(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154832
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】コネクタ用防水器具
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20241024BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20241024BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20241024BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01R13/52 D
B60J5/10 Z
H02G3/04 087
H02G3/30
H01R13/52 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068945
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】小谷 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】村田 重光
(72)【発明者】
【氏名】大谷 聡宏
(72)【発明者】
【氏名】宇城 大希
【テーマコード(参考)】
5E087
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
5E087FF12
5E087LL17
5E087MM09
5E087QQ04
5E087RR12
5G357DA02
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD06
5G357DE03
5G357DE05
5G363AA01
5G363BA02
5G363DA13
5G363DC03
(57)【要約】
【課題】バックドアの開閉に伴う、コネクタの被水を抑制可能とする。
【解決手段】防水器具である防水ボックス30は、入口ゲート32、出口ゲート36、及び箱本体部31を備える。入口ゲート32は、入口開口34が設けられる。入口開口34は、コネクタ70,75から引き出される入力ケーブル73A,78A用に設けられる。出口ゲート36は、出口開口38が設けられる。出口開口38は、コネクタ70,75から引き出される出力ケーブル73B,78B用に設けられる。箱本体部31は、入口ゲート32及び出口ゲート36に接続される。さらに箱本体部31は、入口ゲート32及び出口ゲート36を除いて、コネクタ70,75を全面に亘って覆う。また入口ゲート32及び出口ゲート36は、箱本体部31から入口開口34及び出口開口38まで、インナパネル22の下端に向けて下方に傾斜する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックドアのインナパネルに取り付けられるコネクタ用の防水器具であって、
前記コネクタから引き出される入力ケーブル用の入口開口が設けられた入口ゲートと、
前記コネクタから引き出される出力ケーブル用の出口開口が設けられた出口ゲートと、
前記入口ゲート及び前記出口ゲートに接続され、前記入口ゲート及び前記出口ゲートを除いて、前記コネクタを全面に亘って覆う箱本体部と、
を備え、
前記入口ゲート及び前記出口ゲートは、前記箱本体部から前記入口開口及び前記出口開口まで、前記インナパネルの下端に向けて下方に傾斜する、
コネクタ用防水器具。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタ用防水器具であって、
前記箱本体部は、前記インナパネルと対向する対向壁を備え、
前記対向壁に、前記インナパネルの締結孔に差し込まれる締結具が配置される、
コネクタ用防水器具。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタ用防水器具であって、
前記箱本体部は、前記対向壁と対向する露出壁を備え、
前記露出壁の、前記締結具と対向する位置に目印が形成される、
コネクタ用防水器具。
【請求項4】
請求項2または3に記載のコネクタ用防水器具であって、
前記締結具は、前記インナパネルの前記締結孔に挿入されるクリップと、前記クリップを支持し前記対向壁に固定される台座を備え、
前記締結具は、前記対向壁上において、前記入口ゲート及び前記出口ゲートに近接配置される、
