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特開2024-154823ポリイソシアネート組成物、樹脂組成物及び硬化膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154823
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ポリイソシアネート組成物、樹脂組成物及び硬化膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/42 20060101AFI20241024BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20241024BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08G18/42 088
C08G18/73
C08G18/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068926
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】小野 麻実
(72)【発明者】
【氏名】武井 麗
(72)【発明者】
【氏名】東 昌嗣
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034EA18
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB03
4J034KC16
4J034KD02
4J034KD12
4J034KE02
4J034QB11
4J034QB14
4J034RA07
(57)【要約】
【課題】硬度、引張伸度、及び引張応力に優れる硬化膜を製造できるポリイソシアネート組成物の提供。
【解決手段】植物由来の成分を含むポリオールと、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートのいずれか一方又は両方から誘導されるポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物であって、前記ポリイソシアネート組成物は、バイオマス度が1%以上90%以下であり、NCO基含有率が4.9以上であり、重量平均分子量(Mw)が2000以上である、ポリイソシアネート組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の成分を含むポリオールと、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートのいずれか一方又は両方から誘導されるポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物であって、
前記ポリイソシアネート組成物は、バイオマス度が1%以上90%以下であり、NCO基含有率が4.9%以上であり、重量平均分子量(Mw)が2000以上である、ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記ポリオールは、植物由来のリシノレイン酸、セバシン酸、アジピン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ポリ乳酸、及びオレイン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を構成単位として含む、請求項1に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記ポリオールのOH価が5以上300以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
前記ポリオールの官能基数が2以上4以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
前記NCO基含有率が5.0以上17以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
イソシアネート平均官能基数が2.3以上8以下である、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネートが、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、ウレトジオン、ウレア骨格の少なくともいずれか1つを含む、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物とを含む、樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂組成物を硬化させた硬化膜。
【請求項10】
23℃環境下における引張強度が15MPa以上である、請求項9に記載の硬化膜。
【請求項11】
23℃環境下における引張伸度が20%以上である、請求項9に記載の硬化膜。
【請求項12】
ガラス上に形成した、膜厚40μmの23℃環境下におけるケーニッヒ硬度が10以上130回以下である、請求項9に記載の硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート組成物、樹脂組成物及び硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄プラスチックの処理と環境保護の観点から、資源循環の意識が高まってきており、バイオマス素材を原料とするポリイソシアネートが望まれるようになっている。
特許文献1、2には、植物由来の成分を含むポリオールとポリイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-167255号公報
