(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154794
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
B66F 7/06 20060101AFI20241024BHJP
B66F 7/08 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B66F7/06 Z
B66F7/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068861
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】592089799
【氏名又は名称】メタルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(74)【代理人】
【識別番号】100130096
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一総
(72)【発明者】
【氏名】下村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】船木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中西 真希
(72)【発明者】
【氏名】金平 諭三
(57)【要約】 (修正有)
【課題】圧縮ガスの補充などの繁雑なメンテナンス作業を必要としないで、主駆動力の重量負荷を軽減する装置を備えた昇降装置を提供する。
【解決手段】搬送物を上下方向に移動させる昇降機と、昇降機が担う重量負荷を軽減する重量負荷軽減装置と、を備え、重量負荷軽減装置は、鉛直方向に延在する出力部材と、出力部材が開口部に挿入され、内部に充満される空気圧により出力部材を開口部より進退することで、重量負荷を軽減させる力を生じさせる有底筒状容器と、有底筒状容器に供給する設定圧力の空気を貯留する空気貯留タンクと、圧縮空気を発生させる空気圧縮機と、空気貯留タンクと空気圧縮機との間に設けられた減圧弁と、を備え、空気貯留タンクの設定圧力は、空気圧縮機の圧縮空気の圧力より低く設定され、空気貯留タンク内の空気の圧力が、設定圧力未満となった場合に、減圧弁は空気圧縮機からの圧縮空気を空気貯留タンクに供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を載置部に載せて上下方向に移動させる昇降機と、
前記昇降機と並行に設けられ、前記昇降機が担う重量負荷を負担することで軽減する重量負荷軽減装置と、を備えた昇降装置であって、
前記重量負荷軽減装置は、
前記載置部に連結されるとともに、鉛直方向に所定長さで延在する出力部材と、
前記出力部材の一端側が開口部に挿入され、内部に充満される空気の空気圧により前記出力部材を前記開口部より進退させることで、前記重量負荷を軽減させる力を生じさせる有底筒状容器と、
前記有底筒状容器に連通するとともに、前記有底筒状容器に供給する設定圧力の空気を貯留する空気貯留タンクと、
前記空気貯留タンクに連通するとともに、圧縮空気を発生させる空気圧縮機と、
前記空気貯留タンクと前記空気圧縮機との間に設けられた減圧弁と、を備え、
前記空気貯留タンクに貯留され空気の前記設定圧力は、前記空気圧縮機が発生させる前記圧縮空気の圧力より低く設定され、
前記空気貯留タンク内の空気の圧力が、空気の漏れによって前記設定圧力未満となった場合に、前記減圧弁によって前記空気圧縮機からの前記圧縮空気が前記空気貯留タンクに供給される
昇降装置。
【請求項2】
前記出力部材は、前記昇降機の前記載置部を鉛直方向に沿った直線的な動きにガイドするガイドロッドを兼ねる請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記有底筒状容器には、前記有底筒状容器内の空間と一体になって空気が充満する空間を増加するように付帯させる付帯空間部をさらに備え、
前記空気貯留タンクは、前記付帯空間部である
請求項1に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記付帯空間部は、前記出力部材を囲むように設けられている
請求項3に記載の昇降装置。
【請求項5】