コネクタ用防水器具。
【請求項5】
請求項1に記載のコネクタ用防水器具であって、
前記箱本体部は光透過性である、
コネクタ用防水器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、バックドアのパネルに配置されたコネクタ用の防水器具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の板金であるパネルには、コネクタが取り付けられる。パネル周りの液体が、コネクタのオス端子とメス端子との接続部に浸入することを抑制するために、例えば特許文献1,2では、コネクタの周りにカバーが取り付けられる。
【0003】
例えば特許文献1では、パネルが略水平方向に設置される(横設される)。このパネルの下方にコネクタが配置される。コネクタの周りにカバーが配置される。カバーはトンネル形状となっており、コネクタに接続される電線の延出方向に沿って開口が設けられる。
【0004】
また例えば特許文献2では、パネルが略鉛直方向に設置される(立設される)。このパネルにコネクタが配置される。コネクタにはコネクタカバーが装着される。コネクタカバーは、コネクタの上方を覆う屋根板を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-182932号公報
【特許文献2】特開2020-107576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両のバックドアは、閉止状態では直立配置となり、開放状態では水平配置となる。直立配置において、バックドアのパネル面に付着した水滴は、下方に垂れ落ちる。水平配置において、バックドアのパネル面に付着した水滴は、パネル面を伝って水平移動する。このように、バックドアの開閉状態に応じて、パネル面に付着した液体の流れ態様が変化する。
【0007】
また、バックドアは、内装部品であるドアトリム、外装部品であるアウタパネル、及びドアトリムとアウタパネルの間に設けられるインナパネルを含む。外部への露出を避けるために、コネクタは例えばインナパネルの、ドアトリムとの対向面に配置される。このとき、開放状態のバックドアを閉じるときの衝撃で、ドアトリムに付着した水滴が、インナパネルの対向面まで撥ねるおそれもある。
【0008】
そこで本明細書で開示されるコネクタ用防水器具は、バックドアの開閉に伴う、コネクタの被水を抑制可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で開示されるコネクタ用防水器具は、コネクタがバックドアのインナパネルに取り付けられる。防水器具は、入口ゲート、出口ゲート、及び箱本体部を備える。入口ゲートは、入口開口が設けられる。入口開口は、コネクタから引き出される入力ケーブル用に設けられる。出口ゲートは、出口開口が設けられる。出口開口は、コネクタから引き出される出力ケーブル用に設けられる。箱本体部は、入口ゲート及び出口ゲートに接続される。さらに箱本体部は、入口ゲート及び出口ゲートを除いて、コネクタを全面に亘って覆う。また入口ゲート及び出口ゲートは、箱本体部から入口開口及び出口開口まで、インナパネルの下端に向けて下方に傾斜する。
【0010】
上記構成によれば、入口ゲート及び出口ゲートを除いて、防水器具によってコネクタが全面に亘って覆われる。これにより、バックドアの開閉に伴う、コネクタの被水を抑制可能となる。また入口ゲート及び出口ゲートが、インナパネルの下端に向けて下方に傾斜することで、バックドアの閉止時において、入口ゲート及び出口ゲートに付着した液体は、傾斜に沿って流下する。その結果、コネクタの被水が抑制される。
【0011】
また上記構成において、箱本体部は、インナパネルと対向する対向壁を備えてもよい。この場合、対向壁に、インナパネルの締結孔に差し込まれる締結具が配置される。
【0012】
コネクタに締結具を設ける場合、箱本体部を開口して締結部を差し入れなければならない。この場合、箱本体部の開口が液体の浸入経路となり得る。上記構成のように、箱本体部を介してコネクタをインナパネルに締結させる構造とすることで、締結のための開口を、箱本体部に設けなくても済む。
【0013】
また上記構成において、箱本体部は、対向壁と対向する露出壁を備えてもよい。この場合、露出壁の、締結具と対向する位置に目印が形成される。
【0014】
