(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154776
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】海水力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 13/26 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
F03B13/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068830
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】596007577
【氏名又は名称】株式会社アントレックス
(71)【出願人】
【識別番号】593111738
【氏名又は名称】艫居 隆三
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 覚
(72)【発明者】
【氏名】艫居 隆三
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA06
3H074AA12
3H074BB11
3H074CC42
3H074CC50
(57)【要約】
【課題】周囲の海水の移動方向が如何なる方向であっても効率よく発電可能な海水力発電装置を提供する。
【解決手段】海に浮かべられる浮遊体15と、海の中に位置する部位である水中移動部42Aを備え、水中移動部の長さを変えるように浮遊体に対して相対移動可能であり、可撓性を有する索条42と、浮遊体に設けられ、水中移動部の長さを大きくするように索条が浮遊体に対して相対移動するのを許容し且つエネルギーを蓄積する許容動作及びエネルギーを利用して水中移動部の長さを小さくするように索条を巻取る巻取動作を実行可能な巻取装置20と、巻取装置が巻取動作及び許容動作の少なくとも一方を実行するときに発電する発電機60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海に浮かべられる浮遊体と、
前記海の中に位置する部位である水中移動部を備え、前記水中移動部の長さを変えるように前記浮遊体に対して相対移動可能であり、可撓性を有する索条と、
前記浮遊体に設けられ、前記水中移動部の長さを大きくするように前記索条が前記浮遊体に対して相対移動するのを許容し且つエネルギーを蓄積する許容動作及び前記エネルギーを利用して前記水中移動部の長さを小さくするように前記索条を巻取る巻取動作を実行可能な巻取装置と、
前記巻取装置が前記巻取動作及び前記許容動作の少なくとも一方を実行するときに発電する発電機と、
を備える海水力発電装置。
【請求項2】
前記水中移動部に、前記索条よりも比重が大きい錘が設けられた請求項1記載の海水力発電装置。
【請求項3】
前記巻取装置が、
前記索条が接続され、前記水中移動部の長さを大きくするように前記索条が前記浮遊体に対して相対移動するときに正方向に回転して前記索条の巻取り量を減らし、逆方向に回転したときに、前記索条の巻取り量を大きくすることにより前記水中移動部の長さを小さくする巻取り部材と、
前記巻取り部材が前記正方向に回転するときに前記エネルギーを蓄積し、且つ、前記エネルギーを利用して前記逆方向に回転するための力を前記巻取り部材に付与するゼンマイバネと、
を備え、
前記巻取り部材が前記正方向及び逆方向の少なくとも一方に回転するときに前記発電機が発電する請求項1又は請求項2に記載の海水力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海の流れの力を利用して発電する海水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、海底に設置されるアンカーと、アンカーから上方に向かって直線的に延びる支持部と、支持部に支持され波の力により上下動する可動部と、可動部の動きに連動して発電する発電機と、を有する海水力発電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の海水力発電装置の可動部の周囲の波の方向が上下方向とは異なる場合、可動部が上下動し難く、発電機の発電効率が低くなる。
【0005】
本発明は、周囲の海水の移動方向が如何なる方向であっても効率よく発電可能な海水力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の海水力発電装置は、海に浮かべられる浮遊体と、前記海の中に位置する部位である水中移動部を備え、前記水中移動部の長さを変えるように前記浮遊体に対して相対移動可能であり、可撓性を有する索条と、前記浮遊体に設けられ、前記水中移動部の長さを大きくするように前記索条が前記浮遊体に対して相対移動するのを許容し且つエネルギーを蓄積する許容動作及び前記エネルギーを利用して前記水中移動部の長さを小さくするように前記索条を巻取る巻取動作を実行可能な巻取装置と、前記巻取装置が前記巻取動作及び前記許容動作の少なくとも一方を実行するときに発電する発電機と、を備える。
