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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154847
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】流体処理装置、点灯回路
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20230101AFI20241024BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20241024BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C02F1/32
H05H1/24
B01J19/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068999
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 孝治
(72)【発明者】
【氏名】浦上 英之
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】至極 稔
【テーマコード(参考)】
2G084
4D037
4G075
【Fターム(参考)】
2G084AA11
2G084AA19
2G084AA25
2G084CC08
2G084CC19
2G084DD12
2G084DD14
2G084DD22
2G084EE10
2G084EE15
2G084EE24
2G084FF39
2G084HH03
2G084HH21
2G084HH22
2G084HH23
2G084HH25
2G084HH28
2G084HH43
4D037AA02
4D037AA03
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
4G075AA13
4G075AA15
4G075AA61
4G075AA65
4G075BA05
4G075CA33
4G075DA02
4G075DA03
4G075DA05
4G075EB31
4G075EC06
4G075EC21
4G075FB06
(57)【要約】
【課題】流体の処理状態によらず、紫外光照射部を安定的に点灯させることができる流体処理装置、及び点灯回路を提供する。
【解決手段】直流電源と、一次側巻線と二次側巻線とを有するトランスと、スイッチング素子とを含み、スイッチング素子のON状態とOFF状態とが切り替わることによって、トランスの二次側巻線に起電力を発生させるように構成された点灯回路と、発光ガスが封入された発光管に配置された第一電極と、発光管と離間して配置された第二電極とを有し、第一電極と第二電極との間に処理対象の流体が流し込まれる空間が介在している、トランスの二次側巻線に接続される紫外光照射部と、流体の電気伝導率を検知する検知部と、検知部が検知した流体の電気伝導率、又は流体の電気伝導率に関連するパラメータに基づいて、スイッチング素子のON状態とOFF状態とを切り替える周波数の制御を行う制御部とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、一次側巻線と二次側巻線とを有するトランスと、少なくとも一つのスイッチング素子とを含み、前記スイッチング素子のON状態とOFF状態とが切り替わることによって、前記直流電源から前記トランスの前記一次側巻線への電流の供給と停止とを切り替えて、又は前記一次側巻線を流れる電流の方向を変化させて、前記トランスの前記二次側巻線に起電力を発生させるように構成された点灯回路と、
発光ガスが封入された発光管に配置された第一電極と、前記発光管と離間して配置された第二電極とを有し、前記第一電極と前記第二電極との間に処理対象の流体が流し込まれる空間が介在している、前記トランスの前記二次側巻線に接続される紫外光照射部と、
前記流体の電気伝導率を直接的又は間接的に検知する検知部と、
前記検知部が検知した前記流体の電気伝導率、又は前記流体の電気伝導率に関連するパラメータに基づいて、前記スイッチング素子のON状態とOFF状態とを切り替える周波数の制御を行う制御部とを備えることを特徴とする流体処理装置。
【請求項2】
前記点灯回路が、プッシュプル方式、フルブリッジ方式、又はハーフブリッジ方式のいずれかの回路であることを特徴とする請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項3】
前記点灯回路が、フライバック方式の回路であることを特徴とする請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記トランスの前記二次側巻線に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記流体の電気伝導率を直接検知するTOCモニタであることを特徴とする請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記トランスの前記一次側巻線に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の点灯回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体処理装置、及び流体処理装置に搭載される点灯回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度の水の製造は、半導体や精密機器の洗浄、医薬品製造、微量分析機器等において不可欠となっている。例えば、半導体装置の製造工程における洗浄処理では、高濃度の薬液や洗剤とともに、それを濯ぐための大量の純水(超純水)が用いられる。近年、半導体デバイスにおける回路パターンの微細化、高密度化、高集積化に伴い、純水の水質に対する要求が高まっている。洗浄工程等において使用される純水は、水質管理項目の一つである全有機炭素(TOC:Total Organic Carbon)の濃度を極めて低いレベルとすることが求められる。なぜなら、仮に、純水に有機物が多く含まれていると、その後の熱処理工程において当該有機物が炭化し、絶縁不良を引き起こすおそれがあるためである。
