(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154857
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】半導体発光素子、露光装置、画像形成装置および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/10 20100101AFI20241024BHJP
H01L 33/44 20100101ALI20241024BHJP
B41J 2/447 20060101ALI20241024BHJP
B41J 2/45 20060101ALI20241024BHJP
H01L 33/08 20100101ALN20241024BHJP
【FI】
H01L33/10
H01L33/44
B41J2/447 101A
B41J2/45
H01L33/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069014
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】宮里 瑠衣
【テーマコード(参考)】
2C162
5F241
【Fターム(参考)】
2C162AE21
2C162AE28
2C162AE40
2C162AE47
2C162AE73
2C162FA04
2C162FA17
2C162FA24
2C162FA45
2C162FA50
5F241AA03
5F241CA03
5F241CA12
5F241CA36
5F241CA72
5F241CB15
5F241CB23
5F241FF06
5F241FF13
(57)【要約】
【課題】半導体発光素子の放熱性の低下を抑制しつつ、光の取り出し効率を高める。
【解決手段】半導体発光素子1は、第1の面10aを有する半導体積層部10と、第1の面10aを覆い、光を透過する有機材料膜19とを有する。半導体積層部10は、第1の面10aから半導体積層部10の内部にかけて形成された第1導電型の半導体領域であるp型領域17と、第2導電型の発光層14とを有し、p型領域17と発光層14との間に発光領域18が形成される。半導体積層部10は、第1の面10aから半導体積層部10の内部に形成され、第1の面10aと平行な方向においてp型領域17に対向する溝部21を有する。溝部21には下地層22が形成され、下地層22は、p型領域17に近づくほど第1の面10aからの深さが深くなるように傾斜する傾斜面221を有する。下地層22の傾斜面221には、光を反射する反射層23が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面を有する半導体積層部であって、前記第1の面から前記半導体積層部の内部にかけて形成された第1導電型の半導体領域と、第2導電型の発光層とを有し、前記半導体領域と前記発光層との間に発光領域が形成された半導体積層部と、
前記第1の面を覆い、光を透過する有機材料膜と
を有し、
前記半導体積層部は、
前記第1の面から前記半導体積層部の内部に形成され、前記第1の面と平行な方向において前記半導体領域に対向する溝部と、
前記溝部に形成された下地層であって、前記半導体領域に近づくほど前記第1の面からの深さが深くなるように傾斜する傾斜面を有する下地層と、
前記下地層の傾斜面に形成され、光を反射する反射層と
を有することを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記溝部の前記第1の面からの深さは、前記発光領域の前記第1の面からの深さ以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記半導体積層部は、前記第1の面と反対側に半導体基板を有し、
前記溝部は、前記第1の面から前記半導体基板に到達するように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記下地層は、前記第1の面に直交する方向において、前記発光領域と重なり合わない位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記下地層は、前記溝部の内部に形成された第1の部分と、前記第1の面上で前記溝部に対して前記発光領域と反対側に形成された第2の部分とを有し、
前記反射層は、前記第1の部分および前記第2の部分に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記第1の面上で前記半導体領域に形成された電極をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記反射層は、前記第1の面上の前記半導体領域から、前記溝部を経由して配線部まで延在し、電極として機能する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記下地層は、前記第1の面上において、前記溝部と前記半導体領域との間で延在する第3の部分を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記第1導電型は、p型であり、
前記第2導電型は、n型である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記半導体領域に拡散されている不純物はZnであることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか1項に記載の半導体発光素子を有することを特徴とする露光装置。
【請求項12】
像担持体と、
前記像担持体を露光する、請求項11に記載の露光装置と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1から10までの何れか1項に記載の半導体発光素子を有することを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体発光素子、露光装置、画像形成装置および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(発光ダイオード)等の発光素子において、光の取り出し効率を高めるため、発光部の周囲に樹脂製の壁状構造を形成し、その表面に反射面を形成したものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-80361号公報(
図4,段落0045~0046参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術では、反射面の面積を大きくするためには壁状構造を大きくしなければならず、発光素子の放熱性が低下するという問題がある。
【0005】
本開示は、半導体発光素子の放熱性の低下を抑制しつつ、光の取り出し効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体発光素子は、第1の面を有する半導体積層部であって、第1の面から半導体積層部の内部にかけて形成された第1導電型の半導体領域と、第2導電型の発光層とを有し、半導体領域と発光層との間に発光領域が形成された半導体積層部と、第1の面を覆い、光を透過する有機材料膜とを有する。半導体積層部は、第1の面から半導体積層部の内部に形成され、第1の面と平行な方向において半導体領域に対向する溝部と、溝部に形成された下地層であって、半導体領域に近づくほど第1の面からの深さが深くなるように傾斜する傾斜面を有する下地層と、下地層の傾斜面に形成され、光を反射する反射層とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の半導体発光素子によれば、溝部に形成された反射層で光を反射し、効率的に外部に取り出すことができるため、放熱性の低下を抑制しながら、光の取り出し効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1の半導体発光素子を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1の半導体発光素子を示す平面図である。
【
図3】実施の形態1の半導体発光素子の溝部とその周囲を示す図である。
【
図4】実施の形態1の半導体発光素子の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】比較例の半導体発光素子を示す断面図である。
【
図6】実施の形態1の半導体発光素子の他の構成例を示す断面図である。
【
図7】変形例の発光素子アレイを示す断面図である。
【
図8】変形例の発光素子アレイの2つの半導体発光素子を示す断面図である。
【
図9】実施の形態2の半導体発光素子を示す断面図である。
【
図10】実施の形態2の半導体発光素子の溝部とその周囲を示す図である。
【
図11】実施の形態2の発光素子アレイを示す断面図である。
【
図12】実施の形態3の露光装置を示す断面図である。
【
図13】実施の形態4の画像形成装置を示す図である。
【
図14】実施の形態5の画像表示装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態の半導体発光素子、露光装置、画像形成装置および画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、種々の変更が可能である。
【0010】
実施の形態1.