前記出力部材は、上端部が閉口し、下端部が前記有底筒状容器内に開口した中空の筒状体である請求項3または4に記載の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を上下方向に移動させる昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昇降装置には、昇降するための主駆動力が担う重量負荷を軽減する軽減装置が付帯されたものがある。特許文献1には、圧縮ガスを封入したシリンダを使用して、搬送物を移動させる際の重量負荷を負担することで、移動速度の高速化並びに主動力の軽減を図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この使用されている圧縮ガス漏れを極力減らすために、シール部へのオイルの潤滑機構を設けている。
しかしながら、この圧縮ガスの漏れを完全に防止するのは困難であり、圧縮ガスの補充作業が発生する。特に圧縮ガスは、窒素ガスが一般的に使用されており、定期的に専用のボンベより窒素ガスの補充を必要とする等、繁雑な作業を必要とした。
【0005】
本発明は以上のような事情を背景とし、圧縮ガスの補充などの繁雑なメンテナンス作業を必要としないで、主駆動力の重量負荷を軽減する装置を備えた昇降装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様の昇降装置によれば、搬送物を載置部に載せて上下方向に移動させる昇降機と、前記昇降機と並行に設けられ、前記昇降機が担う重量負荷を負担することで軽減する重量負荷軽減装置と、を備えた昇降装置である。
【0007】
前記重量負荷軽減装置は、前記載置部に連結されるとともに、鉛直方向に所定長さで延在する出力部材と、前記出力部材の一端側が開口部に挿入され、内部に充満される空気の空気圧により前記出力部材を前記開口部より進退させることで、前記重量負荷を軽減させる力を生じさせる有底筒状容器と、前記有底筒状容器に連通するとともに、前記有底筒状容器に供給する設定圧力の空気を貯留する空気貯留タンクと、前記空気貯留タンクに連通するとともに、圧縮空気を発生させる空気圧縮機と、前記空気貯留タンクと前記空気圧縮機との間に設けられた減圧弁と、を備える。
【0008】
前記空気貯留タンクに貯留され空気の前記設定圧力は、前記空気圧縮機が発生させる前記圧縮空気の圧力より低く設定され、前記空気貯留タンク内の空気の圧力が、空気の漏れによって前記設定圧力未満となった場合に、前記減圧弁によって前記空気圧縮機からの前記圧縮空気が前記空気貯留タンクに供給される。
【0009】
これによれば、有底筒状容器内の空気が漏れにより減圧して、設定圧力未満の空気圧となった場合、空気圧縮機から設定圧力に戻すための圧縮空気が、減圧弁を介して空気貯留タンクに自動的に供給される。このように、圧縮ガスの補充などの繁雑なメンテナンス作業を必要としないで、主駆動力の重量負荷を軽減する状態を維持することができる。
また、圧縮空気は、他の空気圧器機に使用される場合が多く、空気圧縮機が供給源として供用されるため、容易に流用できるとともに、空気の漏れる量は、ごくわずかなので、空気圧縮機の出力をさらに増加する必要がない。
【0010】
本発明の第二の態様の昇降装置によれば、第一の態様の昇降装置において、前記出力部材は、前記昇降機の前記載置部を鉛直方向に沿った直線的な動きにガイドするガイドロッドを兼ねる。
【0011】
これによれば、専用のガイド装置を設けることなく、重量負荷軽減装置に設けられた出力部材で、載置部の上下方向の動きをガイドすることができる。このようにガイド装置を出力部材と有底筒状容器で兼任させることで、部品点数を減らしてコストダウンを図ることができる。
【0012】
本発明の第三の態様の昇降装置によれば、第一の態様の昇降装置において、前記有底筒状容器には、前記有底筒状容器内の空間と一体になって空気が充満する空間を増加するように付帯させる付帯空間部をさらに備え、前記空気貯留タンクは、前記付帯空間部である。
【0013】
これによれば、有底筒状容器に空気貯留タンクが設けられるので、有底筒状容器が複数必要な場合でも、空気貯留タンクは、個々に分散するので容積が小さくなり、圧力容器としても安全性が向上して、容易に取り扱うことができる。
【0014】
本発明の第四の態様の昇降装置によれば、第三の態様の昇降装置において、前記付帯空間部は、前記出力部材を囲むように設けられている。
【0015】
これによれば、有底筒状容器と空気貯留タンクとが一体化し、空気貯留タンクのための特別な空間を必要としないので、省スペース化を図ることができる。
【0016】
本発明の第五の態様の昇降装置によれば、第三の態様または第四の態様の昇降装置において、前記出力部材は、上端部が閉口し、下端部が前記有底筒状容器内に開口した中空の筒状体である。