【0003】
純水の水質に対する要求が高まっていることを背景に、近年、純水中に含まれる微量の有機物を分解し除去する様々な方法が検討されてきている。そのような方法の代表的なものとして、水に対して紫外光を照射することで、流体に含まれる有機物の分解除去方法が存在する(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6432442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の装置は、電極間に処理対象の流体が流し込まれることで通電経路が形成されて点灯するように構成された紫外光照射部から、当該流体に対して紫外光を照射する流体処理装置である。
【0006】
ここで、本発明者は、流体処理装置の更なる改良について鋭意検討していたところ、従来の流体処理装置では、流体の処理過程において、徐々に紫外光照射部の点灯状態が不安定になる、又は紫外光照射部が消灯してしまう場合があることに気が付いた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、流体の処理状態によらず、紫外光照射部を安定的に点灯させることができる流体処理装置、及び点灯回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の流体処理装置は、
直流電源と、一次側巻線と二次側巻線とを有するトランスと、少なくとも一つのスイッチング素子とを含み、前記スイッチング素子のON状態とOFF状態とが切り替わることによって、前記直流電源から前記トランスの前記一次側巻線への電流の供給と停止とを切り替えて、又は前記一次側巻線を流れる電流の方向を変化させて、前記トランスの前記二次側巻線に起電力を発生させるように構成された点灯回路と、
発光ガスが封入された発光管に配置された第一電極と、前記発光管と離間して配置された第二電極とを有し、前記第一電極と前記第二電極との間に処理対象の流体が流し込まれる空間が介在している、前記トランスの前記二次側巻線に接続される紫外光照射部と、
前記流体の電気伝導率を直接的又は間接的に検知する検知部と、
前記検知部が検知した前記流体の電気伝導率、又は前記流体の電気伝導率に関連するパラメータに基づいて、前記スイッチング素子のON状態とOFF状態とを切り替える周波数の制御を行う制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
ここでの、「直接的に検知する」とは、例えば、電気伝導率を測定するための装置を用いて、処理対象の流体の電気伝導率を直接測定する場合を意図している。また、ここでの、「間接的に検知する」とは、例えば、トランスの一次側巻線、又は二次側巻線における所定のノード間の電圧、又は所定のノードを流れる電流、又は電力を測定することによって、処理対象の流体の電気伝導率の変化を間接的に導出する場合を意図している。
【0010】
上記構成の流体処理装置は、検知部からの信号に基づいて、スイッチング素子を切り替える周波数を制御する。具体的には、スイッチング素子のON時間、又は、OFF時間、又は、ON状態とOFF状態の周期を制御する。
【0011】
例えば、上記構成の流体処理装置は、検知部により流体の電気伝導率が高くなる場合(流体内の不純物量が多い場合)に、スイッチング素子のON時間をOFF時間に対して相対的に短く制御することや、ON状態とOFF状態とを切り替える周波数を低く制御することにより、流体の電気伝導率が変化した場合でも回路への負荷を低減するように制御することができる。
【0012】
また、別の例として、上記構成の流体処理装置は、検知部により流体の電気伝導率が高くなる場合(流体内の不純物量が多い場合)に、スイッチング素子のON時間をOFF時間に対して相対的に長く制御したり、ON状態とOFF状態とを切り替える周波数を高く制御することにより、流体内の不純物量が多くなった場合にランプ電流を増大させ、TOCの分解量を増やすよう制御することができる。
【0013】
上記流体処理装置は、
前記点灯回路が、プッシュプル方式、フルブリッジ方式、又はハーフブリッジ方式のいずれかの回路であっても構わない。
【0014】
紫外光照射部の点灯には、直流電源からトランスを介して紫外光照射部に電圧を印加する点灯方式が採用され得る。具体的な回路方式の例としては、フライバック方式やプッシュプル方式、ハーフブリッジ方式、フルブリッジ方式等がある。
【0015】
上述したように、流体処理装置は、処理実施時、すなわち、紫外光照射部の点灯時において、紫外光照射部と、電気回路を構成する配線等と比較すると電気伝率が低い流体とが直列に接続された通電経路が形成された状態となる。
【0016】
