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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154856
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/00 20060101AFI20241024BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20241024BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20241024BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01F27/00 R
H01F17/00 D
H01F17/04 F
H01F27/32 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069012
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敏之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直明
(72)【発明者】
【氏名】横山 健
(72)【発明者】
【氏名】奥村 武史
(72)【発明者】
【氏名】西川 朋永
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E044CA08
5E070AA01
5E070AB08
5E070BB03
5E070CB13
5E070DA13
(57)【要約】
【課題】複数のコイルが埋め込まれた構造を有する電子部品において、コイル間における絶縁性を高める。
【解決手段】コイル部品100は、磁性材料を含む素体10と、絶縁樹脂層17を介して素体に埋め込まれ、Z方向を軸方向とし、X方向に配列されたコイルC1,C2とを備える。コイルC1は、Z方向における両端部側に位置し、コイルC1の一端及び他端を構成するコイルパターン31,71を含む。コイルC2は、Z方向における両端部側に位置し、コイルC2の一端及び他端を構成するコイルパターン52,91を含む。コイルパターン52と素体10のZ方向における距離T2は、コイルパターン31と素体10のZ方向における距離T1よりも大きい。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料を含む素体と、
絶縁樹脂層を介して前記素体に埋め込まれ、第1の方向を軸方向とし、前記第1の方向と直交する第2の方向に配列された第1及び第2のコイルと、
前記素体から露出し、前記第1のコイルの一端及び他端にそれぞれ接続された第1及び第2の端子電極と、
前記素体から露出し、前記第2のコイルの一端及び他端にそれぞれ接続された第3及び第4の端子電極と、
を備え、
前記第1及び第2のコイルは、前記第1の方向に積層された複数のコイルパターンを含み、
前記第1のコイルを構成する前記複数のコイルパターンは、前記第1の方向における一方の端部側に位置し、前記第1のコイルの前記一端を構成する第1のコイルパターンと、前記第1の方向における他方の端部側に位置し、前記第1のコイルの前記他端を構成する第2のコイルパターンとを含み、
前記第2のコイルを構成する前記複数のコイルパターンは、前記第1の方向における前記一方の端部側に位置し、前記第2のコイルの前記一端を構成する第3のコイルパターンと、前記第1の方向における前記他方の端部側に位置し、前記第2のコイルの前記他端を構成する第4のコイルパターンとを含み、
前記第3のコイルパターンと前記第1の方向における前記一方側に位置する前記素体の前記第1の方向における距離は、前記第1のコイルパターンと前記第1の方向における前記一方側に位置する前記素体の前記第1の方向における距離よりも大きい、
電子部品。
【請求項2】
前記第2のコイルパターンと前記第1の方向における前記他方側に位置する前記素体の前記第1の方向における距離は、前記第4のコイルパターンと前記第1の方向における前記他方側に位置する前記素体の前記第1の方向における距離よりも大きい、
請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記素体は、前記第1の方向に積層された複数の導体層を含み、
前記第1のコイルを構成する前記複数のコイルパターンと、前記第2のコイルを構成する前記複数のコイルパターンとは、それぞれ当該複数の導体層に形成され、
