(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154813
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】画像データのレリーフ化サービス
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20241024BHJP
【FI】
G06T19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068904
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】514155359
【氏名又は名称】株式会社スペシャルエフエックススタジオ
(72)【発明者】
【氏名】古賀 信明
【テーマコード(参考)】
5B050
【Fターム(参考)】
5B050AA10
5B050BA09
5B050BA12
5B050DA04
5B050DA07
5B050EA09
5B050EA13
5B050EA19
5B050EA27
5B050FA02
5B050FA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】2Dの画像をレリーフ状の半立体にする方法を提供する。
【解決手段】従来の肖像写真や肖像画は平面で有り、角度による見え方の違いは2Dのそれと何ら変わりは無いが、肖像写真や肖像画をレリーフ化する事で、2Dには無い見え方の違いを得る事が出来る。そのレリーフ化には、肖像写真や肖像画の画像の被写体Oの3Dデータが有れば良いが、必ずしも前記被写体の3Dデータが無くても、3DCGソフト内に被写体と、別に用意した被写体と相似形の標準モデルQをインポートし、3DCGソフト内の仮想視点から見た、被写体の輪郭、各部のパーツの位置や大きさなどを一致させる変形加工をする事で、被写体をレリーフ状にする為の立体化が可能となる。更に、画像の被写体の部分的なテカリを除去し、レリーフを画像と共に出力後、テカリが生ずる場所に艶を持つ塗料、樹脂等を部分的に配置しても良い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の求めに応じて、
コンピューターに取り込んだ、写真または映像または絵画の一つ以上の画像データと、
前記画像データ中の被写体と相似形状を少なくともその一部に持つ標準モデル一式を
3DCGソフトとAI等のコンピューターソフトの自動化プロセスを使用して
前記3DCGソフトの仮想空間内で前記被写体と、
前記被写体の撮影視点との角度関係を入力または推定し、
前記標準モデル一式から延びる前記推定された角度関係を持つ線上(Z軸)に設けられた仮想視点からビューポート上で、
前記標準モデル一式のその少なくともその一部を変形する事で前記被写体の各部輪郭に一致させ、
更に前記標準モデル一式を不均等に変形させたデータを、
少なくともその一部に使ったデータをデータのまま出力または、立体出力する
前記画像の被写体のレリーフ立体提供サービス。
または、
顧客の求めに応じて、
コンピューターに取り込んだ、写真または映像または絵画の一つ以上の画像データと、
前記画像データ中の被写体と相似形状を少なくともその一部に持つ標準モデル一式を
3DCGソフトの手作業によるオペレーションによって、
前記3DCGソフトの仮想空間内で前記被写体と、
前記被写体の撮影視点との角度関係を入力または推定し、
前記標準モデル一式から延びる前記推定された角度関係を持つ線上(Z軸)に設けられた仮想視点からビューポート上で、
前記標準モデル一式を前記被写体の各部輪郭に一致させ、
更に前記標準モデル一式を不均等に変形させたデータを、
少なくともその一部に使ったデータをデータのまま出力または、立体出力する
前記画像の被写体のレリーフ立体提供サービス。
または、
前記自動化のプロセスと前記手動によるオペレーションを混在させた手法によって、
前記3DCGソフトの仮想空間内で前記被写体と、
前記被写体の撮影視点との角度関係を入力または推定し、
前記標準モデル一式から延びる前記推定された角度関係を持つ線上(Z軸)に設けられた仮想視点からビューポート上で、
