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特開2024-154805鉄骨柱の露出型柱脚構造とそのフレーム構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154805
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】鉄骨柱の露出型柱脚構造とそのフレーム構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20241024BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20241024BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
E04B1/24 R
E04B1/58 511H
E04B1/41 502B
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068889
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山中 萌
(72)【発明者】
【氏名】萩野 毅
(72)【発明者】
【氏名】小高 弘慎
(72)【発明者】
【氏名】山下 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】村田 学
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 亨
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA45
2E125AB16
2E125AC16
2E125AG03
2E125AG10
2E125AG41
2E125AG43
2E125BA02
2E125BA22
2E125BB08
2E125BB29
2E125BB30
2E125BC09
2E125BD01
2E125BE07
2E125BE08
2E125BF01
2E125CA05
2E125CA13
(57)【要約】
【課題】鉄骨柱の曲げ変形に起因して柱型コンクリート体に孕み出しが生じることを抑止し、コンクリートの損傷やアンカーボルトの定着力の低下を防止することを可能とする。
【解決手段】鉄骨柱90の露出型柱脚構造100を構成するフレーム構造であって、鉛直方向に延びる中心軸10Cを囲むように配置されるフレームポストと、中心軸10Cを囲む矩形線上に配置され、フレームポストによって支持される複数のアンカーボルト40と、該アンカーボルトのうち少なくとも矩形線の角部に隣接または近接するアンカーボルトに作用する側方外側への荷重を、中心軸10Cを含む鉛直面VPを超えて反対側に位置する他のアンカーボルト40’に伝達する荷重伝達部材50と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨柱の露出型柱脚構造を構成するフレーム構造であって、
鉛直方向に延びる中心軸を囲むように配置されるフレームポストと、
前記中心軸を囲む矩形線上に配置され、前記フレームポストによって支持される複数のアンカーボルトと、
該アンカーボルトのうち少なくとも前記矩形線の角部に隣接または近接するアンカーボルトに作用する側方外側への荷重を、前記中心軸を含む鉛直面を超えて反対側に位置する他のアンカーボルトに伝達する荷重伝達部材と、
を含む、フレーム構造。
【請求項2】
前記複数のアンカーボルトは、前記中心軸を中心として点対称に配置されている、請求項1に記載のフレーム構造。
【請求項3】
前記複数のアンカーボルトは、多角形を構成するように配置されている、請求項1に記載のフレーム構造。
【請求項4】
前記荷重伝達部材は、複数の前記アンカーボルトのうち、前記中心軸を含む鉛直面を挟んで対向するアンカーボルトどうしを接合する部材である、請求項3に記載のフレーム構造。
【請求項5】
前記荷重伝達部材は、板状部材で構成されている、請求項3に記載のフレーム構造。
【請求項6】
前記板状部材は、隣接または近接するアンカーボルトどうしを接合する板状部材で構成されている、請求項5に記載のフレーム構造。
【請求項7】
前記板状部材を複数連ねて配置することにより、前記アンカーボルトのいずれかと、前記中心軸を含む鉛直面を超えて該アンカーボルトの反対側に位置する他のアンカーボルトとが接合されている、請求項6に記載のフレーム構造。
【請求項8】
短尺の前記板状部材が多角形状に周状に配置され、これら板状部材によって複数本の前記アンカーボルトが接合されている、請求項7に記載のフレーム構造。
【請求項9】
前記板状部材には、隣接または近接する3本以上のアンカーボルトどうしを接合する板状部材が含まれる、請求項6に記載のフレーム構造。
【請求項10】
前記複数のアンカーボルトが矩形を構成するように配置されていて、前記板状部材は、前記矩形線の角部に位置する角部アンカーボルトと、該角部アンカーボルトの両隣のアンカーボルトとを接合している、請求項9に記載のフレーム構造。
【請求項11】