前記第1のコイルを構成する前記複数のコイルパターンは、前記第1のコイルパターンと前記第1の方向において隣接する第5のコイルパターンをさらに含み、
前記第2のコイルを構成する前記複数のコイルパターンは、前記第4のコイルパターンと前記第1の方向において隣接する第6のコイルパターンをさらに含み、
前記第3のコイルパターンと前記第5のコイルパターンは、前記複数の導体層の内の同じ導体層に位置し、
前記第2のコイルパターンと前記第6のコイルパターンは、前記複数の導体層の内の同じ導体層に位置する、
請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第3のコイルパターンと前記第1の方向における前記一方側に隣接し、前記第2のコイルから絶縁された第1のダミーコイルパターンと、
前記第2のコイルパターンと前記第1の方向における前記他方側に隣接し、前記第1のコイルから絶縁された第2のダミーコイルパターンと、
をさらに備え、
前記第1のダミーコイルパターンは、前記第1のコイルパターンと同じ導体層に位置し、
前記第2のダミーコイルパターンは、前記第4のコイルパターンと同じ導体層に位置する、
請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1のコイルと前記第2のコイルが互いに絶縁されている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項6】
磁性材料を含む素体と、
絶縁樹脂を介して前記素体に埋め込まれ、第1の方向に積層された複数の導体層と、
第1の方向を軸方向とし、前記複数の導体層に形成された複数のコイルパターンを含む第1のコイルと、
第1の方向を軸方向とし、前記複数の導体層に形成された複数のコイルパターンを含む第2のコイルと、を備え、
前記第1のコイルと、前記第2のコイルとは、前記第1の方向と直交する第2の方向に配列され、
前記第1のコイルを構成する前記複数のコイルパターンは、前記第1の方向における一方の端部側に位置し、前記第1のコイルの前記一端を構成する第1のコイルパターンと、前記第1の方向における他方の端部側に位置し、前記第1のコイルの前記他端を構成する第2のコイルパターンとを含み、
前記第2のコイルを構成する前記複数のコイルパターンは、前記第1の方向における前記一方の端部側に位置し、前記第2のコイルの前記一端を構成する第3のコイルパターンと、前記第1の方向における前記他方の端部側に位置し、前記第2のコイルの前記他端を構成する第4のコイルパターンとを含み、
前記第3のコイルパターンと、前記第1のコイルパターンとは、前記複数の導体層のうち、異なる導体層に形成されている、
電子部品。
【請求項7】
前記第2のコイルパターンと、前記第4のコイルパターンとは、前記複数の導体層のうち、異なる導体層に形成されている、
請求項6に記載の電子部品。
【請求項8】
前記第1の方向における前記一方の端部側で、前記第3のコイルパターンと隣接し、前記第2のコイルから絶縁された第1のダミーコイルパターンと、
前記第1の方向における前記他方の端部側で、前記第2のコイルパターンと前記第1の方向に隣接し、前記第1のコイルから絶縁された第2のダミーコイルパターンと、
をさらに備え、
前記第1のダミーコイルパターンは、前記第1のコイルパターンと同じ導体層に位置し、
前記第2のダミーコイルパターンは、前記第4のコイルパターンと同じ導体層に位置する、
請求項7に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は複数のコイルが埋め込まれた構造を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁性材料を含む素体に複数のコイルが埋め込まれた構造を有するコイル部品が開示されている。素体に埋め込まれた複数のコイルは、コイル軸と直交する方向に配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-199766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
素体の内部に複数のコイルが埋め込まれたアレイ品においては、コイル間における絶縁性が高いことが望まれる。
【0005】