【0017】
これによれば、出力部材を中空構造としたことで、軽量化が図れ、昇降の際に負荷される重量が軽減できる。さらに、空気貯留タンクの容積が増加して、出力部材と有底筒状容器とで行われる圧縮動作によって生じる圧縮前と圧縮後の圧力変動差(脈動)を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る昇降装置の側面からの縦断面図である。
【
図2】
図1におけるII-II矢視線断面図である。
【
図3】
図1におけるIII-III矢視線断面図である。
【
図4】
図1におけるIV-IV矢視線断面図である。
【
図5】
図1の電動式昇降装置の回転アームを180度回転させた状態を示した図である。
【
図6】
図5におけるVI-VI矢視線断面図である。
【
図7】本発明の第二実施形態の昇降装置に係る正面側からの縦断面図である。
【
図8】
図7におけるVIII-VIII矢視線断面図である。
【
図10】本発明の第三実施形態の昇降装置に係る正面側からの縦断面図である。
【
図11】本発明の第四実施形態の昇降装置に係る正面側からの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第一実施形態)
先ず、本発明の第一実施形態に係る昇降装置1について、
図1~
図6を用いて説明する。
なお、
図1における左右に延在する水平方向をX方向とし、X方向に直交する水平方向をY方向とする。
【0020】
昇降装置1は、昇降機2と、重量負荷軽減装置3と、昇降ガイド装置4とを、備えている。昇降機2と、重量負荷軽減装置3および昇降ガイド装置4は、架台フレーム5に取り付けられている。
【0021】
架台フレーム5は、下部フレーム51と、下部フレーム51からそれぞれ上向きに延びる4本の支柱52と、支柱52の上端に結合された上部フレーム53とにより、略矩形状に構成されている。架台フレーム5の下部フレーム51および上部フレーム53に、以下で述べる昇降機2、重量負荷軽減装置3および昇降ガイド装置4の主要構成部材が取り付けられ、また支持されている。
【0022】
(昇降機)
昇降機2は、電動モータ21と、電動モータ21の回転駆動軸21aの軸心周りに回転する回転アーム22と、上下方向に延びるガイドロッド42に支持され昇降する昇降部材24と、一端部が回転アーム22に回動可能に連結され、他端部が昇降部材24に回動可能に連結されたリンク部材25と、を備えている。これらの昇降機2を構成し発揮する力が、主駆動力に相当する。
【0023】
電動モータ21は、例えば、ブレーキ付きの電動モータを用いている。電動モータ21は、下降端位置から昇降部材24を上昇させる場合に、回転駆動軸21aを時計回転方向に180°回転させる。また上昇端位置から昇降部材24を下降させる場合に、回転駆動軸21aを反時計方向に180°回転させる。従って電動モータ21の動作は、回転駆動軸21aの回転角度に基づいて制御される。回転角度の検出は、例えば、回転駆動軸21aに回転角度検出器を設けて行うことができる。
【0024】
回転アーム22は、
図4に示すように、平面視略長円形状の2つの板材22bが板厚方向に間隔を隔てて一体に結合された部材である。回転アーム22は、長手方向の一方の端部近傍において電動モータ21の出力軸である回転駆動軸21aに結合されており、回転駆動軸21aの軸心周りに一体に回転する。回転アーム22の他方の端部には、2つの板材22b,22bを貫いて円柱状の第一の軸ピン26(第一の軸ピン26の中心が連結中心CC1に相当)が取り付けられている。回転アーム22の他方の端部には、第一の軸ピン26を介して後述するリンク部材25の一端側が回動可能に連結されている。
【0025】
昇降部材24は、架台フレーム5の上部フレーム53よりも上方において昇降する部材である。なお、昇降部材24は、載置部に相当する。
昇降部材24は、搬送物Wが保持可能とされ、必要に応じて隣接して設けられた上段コンベヤUC、下段コンベヤLCとの間で搬送物Wの受渡しを行うことができる。
昇降部材24は、ベース部材24aと、ベース部材24aの上面から上向きに突出させた一対のローラ支持部材24bと、一対のローラ支持部材24bの内側に互いに対向して設けられた複数のガイドローラ24cと、を備えており、
図1および
図2に示すように、ガイドローラ24cにて搬送物Wが保持される。
【0026】
リンク部材25は、断面四角形状をなして、上下方向に延在する棒状部材で、上部および下部において、所定長さの範囲が「くの字状」に屈曲されている。これらのくの字状の屈曲は、回転アーム22が回転する仮想鉛直平面に沿って曲げられている。