コネクタ及びこれを収容する防水器具をインナパネルに締結させるに当たり、締結具がインナパネルの締結孔に差し込まれる。箱本体部の露出面について、締結具と対向する位置に目印を形成することで、当該目印を押圧すれば、締結具をインナパネルの締結孔に差し込むことができる。
【0015】
また上記構成において、締結具は、インナパネルの締結孔に挿入されるクリップと、クリップを支持し対向壁に固定される台座を備えてもよい。この場合、締結具は、対向壁上において、入口ゲート及び出口ゲートに近接配置される。
【0016】
上記構成によれば、締結具の台座分、入口ゲート及び出口ゲートをインナパネルから浮かせることができる。これに伴い、インナパネルの表面を伝う液体の、入口ゲート及び出口ゲートへの浸入を抑制できる。
【0017】
また上記構成において、箱本体部は光透過性であってよい。
【0018】
上記構成によれば、コネクタの接続状態を箱本体部の外部から視認可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本明細書に開示されるコネクタ用防水器具は、バックドアの開閉に伴う、コネクタの被水を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係るコネクタ用防水器具が取り付けられる、バックドアを例示する斜視図である。
【
図2】バックドアのインナパネルに、本実施形態に係るコネクタ用防水器具が取り付けられたときの様子を例示する斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るコネクタ用防水器具の構造を説明する分解斜視図である。
【
図4】カバーの、インナパネルとの対向面の構造を例示する斜視図である。
【
図5】ベースにコネクタを取り付けたときの例を示す斜視図である。
【
図6】カバーをベースに取り付けたときの例を示す斜視図である。
【
図7】本実施形態に係るコネクタ用防水器具をインナパネルに締結させる工程を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、コネクタ、及び、本実施形態に係るコネクタ用防水器具が搭載された、車両10が例示される。なお
図1-
図8において、車両前後方向が記号FRで表される軸で示される。また車幅方向が記号RWで表される軸で示される。さらに鉛直方向が記号UPで表される軸で示される。
【0022】
記号FRはFrontの略であり、前後方向軸FRは車両前方を正方向とする。記号RWはRight Widthの略であり、幅方向軸RWは右幅方向を正方向とする。また高さ軸UPは上方向を正方向とする。
図1に示されているように、これらFR軸、RW軸、UP軸は互いに直交する。以下適宜、これら3軸を基準に、本実施形態に係るコネクタ用防水器具が説明される。
【0023】
<バックドア>
図1を参照して、車両10の後面にバックドア20が配置される。バックドア20はいわゆる跳ね上げ式のドアであって、上端部の回転軸L1周りに回動可能となっている。バックドア20は、回転軸L1周りに開閉される。すなわちバックドア20は、閉止時には直立配置となり、全開時には水平配置となる。
【0024】
なお、直立配置とはバックドア20の水平面に対する角度が垂直に近い状態を指す。例えばバックドア20の水平面に対する角度が75°以上105°以下の範囲にあるときに、バックドア20が直立配置されていると捉えられる。
【0025】
同様にして、水平配置とはバックドア20の水平面に対する角度が0°に近い状態を指す。例えばバックドア20の水平面に対する角度が-15°以上15°以下の範囲にあるときに、バックドア20が水平配置されていると捉えられる。
【0026】
図2には、バックドア20の内部構造が例示される。例えばバックドア20は、外板パネルであるアウタパネル21(
図1参照)と、車室に露出する内装部品であるドアトリム(図示せず)を備える。さらにバックドア20は、アウタパネル21とドアトリムの間に、インナパネル22を備える。
【0027】
インナパネル22には、コネクタ70,75(
図5参照)をはじめ、バックドア20用の車両部品が取り付けられる。インナパネル22は、例えばアルミパネル等の金属板金から構成される。
【0028】
インナパネル22には、サービスホール28や締結孔29A,29B(
図7参照)が穿孔される。サービスホール28は、内面24から外面26に配線等を通すために設けられる。締結孔29A,29Bは、本実施形態に係る防水ボックス30をインナパネル22に締結固定するために設けられる。
【0029】