本開示においては、複数のコイルが埋め込まれた構造を有する電子部品において、コイル間における絶縁性を改善可能な技術が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面による電子部品は、磁性材料を含む素体と、絶縁樹脂層を介して素体に埋め込まれ、第1の方向を軸方向とし、第1の方向と直交する第2の方向に配列された第1及び第2のコイルと、素体から露出し、第1のコイルの一端及び他端にそれぞれ接続された第1及び第2の端子電極と、素体から露出し、第2のコイルの一端及び他端にそれぞれ接続された第3及び第4の端子電極とを備え、第1及び第2のコイルは、第1の方向に積層された複数のコイルパターンを含み、第1のコイルを構成する複数のコイルパターンは、第1の方向における一方の端部側に位置し、第1のコイルの一端を構成する第1のコイルパターンと、第1の方向における他方の端部側に位置し、第1のコイルの他端を構成する第2のコイルパターンとを含み、第2のコイルを構成する複数のコイルパターンは、第1の方向における一方の端部側に位置し、第2のコイルの一端を構成する第3のコイルパターンと、第1の方向における他方の端部側に位置し、第2のコイルの他端を構成する第4のコイルパターンとを含み、第3のコイルパターンと第1の方向における一方側に位置する素体の第1の方向における距離は、第1のコイルパターンと第1の方向における一方側に位置する素体の第1の方向における距離よりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数のコイルが埋め込まれた構造を有する電子部品において、コイル間における絶縁性を改善する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示に係る技術の一実施形態によるコイル部品100の構造を説明するための略透視斜視図である。
図2図2は、コイル部品100の等価回路図である。
図3図3は、導体層L1に形成された導体パターンの形状を示す略平面図である。
図4図4は、導体層L2に形成された導体パターンの形状を示す略平面図である。
図5図5は、導体層L3に形成された導体パターンの形状を示す略平面図である。
図6図6は、導体層L4に形成された導体パターンの形状を示す略平面図である。
図7図7は、導体層L5に形成された導体パターンの形状を示す略平面図である。
図8図8は、コイル部品100の略断面図である。
図9図9は、導体層L1に形成された導体パターンの変形例による形状を示す略平面図である。
図10図10は、導体層L4に形成された導体パターンの変形例による形状を示す略平面図である。
図11図11は、図9及び図10に示す導体層L1,L4を用いた場合における、コイル部品100の略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る技術の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示に係る技術の一実施形態による電子部品(コイル部品100)の構造を説明するための略透視斜視図である。また、図2は、コイル部品100の等価回路図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、本実施形態によるコイル部品100は、4端子型のチップ部品であり、素体10と、素体10に埋め込まれた2つのコイルC1,C2とを備えている。素体10は、例えば、鉄(Fe)やパーマロイなどの磁性材料などからなる金属磁性体フィラーと樹脂バインダーを含む複合磁性部材により形成されてよい。
【0012】
素体10は、YZ面を構成し互いに反対側に位置する側面11,12と、XZ面を構成し互いに反対側に位置する側面13,14と、XY面を構成し互いに反対側に位置する実装面15及び上面16とを有している。実装面15は、実装時に回路基板と向かい合う面であり、端子電極である4つのバンプ電極21~24が露出する。図1には、バンプ電極24は図示されていない。素体10は、Z方向から見た平面視で、X方向が長手方向、Y方向が短手方向である。バンプ電極21,22はY方向に隣接し、バンプ電極23,24はY方向に隣接する。バンプ電極21,23はX方向に隣接し、バンプ電極22,24はX方向に隣接する。バンプ電極21は、素体10の側面11,13からも露出するよう形成されてよい。バンプ電極22は、素体10の側面11,14からも露出するよう形成されてよい。バンプ電極23は、素体10の側面12,13からも露出するよう形成されてよい。バンプ電極24は、素体10の側面12,14からも露出するよう形成されてよい。
【0013】
素体10には、Z方向に積層された複数の導体層L1~L5が埋め込まれており、導体層L1~L4に位置する導体パターンによってコイルC1,C2が構成され、導体層L5に位置する導体パターンによってバンプ電極21~24が構成される。コイルC1,C2の軸方向はいずれもZ方向である。また、コイルC1,C2は、長手方向であるX方向に配列されている。導体層L1~L4に位置する導体パターンは、磁性材料からなる素体10と直接接しないよう、その表面が絶縁樹脂層で覆われている。