前記荷重伝達部材は、複数の前記アンカーボルトのうち、前記中心軸を含む鉛直面を挟んで対向するアンカーボルトどうしを接合する長尺の板状部材である、請求項4に記載のフレーム構造。
【請求項12】
前記中心軸を含む鉛直面を挟んで面対称の位置にあるアンカーボルトどうしが接合されている、請求項11に記載のフレーム構造。
【請求項13】
井型に配置された複数枚の前記板状部材により、計4N(Nは自然数)本の前記アンカーボルトが接合されている、請求項12に記載のフレーム構造。
【請求項14】
隣接または近接する3本以上のアンカーボルトどうしを接合する板状部材がさらに用いられている、請求項13に記載のフレーム構造。
【請求項15】
前記複数のアンカーボルトが矩形を構成するように配置されていて、前記板状部材は、前記矩形線の角部に位置する角部アンカーボルトと、該角部アンカーボルトの両隣のアンカーボルトとを接合している、請求項14に記載のフレーム構造。
【請求項16】
前記荷重伝達部材は、鉄筋で構成されている、請求項4に記載のフレーム構造。
【請求項17】
前記鉄筋は、複数の前記アンカーボルトのうち、前記中心軸を含む鉛直面を挟んで対向するアンカーボルトどうしを囲繞するように周回している、請求項16に記載のフレーム構造。
【請求項18】
前記鉄筋は、複数の前記アンカーボルトのうち、前記中心軸を含む鉛直面を挟んで対向する複数対のアンカーボルトどうしを囲繞するように周回している、請求項17に記載のフレーム構造。
【請求項19】
十文字型に配置された2つの前記鉄筋により、複数本の前記アンカーボルトが囲繞されている、請求項18に記載のフレーム構造。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載されたフレーム構造と、
該フレーム構造を、複数の前記アンカーボルトの上端部分を除き埋設した柱型コンクリート体と、
で構成され、前記柱型コンクリート体に一部を除き埋設された複数の前記アンカーボルトを介して鉄骨柱の柱脚部を設置固定する、鉄骨柱の露出型柱脚構造。
【請求項21】
前記荷重伝達部材は、前記アンカーボルトの下部付近の高さに配置されている、請求項20に記載の鉄骨柱の露出型柱脚構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨柱の露出型柱脚構造とそのフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
柱型コンクリート体上に、当該柱型コンクリート体に埋設した複数のアンカーボルトを介して、鉄骨柱の柱脚部を設置固定するようにした鉄骨柱の露出型柱脚構造が利用されている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
上記のごとき露出型柱脚構造においては、地震等により鉄骨柱に曲げ変形が生じると、その柱脚部に曲げモーメントが作用する。柱脚部に曲げモーメントが作用すると、この曲げモーメントで引っ張りを受ける側に配設されているアンカーボルトには引張り力(引き抜き力)が作用するほかにモーメントも働き、このモーメントがアンカーボルトを柱型コンクリート体の側面のほうへと横向きに押し出すように作用する(図14図15参照)。このとき、柱型コンクリート体の側面に基礎梁が取り付けられていればモーメントによるアンカーボルトに作用する力が受け止められて押し出し作用が抑止されるが、基礎梁が無い場合にはアンカーボルトが側面へと押し出される力を抑止することができない。このような側面への押し出し力が作用し続けると変形が生じ、この変形によってアンカーボルトを埋設している柱型コンクリート体が外方へ向けて押し出され、コンクリートが膨らむようにして孕み出し、当該側面の側にある立上り筋に側面からの力が作用し、早期に付着劣化が生じたり、柱型コンクリート体の損傷、アンカーボルトの定着力の低下などが起こってしまう。
【0004】
従前、このようにしてアンカーボルトに作用する力に対しては、アンカーボルトの位置決めに用いられる定着ベルトやフープ筋が反力として働いていると考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-53563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近時の実験の結果や検討などにより、定着ベルトやフープ筋では十分な反力が得られていないことが明らかになってきた。
【0007】
一方で、このような問題に対しては、強度を高めるために柱型コンクリート体に埋設する鉄筋量を増やす、アンカーボルトの変形を押さえ込めるように柱型コンクリート体のサイズを大きくする、といった対策をとることも考えられる。しかしながら、鉄筋量を増やすと配筋が煩雑になり施工性が低下してしまうし、柱型コンクリート体のサイズを大きくするとコストが嵩んでしまうばかりでなく建物面積が制限されてしまうといったことから実用的ではない。
【0008】
そこで、本発明は、鉄骨柱の曲げ変形に起因して柱型コンクリート体に孕み出しが生じることを抑止し、コンクリートの損傷やアンカーボルトの定着力の低下を防止することが可能な鉄骨柱の露出型柱脚構造とそのフレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、鉄骨柱の露出型柱脚構造を構成するフレーム構造であって、
