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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154828
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】タイヤ空気圧調整システム
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/14 20060101AFI20241024BHJP
   B60C 23/04 20060101ALI20241024BHJP
   B60C 23/19 20060101ALI20241024BHJP
   B60C 29/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60C23/14 Z
B60C23/04 110C
B60C23/04 120B
B60C23/19
B60C29/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068938
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森林 健
(57)【要約】
【課題】タイヤ内部に空気を圧入してタイヤの空気圧の調整を行わなくても、タイヤの空気圧を適切範囲に維持できるようにする。
【解決手段】本発明のタイヤ空気圧調整システムは、タイヤの空気圧を検出する空気圧検出部と、タイヤの内部温度を検出する温度検出部と、タイヤの内部温度を変更する温度変更部と、温度変更部を制御する温度制御部と、を有し、温度制御部は、タイヤの空気圧が所定の適切範囲から外れたときに、当該タイヤの空気圧が所定の適切範囲に含まれるように、温度変更部を制御してタイヤの内部温度を変更させることを特徴としている。
【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの空気圧を検出する空気圧検出部と、
前記タイヤの内部温度を検出する温度検出部と、
前記タイヤの内部温度を変更する温度変更部と、
前記温度変更部を制御する温度制御部と、
を有し、
前記温度制御部は、前記タイヤの空気圧が所定の適切範囲から外れたときに、当該タイヤの空気圧が前記所定の適切範囲に含まれるように、前記温度変更部を制御して前記タイヤの内部温度を変更させる
ことを特徴とするタイヤ空気圧調整システム。
【請求項2】
前記温度変更部は、通電時に発熱する発熱部であって、前記タイヤを保持するタイヤホイールに取り付けられており、
前記温度制御部は、前記タイヤの空気圧が前記所定の適切範囲の下限値未満となる場合、前記発熱部への通電を制御して前記発熱部を発熱させて、前記タイヤの内部温度を上昇させる
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ空気圧調整システム。
【請求項3】
前記温度変更部は、通電時に冷却する冷却部であって、前記タイヤを保持するタイヤホイールに取り付けられており、
前記温度制御部は、前記タイヤの空気圧が前記所定の適切範囲の上限値を超過する場合、前記冷却部への通電を制御して前記冷却部を冷却させて、前記タイヤの内部温度を下げる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ空気圧調整システム。
【請求項4】
前記温度変更部は、内部に空気を取り込む開口を有する本体部と、前記本体部に設けられるともに、前記開口を塞ぐ位置と前記開口を露呈する位置との間で前記開口を開閉する開口制御部と、を有する冷却部であって、前記開口から取り込まれた空気が前記タイヤを保持するタイヤホイールの表面に当たるように取り付けれられており、
前記温度制御部は、前記タイヤの空気圧が前記所定の適切範囲の上限を超えた場合、前記開口を塞ぐ位置に保持された前記開口制御部を、前記開口を露呈する位置まで制御させることで、前記本体部の内部に空気を流入させて前記タイヤホイールを冷却する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ空気圧調整システム。
【請求項5】
前記温度変更部は、前記タイヤが取り付けられた車両の走行中に、前記車両の外部の空気を、前記タイヤを包囲するタイヤハウスの内部に取り込む取込み部と、前記取込み部への空気の取り込み量を調整する調整部を有する冷却部であって、