インナパネル22の外面26はアウタパネル21(
図1参照)に面する。アウタパネル21から車外の雨水等が浸入する場合がある。バックドア20の開閉動作、例えばバックドア20を閉じるときの衝撃で、アウタパネル21の液体が撥ねてインナパネル22の外面26に付着する場合がある。
【0030】
さらにインナパネル22の外面26に付着した液体は外面26上を垂れ下がり、サービスホール28等の孔からインナパネル22の内面24に浸入するおそれがある。
【0031】
また、インナパネル22の内面24はドアトリム(図示せず)と対向する。結露等によりドアトリムの表面に液体が生じる。バックドア20の開閉動作、例えばバックドア20を閉じるときの衝撃で、ドアトリム表面の液体が撥ねてインナパネル22の内面24に付着する場合がある。
【0032】
このように、インナパネル22の内面24には、水等の液体が付着するおそれがある。そこで、インナパネル22に締結固定されるコネクタ70,75(
図5参照)を被水から保護するために、本実施形態に係る防水器具がインナパネル22に取り付けられる。
【0033】
<コネクタ>
図5には、インナパネル22に締結固定されるコネクタ70,75が例示される。コネクタ70,75はそれぞれメス型コネクタ71,76及びオス型コネクタ72,77を備える。オス型コネクタ72,77は入力ケーブル73A,78Aの末端接続部である。メス型コネクタ71,76は出力ケーブル73B,78Bの末端接続部である。例えばオス型コネクタ72,77のツメ72A,77Aがメス型コネクタ71,76の締結孔に嵌まり込むことで、メス型コネクタ71,76とオス型コネクタ72,77が係合され、両者が導通される。
【0034】
図2、
図5に例示されるように、本実施形態に係るコネクタ用防水器具である、防水ボックス30は、複数のコネクタを収容可能となっている。
図5の例では、2個のコネクタ70,75が防水ボックス30に収容される。しかしながら、防水ボックス30の形状を変更することで、3個以上のコネクタを、防水ボックス30に収容することができる。
【0035】
<防水ボックス>
インナパネル22に取り付けられるコネクタ70,75を被水から保護するために、防水器具である防水ボックス30が設けられる。防水ボックス30は、コネクタ70,75を収容した状態で、インナパネル22に取り付けられる。防水ボックス30は、コネクタ70,75を被水から保護するための防水器具であり、箱本体部31、入口ゲート32、及び出口ゲート36を備える。
【0036】
入口ゲート32は、略角筒状の管路であって、その端部には、入口開口34が設けられる。コネクタ70,75から、入力ケーブル73A,78Aが、入口開口34を経由して防水ボックス30の外部に引き出される。
【0037】
出口ゲート36は、略角筒状の管路であって、その端部には、出口開口38が設けられる。コネクタ70,75から、出力ケーブル73B,78Bが、出口開口38を経由して防水ボックス30の外部に引き出される。
【0038】
箱本体部31は、入口ゲート32及び出口ゲート36に接続される箱体である。箱本体部31は、コネクタ70,75を上下前後左右に亘って覆う。すなわち箱本体部31は、入口ゲート32及び出口ゲート36を除いて、コネクタ70,75を全面に亘って覆う。
【0039】
また、入口ゲート32及び出口ゲート36は、箱本体部31から入口開口34及び出口開口38まで、下方に傾斜するように延伸する。言い換えると、入口ゲート32及び出口ゲート36は、箱本体部31から入口開口34及び出口開口38まで、インナパネル22の下端に向けて斜めに延伸する。また、入口ゲート32及び出口ゲート36は、箱本体部31の下方部分、つまりインナパネル22の下端寄りに設けられる。
【0040】
例えばバックドア20が閉止状態にあるとき、つまりバックドア20が直立配置であるときに、箱本体部31に液体が付着し、そのまま入口ゲート32及び出口ゲート36まで垂れる場合がある。このような場合でも、斜め傾斜の入口ゲート32及び出口ゲート36の壁面を伝って液体が流れ、そのまま滴下される。これにより、出口開口38及び入口開口34からの液体の浸入が抑制される。
【0041】
また後述されるように、入口ゲート32及び出口ゲート36の底壁であるガイド63B,63C(
図3参照)は底壁63の本体部63Aと比較して細幅となる。これにより、入口ゲート32及び出口ゲート36の下端部分の底壁には隙間39(
図2参照)が生じる。この隙間39から液体が抜けることで、箱本体部31内への液体の浸入が抑制される。