【特許文献2】特開2021-193170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では硬化膜用途については具体的に検討されておらず、特許文献2に記載の植物由来成分を含むポリイソシアネート組成物は、硬度、引張伸度、及び引張応力について改善の余地がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、硬度、引張伸度、及び引張応力に優れる硬化膜を製造できるポリイソシアネート組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]植物由来の成分を含むポリオールと、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートのいずれか一方又は両方から誘導されるポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物であって、前記ポリイソシアネート組成物は、バイオマス度が1%以上90%以下であり、NCO基含有率が4.9%以上であり、重量平均分子量(Mw)が2000以上である、ポリイソシアネート組成物。
[2]前記ポリオールは、植物由来のリシノレイン酸、セバシン酸、アジピン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ポリ乳酸、及びオレイン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を構成単位として含む、[1]に記載のポリイソシアネート組成物。
[3]前記ポリオールのOH価が5以上300以下である、[1]又は[2]に記載のポリイソシアネート組成物。
[4]前記ポリオールの官能基数が2以上4以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[5]前記NCO基含有率が4.9以上17以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[6]イソシアネート平均官能基数が2.3以上8以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[7]前記ポリイソシアネートが、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、ウレトジオン、ウレア骨格の少なくともいずれか1つを含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物。
[8][1]~[7]のいずれか1つに記載のポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物とを含む、樹脂組成物。
[9][8]に記載の樹脂組成物を硬化させた硬化膜。
[10]23℃環境下における引張強度が15MPa以上である、[9]に記載の硬化膜。
[11]23℃環境下における引張伸度が20%以上である、[9]又は[10]に記載の硬化膜。
[12]ガラス上に形成した40μmの23℃環境下におけるケーニッヒ硬度が10以上130回以下である[9]~[11]のいずれかに記載の硬化膜。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、硬度、引張伸度、及び引張応力に優れる硬化膜を製造できるポリイソシアネート組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
なお、本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する化合物が複数結合した反応物を意味する。ポリイソシアネートを構成する1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する化合物1分子を単量体(モノマー)と称する場合がある。
本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物をいう。
【0008】
<ポリイソシアネート組成物>
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、植物由来の成分を含むポリオールと、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートのいずれか一方又は両方から誘導されるポリイソシアネートを含む。ポリイソシアネートは、ジイソシアネートとポリオールとを反応させて得てもよいし、ジイソシアネートを反応させてポリイソシアネートを得た後にさらにポリオールを反応させて得てもよい。
ポリイソシアネートは、植物由来の成分を含むポリオールと、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートのいずれか一方又は両方の誘導体である。
ポリイソシアネートは、植物由来の成分を含むポリオールと、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートのいずれか一方又は両方の反応物である。
【0009】
≪分子量≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物の重量平均分子量(Mw)は2000以上であり、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。ポリイソシアネート組成物の分子量が2000以上であることで、引張伸度に優れる硬化膜を製造できる。
【0010】
≪バイオマス度≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物のバイオマス度は1%以上90%以下である。バイオマス度とは、ポリイソシアネート組成物の全質量に対する植物由来成分の重量割合(%)のことである。
例えば、植物由来原料使用率60%のポリオール30質量%とポリイソシアネート70質量%を反応させて得られたポリイソシアネート組成物のバイオマス度は、30×60/100=18質量%である。
【0011】
≪NCO基含有率≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物のNCO基含有率は4.9%以上17%以下であることが好ましく、4.9%以上15%以下がより好ましい。NCO基含有率がこの範囲内にあると、引張応力、伸度及び硬度に優れる硬化膜を製造できる。