前記温度制御部は、前記タイヤの空気圧が前記所定の適切範囲の上限を超えた場合、前記調整部を制御して、前記取込み部の、前記タイヤを包囲するタイヤハウスの内部への空気の取り込み量を増やし、前記タイヤおよび当該タイヤを保持するタイヤホイールを冷却する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ空気圧調整システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ空気圧調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤに取り付けた空気圧センサから無線通信で送信されるタイヤ内部の空気圧の情報を自動車などの車両に設けた受信装置で受信することで、タイヤ内部の空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。TPMSでは、タイヤの空気圧や内部温度などが運転室内に設置したパネルに表示される。したがって、運転者は、当該パネルに表示される表示内容を見て、給油所やディーラーなどに立ち寄り、タイヤの空気圧調整や、必要に応じてタイヤ交換などを行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-131191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タイヤ内部の空気圧は、車両重量、タイヤの材質又は走行状態などによってタイヤ内部の空気が外部に漏れ出す漏れ現象によって変化するので、タイヤの内部に空気を圧入することによるタイヤの空気圧調整は、こまめに行うことが望ましい。しかしながら、車両の所有者(運転者)は、給油所で給油を行う際にタイヤの空気圧調整を行うぐらいで、自発的にタイヤの空気圧調整を行う機会が少ないのが実情である。したがって、タイヤの内部に空気を圧入することによるタイヤの空気圧調整を行わなくても、タイヤの空気圧を車両の走行において適切な範囲(以下、適切範囲)に維持できるようなシステムに対する要望がある。
【0005】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、タイヤ内部に空気を圧入してタイヤの空気圧の調整を行わなくても、タイヤの空気圧を適切範囲に維持することができるようにしたタイヤ空気圧調整システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面のタイヤ空気圧調整システムは、タイヤの空気圧を検出する空気圧検出部と、タイヤの内部温度を検出する温度検出部と、タイヤの内部温度を変更する温度変更部と、温度変更部を制御する温度制御部と、を有し、温度制御部は、タイヤの空気圧が所定の適切範囲から外れたときに、当該タイヤの空気圧が所定の適切範囲に含まれるように、温度変更部を制御してタイヤの内部温度を変更させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タイヤの内部に空気を圧入することによるタイヤの空気圧調整を行わなくても、タイヤの空気圧を適切範囲に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るタイヤ空気圧調整システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、タイヤ及びタイヤホイールの構成の一例を示す斜視図である。
図3図3は、TPMSセンサ送信機の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、タイヤ空気圧調整装置の構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、タイヤ空気圧調整装置の構成の一例を示す斜視図である。
図6図6は、情報端末装置の構成の一例を示すブロック図である。
図7図7は、タイヤ空気圧調整システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、タイヤを冷却する場合の一例を示す斜視図である。
図9図9は、タイヤホイールの複数位置にタイヤ空気圧調整装置を設けた場合の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るタイヤ空気圧調整システムの構成の一例を示すブロック図である。タイヤ空気圧調整システム10は、車両5に取り付けられた4本のタイヤ6の空気圧をタイヤ6の各々で調整するものである。
【0010】
以下、図1の上方向を車両5の前方、同図の下方向を車両の後方とする。また、図1の左方向を車両5の左方、同図の右方向を車両5の右方とする。
【0011】