特に、上述した点灯回路の各方式から、相対的に大きな出力が必要とされる場合は、プッシュプル方式やハーフブリッジ方式、フルブリッジ方式が採用される。
【0017】
そこで、本発明者は、流体処理用の紫外光照射部に対し、従来の紫外光照射部(放電ランプ)において、一般的に適用されるプッシュプル方式やハーフブリッジ方式、フルブリッジ方式の点灯回路を適用した流体処理装置を構成することを検討していた。
【0018】
ところが、上記方式を採用した流体処理装置では、上述したように、流体の処理過程において、徐々に紫外光照射部が不安定な点灯状態となる、又は不点灯となってしまうという事象が発生する場合があった。
【0019】
本発明者は、鋭意研究により、当該事象が流体の処理過程において流体の電気伝導率が変化することに起因した事象であることを突き止めた。以下、その詳細について説明する。
【0020】
プッシュプル方式やハーフブリッジ方式、フルブリッジ方式の点灯回路は、スイッチング素子のON状態とOFF状態とを切り替えることによって、トランスの一次側巻線に生じる電流の方向を切り替えて、二次側巻線に起電力を生じさせる回路である。そして、これらの回路方式は、スイッチング素子を切り替える瞬間を除いて、常に閉回路が形成される回路構成である。
【0021】
流体は、処理が進行すると、不純物が分解除去されること等により、多くの場合、電気伝導率が変化する。また、流体中に含まれる不純物量が一定ではなく、電気伝導率が局所的に増減する場合もあり得る。一例ではあるが、水に紫外光を照射することによりTOCの分解除去を行う場合は、有機物の減少に伴って、当該水の電気伝導率は低下することになる。
【0022】
ここで、流体内の不純物量が多くなる場合を想定すると、流体の電気伝導率は高くなり、二次側巻線に接続された紫外線照射部に電流が過剰に流れるため、紫外光照射部が異常放電しやすくなる。さらに、点灯回路は、過負荷状態となり、異常発熱等の発生により回路を構成している素子や配線等において損傷が発生しすい。このように流体の電気伝導率の変化により、紫外光照射部の点灯状態が不安定になる、又は紫外光照射部が不点灯となる等の問題が生じてしまう。
【0023】
上述したような原因を突き止めた本発明者は、電極間に処理対象とする流体を介在させることによって点灯させる紫外光照射部の点灯回路について、流体の電気伝導率の変動に応じて、トランスの二次側巻線に生じる起電力を制御するという新たな着想をするに至った。
【0024】
トランスの一次側巻線には、検知部が検知した流体の電気伝導率に対応した電流が流れる。トランスの一次側巻線に流れる電流に応じて、二次側巻線に生じる起電力が変化する。このため、上記構成とすることで、流体の処理状態、すなわち、電気伝導率が変動しても、紫外光照射部の電極間には、紫外光照射部を点灯させるための電力が安定的に供給される。したがって、上記構成の流体処理装置は、流体の処理状態によらず、紫外光照射部において安定的に紫外光を発生させることができる。
【0025】
上記流体処理装置は、
前記点灯回路が、フライバック方式の回路であっても構わない。
【0026】
フライバック方式の点灯回路は、プッシュプル方式等とは異なり、スイッチング素子のON状態とOFF状態とが切り替わることで、トランスの一次側巻線が接続された回路が、開回路と閉回路とで切り変わる。つまり、紫外光照射部における放電が停止し、一次側巻線に起電力が生じる際には、スイッチング素子がOFF状態となっている。
【0027】
そして、紫外光照射部の停止後に一次側巻線に生じる起電力は、次にスイッチング素子がOFF状態からON状態に切り替えられる際において、回路素子での発熱や接地端子への電荷放出等によって、そのほとんどが消費されていることになる。このため、フライバック方式の点灯回路では、一次側巻線に生じる起電力が、二次側巻線に生じさせる起電力に影響を与え難い。
【0028】
したがって、上記構成とすることで、流体処理装置は、紫外光照射部に印加される電圧が、処理の進行により変化する流体の電気伝導率の変化に伴う影響をより受け難い。つまり、上記構成の流体処理装置は、流体の処理状態によらず、紫外光照射部をより安定的に点灯させることができる。
【0029】
上記流体処理装置において、
前記検知部は、前記トランスの前記二次側巻線に接続されていても構わない。
【0030】
上記流体処理装置において、
前記検知部は、前記流体の電気伝導率を直接検知するTOCモニタであっても構わない。
【0031】
検知部は、トランスの二次側巻線に接続されることで、流体を介した回路に直列、又は並列に接続されることとなる。このため、流体とは直接接続されていない一次側巻線側に接続される構成と比較すると、上記構成では、検知部が流体の電気伝導率をより正確に検出することができる。
【0032】
検出した電気伝導率に対するスイッチング素子の切替制御は、例えば、予め算出した流体の電気伝導率と、紫外光照射部の点灯に必要な電圧とに関連したデータテーブルに基づいて行われる。このような場合、検出された流体の電気伝導率と、実際の流体の電気伝導率とが、大きく乖離していると、紫外光照射部に印加される電圧も、理想値から大きく乖離してしまい、最悪の場合、不点灯となるおそれがある。
【0033】
つまり、上記構成によれば、スイッチング素子の切替制御が、実際の流体の電気伝導率に適した周波数に設定されるため、紫外光照射部が、確実に安定して点灯する。
【0034】
上記流体装置において、
前記検知部は、前記トランスの前記一次側巻線に接続されていても構わない。
【0035】
