(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154816
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】肌落ち予測装置、機械学習装置、肌落ち予測方法、及び、機械学習方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/00 20060101AFI20241024BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241024BHJP
G06V 10/70 20220101ALI20241024BHJP
【FI】
E21D9/00 Z
E21D9/00 C
G06T7/00 350B
G06V10/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068913
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】591063486
【氏名又は名称】一般財団法人先端建設技術センター
(71)【出願人】
【識別番号】506332605
【氏名又は名称】基礎地盤コンサルタンツ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592161372
【氏名又は名称】NSW株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】713005141
【氏名又は名称】株式会社想画
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100227455
【弁理士】
【氏名又は名称】莊司 英史
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓治
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正
(72)【発明者】
【氏名】橋立 健司
(72)【発明者】
【氏名】河原 一弘
(72)【発明者】
【氏名】三木 茂
(72)【発明者】
【氏名】野村 貴律
(72)【発明者】
【氏名】田中 統蔵
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 亮介
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 順一
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 保幸
(72)【発明者】
【氏名】白鷺 卓
(72)【発明者】
【氏名】垣見 康介
(72)【発明者】
【氏名】小島 英郷
(72)【発明者】
【氏名】上岡 真也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩
(72)【発明者】
【氏名】杉山 崇
(72)【発明者】
【氏名】辻川 泰人
(72)【発明者】
【氏名】若竹 亮
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA03
5L096BA18
5L096EA39
5L096FA69
5L096GA30
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】より精度高く肌落ちの危険性がある箇所を予測することができる肌落ち予測装置を提供する。
【解決手段】本発明は、トンネル切羽における肌落ちを予測する肌落ち予測装置であって、トンネル切羽が撮像された切羽画像を取得する情報取得部と、前記情報取得部により取得された切羽画像を、切羽画像と、画像単位毎の肌落ち確率との相関関係を機械学習により学習させた学習モデルに入力することで、切羽画像に対応する画像単位毎の肌落ち確率を生成する生成処理部と、を備え、機械学習に供される画像単位毎の肌落ち確率は、切羽における岩石の種別に係る岩石グループに応じて算出される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル切羽における肌落ちを予測する肌落ち予測装置であって、
トンネル切羽が撮像された切羽画像を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により取得された切羽画像を、切羽画像と、画像単位毎の肌落ち確率との相関関係を機械学習により学習させた学習モデルに入力することで、切羽画像に対応する画像単位毎の肌落ち確率を生成する生成処理部と、を備え、
機械学習に供される画像単位毎の肌落ち確率は、切羽における岩石の種別に係る岩石グループに応じて算出される、
肌落ち予測装置。
【請求項2】
肌落ちの危険性が想定される箇所に係る危険箇所設定範囲と、
危険箇所設定範囲の切羽における位置に係る設定範囲位置と、が設定されており、
機械学習に供される画像単位毎の肌落ち確率は、
危険箇所設定範囲に係る連続関数である第1重み関数と、設定範囲位置に係る連続関数である第2重み関数の2種類の重み関数に基づいた重み付けがなされることで算出される、
請求項1に記載の肌落ち予測装置。
【請求項3】
第1重み関数と第2重み関数が、切羽における岩石の種別に係る岩石グループに応じて変更される、
請求項3に記載の肌落ち予測装置。
【請求項4】
前記生成処理部で生成された画像単位毎の肌落ち確率が、ヒートマップ表示される、
請求項1に記載の肌落ち予測装置。
【請求項5】
前記学習モデルが、トンネル掘削工事の現場で取得されるデータに基づいてアップデートされる、
請求項1に記載の肌落ち予測装置。
【請求項6】
切羽画像と、切羽における岩石の種別に係る岩石グループに応じて算出される、画像単位毎の肌落ち確率とで構成される学習用データを複数組記憶する学習用データ記憶部と、
複数組の前記学習用データを学習モデルに入力することで、切羽画像と、画像単位毎の肌落ち確率との相関関係を前記学習モデルに学習させる機械学習部と、
前記機械学習部により前記相関関係を学習させた前記学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、を備える、
機械学習装置。
【請求項7】
トンネル切羽における肌落ちを予測する肌落ち予測方法であって、
トンネル切羽が撮像された切羽画像を取得する情報取得工程と、
前記情報取得工程により取得された切羽画像を、切羽画像と、画像単位毎の肌落ち確率との相関関係を機械学習により学習させた学習モデルに入力することで、切羽画像に対応する画像単位毎の肌落ち確率を生成する生成処理工程と、を備え、
機械学習に供される画像単位毎の肌落ち確率は、切羽における岩石の種別に係る岩石グループに応じて算出される、
肌落ち予測方法。
【請求項8】
切羽画像と、切羽における岩石の種別に係る岩石グループに応じて算出される、画像単位毎の肌落ち確率とで構成される学習用データを複数組記憶する学習用データ記憶工程と、
複数組の前記学習用データを学習モデルに入力することで、切羽画像と、画像単位毎の肌落ち確率との相関関係を前記学習モデルに学習させる機械学習工程と、
前記機械学習工程により前記相関関係を学習させた前記学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶工程と、を備える、
機械学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル切羽における肌落ちの可能性を予測する肌落ち予測装置、肌落ち予測装置に用いられる学習モデルを生成する機械学習装置、トンネル切羽における肌落ちの可能性を予測する肌落ち予測方法、及び、肌落ち予測方法に用いられる学習モデルを生成する機械学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事における掘削の最先端(切羽)においては、岩石の落下など(肌落ち)による重大災害を可能な限り抑制することが肝要となる。このため、切羽観察を行い、剥落が予測される箇所を推定し、あらかじめ当該箇所をたたき落としたり、当該箇所に対してコンクリート吹き付けを行ったりなどの対策が講じられる。切羽観察は熟練の技術者の目視判断に依存しているため、見落としや個人差が発生しやすい。そこで、非特許文献1においては、人工知能技術を用いて、切羽における肌落ちを予測する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】西沢ほか「マルチモーダル深層学習による切羽崩落予測」2019年人工知能学会全国大会第33回論文集