鉛直方向に延びる中心軸を囲むように配置されるフレームポストと、
中心軸を囲む矩形線上に配置され、フレームポストによって支持される複数のアンカーボルトと、
該アンカーボルトのうち少なくとも矩形線の角部に隣接または近接するアンカーボルトに作用する側方外側への荷重を、中心軸を含む鉛直面を超えて反対側に位置する他のアンカーボルトに伝達する荷重伝達部材と、
を含む、フレーム構造である。
【0010】
かかるフレーム構造を含む柱脚構造において柱脚部に曲げモーメントが生じたことに起因し、当該曲げモーメントによって引っ張りを受ける側に配設されているアンカーボルトに側方外側へと向かう荷重が作用したとすると、その荷重は、荷重伝達部材によって、中心軸を含む鉛直面を超えて反対側に位置する他のアンカーボルトに伝達される。この場合における反対側に位置する他のアンカーボルトとは、すなわち、当該曲げモーメントによって圧縮を受ける側に配設されていて、側方外側へと向かう荷重が作用していないアンカーボルトであるから、このアンカーボルトに荷重を伝達して負担させることで、引っ張りを受ける側に配設されているアンカーボルトに作用する側方外側へと向かう荷重が分散されて低減することになる。こうすることで、柱型コンクリート体が外方へ向けて押し出されること、コンクリートが膨らむようにして孕み出すことが抑止され、その結果、当該側面の側にある立上り筋に側面からの力が作用し、早期に付着劣化が生じたり、柱型コンクリート体の損傷、アンカーボルトの定着力の低下などを抑止することが可能となる。
【0011】
上記のごときフレーム構造において、複数のアンカーボルトは、中心軸を中心として点対称に配置されていてもよい。
【0012】
上記のごときフレーム構造において、複数のアンカーボルトは、多角形を構成するように配置されていてもよい。
【0013】
上記のごときフレーム構造において、荷重伝達部材は、複数のアンカーボルトのうち、中心軸を含む鉛直面を挟んで対向するアンカーボルトどうしを接合する部材であってもよい。
【0014】
上記のごときフレーム構造において、荷重伝達部材は、板状部材で構成されていてもよい。
【0015】
上記のごときフレーム構造において、板状部材は、隣接または近接するアンカーボルトどうしを接合する板状部材で構成されていてもよい。
【0016】
上記のごときフレーム構造において、板状部材を複数連ねて配置することにより、アンカーボルトのいずれかと、中心軸を含む鉛直面を超えて該アンカーボルトの反対側に位置する他のアンカーボルトとが接合されていてもよい。
【0017】
上記のごときフレーム構造において、短尺の板状部材が多角形状に周状に配置され、これら板状部材によって複数本のアンカーボルトが接合されていてもよい。
【0018】
上記のごときフレーム構造において、板状部材には、隣接または近接する3本以上のアンカーボルトどうしを接合する板状部材が含まれていてもよい。
【0019】
上記のごときフレーム構造において、複数のアンカーボルトが矩形を構成するように配置されていて、板状部材は、矩形線の角部に位置する角部アンカーボルトと、該角部アンカーボルトの両隣のアンカーボルトとを接合していてもよい。
【0020】
上記のごときフレーム構造において、荷重伝達部材は、複数のアンカーボルトのうち、中心軸を含む鉛直面を挟んで対向するアンカーボルトどうしを接合する長尺の板状部材であってもよい。
【0021】
上記のごときフレーム構造において、中心軸を含む鉛直面を挟んで面対称の位置にあるアンカーボルトどうしが接合されていてもよい。
【0022】
上記のごときフレーム構造において、井型に配置された複数枚の板状部材により、計4N(Nは自然数)本のアンカーボルトが接合されていてもよい。
【0023】
上記のごときフレーム構造において、隣接または近接する3本以上のアンカーボルトどうしを接合する板状部材がさらに用いられていてもよい。
【0024】
上記のごときフレーム構造において、複数のアンカーボルトが矩形を構成するように配置されていて、板状部材は、矩形線の角部に位置する角部アンカーボルトと、該角部アンカーボルトの両隣のアンカーボルトとを接合していてもよい。
【0025】
上記のごときフレーム構造において、荷重伝達部材は、鉄筋で構成されていてもよい。
【0026】
上記のごときフレーム構造において、鉄筋は、複数のアンカーボルトのうち、中心軸を含む鉛直面を挟んで対向するアンカーボルトどうしを囲繞するように周回していてもよい。
【0027】
上記のごときフレーム構造において、鉄筋は、複数のアンカーボルトのうち、中心軸を含む鉛直面を挟んで対向する複数対のアンカーボルトどうしを囲繞するように周回していてもよい。
【0028】
上記のごときフレーム構造において、十文字型に配置された2つの鉄筋により、複数本のアンカーボルトが囲繞されていてもよい。
【0029】
本発明の一態様にかかる鉄骨柱の露出型柱脚構造は、上記のごときフレーム構造と、該フレーム構造を、複数のアンカーボルトの上端部分を除き埋設した柱型コンクリート体と、で構成され、柱型コンクリート体に一部を除き埋設された複数のアンカーボルトを介して鉄骨柱の柱脚部を設置固定するというものである。