これらのくの字状の屈曲によって回転アーム22が鉛直方向に垂下されたときに、リンク部材25が回転駆動軸21aに接触しないよう構成されている。
【0027】
本実施形態では、第一の軸ピン26は、
図4に示すように、回転アーム22の二枚の板材22bによって両端支持梁の構造であって、回転アーム22とリンク部材25とが仮想上の同一平面内で相対的に正逆方向に回動するように構成されている。そのため、従来より存在する連結軸の一端を回転アームに固定した片持ち梁構造よりも、第一の軸ピン26における曲げモーメントの発生が抑制されている。
【0028】
リンク部材25の他端側は上向きに延びて、円柱状の第2の軸ピン27を介して昇降部材24の連結片部24dに回動可能に連結されている。ここで、昇降部材24の連結片部24dは昇降部材24の重心位置もしくはその近傍位置においてベース部材24aの下面から下向きに延び出している。
【0029】
ここで本実施形態では、
図1で示すように、回転駆動軸21aの軸方向に沿った方向から視認したとき、回転駆動軸21aの中心(回転アーム22の回転中心22a)は、回転アーム22が水平位置に回転した際(図略)の回転アーム22の先端部からみて、昇降部材24とリンク部材25との連結中心CC2を通る仮想鉛直線IPLを跨いで反対側の位置に配置されている。
【0030】
詳しくは、回転駆動軸の中心(回転アーム22の回転中心22a)が仮想鉛直線IPLから図中右側に水平方向距離δだけ離れた位置に配置されている。
【0031】
このようにすることで、回転アーム22が水平位置に回転した状態(詳しくは、回転アーム22におけるリンク部材25との連結中心CC1と、回転駆動軸の中心とを結ぶ線分が水平となった状態)において、リンク部材25の両端に設けられた2つの連結中心CC1,CC2の水平方向距離が(回転駆動軸21aを図中右側に距離δずらした分だけ)短くなり、リンク部材25の傾きが抑えられるため、リンク部材25の傾きに起因して発生する横荷重を小さくすることができる。
【0032】
(重量負荷軽減装置)
重量負荷軽減装置3は、昇降部材24に載置される搬送物(搬送物W)による負荷を軽減し、昇降機2の主駆動力への負担を軽減する。
重量負荷軽減装置3は、架台フレーム5の上部フレーム53に、昇降機2を挟んでX方向に沿って並べて一対設けられている。
重量負荷軽減装置3は、出力部材31と、有底筒状容器32と、を備え、空気圧回路PCとして、空気貯留タンク33と、空気圧縮機34と、減圧弁35と、圧力計36と、逆止弁37と、を備えている。
【0033】
出力部材31は、ピストン311と、ピストンロッド312とを備えている。
ピストン311は、例えば、鋳鉄製で、短円筒状に形成されている。ピストン311の外周には、図略の溝が周設され、溝には、例えばゴム製のピストンパッキン(図略)が外嵌されている。ピストンパッキンは、例えば、ピストン311と有底筒状容器32の内壁面との間の気密を保持し、圧縮の際の空気の漏れを防止する。
【0034】
ピストンロッド312は、例えば鉄製で棒状に形成され、下端部にはピストン311が固着されている。ピストンロッド312の上端部は、昇降部材24の下端に連結されている。
【0035】
有底筒状容器32は、上端部が架台フレーム5の上部フレーム53に貫通した状態で固定されている。
有底筒状容器32は、シリンダチューブ321と、キャップ322と、ロッドカバー323とを備えている。
シリンダチューブ321は、例えば鉄製で円筒状に形成されている。シリンダチューブ321は、上端部において上部フレーム53に固定されている。
【0036】
シリンダチューブ321の下端部にはキャップ322が嵌め込まれている。キャップ322は、通気穴が設けられ、シリンダチューブ321に対して気密性を保持するとともに、後述する空気貯留タンク33にエアパイプ38を介して連通している。
【0037】
シリンダチューブ321の上端部には、ロッドカバー323が設けられ、ロッドカバー323の下部外周には、取付フランジ323aが周設されている。ロッドカバー323には、貫通したピストンロッド312が摺動可能に保持されるようになっている。ロッドカバー323とピストンロッド312との間には図略のロッドパッキンが設けられ、気密性が保持されるようになっている。
ロッドカバー323には、シリンダチューブ321の上部と連通するフィルタ324が設けられ、外部からの粉塵等の吸い込みを防止するようになっている。
【0038】