検知部がトランスの一次側巻線側に接続されている場合は、検知部が、流体を介した回路には直接接続されない。このため、トランスの二次側巻線に生じた起電力は、検知部によって一部が消費されることがない。
【0036】
つまり、上記構成によれば、トランスの二次側巻線に生じた起電力が、そのまま紫外光照射部の点灯に利用されるため、二次側巻線側におけるエネルギーロスが少なくなり、回路設計が比較的容易となる。
【0037】
本発明の点灯回路は、
上記流体処理装置が備える点灯回路である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、流体の処理状態によらず、紫外光照射部を安定的に点灯させることができる流体処理装置、及び点灯回路が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】流体処理装置の一実施形態の構成を模式的に示す図面である。
図2】一実施形態における点灯回路の構成を示す模式的な図面である。
図3】制御信号、二次側電圧及び二次側電流の時間変化の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
図4】一実施形態における点灯回路の構成を模式的に示す図面である。
図5】制御信号、二次側電圧の時間変化、検知部での検出電圧に応じた制御部の判定方法の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
図6】制御信号、一次側電流、二次側電圧及び二次側電流の時間変化の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の流体処理装置及び点灯回路について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の個数は、実際の個数と必ずしも一致していない。
【0041】
また、以下の説明においては、処理対象の流体が水であることを前提として説明するが、本発明に適用可能な処理対象の流体は、水に限られない。具体的には、紫外光が照射されることによって、含有する物質の分解除去が進行する液体、殺菌処理が進行する液体等は、いずれも本発明の流体処理装置における処理対象となり得る。
【0042】
[第一実施形態]
まず、流体処理装置1の第一実施形態の構成について説明する。図1は、流体処理装置1の第一実施形態の構成を模式的に示す図面である。図1に示すように、流体処理装置1は、紫外光照射部10と、点灯回路20とを備える。そして、紫外光照射部10は、発光管11と、貯留部12と、第一電極13aとを備える。
【0043】
発光管11は、図1に示すように、内側の放電空間11a内には、棒状の第一電極13aが配置されている。そして、第一電極13aは、発光管11の一端部側に形成されたピンチシール部14を介して、点灯回路20の第一電極端子a1に接続されている。
【0044】
発光管11は、石英ガラスからなる管体であり、内側の放電空間11a内に、キセノン(Xe)が発光ガスとして封入されている。なお、発光管11の内側の放電空間11a内に封入される発光ガスは、実施する処理に応じて任意に選択される。上記以外の具体的な例としては、キセノン(Xe)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス等の18族元素を含むガス、又はフッ素(F)ガス、塩素(Cl)ガス、臭素(Br)ガス等の17族元素と、前述した18族元素とを含むガスが選択される。
【0045】
また、発光管11の材料は、処理対象となる液体に対して照射したい紫外光の波長帯域に応じて適宜選択される。
【0046】
貯留部12は、処理対象である水が流れ込み、処理中においては、弁(15a,15b)が閉じられることによって、内側の空間A1が水で満たされる容器である。なお、貯留部12は、側壁部が導電性を示す金属で構成された容器であり、図1に示すように、当該側壁部が点灯回路20の第二電極端子a2に接続されるとともに、電気的に接地されている。つまり、第一実施形態における貯留部12は、処理対象の水を空間A1内に貯留する容器であるとともに、第二電極13bとしての機能を兼ねている。
【0047】
紫外光照射部10は、貯留部12の空間A1内が処理対象の水で満たされた状態で、点灯回路20から電極(13a,13b)に対して点灯に必要な電圧の印加が開始されると、放電空間11a、発光管11の管壁、空間A1を介して電圧が印加される。これにより、電極(13a,13b)間に配置されている発光管11の放電空間11aにおいて放電が発生する。この放電は、誘電体材料で構成された発光管11と、インピーダンスを有する液体を介して、放電空間11a内に電圧が印加されることによって発生する誘電体バリア放電である。そして、発光管11内で放電が発生することで、発光管11の放電空間11a内において紫外光が発生し、空間A1内に貯留されている水に対して当該紫外光が照射される。
【0048】
第一実施形態においては、処理対象である水に対して紫外光を照射する際は、弁(15a,15b)を閉じて、静止状態での処理が実施される構成で説明したが、流体処理装置1は、弁(15a,15b)を備えず、常時流れ込む水に対して、紫外光を照射するように構成されていても構わない。
【0049】
例えば、水が流れ込む流入口と,処理済みの水を排出する排水口とをパイプやホース等で接続し、水を循環させながら処理を進行させる構成を採用しても構わない。当該構成によれば、貯留部12内には一度に収容しきれない量の水を、まとめて処理することができる。
