焼器)入口における各ガスの流量を掛けて、各ガスの単位時間当たりのエンタルピー量を算出する。算出された各ガスの単位時間当たりのエンタルピー量を合計し、GPU2(燃焼器)入口における燃焼ガス(燃料及び空気)の単位時間当たりのエンタルピー量を算出する。なお、式(3)におけるTは温度、Rは気体定数、a1~a7はガス固有の係数である。
【0089】
【0090】
次に、GPU2(燃焼器)入口の燃焼ガスが完全に燃焼したと仮定して、GPU2(燃焼器)出口(下流)における燃焼ガスの各ガス成分の流量と温度から、式(3)を用いて、同様に、GPU2(燃焼器)出口における単位時間当たりのエンタルピー量を算出する。
【0091】
次に、GPU2(燃焼器)入口と出口のエンタルピー量の差が、GPU2(燃焼器)からの放熱分であるとして、そのおよそ半分が第1スタック1aに入熱するものと推定する。なお、燃料電池システム100が第2スタック1bを備えていない場合は、GPU2(燃焼器)からの放熱分のほぼすべてが第1スタック1aに入熱するものと推定する。また、燃焼器がGPU2のように、熱交換器の機能も有している場合は、GPU2(燃焼器)からの放熱分から、空気(カソードガス)と熱交換される分の放熱量を差し引いて第1スタック1aへの入熱量を推定する。
【0092】
次に、推定された第1スタック1aへの入熱量を時間積算することで、GPU2(燃焼器)から第1スタック1aに供給された熱量(熱伝導量QGPU)を推定し、取得する。
【0093】
このように、GPU2(燃焼器)入口と出口のエンタルピー差を用いた演算によってもGPU2(燃焼器)から第1スタック1aへの熱伝導量QGPUを取得することができる。なお、この場合、GPU2(燃焼器)入口及び出口の燃焼ガスの流量はガス流量計等により取得し、GPU2(燃焼器)入口及び出口の温度は温度センサ等により取得することができる。
【0094】
また、本実施形態においては、第1スタック1aに供給される空気から第1スタック1aへの熱伝達量Qcaは、熱伝達の伝熱式である式(2)を用いて推定しているが、必ずしもこれに限られない。例えば、熱伝達量Qcaは、第1スタック1aに供給される空気の流量と、第1スタック1aのカソード流路の上流及び下流の温度とから求められる第1スタック1aの入口と出口のエンタルピー差と、固体酸化物形燃料電池システム100の暖機開始からの時間とに基づき推定してもよい。
【0095】
具体的には、まず、第1スタック1aのカソード流路入口(上流)及び出口(下流)の空気(カソードガス)流量と温度から、エンタルピーH°の近似式である前述の式(3)を用いて、第1スタック1aのカソード流路入口及び出口のエンタルピーを算出する。
【0096】
次に、第1スタック1aのカソード流路入口と出口のエンタルピー差が第1スタック1aに入熱されたとして、当該入熱量を時間積分することで、第1スタック1aに供給される空気から第1スタック1aへ供給された熱量(熱伝達量Qca)を推定する。
【0097】
このように、第1スタック1aのカソード流路入口と出口のエンタルピー差を用いた演算によっても、第1スタック1aに供給される空気から第1スタック1aへの熱伝達量Qcaを推定することができる。なお、この場合、第1スタック1aのカソード流路入口及び出口の空気(カソードガス)流量はガス流量計等により取得し、第1スタック1aのカソード流路入口及び出口の温度は温度センサ等により取得することができる。
【0098】
また、本実施形態においては、第1スタック1aの最高温度Tmaxを第1スタック1aに供給される熱量から推定しているが、必ずしもこれに限られない。例えば、燃料電池システム100の暖機開始時における第1スタック1aのスタック温度(カソード流路出口の温度)と、暖機時間とに基づき推定してもよい。
【0099】
具体的には、予め実験等により、
図7に示すような、暖機時間と、第1スタック1aの最高温度との関係を示す昇温プロファイルを取得し、当該昇温プロファイルを参照することで、第1スタック1aの最高温度T
maxを推定する。例えば、暖機開始時における第1スタック1aのスタック温度がT
0であった場合、暖機開始後、時間がΔt
1秒だけ経過すると、
図7の昇温プロファイルから、第1スタック1aの最高温度はT
1となると推定することができる。なお、さらに時間がΔt
2秒経過すると、第1スタック1aの最高温度はPOx可能な所定温度T
2に達する。
【0100】
このように、暖機開始時における第1スタック1aのスタック温度と、予め取得した昇温プロファイルを用いて第1スタック1aの最高温度Tmaxを推定することもできる。この場合も、第1スタック1a内のGPU2近傍に温度センサを設けることなく、第1スタック1aの最高温度Tmaxを取得することができ、固体酸化物形燃料電池システム100を低コスト化することができる。
【0101】
また、低コスト化の観点から、第1スタック1aの最高温度Tmaxは、本実施形態のように第1スタック1aに供給される熱量から推定するか、暖機開始時における第1スタック1aのスタック温度と昇温プロファイルにより推定することが好ましいが、必ずしもこれに限られない。即ち、第1スタック1a内のGPU2近傍に温度センサを設けて、GPU2近傍における第1スタック1aの最高温度Tmaxを温度センサにより直接取得してもよい。これにより、第1スタック1aの最高温度Tmaxを、より正確に取得することができる。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0103】
上記した各実施形態は、それぞれ単独の実施形態として説明したが、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1、固体酸化物形燃料電池スタック(SOFCスタック),1a、第1スタック,1b、第2スタック,2、GPU,10、コントローラ,100、固体酸化物形燃料電池システム