キャップ322側には、エアパイプ38を介して連通する空気圧回路PCが設けられ、空気圧回路PCには、空気貯留タンク33、空気圧縮機34、減圧弁35、逆止弁37、圧力計36が設けられている。
【0039】
空気貯留タンク33は、例えば、後述する空気圧縮機34より出力される圧縮空気の脈動を平準化する。さらに本実施形態では、有底筒状容器32内で出力部材31(ピストン311)によって行われる空気の圧縮動作における圧縮前および圧縮後における圧力変動差を小さくする役目を担う。
空気貯留タンク33には、圧力計36、安全弁(図略)等が取り付けられる。空気貯留タンク33自体が圧力容器であり、法規制が適応されている。
【0040】
空気圧縮機34は、空気圧器機を用いて仕事を行うための圧縮空気を作る。
本実施形態では、例えば、往復式のコンプレッサを使用する。往復式コンプレッサは、公知技術であるため、説明を省略する。
【0041】
減圧弁35は、圧縮空気の圧力を必要な圧力まで降下させる。
本実施形態の減圧弁35は、一般的に行われる配管の圧力損失や空気の使用量増大による圧力降下に対応するものではなく、有底筒状容器32からの空気の漏れによる圧力降下が生じた場合に圧力の高い空気圧縮機34から空気を補充するためのものである。
【0042】
減圧弁35と空気貯留タンク33との間には、空気の逆流防止のため、逆止弁37が設けられている。
減圧弁35と逆止弁37との間には、減圧後の圧力を確認するため、圧力計36が設けられている。
【0043】
(昇降ガイド装置)
昇降ガイド装置4は、昇降機2の昇降部材24が、鉛直方向に沿って直線的に上下動するようにガイドする。
昇降ガイド装置4は、
図3に示すように、二つの有底筒状容器32のそれぞれに、有底筒状容器32を挟んで、Y方向に対に並べて設けられている。
昇降ガイド装置4は、
図2に示すように、筒状部41と、ガイドロッド42とを備えている。
【0044】
筒状部41は、例えば、鉄製で短円筒状に形成され、上部の途中外周には取付鍔部41aが周設されている。筒状部41は、上部フレーム53に貫通され、上部フレーム53の上面に取付鍔部41aが当接するようにして固定されている。
ガイドロッド42は、例えば鉄製で丸棒状に形成され、筒状部41に摺動可能に挿通される。ガイドロッド42の上端は昇降部材24の下面に連結されている。
【0045】
(制御装置)
制御装置(図略)は、回転アーム22を回転させる電動モータ21の制御、空気圧縮機34の駆動、空気貯留タンク33内の設定空気圧の確認等をおこなう。
【0046】
(作動)
上記のように構成された昇降装置1の作動について、
図1、
図2、
図5および
図6に基づいて、以下に説明する。
図1では、昇降部材24は、下端に位置しており、下段コンベヤLCに整列されている。下段コンベヤLCから搬送物Wが昇降部材24に受け渡される。昇降部材24が最下端にあるとき、回転アーム22は、第一の軸ピン26が回転アーム22の回転中心22aの直下に位置している。
ピストン311およびピストンロッド312は、シリンダチューブ321内の下端に位置している。
【0047】
空気圧回路PCにおいて、空気圧縮機34によって、例えば、0.6Mpaの圧力の圧縮空気が作り出され、空気貯留タンク33に向けて供給される。空気貯留タンク33に供給される途中に設けられた減圧弁35によって、例えば、0.5Mpaの空気圧に減圧されて供給される。
【0048】
制御装置は、次に、電動モータ21を駆動させ、回転アーム22を
図1において時計回りに180度回転させる。その際、
図5に示すように、ピストン311およびピストンロッド312は、空気貯留タンク33に貯留されている圧縮空気の圧力で、シリンダチューブ321内を上昇する。このピストン311およびピストンロッド312を上昇させる力によって、昇降部材24に対する重量負荷を負担して、電動モータ21による主駆動力(出力)を軽減する。
【0049】
昇降部材24は、
図5および
図6に示すように、上昇して上昇端に位置する。
この場合には、ピストン311およびピストンロッド312が上昇するため、空気貯留タンク33内の空気の圧力は、例えば、0.4Mpaに減少する。しかし、この圧力の減少は空気が占める体積の拡大によるためであり、空気圧縮機34からの圧縮空気の供給は行われない。そして、ピストン311およびピストンロッド312が上昇した際の空気の圧力が、例えば、0.4Mpa未満となったときは、空気漏れが生じたことに起因するため、空気圧縮機34から、圧縮空気の供給が行われる。
【0050】
そして、昇降部材24は、上段コンベヤUCに整列し、昇降部材24に搭載されていた搬送物Wは、上段コンベヤUCに移送される。