【0030】
上記のごとき鉄骨柱の露出型柱脚構造において、荷重伝達部材は、アンカーボルトの下部付近の高さに配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、鉄骨柱の曲げ変形に起因して柱型コンクリート体に孕み出しが生じることを抑止し、コンクリートの損傷やアンカーボルトの定着力の低下を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明にかかる鉄骨柱の露出型柱脚構造とそのフレーム構造の概略を説明する図である。
図2】アンカーボルトが8本であるフレーム構造の一例を示す斜視図である。
図3】アンカーボルトが12本であるフレーム構造の一例を示す斜視図である。
図4A】荷重伝達部材の第1実施形態における一例を示す図である。
図4B】荷重伝達部材の第1実施形態における他の例を示す図である。
図4C】荷重伝達部材の第1実施形態における他の例を示す図である。
図5A】荷重伝達部材の第2実施形態における一例を示す図である。
図5B】荷重伝達部材の第2実施形態における他の例を示す図である。
図5C】荷重伝達部材の第2実施形態における他の例を示す図である。
図5D】荷重伝達部材の第2実施形態におけるフレームポストと梁主筋との関係を説明する図である。
図6A】荷重伝達部材の第3実施形態における一例を示す図である。
図6B】荷重伝達部材の第3実施形態における他の例を示す図である。
図6C】荷重伝達部材の第3実施形態における鉄筋(荷重伝達部材)と配筋構造をなす鉛直方向に延びる鉄筋との関係を説明する図である。
図7A】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図7B】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図7C】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図8A】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図8B】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図9】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図10A】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図10B】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図10C】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図10D】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図10E】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図11A】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図11B】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図12A】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図12B】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図12C】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図12D】荷重伝達部材の第4実施形態における一例を示す図である。
図13】本発明の実施例において最大耐力の試験をした試験体A~Cの概略を示す図である。
図14】従来の鉄骨柱の露出型柱脚構造について説明する(A)正面図と(B)概略平面図である。
図15】従来の鉄骨柱の露出型柱脚構造について説明する(A)正面図と、(B)柱脚部に曲げモーメントが作用した際、アンカーボルトに引き抜き力のほかにモーメントも働くことについて説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する(図1等参照)。
【0034】
本発明の一態様にかかる鉄骨柱90の露出型柱脚構造100は、柱型コンクリート体80と、鉄骨柱90の曲げ変形に起因して柱型コンクリート体80に孕み出しが生じることを抑止するように構成されたフレーム構造10とで構成されているものである(図1参照)。
【0035】
柱型コンクリート体80は、平面視にて複数(本実施形態では、4つ)の側面81を有する形状であり、本実施形態では平面視にて略正方形の柱型に構成されている。柱型コンクリート体80には複数のアンカーボルト40がその上端部分を除き埋設され、該柱型コンクリート体80の上面から突出したアンカーボルト40の上端部分を介して鉄骨柱90の柱脚部91が設置、固定されるようになっている。
【0036】