【特許文献2】特開2023-34745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1記載の従来技術では、切羽画像、風化変質度数値、割目交差密度数値をResnet50で特徴抽出し、ニューラルネットワークで肌落ちの可能性あり、なしの二択を検出するものであり、肌落ちの危険性がある位置を予測することができない、という課題があった。
【0005】
そこで、特許文献2においては、肌落ちの危険性がある位置を予測する技術についての提案がなされた。しかしながら、特許文献2記載の従来技術では、切羽を構成する岩石の種類に係る要因が考慮されておらず、予測精度の点で問題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、肌落ちの危険性がある位置の予測精度を向上させる肌落ち予測装置、肌落ち予測装置に用いられる学習モデルを生成する機械学習装置、肌落ちの危険性がある位置の予測精度を向上させることが可能な肌落ち予測方法、及び、肌落ち予測方法に用いられる学習モデルを生成する機械学習方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る肌落ち予測装置は、
トンネル切羽における肌落ちを予測する肌落ち予測装置であって、
トンネル切羽が撮像された切羽画像を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により取得された切羽画像を、切羽画像と、画像単位毎の肌落ち確率との相関関係を機械学習により学習させた学習モデルに入力することで、切羽画像に対応する画像単位毎の肌落ち確率を生成する生成処理部と、を備え、
機械学習に供される画像単位毎の肌落ち確率は、切羽における岩石の種別に係る岩石グループに応じて算出される。
【0008】
また、本発明の一態様に係る肌落ち予測装置は、
肌落ちの危険性が想定される箇所に係る危険箇所設定範囲と、
危険箇所設定範囲の切羽における位置に係る設定範囲位置と、が設定されており、
機械学習に供される画像単位毎の肌落ち確率は、
危険箇所設定範囲に係る連続関数である第1重み関数と、設定範囲位置に係る連続関数である第2重み関数の2種類の重み関数に基づいた重み付けがなされることで算出される。
【0009】
また、本発明の一態様に係る肌落ち予測装置は、
第1重み関数と第2重み関数が、切羽における岩石の種別に係る岩石グループに応じて変更される。
【0010】
また、本発明の一態様に係る肌落ち予測装置は、
前記生成処理部で生成された画像単位毎の肌落ち確率が、ヒートマップ表示される。
【0011】
また、本発明の一態様に係る肌落ち予測装置は、
前記学習モデルが、トンネル掘削工事の現場で取得されるデータに基づいてアップデートされる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る機械学習装置は、
切羽画像と、切羽における岩石の種別に係る岩石グループに応じて算出される、画像単位毎の肌落ち確率とで構成される学習用データを複数組記憶する学習用データ記憶部と、
複数組の前記学習用データを学習モデルに入力することで、切羽画像と、画像単位毎の肌落ち確率との相関関係を前記学習モデルに学習させる機械学習部と、
前記機械学習部により前記相関関係を学習させた前記学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、を備える。
【0013】
また、本発明の一態様に係る肌落ち予測方法は、
トンネル切羽における肌落ちを予測する肌落ち予測方法であって、
トンネル切羽が撮像された切羽画像を取得する情報取得工程と、
前記情報取得工程により取得された切羽画像を、切羽画像と、画像単位毎の肌落ち確率との相関関係を機械学習により学習させた学習モデルに入力することで、切羽画像に対応する画像単位毎の肌落ち確率を生成する生成処理工程と、を備え、
機械学習に供される画像単位毎の肌落ち確率は、切羽における岩石の種別に係る岩石グループに応じて算出される。
【0014】
また、本発明の一態様に係る機械学習方法は、
切羽画像と、切羽における岩石の種別に係る岩石グループに応じて算出される、画像単位毎の肌落ち確率とで構成される学習用データを複数組記憶する学習用データ記憶工程と、
複数組の前記学習用データを学習モデルに入力することで、切羽画像と、画像単位毎の肌落ち確率との相関関係を前記学習モデルに学習させる機械学習工程と、
前記機械学習工程により前記相関関係を学習させた前記学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶工程と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る肌落ち予測装置によれば、岩石の種別に係る岩石グループに応じた機械学習がなされることで、肌落ちの危険性がある位置の予測精度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る機械学習装置によれば、より精度高く肌落ちの危険性がある箇所を予測可能な肌落ち予測装置に用いられる学習モデルを生成することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る肌落ち予測方法によれば、岩石の種別に係る岩石グループに応じた機械学習がなされることで、肌落ちの危険性がある位置の予測精度を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る機械学習方法によれば、より精度高く肌落ちの危険性がある箇所を予測可能な肌落ち予測方法に用いられる学習モデルを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る肌落ち予測システム1の一例を示す全体構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る肌落ち予測システム1における(A)学習過程の処理概略と(B)推論過程の処理概略とを説明する図である。
【
図4】切羽画像における険箇所抽出範囲と、危険箇所設定範囲との関係を示す図である。
【
図5】A、B2つの切羽画像における険箇所抽出範囲と、危険箇所設定範囲との関係を示す図である。
【
図6】岩石グループの相違による第2重み(危険度重み)関数の相違を示す図である。
【
図7】第1重み関数と第2重み関数とから総合重み関数を算出するイメージを示す図である。
【
図8】コンピュータ900の一例を示すハードウエア構成図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る肌落ち予測システムの各装置を構成し得るスマートフォン800のハードウエア構成図である。
【
図10】第1の実施形態に係る機械学習装置5の一例を示すブロック図である。
【
図11】学習モデル12及び学習用データ13の一例を示す図である。
【
図12】機械学習装置5による機械学習方法の一例を示すフローチャートである。
【
図13】第1の実施形態に係る情報処理装置6の一例を示すブロック図である。
【
図14】第1の実施形態に係る情報処理装置6の一例を示す機能説明図である。
【
図15】情報処理装置6による情報処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図16】本発明の実施形態に係る肌落ち予測システム1による出力表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための実施形態について説明する。以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0021】
(本発明の実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る肌落ち予測システム1の一例を示す全体構成図である。肌落ち予測システム1は、山岳トンネル工事における掘削の最先端のトンネル切羽10に関する情報を取得し、これに基づいて、トンネル切羽10における肌落ちを予測するシステムである。このために、肌落ち予測システム1は、人工知能技術を用いた機械学習装置5と、この機械学習装置5によって学習された学習データに基づいて推論を行う肌落ち予測装置4とを有している。
【0022】