【0014】
図3図7は、それぞれ導体層L1~L5に形成された導体パターンの形状を示す略平面図である。
【0015】
図3に示すように、導体層L1に設けられる導体パターンは、コイルパターン31及びダミーパターン32を含む。コイルパターン31は約1ターン周回する導体パターンであり、その一端は、Z方向から見た平面視でバンプ電極22と重なる位置に配置される。ダミーパターン32は、コイルパターン31から独立して設けられており、Z方向から見た平面視でバンプ電極21と重なる位置に配置される。コイルパターン31の一端及び他端は、ビア導体41,42を介して上層の導体層L2に接続される。コイルパターン31及びダミーパターン32と素体10の間には絶縁樹脂層17が設けられており、これにより両者間における接触が防止されている。
【0016】
図4に示すように、導体層L2に設けられる導体パターンは、コイルパターン51,52、ダミーパターン53,54及び接続パターン55を含む。コイルパターン51,52は約1ターン周回する導体パターンである。コイルパターン52の一端は、Z方向から見た平面視でバンプ電極24と重なる位置に配置される。コイルパターン51の一端は、ビア導体42を介して、コイルパターン31の他端に接続される。ダミーパターン53,54は、コイルパターン51,52から独立して設けられており、Z方向から見た平面視でそれぞれバンプ電極21,23と重なる位置に配置される。接続パターン55は、コイルパターン51,52から独立して設けられており、Z方向から見た平面視でバンプ電極22と重なる位置に配置される。接続パターン55は、ビア導体41を介して、コイルパターン31の一端に接続される。接続パターン55、コイルパターン51の他端、並びに、コイルパターン52の一端及び他端は、それぞれビア導体61~64を介して上層の導体層L3に接続される。コイルパターン51,52、ダミーパターン53,54及び接続パターン55と素体10の間には絶縁樹脂層17が設けられており、これにより両者間における接触が防止されている。
【0017】
図5に示すように、導体層L3に設けられる導体パターンは、コイルパターン71,72、接続パターン73,74及びダミーパターン75を含む。コイルパターン71,72は約1ターン周回する導体パターンである。コイルパターン71,72の一端は、それぞれビア導体62,64を介して、コイルパターン51,52の他端に接続される。コイルパターン71の他端は、Z方向から見た平面視でバンプ電極21と重なる位置に配置される。接続パターン73,74は、コイルパターン71,72から独立して設けられており、Z方向から見た平面視でそれぞれバンプ電極22,24と重なる位置に配置される。接続パターン73,74は、それぞれビア導体61,63を介して、接続パターン55及びコイルパターン52の一端に接続される。コイルパターン71,72の他端及び接続パターン73,74は、それぞれビア導体81~84を介して上層の導体層L4に接続される。コイルパターン71,72、接続パターン73,74及びダミーパターン75と素体10の間には絶縁樹脂層17が設けられており、これにより両者間における接触が防止されている。
【0018】
図6に示すように、導体層L4に設けられる導体パターンは、コイルパターン91及び接続パターン92~94を含む。コイルパターン91は約1ターン周回する導体パターンであり、その一端はビア導体82を介して、コイルパターン72の他端に接続される。コイルパターン91の他端は、Z方向から見た平面視でバンプ電極23と重なる位置に配置される。接続パターン92~94は、コイルパターン91から独立して設けられており、Z方向から見た平面視でそれぞれバンプ電極21,22,24と重なる位置に配置される。接続パターン92~94は、それぞれビア導体81,83,84を介して、コイルパターン71の他端及び接続パターン73,74に接続される。コイルパターン91の他端及び接続パターン92~94は、それぞれビア導体101~104を介して上層の導体層L5に接続される。コイルパターン91及び接続パターン92~94と素体10の間には絶縁樹脂層17が設けられており、これにより両者間における接触が防止されている。
【0019】
図7に示すように、導体層L5に設けられる導体パターンは、バンプ電極21~24を含む。バンプ電極21~24は、それぞれビア導体102,103,101,104を介して、コイルパターン91の他端及び接続パターン92~94に接続される。バンプ電極21~24のうち、素体10の実装面15から露出する表面は、外部端子を構成する。バンプ電極21~24と素体10の間にも絶縁樹脂層17が設けられていても構わない。
