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特開2024-154841発電所内植物管理システムおよび発電所内植物管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154841
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】発電所内植物管理システムおよび発電所内植物管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20241024BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068988
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 樹広
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】発電所内の植物を適正に管理できるようにする。
【解決手段】発電所内の植物の生息場所ごとに、植物の種類および生息年数と該生息場所における風害および塩害の少なくとも一方の程度を含む環境事情を含む生息情報を記憶する生息情報データベース341と、植物の種類ごとに、成長速度、耐乾燥性および害虫に関する情報を含む植物情報を記憶する植物情報データベース342と、植物に対する伐採、潅水および害虫駆除を含む行為を管理行為とし、生息情報と植物情報とに基づいて、将来実施すべき管理行為の内容と実施時期と実施する生息場所を含む管理計画を策定する管理計画タスク36と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電所内の植物の生息場所ごとに、前記植物の種類および生息年数と該生息場所における風害および塩害の少なくとも一方の程度を含む環境事情を含む生息情報を記憶する生息情報記憶手段と、
前記植物の種類ごとに、成長速度、耐乾燥性および害虫に関する情報を含む植物情報を記憶する植物情報記憶手段と、
前記植物に対する伐採、潅水および害虫駆除を含む行為を管理行為とし、前記生息情報と前記植物情報とに基づいて、将来実施すべき管理行為の内容と実施時期と実施する生息場所を含む管理計画を策定する管理計画手段と、
を備えることを特徴とする発電所内植物管理システム。
【請求項2】
過去に実施した管理行為の内容と実施時期と実施した生息場所を含む管理履歴を記憶する管理履歴記憶手段を備え、
前記管理計画手段は、前記生息情報と前記植物情報と前記管理履歴とに基づいて、前記管理計画を策定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電所内植物管理システム。
【請求項3】
前記発電所における気象情報を取得する気象情報取得手段を備え、
前記管理計画手段は、前記生息情報と前記植物情報と前記気象情報とに基づいて、前記管理計画を策定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電所内植物管理システム。
【請求項4】
前記植物の現状を取得する現状取得手段を備え、
前記管理計画手段は、前記生息情報と前記植物情報と前記植物の現状とに基づいて、前記管理計画を策定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電所内植物管理システム。
【請求項5】
前記管理計画手段は、前記生息情報と前記植物情報が入力されると、前記管理計画が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された管理計画用学習モデルを用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電所内植物管理システム。
【請求項6】
前記環境事情に、前記生息場所における車両の通行状況を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電所内植物管理システム。
【請求項7】
前記環境事情に、前記生息場所の土壌の状態を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電所内植物管理システム。
【請求項8】
前記環境事情に、前記生息場所の周辺に見学コースがあるか否かを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電所内植物管理システム。
【請求項9】
コンピュータを、
発電所内の植物の生息場所ごとに、前記植物の種類および生息年数と該生息場所における風害および塩害の少なくとも一方の程度を含む環境事情を含む生息情報を記憶する生息情報記憶手段と、
前記植物の種類ごとに、成長速度、耐乾燥性および害虫に関する情報を含む植物情報を記憶する植物情報記憶手段と、
前記植物に対する伐採、潅水および害虫駆除を含む行為を管理行為とし、前記生息情報と前記植物情報とに基づいて、将来実施すべき管理行為の内容と実施時期と実施する生息場所を含む管理計画を策定する管理計画手段、