肌落ち予測システム1は、トンネル切羽10を撮像する撮像装置3と、機械学習の学習フェーズの主体として動作する機械学習装置5と、機械学習における推論フェーズ(予測フェーズともいう)の主体として動作する肌落ち予測装置4と、肌落ち予測システム1の管理者や作業者が使用する情報処理装置6を備えることができる。肌落ち予測システム1の各装置3~6は、ネットワーク7により相互に通信可能に接続される。なお、
図1に示す肌落ち予測システム1のシステム構成は一例であり、適宜変更することができる。例えば、本実施形態においては、肌落ち予測装置4と機械学習装置5と情報処理装置6とをそれぞれ独立した情報処理装置により構成しているが、これらを一つの情報処理装置で構成することもできる。
【0023】
撮像装置3は、例えば、CMOSセンサーやCCDセンサー等のイメージセンサーで構成されるカメラを備え、トンネル切羽10の全体を撮像する。なお、撮像装置3は、手持ち式又は固定設置式のカメラであって、例えば、作業者が操作して画像を撮像するものでもよいし、所定の撮像条件が満たされたときに自動で画像を撮像するものでもよい。また、本実施形態では、一つの撮像装置3によって、トンネル切羽10全体を撮像するようにしているが、複数の撮像装置3によって、トンネル切羽10を撮像するようにしてもよい。
【0024】
撮像装置3は、撮像装置3の画角内にトンネル切羽10を撮像し、所定の画像形式に基づいてデジタルデータとしての画像を出力する。なお、撮像装置3は、
図1に示すように、機械学習装置5に接続された撮像装置3と、肌落ち予測装置4に接続された撮像装置3とが別々に設けられてもよいし、1つの撮像装置3が機械学習装置5及び肌落ち予測装置4の双方に接続されて共用されてもよい。また、
図1では、簡略化のため、1つの撮像装置3が、機械学習装置5及び肌落ち予測装置4にそれぞれ接続されているが、複数の撮像装置3がそれぞれ接続されていてもよい。
【0025】
機械学習装置5は、汎用又は専用のコンピュータ等で構成され、機械学習における学習フェーズの主体として動作する。機械学習装置5は、撮像装置3により撮像された画像(学習用画像)を含む学習データを用いて、学習モデル12の機械学習を実施する。機械学習装置5は、学習済みの学習モデル12をネットワーク7や記録媒体等を介して肌落ち予測装置4に提供する。なお、コンピュータの構成例については、後述する。
【0026】
肌落ち予測装置4は、汎用又は専用のコンピュータ等で構成され、機械学習における推論フェーズの主体として動作する。肌落ち予測装置4は、機械学習装置5により学習済みの学習モデル12を用いて、撮像装置3により撮像された画像(予測用画像)からトンネル切羽10の予測を行う。
【0027】
情報処理装置6は、汎用又は専用のコンピュータ等で構成される。情報処理装置6は、肌落ち予測システム1にて、学習データの準備、学習モデル12の機械学習、トンネル切羽10の肌落ち予測を行うために、入力画面を介して各種の操作入力を受け付けるとともに、アプリケーションやブラウザ等の表示画面を介して各種の情報を表示する。また、
図1では、簡略化のため、1つの情報処理装置6を図示しているが、情報処理装置6は複数でもあってもよい。
【0028】
タブレット型端末装置9は、汎用又は専用のコンピュータ等で構成される。肌落ち予測システム1におけるタブレット型端末装置9は、
図1点線による囲み中に示されるように、トンネル掘削工事の現場で用いられることが想定される。例えば、タブレット型端末装置9は、技術者、熟練者や地質専門家が、現場における現時点での切羽の画像に対して、危険箇所抽出範囲データを指定するのに用いることができる。このようにして入力されるデータは、学習モデル12のアップデートに利用することができる。肌落ち予測システム1における他の装置とタブレット型端末装置9との間のデータ通信は無線によることが好ましい。
【0029】
次に、本発明の実施形態に係る肌落ち予測システム1に学習フェーズと推論フェーズにおけるデータ処理の概要について説明する。
図2は本発明の実施形態に係る肌落ち予測システム1における(A)学習過程の処理概略と(B)推論過程の処理概略とを説明する図である。
【0030】
図2(A)に示す処理には、学習用データ13を作成する際に学習用データ作成部510で実行される処理も含まれている。学習用データ13は、入力データとしての切羽画像(最上段)と、出力データとしての画像単位毎の肌落ち確率(最下段)とで構成されるものである。学習過程では、これら切羽画像(最上段)と画像単位毎の肌落ち確率(最下段)との相関関係が学習されることとなる。ここで、画像単位毎の肌落ち確率における「画像単位」は、任意の単位を用いることができる。例えば、画像単位は1画素であってもよいし、4画素×3画素の単位であってもよい。また、「肌落ち確率」は、0~1の値をとる値である。画像単位毎の肌落ち確率に係るデータは、学習用データ13における正解ラベルとなることができる。
図2(A)では、とある画像単位である第N画像単位における肌落ち確率(0~1の値)を画像単位の濃淡で示している。なお、Nは自然数であり、有限の最大値を有する。
【0031】
切羽画像(最上段)から、画像単位毎の肌落ち確率(最下段)のデータを導くために、切羽画像(最上段)と関連する作成用データが用いられる。作成用データには、危険箇所抽出範囲データ、岩石グループデータの2種類のデータが含まれる。
【0032】
危険箇所抽出範囲データは、技術者や熟練者が切羽画像を目視して、肌落ちの危険性がある箇所と判断して、当該切羽画像において矩形枠(図中では一点鎖線で示す)で囲った範囲のデータである。また、岩石グループデータは、切羽を構成する岩石が、どの岩石グループに属するかに係るデータである。切羽画像における岩石グループは、技術者や熟練者などの専門家が判定することができるし、また、切羽画像に基づいた自動判定を行うこともできる。後者の判定をする場合には、例えば、特開2023-34740(特願2021-141107)記載の技術を用いることができる。
【0033】
危険箇所抽出範囲データがトンネル掘削工事の現場で入力されると、即時に、入力された危険箇所抽出範囲データに基づいて学習用データ13が生成され、学習用データ13による機械学習で学習モデル12のアップデートがされるようアルゴリズムを設定することで、常に最新の学習モデル12に基づいた、画像単位毎の肌落ち確率を取得することができるようになる。
【0034】
切羽を構成する岩石が、岩石グループデータは、Ga:硬質岩・塊状、Gb:中硬質岩・塊状、Gc:軟質岩・塊状、Gd:中硬質岩・層状、Ge:軟質岩・層状の5グループのいずれに属するかに係るデータである。なお、切羽を構成する岩石が、2種以上の岩石グループに属することもあり得るが、その場合、岩石グループ毎のデータ処理を適宜行うことで本発明を実現することができる。以下、実施形態では、切羽を構成する岩石は、1種類の岩石グループであることを前提に説明する。
【0035】
切羽画像(最上段)から、危険箇所抽出範囲データと岩石グループデータとからなる作成用データを用いて、画像単位毎の肌落ち確率(最下段)のデータを導く処理方法については後に説明する。本実施形態に係る肌落ち予測システム1においては、学習用データ13として、切羽画像(最上段、入力データ)と、画像単位毎の肌落ち確率(最下段、出力データ)との間の相関関係が機械学習されることにより、学習モデル12が構築される。
【0036】
図2(B)に示す推論過程の処理では、上記の学習モデル12に対して、切羽画像が入力されることで、入力された切羽画像に対応する画像単位毎の肌落ち確率が、先の画像単位毎に出力される。本実施形態に係る肌落ち予測システム1においては、
図2(B)の最下段の表示のように、好適には全ての画像単位がそれぞれの値に応じた濃淡をもって表示されるヒートマップ表示とすることができる。ヒートマップ表示においては、例えば肌落ち確率が0の場合、白で表示し、肌落ち確率が1の場合、黒で表示する濃淡表示とすることができるが、ヒートマップ表示に白黒以外の色を用いる表示にしてもよい。
【0037】
次に、危険箇所抽出範囲データと岩石グループデータとからなる作成用データを用いて、画像単位毎の肌落ち確率のデータを導く処理方法について説明していく。
図4は切羽画像における危険箇所抽出範囲と、危険箇所設定範囲との関係を示す図である。
図4の左図は切羽画像における危険箇所抽出範囲を示しており、
図4の右図は左図の険箇所抽出範囲付近の拡大図に、その他の情報を加筆した図である。
【0038】
