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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154867
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20241024BHJP
   G02F 1/1343 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
G02F1/1337
G02F1/1343
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069061
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】512225287
【氏名又は名称】堺ディスプレイプロダクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(72)【発明者】
【氏名】平田 貢祥
【テーマコード(参考)】
2H092
2H290
【Fターム(参考)】
2H092GA13
2H092HA04
2H092JA24
2H092JB05
2H092NA04
2H092PA01
2H092PA02
2H092PA08
2H092PA09
2H092PA11
2H092QA09
2H290AA35
2H290BA53
2H290BA66
2H290BB44
2H290BB53
2H290BF24
2H290BF25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】配向膜でプレチルト方向を規定することによって配向分割構造が形成されたVAモードの液晶表示装置において、液晶配向の非連続点に起因する表示不良を抑制する。
【解決手段】液晶表示装置は、画素電極および第1配向膜を有する第1基板と、対向電極および第2配向膜を有する第2基板と、垂直配向型の液晶層とを備える。各画素は、第1および第2配向膜によって規定される基準配向方向が互いに異なる第1~第4液晶ドメインを有する。画素電極は、第1~第4液晶ドメインに対応する第1~第4スリット形成領域と、第2および第3スリット形成領域の間に位置する境界領域とを有する。境界領域は、画素短手方向に略平行に延びるn個(nは3以上の整数)の境界スリットと、それぞれが隣接する2個の境界スリット間に位置する(n-1)個の第1連結部と、それぞれが隣接する2個の第1連結部間に位置する(n-2)個の窪みパターンとを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1基板および第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた垂直配向型の液晶層と、を備え、
複数の画素を有する液晶表示装置であって、
前記第1基板は、前記複数の画素のそれぞれに設けられた画素電極と、前記画素電極と前記液晶層との間に設けられた第1配向膜とを有し、
前記第2基板は、前記画素電極に対向する対向電極と、前記対向電極と前記液晶層との間に設けられた第2配向膜とを有し、
前記複数の画素のそれぞれは、前記第1配向膜および前記第2配向膜によって規定される基準配向方向が互いに異なる第1液晶ドメイン、第2液晶ドメイン、第3液晶ドメインおよび第4液晶ドメインを有し、
前記複数の画素のそれぞれの長手方向および短手方向をそれぞれ画素長手方向および画素短手方向と呼び、前記第1液晶ドメイン、前記第2液晶ドメイン、前記第3液晶ドメインおよび前記第4液晶ドメインの前記基準配向方向をそれぞれ第1方向、第2方向、第3方向および第4方向と呼ぶとき、前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向および前記第4方向は、前記画素短手方向に対して45°の奇数倍に略等しい角をなし、
前記第1液晶ドメイン、前記第2液晶ドメイン、前記第3液晶ドメインおよび前記第4液晶ドメインは、前記画素長手方向に沿ってこの順に並ぶように配置されており、
前記画素短手方向の方位角を0°とするとき、前記第2方向および前記第3方向は、それぞれ略135°方向および略315°方向であるか、または、それぞれ略45°方向および略225°方向であり、
前記画素電極は、
前記第1液晶ドメインに対応する領域であり、前記第1方向に略平行に延びる複数の第1スリットが形成された第1スリット形成領域と、
前記第2液晶ドメインに対応する領域であり、前記第2方向に略平行に延びる複数の第2スリットが形成された第2スリット形成領域と、
前記第3液晶ドメインに対応する領域であり、前記第3方向に略平行に延びる複数の第3スリットが形成された第3スリット形成領域と、
前記第4液晶ドメインに対応する領域であり、前記第4方向に略平行に延びる複数の第4スリットが形成された第4スリット形成領域と、
前記第2スリット形成領域と前記第3スリット形成領域との間に位置する境界領域と、
を有し、
前記境界領域は、
それぞれが前記画素短手方向に略平行に延びるn個(nは3以上の整数)の境界スリットであって、前記画素短手方向に沿って並ぶn個の境界スリットと、
それぞれが前記n個の境界スリットのうちの互いに隣接する2個の境界スリット間に位置し、前記第2スリット形成領域と前記第3スリット形成領域とを連結する(n-1)個の第1連結部と、
それぞれが前記(n-1)個の第1連結部のうちの互いに隣接する2個の第1連結部間に位置する(n-2)個の窪みパターンであって、前記2個の第1連結部間に位置する境界スリットから前記第2スリット形成領域側に窪むように形成された第1窪み部および前記第3スリット形成領域側に窪むように形成された第2窪み部をそれぞれが含む(n-2)個の窪みパターンと、
を含む、液晶表示装置。
【請求項2】
前記(n-2)個の窪みパターンのそれぞれから、当該窪みパターンに隣接する2個の第1連結部のそれぞれまでの距離は、10μm以上30μm以下である、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記(n-1)個の第1連結部のそれぞれの、前記画素短手方向に沿った幅は、2.5μm以上3.5μm以下である、請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第1窪み部および前記第2窪み部のそれぞれの、前記画素長手方向に沿った長さは、1.5μm以上である、請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記境界領域は、前記画素電極の前記画素短手方向における両端に位置し、前記第2スリット形成領域と前記第3スリット形成領域とを連結する2個の第2連結部をさらに含む、請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記2個の第2連結部のそれぞれの、前記画素短手方向に沿った幅は、6.0μm以上である、請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
互いに対向する第1基板および第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた垂直配向型の液晶層と、を備え、
複数の画素を有する液晶表示装置であって、
前記第1基板は、前記複数の画素のそれぞれに設けられた画素電極と、前記画素電極と前記液晶層との間に設けられた第1配向膜とを有し、
前記第2基板は、前記画素電極に対向する対向電極と、前記対向電極と前記液晶層との間に設けられた第2配向膜とを有し、
前記複数の画素のそれぞれは、前記第1配向膜および前記第2配向膜によって規定される基準配向方向が互いに異なる第1液晶ドメイン、第2液晶ドメイン、第3液晶ドメインおよび第4液晶ドメインを有し、
前記複数の画素のそれぞれの長手方向および短手方向をそれぞれ画素長手方向および画素短手方向と呼び、前記第1液晶ドメイン、前記第2液晶ドメイン、前記第3液晶ドメインおよび前記第4液晶ドメインの前記基準配向方向をそれぞれ第1方向、第2方向、第3方向および第4方向と呼ぶとき、前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向および前記第4方向は、前記画素短手方向に対して45°の奇数倍に略等しい角をなし、