【0007】
索条には、例えば、ロープ、紐、ワイヤー又はチェーン部材が含まれる。
【0008】
請求項1に記載の海水力発電装置の索条が、索条の周辺の海水の力によって、水中移動部の長さを大きくするように浮遊体に対して相対移動すると、巻取装置がエネルギーを蓄積する許容動作を実行する。例えば、この状態で海水から索条に及んでいた水中移動部の長さを大きくする力が消失すると、巻取装置が蓄積されたエネルギーを利用して、水中移動部の長さを小さくするように索条を巻取る巻取動作を実行する。このように巻取装置は、索条の周辺の海水の力及び巻取装置に蓄積されたエネルギーを利用して、許容動作と巻取動作を繰り返し実行する。これにより発電機が発電動作を繰り返し実行する。さらに索条は可撓性を有するため、索条の周辺の海水の移動方向が如何なる方向であっても、海水から力を受けたときに、水中移動部の長さを大きくするように浮遊体に対して相対移動可能である。そのため請求項1に記載の海水力発電装置は、周囲の海水の移動方向が如何なる方向であっても効率よく発電可能である。
【0009】
請求項2に記載の海水力発電装置は、請求項1において、前記水中移動部に、前記索条よりも比重が大きい錘が設けられる。
【0010】
請求項2に記載の海水力発電装置では、索条の周辺の海水の力が索条に及んだときに、索条が水中移動部の長さを大きくするように浮遊体に対して相対移動し易くなる。従って、海水力発電装置の発電効率が高くなる。
【0011】
請求項3に記載の海水力発電装置は、請求項1又は請求項2において、前記巻取装置が、前記索条が接続され、前記水中移動部の長さを大きくするように前記索条が前記浮遊体に対して相対移動するときに正方向に回転して前記索条の巻取り量を減らし、逆方向に回転したときに、前記索条の巻取り量を大きくすることにより前記水中移動部の長さを小さくする巻取り部材と、前記巻取り部材が前記正方向に回転するときに前記エネルギーを蓄積し、且つ、前記エネルギーを利用して前記逆方向に回転するための力を前記巻取り部材に付与するゼンマイバネと、を備え、前記巻取り部材が前記正方向及び逆方向の少なくとも一方に回転するときに前記発電機が発電する。
【0012】
請求項3に記載の海水力発電装置では、巻取装置を巻取り部材及びゼンマイバネを有する簡単な構成により実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の海水力発電装置は、周囲の海水の移動方向が如何なる方向であっても効率よく発電可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る海水力発電装置の斜視図である。
【
図2】海水力発電装置が海に設置された状態を示す図である。
【
図3】巻取装置、増速機構及び発電機の分解斜視図である。
【
図4】ゼンマイバネの径の大きさの変化を表すための模式図である。
【
図5】ゼンマイバネの径の大きさの変化を表すための模式図である。
【
図6】海水の影響により水中移動部の長さを大きくするように索条が浮遊体に対して相対移動したときの
図2と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態に係る海水力発電装置10について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、図中に適宜示された矢印FRを前方とし、矢印UPを上方とし、矢印LHを左方とする。
【0016】
図1及び
図2に示されるように海水力発電装置10は、浮遊体15、フロート19(
図1では図示省略)、巻取装置20、索条42、錘44、増速機構48及び発電機60を備える。
【0017】
浮遊体15は、支持部材17及び複数のフロート19を備える。
【0018】
支持部材17は、平面視略長方形の基板18と、基板18の上面に設けられた支持突部18aと、を備える。さらに基板18には貫通孔18bが形成されている。基板18の外周部には複数のフロート19が固定されている。各フロート19は中空体であり、各フロート19の内部空間は空気によって満たされている。
【0019】
巻取装置20はゼンマイモータ22及び巻取機構32を備える。
【0020】
基板18の上面にはゼンマイモータ22が設けられている。ゼンマイモータ22は、ケース24、回転部材29及びゼンマイバネ30を有する。第1構成部26及び第2構成部28を水密状態で固定することにより構成されたケース24の下面が基板18の上面に固定されている。