図1に示すように、タイヤ空気圧調整システム10は、TPMSセンサ送信機20と、タイヤ空気圧調整装置30と、情報端末装置40と、を含んで構成されている。図1に示すように、車両5には、4本のタイヤ6(6FL,6FR,6RL,6RR)が設けられている。これら4本のタイヤ6(6FL,6FR,6RL,6RR)の各々には、TPMSセンサ送信機20(20FL,20FR,20RL,20RR)及びタイヤ空気圧調整装置30(30FL,30FR,30RL,30RR)が装着されている。
【0012】
なお、4本のタイヤ6(6FL,6FR,6RL,6RR)の各々に装着されるTPMSセンサ送信機20(20FL,20FR,20RL,20RR)及びタイヤ空気圧調整装置30(30FL,30FR,30RL,30RR)の構成は同一である。したがって、以下では、TPMSセンサ送信機20とタイヤ空気圧調整装置30と称して、これらを説明する。
【0013】
図2に示すように、TPMSセンサ送信機20は、例えば、外周面にタイヤ6を保持するタイヤホイール7のエアバルブ8に装着されている。
【0014】
図3に示すように、TPMSセンサ送信機20は、制御部21、空気圧センサ22と、温度センサ23と、通信部24と、電源回路25と、バッテリー26と、を有している。空気圧センサ22が請求項に記載の空気圧検出部に、温度センサ23が請求項に記載の温度検出部に相当する。
【0015】
制御部21は、例えばCPU、ROM及びRAMが集約された、例えばMCU(Micro Controller Unit)である。制御部21は、空気圧センサ22及び温度センサ23の作動を制御するとともに、これらセンサ22,23から出力される信号を、TPMSセンサ送信機20の識別番号(識別ID)とともに、通信部24を介して情報端末装置40に無線送信する。無線送信としては、例えばBluetooth(登録商標)を用いることができる。
【0016】
空気圧センサ22は、所定の時間間隔でタイヤ6の空気圧を検出する。また、温度センサ23は、所定の時間間隔でタイヤ6の内部温度を検出する。
【0017】
電源回路25には、バッテリー26が接続されており、バッテリー26に蓄電された電力を、制御部21を介してTPMSセンサ送信機20の各部に給電する。
【0018】
バッテリー26は、例えばボタン電池などの一次電池である。なお、バッテリー26としてボタン電池などの一次電池としているが、例えばニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池を用いてもよい。なお、図示は省略するが、例えばニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池を用いる場合には、TPMSセンサ送信機20に受電用コイルを有する充電回路を、タイヤホイール7を保持するナックルなどの保持部材に送電用コイルを有する送電回路を各々設け、送電回路への通電を行うことで送電用コイルに発生する磁力によって、受電用コイルにて電気を発生させて、二次電池を充電することが可能である。
【0019】
図2に示すように、タイヤ空気圧調整装置30は、例えば、車両5に取り付けられるタイヤホイール7に装着される。なお、タイヤ空気圧調整装置30を取り付ける位置としては、一例としてタイヤホイール7のエアバルブ8の近傍となる位置である。ここで、タイヤ空気圧調整装置30は、TPMSセンサ送信機20と同様に、4本のタイヤホイール7の各々に装着されている。
【0020】
図4に示すように、タイヤ空気圧調整装置30は、制御部31と、発熱部32と、冷却部33と、通信部34と、電源回路35と、バッテリー36と、これらを内蔵する本体部37(図5参照)と、を有している。ここで、発熱部32及び冷却部33は、請求項に記載の温度変更部に相当する。なお、図3に示したTPMSセンサ送信機20の制御部21、通信部24、電源回路25及びバッテリー26と、図4に示したタイヤ空気圧調整装置30の制御部31、通信部34、電源回路35及びバッテリー36とは、共通化することが可能である。
【0021】
制御部31は、制御部21と同様に、例えばCPU、ROM及びRAMが集約された、例えばMCU(Micro Controller Unit)である。制御部31は、情報端末装置40から送信される信号に基づいて、発熱部32又は冷却部33の作動及び作動停止を制御する。通信部34は、情報端末装置40から送信される無線通信による信号を受信する。
【0022】
発熱部32は、例えばニクロム線やPTC(Positive Temperature Coefficient)カーボン素材などの電熱線を有している。発熱部32は、タイヤ空気圧調整装置30の本体部37の2か所(図5A中、符号32a,32bの位置)に設けられている。発熱部32は、例えばタイヤホイール7に接地している。発熱部32(32a,32b)は、通電時に発熱して、タイヤホイール7を加熱する。タイヤホイール7が加熱されることで、当該タイヤホイール7に保持されたタイヤ6の内部の空気を暖める。なお、図5Aにおいては、発熱部32を、タイヤ空気圧調整装置30の本体部37の2か所に設けた場合を例示しているが、発熱部32は、タイヤ空気圧調整装置30の本体部37に対して1か所以上配置されることが好ましい。