フレーム構造10は、上述した鉄骨柱90の露出型柱脚構造100を構成する部材である。本実施形態のフレーム構造10は、ベースフレーム20、フレームポスト30、アンカーボルト40、荷重伝達部材50を含む構造となっている(図2等参照)。荷重伝達部材50は、板状部材51を連ねて構成される。なお、当該フレーム構造10の鉛直方向に延びる中心軸を符号10Cで示している(図1参照)。本実施形態の露出型柱脚構造100においては、この中心軸10Cは、柱型コンクリート体80や鉄骨柱90の中心軸と一致している。
【0037】
ベースフレーム20は、当該フレーム構造10の最下部に配置される枠状の部材である(図2図3参照)。なお、本実施形態では矩形をなすように組まれたベースフレーム20を示しているがこれは形状の一例にすぎない。また、本実施形態ではフレーム構造10の好適な一例としてこのようなベースフレーム20を含むものを例示しているが、ベースフレーム20がなくともフレーム構造10を構成することが可能であり、ベースフレーム20は必須の構成ではない。
【0038】
フレームポスト30は、中心軸10Cを囲むようにして上記のベースフレーム20上に配置されている(図2等参照)。本実施形態では、4本のアングル材からなる支持支柱をフレームポスト30としてベースフレーム20上に設けている。
【0039】
アンカーボルト40は、荷重伝達部材50を介してフレームポスト30上に立設されている。アンカーボルト40の本数は計4N(Nは自然数)本であり、具体的にはたとえば後述するような8本、12本、16本といった数である。本実施形態のフレーム構造10において、これら複数本のアンカーボルト40は、中心軸10Cの周囲の仮想の矩形線(図5Bにおいて破線で示す)R上に、当該中心軸10Cを取り囲むように配置されている。本実施形態の露出型柱脚構造100において、矩形線Rは中心軸10Cを中心として柱型コンクリート体80と略相似形である。複数(計4N本)のアンカーボルト40は、中心軸10Cを含む面であって尚かつ柱型コンクリート体80の側面81に垂直な鉛直面VP(図4B図6B等参照)を中心にして面対称となるように、かつ、中心軸10Cを中心として点対称となるように配置されている。アンカーボルト40は、矩形線Rの四隅の角部(符号Rcで示す)に配置されていてもよいし、配置されていなくてもよい。なお、以下の説明においては、矩形線Rの角部Rcに位置するアンカーボルトを「角部アンカーボルト」と称し、符号40cで示すこととする。また、矩形線Rの角部Rcに隣接または近接する位置のアンカーボルトを「隣接アンカーボルト」と称し、符号40nで示すこととする。これら複数のアンカーボルト40は、以上のように配置される結果、平面視にて、4角形や8角形といった多角形を構成するような配置となっている。アンカーボルト40には、所定のナット(図1において符号41で示す)が取り付けられる。また、アンカーボルト40には、異形アンカーボルトや丸鋼アンカーボルトなどを使用することができる。
【0040】
荷重伝達部材50は、これら複数本のアンカーボルト40のうち少なくとも隣接アンカーボルト40nに作用する側方外側への荷重を、中心軸10Cを含む鉛直面VPを超えて反対側に位置する他のアンカーボルト40に伝達するように設けられる部材である。一般に、アンカーボルト40を有するフレーム構造を含む露出型柱脚構造において鉄骨柱90の柱脚部91に曲げモーメントが生じた場合、当該曲げモーメントによって引っ張りを受ける側に配設されているアンカーボルト40に側方外側へと向かう荷重(図1中、向かって左向きの矢印を参照)が作用することがあるのは上述したとおりであるが、このようなとき、本実施形態のフレーム構造10においては、荷重伝達部材50によって、中心軸10Cを含む鉛直面VPを超えて反対側に位置する他のアンカーボルト40’にその荷重を伝達することができる(図1参照)。この場合における反対側に位置する他のアンカーボルト40’とは、すなわち、当該曲げモーメントによって圧縮を受ける側に配設されていて、側方外側へと向かう荷重が作用していないアンカーボルトであるから、このアンカーボルト40’に荷重を伝達して負担させることで、引っ張りを受ける側に配設されているアンカーボルト40に作用する側方外側へと向かう荷重を分散させ、低減させることができる。こうすることで、柱型コンクリート体80が外方へ向けて押し出されること、コンクリートが膨らむようにして孕み出すことが抑止される。この結果、当該側面81の側にある立上り筋に側面からの力が作用し、早期に付着劣化が生じたり、柱型コンクリート体80の損傷、アンカーボルト40の定着力の低下などを抑止することが可能となる。
【0041】
荷重伝達部材50の具体的な態様は、上記のごとき機能を奏しうるものである限りとくに限定されることはない。図3の態様において荷重伝達部材50は板状部材51と板状部材52とを含んで構成される。以下では、そのうちの好適例として、短尺または長尺の板状部材51,52で構成された荷重伝達部材50の各種実施形態、鉄筋53で構成された荷重伝達部材50の各種実施形態について説明する(図4A図6A等参照)。なお、いずれの形態においても、荷重伝達部材50の機能をより十分ならしめるためには、アンカーボルト40の下部付近の高さに当該荷重伝達部材50を配置するのが好適である。なお、このようなフレーム構造10の周囲に、たとえば複数のアンカーボルト40を取り囲むようにフープ筋60や中子筋などが設けられていてもよい(図4A等参照)。