<半導体発光素子の構造>
図1は、実施の形態1の半導体発光素子1を示す断面図である。
図2は、半導体発光素子1を示す平面図である。半導体発光素子1は、LED(発光ダイオード)である。
【0011】
図1に示すように、半導体発光素子1は、第1の面10aと第2の面10bとを有する半導体積層部10と、第1の面10aに形成された第1導電型の電極としてのp側電極31と、第1の面10aに形成された有機材料膜19と、第2の面10bに形成された第2の導電型の電極としてのn側電極32とを備える。
【0012】
半導体積層部10は、n-GaAs基板などの半導体基板16と、半導体基板16上に設けられた第2導電型の半導体層としての複数のn型半導体層101(エピタキシャル層)とを有する。n型半導体層101は、半導体基板16上でエピタキシャル成長させてもよく、図示しない成長基板上でエピタキシャル成長させて半導体基板16上に転写してもよい。
【0013】
n型半導体層101は、例えば、第1の面10aから第2の面10bに向かって、n-GaAs層であるコンタクト層11と、n-Al0.4Ga0.6As層である横方向電流拡散層(電流拡散層とも称する)12と、n-Al0.6Ga0.4As層である逆方向拡散電流阻止層(拡散電流阻止層とも称する)13と、n-Al0.22Ga0.22As層である発光層(活性層とも称する)14と、n-Al0.4Ga0.6As層である電流拡散阻止層15とを備える。
【0014】
コンタクト層11、電流拡散層12および拡散電流阻止層13の3層は、第1の半導体層102を構成する。第1の半導体層102は、発光層14とp側電極31との間に挟まれた半導体層である。発光層14のバンドギャップは、第1の半導体層102を構成する各層のバンドギャップよりも小さい。
【0015】
半導体積層部10には、第1の面10aから第1の半導体層102を介して発光層14内に達する不純物拡散領域としてのp型領域17が形成されている。p型領域17は、p型不純物としてZn(亜鉛)が拡散された領域である。p型領域17は、第1導電型の半導体領域とも称する。
【0016】
p型不純物であるZnの拡散処理は、例えば、固相拡散によって行われる。固相拡散は、半導体積層部10の第1の面10aにZnO(酸化亜鉛)の薄膜を形成し、加熱することにより、不純物であるZnを半導体層内に拡散させる方法である。
【0017】
固相拡散では、厳密には半導体材料の組成および不純物の濃度などの各種条件によって拡散速度が変化するが、概ね等方的に同じ速度で不純物の拡散が進行する。また、LEDでは、発光領域は、一般的に、表面から1μm程度の深さの位置に形成される。従って、拡散処理によって、1μm程度の深さの不純物拡散領域を形成した場合、深さ方向(すなわち、厚み方向)に直交する横方向の拡散も1μm程度発生する。ここで、深さとは、第1の面10aから半導体積層部10の内部に向かう方向(厚み方向)の長さである。
【0018】
このような拡散処理によってp型領域17を形成することで、p型領域17と発光層14との境界面(すなわち、pn接合)の近傍における発光領域18の大きさを制限することができる。言い換えれば、拡散処理によってp型領域17を形成することで、発光領域18の位置および大きさを所望の位置および大きさにすることができる。
【0019】
なお、半導体積層部10は、p型領域17と、その周囲のn型半導体層101(拡散処理が及んでいない領域)とを含む。
【0020】
第1の面10aの垂線方向、すなわち半導体積層部10の半導体層の積層方向を、Z方向とする。Z方向については、第2の面10bから第1の面10aに向かう方向を+Z方向とし、第1の面10aから第2の面10bに向かう方向を-Z方向とする。
【0021】
また、
図2に示すように、半導体積層部10の第1の面10aの平行な面を、XY面とする。X方向は、後述する発光素子アレイ5(
図7)における半導体発光素子1の配列方向である。半導体積層部10のp型領域17は、XY面において、例えば、X方向の2辺とY方向の2辺を有する矩形状に形成される。
【0022】
p側電極31は、第1の面10a上で且つp型領域17に配置される。p側電極31は、p型領域17からY方向に延在して、アノード配線51に接続されている。なお、p側電極31と、第1の面10aのp型領域17以外の部分とは、絶縁膜53によって絶縁されている。
【0023】
<溝部、下地層および反射層>
図1に示すように、半導体積層部10には、第1の面10aからZ方向に深さを有する溝部21が形成されている。溝部21は、例えば、フォトリソグラフィによるパターニングおよびドライエッチングにより形成される。溝部21は、ここでは、Y方向に延在している。
【0024】
図3は、半導体積層部10の溝部21とその周囲を拡大して示す断面図である。
図3に示すように、溝部21は、p型領域17から、第1の面10aに平行な方向(この例ではX方向)に間隔を開けて形成されている。例えば、p型領域17のX方向の幅が15μm、Y方向の長さが27μm、第1の面10aからの深さが1.0μmの場合、溝部21はp型領域17からX方向に6.5μmの間隔を開けて形成することが望ましい。
【0025】
溝部21の第1の面10aからの深さD1は、p型領域17の深さD2以上であることが望ましく、発光領域18の深さD3以上であることがより望ましい。一例としては、溝部21の深さは、2.5~3.0μmである。なお、深さとは、上記の通り、第1面10aから半導体積層部10(
図1)の内部に向かう方向(厚み方向)の長さである。
【0026】
1つのp型領域17に対し、1つの溝部21を形成してもよく、複数の溝部21を形成してもよい。