として機能させることを特徴とする発電所内植物管理プログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
過去に実施した管理行為の内容と実施時期と実施した生息場所を含む管理履歴を記憶する管理履歴記憶手段として機能させ、
前記管理計画手段は、前記生息情報と前記植物情報と前記管理履歴とに基づいて、前記管理計画を策定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の発電所内植物管理プログラム。
【請求項11】
前記管理計画手段は、前記生息情報と前記植物情報が入力されると、前記管理計画が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された管理計画用学習モデルを用いる、
ことを特徴とする請求項9に記載の発電所内植物管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所内の植物を管理するための発電所内植物管理システムおよび発電所内植物管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や原子力発電所などの発電所の構内には、広大な緑地を有し、従来から多様な種類の植物を管理している。この際、植物の種類によって乾燥への適応力や発生する害虫の種類などが異なるため、植物の種類に応じた管理が必要となる。例えば、潅水が必要な植物に対しては、植物の状態を確認しながら、担当者の知識や経験に基づいて潅水のタイミングを判断していた。さらに、樹木の伐採についても、担当者の経験に基づいて伐採時期を年単位で計画していた。
【0003】
一方、森林における樹木の成長と伐採のタイミングを考慮して作業道・路網の計画を策定する、というシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このシステムでは、樹木の成長率(樹齢や本数密度、太さなどをパラメータとする予測式による値)の時間軸を加味して、樹種や樹齢などの林況、気象条件、地況などのデータ・情報に基づいて、所定のタイミングで伐採した場合の採算性を判断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-197085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、火力発電所や原子力発電所などは、一般に海に近く、しかも、埋め立て地に建設されている場合が多く、植物が風害や塩害を受けやすかったり、樹木の成長が森林とは異なったりする、などの特有の事情を有する。従って、特許文献1のシステムのように、単に樹木の種類や樹齢などに基づいて伐採時期などを判断するだけでは、適正なタイミングで伐採などを行うことができない。
【0006】
そこで本発明は、発電所内の植物を適正に管理することを可能にする発電所内植物管理システムおよび発電所内植物管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、発電所内の植物の生息場所ごとに、前記植物の種類および生息年数と該生息場所における風害および塩害の少なくとも一方の程度を含む環境事情を含む生息情報を記憶する生息情報記憶手段と、前記植物の種類ごとに、成長速度、耐乾燥性および害虫に関する情報を含む植物情報を記憶する植物情報記憶手段と、前記植物に対する伐採、潅水および害虫駆除を含む行為を管理行為とし、前記生息情報と前記植物情報とに基づいて、将来実施すべき管理行為の内容と実施時期と実施する生息場所を含む管理計画を策定する管理計画手段と、を備えることを特徴とする発電所内植物管理システムである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発電所内植物管理システムにおいて、過去に実施した管理行為の内容と実施時期と実施した生息場所を含む管理履歴を記憶する管理履歴記憶手段を備え、前記管理計画手段は、前記生息情報と前記植物情報と前記管理履歴とに基づいて、前記管理計画を策定する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の発電所内植物管理システムにおいて、前記発電所における気象情報を取得する気象情報取得手段を備え、前記管理計画手段は、前記生息情報と前記植物情報と前記気象情報とに基づいて、前記管理計画を策定する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1に記載の発電所内植物管理システムにおいて、前記植物の現状を取得する現状取得手段を備え、前記管理計画手段は、前記生息情報と前記植物情報と前記植物の現状とに基づいて、前記管理計画を策定する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1に記載の発電所内植