【0012】
≪イソシアネート平均官能基数≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物のイソシアネート平均官能基数は、2.3以上8以下であることが好ましく、2.5以上8以下がより好ましく、2.5以上7以下がさらに好ましい。イソシアネート平均官能基数がこの範囲内にあると、引張応力、伸度及び硬度に優れる硬化膜を製造できる。
【0013】
≪固形分≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物の固形分量は、特に限定されず、用途、目的に応じて、上述した各種溶剤で希釈することで、適宜調整することができる。
固形分量は、例えば、50質量%以上100質量%以下とすることができ、60質量%以上100質量%以下とすることができ、70質量%以上100質量%以下とすることができる。
なお、ここでいう「固形分量」とは、ポリイソシアネート組成物の総質量に対する、溶剤等の揮発成分を取り除いた後の残存成分(不揮発成分)の質量の割合を百分率で示したものである。
【0014】
≪ポリイソシアネート≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートは、植物由来の成分を含むポリオールと、脂肪族ジイソシアネートから誘導されたものである。すなわち、植物由来の成分を含むポリオールと、脂肪族ジイソシアネートの反応物である。また、植物由来の成分を含むポリオールにより変性されたポリイソシアネートともいえる。当該ポリイソシアネートは、ポリオールの活性水素基とジイソシアネートのイソシアネート基とが結合を形成しており、ポリオールに由来する植物由来の構造単位が導入されている。
【0015】
ポリイソシアネートは、分子内にイソシアヌレート基、ウレタン基、アロファネート基を有するものが好ましい。イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートは、耐候性に優れている。長い側鎖を有するヒドロキシ化合物とイソシアネート基との反応により形成されたウレタン基を有するポリイソシアネートは、弾性及び伸展性に優れている。アロファネート基を有するポリイソシアネートは、低粘度に加え、組み込まれた水酸基を有する化合物が有する性能(極性、Tg等)を付与できる。
【0016】
[ジイソシアネート]
ジイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートである。
【0017】
(脂肪族ジイソシアネート)
本明細書において「脂肪族ジイソシアネート」とは、分子中に鎖状脂肪族炭化水素基を有し、芳香族炭化水素基を有しないジイソシアネート化合物をいう。脂肪族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略記する場合がある)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。このような脂肪族ジイソシアネートを用いることにより、得られるポリイソシアネートがより低粘度となる。
【0018】
(脂環族ジイソシアネート)
本明細書において「脂環族ジイソシアネート」とは、分子中に芳香族性を有しない環状脂肪族炭化水素基を有するジイソシアネート化合物をいう。脂環族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する場合がある)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
中でも、工業的に入手し易いことから、HDI、IPDI、PDI、水添キシリレンジイソシアネート、又は水添ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、HDIがより好ましい。HDIを用いることにより、ポリイソシアネート組成物から得られる塗膜の耐候性及び柔軟性がより優れる傾向にある。
脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートは、1種単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
【0020】
(その他のポリイソシアネート)
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、上述したポリイソシアネートに加えて、脂環族ジイソシアネート又は脂肪族トリイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートを更に含んでもよい。脂環族ジイソシアネート又は脂肪族トリイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートは、ポリオールに由来する構造単位を含んでいてもよく、ポリオールに由来する構造単位を含んでいなくてもよい。
【0021】
<植物由来のポリオール>
本実施形態に用いるポリオールは、植物由来の成分を含む。ポリオールは、カルボン酸及びアルコールから構成され、カルボン酸及びアルコールの少なくとも一方が植物由来である。植物由来のアルコールは、グリセリン、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、2-オクタノール等が挙げられる。これらのアルコールが得られる植物としては、トウモロコシ、サトウキビ、リンゴ、大豆、ひまし油等が挙げられる。
【0022】
植物由来のカルボン酸は、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、ダイマー酸、リシノレイン酸、アジピン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。これらのカルボン酸が得られる植物としては、菜種油、オリーブ油、ヒマワリ油、ひまし油、ヤシ油、パーム油、大豆等の植物油、廃食用油等が挙げられる。これらの中でも、硬度と引張特性に優れることから、リシノレイン酸、セバシン酸、アジピン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましい。