前記第1液晶ドメイン、前記第2液晶ドメイン、前記第3液晶ドメインおよび前記第4液晶ドメインは、前記画素長手方向に沿ってこの順に並ぶように配置されており、
前記画素短手方向の方位角を0°とするとき、前記第2方向および前記第3方向は、それぞれ略135°方向および略315°方向であるか、または、それぞれ略45°方向および略225°方向であり、
前記画素電極は、
前記第1液晶ドメインに対応する領域であり、前記第1方向に略平行に延びる複数の第1スリットが形成された第1スリット形成領域と、
前記第2液晶ドメインに対応する領域であり、前記第2方向に略平行に延びる複数の第2スリットが形成された第2スリット形成領域と、
前記第3液晶ドメインに対応する領域であり、前記第3方向に略平行に延びる複数の第3スリットが形成された第3スリット形成領域と、
前記第4液晶ドメインに対応する領域であり、前記第4方向に略平行に延びる複数の第4スリットが形成された第4スリット形成領域と、
前記第2スリット形成領域と前記第3スリット形成領域との間に位置する境界領域と、
を有し、
前記境界領域は、
それぞれが前記画素短手方向に略平行に延びるn個(nは3以上の整数)の境界スリットであって、前記画素短手方向に沿って並ぶn個の境界スリットと
それぞれが前記n個の境界スリットのうちの互いに隣接する2個の境界スリット間に位置し、前記第2スリット形成領域と前記第3スリット形成領域とを連結する(n-1)個の第1連結部と、
を含み、
前記n個の境界スリットのうちの、互いに隣接する2個の第1連結部間に位置する境界スリットは、前記画素短手方向に略平行に延びる第1部分と、前記画素短手方向に略平行に延び、前記画素長手方向における位置が第1部分とずれている第2部分とを有する、液晶表示装置。
【請求項8】
前記第2方向および前記第3方向は、それぞれ略45°方向および略225°方向であり、
前記第2部分は、前記第1部分に対して略0°方向に隣接しており、
前記第2部分の前記画素長手方向における位置は、第1部分から90°方向にずれている、請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記第2方向および前記第3方向は、それぞれ略135°方向および略315°方向であり、
前記第2部分は、前記第1部分に対して略0°方向に隣接しており、
前記第2部分の前記画素長手方向における位置は、第1部分から270°方向にずれている、請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記第1部分および前記第2部分のそれぞれの、前記画素短手方向に沿った長さは、10μm以上30μm以下である、請求項7から9のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記(n-1)個の第1連結部のそれぞれの、前記画素短手方向に沿った幅は、2.5μm以上3.5μm以下である、請求項7から9のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項12】
第1部分と前記第2部分との、前記画素長手方向における位置のずれ量は、1.5μm以上である、請求項7から9のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記境界領域は、前記画素電極の前記画素短手方向における両端に位置し、前記第2スリット形成領域と前記第3スリット形成領域とを連結する2個の第2連結部をさらに含む、請求項7から9のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記2個の第2連結部のそれぞれの、前記画素短手方向に沿った幅は、6.0μm以上である、請求項13に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記第1配向膜および前記第2配向膜のそれぞれは、光配向膜である請求項1、2、7、8および9のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記第1液晶ドメイン、前記第2液晶ドメイン、前記第3液晶ドメインおよび前記第4液晶ドメインのそれぞれにおいて、前記第1配向膜によって規定されるプレチルト方向と、前記第2配向膜によって規定されるプレチルト方向とは略反平行である請求項1、2、7、8および9のいずれかに記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、垂直配向型の液晶層を備え、配向膜によって液晶分子のプレチルト方向が規定される液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
VA(Vertical Alignment)モードの液晶表示装置の視野角特性を改善する手法として、1つの画素に複数の液晶ドメインを形成する配向分割構造が知られている。配向分割構造を形成する方式として、近年、4D-RTN(Reverse Twisted Nematic)モードが提案されている。
【0003】
4D-RTNモードでは、配向膜で液晶分子のプレチルト方向を規定することによって配向分割構造が形成される。4D-RTNモードの液晶表示装置は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている液晶表示装置では、配向膜でプレチルト方向を規定することによって、4分割配向構造が形成される。つまり、液晶層に電圧が印加されたときに、1つの画素内に4つの液晶ドメインが形成される。このような4分割配向構造を、単に4D構造と呼ぶことがある。
【0004】
また、特許文献1の液晶表示装置では、液晶層を介して対向する一対の配向膜のうちの一方の配向膜によって規定されるプレチルト方向と、他方の配向膜によって規定されるプレチルト方向とは互いに略90°異なっている。そのため、電圧印加時には、液晶分子はツイスト配向をとる。特許文献1の開示内容から理解されるように、4D-RTNモードでは、典型的には、画素内で4つの液晶ドメインが2行2列に配置される。
【0005】
特許文献2にも、配向膜でプレチルト方向を規定することによって配向分割構造が形成されるVAモードの液晶表示装置が開示されている。特許文献2に開示されている液晶表示装置では、一対の配向膜のうちの一方の配向膜によって規定されるプレチルト方向と、他方の配向膜によって規定されるプレチルト方向とは反平行である。そのため、電圧印加時に、液晶分子はツイスト配向をとらない。特許文献2に開示されている表示モードは、4D-ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードと呼ばれる。
【0006】
特許文献2の液晶表示装置では、画素内で4つの液晶ドメインは、4行1列に配置される。図34に、特許文献2に開示されているドメイン配置を示す。図34に示す画素900Pは、4つの液晶ドメインA、B、CおよびDを有する。図34には、各液晶ドメインのディレクタ(基準配向方向)が模式的にピン状に示されている。表示面を時計の文字盤に見立て、3時方向を方位角0°、反時計回りを正とすると、液晶ドメインA、B、CおよびDのディレクタは、それぞれ315°方向、45°方向、225°方向および135°方向である。
【0007】
画素900P内において、液晶ドメインA、B、CおよびDは、上側から下側に向かって(つまり画素の長手方向に沿って)この順に並ぶように配置されている。液晶ドメインAと液晶ドメインBとでは、ディレクタの方位が90°異なる。また、液晶ドメインBと液晶ドメインCとでは、ディレクタの方位が180°異なり、液晶ドメインCと液晶ドメインDとでは、ディレクタの方位が90°異なる。
【0008】
図35に、特許文献2に開示されている画素電極911を示す。画素電極911は、液晶ドメインAおよびBに対応する第1画素電極部911P1と、液晶ドメインCおよびDに対応する第2画素電極部911P2とを有する。
【0009】
第1画素電極部911P1は、液晶ドメインAに対応する領域である第1スリット形成領域911R1と、液晶ドメインBに対応する領域である第2スリット形成領域911R2とを含む。第1スリット形成領域911R1には、液晶ドメインAのディレクタに平行に延びる複数のスリット911s1が形成されている。第2スリット形成領域911R2には、液晶ドメインBのディレクタに平行に延びる複数のスリット911s2が形成されている。