【0042】
<防水ボックスの構造>
図3を参照して、防水ボックス30はケース40及びベース60を備える。例えばこれらの部品はプラスチック等の樹脂材料から形成される。ケース40はベース60よりも前後幅(FR軸幅)が広くなるように形成される。後述されるように、ケース40をベース60にスライド移動させて嵌め込むことで防水ボックス30が組み立てられる。
【0043】
ケース40は防水ボックス30の上部部品である。
図3には、ケース40の露出壁41を主面とする斜視図が例示される。
図4には、
図3とは反対向きのアングルでケース40を例示した斜視図である。すなわち
図4では、対向壁42を主面とする斜視図が例示される。
図3、
図4を参照して、ケース40は、箱本体部31を構成する露出壁41、対向壁42、天井壁43、側壁44,45を備える。
【0044】
対向壁42はインナパネル22(
図2参照)の内面24と対向する平板部である。対向壁42には締結具50,51が取り付けられる。このように、本実施形態に係る防水ボックス30では、コネクタ70,75が締結具を備える代わりに、防水ボックス30に締結具50,51が設けられる。
【0045】
コネクタ70,75に締結具を設ける場合、防水ボックス30の対向壁42に孔を開けて締結部を挿入させる必要がある。この場合、対向壁42の孔が液体の浸入経路となるおそれがある。コネクタ70,75には、インナパネル22との締結具を持たせずに、防水ボックス30の対向壁42に締結具50,51を持たせることで、対向壁42に孔を設ける必要が無くなる。
【0046】
締結具50,51は、クリップ50A,51A、鍔50B,51B、及び台座50C,51Cを備える。クリップ50A,51Aはインナパネル22の締結孔29A,29B(
図7)に差し込まれる。クリップ50A,51Aがインナパネル22の締結孔29A,29Bに完全に差し込まれると、鍔50B,51Bとクリップ50A,51Aとにインナパネル22が挟持される。
【0047】
台座50C,51Cは締結具50,51の根本部であって、対向壁42に固定される。例えば溶着により台座50C,51Cが対向壁42に固定される。台座50C,51Cは前後方向(FR軸方向)に延設される。つまりこの台座50C,51Cにより、対向壁42はインナパネル22の内面24から浮いた状態となる。
【0048】
また、締結具50,51は、対向壁42上において、入口ゲート32及び出口ゲート36に近接配置される。例えば入口ゲート32及び出口ゲート36と箱本体部31との境界線上に締結具50,51が配置される。このような配置が採られることで、入口ゲート32及び出口ゲート36はインナパネル22の内面24から浮いた状態(離隔された状態)となる。したがって、内面24を伝う液体が入口ゲート32及び出口ゲート36に浸入することが抑制される。
【0049】
図3、
図4を参照して、露出壁41は対向壁42と車両前後方向(FR軸方向)に対向する。露出壁41は、バックドア20からドアトリム(図示せず)を取り外した際に、作業員等に視認される。
【0050】
対向壁42と露出壁41の間に、天井壁43、側壁44,45が接続される。これらの壁材により、下方が開放された箱型構造が形成される。
【0051】
露出壁41には、マーク41A,41Bが形成される。このマーク41A,41Bは、締結具50,51と車両前後方向に対向する位置に設けられる。
図7を参照して、マーク41A,41Bは、締結具50,51を締結孔29A,29Bを挿入するための目印となる。マーク41A,41Bは、露出壁41に印刷されていてもよい。またマーク41A,41Bは、ケース40の成型時に形成される立体構造であってもよい。
【0052】
図3を参照して、露出壁41の下端に、爪41C,41Dが形成される。爪41C,41Dは、露出壁41の下端から下方に延伸する。後述されるように、爪41C,41Dは、ベース60のスロット61A1,61A2に挿入される。
【0053】
ケース40は、入口ゲート32を構成するゲート天井壁部32A、ゲート側壁部32B,32Cを備える。またケース40は、出口ゲート36を構成するゲート天井壁部36A、ゲート側壁部36B,36Cを備える。これらの壁部は、箱本体部31から離隔するにつれて下方に、つまりインナパネル22の下端に向かって、傾斜する傾斜構造を備える。このような構造を備えることで、バックドア20が閉止状態、つまり直立配置のときに、ゲート天井壁部32A,36Aに付着した液体は、その傾斜面に沿って流れ、防水ボックス30から下方に滴下される。これにより、入口ゲート32及び出口ゲート36への液体の浸入が抑制される。