また、ポリオールを直接植物から得てもよい。
【0023】
≪溶剤≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、必要に応じて有機溶剤を含有してもよい。
このような有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤等が挙げられる。
【0024】
≪ポリイソシアネート組成物の製造方法≫
ポリイソシアネート組成物の製造方法としては、上記ジイソシアネートとポリオールとを反応させて得てもよいし、ジイソシアネートを反応させてポリイソシアネートを得た後にさらにポリオールと反応させて得てもよい。
【0025】
ジイソシアネートとポリオールとを反応させる場合、ポリオールの水酸基に対するジイソシアネートのイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/水酸基のモル比)(NCO/OH)は、3.0以上であることが好ましい。上記モル比が上記下限値以上であると、未反応のジイソシアネートモノマーの残存量を効果的に減らすことができ、塗膜の硬度、伸び、引張応力に優れるポリイソシアネート組成物が得られる。上記モル比の上限値は特に制限されないが、1000以下とすることができる。塗膜の硬度、伸び、引張応力をより高める観点から、4.0以上100以下が好ましく、4.5以上70以下が好ましく、5以上60以下がより好ましい。
【0026】
ジイソシアネートを反応させてポリイソシアネートを得た後にさらにポリオールと反応させる場合、ポリオールの水酸基に対するジイソシアネートのイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/水酸基のモル比)(NCO/OH)は、1.0以上であることが好ましい。上記モル比が上記下限値以上であると、塗膜の硬度、伸び、引張応力に優れるポリイソシアネート組成物が得られる。上記モル比の上限値は特に制限されないが、800以下とすることができる。上記モル比は、塗膜の硬度、伸び、引張応力をより高める観点から、1.0以上100以下が好ましく、1.0以上80以下が好ましく、1.0以上50以下がより好ましい。
【0027】
反応温度は、特に限定されないが、50℃以上200℃以下であることが好ましく、50℃以上150℃以下であることがより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応がより進み易くなる傾向にあり、一方で、反応温度が上記上限値以下であることで、着色を引き起こすような副反応をより抑制することができる傾向にある。
【0028】
反応は、無溶媒で行なってもよく、イソシアネート基に不活性な任意の溶媒を用いて行なってもよい。また、必要であれば、イソシアネート基と水酸基の反応を促進するため、公知の触媒を用いてもよい。
【0029】
≪用途≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、硬度、引張伸度及び引張硬度に優れる硬化膜が得られることから、上記性能が求められる塗料組成物、樹脂組成物、インキ組成物、粒子状組成物、接着剤組成物、シーリング剤、フィルム、フォーム、プラスチック材料等の原料として使用することができる。中でも、塗料組成物又は樹脂組成物の硬化剤として好ましく用いられる。
【0030】
<樹脂組成物>
本発明の一態様は、前記本実施形態のポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物とを含む樹脂組成物である。
【0031】
≪活性水素化合物≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物は硬化剤であり、活性水素化合物を主剤として混合した樹脂組成物とすることができる。活性水素化合物としては、特に限定されないが、具体的には、分子内に活性水素が2つ以上結合している化合物であり、例えば、ポリオール化合物、ポリアミン化合物、ポリチオール化合物等が挙げられる。中でも、強靭性という観点から、活性水素化合物は、ポリオール化合物が好ましい。特に、活性水素化合物としてポリオールを用いる場合は、硬化性組成物をポリウレタン組成物とも言う。
【0032】
[ポリオール化合物]
ポリオール化合物としては、特に限定されないが、具体的には、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール、ポリカーボネートポリオール、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0033】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、特に限定されないが、例えば、二塩基酸の単独又は混合物と、多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られる生成物が挙げられる。
二塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の二塩基酸が挙げられる。
多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、及び、グリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールが挙げられる。
【0034】
アクリルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合したものが挙げられる。
【0035】
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。
【0036】
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和アミド、ビニル系単量体、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