【0020】
このような構成により、コイルパターン31,51,71がバンプ電極21,22間において電気的に接続され、これによりコイルC1が構成される。また、コイルパターン52,72,91がバンプ電極23,24間において電気的に接続され、これによりコイルC2が構成される。ここで、バンプ電極21を始点としたコイルC1の周回方向は、バンプ電極23を始点としたコイルC2の周回方向と逆である。このため、例えばバンプ電極21,23を一対の差動信号ラインにそれぞれ接続し、バンプ電極22,24を電源回路に接続した場合、差動信号ラインに流れるディファレンシャル成分(信号成分)についてはコイル部品100によって電源回路に流れ込まない一方、DC電源成分については、コイル部品100を通過する。
【0021】
図8は、本実施形態によるコイル部品100の略断面図である。図3図7に示すA-A線は、図8に示す断面位置を表している。
【0022】
図8に示すように、コイルC1を構成するコイルパターン31,51,71は、それぞれ導体層L1~L3に位置しているのに対し、コイルC2を構成するコイルパターン52,72,91は、それぞれ導体層L2~L4に位置している。つまり、コイルC1とコイルC2は、使用する複数の導体層が1層ずれている。図8に示す具体例の場合、導体層L1にはコイルC2を構成するコイルパターンは配置されず、導体層L4にはコイルC1を構成するコイルパターンは配置されない。導体層L1においてコイルC2と重なる領域には、図3に示すようにリング状の絶縁樹脂層17が設けられている。また、導体層L4においてコイルC1と重なる領域には、図6に示すようにリング状の絶縁樹脂層17が設けられている。
【0023】
その結果、コイルC1を構成するコイルパターン31,51,71のうち、Z方向における一方の端部側(最下層)に位置するコイルパターン31と素体10の間に位置する絶縁樹脂層17のZ方向における厚みをT1とし、コイルC2を構成するコイルパターン52,72,91のうち、Z方向における一方の端部側(最下層)に位置するコイルパターン52と素体10の間に位置する絶縁樹脂層17のZ方向における厚みをT2とした場合、T1<T2となる。同様に、コイルC1を構成するコイルパターン31,51,71のうち、Z方向における他方の端部側(最上層)に位置するコイルパターン71と素体10の間に位置する絶縁樹脂層17のZ方向における厚みをT3とし、コイルC2を構成するコイルパターン52,72,91のうち、Z方向における他方の端部側(最上層)に位置するコイルパターン91と素体10の間に位置する絶縁樹脂層17のZ方向における厚みをT4とした場合、T4<T3となる。
【0024】
これにより、仮に素体10の絶縁性が低く、且つ、厚みT1が薄い場合であっても、最下層に位置するコイルパターン31,52間における絶縁耐圧が高められる。同様に、仮に素体10の絶縁性が低く、且つ、厚みT4が薄い場合であっても、最上層に位置するコイルパターン71,91間における絶縁耐圧が高められる。尚、各コイルパターンと素体10の間に位置する絶縁樹脂層17のXY平面方向における厚みT5は、厚みT1やT4よりも大きくても構わない。
【0025】
このように、本実施形態によるコイル部品100は、コイルC1を構成するコイルパターン31,51,71が導体層L1~L3に形成され、コイルC2を構成するコイルパターン52,72,91が導体層L2~L4に形成されていることから、素体10の内部でコイルC1とコイルC2が互いに絶縁されている場合に、両者間における絶縁耐圧を高めることが可能となる。また、コイルパターン51,52はいずれも導体層L2に位置し、コイルパターン71,72はいずれも導体層L3に位置することから、必要な導体層の数の増加も最小限に抑えられる。
【0026】
図9及び図10は、それぞれ導体層L1,L4に形成された導体パターンの変形例による形状を示す略平面図である。また、図11は、図9及び図10に示す導体層L1,L4を用いた場合における、コイル部品100の略断面図である。図4図5図9及び図10に示すA-A線は、図11に示す断面位置を表している。
【0027】
図9に示す導体層L1は、ダミーコイルパターン33及びダミーパターン34が追加されている点において、図3に示した導体層L1のパターン形状と相違している。ダミーコイルパターン33及びダミーパターン34は、Z方向から見た平面視で、導体層L2に位置するコイルパターン52及びダミーパターン54と重なり、且つ、これらと同じか略同じ平面形状を有している。コイルパターン52及びダミーパターン54はフローティング状態(他の導体パターンに電気的に接続されていない状態)であり、コイルC1,C2のいずれからも絶縁されている。このようなコイルパターン52及びダミーパターン54を設ければ、導体層L2を形成する際の下地が平坦化されることから、導体層L2を精度良く形成することが可能となる。また、ダミーコイルパターン33及びダミーパターン34は、コイルパターン31及びダミーパターン32と同時に形成されることから、製造プロセス数が増加することもない。