【0042】
[荷重伝達部材の第1実施形態]
本実施形態の荷重伝達部材50は、後述する第2実施形態の板状部材に比べると比較的に短尺である板状部材51で、隣接または近接するアンカーボルト40どうしを接合する構造となっている(図4A図4C等参照)。こうした構造では、複数の板状部材51がたとえば多角形状に周状に配置され、これら板状部材51によって複数本のアンカーボルト40が接合された状態となっている場合がある。例えば図4Aに示す形態では、角部Rcを挟んで位置する隣接アンカーボルト40nどうしを斜めの板状部材51で接合し、さらに、角部Rcと角部Rcの間に位置する隣接アンカーボルト40nどうしを、側面81に沿って縦または横に延びる板状部材51で接合することで、8本の隣接アンカーボルト40nのすべてを環状に接合した構造としている(図4A参照)。本例では、上記のように板状部材51を複数連ねて配置することにより、アンカーボルト40のいずれかと、中心軸10Cを含む鉛直面VPを超えて該アンカーボルト40の反対側に位置する他のアンカーボルト40’とが接合される構造となっている。アンカーボルト40には側面側(図4A図4B図4Cでは図示しない左向き)に発生する力が生じ、それを抑える方向(図4A図4B図4Cの右向き)に力を伝達するため、荷重伝達部材50を設けている。また本例では、角部アンカーボルト40cについては、板状部材51で接合して荷重を伝達するのではなく、フープ筋60にて当該角部アンカーボルト40cに作用する荷重を負担することとしている(図4A参照)。これは、鉄骨柱90の柱脚部91に曲げモーメントが生じたことに起因してアンカーボルト40に側方外側へと向かう荷重(図1中、向かって左向きの矢印を参照)が作用する場合、隣接アンカーボルト40nに作用する荷重よりも、角部アンカーボルト40cに作用する荷重のほうが比較的小さくなることに基づいており、本例では、角部アンカーボルト40cに作用する比較的小さい荷重はフープ筋60にて負担する一方で、隣接アンカーボルト40nに作用する比較的大きな荷重は板状部材51で反対側のアンカーボルト40’にまで荷重を伝達して負担させることで分散し低減させるのである。板状部材51としてはたとえば平板や、断面がL型やコ字型の板状部材を用いることができる。
【0043】
上記した例は、アンカーボルト40が、角部アンカーボルト40cを含まない、8本の隣接アンカーボルト40nのみで構成されている場合にも同様に適用することができる(図4B参照)。
【0044】
また、複数(たとえば12本)のアンカーボルト40が矩形線Rに沿って矩形を構成するように配置されている場合に、板状部材51によって、隣接または近接する3本以上のアンカーボルト40どうしを接合する構造としてもよい。たとえば、上述した斜めの板状部材51の代わりに略三角状の板状部材51を採用し、角部アンカーボルト40cとその両隣の隣接アンカーボルト40nとを一つの板状部材51でまとめて接合する構造とすることもできる(図4C参照)。角(隅)に配置された3本以上のアンカーボルト40を板状部材51でまとめて接合することで、同一平板に固定されその挙動が均一化されることで、予期せぬ破壊を抑制することができる。また、アンカーボルト40が同一平面上に設置されるため、高さ方向のレベル調整が容易となり施工性を向上できる。
【0045】
[荷重伝達部材の第2実施形態]
本実施形態の荷重伝達部材50は、先述の第1実施形態の板状部材よりも長尺である板状部材52で構成されるもので、複数のアンカーボルト40のうち、中心軸10Cを含む鉛直面VPを挟んで対向するアンカーボルト40どうしを接合する構造とする。この場合、鉛直面VPを挟んで対向するアンカーボルト40どうしというのは、たとえば、鉛直面VPを挟んで面対称の位置にあるアンカーボルト40どうしのことである。本実施形態の荷重伝達部材50は、第1実施形態のように周回状に迂回しながら荷重を伝達するのではなく、対称位置にあるアンカーボルト40どうしを接合する板状部材52で直線的にかつ短距離で伝達するという点で特徴的である。
【0046】
本実施形態の具体例として、図5Aに示す形態では、鉛直面VPを挟んで面対称の位置にある4対計8本の隣接アンカーボルト40nどうしのそれぞれを、計4本の板状部材51で直接的に接合している(図5A参照)。結果的に、これら4本の板状部材52は、平面視にて井型に配置されている。なお、本例では、角部アンカーボルト40cについては、板状部材52で接合して荷重を伝達するのではなく、フープ筋60にて当該角部アンカーボルト40cに作用する荷重を負担することとしている(図5A参照)。
【0047】
上記した例は、アンカーボルト40が、角部アンカーボルト40cを含まない、8本の隣接アンカーボルト40nのみで構成されている場合にも同様に適用することができる(図5B参照)。
【0048】