【0023】
冷却部33は、例えば本体部37に設けた2枚の羽根33a,33bと、当該羽根33a,33bを回動させる駆動部(図示省略)から構成されている。2枚の羽根33a,33bは、本体部37の上面に設けた開口37a,37bを開く開き位置(図5B参照)と、当該開口37a,37bを遮蔽する閉じ位置(図5A参照)との間で回動する。2枚の羽根33a,33bは、通常閉じ位置に保持されており、駆動部により閉じ位置から開き位置(又はその逆)へと回動する。例えば、閉じ位置にある2枚の羽根33a,33bの各々が開き位置へと回動すると、開口37a,37bが露呈されて、当該開口37a,37bから本体部37の内部に空気が流れ込む。開口37a,37bから本体部37の内部に流れ込む空気によってタイヤホイール7が冷却される。タイヤホイール7が冷却されることで、タイヤ6の内部の空気が冷却される。なお、本体部37の内部に流れ込んだ空気は、本体部37の側面に設けた流出口から本体部37の外部へと排出される。ここで、上述した2枚の羽根33a,33bが、請求項に記載の開口制御部に相当する。
【0024】
一方、開き位置にある2枚の羽根33a,33bが閉じ位置へと回動すると、2枚の羽根33a,33bの各々によって開口37a,37bが遮蔽されて、本体部37の内部への空気の流入が防止される。なお、本体部37に2つの開口37a,37bを有する場合を説明しているが、開口から流入した空気によってタイヤホイール7を冷却できるのであれば、開口の数は2つに限定されるものではなく、本体部37に少なくとも1以上の開口であればよい。
【0025】
図4に戻って説明すると、電源回路35には、バッテリー36が接続されており、バッテリー36に蓄電された電力を、制御部31を介してタイヤ空気圧調整装置30の各部に給電する。
【0026】
バッテリー36は、例えば一次電池、又は、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池である。図示は省略するが、バッテリー36として二次電池を使用する場合には、例えばタイヤホイール7の回転軸の回転時に電気エネルギーを生成する発電機によってバッテリー36を充電する。また、この他に、車両5の前後左右の4か所に設けられたタイヤハウスの各々の内部に、タイヤホイール7の回転軸を中心として、例えば所定の角度間隔で複数の送電用コイルを配置し、また、タイヤホイール7に装着されるタイヤ空気圧調整装置30に受電用コイルを配置して、タイヤホイール7が回転したとき(車両の走行時に)、送電回路への通電を行うことで送電用コイルに発生する磁力によって、受電用コイルにて電気を発生させて、二次電池を充電することも可能である。
【0027】
情報端末装置40は、例えば車両5に設置されるナビゲーション装置である。ナビゲーション装置は、運転者が設定した目的地までの経路案内を視覚的に、また、聴覚的に行うものである。
【0028】
図6に示すように、情報端末装置40は、制御部41、表示部42及び通信部43を有している。図示は省略するが、制御部41は、例えばCPU、ROM及びRAMが集約された、例えばMCU(Micro Controller Unit)である。なお、図示を省略したROMに、タイヤ空気圧調整装置30の動作を制御するための制御プログラム44が記憶されている。ここで、制御部41は、請求項に記載の温度制御部に相当する。
【0029】
表示部42は、運転者が設定した目的地までの経路案内を表示する他、車両5の前後左右のタイヤの空気圧及びタイヤの内部温度を表示する。
【0030】
通信部43は、車両5の前後左右に取り付けられる計4本のタイヤホイール7のエアバルブ8の各々に設けたTPMSセンサ送信機20からの無線通信により信号を受信するとともに、タイヤ空気圧調整装置30の各々への動作指令(動作停止指令も含む)を無線通信により送信する。
【0031】
次に、タイヤ空気圧調整システム10における処理の流れについて図7を用いて説明する。
なお、図7においては、装置間の信号(動作指令や動作停止指令を含む)の流れについて、二点鎖線で示している。
【0032】
上述したように、TPMSセンサ送信機20及びタイヤ空気圧調整装置30は、4本のタイヤホイール7の各々に装着されている。したがって、TPMSセンサ送信機20における処理(ステップS101からステップS103の処理)は、4本のタイヤホイール7に設けられたTPMSセンサ送信機20の各々で実行される。また、同様にして、タイヤ空気圧調整装置30における処理(ステップS301からステップS306の処理)は、4本のタイヤホイール7に設けられたタイヤ空気圧調整装置30の各々で実行される。したがって、情報端末装置40における処理(ステップS201からステップS206)の処理は、4本のタイヤホイール7に設けられたTPMSセンサ送信機20から送信された信号の各々に対応して平行して実行される。