【0050】
なお、本発明に適用可能な発光管11は、図1の実施形態に限られるものではない。例えば、第一電極13aは、発光管11の放電空間11aの内側に配置されているが、放電空間11aの外側に配置されていても構わない。また、発光管11の放電空間11aに関しては、第一電極13aと、第二電極13bとの間に配置される態様において、種々の形態を採用することができる。なお、第一電極13aと、発光管11と離間して配置される第二電極13bとは、所定のインピーダンスを有する液体が発光管11と第二電極13bとの間に介在することによって、液体を介して、放電空間11a内に電圧を印加する。
【0051】
次に、点灯回路20の詳細について説明する。図2は、第一実施形態における点灯回路20の構成を示す模式的な図面である。点灯回路20は、プッシュプル方式と称される回路構成の一例であって、図2に示すように、直流電源21と、二つのスイッチング素子(22a,22b)と、検知部26と、トランス30とを備える。
【0052】
トランス30は、一次側巻線L1と二次側巻線L2を備える。トランス30の一次側巻線L1が備える端子のうち、一端がスイッチング素子22aに接続され、他端がスイッチング素子22bに接続されている。また、一次側巻線L1の中間ノードL1cが直流電源21の正極側端子に接続されている。
【0053】
なお、以下の説明においては、説明の便宜上、図2に示すように、一次側巻線L1が、中間ノードL1cから見てスイッチング素子22a側である巻線L1aと、中間ノードL1cから見てスイッチング素子22b側である巻線L1bとに区別される。ただし、一次側巻線L1は、二つの巻線(L1a,L1b)で構成されている必要はなく、例えば、一つの巻線で構成されて、巻回部の中間点を中間ノードL1cとしても構わない。
【0054】
第一実施形態のスイッチング素子(22a,22b)は、電界効果トランジスタ(FET)で構成されている。
【0055】
なお、スイッチング素子(22a,22b)は、電界効果トランジスタ(FET)以外のスイッチング素子が採用されても構わない。
【0056】
直流電源21は、例えば、不図示の商用電源をAC/DC変換するAC/DCコンバータによって構成されるものとしても構わない。
【0057】
第一実施形態の点灯回路20は、スイッチング素子(22a,22b)に対するON/OFF制御を行うための制御部24を備える。制御部24は、スイッチング素子22aに対して制御信号G1(t)、スイッチング素子22bに対して制御信号G2(t)を出力できるものであればよい。
【0058】
第一実施形態における検知部26は、二次側巻線L2の低圧側に流れる電流を検知するものである。具体的には、検知部26内に設けられた抵抗体を流れる電流を、電圧値に変換して検知することができる。そして、検知部26は、測定した電流値を含む検知信号D1を、制御部24に対して出力する。
【0059】
ここで,一次側巻線L1、又は二次側巻線L2に流れる電流値は、電極間(13a、13b)を通流する液体の電気伝導率に応じて変化する。液体は、不純物濃度が高くなることで電気伝導率が高くなる。これにより、一次側巻線L1、又は二次側巻線L2に流れる電流が増加する。そのため、検知部26で一次側巻線L1、又は二次側巻線L2に流れる電流値を検知することで、間接的に液体の電気伝導率の変化を検知することができる。なお、一次側巻線L1,又は二次側巻線L2に流れる電流値は、液体の電気伝導率に関連するパラメータである。
【0060】
次に、点灯回路20の動作について説明する。図3は、制御信号(G1(t),G2(t))及び二次側電圧V2の時間変化の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
【0061】
図3の制御信号G1(t)のグラフは、Highレベルが、スイッチング素子22aをON状態に制御していることを示し、Lowレベルが、スイッチング素子22aをOFF状態に制御していることを示している。図3の制御信号G2(t)のグラフは、スイッチング素子22bに対する同様の制御を示している。
【0062】
図3に示されている二次側電圧V2は、図2の第二電極端子a2の電位に対する、第一電極端子a1の電位に対応する。なお、第一実施形態においては、第二電極端子a2が接地されている。
【0063】
以下の説明において参照される図面に図示された電圧や電流の変動を示すグラフは、図3の二次側電圧V2のグラフと同様に、本発明の主たる動作の説明に影響しないオフセットや、スイッチング動作によるスパイクノイズ等は表されておらず、理想的な波形の一例が模式的に表されている。また、二次側電圧V2が所定の電圧(第一実施形態では0V)に対して+側に振れるように構成するか、-側に振れるように構成するかは、紫外光照射部10の仕様や点灯回路20の構成等に応じて適宜任意に設定して構わない。
【0064】
制御部24は、貯留部12が処理対象の水で満たされると、紫外光照射部10の発光管11内で紫外光を発生させるための動作を開始する。
【0065】
制御部24は、制御信号G1(t)をLowレベルからHighレベルに切り替えて、スイッチング素子22をOFF状態からON状態に切り替える。そして、トランス30の一次側巻線L1の巻線L1a側に一次側電流I1aが流れる。
【0066】
その後、制御部24は、時刻t1から所定の時間が経過した時刻t2において、制御信号G1(t)の出力をHighレベルからLowレベルに切り替える。これにより、スイッチング素子22aが、ON状態からOFF状態に切り替わり、一次側電流I1aが停止する。