前記標準モデル一式を前記被写体の各部輪郭に一致させ、
更に前記標準モデル一式を不均等に変形させたデータを、
少なくともその一部に使ったデータをデータのまま出力または、立体出力、またはその複製品を使った、
前記画像の被写体のレリーフ立体提供サービス。
【請求項2】
請求項1の標準モデル一式に替えて、
前記画像の被写体から得た3Dモデルデータ(3Dスキャナー、AIなどのソフトウェアによる画像から得られた3Dモデルデータの推定を含む)、
または、前記被写体の立体としてのZ軸方向に於ける前記被写体と視点間の距離情報(奥行き情報=ディスプレイスメントマップまたはZバッファまたはデプスバッファ)をモデルデータの変形に使った、
請求項1に記載のレリーフ化プロセスを持つ、
前記前記画像の被写体のレリーフデータ出力またはレリーフ立体提供サービス。
【請求項3】
請求項1または2で得られたレリーフ立体データの表面に画像のテクスチャーを配置し、前記レリーフと共に立体出力、
または前記レリーフ立体出力に印刷したもの、
または前記画像に替えて、前記レリーフ立体出力に手描きによるテクスチャーを与えて、
提供されるレリーフデータ出力またはレリーフ立体提供サービス。
【請求項4】
請求項1~3で得られたレリーフの表面の一部または全部に光沢を持つ樹脂または塗料を塗装または印刷する事で、
前記表面の艶の度合いを変えて提供されるレリーフ。
【請求項5】
請求項1~4に使う被写体を撮影する際、前記被写体の艶が出ない撮影手段によって得られる画像データも使用して提供されるレリーフ。
【請求項6】
請求項1~5に記載の方法で得られたレリーフの周辺に光源を配置したレリーフ掲示法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、画像データのレリーフ化に関する
【背景技術】
【0002】
従来の肖像画や肖像写真は平面で、照明の角度変化や見る角度によって受ける印象はまったく平面のそれであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-094607
【特許文献2】特開2017-042933
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】古賀信明著、「もう、誰も教えてくれない 撮影・VFX/CG アナログ基礎講座 応用編」、初版、(株)スペシャルエフエックススタジオ、2013年7月3日、p.165-183
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の肖像写真及び肖像画は平面であった。
従って、前記肖像写真及び肖像画とその環境光の光源の位置や、
前記肖像写真及び肖像画を見る角度による見え方の変化は、
2Dの絵やその他の写真と何ら違いは無かった。
【0006】
一般に、人の視覚の立体感の把握は、
立体と、それを見る左右の目による視差や、視点の移動によって得られる他、
その視点の移動の際に前記視点と前記立体と、
源との相互の角度変化によって生ずる前記立体表面の艶によるテカリ(反射)の状態変化でも得られる。
【0007】
一方、例えば顔の凹凸は、たとえ実際の顔の立体と比較して、
大きな曲率を持たないレリーフの面であっても、
その表面の艶、テカリの状態は平面のそれとは大きく違う。
これは特に前記レリーフを見る位置や角度によって変化し、
光源の位置の変化によっても影の位置変化も加わって大きく変化するので、
テカリに於いても平面とレリーフではその立体感に大きな違いが出る。
【0008】
本出願の手法によれば、
例えば、3Dデータを持たない一つの画像データからでもレリーフの作成が可能である。
【0009】
((定義等))
(レリーフ化の対象)
本出願に於いてレリーフ化する対象は、必ずしも人体に限る事無く、
前記レリーフの表現域内に同時に表現されるべきものが、レリーフ化のフレームに収まるものであれば、
人、ペットを含め、特に限定しない。
【0010】
また、本出願に於けるレリーフ化する対象は写真に限定せず、絵画でも良く、
写真は既存のものであっても、また映像の一部であっても良く、