図1,2に示した例では、p型領域17のX方向の一方の側に溝部21を形成しているが、p型領域17のX方向両側に溝部21を形成してもよく、p型領域17を三方または四方から囲むように溝部21を形成していてもよい。
【0027】
溝部21には、下地層22が形成されている。下地層22は、有機材料、より具体的にはポジ型の感光性有機材料で形成された薄膜である。
【0028】
下地層22は、溝部21内だけでなく、第1の面10a上にも形成されている。すなわち、下地層22は、溝部21内に位置する溝内部分22aと、第1の面10a上に位置する面上部分22bとを有する。面上部分22bは、溝部21に対してp型領域17と反対側に配置されている。
【0029】
下地層22は、p型領域17側を向く傾斜面221を有する。傾斜面221は、p型領域17に接近するほど深さが深くなるように傾斜している。傾斜面221は、下地層22の溝内部分22aから面上部分22bの一部にかけて形成されている。下地層22の傾斜面221は、第1の面10a(すなわちXY面)に対して、傾斜角度αをなしている。
【0030】
下地層22の傾斜面221の下端部の第1の面10aからの深さは、p型領域17の深さD2以上であることが望ましく、発光領域18の深さD3以上であることがより望ましい。
【0031】
下地層22の面上部分22bには、傾斜面221につながる頂面222が形成されている。この頂面222の第1の面10aに対する傾斜角度は、傾斜面221の傾斜角度αよりも小さい。なお、頂面222は必ずしも傾斜していなくてもよく、第1の面10aと平行であってもよい。
【0032】
下地層22の傾斜面221および頂面222には、反射層23が形成されている。反射層23は、光を反射する材料、例えばAuGeNi/Auで形成される。なお、AuGeNi/Auとは、Au薄膜上にAuGeNi薄膜を積層した2層構造を有する電極である。
【0033】
反射層23は、下地層22の傾斜面221上に形成された第1の部分23aと、頂面222上に形成された第2の部分23bとを有する。第1の部分23aの下端23eの第1の面10aからの深さは、p型領域17の深さD2以上であることが望ましく、発光領域18の深さD3以上であることがより望ましい。
【0034】
有機材料膜19は、半導体積層部10の第1の面10aおよびp側電極31を覆うように形成される。有機材料膜19は、半導体積層部10の第1の面10aの全体を覆うように形成してもよく、p側電極31の接続部分を覆わないように形成してもよい。有機材料膜19の一部は、溝部21の一部にも入り込む。
【0035】
有機材料膜19は、光を透過させる有機材料で形成された薄膜であり、厚さは1.1μmである。有機材料膜19は、例えばポジ型の感光性有機材料で形成される。より具体的には、有機材料膜19は、日本ゼオン株式会社製の「ZEOCOAT(登録商標)CP1010-14」で形成される。この材料の透明性は97%であり、1Mhzでの比誘電率は3.4%であり、破壊電圧特性は7.4MV/cmである。なお、有機材料膜19と下地層22とは、同一の材料で形成してもよい。
【0036】
<製造方法>
図4は、半導体発光素子1の製造方法を示すフローチャートである。ステップS1では、n-GaAs基板である半導体基板16に、コンタクト層11、電流拡散層12、拡散電流阻止層13、発光層14および電流拡散阻止層15からなるn型半導体層101(エピタキシャル層)を形成する。別の成長基板で成長したエピタキシャル層を半導体基板16に転写してもよい。これにより、半導体積層部10が形成される。
【0037】
ステップS2では、半導体積層部10にp型領域17を形成する。具体的には、半導体積層部10の第1の面10a上にマスクを形成したのち、スパッタ法によりZnOの薄膜であるp型領域17を形成する。その後、加熱(アニール)により不純物の固相拡散を行った後、マスクを除去する。
【0038】
ステップS3では、p側電極31を、半導体積層部10の第1の面10a上で且つp型領域17上に形成する。
【0039】
ステップS4では、半導体積層部10の第1の面10aに、溝部21を形成する。溝部21は、フォトリソグラフィによって第1の面10a上に溝部21の形成部分以外を覆うパターンを形成した後、ドライエッチングによって形成する。
【0040】
ステップS5では、溝部21に下地層22を形成する。下地層22は、第1の面10a上にスピンコート等によりポジ型感光性有機材料の膜を成膜し、下地層22の形成部分を露光により硬化させ、それ以外の部分を現像により除去することによって形成する。このとき、露光時間あるいは現像時間の調整によって、下地層22の傾斜面221の傾斜角度を制御することができる。
【0041】
ステップS6では、下地層22の傾斜面221および頂面222上に、例えば金属蒸着により、AuGeNi/Auを用いて反射層23を形成する。反射層23は金属であるため、p側電極31およびコンタクト層11と導通しないように形成する必要がある。そのため、例えばフォトリソグラフィにより下地層22以外を覆うパターンを形成し、このパターンをマスクとして金属蒸着を行うことによって反射層23を形成する。
【0042】
ステップS7では、半導体積層部10の第1の面10a上に、ポジ型感光性有機材料からなる有機材料膜19を成膜する。有機材料膜19の成膜方法は、例えば、スピンコートによる塗布である。有機材料膜19は、第1の面10a上のp側電極31も覆う。有機材料膜19は、溝部21の反射層23上にも充填される。
【0043】
以上の工程によって、