【0010】
第2画素電極部911P2は、液晶ドメインCに対応する領域である第3スリット形成領域911R3と、液晶ドメインDに対応する領域である第4スリット形成領域911R4とを含む。第3スリット形成領域911R3には、液晶ドメインCのディレクタに平行に延びる複数のスリット911s3が形成されている。第4スリット形成領域911R4には、液晶ドメインDのディレクタに平行に延びる複数のスリット911s4が形成されている。
【0011】
上述したようなスリット911s1、911s2、911s3および911s4が画素電極911に形成されていることにより、画素900P内に発生する暗線の幅を小さくし、透過率を向上させることができる。
【0012】
また、画素電極911は、第1画素電極部911P1と第2画素電極部911P2との間に設けられた連結部911P3および一対の切り欠き部911uをさらに有している。連結部911P3は、画素電極911の幅方向(画素900Pの短手方向)における中心部に位置しており、第1画素電極部911P1と第2画素電極部911P2とを連結している。一対の切り欠き部911uは、連結部911P3の両側に形成されている。
【0013】
液晶層に電圧が印加されて図34に示すような4つの液晶ドメインA、B、CおよびDが形成されると、液晶ドメインBと液晶ドメインCとの間、つまり、第1画素電極部911P1と第2画素電極部911P2との間に、二重暗線が発生する。特許文献2の液晶表示装置では、第1画素電極部911P1と第2画素電極部911P2との間に切り欠き部911uが設けられていることにより、二重暗線の面積を低減させることができる。また、二重暗線の回位(液晶配向の非連続点)が、連結部911P3上に発生するようになる(つまり回位の発生位置が固定される)ので、配向が安定化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2006/132369号
【特許文献2】国際公開第2020/044557号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、本願発明者が詳細な検討を行ったところ、特許文献2に開示されている電極構造を採用した場合であっても、画素サイズが比較的大きく、切り欠き部911uが長いときには、切り欠き部911u上に新たな回位が発生し得ることがわかった。新たな回位は、その発生位置がばらつくので、残像などの表示不良の原因となる。切り欠き部911uをブラックマトリクスなどにより遮光することも考えられるが、その場合には透過率が低下してしまう。
【0016】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、配向膜でプレチルト方向を規定することによって配向分割構造が形成されたVAモードの液晶表示装置において、液晶配向の非連続点に起因する表示不良を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願明細書は、以下の項目に記載の液晶表示装置を開示している。
【0018】
[項目1]
互いに対向する第1基板および第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた垂直配向型の液晶層と、を備え、
複数の画素を有する液晶表示装置であって、
前記第1基板は、前記複数の画素のそれぞれに設けられた画素電極と、前記画素電極と前記液晶層との間に設けられた第1配向膜とを有し、
前記第2基板は、前記画素電極に対向する対向電極と、前記対向電極と前記液晶層との間に設けられた第2配向膜とを有し、
前記複数の画素のそれぞれは、前記第1配向膜および前記第2配向膜によって規定される基準配向方向が互いに異なる第1液晶ドメイン、第2液晶ドメイン、第3液晶ドメインおよび第4液晶ドメインを有し、
前記複数の画素のそれぞれの長手方向および短手方向をそれぞれ画素長手方向および画素短手方向と呼び、前記第1液晶ドメイン、前記第2液晶ドメイン、前記第3液晶ドメインおよび前記第4液晶ドメインの前記基準配向方向をそれぞれ第1方向、第2方向、第3方向および第4方向と呼ぶとき、前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向および前記第4方向は、前記画素短手方向に対して45°の奇数倍に略等しい角をなし、
前記第1液晶ドメイン、前記第2液晶ドメイン、前記第3液晶ドメインおよび前記第4液晶ドメインは、前記画素長手方向に沿ってこの順に並ぶように配置されており、
前記画素短手方向の方位角を0°とするとき、前記第2方向および前記第3方向は、それぞれ略135°方向および略315°方向であるか、または、それぞれ略45°方向および略225°方向であり、
前記画素電極は、
前記第1液晶ドメインに対応する領域であり、前記第1方向に略平行に延びる複数の第1スリットが形成された第1スリット形成領域と、
前記第2液晶ドメインに対応する領域であり、前記第2方向に略平行に延びる複数の第2スリットが形成された第2スリット形成領域と、
前記第3液晶ドメインに対応する領域であり、前記第3方向に略平行に延びる複数の第3スリットが形成された第3スリット形成領域と、
前記第4液晶ドメインに対応する領域であり、前記第4方向に略平行に延びる複数の第4スリットが形成された第4スリット形成領域と、
前記第2スリット形成領域と前記第3スリット形成領域との間に位置する境界領域と、
を有し、
前記境界領域は、
それぞれが前記画素短手方向に略平行に延びるn個(nは3以上の整数)の境界スリットであって、前記画素短手方向に沿って並ぶn個の境界スリットと、
それぞれが前記n個の境界スリットのうちの互いに隣接する2個の境界スリット間に位置し、前記第2スリット形成領域と前記第3スリット形成領域とを連結する(n-1)個の第1連結部と、
それぞれが前記(n-1)個の第1連結部のうちの互いに隣接する2個の第1連結部間に位置する(n-2)個の窪みパターンであって、前記2個の第1連結部間に位置する境界スリットから前記第2スリット形成領域側に窪むように形成された第1窪み部および前記第3スリット形成領域側に窪むように形成された第2窪み部をそれぞれが含む(n-2)個の窪みパターンと、
を含む、液晶表示装置。
【0019】
[項目2]
前記(n-2)個の窪みパターンのそれぞれから、当該窪みパターンに隣接する2個の第1連結部のそれぞれまでの距離は、10μm以上30μm以下である、項目1に記載の液晶表示装置。
【0020】
[項目3]
前記(n-1)個の第1連結部のそれぞれの、前記画素短手方向に沿った幅は、2.5μm以上3.5μm以下である、項目1または2に記載の液晶表示装置。
【0021】
[項目4]
前記第1窪み部および前記第2窪み部のそれぞれの、前記画素長手方向に沿った長さは、1.5μm以上である、項目1から3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0022】
[項目5]
前記境界領域は、前記画素電極の前記画素短手方向における両端に位置し、前記第2スリット形成領域と前記第3スリット形成領域とを連結する2個の第2連結部をさらに含む、項目1から4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0023】
[項目6]
前記2個の第2連結部のそれぞれの、前記画素短手方向に沿った幅は、6.0μm以上である、項目5に記載の液晶表示装置。
【0024】
[項目7]
互いに対向する第1基板および第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた垂直配向型の液晶層と、を備え、
複数の画素を有する液晶表示装置であって、
前記第1基板は、前記複数の画素のそれぞれに設けられた画素電極と、前記画素電極と前記液晶層との間に設けられた第1配向膜とを有し、
前記第2基板は、前記画素電極に対向する対向電極と、前記対向電極と前記液晶層との間に設けられた第2配向膜とを有し、
前記複数の画素のそれぞれは、前記第1配向膜および前記第2配向膜によって規定される基準配向方向が互いに異なる第1液晶ドメイン、第2液晶ドメイン、第3液晶ドメインおよび第4液晶ドメインを有し、