また、それらがカラーであってもモノクロであっても、
絵画であっても、画像データとしてコンピューターに入力可能であれば良い。
また、本出願のレリーフ化のモデルに平面等、レリーフ化前の画像に無い他の画像及びモデルを挿入しても良い。
また、本出願のレリーフ化の対象となる画像の被写体は、
当然に単一に限る事無く、同じフレームに複数の被写体であっても良い。
【0011】
(画像データの前処理)
本出願に使用する画像データはソフトウェアの処理によりそのディテール、シャープネスを改善したものを使用しても良い。
【0012】
(モデルデータ)
本出願では、その形、位置、向き、大きさ、各部のパーツ等を部分的または全体的に変更(編集)可能な、被写体と相似形状の、
3DCGモデルデータを「標準モデル」、Qとよび、
前記Qに付随するヘアースタイル、衣装、時計、メガネ、アクセサリー等、前記被写体と同時に写り込んでいる立体物、
またはレリーフ化の際に必要と判断される立体物と相似形の3DCGモデルを含めた3DCGモデルデータを「標準モデル一式」Q0とよび、
また前記3DCGデータ一式に含まれる立体形状は前記人体モデルを加工する事で新たに得ても良い。
そのファイル形式は特定せず、また、ポリゴンモデルに限定しない。
【0013】
(3DCGソフト)
3DCGソフトとは、一般的なメジャーな3DCGソフトであっても、フリーソフトウェアであっても良く、
画像データと標準モデルや、標準モデル一式をインポート可能で、
視点(カメラ)と前記オブジェクトの位置を自由に変更でき、
ビューポートウインドウ(前記3DCG仮想空間内に配置された視点からのビューを表示するウインドウ)上に、
前記画像と3Dオブジェクトを同時に表示可能で、
且つ前記3Dオブジェクトの一部を変形変更可能な機能を持ち、
更にその変更した標準モデルや、標準モデル一式を出力可能なら、特に限定しない。
【0014】
(平行投影)
本出願に於ける3DCGソフト内のQまたはQ0を注視するZ軸上の視点Rは、焦点距離を持たない平行投影とする事で、
パースペクティブによる、互いの距離による見え方の違い(大きさの変化を除く)が発生しない。
従って、対応させようとする写真が撮られた際に使用したレンズの焦点距離や撮影距離を推定する必要は無く、
前記3DCG内のQまたはQ0の向きと、視点R間の互いの角度関係(Z軸)さえ推定出来れば良い。
【0015】
(Z軸、Z方向)
本出願に於ける「Z軸、Z方向」とはいわゆる3DCGソフトの仮想空間内のワールド座標(絶対座標)としてのxyz軸では無く、
前記3DCGソフトの仮想空間内の個々のモデルが持つローカル座標に於けるZ軸であり、
特に被写体Oと視点Rを結ぶ軸、及び方向をZ軸、Z方向とする。
【0016】
(R以外の視点での形状破綻)
図3、5のモデルQ1の様に視点Rから以外の視点から見ると、
被写体Oの実際の形状と違っていたとしても、
Rの視点から見てQ1の各部の輪郭が一致していれば問題無い。
【0017】
(図面中のメッシュ)
本出願の図面中の3DCGモデルのメッシュは荒く表記しているが、
これは図面表記上判りやすくしたもので、実際のメッシュはもっと細かくても良い。
【0018】
(3Dデータ取得)
本出願は、被写体の3Dデータが無くても前記標準モデル一式を作成可能であるが、
当然に3Dスキャナーや、前記被写体の一つ以上の画像からAI等によって解析、推定される前記被写体の固有の3Dモデルデータを使用してレリーフ化しても良い。
また、前記一つ以上画像は、時間軸を持つ映像であっても良い。
【0019】
(立体出力)
本出願の3D出力とは、3Dデータであっても良く、前記3Dデータを元に、
形有る部材として立体に出力したものを指し、3Dプリンターの他、
ミリングマシン(フライス盤)、レーザーカッターなどによって立体に出力されても良く、
前記3DCGソフト上でレリーフ化したモデルデータの立体化(3D出力)の手法は限定しない。
【0020】
(テクスチャー)
本出願に於いて出力される3D出力は、
出力されるレリーフのその表面に配置されるべきテクスチャー(マッピングデータ、画像データ)を持っていないその素材そのままであっても良く、