図3に示されたように第1構成部26の内面には右側に向かって延びる支持突起27aが設けられている。さらに第1構成部26の中央部及び支持突起27aを支持孔27bが左右方向に貫通している。ケース24の内部空間に、回転部材29及び金属製の板バネによって構成された渦巻き状のゼンマイバネ30が収納されている。円盤形状の回転部材29の左側面に支持孔29aが設けられている。さらに回転部材29の右側面の中央部には、略円筒形状の連結軸29bが設けられている。第2構成部28に形成された支持孔28aに、連結軸29bの右端部が水密状態で回転可能に挿入されている。さらに回転部材29の外周側にゼンマイバネ30が配置されている。ゼンマイバネ30の内側端部は回転部材29の外周面に固定されており、ゼンマイバネ30の外側端部はケース24の内面に固定されている。回転部材29が
図3に示された第1方向R1に回転するとき、ゼンマイバネ30が弾性エネルギーを貯めながら自身の外径を小さくするように弾性変形する。回転部材29が
図3に示された第2方向R2に回転するとき、ゼンマイバネ30が弾性エネルギーを利用しながら自身の外径を大きくするように変形する。なお
図4に示されたように、ゼンマイバネ30が自由状態にあるとき、ゼンマイバネ30の径はRd1と略同一になる。
図5は、ゼンマイバネ30の径がRd1より小さいRd2になった状態を示す。
図5に示されたゼンマイバネ30は自由状態から弾性変形した状態であり、弾性エネルギーを蓄積している。そのため
図5に示されたゼンマイバネ30は、径をRd1に接近させる方向の付勢力を発生する。
【0021】
支持部材17の支持突部18aとケース24との間に巻取機構32が設けられている。巻取機構32は、巻取り部材34及び一対の回転軸40を備える。巻取り部材34は、左右方向に延びる軸線を中心とする円柱体である巻き付け部36と、巻き付け部36の左右両端面に固定され且つ巻き付け部36より径が大きい一対の円形の鍔部38を備える。左右の鍔部38には、巻き付け部36及び鍔部38と同軸をなす回転軸40がそれぞれ固定されている。左側の回転軸40は、支持部材17の支持突部18aに回転可能に支持されている。右側の回転軸40は第1構成部26の支持孔27bに、水密状態で回転可能に支持されている。さらに右側の回転軸40の右端部は、支持孔27bを右側に貫通し且つ回転部材29の支持孔29aに圧入されている。即ち、右側の回転軸40によって、回転部材29と巻取り部材34が相対回転不能に固定されている。
【0022】
図1に示されたように、巻取り部材34の巻き付け部36に、長尺物である索条42の一方の端部が固定されている。索条42は全体として可撓性を有する。例えば、索条42の全長は5~10mである。索条42は、例えばロープ、紐、金属製のワイヤー又は、金属製のチェーン部材により構成可能である。ロープ及び紐は、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド製であってもよい。索条42の他方の端部は、基板18の貫通孔18bを下方に通り抜けており、索条42の他方の端部には錘44が固定されている。錘44の比重は、海水及び索条42より大きい。錘44の質量は、例えば10~15kgである。
【0023】
巻取り部材34は、
図3に矢印R3で示した正方向と、矢印R4で示した逆方向と、に回転可能である。巻取り部材34が正方向R3に回転するとき、索条42の巻き付け部36からの突出量が大きくなる。換言すると、巻き付け部36に対する索条42の巻付け量が小さくなる。さらに巻取り部材34が正方向R3に回転するとき、回転部材29が第1方向R1に回転し、ゼンマイバネ30が弾性エネルギーを貯めながら自身の外径を小さくするように弾性変形する。このときのゼンマイバネ30の動作を許容動作と称する。一方、巻取り部材34が逆方向R4に回転するとき、索条42の巻き付け部36からの突出量が小さくなり、巻き付け部36に対する索条42の巻付け量が大きくなる。さらに巻取り部材34が逆方向R4に回転するとき、回転部材29が第2方向R2に回転し、ゼンマイバネ30が弾性エネルギーを利用しながら自身の外径を大きくするように変形する。このときのゼンマイバネ30の動作を巻取動作と称する。
【0024】
基板18の上面には、ケース24の第2構成部28と左右方向に対向する増速機構48が設けられている。増速機構48は、第1ギヤ50及び第2ギヤ52を備える。第1ギヤ50と第2ギヤ52は互いに噛み合う。第1ギヤ50の歯数は、第2ギヤ52の歯数より多い。第2構成部28の支持孔28aを右側に通り抜けた連結軸29bの右端部が、第1ギヤ50の中心部に固定されている。
【0025】
図1に示されたように、支持部材17の基板18には発電機60が固定されている。発電機60は、基板18に固定されたブラケット60aと、ブラケット60aに固定された本体部61と、本体部61の端面から左側に突出する入力軸62と、を備える。入力軸62は本体部61に、水密状態で回転可能に支持されている。入力軸62は第2ギヤ52の中心部に固定されている。
【0026】
巻取り部材34が正方向R3に回転するとともに回転部材29が第1方向R1に回転すると、第1ギヤ50が