危険箇所抽出範囲は、切羽画像において、肌落ちの危険性がある箇所として技術者や熟練者によって抽出される範囲である。このような危険箇所抽出範囲のデータから、画像単位毎の肌落ち確率のデータを導くに当たっては、技術者や熟練者個々人によるバラツキを考慮し、危険箇所抽出範囲においては、危険箇所抽出範囲が一律に肌落ち確率が1となり、危険箇所抽出範囲外が一律に肌落ち確率が0となることを排除するため、連続量となる重み関数を用いる。
【0039】
図4右図における座標では、横軸がx方向の位置を示しており、縦軸が重みを示している。この重みは、水平方向で見た危険箇所抽出範囲の中心(x軸の0とする)のものを示している。図においては、危険箇所抽出範囲に対して、このような座標が重畳した形で付記されている。なお、
図4右図の図法では、y軸を変数とする重み関数については示されていない。図が煩雑となることを避けるために、x軸を変数とする重み関数についてのみ説明するが、重み関数は厳密には本来xyの関数である。
【0040】
図中の曲線が重み関数であり、危険箇所抽出範囲の中心付近で最大値をとる関数である。抽出された危険箇所抽出範囲に対するデータ処理を行う際の重み関数を第1重み関数と称することとする。第1重み関数における「第1重み」を「危険箇所範囲重み」とも称する。第1重み関数は、連続関数であり、例えばメンバーシップ関数を用いることができる。また、第1重み関数は、岩石グループに依存する関数であり、岩石グループに依って曲線形状のプロフィールが異なるものが用いられる。
【0041】
第1重み関数には、危険箇所抽出範囲の周囲に閾値が設定される。説明を簡単にするため
図4では、x軸に沿ってマイナス側及びプラス側のそれぞれに閾値が設定されている。それぞれを、閾値(-)及び閾値(+)と表記する。画像単位毎の肌落ち確率のデータを求めるために、危険箇所抽出範囲に対して第1重み関数が考慮された新たな範囲を設定する。この範囲を「危険箇所設定範囲」と称する。この範囲の左端が閾値(-)、右端が閾値(+)によって規定されるものである。同様に、y軸を変数とする第1重み関数と、その閾値(-)、閾値(+)が存在し、それらに対応するように危険箇所設定範囲の下端、上端が規定されるが、これらは図示の煩雑さを避けるために図示省略する。危険箇所設定範囲の端部を規定する閾値を「危険箇所範囲閾値」とも称する。
【0042】
次に、危険箇所抽出範囲が、重なった場合の考え方について
図5を参照して説明する。
図5において、左方の危険箇所抽出範囲をAと称し、右方の危険箇所抽出範囲をBと称する。また、それぞれの独立した危険箇所設定範囲を、図中の2点鎖線で示す。また、危険箇所抽出範囲Aと危険箇所抽出範囲Bの双方に共通な危険箇所設定範囲を点線で示す。また、危険箇所抽出範囲Aの2つの閾値を、閾値(A-)及び閾値(A+)と表記し、危険箇所抽出範囲Bの2つの閾値を、閾値(B-)及び閾値(B+)と表記する。これらの閾値から、共通な危険箇所設定範囲の左端は閾値(A-)によって規定し、右端は(B+)によって規定する。また、共通な危険箇所設定範囲の上端、下端は、y軸を変数とする第1重み関数に基づく各閾値によって規定されるが、複数の閾値のうち値が大きいものが優先される形で上端、下端が規定される。
【0043】
画像単位毎の肌落ち確率のデータを求める際に、危険箇所抽出範囲Aの第1重み関数(A)と、危険箇所抽出範囲Bの第1重み関数(B)とが用いられるが、第1重み関数(A)と第1重み関数(B)とANDをとり、画像単位毎の肌落ち確率を求めるようにしてもよいし、第1重み関数(A)と第1重み関数(B)とORをとり、画像単位毎の肌落ち確率を求めるようにしてもよい。また、画像単位毎の肌落ち確率のデータを求める際に、第1重み関数(A)と第1重み関数(B)のANDをとるか、ORをとるかを岩石グループによって決めるようにしてもよい。
【0044】
次に、切羽において上述の危険箇所設定範囲がどの位置(「設定範囲位置」とも言う)に設定されているか、及び、切羽の岩石がどの岩石グループに属するかに応じて変化する重み(第2重み)について説明する。
図6は岩石グループの相違による第2重み(危険度重み)関数の相違を示す図である。
【0045】
図6において、(A)と(B)とで岩石グループが異なるものが示されている。
図6(A)、
図6(B)のいずれにおいても、左図が切羽を示しており、右図が重み関数を示している。
図6では、座標の横軸が重みであり縦軸がy方向の位置を示している。また、
図6(A)、
図6(B)のいずれにおいても、重みは切羽の左右方向で中心のものが示されている。
【0046】
また、
図6(A)、
図6(B)のいずれにおいても、図中の曲線が重み関数である。これらの重み関数は、切羽において、鉛直上方側で肌落ち確率が高く、下方側で肌落ち確率が低い傾向が内包されるものである。図中の濃淡は、肌落ち確率の高低を示すものである。
【0047】
設定範囲位置に対するデータ処理を行う際の重み関数を第2重み関数と称することとする。第2重み関数における「第2重み」を「危険度重み」とも称する。第2重み関数は、連続関数であり、例えばメンバーシップ関数を用いることができる。また、第2重み関数は、岩石グループに依存する関数であり、
図6(A)、
図6(B)の相違に見られるように、岩石グループに依って曲線形状のプロフィールが異なるものが用いられる。
【0048】
以上のように、技術者、熟練者によって抽出された危険箇所抽出範囲から危険箇所設定範囲が規定され、危険箇所設定範囲の切羽における位置から設定範囲位置が規定される。そして、危険箇所設定範囲に係る第1重み関数と、設定範囲位置に係る第2重み関数とから、最終的な重み関数(「総合重み関数」という)が求められて、画像単位毎の肌落ち確率のデータが算出される。
【0049】
図7は第1重み関数と第2重み関数とから総合重み関数を算出するイメージを示す図である。
図7における位置は、y軸方向のものであることに留意されたい。(x軸方向についても同様の考え方で処理することができる。)
図7(i)は切羽画像における危険箇所抽出範囲と、これに基づく危険箇所設定範囲を示している。
【0050】
図7(ii)は、第1重み関数を示しており、
図7(iii)は、第2重み関数を示している。これらの重み関数のカーブの特性は、いずれも岩石グループに応じて変わるものである。そして、
図7(iv)の総合重み関数は、
図7(ii)の第1重み関数と、
図7(iii)の第2重み関数との積で求めることができる。本例では、総合重み関数は第1重み関数と第2重み関数と積で求めたが、総合重み関数は第1重み関数と第2重み関数と和で求めるようにしてもよい。
【0051】
以上のように求められる総合重み関数から、画像単位毎の肌落ち確率を算出するための方法としては、例えば、画像単位における総合重み関数の総和を求めて画像単位面積で除し、求め得る値のうち最高値が1となるように規格化する方法を挙げることができるが、適宜他の方法も採用することできる。
【0052】
学習用データ13として、切羽画像(入力データ)と、画像単位毎の肌落ち確率(出力データ)との間の相関関係は機械学習されることにより、学習モデル12が構築される。そして、本実施形態では、画像単位毎の肌落ち確率(出力データ)が、岩石の種別に係る岩石グループに応じて算出されている。例えば、このような学習モデル12が用いられる本実施形態に係る肌落ち予測装置4及び肌落ち予測方法によれば、岩石の種別に係る岩石グループに応じた機械学習がなされるので、肌落ちの危険性がある位置の予測精度を向上させることができる。
【0053】
(各装置のハードウエア構成)
図8は、コンピュータ900の一例を示すハードウエア構成図である。肌落ち予測システム1の各装置2~6は、汎用又は専用のコンピュータ900により構成される。
【0054】
コンピュータ900は、
図8に示すように、その主要な構成要素として、バス910、プロセッサ912、メモリ914、入力デバイス916、出力デバイス917、表示デバイス918、ストレージ装置920、通信I/F(インターフェース)部922、外部機器I/F部924、I/O(入出力)デバイスI/F部926、及び、メディア入出力部928を備える。なお、上記の構成要素は、コンピュータ900が使用される用途に応じて適宜省略されてもよい。
【0055】