【0028】
図10に示す導体層L4は、ダミーコイルパターン95が追加されている点において、図6に示した導体層L4のパターン形状と相違している。ダミーコイルパターン95は、Z方向から見た平面視で、導体層L3に位置するコイルパターン71と重なり、且つ、ダミーコイルパターン95の全部がコイルパターン71の一部と同じ平面形状を有している。ダミーコイルパターン95はフローティング状態であり、コイルC1,C2のいずれからも絶縁されている。このようなダミーコイルパターン95を設ければ、導体層L5を形成する際の下地が平坦化されることから、導体層L5を精度良く形成することが可能となる。また、ダミーコイルパターン95は、コイルパターン91及び接続パターン92~94と同時に形成されることから、製造プロセス数が増加することもない。
【0029】
図11に示すように、図9に示す導体層L1を用いた場合、ダミーコイルパターン33と素体10の間に位置する絶縁樹脂層17のZ方向における厚みは、コイルパターン31と素体10の間に位置する絶縁樹脂層17のZ方向における厚みT1と同じか、略同じとなる。同様に、図10に示す導体層L4を用いた場合、ダミーコイルパターン95と素体10の間に位置する絶縁樹脂層17のZ方向における厚みは、コイルパターン91と素体10の間に位置する絶縁樹脂層17のZ方向における厚みT4と同じか、略同じとなる。しかしながら、これらダミーコイルパターン33,95はフローティング状態であり、コイルC1,C2に接続されていないことから、ダミーコイルパターン33,95を介した絶縁耐圧の低下は生じない。
【0030】
つまり、ダミーコイルパターン33と素体10の間に位置する絶縁樹脂層17のZ方向における厚みはT1であるものの、コイルパターン52と素体10のZ方向における距離についてはあくまでT2(>T1)であることから、コイルパターン31に対して十分な絶縁耐圧を確保することができる。同様に、ダミーコイルパターン95と素体10の間に位置する絶縁樹脂層17のZ方向における厚みはT4であるものの、コイルパターン71と素体10のZ方向における距離についてはあくまでT3(>T4)であることから、コイルパターン91に対して十分な絶縁耐圧を確保することができる。
【0031】
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されることなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示に係る技術の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0032】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0033】
本開示の一側面による電子部品は、磁性材料を含む素体と、絶縁樹脂層を介して素体に埋め込まれ、第1の方向を軸方向とし、第1の方向と直交する第2の方向に配列された第1及び第2のコイルと、素体から露出し、第1のコイルの一端及び他端にそれぞれ接続された第1及び第2の端子電極と、素体から露出し、第2のコイルの一端及び他端にそれぞれ接続された第3及び第4の端子電極とを備え、第1及び第2のコイルは、第1の方向に積層された複数のコイルパターンを含み、第1のコイルを構成する複数のコイルパターンは、第1の方向における一方の端部側に位置し、第1のコイルの一端を構成する第1のコイルパターンと、第1の方向における他方の端部側に位置し、第1のコイルの他端を構成する第2のコイルパターンとを含み、第2のコイルを構成する複数のコイルパターンは、第1の方向における一方の端部側に位置し、第2のコイルの一端を構成する第3のコイルパターンと、第1の方向における他方の端部側に位置し、第2のコイルの他端を構成する第4のコイルパターンとを含み、第3のコイルパターンと第1の方向における一方側に位置する素体の第1の方向における距離は、第1のコイルパターンと第1の方向における一方側に位置する素体の第1の方向における距離よりも大きい。これによれば、第1のコイルパターンと第3のコイルパターンの間の絶縁耐圧を高めることができる。
【0034】