図3に矢印R5で示された正方向に回転し、第2ギヤ52が
図3に矢印R6で示された正方向に回転する。さらに第2ギヤ52が正方向R6に回転すると、入力軸62が
図3に矢印FDで示した正方向に回転し、発電機60が発電する。一方、巻取り部材34が逆方向R4に回転するとともに回転部材29が第2方向R2に回転すると、第1ギヤ50が
図3に矢印R7で示された逆方向に回転し、第2ギヤ52が
図3に矢印R8で示された逆方向に回転する。さらに第2ギヤ52が逆方向R8に回転すると、入力軸62が
図3に矢印RDで示した逆方向に回転する。この場合も、発電機60は発電する。
【0027】
次に、実施形態の作用及び効果を説明する。
【0028】
例えば海水力発電装置10は、
図2に示されるように海80の岸(図示省略)から遠く離れた所定領域81に設置される。複数のフロート19を有する海水力発電装置10の比重は海水の比重より小さい。そのため海水力発電装置10を所定領域81に設置すると、支持部材17及びフロート19は所定領域81に対して浮かぶ。索条42の一部及び錘44が海80の中に位置する。このときの錘44の位置を位置P0と定義する。索条42の一部であり海80の中に位置する部位を水中移動部42Aと定義する。巻取り部材34による索条42の巻取り量の変化に伴って水中移動部42Aの長さが変化する。海水力発電装置10が
図2に示された状態にあるときのゼンマイバネ30の径はRd1と略同一である。即ち、このときゼンマイバネ30は巻取り部材34を正方向R4に回転させるための付勢力を実質的に発生していない。
【0029】
ここで所定領域81の海中の水の力を受けた索条42及び錘44が、
図2の位置P0から
図6の位置P1まで移動した場合を想定する。このときの索条42及び錘44の移動に伴って、錘44が位置P0にあるときより水中移動部42Aの長さが大きくなる。そのため巻取り部材34が正方向R3に回転し、回転部材29が第1方向R1に回転し、ゼンマイバネ30が弾性エネルギーを貯めながら自身の外径を小さくするように弾性変形する。さらに第1ギヤ50が正方向R5に回転し、第2ギヤ52が正方向R6に回転し、入力軸62が正方向FDに回転するので発電機60が発電する。さらにこのときゼンマイバネ30の径はRd1より小さくなるので、ゼンマイバネ30は巻取り部材34を正方向R4に回転させるための付勢力を発生する。
【0030】
錘44が位置P1に移動した後に、所定領域81の海中の水が発生する力が小さくなったり、海中の水から索条42及び錘44に錘44を浮遊体15に接近させる方向の力が及んだりすると、ゼンマイバネ30が発生する付勢力によって回転部材29が第2方向R2に回転すると共に巻取り部材34が逆方向R4に回転し、ゼンマイバネ30が弾性エネルギーを利用しながら自身の外径を大きくするように変形する。さらに第1ギヤ50が逆方向R7に回転し、第2ギヤ52が逆方向R8に回転し、入力軸62が逆方向RDに回転する。そのため発電機60は発電する。
【0031】
また所定領域81の海中の水の力を受けた索条42及び錘44が、
図2の位置P0から
図6に一点鎖線で示す位置P2まで移動した場合を想定する。このときの索条42及び錘44の移動に伴って、錘44が位置P0にあるときより水中移動部42Aの長さが大きくなる。そのためこの場合も入力軸62が正方向FDに回転し、発電機60が発電する。さらにこのときゼンマイバネ30の径はRd1より小さくなるので、ゼンマイバネ30は巻取り部材34を正方向R4に回転させるための付勢力を発生する。
【0032】
錘44が位置P2に移動した後に、所定領域81の海中の水が発生する力が小さくなったり、海中の水から索条42及び錘44に錘44を浮遊体15に接近させる方向の力が及んだりすると、ゼンマイバネ30が発生する付勢力によって錘44が位置P0に戻る。そのため錘44が位置P2にあるときより水中移動部42Aの長さが小さくなる。さらに巻取り部材34が逆方向R4に回転するので、入力軸62が逆方向RDに回転し、発電機60が発電する。
【0033】
また所定領域81の海中の水の力を受けた索条42及び錘44が、
図2の位置P0から
図6に二点鎖線で示す位置P3まで移動した場合を想定する。このときの索条42及び錘44の移動に伴って、錘44が位置P0にあるときより水中移動部42Aの長さが大きくなる。そのためこの場合も入力軸62が正方向FDに回転し、発電機60が発電する。さらにこのときゼンマイバネ30の径はRd1より小さくなるので、ゼンマイバネ30は巻取り部材34を正方向R4に回転させるための付勢力を発生する。
【0034】
錘44が位置P3に移動した後に、所定領域81の海中の水が発生する力が小さくなったり、海中の水から索条42及び錘44に錘44を浮遊体15に接近させる方向の力が及んだりすると、ゼンマイバネ30が発生する付勢力によって錘44が位置P0に戻る。そのため錘44が位置P3にあるときより水中移動部42Aの長さが小さくなる。さらに巻取り部材34が逆方向R4に回転するので、入力軸62が逆方向RDに回転し、発電機60が発電する。