前記複数の画素のそれぞれの長手方向および短手方向をそれぞれ画素長手方向および画素短手方向と呼び、前記第1液晶ドメイン、前記第2液晶ドメイン、前記第3液晶ドメインおよび前記第4液晶ドメインの前記基準配向方向をそれぞれ第1方向、第2方向、第3方向および第4方向と呼ぶとき、前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向および前記第4方向は、前記画素短手方向に対して45°の奇数倍に略等しい角をなし、
前記第1液晶ドメイン、前記第2液晶ドメイン、前記第3液晶ドメインおよび前記第4液晶ドメインは、前記画素長手方向に沿ってこの順に並ぶように配置されており、
前記画素短手方向の方位角を0°とするとき、前記第2方向および前記第3方向は、それぞれ略135°方向および略315°方向であるか、または、それぞれ略45°方向および略225°方向であり、
前記画素電極は、
前記第1液晶ドメインに対応する領域であり、前記第1方向に略平行に延びる複数の第1スリットが形成された第1スリット形成領域と、
前記第2液晶ドメインに対応する領域であり、前記第2方向に略平行に延びる複数の第2スリットが形成された第2スリット形成領域と、
前記第3液晶ドメインに対応する領域であり、前記第3方向に略平行に延びる複数の第3スリットが形成された第3スリット形成領域と、
前記第4液晶ドメインに対応する領域であり、前記第4方向に略平行に延びる複数の第4スリットが形成された第4スリット形成領域と、
前記第2スリット形成領域と前記第3スリット形成領域との間に位置する境界領域と、
を有し、
前記境界領域は、
それぞれが前記画素短手方向に略平行に延びるn個(nは3以上の整数)の境界スリットであって、前記画素短手方向に沿って並ぶn個の境界スリットと
それぞれが前記n個の境界スリットのうちの互いに隣接する2個の境界スリット間に位置し、前記第2スリット形成領域と前記第3スリット形成領域とを連結する(n-1)個の第1連結部と、
を含み、
前記n個の境界スリットのうちの、互いに隣接する2個の第1連結部間に位置する境界スリットは、前記画素短手方向に略平行に延びる第1部分と、前記画素短手方向に略平行に延び、前記画素長手方向における位置が第1部分とずれている第2部分とを有する、液晶表示装置。
【0025】
[項目8]
前記第2方向および前記第3方向は、それぞれ略45°方向および略225°方向であり、
前記第2部分は、前記第1部分に対して略0°方向に隣接しており、
前記第2部分の前記画素長手方向における位置は、第1部分から90°方向にずれている、項目7に記載の液晶表示装置。
【0026】
[項目9]
前記第2方向および前記第3方向は、それぞれ略135°方向および略315°方向であり、
前記第2部分は、前記第1部分に対して略0°方向に隣接しており、
前記第2部分の前記画素長手方向における位置は、第1部分から270°方向にずれている、項目7に記載の液晶表示装置。
【0027】
[項目10]
前記第1部分および前記第2部分のそれぞれの、前記画素短手方向に沿った長さは、10μm以上30μm以下である、項目7から9のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0028】
[項目11]
前記(n-1)個の第1連結部のそれぞれの、前記画素短手方向に沿った幅は、2.5μm以上3.5μm以下である、項目7から10に記載の液晶表示装置。
【0029】
[項目12]
第1部分と前記第2部分との、前記画素長手方向における位置のずれ量は、1.5μm以上である、項目7から11のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0030】
[項目13]
前記境界領域は、前記画素電極の前記画素短手方向における両端に位置し、前記第2スリット形成領域と前記第3スリット形成領域とを連結する2個の第2連結部をさらに含む、項目7から12のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0031】
[項目14]
前記2個の第2連結部のそれぞれの、前記画素短手方向に沿った幅は、6.0μm以上である、項目13に記載の液晶表示装置。
【0032】
[項目15]
前記第1配向膜および前記第2配向膜のそれぞれは、光配向膜である項目1から14のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0033】
[項目16]
前記第1液晶ドメイン、前記第2液晶ドメイン、前記第3液晶ドメインおよび前記第4液晶ドメインのそれぞれにおいて、前記第1配向膜によって規定されるプレチルト方向と、前記第2配向膜によって規定されるプレチルト方向とは略反平行である項目1から15のいずれかに記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0034】
本発明の実施形態によると、配向膜でプレチルト方向を規定することによって配向分割構造が形成されたVAモードの液晶表示装置において、液晶配向の非連続点に起因する表示不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態による液晶表示装置100を模式的に示す断面図である。
図2】液晶表示装置100における画素Pの配向分割構造を示す図である。
図3A】画素Pの配向分割構造を得るための方法を説明するための図であり、アクティブマトリクス基板10の第1配向膜12によって規定されるプレチルト方向PD1、PD2、PD3およびPD4を示している。
図3B】画素Pの配向分割構造を得るための方法を説明するための図であり、対向基板20に設けられている第2配向膜22によって規定されるプレチルト方向PD5、PD6、PD7およびPD8を示している。
図3C】画素Pの配向分割構造を得るための方法を説明するための図であり、アクティブマトリクス基板10と対向基板20とを貼り合わせた後に液晶層30に電圧を印加したときのチルト方向(ディレクタ)を示している。
図4】液晶表示装置100を模式的に示す平面図であり、1つの画素Pに対応した領域を示している。
図5】液晶表示装置100の画素電極11を模式的に示す平面図である。
図6】画素電極11の境界領域BR近傍を拡大して示す平面図である。
図7A】液晶配向の2種類の非連続点のうちの一方について、非連続点近傍における液晶分子31の配向状態を示す図である。
図7B】液晶配向の2種類の非連続点のうちの他方について、非連続点近傍における液晶分子31の配向状態を示す図である。
図8A】境界領域BRの第1連結部11c1近傍における液晶分子31の配向状態を示す図である。
図8B】境界領域BRの窪みパターン11d近傍における液晶分子31の配向状態を示す図である。
図9】液晶表示装置100において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図10A】比較例1の画素電極11Aの境界領域BR近傍を示す平面図である。
図10B】比較例1の画素電極11Aを用いた場合において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図11A】比較例2の画素電極11Bの境界領域BR近傍を示す平面図である。
図11B】比較例2の画素電極11Bを用いた場合において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図12A】比較例3の画素電極11Cの境界領域BR近傍を示す平面図である。
図12B】比較例3の画素電極11Cを用いた場合において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図13A】比較例4の画素電極11Dの境界領域BR近傍を示す平面図である。
図13B】比較例4の画素電極11Dを用いた場合において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図14A】画素電極11の境界領域BRの構造の他の例を示す平面図である。
図14B図14Aに示した画素電極11を用いた場合において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図15】画素電極11の境界領域BR近傍を拡大して示す平面図である。
