(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154843
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】乗物ダクト構造
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20241024BHJP
B01D 46/52 20060101ALI20241024BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60H1/00 102L
B01D46/52 B
B60H1/00 102S
B60H1/34 651Z
B60H1/34 671A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068993
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杁江 正博
(72)【発明者】
【氏名】酒向 慎貴
【テーマコード(参考)】
3L211
4D058
【Fターム(参考)】
3L211BA09
3L211BA51
3L211DA75
3L211DA82
4D058JA13
4D058KC04
4D058KC33
4D058KC42
4D058QA01
4D058QA03
4D058QA13
4D058SA20
(57)【要約】
【課題】空気清浄機としてもサーキュレータとしても使用可能な乗物用天井ダクト構造を提供する。
【解決手段】乗物10に設けられた送風装置20の空気流路を形成するダクト30の構造1であって、前記ダクト30内に配置され、前記ダクト30内を流れる空気流をろ過可能なフィルタ51を備え、前記フィルタ51はプリーツ加工されており、前記空気流路を塞ぐ形で展開される展開状態と、前記空気流路を開放する形で折り畳まれる折り畳み状態との間で変位可能とされている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に設けられた送風装置の空気流路を形成するダクトの構造であって、
前記ダクト内に配置され、前記ダクト内を流れる空気流をろ過可能なフィルタを備え、
前記フィルタはプリーツ加工されており、前記空気流路を塞ぐ形で展開される展開状態と、前記空気流路を開放する形で折り畳まれる折り畳み状態との間で変位可能とされている、乗物ダクト構造。
【請求項2】
前記ダクトの壁面に前記フィルタを挿抜可能な開口が設けられ、
前記ダクトは、前記フィルタが前記ダクト内に配置された状態において前記開口を塞ぐ蓋部を備え、
前記蓋部は、前記ダクトの延び方向と交差する交差方向における一端側において前記蓋部の内面から前記ダクト内に立ち上がる固定部を備え、
前記固定部と対向して配置され、前記交差方向に移動可能な可動部が設けられ、
前記フィルタは、その折り畳み方向における一端側が前記固定部に固定され、他端側が前記可動部に固定されており、前記可動部を前記固定部に対して変位させることにより伸縮可能とされている請求項1に記載の乗物ダクト構造。
【請求項3】
前記可動部に前記蓋部側に向けて延びる操作部が設けられ、
前記蓋部は、前記操作部を前記交差方向に移動可能な状態で前記ダクトの外側に逃がすためのスリットを備えており、
前記操作部を前記スリットに沿って移動させることにより、前記可動部が前記固定部に対して変位可能とされている請求項2に記載の乗物ダクト構造。
【請求項4】
前記スリットは、その延び方向に延びる2つの開口縁部に片持ち状に取り付けられた弾性を有する遮蔽片により塞がれている請求項3に記載の乗物ダクト構造。
【請求項5】
前記ダクトの内面に前記可動部の移動を案内する案内部が設けられている請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の乗物ダクト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、乗物ダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物室内に空気流を発生させる装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の空気流発生装置は、車両の天井部に配置された送風装置と、車両の床部に配置され、送風装置から吹き出された空気を吸引する排気装置とを備えている。このうち送風装置は、ハウジング、空気流入部、送風機、フィルタ、吹出部等を有しており、車室内から取り込まれて送風機から送風された空気は、フィルタによりろ過され、清浄化されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記構成の送風装置は、フィルタにより空気抵抗が大きくなり易く、例えば乗車直後の乗物室内温度が高い場合等、状況によっては、空気清浄機能を使用せずにより強い風力が得られるサーキュレータとして使用したいという要望もある。