プロセッサ912は、1つ又は複数の演算処理装置(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-processing unit)、DSP(digital signal processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等)で構成され、コンピュータ900全体を統括する制御部として動作する。メモリ914は、各種のデータ及びプログラム930を記憶し、例えば、メインメモリとして機能する揮発性メモリ(DRAM、SRAM等)と、不揮発性メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等とで構成される。
【0056】
入力デバイス916は、例えば、キーボード、マウス、テンキー、電子ペン等で構成され、入力部として機能する。出力デバイス917は、例えば、音(音声)出力装置、バイブレーション装置等で構成され、出力部として機能する。表示デバイス918は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、プロジェクタ等で構成され、出力部として機能する。入力デバイス916及び表示デバイス918は、タッチパネルディスプレイのように、一体的に構成されていてもよい。ストレージ装置920は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成され、記憶部として機能する。ストレージ装置920は、オペレーティングシステムやプログラム930の実行に必要な各種のデータを記憶する。
【0057】
通信I/F部922は、インターネットやイントラネット等のネットワーク940(
図1のネットワーク7と同じであってもよい)に有線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って他のコンピュータとの間でデータの送受信を行う通信部として機能する。外部機器I/F部924は、カメラ、プリンタ、スキャナ、リーダライタ等の外部機器950に有線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って外部機器950との間でデータの送受信を行う通信部として機能する。I/OデバイスI/F部926は、各種のセンサー、アクチュエータ等のI/Oデバイス960に接続され、I/Oデバイス960との間で、例えば、センサーによる検出信号やアクチュエータへの制御信号等の各種の信号やデータの送受信を行う通信部として機能する。メディア入出力部928は、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、CD(Compact Disc)ドライブ等のドライブ装置、メモリカードスロット、USBコネクタで構成され、DVD、CD、メモリカード、USBメモリ等のメディア(非一時的な記憶媒体)970に対してデータの読み書きを行う。
【0058】
上記構成を有するコンピュータ900において、プロセッサ912は、ストレージ装置920に記憶されたプログラム930をメモリ914に呼び出して実行し、バス910を介してコンピュータ900の各部を制御する。なお、プログラム930は、ストレージ装置920に代えて、メモリ914に記憶されていてもよい。プログラム930は、インストール可能なファイル形式又は実行可能なファイル形式でメディア970に記録され、メディア入出力部928を介してコンピュータ900に提供されてもよい。プログラム930は、通信I/F部922を介してネットワーク940経由でダウンロードすることによりコンピュータ900に提供されてもよい。また、コンピュータ900は、プロセッサ912がプログラム930を実行することで実現する各種の機能を、例えば、FPGA、ASIC等のハードウエアで実現するものでもよい。
【0059】
コンピュータ900は、例えば、据置型コンピュータや携帯型コンピュータで構成され、任意の形態の電子機器である。コンピュータ900は、クライアント型コンピュータでもよいし、サーバ型コンピュータやクラウド型コンピュータでもよい。コンピュータ900は、各装置2~6以外の装置にも適用されてもよい。また、コンピュータ900が携帯型コンピュータである場合には、コンピュータ900は自機が所在する位置情報を取得する機能を有し、当該位置情報を種々のデータ処理に供する構成とされることが好ましい。
【0060】
(スマートフォン800のハードウエア構成)
本発明に係る肌落ち予測装置で利用され得るコンピュータの一例であるスマートフォン800の構成について説明する。学習済みの学習モデル12を記憶したスマートフォン800を、肌落ち予測装置4として用いることができれば、現場において肌落ち高精度で予測することが可能となり、利便性がよい。
【0061】
図9は本発明の実施形態に係る肌落ち予測システム1を構成し得るスマートフォン800のハードウエア構成図である。なお、本実施形態では、コンピュータとしてスマートフォンを用いる例に基づいて説明するが、本発明に係る肌落ち予測装置ではコンピュータとしてはタブレット型端末装置9など他のものも利用され得る。
【0062】
制御部811は、演算処理装置(プロセッサ、Central Processing Unit)や、この演算処理装置上で実行される各種プログラムなどに相当する構成である。前記演算処理装置上で動作する基本オペレーティングシステム816には、例えば、カレンダーや時計の基本的な計時機能等を実現するプログラムも含まれている。
【0063】
記憶部815は、データを記憶しておく揮発性メモリ(DRAM、SRAM等)や不揮発性メモリ(ROM、フラッシュメモリ等)などのストレージである。この記憶部815においては、制御部811が書き込んだデータを保持したり、書き込まれているデータが制御部811によって参照されたり、或いは、制御部811が不要となったデータを消去したりすることができるようになっている。
【0064】
記憶部815には、基本オペレーティングシステム816と、この基本オペレーティングシステム816上で動作する本発明の肌落ち予測装システムアプリケーションプログラム817と、この肌落ち予測装システムアプリケーションプログラム817によって利用される学習モデル12などが記憶されている。記憶部815に記憶されている各プログラムは、制御部811において実行される。
【0065】
本発明に係る肌落ち予測装置は、記憶部815にインストールされたアプリケーションソフトウェアである肌落ち予測装システムアプリケーションプログラム817に基づいて、制御部811が各種処理を実行することで各種機能が実現されるようになっている。
図において、制御部811と連結されたブロック構成(例えば、タッチパネル部830など)に対して各種制御指令を発したり、各種データを転送したり、また、当該ブロック構成で取得されたデータを受けたりすることができるようになっている。
【0066】
通信部820は、無線通信によって外部の機器とデータ通信、音声通話を実現するものでる。通信部820は、制御部11の指令に基づいて、例えば、記憶部815に書き込まれたデータを外部機器に送信したり、外部機器からの受信したデータを制御部811に転送したりすることなどができる。
【0067】
GPS受信部823は、複数の衛星からのGPS(Global Positioning System)信号を受信することで、自らの緯度・経度を特定する構成である。GPS受信部823で特定された緯度・経度は制御部811に送信される。制御部811は、記憶部815に記憶されている地図データ・アプリケーション(不図示)と連携することで、地図上におけるスマートフォン800自身の存在位置、ひいては、スマートフォン800を携帯していることが想定されるユーザーの位置を割り出す。
【0068】
撮像部825は、静止画像撮像データや動画像撮像データを取得する構成である。このような撮像部825で取得された静止画像撮像データや動画像撮像データは、制御部811で画像処理され、タッチパネル部830に表示されたり、必要に応じて記憶部815に保存されたりする。記憶部815に保存された静止画像撮像データは、肌落ち予測装置5で利用可能に構成することができる。
【0069】
スマートフォン800に設けられているタッチパネル部830は、ユーザーインターフェースとして利用される。タッチパネル部830は、ユーザーの指の接触を検知することで、ユーザーが情報を入力できる入力部831と共に、ユーザーに対して情報を表示する表示部832とが一体となったものである。タッチパネル部830において、表示部832と入力部831とは重ねられるように設けられると共に、入力部831は透明とされているので、ユーザーは表示部832の表示に対して指を接触させることで、表示に基づいた入力を行うことができるようになっている。このようなタッチパネル部830に基づいたユーザーによる入力操作については、従来周知の技術が本発明に適用される。