物管理システムにおいて、前記管理計画手段は、前記生息情報と前記植物情報が入力されると、前記管理計画が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された管理計画用学習モデルを用いる、ことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1に記載の発電所内植物管理システムにおいて、前記環境事情に、前記生息場所における車両の通行状況を含む、ことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1に記載の発電所内植物管理システムにおいて、前記環境事情に、前記生息場所の土壌の状態を含む、ことを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1に記載の発電所内植物管理システムにおいて、前記環境事情に、前記生息場所の周辺に見学コースがあるか否かを含む、ことを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、コンピュータを、発電所内の植物の生息場所ごとに、前記植物の種類および生息年数と該生息場所における風害および塩害の少なくとも一方の程度を含む環境事情を含む生息情報を記憶する生息情報記憶手段と、前記植物の種類ごとに、成長速度、耐乾燥性および害虫に関する情報を含む植物情報を記憶する植物情報記憶手段と、前記植物に対する伐採、潅水および害虫駆除を含む行為を管理行為とし、前記生息情報と前記植物情報とに基づいて、将来実施すべき管理行為の内容と実施時期と実施する生息場所を含む管理計画を策定する管理計画手段、として機能させることを特徴とする発電所内植物管理プログラムである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項9に記載の発電所内植物管理プログラムにおいて、コンピュータを、過去に実施した管理行為の内容と実施時期と実施した生息場所を含む管理履歴を記憶する管理履歴記憶手段として機能させ、前記管理計画手段は、前記生息情報と前記植物情報と前記管理履歴とに基づいて、前記管理計画を策定する、ことを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明は、請求項9に記載の発電所内植物管理プログラムにおいて、前記管理計画手段は、前記生息情報と前記植物情報が入力されると、前記管理計画が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された管理計画用学習モデルを用いる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1および請求項9に記載の発明によれば、生息場所における植物の種類や環境事情を含む生息情報と、植物の種類ごとの成長速度や耐乾燥性を含む植物情報とに基づいて、いつ、どこに、どのような管理行為をすべきか、という管理計画が自動で策定される。このため、人の知識や経験によらず、発電所内の植物に対して、適正な時期に、適正な場所・植物に、適正な管理を行うことが可能となる。しかも、環境事情として生息場所における風害や塩害の程度が含まれ、生息場所における風害や塩害の程度に基づいて、管理計画が策定されるため、海の近くに建設されている場合が多い発電所に特有の事情に適合した、適正な管理計画を策定することが可能となる。
【0019】
請求項2および請求項10に記載の発明によれば、いつ、どこに、どのような管理行為を過去に実施したか、という管理履歴に基づいて管理計画が策定されるため、過去に行った管理行為を踏まえた適正な管理計画を策定することが可能となる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、発電所における気象情報に基づいて管理計画が策定されるため、発電所の気象に適合した適正な管理計画を策定することが可能となる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、植物の現状に基づいて管理計画が策定されるため、植物の現状・実情に適合した適正な管理計画を策定することが可能となる。
【0022】
請求項5および請求項11に記載の発明によれば、機械学習された管理計画用学習モデルを用いて管理計画が出力されるため、より適正な管理計画を策定することが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、生息場所における車両の通行状況に基づいて管理計画が策定されるため、車両の通行による植物への影響を考慮した、適正な管理計画を策定することが可能となる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、生息場所の土壌の状態に基づいて管理計画が策定されるため、土壌の違いによる植物への影響を考慮した、適正な管理計画を策定することが可能となる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、生息場所の周辺に見学コースがあるか否かに基づいて管理計画が策定されるため、見学者に見える植物は頻繁に管理することが好ましいなど、発電所に特有の事情に適合した適正な管理計画を策定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の実施の形態に係る発電所内植物管理システムを示す概略構成図である。