【0005】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、乗物用の送風装置を空気清浄機としてもサーキュレータとしても使用可能とする乗物ダクト構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、乗物に設けられた送風装置の空気流路を形成するダクトの構造であって、前記ダクト内に配置され、前記ダクト内を流れる空気流をろ過可能なフィルタを備え、前記フィルタはプリーツ加工されており、前記空気流路を塞ぐ形で展開される展開状態と、前記空気流路を開放する形で折り畳まれる折り畳み状態との間で変位可能とされている。
【0007】
上記構成によれば、フィルタが空気流路を横切る展開状態とされた場合には、送風装置を、フィルタにより塵や埃を除去可能な空気清浄モードとすることができる。一方、フィルタが空気流路を開放する折り畳み状態とされた場合には、空気の圧力損失が生じ難くなるから、送風装置をより強い風力で送風することが可能なサーキュレータモードとすることができる。
【0008】
前記ダクトの壁面に前記フィルタを挿抜可能な開口が設けられ、前記ダクトは、前記フィルタが前記ダクト内に配置された状態において前記開口を塞ぐ蓋部を備え、前記蓋部は、前記ダクトの延び方向と交差する交差方向における一端側において前記蓋部の内面から前記ダクト内に立ち上がる固定部を備え、前記固定部と対向して配置され、前記交差方向に移動可能な可動部が設けられ、前記フィルタは、その折り畳み方向における一端側が前記固定部に固定され、他端側が前記可動部に固定されており、前記可動部を前記固定部に対して変位させることにより伸縮可能とされていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、ダクト内においてフィルタを伸縮させるための一実施形態が実現可能である。また、フィルタが蓋部に設けられた固定部と一体とされているから、フィルタ交換の際に蓋部とフィルタとを一括に扱うことが可能となり、フィルタ交換作業が容易である。
【0010】
前記可動部に前記蓋部側に向けて延びる操作部が設けられ、前記蓋部は、前記操作部を前記交差方向に移動可能な状態で前記ダクトの外側に逃がすためのスリットを備えており、前記操作部を前記スリットに沿って移動させることにより、前記可動部が前記固定部に対して変位可能とされていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、操作部を操作することにより、ダクトの外側からフィルタを伸縮させる一実施形態が可能となる。
【0012】
前記スリットは、その延び方向に延びる2つの開口縁部に片持ち状に取り付けられた弾性を有する遮蔽片により塞がれていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、蓋部にスリットが形成される場合でも、操作部をスリットに沿って移動可能としつつ、スリットを閉塞することができる。
【0014】
前記ダクトの内面に前記可動部の移動を案内する案内部が設けられていてもよい。上記構成によれば、ダクト内における可動壁の変位、すなわち、フィルタの伸縮が正規位置からずれることが抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に開示される技術によれば、乗物用の送風装置を空気清浄機としてもサーキュレータとしても使用可能とする乗物ダクト構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態の車両天井ダクト構造を備える車両の天井を車室内から視た斜視図
【
図9】フィルタを展開状態としたダクトの一部分解斜視図
【
図10】フィルタを展開状態としたダクトの一部分解平面図
【
図11】フィルタを折り畳み状態としたダクトの一部分解斜視図
【
図12】フィルタを折り畳み状態としたダクトの一部分解平面図
【
図14】他の実施形態のダクト構造の一部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に開示の乗物ダクト構造1を、車両の天井裏に設けた送風装置20のダクト30に適用した一実施形態を
図1から
図13によって説明する。以下の説明においては、
図2から
図4における左側を前方または上流とし、右側を後方または下流とする。また、
図3における上側を右、下側を左とし、上下方向を車両幅方向とする。さらに、
図4における上側を上方とし、下側を下方とする。
【0018】
本実施形態の送風装置20は、車両10の室内天井を構成する乗物用内装材であるルーフトリム12と車体を構成するボディパネル11との間に設置されている。送風装置20は、
図1および