【0033】
TPMSセンサ送信機20の制御部21は、一定時間(例えば5~10分など)が経過すると(ステップS101:YES)、空気圧センサ22及び温度センサ23を動作させ、タイヤ6の空気圧及び内部温度を検出する(ステップS102)。そして、制御部21は、空気圧センサ22により検出されたタイヤ6の空気圧と、温度センサ23により検出されたタイヤ6の内部温度と、TPMSセンサ送信機20の識別情報(識別ID)とをまとめた検出信号を、通信部24を介して情報端末装置40に無線送信する(ステップS103)。なお、一定時間(例えば5~10分など)が経過していない場合(ステップS101:NO)には、一定時間が経過するまで、一定時間が経過したか否かの判定(ステップS101の処理)を繰り返し実行する。
【0034】
情報端末装置40の制御部41は、TPMSセンサ送信機20の各々から検出信号を無線受信すると(ステップS201:YES)、受信した検出信号に基づいて、タイヤ6の空気圧及び内部温度とを表示部42に表示させる(ステップS202)。したがって、情報端末装置40の制御部41が、4本のタイヤホイール7の各々に装着されているTPMSセンサ送信機20の各々から検出信号を受信したときには、表示部42には、4本のタイヤ6の空気圧及び内部温度が表示される。なお、ステップS202では、タイヤ6の空気圧及び内部温度を表示部42に表示させるとしているが、タイヤ6の空気圧のみを表示させてもよい。
【0035】
情報端末装置40の制御部41は、TPMSセンサ送信機20から送信された検出信号に基づいて、車両5の前後左右の4本のタイヤの各々における空気圧が、車両5の走行において適切な空気圧の範囲から外れているか否かを判定する(ステップS203)。ここで、適切な空気圧の範囲とは、例えば車両の走行条件(環境温度、道路の塗装状態、走行する場所)を取得し、取得された走行条件に合わせて自動的に設定されるものであってもよいし、走行条件に合わせて予め登録されている空気圧の範囲から、運転者が選択できるものであってもよい。なお、適切な空気圧の範囲から外れている場合、情報端末装置40の制御部41は、適切な空気圧の範囲から外れていることを、表示部42に警告表示してもよい。
【0036】
例えば、タイヤ6の空気圧が適切な空気圧の範囲から外れている(適切な空気圧の範囲外となる)場合(ステップS203:YES)、情報端末装置40の制御部41は、当該タイヤ6の空気圧が適切な空気圧の範囲の下限値未満であるか否かを判定する(ステップS204)。例えばタイヤ6の空気圧が適切な空気圧の範囲(適切範囲)の下限値未満である場合(ステップS204:YES)には、タイヤ6の内部空気を加熱する旨の動作指令を、該当するタイヤ空気圧調整装置30に送信する(ステップS205)。また、例えばタイヤ6の空気圧が適切な空気圧の範囲の上限値を超えている場合(ステップS204:NO)には、タイヤ6の内部空気を冷却する旨の動作指令を、該当するタイヤ空気圧調整装置30に送信する(ステップS206)。
【0037】
タイヤ空気圧調整装置30の制御部31は、動作指令を受信する(ステップS301:YES)と、動作指令に基づいた処理を行う。例えば動作指令が、タイヤ6の内部空気を加熱する旨の動作指令であるとき(ステップS302:YES)、タイヤ空気圧調整装置30の制御部31は、発熱部32(32a,32b)を作動する(ステップS303)。ここで、発熱部32(32a,32b)の作動とは、発熱部32(32a,32b)への通電を行うことである。発熱部32の作動によりタイヤホイール7が加熱される。タイヤホイール7が加熱されることで、タイヤ6の内部空気の温度が上昇する。例えば気体の圧力は、例えばボイルシャルルの法則により、温度と比例関係にある。したがって、タイヤ6の内部空気の温度が上昇すると、タイヤ6の空気圧は上昇する。
【0038】
一方、上述した動作指令がタイヤ6の内部空気を冷却する旨の動作指令であるとき(ステップS302:No)、タイヤ空気圧調整装置30の制御部31は、冷却部33を作動させる(ステップS304)。冷却部33が作動すると、本体部37に設けた2枚の羽根33a,33bが閉じ位置から開き位置へと回動する。ここで、車両5は走行している。すなわち、タイヤホイール7は回転している。したがって、2枚の羽根33a,33bが開き位置へと回動すると、各羽根33a,33bに遮蔽された開口37a,37bが露呈されて、空気が本体部37の内部へと流れ込む。本体部37の内部に流れ込む空気により、タイヤホイール7が冷却される。タイヤホイール7の冷却により、タイヤ6の内部空気の温度が下がる。その結果、タイヤ6の空気圧が下がる。