図1に示す半導体発光素子1が製造される。なお、半導体発光素子1のn側電極32は、ステップS1の前に半導体基板16に形成してもよく、ステップS7の後に形成してもよい。
【0044】
<作用>
実施の形態1の半導体発光素子1の作用について、
図3を参照して説明する。半導体発光素子1のp側電極31からn側電極32に向かって流れる電流は、半導体積層部10の各半導体層を通過する。このとき、発光領域18に生じているバンドギャップにより、発光領域18で光L1が発生する。
【0045】
発光領域18で発生した光L1は全方向に伝搬し、有機材料膜19側(すなわち+Z側)に伝搬した光は有機材料膜19を透過し、出力光L2として半導体発光素子1から取り出される。
【0046】
有機材料膜19は空気よりも屈折率が大きいため、有機材料膜19と空気との界面に入射する光L1の入射角θが臨界角iを超えると、光L1は当該界面で全反射される。有機材料膜19と空気との誘電率の差による臨界角iは、例えば29.4度である。
【0047】
有機材料膜19と空気との界面で全反射された光は、有機材料膜19の内部で反射を繰り返しながら伝搬する膜内伝搬光L3となる。
【0048】
有機材料膜19の比誘電率が高いほど、臨界角iが大きくなるため、膜内伝搬光L3の割合が増加し、出力光L2の割合が低下する。また、有機材料膜19の透明度によっては、膜内伝搬光L3の伝搬距離に応じた光の減衰が生じる。
【0049】
そこで、実施の形態1では、半導体積層部10に、膜内伝搬光L3を反射する反射層23を設けている。反射層23は膜内伝搬光L3を、その伝搬方向が第1の面10aの法線方向(すなわちZ方向)にできるだけ近くなるように反射する。
【0050】
反射層23で反射された反射光L4が、有機材料膜19と空気との界面に臨界角i以下の入射角で入射することにより、反射光L4が有機材料膜19から出力光L2として取り出される。
【0051】
有機材料膜19と空気との界面に臨界角i以下の入射角で入射する光が増加することにより、出力光L2の割合を増加させることができ、光の取り出し効率を向上することができる。
【0052】
上述した臨界角iが29.4度の場合、反射層23の傾斜角度αは、例えば、29.4度から58.8度の範囲が望ましい。上述した臨界角iを用いると、i≦α≦2×iで表される範囲が望ましい。
【0053】
また、反射層23の下端23eがp型領域17と同じ深さ(より望ましくは発光領域18と同じ深さ)まで達していれば、発光領域18から出て半導体積層部10内を伝搬する積層部内伝搬光L5を、有機材料膜19に向けて反射することができる。
【0054】
また、反射層23は、溝部21に設けられた下地層22上に形成されているため、下地層22の体積が比較的小さくても、反射層23の面積を大きくすることができる。そのため、半導体積層部10の第1の面10a上に下地層22を形成した場合(後述する
図5参照)と比較して、放熱性を向上することができる。
【0055】
なお、下地層22を形成せずに、半導体積層部10にV字状の溝部を加工し、その溝部の内面に反射層23を形成することも考えられるが、V字状の溝形状を正確に制御することは難しい。この実施の形態1のように溝部21内に下地層22を形成することで、傾斜面221の傾斜角度を含む正確な形状の制御が可能になる。
【0056】
また、下地層22を形成することにより、溝部21内だけでなく、第1の面10a上にも反射層23を延在させることが可能になる。これにより、より多くの膜内伝搬光L3を反射層23で反射することができ、光の取り出し効率を向上することができる。
【0057】
図5は、比較例の半導体発光素子6の構成を概略的に示す断面図である。
図5の半導体発光素子6では、半導体積層部10に溝部が形成されておらず、第1の面10a上に下地層62が形成され、下地層62の傾斜面に反射層63が形成されている。この場合も、膜内伝搬光L3を反射層63で反射することにより、出力光L2の割合を増加させることができる。
【0058】
しかしながら、半導体積層部10の第1の面10a上に下地層62および反射層63が形成されているため、反射層63の面積を確保するためには下地層62の体積を大きくしなければならない。
【0059】
下地層62は有機材料で形成されるため、下地層62の体積を大きくするほど、半導体発光素子6の放熱性が低下する。また、有機材料膜19の表面に、下地層62の形状に沿った凹凸が生じるため、有機材料膜19と空気との界面で反射される光が増加し、光の取り出し効率が低下する可能性がある。
【0060】
これに対し、実施の形態1では、
図3に示したように、下地層22および反射層23が溝部21に形成されているため、下地層22の体積が比較的小さくても、反射層23の面積を大きくすることができる。そのため、放熱性を低下させずに光の取り出し効率を向上することができる。
【0061】
また、下地層22のうち、第1の面10a上に位置する部分(すなわち面上部分22b)は一部のみであるため、有機材料膜19の表面を平坦化することができ、光の取り出し効率をさらに向上することができる。
【0062】
また、溝部21は、第1の面10aに平行な方向(ここではX方向)においてp型領域17から離間しているため、下地層22は、第1の面10aに直交する方向(すなわちZ方向)において発光領域18と重なり合わない位置に形成される。そのため、下地層22が発光領域18を流れる電流を遮ることがない。
【0063】
ここでは、溝部21の第1の面10aからの深さは、p型領域17の深さ以上であることが望ましく、発光領域18の深さ以上であることがより望ましいと説明した。しかしながら、
図6に示す構成例のように、溝部21の第1の面10aからの深さが、発光層14の深さ以上であってもよい。