【0070】
タッチパネル部830の入力部831は、例えば静電容量方式のものを用いることができる。また、タッチパネル部830の表示部32には、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)などの表示装置を用いることができる。
【0071】
スマートフォン800におけるタッチパネル部830で一般的に知られている「タップ」、「ダブルタップ」、「ロングタップ」、「ドラッグ」、「ムーブ」、「フリック」、「スワイプ」、「ピンチ」、「ピンチアウト」と称される各入力操作は、本発明に係る肌落ち予測装置5においても採用され得る。
【0072】
音声処理部835は、音声信号の変復調を行う。音声処理部835は、マイク836から与えられる信号を変調して、変調後の信号を制御部811へ与える。また、音声処理部835は、音声信号をスピーカー837へ与える。音声処理部835は、例えば、音声処理用のプロセッサによって実現される。マイク836は、音声信号の入力を受け付けて制御部811へ出力するための音声入力部として機能する。スピーカー837は、音声信号を、スマートフォン800の外部へ出力するための音声出力部として機能する。
【0073】
加速度センサー841は、スマートフォン800に対して加えられる加速度を計測する慣性センサーであり、例えば、加速度の検出方式としてMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を応用したMEMS加速度センサーを利用することができる。
【0074】
地磁気センサー842は、磁場(磁界)の大きさ、方向を計測するセンサーである。地磁気センサー42としては、ホール素子のホール効果を利用したホール素子センサーや、磁気抵抗素子を用いたMRセンサーなどを用いることができる。また、ジャイロセンサー843は、スマートフォン800の回転角速度を計測する角速度センサーである。このようなジャイロセンサー43としては、MEMS技術を用いた振動式ジャイロセンサーを好適に用い得る。
【0075】
(機械学習装置5)
図10は、第1の実施形態に係る機械学習装置5の一例を示すブロック図である。機械学習装置5は、制御部50、通信部51、学習用データ記憶部52、及び、学習済みモデル記憶部53を備える。
【0076】
制御部50は、学習用データ作成部510、学習用データ取得部500及び機械学習部501として機能する。通信部51は、ネットワーク7を介して外部装置と接続され、各種のデータを送受信する通信インターフェースとして機能する。
【0077】
学習用データ作成部510は、通信部51及びネットワーク7を介して外部装置(例えば、情報収集端末装置2、撮像装置3、肌落ち予測装置4等)と接続され、入力データとしての切羽画像と、当該切羽画像と関連する作成用データ(危険箇所抽出範囲データ、岩石グループデータ)を取得する。学習用データ作成部510は、先に説明した要領で、これら切羽画像と作成用データに基づいて、入力データとしての切羽画像と、出力データとしての画像単位毎の肌落ち確率とで構成される学習用データ13を作成する。
【0078】
学習用データ取得部500は、学習用データ作成部510で作成された入力データとしての切羽画像と、出力データとしての画像単位毎の肌落ち確率とで構成される学習用データ13を取得する。学習用データ13は、教師あり学習における教師データ(トレーニングデータ)、検証データ及びテストデータとして用いられるデータである。また、画像単位毎の肌落ち確率は、教師あり学習における正解ラベルとして用いられるデータである。
【0079】
学習用データ記憶部52は、学習用データ取得部500で取得した学習用データ13を複数組記憶するデータベースである。なお、学習用データ記憶部52を構成するデータベースの具体的な構成は適宜設計すればよい。
【0080】
機械学習部501は、学習用データ記憶部52に記憶された複数組の学習用データ13を用いて機械学習を実施する。すなわち、機械学習部501は、学習モデル12に学習用データ13を複数組入力し、学習用データ13に含まれる切羽画像と画像単位毎の肌落ち確率との相関関係を学習モデル12に学習させることで、学習済みの学習モデル12を生成する。機械学習部501は、機械学習を実施する際、例えば、オンライン学習、バッチ学習、ミニバッチ学習等の任意の手法を採用することができる。なお、機械学習部501は、学習モデル12に入力する入力データ(切羽画像)に対して所定の前処理を行うようにしてもよいし、学習モデル12から出力される出力データ(画像単位毎の肌落ち確率)に対して所定の後処理を行うようにしてもよい。
【0081】
学習済みモデル記憶部53は、機械学習部501により生成された学習済みの学習モデル12(具体的には、調整済みの重みパラメータ群)を記憶するデータベースである。学習済みモデル記憶部53に記憶された学習済みの学習モデル12は、ネットワーク7や記録媒体等を介して実システム(例えば、情報処理装置6)に提供される。なお、
図10では、学習用データ記憶部52と、学習済みモデル記憶部53とが別々の記憶部として示されているが、これらは単一の記憶部で構成されてもよい。
【0082】
図11は、学習モデル12及び学習用データ13の一例を示す図である。学習モデル12の機械学習に用いられる学習用データ13は、切羽画像と、画像単位毎の肌落ち確率とで構成される。
【0083】
学習用データ13を構成する切羽画像データには、JPEG形式のデータ、GIF形式のデータ、TIFF形式のデータ、PNG形式のデータ、BMP形式のデータ、RAW形式のデータ、SVG形式のデータなどいずれも周知のものを用い得る。切羽画像は、正面から撮影されたもの、切羽の斜めから撮影されたものなどの複数のアングルから撮影されたものの集合体であっても構わない。さらに、切羽画像データは、静止画像データのみならず、動画像データであっても構わない。また、学習用データ13を構成する画像単位毎の肌落ち確率は、例えば、段階値又は連続値で表され、連続値の場合には、所定の範囲(例えば、0~1)に正規化された値でもよい。
【0084】
なお、切羽画像に含まれるデータは、所定の時点の状態を示す時点データでもよいし、所定の時間間隔(1時間毎、1日毎、1週間毎、1か月毎等)による複数の時点データからなる時系列データでもよいし、所定の期間に含まれる複数の時点データの代表値(平均値、最大値、最小値等)を示す代表データでもよい。
【0085】
また、画像単位毎の肌落ち確率は、典型的には0~1の範囲の値をとるものとすることができるが、画像単位毎の肌落ち確率の定義は、適宜変更してもよく、その場合には、学習モデル12及び学習用データ13における出力データのデータ構成を適宜変更すればよい。
【0086】
学習モデル12は、例えば、ニューラルネットワークの構造を採用したものであり、入力層120、中間層121、及び、出力層122を備える。各層の間には、各ニューロンをそれぞれ接続するシナプス(不図示)が張られており、各シナプスには、重みがそれぞれ対応付けられている。各シナプスの重みからなる重みパラメータ群が、機械学習により調整される。
【0087】
入力層120は、入力データとしての切羽画像に対応する数のニューロンを有し、切羽画像の各値が各ニューロンにそれぞれ入力される。出力層122は、出力データとしての画像単位毎の肌落ち確率に対応する数のニューロンを有し、画像単位毎の肌落ち確率の予測結果(推論結果)が、出力データとして出力される。学習モデル12が、回帰モデルで構成される場合には、画像単位毎の肌落ち確率は、所定の範囲(例えば、0~1)に正規化された数値でそれぞれ出力される。また、学習モデル12が、分類モデルで構成される場合には、画像単位毎の肌落ち確率は、各クラスに対するスコア(確度)として、所定の範囲(例えば、0~1)に正規化された数値でそれぞれ出力される。
【0088】
機械学習部501は、学習モデル12に学習用データ13を複数組入力し、学習用データ13に含まれる切羽画像と、画像単位毎の肌落ち確率との間の相関関係を学習モデル12に学習させることで、学習済みの学習モデル12を生成する。
【0089】
なお、本実施形態では、学習モデル12及び学習用データ13のデータ構成は、