【0039】
情報端末装置40において、タイヤの空気圧が適切な空気圧の範囲に含まれている(適切な空気圧の範囲内である)と判定されている場合(ステップS203:NO)、ステップS205に進む。例えば情報端末装置40の制御部41が、タイヤ空気圧調整装置30に対して動作指令を送信していない場合(ステップS207:NO)には、ステップS201に戻り、TPMSセンサ送信機20からの検出信号を受信するまで、当該検出信号を受信したか否かの判定(ステップS201)を繰り返し実行する。
【0040】
上述したように、TPMSセンサ送信機20では、一定時間経過する度に、タイヤ6の空気圧及び内部温度を検出し、その検出信号を情報端末装置40に送信している。したがって、情報端末装置40の制御部41は、一定時間経過する度に受信する検出情報に基づいて、タイヤの空気圧が適切な空気圧の範囲から外れているか否かを判定している(ステップS203)。例えば情報端末装置40の制御部41がタイヤ空気圧調整装置30に対して動作指令を送信した後、タイヤ6の空気圧が適切な空気圧の範囲に含まれていると判定したとき(ステップS203及びステップS207:YES)、情報端末装置40の制御部41は、該当するタイヤ空気圧調整装置30に対して動作停止指令を送信する(ステップS208)。
【0041】
これを受けて、タイヤ空気圧調整装置30の制御部31は、例えば発熱部32によってタイヤ6の内部空気を加熱している場合には、発熱部32(32a,32b)の作動を停止する(ステップS306)。発熱部32(32a,32b)の作動の停止は、発熱部32(32a,32b)への通電を停止することである。また、冷却部33によってタイヤ6の内部空気を冷却している場合には、冷却部33の作動を停止する(ステップS306)。なお、冷却部33の作動の停止は、2枚の羽根33a,33bを開き位置から閉じ位置へと回動させて、本体部37の開口37a,37bを遮蔽することである。
【0042】
なお、上述した処理は、4本のタイヤホイール7の各々に装着されたタイヤ空気圧調整装置30の各々に対して行われる。これにより、車両5の前後左右に設けられた4本のタイヤの空気圧が適切範囲内となって、安定した走行を行うことが可能となる。
【0043】
なお、上述したシステムは、タイヤ6の状態を加味していないため、例えばタイヤ6がパンクしている、又はタイヤ6にくぎなどが刺さっているなどの場合など、タイヤ6を交換する必要がある場合に、例えば修理工場に向けて車両5を走行させる場合の応急措置として用いることができる。
【0044】
本実施の形態では、タイヤホイール7に発熱部32(32a,32b)を設けて、タイヤホイール7を加熱することで、タイヤ6の内部空気を加熱(暖める)ことで、タイヤ6の空気圧を適切範囲となるように調整しているが、例えば、タイヤホイール7が取り付けられるナックルなどの保持部材に取り付けられたブレーキ機構の一部(ブレーキシューなど)をタイヤホイール7に当接させることで、タイヤホイール7を加熱して、タイヤ6の内部空気を加熱することも可能である。また、ブレーキ機構の一部(ブレーキシューなど)ではなく、タイヤホイールに当接させて、当該タイヤホイールを加熱させるための部材をブレーキ機構とは別に設けることも可能である。
【0045】
なお、車両の前後左右の計4本のタイヤホイールの各々を、車両の前後左右に設けた駆動モータに固定する電気自動車や、車両の後部左右の2本のタイヤホイールを車両の後部左右に設けた駆動モータに固定する電気自動車が考案されている。このような電気自動車に本発明を適用する場合には、例えば、駆動する駆動モータの熱を用いてタイヤホイールを加熱して、タイヤの内部空気を加熱することも可能である。この場合、例えばタイヤホイールを加熱するときに、タイヤホイールに接触する部材を設けて、当該部材を介して駆動モータの熱をタイヤホイールに伝熱して、当該タイヤホイールを加熱する。
【0046】
本実施の形態では、タイヤ空気圧調整装置30の本体部37に設けた2枚の羽根33a,33bを閉じ位置から開き位置へと回動させて、本体部37の内部に空気を流入させることで、タイヤホイール7を冷却するようにしている。ところで、タイヤ6の内部空気を冷却する方法としては、タイヤホイール7を冷却するだけでなく、タイヤ6をタイヤホイール7とともに冷却してもよい。図8に示すように、例えば車両70のフロントバンパー(又はフロントフェンダー)71に空気流入路72を、タイヤハウス73に当該空気流入路72に連通する開口74を設ける。また、フロントバンパー71の空気流入路72とタイヤハウス73の開口74とを遮蔽する位置(図8A参照)と、タイヤハウス73の開口74を連通する位置(図8B参照)との間で移動するシャッタ75を設ける。この場合、空気流入路72、タイヤハウス73の開口74及びシャッタ75が冷却部80として機能する。なお、空気流入路72は、請求項に記載の取り込み部に相当する。