図16A】画素電極11の境界領域BRの構造のさらに他の例を示す平面図である。
図16B図16Aに示した画素電極11を用いた場合において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図17】本発明の実施形態による他の液晶表示装置200を模式的に示す平面図であり、1つの画素Pに対応した領域を示している。
図18】液晶表示装置200の画素電極11を模式的に示す平面図である。
図19】液晶表示装置200の画素電極11の境界領域BR近傍を拡大して示す平面図である。
図20】液晶表示装置200において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図21】本発明の実施形態によるさらに他の液晶表示装置300を模式的に示す平面図であり、1つの画素Pに対応した領域を示している。
図22】液晶表示装置300の画素電極11を模式的に示す平面図である。
図23】液晶表示装置300の画素電極11の境界領域BR近傍を拡大して示す平面図である。
図24】内側境界スリット11bsiの接続部p3近傍における液晶分子31の配向状態を示す図である。
図25】液晶表示装置300において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図26A】比較例5の画素電極11Eの境界領域BR近傍を示す平面図である。
図26B】比較例5の画素電極11Eを用いた場合において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図27A】比較例6の画素電極11Fの境界領域BR近傍を示す平面図である。
図27B】比較例6の画素電極11Fを用いた場合において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図28A】液晶表示装置300の画素電極11における境界領域BRの構造の他の例を示す平面図である。
図28B図28Aに示した画素電極11を用いた場合において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図29A】比較例7の画素電極11Gの境界領域BR近傍を示す平面図である。
図29B】比較例7の画素電極11Gを用いた場合において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図30】液晶表示装置300の画素電極11の境界領域BR近傍を拡大して示す平面図である。
図31】液晶表示装置100、200および300における画素Pの配向分割構造の他の例を示す図である。
図32図31に示す配向分割構造を採用した場合における、画素電極11の構造の例を示す平面図である。
図33図31に示す配向分割構造を採用した場合における、画素電極11の境界領域BRの構造の例を示す図である。
図34】特許文献2に開示されている画素900Pにおけるドメイン配置を示す図である。
図35】特許文献2に開示されている画素電極911を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[用語の説明]
まず、本願明細書において用いられる主な用語を説明する。
【0037】
本願明細書において、「垂直配向型の液晶層」とは、液晶分子が配向膜(垂直配向膜)の表面に対して略垂直に(例えば約85°以上の角度で)配向した液晶層をいう。垂直配向型の液晶層に含まれる液晶分子は、負の誘電率異方性を有する。垂直配向型の液晶層と、液晶層を介して互いに対向するようにクロスニコルに配置された(つまりそれぞれの透過軸が互いに略直交するように配置された)一対の偏光板とを組み合わせることにより、ノーマリブラックモードの表示が行われる。
【0038】
また、本願明細書において、「画素」とは、表示において特定の階調を表現する最小の単位を指し、カラー表示においては、例えば、R、GおよびBのそれぞれの階調を表現する単位に対応する。R画素、G画素およびB画素の組み合わせが、1つのカラー表示画素を構成する。また、本願明細書では、表示の「画素」に対応する液晶表示装置の領域(画素領域)も「画素」と呼ぶ。
【0039】
「プレチルト方向」は、配向膜によって規定される液晶分子の配向方向であって、表示面内の方位角方向を指す。また、このとき液晶分子が配向膜の表面となす角を「プレチルト角」と呼ぶ。配向膜への配向処理(配向膜に対し、所定の方向のプレチルト方向を規定する能力を発現させるための処理)は、後述するように光配向処理によって行われることが好ましい。
【0040】
液晶層を介して対向する一対の配向膜によるプレチルト方向の組み合わせを変えることによって、4分割構造を形成することができる。4分割された画素(画素領域)は、4つの液晶ドメインを有する。
【0041】
それぞれの液晶ドメインは、液晶層に電圧が印加されたときの液晶層の層面内および厚さ方向における中央付近の液晶分子のチルト方向(「基準配向方向」ということもある。)に特徴付けられ、このチルト方向(基準配向方向)が各ドメインの視角依存性に支配的な影響を与える。チルト方向は、チルトしている液晶分子の、背面側の基板に近い方の端部から遠い方の端部(つまり前面側の基板に近い方の端部)に向かうベクトル(後述する図3Cに示されているピンの先端から頭部に向かうベクトル)を考えたとき、このベクトルの、基板面内での成分(基板面内への投射影)が示す向きであり、方位角方向である。方位角方向の基準は、表示面の水平方向とし、左回りを正とする(表示面を時計の文字盤に例えると3時方向を方位角0°として、反時計回りを正とする)。4つの液晶ドメインのチルト方向が、任意の2つの方向のなす角が90°の整数倍に略等しい4つの方向(例えば、10時30分方向、7時30分方向、4時30分方向、1時30分方向)となるように設定することによって、視野角特性が平均化され、良好な表示を得ることができる。また、視野角特性の均一さの観点からは、4つの液晶ドメインの画素領域内に占める面積は互いに略等しくすることが好ましい。
【0042】
以下の実施形態で例示する垂直配向型の液晶層は、誘電率異方性が負の液晶分子(誘電率異方性が負のネマチック液晶材料)を含み、一方の配向膜によって規定されるプレチルト方向と、他方の配向膜によって規定されるプレチルト方向とは互いに略反平行である。これら2つのプレチルト方向のうち、背面側の配向膜によるプレチルト方向に略一致する方位角方向に、チルト方向(基準配向方向)が規定され、液晶層に電圧を印加したときに、液晶分子はツイスト配向をとらない。一対の配向膜のそれぞれによって規定されるプレチルト角は互いに略等しいことが好ましい。
【0043】
配向膜への配向処理としては、量産性の観点からは、光配向処理が好ましい。また、光配向処理は、非接触で処理できるので、ラビング処理のような摩擦による静電気の発生が無く、歩留まりの低下を防止することができる。さらに、感光性基を含む光配向膜を用いることによって、プレチルト角のばらつきを抑制できる。
【0044】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0045】
[実施形態1]
図1を参照しながら、本実施形態における液晶表示装置100を説明する。図1は、液晶表示装置100を模式的に示す断面図である。
【0046】
図1に示すように、液晶表示装置100は、液晶表示パネル101と、バックライト(照明装置)102とを備える。液晶表示パネル101は、互いに対向するアクティブマトリクス基板(第1基板)10および対向基板(第2基板)20と、これらの間に設けられた垂直配向型の液晶層30とを有する。バックライト102は、液晶表示パネル101の背面側(観察者とは反対側)に配置されている。また、液晶表示装置100は、マトリクス状に配列された複数の画素を有する。
【0047】
アクティブマトリクス基板10は、複数の画素のそれぞれに設けられた画素電極11と、画素電極11と液晶層30との間(つまりアクティブマトリクス基板10の液晶層30側の最表面)に設けられた第1配向膜12とを有する。画素電極11および第1配向膜12は、基板10aの液晶層30側の表面上に、この順に設けられている。つまり、画素電極11および第1配向膜12は、基板10aによって支持されている。
【0048】
基板10aは、透明で絶縁性を有する。基板10aは、例えばガラス基板またはプラスチック基板である。