【0064】
図6に示す構成例では、下地層22の傾斜面221の下端および反射層23の下端23eを、発光層14よりも深い位置まで形成している。そのため、発光領域18からn側電極32側(-Z側)に伝播する光を、反射層23によって有機材料膜19に向けて反射することができ、光の取り出し効率をさらに向上することができる。
【0065】
<実施の形態1の効果>
以上説明したように、実施の形態1の半導体発光素子1は、第1の面10aを有する半導体積層部10と、第1の面10aを覆い、光を透過する有機材料膜19とを有する。半導体積層部10は、第1の面10aから半導体積層部10の内部にかけて形成されたp型領域17(第1導電型の半導体領域)と、第2導電型の発光層14とを有し、p型領域17と発光層14との間に発光領域18が形成される。半導体積層部10は、第1の面10aから半導体積層部10の内部に形成され、第1の面10aと平行な方向においてp型領域17に対向する溝部21を有する。溝部21には下地層22が形成され、下地層22は、p型領域17に近づくほど第1の面10aからの深さが深くなるように傾斜する傾斜面221を有する。下地層22の傾斜面221には、光を反射する反射層23が形成されている。
【0066】
このように構成されているため、反射層23により、有機材料膜19内を伝搬する膜内伝搬光L3を反射し、出力光L2の割合を増加させることができる。また、反射層23が、溝部21内に形成された下地層22上に設けられているため、下地層22の体積が比較的小さくても、反射層23の面積を大きくすることができる。その結果、放熱性の低下を抑制しながら、光の取り出し効率を向上することができる。
【0067】
また、溝部21の第1の面10aからの深さD1が、p型領域17の第1の面10aからの深さD2以上であるため、反射層23の下端23eをp型領域17と同じかより深い位置まで形成することができる。そのため、発光領域18から出た光を、より多く有機材料膜19に向けて反射することができ、光の取り出し効率をさらに向上することができる。
【0068】
また、溝部21の第1の面10aからの深さD1が、発光領域18の第1の面10aからの深さD3以上であれば、反射層23の下端23eを発光領域18と同じかより深い位置まで形成することができる。そのため、発光領域18から第1の面10aと平行な方向に出た光を有機材料膜19に向けて反射することができ、光の取り出し効率をさらに向上することができる。
【0069】
また、下地層22は、第1の面10aに直交する方向(すなわちZ方向)において、発光領域18と重なり合わない位置に形成されているため、下地層22が発光領域18を流れる電流を遮ることがない。そのため、半導体発光素子1の特性に影響を与えずに、光の取り出す効率を向上することができる。
【0070】
また、下地層22は、溝部21の内部に形成された溝内部分(第1の部分)22aと、第1の面10a上で溝部21に対して発光領域18と反対側に形成された面上部分(第2の部分)22bとを有し、反射層23は、下地層22の溝内部分22aおよび面上部分22bに形成されている。そのため、有機材料膜19の内部を伝搬するより多くの膜内伝搬光L3を反射層23で反射し、光の取り出し効率をさらに向上することができる。
【0071】
なお、ここでは、第1導電型がp型であり、第2導電型がn型である例について説明したが、第1導電型がn型であり、第2導電型がp型であってもよい。また、半導体積層部10を構成する半導体材料および組成の比率は上記例に限定されず、種々の変更が可能である。
【0072】
変形例.
図7は、変形例の発光素子アレイ5を示す平面図である。
図7に示すように、発光素子アレイ5は、X方向に配列された複数の半導体発光素子1を有する。それぞれの半導体発光素子1のp側電極31はY方向に延在し、共通のアノード配線51に接続されている。
【0073】
図8は、変形例の発光素子アレイ5における2つの半導体発光素子1を示す断面図である。
図8に示すように、隣り合う2つの半導体発光素子1は、溝部21を共有している。溝部21は、半導体積層部10の第1の面10aから半導体基板16に到達する深さまで形成されており、素子分離溝としても機能する。
【0074】
溝部21には、下地層22が形成されている。下地層22は、X方向の両側に傾斜面221を有する。各傾斜面221は、p型領域17に対向している。また、下地層22は、各傾斜面221につながる頂面222を有する。下地層22の傾斜面221および頂面222には、反射層23が形成されている。
【0075】
この変形例では、2つのp型領域17の間に設けられた反射層23により、2つの発光領域18から出た膜内伝搬光L3(
図3)を反射することができるため、光の取り出し効率をさらに向上することができる。
【0076】
なお、下地層22の内側には、コンタクト層11、電流拡散層12、拡散電流阻止層13、発光層14および電流拡散阻止層15の積層体24が凸部として形成されていてもよい。言い換えると、溝部21は、積層体24を挟んだ2列の溝で形成されていてもよい。この場合には、下地層22の体積を小さくし、放熱性を向上することができる。
【0077】
この変形例では、2つのp型領域17の間に設けられた反射層23により、2つの発光領域18から出た膜内伝搬光L3(
図3)を反射することができるため、光の取り出し効率をさらに向上することができる。
【0078】
また、溝部21が、第1の面10aから半導体基板16に到達する深さまで形成されているため、素子分離溝を溝部21として利用することができ、製造工程を簡単にすることができる。
【0079】
実施の形態2.