図2に示すように、車室前方側の空気を吸入口16から吸い込んで、その空気を後方側に形成された送風口13から放出するものである。吸入口16は、ルーフトリム12に車室内側から取り付けられたカバー15に形成され、送風口13は、ルーフトリム12におけるカバー15の後方側に形成されている。カバー15は、車両後方から前方に向けて下方に傾斜するように配置されており、吸入口16はその前方部分において前方に向けて開口している(
図4参照)。
【0019】
送風装置20は、
図4に示すように、吸入口16から空気を吸い込むための送風ファン21と、送風ファン21が吸い込んだ空気を後方に送るダクト30とを備えている、また送風装置20は、ダクト30の内部に、送風ファン21が吸い込んだ空気をろ過するためのフィルタ51を備えている。これら送風ファン21およびフィルタ51は、ルーフトリム12に設けられたルーフ開口14に臨む位置に配置されている。ルーフ開口14は、車室内側から上述したカバー15により覆われている。
【0020】
送風ファン21は全体として扁平な略円柱型の本体部22を備えており、当該本体部22は、底面が上下方向を向くように設置されている。送風ファン21は、下方から吸い込んだ空気を後方に向けて送風する構成とされており、後方に向けて扁平な角筒状に突出する排出口23を備えている。
【0021】
送風ファン21の後方には、排出口23から排出された空気流を送風口13まで流通させるためのダクト30が設けられている。ダクト30は、上述したルーフ開口14に臨む部分に配置され、フィルタ51が収容される第1ダクト部31と、第1ダクト部31の後方において第1ダクト部31と連なって配置され、上述したルーフトリム12の上面において送風口13まで延びる第2ダクト部41と、を備えて構成されている。
【0022】
第1ダクト部31は、例えば
図4に示すように、ルーフ開口14をボディパネル11側(車室外側)から塞ぐようにルーフトリム12に対して取り付けられる底壁32と、底壁32の上方において底壁32と対向して配置される上壁34と、上壁34および底壁32を連結する2つの側壁35と、備えた断面長方形の筒型とされている。
【0023】
一方、第2ダクト部41は、ルーフ開口14の後方においてルーフトリム12の上面に沿う形で配されている(
図4参照)。第2ダクト部41は、断面略U字型の長尺なダクト形成部材42がルーフトリム12の上面に沿う形で固定されることで、形成されている。詳細には、ダクト形成部材42は、上述した第1ダクト部31の上壁34と連なって配置される第2上壁43と、第1ダクト部31の2つの側壁35と連なって配置される2つの第2側壁44と、を備える断面U字型とされており、ルーフトリム12を底壁として利用することで筒型の第2ダクト部41を形成している。なお、第2ダクト部41の後端は、ダクト形成部材42に設けられた後壁45により塞いだ状態とされる。上述したルーフトリム12の送風口13は、第2ダクト部41の後端付近に形成されている。
【0024】
第1ダクト部31には、送風ファン21から送り出された空気流をろ過可能なフィルタ51が設置されている。フィルタ51は、例えば、多孔質状や不織布状のものからなり、前後方向に互い違いに折れ曲がる縦型にプリーツ加工されることで、左右方向(車両幅方向)に伸縮可能とされている(
図6および
図7参照)。フィルタ51は、展開された状態において、その外周が第1ダクト部31の内面に全周にわたって当接可能な寸法の直方体状とされる。
【0025】
なお、フィルタ51は表面を帯電したものとし、ろ過される空気中の異物を静電気力によって効率よく捕捉可能とすること、つまり、いわゆる静電フィルタとすることができる。
【0026】
第1ダクト部31の底壁32には、フィルタ交換時にフィルタ51をダクト30から挿抜するためのダクト開口33が設けられている(
図5参照)。ダクト開口33は、ダクト30の幅方向(車両幅方向)における両端部まで延びる長方形状とされ(
図8参照)、車室内側(下方)から板状のダクト蓋60を内嵌することで塞がれるようになっている。
【0027】
ダクト蓋60は、ダクト開口33に内嵌された状態において、ダクト開口33の開口縁部に設けられた一対の係止爪37により下方から係止される(
図5参照)。ダクト蓋60は、当該ダクト蓋60がダクト開口33を塞いだ状態において、その上面がダクト30の内面と面一に配置されるように設定されている。
【0028】
ダクト蓋60には、上述したフィルタ51が一体に取り付けられており、フィルタ交換の際にダクト蓋60ごと交換可能なフィルタカートリッジ50を構成している。以下、ダクト蓋60に対するフィルタ51の取付構造について具体的に説明する。
【0029】
図6および
図7に示すように、ダクト蓋60には、その左側端部からダクト30の内側に向けて立ち上がる板状の固定壁(固定部の一例)61が設けられている。固定壁61は、ダクト蓋60がダクト開口33を塞いだ状態において、第1ダクト部31の左側の側壁35Lに重なるように配置される(
図10および