上昇した昇降部材24は、回転アーム22を逆回転させることで、下降して下段コンベヤLCに整列する。その際、ピストン311およびピストンロッド312は、下端位置まで下降し、空気貯留タンク33内の空気の圧力は、0.5Mpaとなって元の圧力数値に戻る。
以下、同様に動作を繰り返す。
【0051】
上記の記載で明らかなように、本発明の第一実施形態の昇降装置1によれば、搬送物Wを載置部(昇降部材24)に載せて上下方向に移動させる昇降機2と、昇降機2と並行に設けられ、昇降機2が担う重量負荷を負担することで軽減する重量負荷軽減装置3と、を備えた昇降装置1である。
【0052】
そして、重量負荷軽減装置3は、昇降部材24に連結されるとともに、鉛直方向に所定長さで延在する出力部材31と、出力部材31の一端側が開口部321bに挿入され、内部に充満される空気の空気圧により出力部材31を開口部321bより進退させることで、重量負荷を軽減させる力を生じさせる有底筒状容器32と、有底筒状容器32に連通するとともに、有底筒状容器32に供給する設定圧力の空気を貯留する空気貯留タンク33と、空気貯留タンク33に連通するとともに、圧縮空気を発生させる空気圧縮機34と、空気貯留タンク33と空気圧縮機34との間に設けられた減圧弁35と、を備えている。
【0053】
空気貯留タンク33に貯留され空気の設定圧力は、空気圧縮機34が発生させる圧縮空気の圧力より低く設定され、空気貯留タンク33内の空気の圧力が、空気の漏れによって設定圧力未満となった場合に、減圧弁35によって空気圧縮機34からの圧縮空気が空気貯留タンク33に供給される。
【0054】
これによれば、有底筒状容器32内の空気が漏れにより減圧して、設定圧力未満の空気圧となった場合、空気圧縮機34から設定圧力に戻すための圧縮空気が、減圧弁35を介して空気貯留タンク33に自動的に供給される。このように、圧縮ガスの補充などの繁雑なメンテナンス作業を必要としないで、主駆動力(昇降機2)の重量負荷を軽減する状態を維持することができる。
また、圧縮空気は、他の空気圧器機に使用される場合が多く、空気圧縮機34が供給源として供用されるため、容易に流用できるとともに、空気の漏れる量は、ごくわずかなので、空気圧縮機34の出力をさらに増加する必要がない。
【0055】
(第二実施形態)
次に、昇降装置の第二実施形態について、
図7および
図8に基づいて、以下に説明する。
第二実施形態の昇降装置201は、重量負荷軽減装置203が昇降ガイド装置を兼ねている。この点において第一実施形態と相違し、その他の構成は第一実施形態と同様である。
【0056】
主に第一実施形態との相違点について、以下に説明する。
ピストンロッド2312は、第一実施形態のピストンロッド312と比較して、太く形成されている。ガイドロッドとしても機能するため、横方から生じる曲げモーメントに対抗するためである。ピストンロッド2312の下端にはピストン2311が設けられている。ピストンロッド2312の上端には、昇降部材24の下面に組付けられている。
【0057】
有底筒状容器232は、上部内周壁232aの径が下部内周壁232bの径より小さく形成されている。有底筒状容器232の上部内周壁232aは、ガイドの筒状部として機能し、上部内周壁232aには太く形成されたピストンロッド2312が摺動可能に挿入される。
第二実施形態における有底筒状容器232は、
図8に示すように、架台フレーム5における四本の支柱52の内側にそれぞれ設けられている。なお、
図9に示すように、有底筒状容器232を対角線上に一対だけ設けてもよい。
【0058】
このように、本発明の第二の態様の昇降装置201において、出力部材231は、昇降機202の昇降部材24を鉛直方向に沿った直線的な動きにガイドするガイドロッドを兼ねる。
【0059】
これによれば、専用のガイド装置を設けることなく、重量負荷軽減装置203に設けられた出力部材231で、昇降部材24の上下方向の動きをガイドすることができる。このようにガイド装置を出力部材231と有底筒状容器232で兼任させることで、部品点数を減らしてコストダウンを図ることができる。
【0060】
(第三実施形態)
次に、昇降装置の第三実施形態について、
図10に基づいて、以下に説明する。
第三実施形態の昇降装置301は、重量負荷軽減装置303が昇降ガイド装置を兼ねている。さらに有底筒状容器332には、有底筒状容器332内の空間と一体になって空気が充満する空間を増加するように付帯させる付帯空間部333をさらに備え、空気貯留タンクは、付帯空間部333である。これらの点において第一実施形態と相違し、その他の構成は第一実施形態と同様である。