図9は、実施の形態2の半導体発光素子4の構成を示す断面図である。
図9に示すように、半導体発光素子4は、半導体積層部10と、有機材料膜19と、n側電極32とを備える。半導体積層部10、有機材料膜19およびn側電極32のそれぞれの構成は、実施の形態1で説明した通りである。
【0080】
図10は、半導体積層部10の溝部41とその周囲を拡大して示す断面図である。半導体積層部10には、第1の面10aからZ方向に深さを有する溝部41が形成されている。溝部41は、延在方向がX方向である点で実施の形態1の溝部21と異なるが、その他の点では実施の形態1の溝部21と同様に形成されている。
【0081】
溝部41には、下地層42が形成されている。下地層42の材質は、実施の形態1の下地層22の材質と同様である。
【0082】
下地層42は、溝部41内に位置する溝内部分42aと、第1の面10a上に位置する面上部分42b,42cとを有する。第2の部分としての面上部分42bは、第1の部分としての溝内部分42aに対して、p型領域17と反対側に配置されている。第3の部分としての面上部分42cは、溝部41からp型領域17まで延在している。
【0083】
下地層42の溝内部分42aから面上部分42bの一部にかけて、p型領域17側を向く傾斜面421が形成されている。傾斜面421は、p型領域17に接近するほど深さが深くなるように傾斜している。傾斜面421の傾斜角度αは、実施の形態1の傾斜面221の傾斜角度α(
図3)と同様である。
【0084】
下地層42の面上部分42bには、傾斜面421につながる頂面422が形成されている。この頂面422の第1の面10aに対する傾斜角度は、上述した傾斜面421の傾斜角度αよりも小さい。また、頂面422は、第1の面10aと平行であってもよい。
【0085】
下地層42の傾斜面421の下端から面上部分42cにかけて、逆傾斜面423が形成されている。逆傾斜面423は、p型領域17に接近するほど深さが浅くなるように、すなわち傾斜面421と逆方向に傾斜している。
【0086】
下地層42上には、反射層43が形成されている。反射層43は、半導体積層部10のp型領域17から、溝部41を経て、後述するアノード配線51(
図11)までY方向に延在している。すなわち、反射層43は、p側電極を兼ねている。反射層43は、実施の形態1の反射層23と同様、例えばAuGeNi/Auで形成される。
【0087】
反射層43は、下地層42の傾斜面421に形成された第1の部分43aと、頂面422に形成された第2の部分43bと、逆傾斜面423に形成された第3の部分43cと、面上部分42c上に形成された第4の部分43dとを有する。また、第4の部分43dは、第1の面10a上でp型領域17に接続された接続部43eを有する。
【0088】
実施の形態2の半導体発光素子4においても、発光領域18で発生し、有機材料膜19と空気との界面で反射された膜内伝搬光L3は、反射層43の第1の部分43aで反射され、その反射光L4は有機材料膜19から出力光L2として出射される。そのため、光の取り出し効率を向上することができる。
【0089】
図11は、実施の形態2の半導体発光素子4を備えた発光素子アレイ5Aを示す平面図である。
図11に示すように、発光素子アレイ5Aは、X方向に配列された複数の半導体発光素子4を有する。隣り合う半導体発光素子4の間には、素子分離溝45が形成されている。
【0090】
それぞれの半導体発光素子4をX方向に横切るように、溝部41が形成されている。p側電極としての反射層43は、半導体発光素子4のp型領域17からY方向に延在し、溝部41を通過してアノード配線51に到達している。反射層43は、下地層42によって、第1の面10aのp型領域17以外の部分から絶縁される。
【0091】
反射層43がp側電極の機能を有するため、反射層43とp側電極とを別々に形成した場合と比較して、半導体発光素子4の製造コストを低減することができる。
【0092】
以上の点を除き、実施の形態2の半導体発光素子4は、実施の形態1の半導体発光素子1と同様に構成されている。
【0093】
以上説明したように、実施の形態2の半導体発光素子4では、反射層43が、p型領域17から溝部41を経由してアノード配線(配線部)51まで延在し、p側電極31として機能する。また、下地層42は、p型領域17に近づくほど第1の面10aからの深さが深くなるように傾斜する傾斜面421を有し、下地層42の傾斜面421には反射層43が形成されている。そのため、放熱性の低下を抑制しながら、光の取り出し効率を向上することができる。さらに、反射層43がp側電極の機能を有するため、半導体発光素子4の製造コストを低減することができる。
【0094】
また、下地層42が、半導体積層部10の第1の面10a上で溝部41とp型領域17との間で延在する面上部(第3の部分)42cを有するため、反射層43とp型領域17以外の部分とを面上部分42cによって絶縁することができる。
【0095】
実施の形態3.
図12は、実施の形態3の光プリントヘッド7を示す断面図である。光プリントヘッド7は、電子写真プロセスを用いる画像形成装置の露光装置である。
図12に示すように、光プリントヘッド7は、ベース部材74と、発光素子基板71と、レンズアレイ72と、レンズホルダ73と、バネ部材であるクランパ75とを備えている。
【0096】
発光素子基板71上には、実施の形態2で説明した発光素子アレイ5A(
図11)と、発光素子アレイ5Aを駆動する駆動回路とが搭載されている。発光素子アレイ5Aは、
図11に示したようにX方向に配列された複数の半導体発光素子4を有する。
【0097】
レンズアレイ72は、発光素子アレイ5Aから出射された光を像担持体としての感光体ドラム上に結像させる光学レンズ群であり、複数の正立等倍結像レンズを含む。レンズホルダ73は、レンズアレイ72の所定の位置に保持する。クランパ75は、ベース部材74の開口部74aおよびレンズホルダ73の開口部73aを介して、各構成部品を挟み付けて保持する。
【0098】
ベース部材74は、発光素子基板71を固定するための部材である。ベース部材74の側面には、クランパ75を用いて、発光素子基板71およびレンズホルダ73をベース部材74に固定するための開口部74aが設けられている。
【0099】
光プリントヘッド7では、イメージデータに応じて、複数の半導体発光素子1の何れかが発光し、半導体発光素子1から出射された光はレンズアレイ72により像担持体としての感光体ドラム(後述する
図13参照)上で結像される。これにより、感光体ドラムに静電潜像が形成され、その後、現像工程、転写工程、定着工程を経て、記録媒体(例えば用紙)上に現像剤からなる画像が形成される。
【0100】
なお、ここでは発光素子基板71に発光素子アレイ5Aを配置したが、変形例の発光素子アレイ5(
図7)を配置しても良い。
【0101】
実施の形態3の光プリントヘッド7は、光の取り出し効率の高い実施の形態1または2の半導体発光素子を備えているため、これを画像形成装置に搭載することで、印字品質を向上させることができる。
【0102】
実施の形態4.