前記レリーフの表面に画像データが配置されていても良く、
当然に、前記画像データがモノクロ(調色加工も含む)であっても良く、
また、モノクロ画像データをカラー化したものであっても良い。
前記3D出力後、その表面に配置されるべきテクスチャーは、
別に用意された柔軟で伸縮性のある印刷基材に印刷されたフィルムを前記3D出力表面に貼り付けても良い。
【0021】
また、本出願手法で得られたレリーフ立体に、手描きの絵画の手法、または手描き風に加工された画像を使って、
レリーフという立体的な支持体に描かれた絵画の様に見える様にしても良く、
また前記3D出力された部材の表面に塗装やメッキを施しても良く、
前記出力を原形とした板金プレス加工をしても良く、
前記出力を型取りやロストワックスなどの技法を使って金属等を含む他の材料に置き換えても良い。
【0022】
(部分的な突起)
一般的なレリーフに於いて、前記レリーフ部材の部分的な突起に切れ目や穴が開いた部分は無いのが通常であるが、
本出願は、例えば、メガネ等部分的に前記レリーフ本体から離れる突起部分に穴を持っていても良い。
【0023】
本出願によって得られたデータによって立体出力されたレリーフは、一度型取りされ、成型可能な別の材料で複製されたレリーフとして提供されても良い。
【0024】
(半透明な部材を使用)
本出願に於ける、最終的に顧客に提供されるレリーフ立体出力部材は、
半透明、または透明な部材を全体、またはその一部に使用しても良い。
【0025】
本出願のレリーフは、任意の形状で分割されて出力されても良い。
また、その際、互いに違う材料で出力されても良い。
【0026】
(光源)
本出願に於けるレリーフの周囲に配置しても良い光源とは、
・ものの燃焼による光(蝋燭、石油ランプ等)
・放射熱によるもの(白熱電球,ハロゲン電球等)
・放電発光によるもの(水銀灯,蛍光灯等)
・電界発光によるもの(EL,LEDなど)
・レーザー発光によるもの
の、少なくとも何れかを光の源とし、それらから発した光を屈折、反射、散乱させたものであっても良い。
【0027】
また本出願によって成されるレリーフの周囲に光源を配置しても良く、その光源の発光位置や色が時間と共に変化しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】3DCGソフトの仮想空間内で、標準モデルQの向きと大きさを画像データPのOに合わせる配置図
【
図2】
図1で配置した標準モデルQの各部を変形させ、Oの輪郭に一致させる説明図
【
図3】標準モデル一式Q0をOの輪郭に一致させたQ1をZ方向に圧縮して得られたレリーフモデルQ2の説明図
【
図5】Q1のZ方向の深度マップZ0を使ってディスプレイスをしたQ3(レリーフ)
【
図6】画像Pの被写体Oと、画像PのOからQ1を作り、視点RからQ1間の距離(並行投影)に応じた濃度変化で得られるディスプレイスメントマップまたはZバッファまたはデプスバッファZ0
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本出願に記載の肖像写真を例にレリーフ化する手順の一例を示す
1、レリーフ化したい被写体Oが含まれるの画像データPと、変形可能な標準モデル一式Q0を用意し、
2、3DCGソフトにPとQ0をインポートし、
3、前記画像Pのアングル=Z軸を前記3DCGソフト上で探る作業、つまり、
前記3DCGソフトの視点Rから平行投影で得られるビューポートウインドウ上のOの見え方と、Q0の見え方(角度)が一致するアングル(方向)をZとし、
4、前記ビューポート上で、Oの大きさ、輪郭、目、鼻、口、ヘアースタイル他付随するQ0のプロポーションと一致する様に位置変更/変形させ、
5、前記標準モデル一式のモデリング作業に於いて前記写真に写っている特徴的なしわなどの部分を加え、または削除し、
6、5で得られたQ1をZ軸方向に潰す(圧縮する)事で、レリーフ状にしたモデルデータQ2と共に、
別に用意した3Dデータ(背景の面などの3Dデータ)をQ2と共にQ3にし、
7、Q2をそのまま立体出力してQ3としても良く、
Q2にPをテクスチャーとして貼り付けて立体出力してQ4としても良く、