【0035】
以上説明したように海水力発電装置10の巻取装置20は、索条42の周辺の海水の力及びゼンマイバネ30に蓄積された弾性エネルギーを利用して、許容動作と巻取動作を繰り返し実行する。これにより発電機60が発電動作を繰り返し実行する。さらに索条42は可撓性を有するため、索条42の周辺の海水の移動方向が如何なる方向であっても、海水から力を受けたときに、索条42は水中移動部42Aの長さを大きくするように浮遊体15に対して相対移動可能である。そのため海水力発電装置10は、周囲の海水の移動方向が如何なる方向であっても効率よく発電可能である。
【0036】
さらに索条42に錘44が設けられている。そのため索条42に錘44が設けられていない場合と比べて、索条42の周辺の海水の力が索条42(錘44)に及んだときに、索条42が水中移動部42Aの長さを大きくするように浮遊体15に対して相対移動し易い。即ち、索条42に錘44が設けられていない場合と比べて、海水力発電装置10の発電効率は高い。
【0037】
さらに巻取装置20が、ゼンマイバネ30及び巻取り部材34を有する簡単な構成により実現されている。そのため巻取装置20を安価に製造可能である。
【0038】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【0039】
例えば
図7に示された変形例のように、海水力発電装置10の支持部材17に紐等の可撓性を有する長尺物65の一端を固定し、長尺物65の他端にアンカー66を固定し、このアンカー66を海底82に設置してもよい。このようすれば海水力発電装置10を所定領域81から移動しないようにできる。
【0040】
海水力発電装置10が、第1ギヤ50及び第2ギヤ52を収納するケースを備えてもよい。このようにすれば海水が第1ギヤ50及び第2ギヤ52に付着することが、このケースによって防止される。
【0041】
入力軸62が正方向FD又は逆方向RDに回転したときのみ、発電機60が発電してもよい。即ち、ゼンマイバネ30が許容動作及び巻取動作の一方を実行したときのみ、発電機60が発電してもよい。
【0042】
さらに入力軸62が、本体部61に回転可能に支持された基部、第2ギヤ52に固定された先端部、及び、基部と先端部とを接続するワンウェイクラッチ、を備えてもよい。このワンウェイクラッチは、先端部が正方向FDに回転したときは基部を正方向FDに回転させ、先端部が逆方向RDに回転したときは基部を回転させない。この変形例では、例えば錘44が位置P2にある状態でゼンマイバネ30が弾性エネルギーを利用しながら自身の外径を大きくするときに、この弾性エネルギーが、入力軸62の基部を逆方向RDに回転させるために利用されない。そのため上記実施形態と比べて、ゼンマイバネ30を利用して錘44を位置P0へ円滑に戻すことが可能である。
【0043】
また
図8の変形例の態様で本発明が実施されてもよい。この変形例の海水力発電装置10は、
図7の変形例の海水力発電装置10から錘44及び長尺物65を省略し、且つ、索条42の先端部にアンカー66を固定したものである。
図8の変形例では、海底82にアンカー66が設置され且つ索条42が緊張した状態で海水力発電装置10が海80(所定領域81)に浮かべられる。所定領域81に発生する波の力により海水力発電装置10が海底82に対して上下動したり、所定領域81に対して前後左右に相対移動したりすると、索条42の緊張状態が維持されながら水中移動部42Aの長さが変化する。例えば、海水力発電装置10が位置PS0に位置する場合の水中移動部42Aの長さと、海水力発電装置10が位置PS1に位置する場合の水中移動部42Aの長さは異なる。この変形例においても、水中移動部42Aの長さが大きくなるとき、ゼンマイバネ30が弾性エネルギーを貯めながら自身の外径を小さくするように弾性変形する。また、水中移動部42Aの長さが小さくなるとき、ゼンマイバネ30が付勢力を発生する。そのため、この変形例の海水力発電装置10の発電機60も、周囲の海水の移動方向が如何なる方向であっても効率よく発電可能である。
【0044】
海水力発電装置10から錘44を省略してもよい。特に索条42が金属製のチェーンによって構成されている場合は、海水力発電装置10から錘44を省略してもよい。
【0045】
例えば、水中移動部42Aが大きくなるように索条42が浮遊体15に対して相対移動するときに自由状態から伸びることにより弾性エネルギーを蓄積し、この弾性エネルギーを利用して自由状態に近づくように変形するときに巻取り部材34による索条42の巻取り量を増大させる引張バネを、ゼンマイバネ30の代わりに用いてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 海水力発電装置
15 浮遊体
20 巻取装置
30 ゼンマイバネ
34 巻取り部材
42 索条
42A 水中移動部
44 錘
60 発電機
80 海