図2図1の発電所内植物管理システムの植物管理コンピュータを示す概略構成ブロック図である。
図3図2の植物管理コンピュータの生息情報データベースに記憶されている地図情報を示す図である。
図4図2の植物管理コンピュータの管理計画用学習モデルの概略構成を示す機能ブロック図である。
図5図2の植物管理コンピュータの管理計画タスクで策定される地図情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0028】
図1は、この発明の実施の形態に係る発電所内植物管理システム1を示す概略構成図である。この発電所内植物管理システム1は、火力発電所や原子力発電所などの発電所Gの構内に生息している植物Pを管理するためのシステムであり、この実施の形態では、植物Pが主に樹木P1と芝草P2の場合について説明するが、その他の植物Pにも同様にして管理することが可能である。ここで、植物全般に対しては「植物P」として以下に説明する。また、発電所Gは、海Wの埋め立て地に建設され、海Wに面しているものとする。
【0029】
発電所内植物管理システム1は、管理用ドローン(現状取得手段)2と、植物管理コンピュータ3と、を備える。
【0030】
管理用ドローン2は、発電所G内を飛行しながら植物Pの現状を撮影・取得する無人飛行体で、この実施の形態では、発電所G内の所定の発着場から所定の飛行ルート・航路を自動飛行する。すなわち、GPS(Global Positioning System)を備え、例えば、後述する植物管理コンピュータ3で設定されて管理用ドローン2に記憶された飛行ルートに対して、GPSで自身の位置を確認しながら飛行ルートに沿って自律制御して飛行する。この際、飛行環境などに応じて飛行の障害となる物を回避する機能を備えてもよい。
【0031】
また、管理用ドローン2は、カメラ(撮影手段)21を備え、植物Pの各生息場所でホバリングして植物Pの現状を撮影するようになっている。すなわち、飛行ルートに設定された各生息場所でホバリングしてカメラ21を起動し、植物Pを撮影して、撮影した画像を撮影場所の位置情報(緯度、経度)とともに植物管理コンピュータ3に送信する。
【0032】
ここで、このような管理用ドローン2を複数備え、異なる飛行ルートを同時に飛行させてもよいし、自動飛行に代って、人が遠隔操縦するようにしてもよい。また、管理用ドローン2が飛行ルートを飛行しながらカメラ21で植物Pを連続的に撮影し、各時刻における撮影した画像と飛行位置(緯度、経度)とを逐次記憶することで、各画像がどこの植物Pの画像であるかがわかるようにしてもよい。
【0033】
このような管理用ドローン2は、この実施の形態では、後述する管理計画タスク36の起動時に起動・飛行され、植物Pの最新の現状を撮影して画像を植物管理コンピュータ3に送信する。これに対して、定期的に管理用ドローン2を起動・飛行させて、植物Pの現状の画像を定期的に植物管理コンピュータ3に送信するようにしてもよい。この場合、管理計画タスク36において、受信した最新の画像を使用・参照する。
【0034】
植物管理コンピュータ3は、植物Pに対する管理計画を策定するコンピュータであり、この実施の形態では、発電所Gの事務所G1に配置されているが、その他の場所に配置されてもよい。この植物管理コンピュータ3は、図2に示すように、主として、入力部31と、表示部32と、通信部33と、記憶部34と、気象情報取得タスク(気象情報取得手段)35と、管理計画タスク(管理計画手段)36と、学習タスク37と、これらを制御などする中央処理部38と、を備える。
【0035】
入力部31は、各種情報や指令などを入力するためのインターフェイスであり、具体的には、後述する管理履歴データベース343に管理履歴を入力したり、管理計画タスク36の起動指令を入力したりする。表示部32は、各種データや情報などを表示するディスプレイであり、具体的には、管理履歴データベース343の管理履歴を表示したり、管理計画タスク36で策定された管理計画を表示したりする。通信部33は、インターネット網や電話通信網などを介して外部と通信するためのインターフェイスであり、具体的には、管理用ドローン2から画像を受信したり、後述する気象情報サーバ4から気象情報を受信したりする。
【0036】
記憶部34は、主として、生息情報データベース(生息情報記憶手段)341と、植物情報データベース(植物情報記憶手段)342と、管理履歴データベース(管理履歴記憶手段)343と、管理計画用学習モデル344と、管理計画用実績データベース345と、を備える。ここでは、データベース341、342、343について説明し、管理計画用学習モデル344と管理計画用実績データベース345については後述する。