【0067】
次に、制御部24は、時刻t3において、制御信号G2(t)の出力をLowレベルからHighレベルに切り替える。そして、トランス30の一次側巻線L1の巻線L1b側に一次側電流I1bが流れる。
【0068】
その後、制御部24は、時刻t3から所定の時間が経過した時刻t4において、制御信号G2(t)の出力をHighレベルからLowレベルに切り替える。これにより、スイッチング素子22bが、ON状態からOFF状態に切り替わり、一次側電流I1bが停止する。以降、制御部24は、上述した制御を繰り返す。
【0069】
ここで、制御部24は、図3に示すように、検知部26が測定した二次側電流I2の電流値に基づいて液体の電気伝導率を導出し、導出した電気伝導率に応じて、上述した制御を繰り返す周波数を調整する。具体的には、時刻t5において、検知部26が流体の電気伝導率が高くなったことを検知すると、制御部24は、流体の電気伝導率の増加に伴って、制御信号(G1(t),G2(t))を切り替える周波数を低下させる制御を実行する。
【0070】
当該制御により、紫外光照射部10は、液体の電気伝導率の変化によらず、点灯に適した電力が継続的に供給される。
【0071】
[検証実験]
ここで、紫外光照射部10に供給される電力を制御する方法としては、スイッチング素子(22a,22b)の切替制御の周波数を変更する方法とは別に、直流電源21の出力で電圧を変更する方法が考えられる。そこで、これらの方法のうちのいずれの方法が、流体処理装置1として紫外光照射部10に供給される電力の制御に適した方法であるかを確認する検証実験を実施したので、その詳細について説明する。
【0072】
(検証条件)
基準は、処理対象の液体を純水とした場合における、直流電源21の消費電力とした。これは、基本的に、回路の動作制御がトランス30の一次側巻線L1側において行われることが想定されることによる。
【0073】
処理対象の液体を水道水に変更した場合において、直流電源21の出力電圧を変更することによる調整と、スイッチング素子(22a,22b)の切替制御の周波数を変更することによる調整とで、どちらが容易、かつ、より精度よく上記基準に近づけられるのかを、点灯回路20の各ノードの電圧値、電流値をモニタしつつ比較した。
【0074】
具体的な手順は、以下の通りである。まず、処理対象の液体を純水として、動作開始直後における、直流電源21の出力電圧(V)、消費電力(W)、スイッチング素子(22a,22b)の切替制御の周波数(Hz)、電極(13a,13b)間に印加される電圧(Vp-p,Vrms)、及び電極(13a,13b)間に流れる電流(mArms)が測定される(基準1)。なお、ここでの純水は、TOC濃度が500ppb以下(比抵抗値が0.2MΩ・cm以上)程度の水とした。
【0075】
次に、処理対象の液体を純水から水道水に変更し、動作開始直後における、上記各パラメータが測定される(基準2)。
【0076】
その後、直流電源21の出力電圧(V)を変更すること(比較例)、又はスイッチング素子(22a,22b)の切替制御の周波数を変更すること(実施例)により、処理対象の液体が純水であった場合における、直流電源21の消費電力を同等とする調整を行った。そして、これらの調整が、電極(13a,13b)間に印加される電圧(Vp-p,Vrms)、及び電極(13a,13b)間に流れる電流(mArms)に与える影響を確認した。
【0077】
(結果)
結果は、下記表1のようになった。
【0078】
【表1】
【0079】
何らの制御もしない場合は、紫外光照射部10に供給される電力が大幅に変動してしまう。このような変動は、点灯回路20に対する大きな負荷を生じさせることになるため、点灯回路20を構成する回路素子等が損傷するといった問題を引き起こす可能性がある。
【0080】
上記結果によれば、基準2の状態から、直流電源21の消費電力を基準1の値に近づけるように調整した場合、実施例は、比較例よりも、電極(13a,13b)間の電圧及び電流が、基準1とより近い値となっている。すなわち、直流電源21の出力電圧を調整することによる制御よりも、スイッチング素子(22a,22b)の切替制御の周波数を調整することによる制御の方が、紫外光照射部10に対して基準1に近い電力供給ができている。
【0081】
つまり、直流電源21の出力電圧を変更する方法に比べて、スイッチング素子(22a,22b)の周波数を制御する方法は、液体の電気伝導率が変化する前後において、紫外光照射部10の電極(13a,13b)に印加される電圧の変動や、供給される電力の変動が小さいことが確認される。
【0082】
以上より、上記構成とすることで、液体の処理状態、すなわち、液体の電気伝導率が変動しても、紫外光照射部10の電極(13a,13b)間には、紫外光を発生させるための電力が安定的に供給される。したがって、点灯回路20における負荷が低減される。また、上記構成の流体処理装置1は、液体の処理状態によらず、紫外光照射部10において安定的に紫外光を発生させることができる。
【0083】
なお、第一実施形態における紫外光照射部10は、側壁が金属製の貯留部12を備えており、貯留部12自体が第二電極13bとしての機能を兼ねる構成となっているが、第二電極13bは、貯留部12とは別体として設けられていても構わない。例えば、貯留部12の外壁面を誘電体で構成し、当該外壁面上に第二電極13bを設けてもよく、金属製の弁(15a,15b)を採用し、弁(15a,15b)のうちの少なくとも一方が第二電極13bとしての機能を兼ねるように構成しても構わない。