【0037】
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0038】
不飽和アミドとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等が挙げられる。
【0039】
ビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等が挙げられる。
【0040】
加水分解性シリル基を有するビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の水酸化物、又は、強塩基性触媒を使用して、多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール、ポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール、上記ポリエーテルポリオールを媒体としてアクリルアミド等を重合して得られるいわゆるポリマーポリオールが挙げられる。
【0042】
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
強塩基性触媒としては、例えば、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。
【0043】
多価アルコールとしては、上記ポリエステルポリオールにおいて例示されたものと同様のものが挙げられる。また、多価アルコールとしては、さらに、非糖類、糖アルコール系化合物、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類等を用いてもよい。非糖類としては、例えば、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。糖アルコール系化合物としては、例えば、エリトリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等が挙げられる。単糖類としては、例えば、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等が挙げられる。三糖類としては、例えば、ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等が挙げられる。四糖類としては、例えば、スタキオース等が挙げられる。
【0044】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
【0045】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエン、末端水酸基化ポリイソプレン、及びそれらの水素添加物等が挙げられる。
【0046】
フッ素ポリオールとは、分子内にフッ素を含むポリオールであり、例えば、特開昭57-34107号公報(参考文献1)及び特開昭61-275311号公報(参考文献2)で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体が挙げられる。
【0047】
ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、低分子カーボネート化合物、又は、該低分子カーボネート化合物と多価アルコールとを縮重合して得られるものが挙げられる。多価アルコールとしては、上記「ポリエステルポリオール」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0048】
低分子カーボネート化合物としては、例えば、ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート等が挙げられる。
ジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート等が挙げられる。
アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート等が挙げられる。
ジアリールカーボネートとしては、例えば、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0049】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリコールエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族不飽和化合物のエポキシ型樹脂、エポキシ型脂肪酸エステル、多価カルボン酸エステル型エポキシ樹脂、アミノグリシジル型エポキシ樹脂、β-メチルエピクロ型エポキシ樹脂、環状オキシラン型エポキシ樹脂、ハロゲン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
本実施形態の樹脂組成物において、活性水素化合物の水酸基に対するポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル当量比率([イソシアネート基]/[水酸基])は、通常、1/10以上10/1以下に設定することができる。
【0051】
≪その他の硬化剤≫
本実施形態の樹脂組成物は、上記ポリイソシアネート組成物及び上記活性水素化合物に加えて、メラミン系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の他の硬化剤を更に含むことができる。メラミン系硬化剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、完全アルキルエーテル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、一部にイミノ基を有するイミノ基型メラミン樹脂等が代表的なものとして挙げられる。
【0052】