図12参照)。
【0030】
上述したフィルタ51の一端側(左側の端部)は、この固定壁61に固定されている。一方、フィルタ51の他端側(右側の端部)は、可動壁62に固定されている。
【0031】
可動壁(可動部の一例)62は板状をなし、その板面を固定壁61に対向させた姿勢で固定壁61に近づく方向、および固定壁61から離れる方向に変位可能とされている。言い換えると、ダクト蓋60(ダクト30)に対して左右方向(車両幅方向)に変位可能とされている。フィルタ51は、可動壁62が固定壁61に対して変位することにより、伸縮されるようになっている。可動壁62の下端には、下方に向けて延びる片状の操作部63が延設されている。
【0032】
一方ダクト蓋60には、その右側端部から左側端部に向けて左右方向に延びるスリット66が形成されている(
図6参照)。スリット66は、上述した可動壁62の操作部63をダクト蓋60の下方(車室内)に逃がして露出させるためのものであって、操作部63はこのスリット66に沿って左右方向にスライド移動可能とされている。すなわち、この操作部63と一体とされた可動壁62は、スリット66に沿う形で車両幅方向に変位可能とされている。換言すると、可動壁62は、固定壁61に近づく方向、および固定壁61から離れる方向に変位可能とされている。なおスリット66は、ダクト蓋60の右側の端部から、フィルタ51が最も縮んだ状態とされた場合のフィルタ51の右側端部に相当する位置まで形成されている。
【0033】
スリット66は、一対の遮蔽片67により塞がれている。遮蔽片67は例えばゴムのような弾性材料からなる帯板状の部材であって、スリット66の長手方向(左右方向)に延びる一対の開口縁部に片持ち状となるようにそれぞれ取り付けられている。遮蔽片67は、相手側の遮蔽片67に向けて延びてその自由端同士が突き合わされるか、あるいは、僅かに重なる幅寸法とされており、これら一対の遮蔽片67により、スリット66が閉塞可能とされている。上述した操作部63はこれら一対の遮蔽片67の間を押し開くようにスライド可能とされている。
【0034】
このように、フィルタ51は伸縮可能な状態でダクト蓋60に対して一体に取り付けられており、フィルタ交換の際にダクト蓋60ごと交換可能なフィルタカートリッジ50を構成している。
【0035】
第1ダクト部31の内面には、ダクト30内における可動壁62の変位、および、フィルタ51の伸縮が正規位置からずれることを防止するための、案内リブ(案内部の一例)36が設けられている。案内リブ36は、
図5および
図8に示すように、第1ダクト部31の底壁32および上壁34からそれぞれ2本ずつ、合計4本が、車両幅方向の全体にわたって延びる形でダクト30の内面から立ち上がるリブ状をなしている。可動壁62は、ダクト30内における車両前後方向の位置がこれら案内リブ36の間に保持される形で、左右方向に移動可能とされている。すなわちフィルタ51は、ダクト30内における車両前後方向の位置がこれら案内リブ36の間に保持される形で、左右方向に伸縮可能とされている。
【0036】
図9および
図10に示すように、可動壁62が第1ダクト部31内において最も右側に配置された状態(フィルタ51が展開された状態)において、可動壁62は、第1ダクト部31の右側の側壁35Rに重ねられるようになっている。フィルタ51はこの展開状態ではダクト30内において空気流路を横切る形で配され、その外周が第1ダクト部31の内面に全周にわたって当接するように設定されている。このようにフィルタ51が展開された状態の送風装置20は、空気清浄モードとされる。
【0037】
一方、
図11および
図12に示すように、可動壁62が第1ダクト部31内において最も左側に配置された状態(フィルタ51が折り畳まれた状態)では、空気流路が開放された状態となり、空気の圧力損失が減少する。このようにフィルタ51が折り畳まれた状態の送風装置20は、サーキュレータモードとされる。
【0038】
このように、フィルタ51は、その右側端部が可動壁62の移動に伴って左右方向に移動可能な形で、ダクト30内において車両幅方向に伸縮可能とされている。
【0039】
このような送風装置20は、操作部63を操作することにより、空気清浄モードとサーキュレータモードとを切り替え可能とされる。具体的には、操作部63が右端に配置された状態(
図13参照)においては、フィルタ51が空気流路を横切る状態に展開され、空気清浄モードとされる。一方、操作部63が左側に移動された状態(
図13の破線参照)においては、フィルタ51が折り畳まれて空気流路を開放した状態となるため、サーキュレータモードとされてより強い風力で送風することができる。
【0040】
本実施形態の送風装置20は上述した通りであって、次に、作用効果について説明する。本実施形態の送風装置20の空気流路を形成するダクト構造1は、ダクト30内に配置され、ダクト30内を流れる空気流をろ過可能なフィルタ51を備え、フィルタ51はプリーツ加工されており、空気流路を塞ぐ形で展開される展開状態と、空気流路を開放する形で折り畳まれる折り畳み状態との間で変位可能とされている。