8、前記テクスチャー付きのレリーフ状モデルデータを使ってカラー情報も同時に出力可能な3Dプリンターで出力する事で,
Pからレリーフ(半立体)Q3とするか、
Q3に加えてPの画像データをZの方向から貼ったテクスチャーを持つレリーフを得ても良く、
9、更に、Q2やQ3に部分的な光沢や艶消し等を加えても良い。
【0030】
この様にRのビューポート上でPの写ったOの画像の輪郭に合わせて、QまたはQ0を変形させて、
Rのビューポートから見てその輪郭がOと一致させ、更にZ方向に圧縮する事で、
Oの3Dスキャン等で得られるOから得られる3Dデータを使う事無く、
OのレリーフのデータQ2、立体出力Q3、テクスチャー付き立体出力Q4等を得る事が出来る。
【0031】
(一致手段をソフトウェアで)
本出願の写真(画像データ)に於ける被写体と、視点との相対的な角度関係の推定(Z軸の推定)や、
レリーフ化の為のビューポートウインドウ上での前記被写体と前記標準モデル一式を一致させる手段、
または前記被写体と前記ビューポートの視点とを結ぶ線(Z軸)を見出す手段のいずれか、または全部は、
その作業者が「直感」「感覚」「勘」で行っても良く、AI等のソフトで行っても良い。
【0032】
(3DCGデータのレリーフ化 モデル圧縮、ディスプレイス)
実際のモデル形状より、その視点からの奥行方向(Z方向)きの寸法を著しく小さくする事で得られるレリーフ化は、
前記3DCGソフト内の視点からのビューを表示するビューポートの視点Rと、
Rからの注視点を結ぶ線の方向(Z)に圧縮をかけたモデルを使っても良いし、
図5、6に示す様に、前記3DCGソフト内の、
前記3DCGモデルのRからZ方向の深度(距離)による深度マップ(またはZバッファまたはデプスバッファ)を作成し、
前記深度マップをZ方向に任意のスケーリングで、
別のモデルの面にディスプレイス(CGモデル表面表面のZ方向のみの部分的変形)を使ってレリーフを得ても良い。
【0033】
(ビューポートウインドウと仮想視点)
尚、本出願に使用する3DCGソフトの仮想空間内の任意の位置に仮想視点(仮想カメラ)を配置してRとする事も出来るが、
一般に、3DCGソフトは、3DCGソフト内の仮想カメラを設定しなくても、
3Dビューポートウインドウの為にデフォルトで仮想視点が設けられるが、
本出願ではこの前記仮想視点も仮想カメラとしてRに設定する事も出来る。
【0034】
(Z軸の正確性)
3Dモデルをレリーフ化させるために圧縮する際のZ軸方向は、必ずしも前記画像を得た際のレンズ光軸に一致しておらず、
完成したレリーフが不自然に見えない程度にズレていても良い。
【0035】
(XYZ軸の何れかに合わせ)
尚、本出願のレリーフ化で使用する3DCGソフトに於いて、
前記3Dモデルを不均等に変形させる際、
レリーフ化の為に前記3DCG内のCGモデルと視点間を結ぶ方向(Z方向)でスケーリング(縮小/圧縮)が出来ない場合は、
前記3Dモデルと前記Z方向の軸と、
前記3DCG内の空間の絶対座標(ワールド座標)のx、y、z方向の何れかの軸と一致させても良い。
【0036】
(輪郭)
また、本出願に例を挙げる3DCGソフトのRから見たビューポート上でのOに合わせてQ0の輪郭を変形して得られるQ1は、
Oの形状を正確に再現するものでは無く、
R以外の視点からQ1を見た場合、実際のOの形状とは必ずしも一致しないが、
Z方向に圧縮されて、最終的に得られるレリーフとしての立体データなら、
前記ビューポート上でOの画像とQ1の輪郭にズレが見られなければ、
レリーフ化されたQ2、Q3、Q3は、見た目に大きな違和感にはならない。
【0037】
それよりも、海外のコインなどの肖像レリーフに見られる様な、
僅かな立体化であっても平面には無い立体感が得られる様に、
本出願のレリーフを見る人の心理としては、
平面である筈の写真に、僅かながらも立体の要素がある事で、
ハイライトや影の見え方が光源や視点の位置により変化する事の方が、
より大きなリアリティとして印象付ける事が可能となる。
【0038】
(艶)
また、立体感を得る事が可能な要素として、その立体の艶が挙げられる。
光源を立体が受けその一部が強く反射するその立体の持つ艶、テカリ、写り、光沢等(以下、艶と呼ぶ)によって、