メラミン系硬化剤を併用する場合は、酸性化合物の添加が有効である。酸性化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、カルボン酸、スルホン酸、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル等が挙げられる。
【0053】
カルボン酸としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、酢酸、乳酸、コハク酸、シュウ酸、マレイン酸、デカンジカルボン酸等が代表的なものとして挙げられる。スルホン酸としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸等が挙げられる。酸性リン酸エステルとしては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジラウリルホスフェート、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェート等が挙げられる。亜リン酸エステルとしては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ジエチルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジラウリルホスファイト、モノエチルホスファイト、モノブチルホスファイト、モノオクチルホスファイト、モノラウリルホスファイト等が挙げられる。
【0054】
エポキシ系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノールノボラック、ポリメルカプタン、脂肪族第三アミン、芳香族第三アミン、イミダゾール化合物、ルイス酸錯体等が挙げられる。
【0055】
≪その他の添加剤≫
本実施形態の樹脂組成物は、上記ポリイソシアネート組成物及び上記活性水素化合物に加えて、目的及び用途に応じて、例えば、硬化促進触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、レベリング剤、可塑剤、レオロジーコントロール剤、界面活性剤等の各種添加剤を更に含むことができる。
【0056】
硬化促進触媒としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、スズ系化合物、亜鉛化合物、チタン化合物、コバルト化合物、ビスマス化合物、ジルコニウム化合物、アミン化合物等が挙げられる。スズ系化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジメチルスズジネオデカノエート、ビス(2-エチルヘキサン酸)スズ等が挙げられる。亜鉛化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等が挙げられる。チタン化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸チタン、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトナート)等が挙げられる。コバルト化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。ビスマス化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等が挙げられる。ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、2-エチルヘキサン酸ジルコニル、ナフテン酸ジルコニル等が挙げられる。
【0057】
酸化防止剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物等が挙げられる。
【0058】
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
【0059】
光安定剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。
【0060】
顔料としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、インディゴ、パールマイカ、アルミニウム等が挙げられる。
【0061】
レベリング剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、シリコーンオイル等が挙げられる。
可塑剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、フタル酸エステル類、リン酸系化合物、ポリエステル系化合物等が挙げられる。
【0062】
レオロジーコントロール剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、尿素化合物、マイクロゲル等が挙げられる。
界面活性剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、公知のアニオン界面活性剤、公知のカチオン界面活性剤、公知の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0063】
≪樹脂組成物の製造方法≫
本実施形態の樹脂組成物は、溶剤ベース、水系ベースどちらにも使用可能である。
【0064】
水系ベースの樹脂組成物(水系樹脂組成物)を製造する場合には、まず、活性水素化合物又はその水分散体若しくは水溶物に、必要に応じて、活性水素化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。次いで、上記ポリイソシアネート組成物又はその水分散体を硬化剤として添加し、必要に応じて、水や溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、攪拌機器により強制攪拌することによって、水系ベースの樹脂組成物(水系樹脂組成物)を得ることができる。
【0065】