図11で示すように構成される場合について説明したが、例えば、機械学習の手法、データの種類等によって、条件が異なる複数のデータ構成を採用してもよい。その場合には、学習用データ取得部500は、条件が異なる複数のデータ構成にそれぞれ対応する複数種類の学習用データを取得するとともに、機械学習部501は、それらの学習用データをそれぞれ用いて機械学習を実施するようにすればよい。
【0090】
(機械学習方法)
図12は、機械学習装置5による機械学習方法の一例を示すフローチャートである。なお、以下では、学習用データ13として学習用データ13を用いて、学習モデル12として学習モデル12を生成する場合について説明する。
【0091】
まず、ステップS100において、学習用データ取得部500は、機械学習を開始するための事前準備として、所望の数の学習用データ13を取得し、その取得した学習用データ13を学習用データ記憶部52に記憶する。ここで準備する学習用データ13の数については、最終的に得られる学習モデル12に求められる推論精度を考慮して設定すればよい。
【0092】
次に、ステップS110において、機械学習部501は、機械学習を開始すべく、学習前の学習モデル12を準備する。ここで準備する学習前の学習モデル12は、
図11に例示したニューラルネットワークモデルで構成されており、各シナプスの重みが初期値に設定されている。
【0093】
次に、ステップS120において、機械学習部501は、学習用データ記憶部52に記憶された複数組の学習用データ13から、例えば、ランダムに1組の学習用データ13を取得する。
【0094】
次に、ステップS130において、機械学習部501は、1組の学習用データ13に含まれる切羽画像(入力データ)を、準備された学習前(又は学習中)の学習モデル12の入力層120に入力する。その結果、学習モデル12の出力層122から推論結果として画像単位毎の肌落ち確率(出力データ)が出力されるが、当該出力データは、学習前(又は学習中)の学習モデル12によって生成されたものである。そのため、学習前(又は学習中)の状態では、推論結果として出力された出力データは、学習用データ13に含まれる画像単位毎の肌落ち確率(正解ラベル)とは異なる情報を示す。
【0095】
次に、ステップS140において、機械学習部501は、ステップS120において取得された1組の学習用データ13に含まれる画像単位毎の肌落ち確率(正解ラベル)と、ステップS130において出力層から推論結果として出力された画像単位毎の肌落ち確率(出力データ)とを比較し、各シナプスの重みを調整する処理(バックプロパゲーション)を実施することで、機械学習を実施する。これにより、機械学習部501は、切羽画像(入力データ)と、画像単位毎の肌落ち確率(出力データ)の相関関係を学習モデル12に学習させる。
【0096】
次に、ステップS150において、機械学習部501は、所定の学習終了条件が満たされたか否かを、例えば、学習用データ13に含まれる画像単位毎の肌落ち確率(正解ラベル)と、推論結果として出力された画像単位毎の肌落ち確率とに基づく誤差関数の評価値や、学習用データ記憶部52内に記憶された未学習の学習用データ13の残数に基づいて判定する。
【0097】
ステップS150において、機械学習部501が、学習終了条件が満たされておらず、機械学習を継続すると判定した場合(ステップS150でNo)、ステップS120に戻り、学習中の学習モデル12に対してステップS120~S140の工程を未学習の学習用データ13を用いて複数回実施する。一方、ステップS150において、機械学習部501が、学習終了条件が満たされて、機械学習を終了すると判定した場合(ステップS150でYes)、ステップS160に進む。
【0098】
そして、ステップS160において、機械学習部501は、各シナプスに対応付けられた重みを調整することで生成された学習済みの学習モデル12(調整済みの重みパラメータ群)を学習済みモデル記憶部53に記憶し、
図12に示す一連の機械学習方法を終了する。機械学習方法において、ステップS100が学習用データ記憶工程、ステップS110~S150が機械学習工程、ステップS160が学習済みモデル記憶工程に相当する。
【0099】
以上のように、本実施形態に係る機械学習装置5及び機械学習方法によれば、予測対象の切羽画像から、当該切羽画像に対する画像単位毎の肌落ち確率を予測(推論)することが可能な学習モデル12を提供することができる。
【0100】
(情報処理装置6)
図13は、第1の実施形態に係る情報処理装置6の一例を示すブロック図である。
図14は、第1の実施形態に係る情報処理装置6の一例を示す機能説明図である。情報処理装置6は、制御部60、通信部61、及び、学習済みモデル記憶部62を備える。
【0101】
制御部60は、情報取得部600、生成処理部601及び出力処理部602として機能する。通信部61は、ネットワーク7を介して外部装置と接続され、各種のデータを送受信する通信インターフェースとして機能する。
【0102】
情報取得部600は、通信部61及びネットワーク7を介して外部装置(例えば、情報収集端末装置2、撮像装置3、肌落ち予測装置4等)と接続され、予測対象の切羽画像における画像単位毎の肌落ち確率を取得する。
【0103】
例えば、情報取得部600は、撮像装置3や肌落ち予測装置4から、予測対象の切羽画像を取得する。その際、情報取得部600は、学習モデル12における入力データのデータ構成に合わせて切羽画像を取得することができる。
【0104】
生成処理部601は、上記のように、情報取得部600により取得された予測対象の切羽画像を入力データとして学習モデル12に入力することで出力される、当該切羽画像に対する画像単位毎の肌落ち確率を生成する。具体的には、生成処理部601は、切羽画像を学習モデル12に入力することで、画像単位毎の肌落ち確率を生成する。なお、生成処理部601は、学習モデル12に入力する入力データ(切羽画像)に対して所定の前処理を行うようにしてもよいし、学習モデル12から出力される出力データ(画像単位毎の肌落ち確率)に対して所定の後処理を行うようにしてもよい。
【0105】
学習済みモデル記憶部62は、生成処理部601にて用いられる学習済みの学習モデル12を記憶するデータベースである。なお、学習済みモデル記憶部62に記憶される学習モデル12の数は上記の例に限定されず、例えば、機械学習の手法、切羽画像の種類、切羽画像に含まれるデータの種類、画像単位毎の肌落ち確率に含まれるデータの種類等に依って、条件が異なる複数の学習済みモデルが記憶され、選択的に利用可能としてもよい。また、学習済みモデル記憶部62は、外部コンピュータ(例えば、サーバ型コンピュータやクラウド型コンピュータ)の記憶部で代用されてもよく、その場合には、生成処理部601は、当該外部コンピュータにアクセスすればよい。
【0106】
出力処理部602は、生成処理部601により生成された画像単位毎の肌落ち確率を出力するための出力処理を行う。例えば、出力処理部602は、画像単位毎の肌落ち確率を、機械学習装置5に送信することで、その画像単位毎の肌落ち確率を、新たな学習用データの正解ラベルとして登録するようにしてもよい。出力処理部602は、画像単位毎の肌落ち確率を全てまとめて、ヒートマップ表示として可視化する処理を担うことができる。ヒートマップ表示においては、例えば肌落ち確率が0の場合は白で表示し、肌落ち確率が1の場合は黒で表示し、それらの間の値は白と黒の中間色で段階的に表示することができる。また、ヒートマップ表示に白黒以外の色を用いたカラー表示にしてもよい。
【0107】
図16は本発明の実施形態に係る肌落ち予測システム1による出力表示例を示す図である。
図16(A)は肌落ち予測装置4や情報処理装置6に入力される切羽画像の例を示しており、
図16(B)は、肌落ち予測装置4や情報処理装置6から出力される画像の例を示している。
図16(B)は、入力された切羽画像に対応した画像単位毎の肌落ち確率を、ヒートマップ(点線で囲まれた2箇所)で表示したものである。
【0108】
以上、本実施形態に係る肌落ち予測装置4や情報処理装置6によれば、岩石の種別に係る岩石グループに応じた機械学習がなされた学習モデル12が用いられるので、肌落ちの危険性がある位置の予測精度を向上させることができる。また、上記のようなヒートマップ表示を用いることで、例えば現場においても、切羽における肌落ち確率の高い箇所が的確に把握され易くなる。
【0109】
(情報処理方法)
図15は、情報処理装置6による情報処理方法の一例を示すフローチャートである。以下では、学習用データ13として学習用データ13を用いて、学習モデル12として学習モデル12を生成する場合について説明する。
【0110】