【0084】
また、第一実施形態においては、第二電極13bが接地されているが、紫外光照射部10における電気的な安定性等に特段の問題が生じない場合は、第二電極13bは接地されていなくても構わない。
【0085】
さらに、第一実施形態においては、点灯回路20をプッシュプル方式の回路構成としたが、点灯回路20は、プッシュプル方式と同様に、一次側巻線L1を流れる一次側電流I1の方向を変化させて、二次側巻線L2に起電力を生じさせる、ハーフブリッジ方式やフルブリッジ方式とすることができる。
【0086】
[第二実施形態]
本発明の流体処理装置1の第二実施形態の構成につき、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0087】
図4は、第二実施形態における点灯回路20の構成を示す模式的な図面である。点灯回路20は、フライバック方式と称される回路構成の一例であって、図4に示すように、直流電源21と、一つのスイッチング素子22と、制御部24と、検知部26と、トランス30とを備える。
【0088】
トランス30は、一次側巻線L1と二次側巻線L2を備える。トランス30の一次側巻線L1が備える端子のうち、第一端子b1は直流電源21の正極側端子に接続され、第二端子b2はスイッチング素子22を介して直流電源21の負極側端子に接続されている。
【0089】
第二実施形態のスイッチング素子22は、電界効果トランジスタ(FET)で構成されており、アノードが直流電源21の負極側端子、カソードがトランス30の一次側巻線L1に接続された寄生ダイオード23が形成されている。第二実施形態では、この寄生ダイオード23が回生回路として機能する。
【0090】
なお、スイッチング素子22は、電界効果トランジスタ(FET)以外の素子が採用されても構わない。また、スイッチング素子22は、寄生ダイオード23を備えないIGBTやリレー素子等を採用し、ダイオード素子単体をスイッチング素子22と並列に接続することで回生回路を構成しても構わない。
【0091】
第二実施形態の検知部26は、図4に示すように、スイッチング素子22と直列に接続された抵抗体R1を備え、スイッチング素子22に流れる一次側電流I1が流れることによって抵抗体R1の端子間に生じる電圧値を含む検知信号D1出力するものである。ただし、検知部26の構成は、当該構成に限られない。例えば、検知部26は、シャント抵抗器を備え、分流させた電流値を計測することによって、一次側電流I1の電流値を検知するように構成されていても構わない。
【0092】
また、一次側巻線L1側の回路に流れる回生電流が、検知部26で消費されないよう、検知部26は、抵抗体R1を備えるとともに、アノード端子が直流電源21の負極端子側に接続され、カソード端子が直流電源21の正極端子側に接続されたダイオード素子26aを備えていても構わない。
【0093】
これにより、液体の電気伝導率が大きく変化した場合において、電気伝導率の変動を検知部26が検知し、検知信号D1が制御部24へと出力され、検知信号D1に含まれる情報に基づいて制御部24がスイッチング素子22のON/OFF状態を制御する。つまり、液体の電気伝導率が激しく変動する場合において、一次側巻線L1側の回路への負荷を最小限に抑えることができる。したがって、当該構成の流体処理装置1は、他の構成と比較して、処理対象とする液体の電気伝導率に対する許容範囲が広くなる。
【0094】
次に、第二実施形態における動作について説明する。図5は、制御信号G(t)、二次側電圧V2の時間変化、検知部26での検出電圧に応じた制御部24の判定方法の一例を模式的に示すタイミングチャートである。図5の制御信号G(t)のグラフは、Highレベルが、スイッチング素子22をON状態に制御していることを示し、Lowレベルが、スイッチング素子22をOFF状態に制御していることを示している。
【0095】
図5に示されている二次側電圧V2は、図4の第二電極端子a2の電位に対する、第一電極端子a1の電位に対応する。なお、第二実施形態においては、第二電極端子a2が接地されている。
【0096】
制御部24は、貯留部12が処理対象の水で満たされると、紫外光照射部10の発光管11内で紫外光を発生させるための動作を開始する。
【0097】
制御部24は、制御信号G(t)をLowレベルからHighレベルに切り替えて、スイッチング素子22をOFF状態からON状態に切り替える。
【0098】
スイッチング素子22がOFF状態からON状態に切り替わった後は、徐々にトランス30の一次側巻線L1に流れる一次側電流I1が増加する。
【0099】
制御部24は、所定の時間が経過すると、制御信号G(t)の出力をHighレベルからLowレベルに切り替える。これにより、スイッチング素子22は、ON状態からOFF状態に切り替わる。
【0100】
スイッチング素子22がON状態からOFF状態に切り替わると、一次側電流I1が流れなくなる。そして、一次側電流I1の急峻な変動に応じて、二次側巻線L2に起電力が生じ、紫外光照射部10に電力が供給される。
【0101】
この時、トランス30の一次側巻線L1には、紫外光照射部10で消費されなかったエネルギーによって起電力が発生し、この起電力に伴う回生電流が発生する。第二実施形態では、回生電流は、スイッチング素子22が備える寄生ダイオード23によって、直流電源21の負極端子側から正極端子側へと流れる。その後、制御部24は、再びスイッチング素子22に出力する制御信号G(t)をLowレベルからHighレベルに切り替えて、スイッチング素子22をOFF状態からON状態へと切り替える。以降、制御部24は、上述した動作を繰り返す。