【0041】
上記構成によれば、フィルタ51が空気流路を横切る展開状態とされた場合には、送風装置20を、フィルタ51により塵や埃を除去可能な空気清浄モードとすることができる。一方、フィルタ51が空気流路を開放する折り畳み状態とされた場合には、空気の圧力損失が生じ難くなるから、送風装置20をより強い風力で送風することが可能なサーキュレータモードとすることができる。
【0042】
また、ダクト30の底壁32にフィルタ51を挿抜可能なダクト開口33が設けられ、ダクト30は、フィルタ51がダクト30内に配置された状態においてダクト開口33を塞ぐダクト蓋60を備え、ダクト蓋60は、ダクト30の延び方向(前後方向)と交差する交差方向(左右方向)における左端においてダクト蓋60の内面からダクト30内に立ち上がる固定壁61を備え、フィルタ51は、その折り畳み方向における左端が固定壁61に固定され、右端が可動壁62に固定されており、可動壁62を固定壁61に対して変位させることにより伸縮可能とされている。
【0043】
上記構成によれば、ダクト30内においてフィルタ51を伸縮させることができる。また、フィルタ51がダクト蓋60に設けられた固定壁61と一体とされているから、フィルタ交換の際にダクト蓋60とフィルタ51とを一括に扱うことが可能となり、フィルタ交換作業が容易である。
【0044】
また、可動壁62にダクト蓋60側に向けて延びる操作部63が設けられ、ダクト蓋60は、操作部63を交差方向(左右方向)に移動可能な状態でダクト30の外側に逃がすためのスリット66を備えており、操作部63をスリット66に沿って移動させることにより、可動壁62が固定壁61に対して変位可能とされている。
【0045】
上記構成によれば、操作部63を操作することにより、ダクト30の外側からフィルタ51を伸縮させることができる。
【0046】
また、スリット66は、その延び方向に延びる2つの開口縁部に片持ち状に取り付けられた弾性を有する遮蔽片67により塞がれている。
【0047】
上記構成によれば、ダクト蓋60にスリット66が形成される場合でも、操作部63をスリット66に沿って移動可能としつつ、スリット66を閉塞することができる。
【0048】
また、ダクト30の内面に可動壁62の移動を案内する案内リブ36が設けられている。上記構成によれば、ダクト30内における可動壁62の変位、すなわち、フィルタ51の伸縮が正規位置からずれることが抑制される。
【0049】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0050】
(1)上記実施形態では、ダクト30の底壁32に、展開された状態のフィルタ51を挿抜可能なダクト開口33を設ける形態としたが、ダクト開口は、折り畳まれた状態のフィルタを挿抜可能な大きさとしてもよい。そのような場合には、ダクトの底壁に操作部を逃がすことが可能なスリットを設けることにより、フィルタを展開することが可能となる。
【0051】
(2)上記実施形態では、可動壁62から下方に真っ直ぐ延びる操作部63を設ける形態を示したが、例えば
図14に示すように、操作部163を、可動壁62の下端に対して車両前方方向に傾斜した形で延設してもよい。このような形態とした場合には、遮蔽片と操作部との境界部の延び方向が空気が流れる方向に対して傾くことにより、操作部と遮蔽片との間から空気が漏れ難くなる。
【0052】
(3)スリット66を塞ぐ方法は上記実施形態の遮蔽片67に限るものでなく、適宜変更することができる。
【0053】
(4)上記実施形態では、フィルタ51を手動(操作部63)により伸縮させる形態を示したが、フィルタは、スイッチ等で電気的あるいは機械的に伸縮させる形態とすることもできる。
【0054】
(5)上記実施形態では、ダクト30の内面に、可動壁62の変位を案内する案内リブ36を設ける形態を示したが、案内部の形態は上記実施形態に限るものでない。例えば、ダクトに案内溝を設け、可動壁に案内溝内を移動する案内突部を設ける形態とすることもできる。あるいは、案内部は省略することもできる。
【0055】
(6)上記実施形態では、フィルタ51に縦型のプリーツ加工が施され、フィルタが車両幅方向に伸縮する形態を示したが、フィルタに横型のプリーツ加工をし、フィルタを上下方向に伸縮させる形態とすることもできる。
【符号の説明】
【0056】
1:乗物ダクト構造、10:車両(乗物)、20:送風装置、21:送風ファン、30:ダクト、31:第1ダクト部(ダクト)、32:底壁(壁面)、33:ダクト開口(開口)、36:案内リブ(案内部)、50:フィルタカートリッジ、51:フィルタ、60:ダクト蓋(蓋部)、61:固定壁(固定部)、62、162:可動壁(可動部)、63、163:操作部、66:スリット、67:遮蔽片