図13は、実施の形態4の画像形成装置8の基本構成を示す図である。画像形成装置8は、露光装置として光プリントヘッド7を用いた電子写真式プリンタである。
図13に示されるように、画像形成装置8は、記録媒体Pを供給する媒体供給部81と、電子写真方式により画像を形成する4つのプロセスユニット80Y,80M,80C,80Kと、転写部材としての転写ローラ82と、画像を記録媒体Pに定着する定着装置83と、記録媒体Pを排出する媒体排出部84とを有する。
【0103】
媒体供給部81は、記録媒体Pを収納する媒体カセット811と、媒体カセット811の記録媒体Pを1枚ずつ送り出すホッピングローラ812と、記録媒体Pの搬送方向においてホッピングローラ812の下流に配置された搬送ローラ813およびピンチローラ814と、記録媒体Pの斜行を修正してプロセスユニット80Y,80M,80C,80Kに搬送するレジストローラ815,816とを有する。
【0104】
プロセスユニット80Y,80M,80C,80Kは、記録媒体Pの搬送経路に沿って順に配置されている。プロセスユニット80Y,80M,80C,80Kは、電子写真方式を用いて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の画像を形成する。プロセスユニット80Y,80M,80C,80Kは、画像形成ユニットとも称する。
【0105】
プロセスユニット80Y,80M,80C,80Kは、トナーを除き、互いに同じ構成を有するため、プロセスユニット80として説明する。プロセスユニット80は、像担持体としての感光体ドラム801を有する。感光体ドラム801には、露光装置としての光プリントヘッド7が対向するように配置されている。プロセスユニット80は、また、帯電部材としての帯電ローラ802と、現像部803とを有する。
【0106】
帯電ローラ802は、感光体ドラム801の表面を一様に帯電する。光プリントヘッド7は、帯電された感光体ドラム801の表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する。現像部803は、現像剤担持体としての現像ローラ804と、供給部材としての供給ローラ805とを有し、感光体ドラム801の表面の静電潜像にトナー(現像剤)を供給して現像する。
【0107】
プロセスユニット80には、現像部803にトナーを補給するための現像剤収容器としてのトナーカートリッジ806が着脱可能に取り付けられている。プロセスユニット80は、また、感光体ドラム801上の残留トナーを除去するクリーニング部材807を有する。
【0108】
転写ローラ82は、プロセスユニット80の感光体ドラム801に対向して配置され、感光体ドラム801のトナー像(現像剤像)を記録媒体Pに転写する。
【0109】
定着装置83は、定着ローラ831と加圧ローラ832とを有し、記録媒体P上のトナー像を加熱・加圧して定着させる。媒体排出部84は、排出ローラ841,843と、排出ローラ841,843とそれぞれ対をなすピンチローラ842,844と、媒体スタッカ部845とを有する。
【0110】
なお、画像形成装置8は、記録媒体Pの印刷面を反転させる反転経路を含む反転部85を有してもよい。
【0111】
画像形成装置8の画像形成動作(印刷動作)は、以下の通りである。まず媒体供給部81のホッピングローラ812が回転し、媒体カセット811内の記録媒体Pを搬送路に送り出す。搬送路では、搬送ローラ813およびピンチローラ814が記録媒体Pを一枚ずつ分離して搬送する。さらに、レジストローラ815,816が所定のタイミングで回転し、記録媒体Pをプロセスユニット80Y,80M,80C,80Kに搬送する。
【0112】
各プロセスユニット80では、帯電ローラ802が感光体ドラム801の表面を一様に帯電させ、光プリントヘッド7が各色のイメージデータに応じて光を出射する。光プリントヘッド7の発光素子アレイ5A(
図12)から出射された光は、レンズアレイ72(
図12)を通過して感光体ドラム801の表面に収束し、感光体ドラム801の表面の感光層に静電潜像が形成される。
【0113】
感光体ドラム801の表面に形成された静電潜像は、現像部803によってトナーで現像され、トナー像となる。記録媒体Pは、感光体ドラム801と転写ローラ82との間を通過し、その際に、感光体ドラム801上のトナー像が記録媒体Pに転写される。記録媒体Pがプロセスユニット80Y,80M,80C,80Kを通過することにより、記録媒体P上に各色のトナー像が転写される。
【0114】
トナー像が転写された記録媒体Pは、定着装置83に送られる。定着装置83では、定着ローラ831および加圧ローラ832によりトナー像が加熱および加圧され、トナー像が溶融して記録媒体Pに定着する。トナー像が定着した記録媒体Pは、排出ローラ841,843によって画像形成装置8の外部に排出され、媒体スタッカ部845に積載される。これにより、記録媒体Pへの画像形成が完了する。
【0115】
実施の形態4の画像形成装置8は、露光装置として光プリントヘッド7を用いているため、印字品質を向上させることができる。
【0116】
実施の形態5.