また、複数(たとえば12本)のアンカーボルト40が矩形線Rに沿って矩形を構成するように配置されている場合に、隣接または近接する3本以上のアンカーボルト40どうしを接合する構造としてもよい。たとえば、鉛直面VPを挟んで面対称の位置にある4対計8本の隣接アンカーボルト40nどうしを長尺の板状部材52によって接合したうえで、角部アンカーボルト40cとその両隣の隣接アンカーボルト40nとを一つの板状部材51でまとめて接合する構造とすることもできる(図5C参照)。
【0049】
なお、本実施形態において、4本の板状部材52を平面視にて井型に配置し、かつ、4本の板状部材52のそれぞれの計4か所の交差領域に、フレームポスト30のそれぞれが重なり合う構造としてもよい(図5D参照)。このような構造とした場合には、鉄骨柱90の露出型柱脚構造100の周囲における配筋構造をなす梁主筋210等との干渉を避けやすくすることができる。
【0050】
[荷重伝達部材の第3実施形態]
本実施形態の荷重伝達部材50は、鉄筋53で構成されている(図6A等参照)。鉄筋53は、上述した板状部材51,52と同様、骨柱90の柱脚部91に生じた曲げモーメントによって引っ張りを受ける側に配設されているアンカーボルト40に作用した側方外側へと向かう荷重を、鉛直面VPを超えて反対側に位置する他のアンカーボルト40’に伝達するように設けられていれば、その具体的な態様が限定されることはない。一例として、図6Aに示す形態では、鉛直面VPを挟んで面対称の位置にある2対計4本の隣接アンカーボルト40nを囲繞するように鉄筋53を周回させ、かつ、これらを90°回転させた位置にある2対計4本の隣接アンカーボルト40nについても、別の鉄筋53を周回させてこれらを囲繞するようにしている(図6A参照)。これら1対計2つの鉄筋53は、途中で互いに交差する十文字型に配置されている。また本例では、角部アンカーボルト40cについては、鉄筋53で囲繞して荷重を伝達するのではなく、フープ筋60にて当該角部アンカーボルト40cに作用する荷重を負担することとしている(図6A参照)。なお、本実施形態では周回して閉じた状態にある鉄筋53を示しているが、鉄筋53は周回していない状態(閉じていない状態)にあってもよい。鉄筋53としてはたとえばC形状の鉄筋を使用することができる。鉄筋の種類は異形鉄筋や丸鋼鉄筋を使用することができる。
【0051】
上記した例は、アンカーボルト40が、角部アンカーボルト40cを含まない、8本の隣接アンカーボルト40nのみで構成されている場合にも同様に適用することができる(図6B参照)。
【0052】
なお、本実施形態のごとく鉄筋53で荷重伝達部材50を構成し荷重を伝達する構造とした場合には、たとえば露出型柱脚構造100のフレーム構造10の下部に図示しない杭が打設されており、その杭頭から鉛直方向である上方に杭頭に固定された鉄筋220が延びている場合において、鉛直方向に延びる鉄筋220と当該荷重伝達部材50との干渉を避けやすくすることができる。
【0053】
[荷重伝達部材の第4実施形態]
上述した第1~第3実施形態にて説明した構造を組み合わせ、あるいはさらに別の部材を組み合わせて荷重伝達部材50を構成することができる(図7A図12D参照)。以下、これらの概要を説明する。なお、図7A図12Dでは、一部の部材にのみ符号を付す形にしている。また、各図中の向かって右下部分に記されている数値は、各形態におけるアンカーボルト40の本数を表している。
【0054】
図7Aに示す形態は、6本の長尺の板状部材52を「田」字形に配置し、8本のアンカーボルト40を接合したものである。
【0055】
図7Bに示す形態は、矩形フレーム材54を矩形線Rに合わせて配置するとともに、角部Rcを挟んで位置する隣接アンカーボルト40nどうしを斜めの板状部材51で接合したものである。
【0056】
図7Cに示す形態は、図5Bに示した形態に、角部Rcを挟んで位置する隣接アンカーボルト40nどうしを接合する斜めの板状部材51を組み合わせたものである。
【0057】
図8Aに示す形態は、図6Bに示した形態に、角部Rcを挟んで位置する隣接アンカーボルト40nどうしを接合する斜めの板状部材51を組み合わせたものである。
【0058】
図8Bに示す形態は、4本の角部アンカーボルト40cと8本の隣接アンカーボルト40nを含む計12本のアンカーボルト40が矩形線Rに沿って配置されている場合に、図7Bに示した構造を適用したものである。
【0059】
図9に示す形態は、図6Aに示した形態に、角部アンカーボルト40cとその両隣の隣接アンカーボルト40nとを接合する三角状の板状部材51を組み合わせたものである。
【0060】
図10Aに示す形態は、16本のアンカーボルト40が矩形線R上に配置されている場合に、図4に示したものと同様の構造を適用し、さらに、矩形線Rの各辺の中央に位置する2対4本のアンカーボルト40を、それぞれ、十字形に交差する2本の長尺の板状部材52で接合したものである。
【0061】
図10Bに示す形態は、図10Aに示した形態において、側面81に沿って縦または横に延びる板状部材51の代わりに、矩形線Rに合わせて配置した矩形フレーム材54を適用したものである。
【0062】
図10Cに示す形態は、図10Aに示した形態において、隣接アンカーボルト40nどうしを接合する斜めの板状部材51の代わりに、角部アンカーボルト40cとその両隣の隣接アンカーボルト40nとを接合する三角状の板状部材51を組み合わせたものである。