【0049】
画素電極11は、透明な導電材料(例えばITO)から形成されている。画素電極11は、複数のスリット11sを有する。
【0050】
なお、ここでは図示しないが、アクティブマトリクス基板10は、上述した画素電極11および第1配向膜12の他に、画素電極11に電気的に接続された薄膜トランジスタ(TFT)や、TFTに走査信号(ゲート信号)を供給するゲート配線、TFTに表示信号(ソース信号)を供給するソース配線などを有する。
【0051】
対向基板20は、画素電極11に対向する対向電極21と、対向電極21と液晶層30との間(つまり対向基板20の液晶層30側の最表面)に設けられた第2配向膜22とを有する。対向電極21および第2配向膜22は、基板20aの液晶層30側の表面上に、この順に設けられている。つまり、対向電極21および第2配向膜22は、基板20aによって支持されている。
【0052】
基板20aは、透明で絶縁性を有する。基板20aは、例えばガラス基板またはプラスチック基板である。
【0053】
対向電極21は、透明な導電材料(例えばITO)から形成されている。対向電極21は、表示領域全体にわたって形成された連続した導電膜であってよい。つまり、対向電極21は、すべての画素について共通の電位を与えられる共通電極であってよい。
【0054】
なお、ここでは図示していないが、対向基板20は、上述した対向電極21および第2光配向膜22の他に、カラーフィルタ層および遮光層(ブラックマトリクス)を有する。カラーフィルタ層は、典型的には、赤カラーフィルタ、緑カラーフィルタおよび青カラーフィルタを含む。
【0055】
第1配向膜12および第2配向膜22は、液晶分子をその表面に略垂直に配向させる配向規制力を有する。本実施形態では、第1配向膜12および第2配向膜22には、光配向処理が行われている。つまり、第1配向膜12および第2配向膜22のそれぞれは、光配向膜である。
【0056】
液晶表示装置100は、さらに、液晶層30を介して互いに対向する一対の偏光板41および42を備える。一対の偏光板41および42は、それぞれの透過軸が互いに略直交するように(つまりクロスニコルに)配置されている。
【0057】
続いて、図2を参照しながら、液晶表示装置100の各画素Pにおける配向分割構造を説明する。
【0058】
本実施形態では、各画素Pは、長手方向D1および短手方向D2が規定される略長方形状である。以下では、画素Pの長手方向D1および短手方向D2を、それぞれ「画素長手方向D1」および「画素短手方向D2」と呼ぶことがある。
【0059】
画素電極11と対向電極21との間に電圧が印加されたとき、各画素P内において、図2に示すように、液晶層30に4つの液晶ドメインA、B、CおよびDが形成される。液晶ドメインA、B、CおよびDのそれぞれに含まれる液晶分子の配向方向を代表する4つのディレクタ(基準配向方向)t1、t2、t3およびt4の方位は、互いに異なる。液晶ドメインA、B、CおよびDのディレクタは、第1配向膜12および第2配向膜22によって規定される。
【0060】
表示面における水平方向の方位角(3時方向)を0°とすると、液晶ドメインAのディレクタt1の方位は略315°方向、液晶ドメインBのディレクタt2の方位は略45°方向、液晶ドメインCのディレクタt3の方位は略225°方向、液晶ドメインDのディレクタt4の方位は略135°方向である。つまり、液晶ドメインA、B、CおよびDの4つのディレクタt1、t2、t3およびt4の方位のうちの任意の2つの方位の差は、90°の整数倍に略等しい。なお、本願明細書において、略45°方向、略135°方向、略225°方向および略315°方向は、それぞれ、「40°~50°方向」、「130°~140°方向」、「220°~230°方向」および「310°~320°方向」を意味する。また、液晶ドメインA、B、CおよびDのディレクタt1、t2、t3およびt4は、画素短手方向D2に対して45°の奇数倍に略等しい角をなす。
【0061】
図2に示す例では、画素P内において、4つの液晶ドメインA、B、CおよびDが4行1列に配置されている。より具体的には、画素P内において、液晶ドメインA、B、CおよびDが上側から下側に向かって(つまり画素長手方向D1に沿って)この順に並ぶように配置されている。以下では、4つの液晶ドメインを上側から順に(つまり液晶ドメインA、B、CおよびDをそれぞれ)「第1液晶ドメイン」、「第2液晶ドメイン」、「第3液晶ドメイン」および「第4液晶ドメイン」と呼ぶことがある。液晶ドメインA、B、CおよびDのうちの互いに隣接する2つの液晶ドメイン間では、ディレクタの方位が略90°または略180°異なっている。より具体的には、第1液晶ドメイン(液晶ドメインA)と第2液晶ドメイン(液晶ドメインB)とでは、ディレクタの方位が略90°異なる。また、第2液晶ドメイン(液晶ドメインB)と第3液晶ドメイン(液晶ドメインC)とでは、ディレクタの方位が略180°異なり、第3液晶ドメイン(液晶ドメインC)と第4液晶ドメイン(液晶ドメインD)とでは、ディレクタの方位が略90°異なる。
【0062】
一対の偏光板41および42の透過軸(偏光軸)PA1およびPA2は、その一方が表示面の水平方向に平行で、他方が表示面の垂直方向に平行である。従って、偏光板41および42の透過軸PA1およびPA2は、液晶ドメインA、B、CおよびDのディレクタt1、t2、t3およびt4の方位と略45°の角をなす。
【0063】
なお、図2には、4つの液晶ドメインA、B、CおよびDの画素P内に占める面積が互いに等しい場合を例示しているが、4つの液晶ドメインA、B、CおよびDの面積は互いに等しくなくてもよい。ただし、視野角特性の均一さの観点からは、4つの液晶ドメインA、B、CおよびDの面積の差がなるべく小さいことが好ましい。図2に示す例は、視野角特性上最も好ましい(つまり理想的な)4分割構造の例である。
【0064】
続いて、図3A図3Bおよび図3Cを参照しながら、画素Pの配向分割構造を得るための配向分割方法を説明する。図3Aは、アクティブマトリクス基板10に設けられている第1配向膜12によって規定されるプレチルト方向PD1、PD2、PD3およびPD4を示し、図3Bは、対向基板20に設けられている第2配向膜22によって規定されるプレチルト方向PD5、PD6、PD7およびPD8を示している。また、図3Cは、アクティブマトリクス基板10と対向基板20とを貼り合わせた後に液晶層30に電圧を印加したときのチルト方向(ディレクタ)を示している。なお、図3A図3Bおよび図3Cは、アクティブマトリクス基板、対向基板および液晶層を観察者側から見た図である。そのため、図3Aでは、配向膜は基板に対して紙面手前側に位置し、図3Bでは、配向膜は基板に対して紙面奥側に位置している。また、プレチルト方向およびチルト方向は、模式的にピン状に示されており、ピンの頭部(面積が大きい方の端部)が液晶分子の前面側(観察者側)の端部を表し、ピンの先端(面積が小さい方の端部)が液晶分子の背面側の端部を表している。
【0065】
第1配向膜12は、各画素P内において、図3Aに示すように、互いに異なる第1プレチルト方向PD1、第2プレチルト方向PD2、第3プレチルト方向PD3および第4プレチルト方向PD4を規定する第1プレチルト領域12a、第2プレチルト領域12b、第3プレチルト領域12cおよび第4プレチルト領域12dを有する。具体的には、第1配向膜12の1つの画素Pに対応する領域は、上下方向に4分割されており、それぞれの領域(第1プレチルト領域、第2プレチルト領域、第3プレチルト領域および第4プレチルト領域)12a、12b、12cおよび12dが互いに異なるプレチルト方向(第1プレチルト方向、第2プレチルト方向、第3プレチルト方向および第4プレチルト方向)PD1、PD2、PD3およびPD4を規定するように光配向処理が行われている。ここでは、光配向処理は、矢印で示した方向から紫外線(例えば直線偏光紫外線)を斜め照射することによって行われている。
【0066】