【0102】
一次側巻線L1側の回路に接続された検知部26は、一次側電流I1が検知部26に流れる際の電圧を検出し、検知信号D1を制御部24へ伝達する。なお、図4において図示されてはいないが、制御部24は、検知部26から出力された検知電圧(Vcp=R1×I1)と、所定の基準電圧とを比較し、比較結果に対応する出力信号を出力するコンパレータが搭載されている。ただし、当該コンパレータは、制御部24に搭載されている必要はなく、必要な回路部品が組み合されて構成されていても構わない。
【0103】
検知部26によってトランス30の一次側巻線L1側の回路における電流値や電力値を検知することにより、一次側電流I1と抵抗体R1の抵抗値との積の値、すなわち、抵抗体R1の端子間の電圧値が、所定の基準電圧に達するタイミングで、制御部24が通常動作を行う第一制御モードC1から、電力超過抑制を行う第二制御モードC2に移行する。ここで、本実施形態における第二制御モードは、図5に示すように、第一制御モードにおけるスイッチング素子22のON状態とOFF状態とを繰り返す周期よりも長い期間にわたって実行されるが、第二制御モードを実行する時間は、任意に設定して構わない。
【0104】
このように第一制御モードC1と第二制御モードC2とが切り替わることで、液体の電気伝導率が激しく変動した場合でも電力値が所定の基準値以下となるように制御される。なお、制御部24は、上記以外にも、トランス30の一次側巻線L1側の回路における電力値を制御する種々の手段が採用できる。
【0105】
第二制御モードC2は、周期的に変動する比較電圧Vtよりも検出電圧Vcpが低くなる期間において、スイッチング素子22の制御信号G(t)をOFF状態に維持する。これにより、一次側巻線L1側の回路における電力値が、基準値以下に制御される。これにより、液体の電気伝導率が変動した場合でも、一次側巻線L1側の回路への負荷を確実に低減される。なお、図5の態様に限らず、比較電圧Vtよりも検出電圧Vcpが高くなる期間において第二制御モードを実行し、スイッチング素子の制御信号G(t)をOFF状態に維持するよう制御しても構わない。この場合に用いられる比較電圧Vtは、図5に示す波形に対して逆位相の波形となる。
【0106】
以上より、上記構成とすることで、流体処理装置1は、紫外光照射部10に印加される電圧が、処理の進行により変化する処理対象である水の電気伝導率の変化にほとんど影響されない。つまり、上記構成の流体処理装置1は、処理対象の液体の処理状態によらず、紫外光照射部10を安定的に点灯させることができる。
【0107】
なお、共振周波数で動作させるプッシュプル回路を用いる場合は、点灯回路20内に複数の容量の異なる共振コンデンサを設置し、動作時に利用する共振コンデンサを、検知部26からのデータ信号に応じて切り替えることで、紫外光照射部10の動作周波数を変更することもできる。このような制御は、点灯回路20における負荷を低減させることができる。
【0108】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0109】
〈1〉 流体処理装置1が備える検知部26は、直接的に流体の電気伝導率を計測する機器を備えていてもよい。例えば、紫外光を照射した時の水の導電率と、紫外光を照射していない時の水の導電率を比較測定し、水の純度を測定するのTOCモニタであっても構わない。検知部26としてTOCモニタを用いることは、処理対象の水の電気伝導率を間接的に導出できるとともに、水の処理がどの程度進行しているのかをモニタリングすることを可能にする。
【0110】
〈2〉 図6は、制御信号G(t)、一次側電流I1、二次側電圧V2及び二次側電流I2の時間変化の一例を模式的に示すタイミングチャートであり、一次側巻線L1を流れる回生電流がゼロ値に達した時点から、所定のOFF保持時間の経過後に、スイッチング素子22をOFF状態からON状態に遷移させるよう制御部24を動作させた場合を示す。
【0111】
本実施形態では、スイッチング素子22のOFF状態を保持する時間が、検知部26からの検知信号D1に基づいて可変するように、制御部24からの制御信号G(t)が設定される。これにより、一次側巻線L1側の回路の電力値が基準値以下に制御されるため、検知部26からの検知信号D1に応じた一次側巻線L1側の回路の電力が制御される。これにより、液体の電気伝導率が変動した場合において、一次側巻線L1側の回路への負荷を確実に低減することができる。
【0112】
〈2〉 上述した流体処理装置1及び点灯回路20が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0113】
1 : 流体処理装置
10 : 紫外光照射部
11 : 発光管
11a : 空間
12 : 貯留部
13a : 第一電極
13b : 第二電極
14 : ピンチシール部
20 : 点灯回路
21 : 直流電源
22 : スイッチング素子
23 : 寄生ダイオード
24 : 制御部
25 : 平滑コンデンサ
26 : 検知部
26a : ダイオード素子
30 : トランス
40 : 容量制御回路
41 : 抵抗制御回路
A1 : 空間
L1 : 一次側巻線
L2 : 二次側巻線
a1 : 第一電極端子
a2 : 第二電極端子
b1 : 第一端子
b2 : 第二端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6