上記の電子部品において、第2のコイルパターンと第1の方向における他方側に位置する素体の第1の方向における距離は、第4のコイルパターンと第1の方向における他方側に位置する素体の第1の方向における距離よりも大きくても構わない。これによれば、第2のコイルパターンと第4のコイルパターンの間の絶縁耐圧を高めることができる。
【0035】
上記の電子部品において、素体は、第1の方向に積層された複数の導体層を含み、第1のコイルを構成する複数のコイルパターンと、第2のコイルを構成する複数のコイルパターンとは、それぞれ当該複数の導体層に形成され、第1のコイルを構成する複数のコイルパターンは、第1のコイルパターンと第1の方向において隣接する第5のコイルパターンをさらに含み、第2のコイルを構成する複数のコイルパターンは、第4のコイルパターンと第1の方向において隣接する第6のコイルパターンをさらに含み、第3のコイルパターンと第5のコイルパターンは、複数の導体層の内の同じ導体層に位置し、第2のコイルパターンと第6のコイルパターンは、複数の導体層の内の同じ導体層に位置しても構わない。これによれば、必要となる導体層の数の増加を抑えることができる。
【0036】
上記の電子部品は、第3のコイルパターンと第1の方向における一方側に隣接し、第2のコイルから絶縁された第1のダミーコイルパターンと、第2のコイルパターンと第1の方向における他方側に隣接し、第1のコイルから絶縁された第2のダミーコイルパターンとをさらに備え、第1のダミーコイルパターンは、第1のコイルパターンと同じ導体層に位置し、第2のダミーコイルパターンは、第4のコイルパターンと同じ導体層に位置しても構わない。これによれば、各導体層に導体パターンを精度良く形成することが可能となる。
【0037】
上記の電子部品において、第1のコイルと第2のコイルが互いに絶縁されていても構わない。これによれば、第1のコイルと第2のコイルに互いに異電位が加わる場合であっても、両者間における絶縁耐圧を確保することが可能となる。
【0038】
本開示の他の側面による電子部品は、磁性材料を含む素体と、絶縁樹脂を介して素体に埋め込まれ、第1の方向に積層された複数の導体層と、第1の方向を軸方向とし、複数の導体層に形成された複数のコイルパターンを含む第1のコイルと、第1の方向を軸方向とし、複数の導体層に形成された複数のコイルパターンを含む第2のコイルとを備え、第1のコイルと、第2のコイルとは、第1の方向と直交する第2の方向に配列され、第1のコイルを構成する複数のコイルパターンは、第1の方向における一方の端部側に位置し、第1のコイルの一端を構成する第1のコイルパターンと、第1の方向における他方の端部側に位置し、第1のコイルの他端を構成する第2のコイルパターンとを含み、第2のコイルを構成する複数のコイルパターンは、第1の方向における一方の端部側に位置し、第2のコイルの一端を構成する第3のコイルパターンと、第1の方向における他方の端部側に位置し、第2のコイルの他端を構成する第4のコイルパターンとを含み、第3のコイルパターンと、第1のコイルパターンとは、複数の導体層のうち、異なる導体層に形成されている。これによれば、第1のコイルパターンと第3のコイルパターンの間の絶縁耐圧を高めることができる。
【0039】
上記の電子部品において、第2のコイルパターンと、第4のコイルパターンとは、複数の導体層のうち、異なる導体層に形成されていても構わない。これによれば、第2のコイルパターンと第4のコイルパターンの間の絶縁耐圧を高めることができる。
【0040】
上記の電子部品において、第1の方向における一方の端部側で、第3のコイルパターンと隣接し、第2のコイルから絶縁された第1のダミーコイルパターンと、第1の方向における他方の端部側で、第2のコイルパターンと第1の方向に隣接し、第1のコイルから絶縁された第2のダミーコイルパターンとをさらに備え、第1のダミーコイルパターンは、第1のコイルパターンと同じ導体層に位置し、第2のダミーコイルパターンは、第4のコイルパターンと同じ導体層に位置しても構わない。これによれば、各導体層に導体パターンを精度良く形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
10 素体
11~14 側面
15 実装面
16 上面
17 絶縁樹脂層
21~24 バンプ電極
31,51,52,71,72,91 コイルパターン
32,34,53,54,75 ダミーパターン
33,95 ダミーコイルパターン
41,42,61~64,81~84 ビア導体
55,73,74,92~94 接続パターン
100 コイル部品
101~104 ビア導体
C1,C2 コイル
L1~L5 導体層
図1
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