【0047】
なお、図8に示す冷却部80と、本実施の形態に示した冷却部33とを併用して、タイヤの内部温度を調整することも可能である。
【0048】
通常、シャッタ75は、開口74を遮蔽する位置に保持される。そして、タイヤ6の内部空気を冷却する場合に、シャッタ75を、開口74を遮蔽する位置から、フロントバンパー71の空気流入路72と開口74とを連通する位置まで移動させる。これにより、空気流入路72に流入する空気が開口74を介してタイヤハウス73の内部に流入する。その結果、タイヤハウス73の内部に流入する空気の流入量が増加して、タイヤ6やタイヤホイール7が冷却される。タイヤ6の内部空気が冷却されることで、タイヤ6の空気圧が高い場合には、タイヤ6の空気圧を適切な空気圧の範囲まで下げることができる。
【0049】
なお、タイヤ6及びタイヤホイール7の冷却時に、シャッタ75を、開口74を遮蔽する位置からフロントバンパー71の空気流入路72と開口74とを連通する位置まで移動させているが、シャッタ75の移動量を調整することで、開口74からタイヤハウス73に流入する空気の流入量を調整することも可能である。この場合、シャッタ75が請求項に記載の調整部に相当する。
【0050】
また、この他に、タイヤ6又はタイヤホイール7に、冷却気や暖気を吹き付けることで、タイヤ6の内部空気の温度を調整することも可能である。
【0051】
本実施の形態では、発熱部32(32a,32b)によってタイヤホイール7を加熱することで、タイヤ6の内部温度を上昇させて、タイヤ6の空気圧を上昇させるようにしているが、ペルチェ素子などの冷却素子を用いてタイヤホイール7を冷却して、タイヤ6の内部空気を冷却して、タイヤ6の空気圧を低下させることも可能である。
【0052】
本実施の形態では、タイヤホイール7のエアバルブ8の近傍にタイヤ空気圧調整装置30を装着した場合を説明しているが、タイヤ空気圧調整装置30を装着する位置は、タイヤホイール7のエアバルブ8の近傍に限定されるものではない。また、タイヤホイール7に装着するタイヤ空気圧調整装置30の数は1個に限定されるものではなく、図9に示すように、例えばタイヤホイール7に、所定角度間隔で複数設けることも可能である。なお、図9では、120度間隔で3個のタイヤ空気圧調整装置30を装着した場合を例示している。
【0053】
さらに、タイヤ空気圧調整装置30に、発熱部32と冷却部33とを設けているが、発熱部32と冷却部33とのいずれか一方を有するタイヤ空気圧調整装置としてもよい。また、発熱部32を設けたタイヤ空気圧調整装置と、冷却部を設けたタイヤ空気圧調整装置との各々を、タイヤホイールの内周面に、所定角度間隔で複数設けることも可能である。
【0054】
本実施の形態では、タイヤ6の空気圧が適切範囲から外れた場合に、タイヤ6の内部空気を加熱又は冷却して、タイヤ6の空気圧が適切範囲に含まれるようにタイヤ6の内部温度を調整しているが、例えば、外気温と、タイヤ6の内部温度と、タイヤ6の空気圧とを対応付けたテーブルデータを情報端末装置40に記憶させておき、情報端末装置40によって得られる外気温と、TPMSセンサ送信機20によって得られるタイヤ6の内部温度とに基づいて、タイヤ6の内部空気を加熱(又は冷却)することで、タイヤ6の内部温度を調整することも可能である。
【0055】
本実施の形態では、TPMSセンサ送信機20と、タイヤ空気圧調整装置30と、情報端末装置40とからなるタイヤ空気圧調整システム10について説明しているが、例えばTPMSセンサ送信機20の機能をタイヤ空気圧調整装置に設け、当該タイヤ空気圧調整装置と情報端末装置40との間で信号の送受信を行うタイヤ空気圧調整システムとしてもよい。
【0056】
また、この他に、TPMSセンサ送信機20の空気圧センサ22及び温度センサ23と、情報端末装置40の制御部41とを有するタイヤ空気圧調整装置30としてもよい。
【0057】
本実施の形態では、タイヤ6の空気圧が適切範囲から外れた場合に、タイヤ6の内部空気を加熱又は冷却して、タイヤ6の空気圧が適切範囲に含まれるようにタイヤ6の内部温度を調整している。例えばタイヤの空気圧における適切範囲は、車両が走行する道路の形態(一般道路、高速道路或いは未舗装路など)によって変化する。したがって、情報端末装置40は、位置データを取得して、車両が走行する道路の形態を推測して、タイヤの空気圧における適切範囲を選択できるようにしてもよい。