【0054】
図3を参照して、ベース60は防水ボックス30の下部部品である。ベース60は上方が開放されたトレイ形状を備える。より詳細には、ベース60は、露出壁61、対向壁62、及び底壁63の3面構造を備える。
【0055】
対向壁62は、インナパネル22の内面24と対向する。対向壁62は、締結部62A、ゲート側壁部62B,62Cを備える。締結部62Aは、ゲート側壁部62B,62Cよりも高さ方向に長く形成される。締結部62Aには、スロット62A1,62A2が形成される。このスロット62A1,62A2には、コネクタ70,75の(
図5参照)に設けられた爪74,79が挿入される。
【0056】
露出壁61は対向壁62と車両前後方向に対向する。露出壁61は締結部61A、ゲート側壁部61B,61Cを備える。締結部61Aにはスロット61A1,61A2が設けられる。このスロット61A1,61A2には、ケース40の爪41C,41Dが挿入される。
【0057】
また底壁63は本体部63A、ガイド63B,63Cを備える。露出壁61の締結部61A、対向壁62の締結部62A、及び底壁の本体部63Aは、箱本体部31の一部となる。露出壁61のゲート側壁部61B,61C、対向壁62のゲート側壁部62B,62C、及び底壁のガイド63B,63Cは、入口ゲート32及び出口ゲート36の一部となる。
【0058】
ガイド63B,63Cは本体部63Aと比較して車両前後方向の幅が短くなるように形成される。これにより、
図2に例示されるように、入口ゲート32及び出口ゲート36の底面に隙間39が形成される。仮に、入口開口34及び出口開口38から液体が浸入しても、当該液体は隙間39から防水ボックス30外に排出される。
【0059】
このように、本実施形態に係る防水ボックス30は、上下前後左右に亘って、コネクタ70,75を囲む。例えばバックドア20が閉止されインナパネル22が直立配置されているときに、防水ボックス30の上からインナパネル22の内面24を伝って垂れる液体は、防水ボックス30の天井壁43で止められる。
【0060】
また、バックドア20が開放されインナパネル22が水平配置されているときに、インナパネル22の内面24を伝って流れる液体は、防水ボックス30の対向壁42、天井壁43、側壁44,45、及び底壁63のいずれかにより止められる。
【0061】
<防水ボックスの取付工程>
図3、
図5を参照して、コネクタ70,75の爪74,79が、ベース60のスロット62A1,62A2に挿入される。これによりコネクタ70,75がベース60に係合される。
【0062】
さらに
図6を参照して、ケース40がベース60の上からスライド移動させられる。このとき、ケース40の爪41C,41Dがベース60のスロット61A1,61A2に挿入される。これによりケース40がベース60に係合される。また、入力ケーブル73A,78Aの引き出し口が入口ゲート32に纏められる。同様にして、出力ケーブル73B,78Bの引き出し口が、出口ゲート36に纏められる。
【0063】
図7を参照して、作業者はインナパネル22の内面24に形成された締結孔29A,29Bと、防水ボックス30の締結具50,51について、粗い位置決めを行う。その後、作業者はマーク41A,41Bを車両後方(インナパネル22側)に押す。これにより、クリップ50A,51Aが締結孔29A,29Bに差し込まれる。その結果、防水ボックス30及びこれに収容されたコネクタ70,75がインナパネル22に締結固定される。
【0064】
<防水ボックスの別例>
図8には、本実施形態に係る防水ボックス30の別例が示される。この例では、箱本体部31の大部分を構成するケース40が、光透過性の材料から構成される。例えばケース40はいわゆる透明プラスチックから構成される。
【0065】
ケース40を光透過性とすることで、防水ボックス30の内部を視認可能となる。例えば、コネクタ70,75の抜けの有無等を、防水ボックス30から視認可能となる。
【符号の説明】
【0066】
10 車両、20 バックドア、22 インナパネル、29A,29B 締結孔、30 防水ボックス(防水器具)、31 箱本体部、32 入口ゲート、34 入口開口、36 出口ゲート、38 出口開口、40 ケース、41 露出壁、41A,41B マーク、42 対向壁、50 締結具、60 ベース、70,75 コネクタ、73A,78A 入力ケーブル、73B,78B 出力ケーブル。