溶剤ベースの樹脂組成物を製造する場合には、まず、活性水素化合物又はその溶剤希釈物に、必要に応じて、活性水素化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。次いで、上記ポリイソシアネート組成物を硬化剤として添加し、必要に応じて、溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、手攪拌又はマゼラー等の攪拌機器を用いて攪拌することによって、溶剤ベースの樹脂組成物を得ることができる。
【0066】
<硬化膜>
本発明の一態様は、前記本実施形態の樹脂組成物を硬化した硬化膜である。
本実施形態の硬化膜は、23℃環境下における引張強度が15MPa以上であることが好ましい。
また本実施形態の硬化膜は、23℃環境下における引張伸度が20%以上であることが好ましい。
【0067】
硬化膜の引張強度と引張伸度は、以下の方法により測定する。
まず、樹脂組成物をアプリケーターを使用して、乾燥後の膜厚が40μmとなるよう塗布する。塗布後、80℃で30分硬化させた後、23℃、湿度50%の条件で7日間保持して硬化膜を得る。
得られた硬化膜を用いて引張り試験を行う。硬化膜の伸度及び強度は、温度23℃、湿度50%の条件で、万能試験機((株式会社エー・アンド・デイ製、RTE-1210))を用いて、長さ60mm、幅10mmの試験片を引張り速度20mm/分、チャック間距離20mmで測定する。
【実施例0068】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0069】
<樹脂組成物>
(活性水素化合物の製造)
活性水素化合物として、塗料組成物作製用ポリオールの溶液を製造した。
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに酢酸ブチル:29質量部を仕込み、窒素ガス通気下で112℃に昇温した。112℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:22.3質量部、メチルメタクリレート:9.0質量部、ブチルアクリレート:25.1質量部、スチレン:42.3質量部、アクリル酸:1.3質量部、及び、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル):2質量部からなる混合物を5時間かけて滴下した。次いで、115℃で窒素ガスをフローしながら3時間攪拌した後、60℃まで冷却し、酢酸ブチル溶液を投入し、固形分量60質量%の塗料組成物作製用ポリオールの溶液を得た。塗料組成物作製用ポリオールは、ガラス転移温度Tgが29.5℃、樹脂固形分に対する水酸基価が136mgKOH/g、重量平均分子量Mwが2.75×10であった。
【0070】
得られた塗料組成物作製用ポリオールと、後述する実施例及び比較例に記載の方法により得た各ポリイソシアネート組成物とを、水酸基とイソシアネート基との当量比率が1:1となる割合で配合し、固形分が50%になるよう酢酸ブチルで希釈し、樹脂組成物をそれぞれ得た。
【0071】
<物性の測定方法>
(NCO基含有率)
ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基含有率(NCO基含有率)は、イソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定により求めた。
【0072】
(イソシアネート平均官能基数)
ポリイソシアネート組成物のイソシアネート平均官能基数は、下記式により求めた。
【0073】
平均官能基数={(Mn)×(NCO基含有率)×0.01}/42
【0074】
(重量平均分子量:Mw)
重量平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量及び重量平均分子量である。
【0075】
(測定条件)
装置:東ソー(株)製、HLC-802A
カラム:東ソー(株)製、G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0076】
<評価方法>
[評価1]
(ゲル%)
樹脂組成物をポリプロピレン板に、アプリケーターで乾燥膜厚40μmになるよう塗装し、80℃で30分乾燥の後、23℃、50%RHで7日間乾燥させることで硬化膜を得た。
得られた硬化膜をポリプロピレン板から剥がし、アセトン中に23℃で24時間浸漬後、未溶解部質量の浸漬前質量に対する値(ゲル分率)を計算した。
【0077】
次いで、以下に示す評価基準に従い、ケーニッヒ硬度を評価し、引張試験を実施した。
【0078】
[評価2]
(ケーニッヒ硬度)
樹脂組成物をガラス板に、アプリケーターで乾燥膜厚40μmになるよう塗装し、80℃で30分硬化させた後、23℃、湿度50%の条件で7日間乾燥させることで硬化塗膜を得た。得られた硬化膜について、ケーニッヒ硬度(回)をBYK Chemie社の振り子式硬度計により23℃で測定した。
【0079】
[評価3]
(引張り特性)
樹脂組成物をアプリケーターにて乾燥後膜厚40μmとなるよう塗布した。塗布後、80℃で30分硬化させた後、23℃、湿度50%の条件で7日間保持して各硬化膜を得た。得られた硬化膜を用いて引張り試験を行った。硬化膜の伸度は、温度23℃、湿度50%の条件で、万能試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、RTE-1210)を用いて、長さ60mm、幅10mmの試験片を引張り速度20mm/分、チャック間距離20mmで測定した。
【0080】
<ポリイソシアネート組成物の製造>
[実施例1]
(ポリイソシアネート組成物1aの製造)
攪拌器、温度計、冷却管を取り付けた4つ口フラスコの内部を窒素置換し、HDIモノマー:1000gを仕込み、68℃で攪拌下、触媒としてテトラメチルアンモニウム・アセテート0.20gを加えた。68℃で反応を続け、4時間後、反応液の屈折率測定により設定した反応終点を確認し、反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIモノマーを薄膜蒸留装置により除去し、ポリイソシアネート組成物1を得た。続いて、攪拌器、温度計、冷却管を取り付けた4つ口フラスコの内部を窒素置換し、得られたポリイソシアネート組成物1を560g、2.7官能のひまし油由来のポリエステルポリオール(数平均分子量Mn 930、バイオベース度100%、OH価 165 mmg KOH)240gを仕込み100℃で2時間攪拌後、60℃まで冷却し、そこへ酢酸ブチルを200g添加して30分攪拌後、室温まで冷却し、ポリイソシアネート組成物1aを得た。