[発明のまとめ]
【0058】
本実施の形態のタイヤ空気圧調整システム10は、タイヤの空気圧を検出する空気圧センサ22と、タイヤ6の内部温度を検出する温度センサ23と、タイヤ6の内部温度を変更する発熱部32及び冷却部33と、発熱部32及び冷却部33を制御する制御部41と、を有し、制御部41は、タイヤ6の空気圧が所定の適切範囲から外れたときに、当該タイヤ6の空気圧が所定の適切範囲に含まれるように、発熱部32及び冷却部33を制御してタイヤ6の内部温度を変更させることを特徴としている。
【0059】
これによれば、タイヤ6の内部に空気を圧入してタイヤ6の空気圧の調整を行わなくても、タイヤ6の内部温度を制御することで、タイヤ6の空気圧が適切となる範囲で維持することができる。
【0060】
また、発熱部32(32a,32b)は、通電時に発熱するものであり、タイヤ6を保持するタイヤホイール7に取り付けられており、制御部41は、タイヤ6の空気圧が所定の適切範囲の下限値より低い場合、発熱部32(32a,32b)への通電を制御して発熱部32(32a,32b)を発熱させて、タイヤ6の内部温度を上昇させるものである。
【0061】
この構成とした場合、例えば寒冷地のように外気温が低い地方や、外気温が低い季節には、タイヤ6の空気圧が低くなる傾向がある。したがって、タイヤホイール7を加熱してタイヤ6の内部空気を暖めることでタイヤ6の空気圧を高くして、タイヤ6の空気圧を適切範囲に維持することができる。
【0062】
また、冷却部33は、通電時に冷却するものであり、タイヤ6を保持するタイヤホイール7に取り付けられており、制御部41は、タイヤ6の空気圧が所定の適切範囲の上限値を超過する場合、冷却部33の通電を制御して冷却部33を冷却させて、タイヤ6の内部温度を下げるものである。
【0063】
この構成によれば、例えば赤道直下地域のように外気温が高い地域や、外気温が高い季節には、タイヤ6の空気圧が高くなる傾向がある。したがって、タイヤホイール7を冷却してタイヤ6の内部空気を冷却することでタイヤ6の空気圧を低くして、タイヤ6の空気圧を適切範囲に維持することができる。
【0064】
また、冷却部33は、内部に空気を取り込む開口37a,37bを有する本体部37と、本体部37に設けられるともに、開口37a,37bを塞ぐ位置と開口37a,37bを露呈する位置との間で開口37a,37bを開閉する羽根33a,33bと、を有しており、開口37a,37bから取り込まれた空気がタイヤ6を保持するタイヤホイール7の表面に当たるように取り付けれられており、制御部41は、タイヤ6の空気圧が所定の適切範囲の上限を超えた場合、開口37a,37bを塞ぐ位置に保持された羽根33a,33bを、開口37a,37bを露呈する位置まで回動させることで、本体部37の内部に空気を流入させてタイヤホイール7を冷却するものである。
【0065】
この構成によれば、例えば赤道直下地域のように外気温が高い地域や、外気温が高い季節には、タイヤ6の空気圧が高くなる傾向がある。したがって、タイヤホイール7を冷却してタイヤ6の内部空気を冷却することでタイヤ6の空気圧を低くして、タイヤ6の空気圧を適切範囲に維持することができる。
【0066】
また、冷却部33は、タイヤ6が取り付けられた車両5の走行中に、車両5の外部の空気を、タイヤ6を包囲するタイヤハウス73の内部に取り込む空気流入路72と、空気流入路72への空気の取り込み量を調整するシャッタ75を有し、制御部41は、タイヤ6の空気圧が所定の適切範囲の上限を超えた場合、シャッタ75を制御して、空気流入路72の、タイヤ6を包囲するタイヤハウス73の内部への空気の取り込み量を増やし、タイヤ6および当該タイヤ6を保持するタイヤホイール7を冷却するものである。
【0067】
この構成によれば、タイヤ6の空気圧が高い場合、車両70の走行時において、タイヤハウス73の内部に流入する空気の流入量が増加することで、タイヤ6及びタイヤホイール7冷却させやすくなる。その結果、タイヤ6の内部温度が低下して、タイヤ6の空気圧を下げ、タイヤ6の空気圧を適切範囲に維持することができる。
【符号の説明】
【0068】
5,70…車両
6…タイヤ
7…タイヤホイール
8…エアバルブ
10…タイヤ空気圧調整システム
20…TPMSセンサ送信機
22…空気圧センサ(空気圧検出部)
23…温度センサ(温度検出部)
30…タイヤ空気圧調整装置
32,32a,32b…発熱部(温度変更部)
33,80…冷却部(温度変更部)
33a,33b…羽根(開口制御部)
37…本体部
40…情報端末装置
73…タイヤハウス
75…シャッタ(調整部)
図1
図2
図3
図4
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図7
図8
図9