それを見る者は質感を感じ取る事が出来ると共に、
その艶の位置は前記光源や前記視点の移動によって変化する事で、それが立体である事を認識するが、
特に人の目の艶(ハイライト)は単なる艶、光の反射以上の心理的効果を持っている。
【0039】
(無反射撮影/出力立体の艶の部分的コントロール)
本出願のレリーフ化に当たり、写真撮影時に、完全無反射撮影法(非特許文献1)等によって、
目などの、本来の艶や写り込みが有る筈の部分に
全く光沢の無い写真を得、前記3Dプリンター―によるレリーフ立体出力中またはレリーフ立体出力後、
肌目、歯、等、部分的に光沢の度合いを変えた塗装を加える事で、
視点や光源の位置の変化で前記レリーフの方面のテカリの位置や陰の変化して
よりリアルな質感表現にしても良い。
【0040】
前記完全無反射撮影法とは、被写体を照らす全ての光源群と、
撮影カメラのレンズとの双方にセットされた偏光フィルターを配して、
前記カメラのレンズに配置された前記偏光フィルターの偏光方向と、
前記光源群に配置された偏光フィルターの偏光方向が交わるようにセットされて得られる映像は、
光源の全反射、つまりテカリ、艶の全く無い写真が得られる公知の手法で、
現実世界に於いて、艶のあるものに必ず生ずる表面のテカリを除去が可能な撮影技法である。
【0041】
(フォトレタッチ)
また、無反射撮影を行わず、通常の撮影又は既に用意された写真を使う場合、
目や歯等に映り込んだ艶、テカリ等のハイライトをフォトレタッチにより消した後、
前記写真の画像データをテクスチャーとした3D出力後のレリーフ部材の艶、テカリが生ずるはずの前記目や歯等の部分に、
艶のある塗料、樹脂を塗装、印刷、配置して、艶を得ても良い。
尚、前記艶、テカリを選択的に表現するものは人体パーツに限らず、
衣装やアクセサリー,メガネ等、被写体に付随するものであっても良い。
【0042】
(レリーフへの艶の与え方)
また、前記テカリの要素は、前記レリーフ表面の一部または全部に対して、
艶のある塗装、または樹脂等を使って、手作業によって加えても良く、
また、本出願によるテカリを生じさせる事の出来る部材であるところのインクまたは樹脂等は、
筆を使っても良く、スプレー、エアブラシ、インクジェット、粉体塗装であっても良く、
また、これらは3Dプリンター、または3Dの表面に対して印刷可能な、
例えばインクジェットプリンタ―や、塗装ロボット等を使って、印刷/塗装をして、
更に部分的にその艶の度合いを変えて与えても良い。
【0043】
本出願の手法によって得られたレリーフは、
付加されたテカリを維持するために透明な面を持つケースに入れて埃、油煙などから保護する事が望ましい。
【0044】
(1枚の写真から)
本出願によれば、被写体が写った最低一枚の画像が有ればレリーフを作製可能である。
【0045】
(本出願の特長)
本出願の特長は、そのプロセスに、
ビューポート上でレリーフ化しようとする被写体の輪郭を一致させたまたは一致する3Dモデルを介在させる所にある。
【符号の説明】
【0046】
a Z軸に平行な並行投影
b Q1のZ方向の寸法
c Z方向に圧縮した寸法
m モデルの一部を変形させ、Pの輪郭に一致させる方向
n Q+を変形させる方向(Z方向)
O レリーフ化する被写体
P レリーフ化したい被写体Oが含まれるの画像データ
Q 標準モデル
Q0 標準モデルに付随するモデルを含んだモデル=標準モデル一式
Q1 Rから見てQまたはQ0の形状をOに近づけた形状
Q2 Q1の形状をZ軸方向に圧縮した形状(データ)
Q3 Q2の立体出力
Q4 Q3に画像や、絵の具、塗装のテクスチャーが付いたもの
R 仮想視点(並行投影)
Z PのアングルとRから見えるQの角度(見え方)が一致したRとQを結ぶ線(方向)=Oに対する撮影角度(Oを撮影時のレンズ光軸方向)
Z0 ディスプレイスメントマップまたはZバッファまたはデプスバッファと呼ばれる深度マップ(グレースケール)
2A コンピューター内の3DCGモデルQ
2B 被写体Oが写り込んでいる画像P
2C 3DCGソフト内の視点Pから見てPとQの向きを合わせ、その輪郭もPに合わせる様子の説明図