第2配向膜22は、各画素P内において、図3Bに示すように、互いに異なる第5プレチルト方向PD5、第6プレチルト方向PD6、第7プレチルト方向PD7および第8プレチルト方向PD8を規定する第5プレチルト領域22a、第6プレチルト領域22b、第7プレチルト領域22cおよび第8プレチルト領域22dを有する。具体的には、第2配向膜22の1つの画素Pに対応する領域は、上下方向に4分割されており、それぞれの領域(第5プレチルト領域、第6プレチルト領域、第7プレチルト領域および第8プレチルト領域)22a、22b、22cおよび22dが互いに異なるプレチルト方向(第5プレチルト方向、第6プレチルト方向、第7プレチルト方向および第8プレチルト方向)PD5、PD6、PD7およびPD8を規定するように光配向処理が行われている。ここでは、光配向処理は、矢印で示した方向から紫外線(例えば直線偏光紫外線)を斜め照射することによって行われている。
【0067】
図3Aおよび図3Bに示したように光配向処理がなされたアクティブマトリクス基板10と対向基板20とを貼り合せることによって、図3Cに示すように配向分割された画素Pを形成することができる。液晶ドメインA~Dのそれぞれについて、アクティブマトリクス基板10側の第1配向膜12によって規定されるプレチルト方向と、対向基板20側の第2配向膜22のプレチルト方向とは互いに略反平行であり、液晶ドメインA~Dのそれぞれにおいて、液晶分子のツイスト角は実質的に0°となる。
【0068】
配向分割構造を有する画素P内には、暗線DL1~DL7が発生する。具体的には、隣接する液晶ドメイン同士の境界に暗線DL1、DL2およびDL3が発生するとともに、画素電極11のエッジ近傍に暗線DL4、DL5、DL6およびDL7が発生する。暗線の発生理由については、特許文献1および2に記載されているので、ここではその説明を省略するが、図2に例示したドメイン配置は、画素P内に発生する暗線の総面積がもっとも小さくなる配置の1つである。
【0069】
次に、図4を参照しながら、液晶表示装置100の構造をより具体的に説明する。図4は、液晶表示装置100の1つの画素Pに対応した領域を示す平面図である。
【0070】
液晶表示装置100のアクティブマトリクス基板10は、上述した画素電極11および第1配向膜12の他に、TFT13、補助容量14、ゲート配線15、ソース配線16、補助容量配線17を有する。
【0071】
ゲート配線15は、行方向に延びており、ソース配線16は、列方向に延びている。補助容量配線17は、全体として行方向に延びている。
【0072】
TFT13は、ゲート電極13g、ゲート絶縁層(不図示)、半導体層(不図示)、ソース電極13sおよびドレイン電極13dを有する。ゲート電極13gは、ゲート配線15に電気的に接続されている。図示している例では、ゲート配線15の一部(半導体層に重なる部分)がゲート電極13gとして機能する。ソース電極13sは、ソース配線16に電気的に接続されている。図示している例では、ソース電極13sは、ソース配線16から延設されている。ドレイン電極13dは、画素電極11に電気的に接続されている。
【0073】
補助容量14は、TFT13のドレイン電極13dに電気的に接続された第1容量電極14aと、第1容量電極14aにゲート絶縁層を介して重なる第2容量電極14bとを含む。図示している例では、第1容量電極14aは、TFT13のドレイン電極13dから延設されている。また、図示している例では、補助容量配線17の一部(第1容量電極14aに重なる部分)が第2容量電極14bとして機能する。
【0074】
既に説明したように、画素電極11は、複数のスリット11sを有する。図5を参照しながら、画素電極11のより具体的な構成を説明する。図5は、画素電極11を示す平面図である。
【0075】
図5に示すように、画素電極11は、液晶ドメインA(第1液晶ドメイン)に対応する領域である第1スリット形成領域R1と、液晶ドメインB(第2液晶ドメイン)に対応する領域である第2スリット形成領域R2と、液晶ドメインC(第3液晶ドメイン)に対応する領域である第3スリット形成領域R3と、液晶ドメインD(第4液晶ドメイン)に対応する領域である第4スリット形成領域R4とを有する。
【0076】
第1スリット形成領域R1には、液晶ドメインAのチルト方向(ディレクタt1)に略平行に延びる複数の第1スリット11s1が形成されており、第2スリット形成領域R2には、液晶ドメインBのチルト方向(ディレクタt2)に略平行に延びる複数の第2スリット11s2が形成されている。また、第3スリット形成領域R3には、液晶ドメインCのチルト方向(ディレクタt3)に略平行に延びる複数の第3スリット11s3が形成されており、第4スリット形成領域R4には、液晶ドメインDのチルト方向(ディレクタt4)に略平行に延びる複数の第4スリット11s4が形成されている。
【0077】
上述したような、対応する液晶ドメインのチルト方向に略平行に延びるスリット11sが画素電極11に形成されていることにより、画素P内に発生する暗線の幅を小さくし、透過率を向上させることができる。
【0078】
なお、複数のスリット11sの配置や本数は、図4および図5に示した例に限定されない。図4および図5には、画素Pの略全体にわたって(つまり画素電極11の略全体にわたって)スリット11sが配置された例を示しているが、画素Pの一部にのみスリット11sが配置されてもよい。また、各スリット11sの幅や、互いに隣接する2つのスリット11sの間隔に特に制限はないが、典型的には、スリット11sの幅は2μm以上4μm以下であり、隣接する2つのスリット11sの間隔は2μm以上4μm以下である。
【0079】
画素電極11は、第2スリット形成領域R2と第3スリット形成領域R3との間に位置する境界領域BRをさらに有する。以下、さらに図6も参照しながら、画素電極11の境界領域BRにおける構造を説明する。図6は、画素電極11の境界領域BR近傍を拡大して示す図である。
【0080】
境界領域BRは、図6に示すように、n個(nは3以上の整数)の境界スリット11bsと、(n-1)個の第1連結部11c1と、2個の第2連結部11c2と、(n-2)個の窪みパターン11dとを有する。ここでは、nが3の場合を例示している。つまり、境界スリット11bs、第1連結部11c1、窪みパターン11dの個数は、それぞれ3、2、1である。
【0081】
3個の境界スリット11bsは、それぞれ画素短手方向D2に略平行に延びている。また、3個の境界スリット11bsは、画素短手方向D2に沿って並んでいる。
【0082】
2個の第1連結部11c1のそれぞれは、3個の境界スリット11bsのうちの互いに隣接する2個の境界スリット11bs間に位置している。第1連結部11c1は、第2スリット形成領域R2と第3スリット形成領域R3とを連結する。
【0083】
2個の第2連結部11c2は、画素電極11の画素短手方向D2における両端に位置している。第2連結部11c2は、第1連結部11c1と同様、第2スリット形成領域R2と第3スリット形成領域R3とを連結する。
【0084】
ここで、3個の境界スリット11bsのうち、画素短手方向D2におけるもっとも外側に位置する一対の境界スリット11bsoを、「外側境界スリット」と呼び、それ以外の境界スリット11bsiを、「内側境界スリット」と呼ぶこととする。内側境界スリット11bsiは、2個の第1連結部11c1間に位置している。
【0085】
窪みパターン11dは、第1窪み部11d1と、第2窪み部11d2とを含む。第1窪み部11d1は、内側境界スリット11bsiから第2スリット形成領域R2側に窪むように形成されている。これに対し、第2窪み部11d2は、内側境界スリット11bsiから第3スリット形成領域R3側に窪むように形成されている。このように、第1窪み部11d1および第2窪み部11d2は、それぞれ内側境界スリット11bsiに連続する切り欠き部であり、これらをまとめて窪みパターン11dと呼んでいる。
【0086】
図示している例では、第1窪み部11d1は、内側境界スリット11bsi側から第2スリット形成領域R2側に向かうにつれて幅が狭くなる台形状であり、第2窪み部11d2は、内側境界スリット11bsi側から第3スリット形成領域R3側に向かうにつれて幅が狭くなる台形状である。
【0087】
また、図示している例では、第1窪み部11d1および第2窪み部11dの画素短手方向D2における位置は、互いに略同一である(つまり実質的に揃っている)。さらに、図示している例では、窪みパターン11dの画素短手方向D2における位置は、内側境界スリット11bsiの長さ方向における略中央であり、内側境界スリット11bsiを略二等分する位置である。
【0088】