まず、ステップS200において、情報処理装置6の情報取得部600は、例えば、撮像装置3などから予測対象の切羽画像を受信する。
【0111】
次に、ステップS210において、生成処理部601は、ステップS200にて取得された切羽画像を学習モデル12に入力することで、当該切羽画像に対する画像単位毎の肌落ち確率を出力データとして生成する。
【0112】
次に、ステップS220において、出力処理部602は、ステップS210にて生成された画像単位毎の肌落ち確率を出力するための出力処理として、例えば、肌落ち予測装置4に送信する。そして、肌落ち予測装置43が、その肌落ち確率に基づいて表示画面を表示することで、その肌落ち確率が、現場などで参照者に提示される。上記の情報処理方法において、ステップS200が情報取得工程、ステップS210が生成処理工程、ステップS220が出力処理工程に相当する。
【0113】
以上のように、本実施形態に係る情報処理装置6及び情報処理方法は、岩石の種別に係る岩石グループに応じた機械学習がなされた学習モデル12が用いられる。そして、予測対象の切羽画像を学習モデル12に入力することで、予測対象の切羽画像に対する画像単位毎の肌落ち確率が予測される。このような本実施形態に係る情報処理装置6及び情報処理方法によれば、肌落ちの危険性がある位置の予測精度を向上させることができる。また、肌落ち確率は、ヒートマップで表示することもでき、これによれば、現場などで肌落ち予測箇所の確認を的確に行うことが可能となる。
【0114】
(他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に制約されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【0115】
上記実施形態では、肌落ち予測装置4、機械学習装置5及び情報処理装置6は、別々の装置で構成されたものとして説明したが、それら3つの装置が、単一の装置で構成されていてもよいし、それら3つの装置のうち任意の2つの装置が、単一の装置で構成されていてもよい。また、機械学習装置5及び情報処理装置6の少なくとも一方が、肌落ち予測装置4に組み込まれていてもよい。
【0116】
上記実施形態では、機械学習部501による機械学習を実現する学習モデルとして、ニューラルネットワークを採用した場合について説明したが、他の機械学習のモデルを採用してもよい。他の機械学習のモデルとしては、例えば、決定木、回帰木等のツリー型、バギング、ブースティング等のアンサンブル学習、再帰型ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、LSTM等のニューラルネット型(ディープラーニングを含む)、階層型クラスタリング、非階層型クラスタリング、k近傍法、k平均法等のクラスタリング型、主成分分析、因子分析、ロジスティク回帰等の多変量解析、サポートベクターマシン等が挙げられる。
【0117】
(機械学習プログラム及び情報処理プログラム)
本発明は、機械学習装置5が備える各部としてコンピュータ900を機能させるプログラム(機械学習プログラム)や、機械学習方法が備える各工程をコンピュータ900に実行させるためのプログラム(機械学習プログラム)の態様で提供することもできる。また、本発明は、情報処理装置6が備える各部としてコンピュータ900を機能させるためのプログラム(情報処理プログラム)や、上記実施形態に係る情報処理方法が備える各工程をコンピュータ900に実行させるためのプログラム(情報処理プログラム)の態様で提供することもできる。
【0118】
(推論装置、推論方法及び推論プログラム)
本発明は、上記実施形態に係る情報処理装置6(情報処理方法又は情報処理プログラム)の態様によるもののみならず、画像単位毎の肌落ち確率を推論するために用いられる推論装置(推論方法又は推論プログラム)の態様で提供することもできる。その場合、推論装置(推論方法又は推論プログラム)としては、メモリと、プロセッサとを含み、このうちのプロセッサが、一連の処理を実行するものとすることができる。当該一連の処理とは、予測対象の切羽画像における画像単位毎の肌落ち確率を取得する情報取得処理(情報取得工程)と、情報取得処理にて切羽画像を取得すると、当該切羽画像に対する画像単位毎の肌落ち確率を推論する推論処理(推論工程)とを含む。
【0119】
推論装置(推論方法又は推論プログラム)の態様で提供することで、情報処理装置を実装する場合に比して簡単に種々の装置への適用が可能となる。推論装置(推論方法又は推論プログラム)が画像単位毎の肌落ち確率を推論する際、上記実施形態に係る機械学習装置及び機械学習方法により生成された学習済みの学習モデルを用いて、生成処理部が実施する推論手法を適用してもよいことは、当業者にとって当然に理解され得るものである。
【0120】
なお、実施形態を組み合わせたり、各実施形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0121】
以上、本発明に係る肌落ち予測装置4によれば、岩石の種別に係る岩石グループに応じた機械学習がなされることで、肌落ちの危険性がある位置の予測精度を向上させることができる。
【0122】
本発明に係る機械学習装置5によれば、より精度高く肌落ちの危険性がある箇所を予測可能な肌落ち予測装置4に用いられる学習モデルを生成することができる。
本発明に係る肌落ち予測方法によれば、岩石の種別に係る岩石グループに応じた機械学習がなされることで、肌落ちの危険性がある位置の予測精度を向上させることができる。
【0123】
また、本発明に係る機械学習方法によれば、より精度高く肌落ちの危険性がある箇所を予測可能な肌落ち予測方法に用いられる学習モデルを生成することができる。
【0124】
また、本発明に係る肌落ち予測装置4及び肌落ち予測方法によれば、経験の浅い技術者や作業員でも、地質専門家の技能と同様の人工知能に基づく知見を得ることにより、肌落ち可能性のある箇所を事前に認識できるため、当該技術者や作業員が経験を積むことができるようになると共に、作業の安全性が確保できる。
【0125】
また、本発明に係る肌落ち予測装置4及び肌落ち予測方法によれば、撮像装置により写真を撮るだけで、肌落ち可能性のある個所がわかるため、熟練技術でなくても、切羽観察や切羽監視ができるため、熟練技術者の省人化がはかれる。
【0126】
また、本発明に係る肌落ち予測装置4及び肌落ち予測方法によれば、コソク(岩塊など落下させる浮石落しの作業)が十分であるかを確認可能となるため、コソクの作業時間を短縮できる。
【0127】
また、本発明に係る肌落ち予測装置4及び肌落ち予測方法によれば、コソクが徹底され、浮石が除去されるので品質が向上する。
【0128】
また、本発明に係る肌落ち予測装置4及び肌落ち予測方法によれば、適切な吹付厚が提案できるので、合理的な鏡吹付ができる。
【0129】
また、本発明に係る肌落ち予測装置4及び肌落ち予測方法によれば、肌落ち防止設備が不要となり、経済的になるとともに、切羽作業効率が向上する。
【符号の説明】
【0130】
1…肌落ち予測装システム、3…撮像装置、4…肌落ち予測装置、5…機械学習装置、6…情報処理装置、7…ネットワーク、9…タブレット型端末装置
10…トンネル切羽、
12…学習モデル、13…学習用データ、
50…制御部、51…通信部、52…学習用データ記憶部、
53…学習済みモデル記憶部、
60…制御部、61…通信部、62…学習済みモデル記憶部、
120…入力層、121…中間層、122…出力層
500…学習用データ取得部、501…機械学習部、510…学習用データ作成部
600…情報取得部、601…生成処理部、602…出力処理部、
800…スマートフォン(コンピュータの一例)、811…制御部、815…記憶部、
816…基本オペレーティングシステム、817…肌落ち予測装システムアプリケーションプログラム、818…データベース、820…通信部、823…GPS受信部、825…撮像部、830…タッチパネル部、831…入力部、832…表示部、835…音声処理部、836…マイク、837…スピーカー、841…加速度センサー、842…地磁気センサー、843…ジャイロセンサー
900…コンピュータ、910…バス、912…プロセッサ、914…メモリ、916・・・入力デバイス、917…出力デバイス、918…表示デバイス、920…ストレージ装置、922…通信I/F(インターフェース)部、924…外部機器I/F部、926…I/O(入出力)デバイスI/F部、928…メディア入出力部