図14は、実施の形態5の画像表示装置9の基本構成を示す図である。画像表示装置9は、実施の形態2で説明した半導体発光素子4を有する発光素子アレイ90を有する。発光素子アレイ90では、半導体発光素子4がX方向(行方向)とY方向(列方向)にマトリクス状に配置されている。
【0117】
画像表示装置9は、また、X方向に延在するアノード配線51と、Y方向に延在するカソード配線52とを有する。各列の半導体発光素子4は、共通のカソード配線52上に配置されている。各行の半導体発光素子4は、共通のアノード配線51で接続されている。
【0118】
各半導体発光素子4では、p型領域17とアノード配線51とが、n側電極としての反射層43で接続されている。
【0119】
各アノード配線51は、アノード配線引き出しパッド55に接続されており、このアノード配線引き出しパッド55を介して、駆動回路に電気的に接続されている。各カソード配線52は、カソード配線引き出しパッド56に接続されており、このカソード配線引き出しパッド56を介して、駆動回路に電気的に接続されている。
【0120】
駆動回路からの信号に応じて、特定の行および特定の列の半導体発光素子4に、アノード配線51およびカソード配線52を介して駆動電流が流れ、当該半導体発光素子4の発光領域18において光が発生する。
【0121】
半導体発光素子4は、反射層43を有することで光の取り出し効率が改善されているため、画像表示装置9における光の取り出し効率を向上することができる。
【0122】
ここでは、実施の形態2の半導体発光素子4を用いたが、実施の形態1の半導体発光素子1を用いてもよい。
【0123】
以上、望ましい実施の形態について具体的に説明したが、本開示は上記の実施の形態に限定されるものではなく、各種の改良または変形を行なうことができる。
【0124】
以下に、本開示の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
(付記1)
第1の面を有する半導体積層部であって、前記第1の面から前記半導体積層部の内部にかけて形成された第1導電型の半導体領域と、第2導電型の発光層とを有し、前記半導体領域と前記発光層との間に発光領域が形成された半導体積層部と、
前記第1の面を覆い、光を透過する有機材料膜と
を有し、
前記半導体積層部は、
前記第1の面から前記半導体積層部の内部に形成され、前記第1の面と平行な方向において前記半導体領域に対向する溝部と、
前記溝部に形成された下地層であって、前記半導体領域に近づくほど前記第1の面からの深さが深くなるように傾斜する傾斜面を有する下地層と、
前記下地層の傾斜面に形成され、光を反射する反射層と
を有することを特徴とする半導体発光素子。
(付記2)
前記溝部の前記第1の面からの深さは、前記発光領域の前記第1の面からの深さ以上である
ことを特徴とする付記1に記載の半導体発光素子。
(付記3)
前記半導体積層部は、前記第1の面と反対側に半導体基板を有し、
前記溝部は、前記第1の面から前記半導体基板に到達するように形成されている
ことを特徴とする付記1または2に記載の半導体発光素子。
(付記4)
前記下地層は、前記第1の面に直交する方向において、前記発光領域と重なり合わない位置に形成されている
ことを特徴とする付記1から3までの何れか1項に記載の半導体発光素子。
(付記5)
前記下地層は、前記溝部の内部に形成された第1の部分と、前記第1の面上で前記溝部に対して前記発光領域と反対側に形成された第2の部分とを有し、
前記反射層は、前記第1の部分および前記第2の部分に形成されている
ことを特徴とする付記1から4までの何れか1項に記載の半導体発光素子。
(付記6)
前記第1の面上で前記半導体領域に形成された電極をさらに有する
ことを特徴とする付記1から5までの何れか1項に記載の半導体発光素子。
(付記7)
前記反射層は、前記第1の面上の前記半導体領域から、前記溝部を経由して配線部まで延在し、電極として機能する
ことを特徴とする付記1から5までの何れか1項に記載の半導体発光素子。
(付記8)
前記下地層は、前記第1の面上において、前記溝部と前記半導体領域との間で延在する第3の部分を有する
ことを特徴とする付記7に記載の半導体発光素子。
(付記9)
前記第1導電型は、p型であり、
前記第2導電型は、n型である
ことを特徴とする付記1から8までの何れか1項に記載の半導体発光素子。
(付記10)
前記半導体領域に拡散されている不純物はZnであることを特徴とする付記1から9までの何れか1項に記載の半導体発光素子。
(付記11)
付記1から10までの何れか1項に記載の半導体発光素子を有することを特徴とする露光装置。
(付記12)
像担持体と、
前記像担持体を露光する、付記11に記載の露光装置と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
(付記13)
付記1から10までの何れか1項に記載の半導体発光素子を有することを特徴とする画像表示装置。
【符号の説明】
【0125】
1,4 半導体発光素子、 5 発光素子アレイ、 6 半導体発光素子、 7 光プリントヘッド、 8 画像形成装置、 9 画像表示装置、 10 半導体積層部、 10a 第1の面、 10b 第2の面、 11 コンタクト層、 12 電流拡散層、 13 拡散電流阻止層、 14 発光層、 15 拡散阻止層、 15 電流拡散阻止層、 16 半導体基板、 17 p型領域(半導体領域)、 18 発光領域、 19 有機材料膜、 21 溝部、 22 下地層、 22a 溝内部分(第1の部分)、 22b 面上部分(第2の部分)、 23 反射層、 23a 第1の部分、 23b 第2の部分、 23e 下端、 24 積層体、 31 p側電極(電極)、 32 n側電極、 41 溝部、 42 下地層、 42a 溝内部分(第1の部分)、 42b 面上部分(第2の部分)、 42c 面上部分(第3の部分)、 43 反射層、 43a 第1の部分、 43b 第2の部分、 43c 第3の部分、 43d 第4の部分、 43e 接続部、 45 分離溝、 51 アノード配線(配線部、第1の配線部)、 52 カソード配線(第2の配線部)、 71 発光素子基板、 72 レンズアレイ、 73 レンズホルダ、 80,80Y,80M,80C,80K プロセスユニット、 81 媒体供給部、 82 転写ローラ、 83 定着装置、 84 媒体排出部、 85 反転部、 90 発光素子アレイ、 101 n型半導体層(エピタキシャル層)、 102 第1の半導体層、 221 傾斜面、 222 頂面、 421 傾斜面、 422 頂面、 423 逆傾斜面、 L1 光、 L2 出力光、 L3 膜内伝搬光、 L4 反射光、 L5 積層部内伝搬光。