【0037】
生息情報データベース341は、発電所G内の植物Pの生息場所ごとに、植物Pの種類および生息年数と該生息場所における環境事情を含む生息情報を記憶するデータベースである。ここで、生息場所ごととは、植物Pが生息する場所であって、その場所に生息するすべての植物Pに同等の管理行為・管理計画を要する場所ごと、という意味であり、同じ生息地(エリア)内であっても、日当たり具合や塩害の程度などが異なる場合には、複数の生息場所に分けられる場合がある。また、管理行為とは、植物Pに対する伐採(剪定を含む)、潅水および害虫駆除などのケア・手入れを少なくとも1つ含む行為である。
【0038】
そして、生息場所ごとに、その位置情報(緯度、経度)と、次のような情報が記憶されている。まず、この生息場所に生息している植物Pの種類(後述する植物情報データベース342における植物Pの種類と同等の意味)と、植物Pの生息年数(樹齢)が記憶され、植物Pの種類は、1つでも複数でもよい。また、この生息場所における環境事情が記憶され、環境事情には、この生息場所における管理行為・管理計画に影響を与え得る次のような情報が記憶されている。
【0039】
第1に、この生息場所における風害および塩害の程度が記憶されている。第2に、この生息場所における車両の通行状況、つまり、車両の通行頻度や大型車両が多く通行するかなどが記憶されている。第3に、この生息場所における土壌の状態、つまり、どのような土がどのくらいの割合で埋められているか(土壌の組成)、土壌の下がコクリートで土が浅く盛られているかなどの土壌の構成、などが記憶されている。第4に、この生息場所の周辺に見学コースがあるか否か、つまり、発電所Gの見学者からこの生息場所の植物Pがよく見えるか、などが記憶されている。
【0040】
さらに、生息情報データベース341は、図3に示すように、発電所Gの構内に生息している植物Pの生息場所を示す地図情報を記憶する。すなわち、発電所Gの構内を示す平面図上で、どのような樹木P1がどの生息場所に生息し、どのような芝草P2がどの生息場所に生息しているか、などを示す地図情報を記憶する。
【0041】
植物情報データベース342は、植物Pの種類ごとに、その植物Pに関する情報である植物情報を記憶するデータベースである。具体的には、その植物Pの成長速度(伐採時期や剪定周期を含む)や、耐乾燥性(乾燥時に潅水を要する基本的周期等)、害虫に関する情報(害虫が発生しやすいか否か、発生する害虫の種類等)など、どのような管理行為をいつ実施すべきか、という管理計画を策定するのに必要な情報が記憶されている。
【0042】
ここで、植物Pの種類とは、必ずしも学術上の種類・分類ではなく、管理計画を策定するのに必要なグループ・分類に分けられていてもよく、同等のタイミングで同等の管理行為を行ってもよい複数種の植物Pについては、たとえ学術上異なる種類であっても、同じ種類としてもよい。例えば、針葉樹、広葉樹、1年草、2年草、多年草などとしてもよい。
【0043】
管理履歴データベース343は、発電所G内の植物Pに対して過去に実施した管理行為に関する情報である管理履歴が記憶されている。具体的には、管理行為の内容(どのようなケア・手入れを行ったか)と、その実施時期(年月日)と、実施した生息場所、つまり、いつ、どこに、どのような管理行為を過去に実施したか、という管理履歴が記憶されている。
【0044】
気象情報取得タスク35は、発電所Gにおける気象情報を取得するタスク・プログラムである。すなわち、各地域の気象情報・気象予測を提供する気象情報サーバ4に、通信部33を介してアクセスし、発電所Gにおける短期、中期および長期の気象情報・気象予測を取得する。ここで、気象情報には、予測される温度、湿度、降雨量、日射・日照りなど、植物Pに影響を与える情報が含まれる。この気象情報取得タスク35は、管理計画タスク36の起動時に起動され、取得した発電所Gの気象情報が管理計画タスク36で使用・参照される。
【0045】
管理計画タスク36は、起動指令が入力されて起動したり、定期的に起動したりし、発電所G内の植物Pに対して、いつ、どこに、どのような管理行為をすべきか、という管理計画を策定・作成するタスク・プログラムである。すなわち、生息情報や植物情報などに基づいて、発電所G内の植物Pに対して、将来実施すべき管理行為の内容と実施時期と実施する生息場所を含む管理計画を策定する。
【0046】
ここで、この実施の形態では、起動された時点から所定の期間(管理行為ごとに異なる期間)内における管理計画を策定する。すなわち、現時点から所定の伐採期間、例えば、3年以内に実施すべき伐採に関する管理計画や、現時点から所定の潅水期間、例えば、1カ月以内に実施すべき潅水に関する管理計画、現時点から所定の害虫駆除期間、例えば、3カ月以内に実施すべき害虫駆除に関する管理計画を策定する。これに対して、起動時に指定された期間(例えば、現時点から1カ月、1年)内に実施すべきすべての管理行為の管理計画を策定するようにしてもよい。