【0063】
図10Dに示す形態は、16本のアンカーボルト40が矩形線R上に配置されている場合に、図5Aに示す構造に加え、矩形線Rの各辺の中央に位置する2対4本のアンカーボルト40をそれぞれ接合する、十字形に交差する2本の長尺の板状部材52を組み合わせたものである。
【0064】
図10Eに示す形態は、図10Dに示した形態に、矩形線Rに合わせて配置した矩形フレーム材54を組み合わせたものである。
【0065】
図11Aに示す形態は、8本の隣接アンカーボルト40nと、各隣接アンカーボルト40nの近傍に配置された8本の近傍アンカーボルト40pの計16本のアンカーボルト40が矩形線R上に配置されている場合に、2本の隣接アンカーボルト40nと2本の近傍アンカーボルト40pの計4本を略台形状の板状部材51で接合し、さらに、隣り合う近傍アンカーボルト40pどうしを、側面81に沿って縦または横に延びる板状部材51で接合したものである。略台形状の板状部材51に、フレームポスト30のそれぞれが重なり合う構造としてもよい。
【0066】
図11Bに示す形態は、図11Aに示した形態において、側面81に沿って縦または横に延びる板状部材51の代わりに、矩形線Rに合わせて配置した矩形フレーム材54を適用したものである。
【0067】
図12Aに示す形態は、8本の隣接アンカーボルト40nと、各隣接アンカーボルト40nの近傍に配置された8本の近傍アンカーボルト40pの計16本のアンカーボルト40が矩形線R上に配置されている場合に、角部Rcに隣接または近接する角部アンカーボルト40cどうしを短尺の斜めの板状部材51で接合し、かつ、矩形線Rの一つの辺の上に位置する4本のアンカーボルト(隣接アンカーボルト40nと、2本の近接アンカーボルト40pと、さらにもう1本の隣接アンカーボルト40n)を、側面81に沿って縦または横に延びる板状部材51で接合し、さらに、対向する位置にある2対計4本の近接アンカーボルト40pを周回する鉄筋53で囲繞するというものである。
【0068】
図12Bに示す形態は、図6Aに示した構造に、角部Rcを挟んで位置する隣接アンカーボルト40nどうしを接合する斜めの板状部材51を組み合わせたものである。
【0069】
図12Cに示す形態は、図12Aに示した構造における鉄筋53の代わりに、鉛直面VPを挟んで対向する近接アンカーボルト40pどうしを接合する長尺の板状部材52を採用したものである。
【0070】
図12Dに示す形態は、図12Aに示した構造における短尺の斜めの板状部材51および側面81に沿って縦または横に延びる板状部材51の代わりに、2本の隣接アンカーボルト40nと2本の近傍アンカーボルト40pの計4本を接合する略台形状の板状部材51を採用したものである。
【0071】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【実施例0072】
柱型コンクリート体80に12本のアンカーボルト40を備えるフレーム構造10を埋設し、柱型コンクリート体80の上面に設けられたアンカーボルト40と鉄骨柱90の下端部に溶接固定されたベースプレートとを締結し、鉄骨柱90の上部に水平に取り付けたアクチュエータにより、押し側を正とする漸増載荷解析を行った。試験体A(補強無しのフレーム構造10が埋設された露出側柱脚構造100)、試験体B(角部Rcを挟んで位置する隣接アンカーボルト40nどうしを斜めの板状部材51で接合したフレーム構造10が埋設された露出側柱脚構造100)、試験体C(鉛直面VPを挟んで面対称の位置にある2対計4本の隣接アンカーボルト40nを囲繞するように鉄筋53を周回させたフレーム構造10が埋設された露出側柱脚構造100)のそれぞれの試験体について(図13参照)、補強形式の効果を確認する試験を行ったところ、試験体Bおよび試験体Cは、試験体Aに比べ最大耐力が向上する結果が得られた(表1参照)。
【表1】
【0073】
試験体D、試験体Eのそれぞれについて試験を行ったところ、表2に示す結果が得られた。補強を施した試験体Dは、試験体Dよりもアンカーボルトの長さが長い試験体Eと、同等の耐力を発揮する結果が得られた。アンカーボルトの長さを短くできることで、鋼材を削減したり、基礎の高さを低くできるので基礎工事費用を削減できる。
【0074】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、鉄骨柱の露出型柱脚構造とそのフレーム構造に適用して好適である。
【符号の説明】
【0076】
10…フレーム構造
10C…中心軸
20…ベースフレーム
30…フレームポスト
40、40’…アンカーボルト
40c…角部アンカーボルト
40n…隣接アンカーボルト
40p…近接アンカーボルト
41…ナット
50…荷重伝達部材
51…(短尺の)板状部材
52…(長尺の)板状部材
53…鉄筋
54…矩形フレーム材
60…フープ筋
80…柱型コンクリート体
81…側面
90…鉄骨柱
91…鉄骨柱の柱脚部
100…露出型柱脚構造
200…配筋構造
210…梁主筋
220…鉛直方向に延びる鉄筋
R…矩形線
Rc…角部
VP…鉛直面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15