【0061】
主に相違点について以下に説明する。
出力部材331であるロッド3312は、ピストン部がなく棒状のロッド3312となっている。主駆動力の重量負荷を軽減させる力は、ロッド3312の断面積に負荷される空気圧に基づいて発生する。
【0062】
有底筒状容器332は、ロッド3312の周りを囲むように形成され、かつロッド3312の下端とキャップ322との間に間を空けて形成された付帯空間部333を備えている。この空間が空気貯留タンクの役割を持ち、ロッド3312と有底筒状容器332とで行われる圧縮動作による脈動等を緩和させる。有底筒状容器332は、昇降ガイド装置として、ロッド3312を摺動可能に挿通させる筒状部332bも備えている。なお、付帯空間部333を、主にロッド3312の周りを囲むものとしたが、これに限定されない。例えば、フラスコの下部のように球状或いは三角すい状に膨らんだ形状のものでもよい。
【0063】
有底筒状容器332は、有底筒状容器本体332aと、筒状部332bとを備えている。
有底筒状容器本体332aは、上端縁に半径方向に突出するフランジ部332cが形成され、フランジ部332cには複数の取付孔が形成されている。有底筒状容器本体332aは、例えばボルトB等で、上部フレーム53の下面に締結される。筒状部332bは、上部途中に取付フランジ332dが設けられている。筒状部332bは、下部が有底筒状容器本体332aの上部開口に嵌入され、取付フランジ332dが上部フレーム53の上面に当接することで、上部フレーム53に固定されている。
【0064】
上記の記載で明らかなように、有底筒状容器332には、有底筒状容器332内の空間と一体になって空気が充満する空間を増加するように付帯させる付帯空間部333をさらに備え、空気貯留タンクは、付帯空間部333である。
【0065】
これによれば、有底筒状容器332に空気貯留タンクが設けられるので、有底筒状容器332が複数必要な場合でも、空気貯留タンクは、個々に分散するので容積が小さくなり、圧力容器としても安全性が向上して、容易に取り扱うことができる。
【0066】
また、付帯空間部333は、出力部材331を囲むように設けられている。
これによれば、有底筒状容器332と空気貯留タンクとが一体化し、空気貯留タンクのための特別な空間を必要としないので、省スペース化を図ることができる。
【0067】
(第四実施形態)
次に、昇降機の第四実施形態について、
図11に基づいて、以下に説明する。
第四実施形態の昇降装置401は、重量負荷軽減装置403が昇降ガイド装置を兼ね、空気貯留タンクとしての付帯空間部433が、出力部材431であるロッド4312の周りに形成されている。さらに、ロッド4312が、上端部431Uが閉口し、下端部431Lが有底筒状容器432内に開口した中空の筒状体である。これらの点において第一実施形態と相違し、その他の構成は第一実施形態と同様である。
【0068】
上記の記載で明らかなように、出力部材431が、上端部431Uが閉口し、下端部431Lが有底筒状容器432内に開口した中空の筒状体である。
【0069】
これによれば、出力部材431を中空構造としたことで、軽量化が図れ、昇降の際に負荷される重量が軽減できる。さらに、空気貯留タンクである付帯空間部433の容積が増加して、出力部材431と有底筒状容器432とで行われる圧縮動作によって生じる圧縮前と圧縮後の圧力変動差(脈動)を小さくすることができる。
【0070】
なお本実施形態では、昇降機2および重量負荷軽減装置3を、昇降部材24の下方に設けたが、これに限定されない。例えば、
図12に示すように、昇降機2および重量負荷軽減装置3を、昇降部材24の上方に設ける配置としてもよい。この場合、昇降部材24は、搬送方向に沿って延在する開口穴OHが形成され、開口穴OHの下部には、搬送方向に沿って並べられた複数のガイドローラ24cが設けられている。
【0071】
以上本発明の実施形態について詳述したが、本発明はこれらの説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1,201,301,401:昇降装置、2:昇降機、24:昇降部材(載置部)、3,203,303,403:重量負荷軽減装置、31,231,331,431:出力部材、311:ピストン、321:ピストンロッド、32,232,332,432:有底筒状容器、321:シリンダチューブ、33:空気貯留タンク、333,433:付帯空間部、34:空気圧縮機、35:減圧弁、4:昇降ガイド装置、41:筒状部、431U:上端部、431L:下端部、PC:空気圧回路、W:搬送物。