【0047】
そして、生息情報データベース341に記憶された生息情報と、植物情報データベース342に記憶された植物情報と、管理履歴データベース343に記憶された管理履歴と、気象情報取得タスク35で取得された気象情報と、管理用ドローン2から受信した植物Pの現状の画像とに基づいて、管理計画を策定する。
【0048】
具体的には、まず、生息情報と植物情報とに基づいて、生息場所ごとに、どのような管理行為がどのようなタイミング・周期で必要かを策定する。例えば、次のように策定する。
・その生息場所の植物Pの種類に応じた成長速度と生息年数に基づき、いつごろ(概ね何年後)伐採が必要か、どのくらいの周期で剪定が必要かを策定する。
・その生息場所の植物Pの種類に応じた耐乾燥性に基づき、どのくらいの周期で潅水が必要かを策定する。
・その生息場所の植物Pの種類に応じた害虫に関する情報に基づき、害虫駆除が必要か、必要な場合、どのような害虫駆除がいつ、あるいはどのくらいの周期で必要かを策定する。
【0049】
また、このように策定した事項を、その生息場所における環境事情を考慮して調整する。例えば、次のように調整策定する。
・その生息場所で風害が大きい場合には伐採時期を早め、塩害が大きい場合には潅水の時期・周期を早める。
・その生息場所で芝草P2が生息し、車両が頻繁に通行する場合には、芝草P2が枯れやすいので、潅水の時期・周期を早めたり、芝草P2の植え替えを管理行為として策定したりする。
・その生息場所での土壌の下がコクリートで土が浅く盛られている場合には、伐採時期を早めたり潅水の時期・周期を早めたりする。
・その生息場所の周辺に見学コースがある場合には、剪定や潅水、害虫駆除、芝草P2の植え替えの時期・周期を早める。
・伐採や害虫駆除などの管理行為を協力会社に依頼してから実施されるまでの期間を考慮して、管理行為の時期・周期を早める。
【0050】
さらに、管理履歴や気象情報、植物Pの現状を考慮して管理計画を調整する。例えば、次のように調整策定する。
・管理履歴における直前の実施時期(年月日)から上記の周期を加算して、次回の実施時期を算出する。
・管理履歴において、管理行為の時期・周期が通常よりも(上記のように策定した時期・周期よりも)遅かったり早かったりする場合には、これを考慮して時期・周期を調整する。
・発電所Gにおける気象情報で、今後雨量が多いと予測される場合には、次回の潅水を中止したり時期・周期を延期したりし、今後日照りが続くと予測される場合には、潅水を早めたりする。
・植物Pの現状・画像から、その植物Pの劣化・枯れが通常よりも遅かったり早かったりする場合には、これを考慮して時期・周期を調整する。
・車両が頻繁に通行する芝草P2であっても植物Pの現状・画像から、芝草P2があまり枯れていない場合には、潅水の時期・周期を遅くしたり、芝草P2の植え替えを中止したりする。
【0051】
このような管理計画タスク36は、生息情報と植物情報と管理履歴と気象情報と植物Pの現状・画像とが入力されると、管理計画が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された管理計画用学習モデル344を用いる。この管理計画用学習モデル344は、学習タスク37によって作成される。
【0052】
すなわち、学習タスク37は、管理計画用実績データベース345に記録・蓄積されている過去の実績データを用いて、ニューラルネットワーク等の公知の機械学習アルゴリズムにより管理計画用学習モデル344を作成する。この管理計画用実績データベース345は、入力情報としての生息情報、植物情報、管理履歴、気象情報および植物Pの現状に基づいて、植物管理・ケアの有識者や発電所Gの植物Pの管理の熟練者などが策定した管理計画、を含む実績データが記録・蓄積されているデータベースである。なお、過去の実績データには、実際の生息情報や植物Pの現状などや、有識者・熟練者が実際に策定した管理計画に基づいて作成されたデータの他、事前訓練などで作成されたデータなどが含まれる。
【0053】
この学習タスク37は、図4に示すように、ニューラルネットワークを利用した機械学習・深層学習を用い、管理計画用実績データベース345に記録されている実績データに基づいて、例えば、生息情報、植物情報、管理履歴、気象情報および植物Pの現状を入力層、管理計画を出力層、入力層から出力層への解析処理を中間層とするニューラルネットワークを作成する。そして、学習タスク37は、管理計画用学習モデル344の実績データを学習データとして用いて、中間層における各種パラメータについて学習を行う。すなわち、学習タスク37は、生息情報、植物情報、管理履歴、気象情報および植物Pの現状に基づいて、適正な管理計画が出力されるように、中間層における各種パラメータの学習を行う。
【0054】