表1中、「バイオベース度」とは、植物由来のポリオールを構成する原料の全質量に対する植物由来原料の質量含有率。バイオベース度が100%であると、ポリオールを構成する全ての原料が植物原料由来であることを示す。
【0081】
[実施例2、3]
(ポリイソシアネート組成物2a、3aの製造)
表1に記載のポリオールと用い、かつ表1に記載のNCO/OHになるよう変更した以外は、実施例1と同様にして表1の通りの構成でポリイソシアネート組成物2a、3aをそれぞれ製造した。
【0082】
[実施例4]
(ポリイソシアネート組成物4aの製造)
攪拌器、温度計、冷却管を取り付けた4つ口フラスコにHDI300gとイソブタノール20.4gを仕込み、攪拌下90℃で1時間ウレタン化反応を行った。温度を130℃に上げた後、触媒として2-エチルヘキサン酸ジルコニルを0.05g加え、アロファネート化反応を行った。60分後、反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIモノマーを薄膜蒸留装置により除去し、ポリイソシアネート組成物2を得た。続いて、攪拌器、温度計、冷却管を取り付けた4つ口フラスコの内部を窒素置換し、得られたポリイソシアネート組成物2を789g、2.7官能のひまし油由来のポリエステルポリオール(数平均分子量Mn 930、バイオベース度100%、OH価165 mmg KOH)111gを仕込み100℃で2時間攪拌後、60℃まで冷却し、そこへ酢酸ブチルを100g添加して30分攪拌後、室温まで冷却し、ポリイソシアネート組成物4aを得た。
【0083】
[実施例5]
(ポリイソシアネート組成物5aの製造)
攪拌器、温度計、冷却管を取り付けた4つ口フラスコの内部を窒素置換し、HDIモノマー:1000gを仕込み、2.7官能のひまし油由来のポリエステルポリオール(数平均分子量Mn 930、バイオベース度100%、OH価 165 mmg KOH)290g仕込み、110℃で120分加熱撹拌し、収率が39%になった時点で反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIモノマーを薄膜蒸留装置により除去しポリイソシアネート組成物5aを得た。
【0084】
[比較例1~2]
(ポリイソシアネート組成物1b、2bの製造)
表1に記載のポリオールを用い、かつ表1に記載のNCO/OHになるよう変更した以外は、実施例4と同様にして表1の通りの構成でポリイソシアネート組成物1b、2bをそれぞれ製造した。
【0085】
[比較例3]
(ポリイソシアネート組成物3bの製造)
攪拌器、温度計、冷却管を取り付けた4つ口フラスコの内部を窒素置換し、HDIモノマー:1000gを仕込み、68℃で攪拌下、触媒としてテトラメチルアンモニウム・アセテート0.20gを加えた。68℃で反応を続け、4時間後、反応液の屈折率測定により設定した反応終点を確認し、反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIモノマーを薄膜蒸留装置により除去し、ポリイソシアネート組成物3bを得た。
【0086】
<ポリオール>
・ひまし油由来のリシノレイン酸を原料とするポリエステルポリオール(数平均分子量Mn 930、バイオベース度100%、OH価 165 mmg KOH)
・トウゴマ由来のセバシン酸を原料とするポリエステルポリオール1(数平均分子量Mn2000、バイオベース度59%、OH価 56 mmg KOH)
トウゴマ由来のセバシン酸を原料とするポリエステルポリオール2(数平均分子量Mn3000、バイオベース度60%、OH価 38 mmg KOH)
・大豆油由来のリノール酸を原料とするポリエステルポリオール(数平均分子量Mn2000バイオベース度60%、OH価 32 mmg KOH)
【0087】
なお、ひまし油の構成アルコール及び構成脂肪酸は、一般的に以下のとおりである。なお、構成脂肪酸中のカッコ内は、主鎖の炭化水素基の炭素数及び炭素原子間の二重結合の数を示している。
【0088】
(構成アルコール)
グリセリン
【0089】
(構成脂肪酸)
パルミチン酸(C16:0)
ステアリン酸(C18:0)
オレイン酸(C18:1)
リノール酸(C18:2)
リノレン酸(C18:3)
リシノレイン酸(C18:1)
ジヒドロキシステアリン酸(C18:0)
【0090】
<ポリイソシアネートが含む構造の定義>
得られたポリイソシアネート組成物について、Bruker社製Biospin Av ance600(商品名)を用いた、13C-NMRの測定を行った。具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
【0091】
(測定条件)
13C-NMR装置:AVANCE600(ブルカー社製)
クライオプローブ(ブルカー社製)
CryoProbe(登録商標)
CPDUL
600S3-C/H-D-05Z
共鳴周波数:150MHz
濃度:60wt/vol%
シフト基準:CDCl3(77ppm)
積算回数:10000回
パルスプログラム:zgpg30(プロトン完全デカップリング法、待ち時間2sec)
以下のシグナルの積分値を、測定している炭素の数で除して、ウレタン基、アロファネート基及びイソシアヌレート基の各モル比率を求めた。
【0092】
【表1】
【0093】
上記表1に示した通り、実施例1~5は、植物由来のポリオールを使用し、硬度、引張伸度、及び引張応力に優れる硬化膜を製造できることが確認された。
植物由来のポリオールを使用した場合、NCO基含有率が4.9%未満の比較例1及び2は、硬化膜が脆く、膜を採取できなかったため、引張応力及び伸度を測定することができなかった。植物由来のポリオールを使用しない比較例3は、引張伸度が実施例よりも低い結果であった。