そして、このようにして策定した管理計画の結果を文字で出力するとともに、生息情報データベース341の地図情報に図示して、表示部32に表示する。例えば、図5に示すように、発電所Gの構内を示す平面図上で、生息場所S1の樹木P1に対して、「約1年後に伐採要」と示してこの生息場所S1に第1の色彩を付したり、生息場所S2の植物P(草花)に対して、「約10日後に潅水要」と示してこの生息場所S2に第2の色彩を付したり、生息場所S3の植物P(草花)に対して、「約2週間以内に害虫駆除要」と示してこの生息場所S3に第3の色彩を付したりする。
【0055】
以上のように、この発電所内植物管理システム1によれば、生息場所における植物Pの種類や環境事情を含む生息情報と、植物Pの種類ごとの成長速度や耐乾燥性を含む植物情報とに基づいて、いつ、どこに、どのような管理行為をすべきか、という管理計画が自動で策定される。このため、人の知識や経験によらず、発電所G内の植物Pに対して、適正な時期に、適正な場所・植物Pに、適正な管理を行うことが可能となる。
【0056】
しかも、環境事情として生息場所における風害や塩害の程度が含まれ、生息場所における風害や塩害の程度に基づいて、管理計画が策定されるため、海の近くに建設されている場合が多い発電所Gに特有の事情に適合した、適正な管理計画を策定することが可能となる。また、生息場所における車両の通行状況に基づいて管理計画が策定されるため、車両の通行による植物Pへの影響を考慮した、適正な管理計画を策定することが可能となる。また、生息場所の土壌の状態に基づいて管理計画が策定されるため、土壌の違いによる植物Pへの影響を考慮した、適正な管理計画を策定することが可能となる。また、生息場所の周辺に見学コースがあるか否かに基づいて管理計画が策定されるため、見学者に見える植物Pは頻繁に管理することが好ましいなど、発電所Gに特有の事情に適合した適正な管理計画を策定することが可能となる。
【0057】
また、いつ、どこに、どのような管理行為を過去に実施したか、という管理履歴に基づいて管理計画が策定されるため、過去に行った管理行為を踏まえた適正な管理計画を策定することが可能となる。さらに、発電所Gにおける気象情報に基づいて管理計画が策定されるため、発電所Gの気象に適合した適正な管理計画を策定することが可能となる。しかも、植物Pの現状に基づいて管理計画が策定されるため、植物Pの現状・実情に適合した適正な管理計画を策定することが可能となる。
【0058】
また、機械学習された管理計画用学習モデル344を用いて管理計画が出力されるため、より適正な管理計画を策定することが可能となる。
【0059】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、植物管理コンピュータ3が一体のコンピュータで構成されているが、複数のコンピュータやサーバなどで構成し、それらを異なる場所に配置してもよい。また、カメラ21を搭載した管理用ドローン2が現状取得手段を構成する場合について説明したが、各生息場所の周辺に配設されて植物Pの現状を撮影し、植物管理コンピュータ3に接続された監視カメラを現状取得手段としてもよい。
【0060】
一方、次のような発電所内植物管理プログラムを汎用のコンピュータにインストールすることで、上記のような発電所内植物管理システム1や植物管理コンピュータ3を構成してもよい。
【0061】
すなわち、植物Pに対する伐採、潅水および害虫駆除を含む行為を管理行為とし、コンピュータを、発電所G内の植物Pの生息場所ごとに、植物Pの種類および生息年数と該生息場所における風害や塩害などの環境事情を含む生息情報を記憶する生息情報記憶手段(生息情報データベース341)と、植物Pの種類ごとに、成長速度、耐乾燥性および害虫に関する情報を含む植物情報を記憶する植物情報記憶手段(植物情報データベース342)と、過去に実施した管理行為の内容と実施時期と実施した生息場所を含む管理履歴を記憶する管理履歴記憶手段(管理履歴データベース343)と、発電所Gにおける気象情報を取得する気象情報取得手段(気象情報取得タスク35)と、植物Pの現状を取得する現状取得手段と、生息情報、植物情報、管理履歴、気象情報および植物Pの現状に基づいて、将来実施すべき管理行為の内容と実施時期と実施する生息場所を含む管理計画を策定する管理計画手段(管理計画タスク36)として機能させ、管理計画手段は、生息情報、植物情報、管理履歴、気象情報および植物Pの現状が入力されると、管理計画が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習された管理計画用学習モデル344を用いる。
【符号の説明】
【0062】
1 発電所内植物管理システム
2 管理用ドローン(現状取得手段)
3 植物管理コンピュータ
34 記憶部
341 生息情報データベース(生息情報記憶手段)
342 植物情報データベース(植物情報記憶手段)
343 管理履歴データベース(管理履歴記憶手段)
344 管理計画用学習モデル
345 管理計画用実績データベース
35 気象情報取得タスク(気象情報取得手段)
36 管理計画タスク(管理計画手段)
4 気象情報サーバ
G 発電所
P 植物
P1 樹木
P2 芝草
図1
図2
図3
図4
図5