窪みパターン11dは、内側境界スリット11bsiに連続する第1窪み部11d1および第2窪み部11d2を含んでいるので、当然ながら、互いに隣接する2個の第1連結部11c1間に位置している。つまり、画素短手方向D2に沿って、第1連結部11c1、窪みパターン11dおよび第1連結部11c1が並んでいる。
【0089】
本実施形態の液晶表示装置100は、画素電極11の境界領域BRが上述した構造を有していることにより、液晶配向の非連続点に起因する表示不良を抑制することができる。以下、この理由を説明する。
【0090】
画素P内における液晶分子の配向は点対称であるため、画素Pの略中央に配向の非連続点(4本の暗線が集まる点)が必ず存在する。この非連続点は、その発生箇所が定まらず、当該画素Pおよびその周囲の画素Pにおける印加電圧に応じて移動し得る(つまり発生箇所がばらつく)ので、残像などの表示不良となり得る。
【0091】
図35に示したような、特許文献2に開示されている電極構造では、第1画素電極部911P1と第2画素電極部911P2との間に設けられた連結部911P3が、非連続点を固定する構造(以下では「配向固定パターン」と称する)となり得るが、画素サイズが大きくなり、切り欠き部911uが長くなると、切り欠き部911u上に新たな非連続点が発生し得る。
【0092】
既に説明したように、液晶ドメインBのディレクタt2の方位は略45°方向であり、液晶ドメインCのディレクタt3の方位は略225°方向であるので、液晶ドメインBと液晶ドメインCとでは、ディレクタの方位が略180°異っている。そのため、液晶分子が連続的に配向するためには、4本の暗線(シュリーレン模様)が集まる非連続点が境界領域BRに存在する。また、境界領域BRには、既に説明したように、境界スリット11bsが形成されているので、境界スリット11bs上の液晶分子は、境界スリット11bsの延びる方向に略平行な2つの方向のいずれかに倒れる。そのため、境界領域BRに存在し得る非連続点には、図7Aに示すタイプと、図7Bに示すタイプの2種類があり得る。図7Aおよび図7Bのそれぞれにおいて、非連続点は図の略中心に位置している。
【0093】
図7Aに示すタイプでは、液晶分子31は、非連続点の左右では内側(非連続点側)に倒れ、他の場所では外側に倒れる。これに対し、図7Bに示すタイプでは、液晶分子31は、非連続点を中心に、放射状に外側に倒れる(つまり非連続点の左右においても液晶分子が外側に倒れる)。
【0094】
画素電極11の境界領域BRが有する第1連結部11c1および窪みパターン11dは、液晶配向の非連続点を固定する配向固定パターンとして機能し得る。図8Aおよび図8Bに、第1連結部11c1および窪みパターン11d近傍における液晶分子31の配向状態を示す。
【0095】
図8Aからわかるように、第1連結部11c1は、図7Aに示すタイプの非連続点を固定するための配向固定パターンとして機能する。また、図8Bからわかるように、窪みパターン11dは、図7Bに示すタイプの非連続点を固定するための配向固定パターンとして機能する。なお、境界領域BRには、第1連結部11c1および窪みパターン11dの他に、第2連結部11c2も存在しているが、第2連結部11c2は、配向固定パターンとしては機能しない。
【0096】
本実施形態の液晶表示装置100では、画素電極11の境界領域BRにおいて3個の配向固定パターン(2個の第1連結部11c1および1個の窪みパターン11d)が設けられているので、画素サイズが比較的大きくなっても、非連続点の固定を好適に行う(固定されない非連続点の発生を抑制する)ことができる。
【0097】
図9に、本実施形態の液晶表示装置100において、白表示時の画素P内における透過率分布をシミュレーションにより求めた結果を示す。図9から、境界領域BRにおいて、各配向固定パターンに対応する位置に非連続点が固定されており、配向固定パターン以外の箇所に非連続点が存在していないことがわかる。
【0098】
図10Aは、比較例1の画素電極11Aの境界領域BR近傍を示す図である。比較例1の画素電極11Aでは、境界領域BRは、2個の境界スリット11bsと、1個の第1連結部11c1と、2個の第2連結部11c2とを有している。つまり、境界領域BRに配向固定パターンが1個だけ設けられている。
【0099】
図10Bに、比較例1の画素電極11Aを用いた場合の画素P内における透過率分布を示す。図10Bから、境界領域BRにおいて、配向固定パターンに対応する位置に固定された1つの非連続点の他に、右側の境界スリット11bs上に2つの非連続点が存在していることがわかる。
【0100】
図11Aは、比較例2の画素電極11Bの境界領域BR近傍を示す図である。比較例2の画素電極11Bでは、境界領域BRは、1個の境界スリット11bsと、1個の窪みパターン11dと、2個の第2連結部11c2とを有している。つまり、境界領域BRには配向固定パターンが1個だけ設けられている。
【0101】
図11Bに、比較例2の画素電極11Bを用いた場合の画素P内における透過率分布を示す。図11Bから、境界領域BRにおいて、配向固定パターンに対応する位置に固定された1つの非連続点の他に、境界スリット11bs上に2つの非連続点が存在していることがわかる。
【0102】
このように、境界領域BRに配向固定パターンが1個だけ設けられている場合には、本実施形態の液晶表示装置100とは異なり、境界スリット11bs上に、配向固定パターンによって固定されていない、新たな非連続点が発生し得る。
【0103】
また、本実施形態の液晶表示装置100では、境界領域BRにおいて2種類の配向固定パターンが交互に配置されており、且つ、画素短手方向D2におけるもっとも外側には窪みパターン11dではなく第1連結部11c1が配置されている。このような構成も、非連続点の好適な固定に寄与している。
【0104】
図12Aは、比較例3の画素電極11Cの境界領域BR近傍を示す図である。比較例3の画素電極11Cでは、境界領域BRは、4個の境界スリット11bsと、3個の第1連結部11c1と、2個の第2連結部11c2とを有している。つまり、境界領域BRに配向固定パターンが3個設けられている。ただし、3個の配向固定パターンはすべて第1連結部11c1(つまり1種類の配向固定パターン)であり、2種類の配向固定パターンが交互に設けられているわけではない。
【0105】
図12Bに、比較例3の画素電極11Cを用いた場合の画素P内における透過率分布を示す。図12Bから、境界領域BRにおいて、3個の配向固定パターンに対応する位置に固定された3つの非連続点の他に、左側から2番目および3番目の境界スリット11bs上にそれぞれ1つの非連続点が存在していることがわかる。
【0106】
このように、境界領域BRに1種類の配向固定パターンのみを複数個配置されている場合には、隣接する配向固定パターン間に新たな非連続点が発生し得る。これに対し、本実施形態の液晶表示装置100では、2種類の配向固定パターンが交互に配置されていることにより、隣接する配向固定パターン間に非連続点が発生することが抑制される。
【0107】
図13Aは、比較例4の画素電極11Dの境界領域BR近傍を示す図である。比較例4の画素電極11Dでは、境界領域BRは、3個の境界スリット11bsと、2個の第1連結部11c1と、3個の窪みパターン11dと、2個の第2連結部11c2とを有している。つまり、境界領域BRに配向固定パターンが5個設けられている。ただし、画素短手方向D2におけるもっとも外側には第1連結部11c1ではなく窪みパターン11dが配置されている。
【0108】
図13Bに、比較例4の画素電極11Dを用いた場合の画素P内における透過率分布を示す。図13Bから、境界領域BRにおいて、5個の配向固定パターンに対応する位置に固定された5つの非連続点の他に、もっとも左側およびもっとも右側の境界スリット11bs上にそれぞれ1つの非連続点が存在していることがわかる。
【0109】
このように、画素短手方向D2におけるもっとも外側に窪みパターン11dが配置されている場合には、もっとも外側の境界スリット11bs上に新たな非連続点が発生し得る。これに対し、本実施形態の液晶表示装置100では、画素短手方向D2におけるもっとも外側に第1連結部11c1が配置されていることにより、画素電極11の端部における配向規制力(液晶分子31を画素Pの内側に倒すように作用する)と画素短手方向D2におけるもっとも外側の配向固定パターンによる配向規制力とが整合し、もっとも外側の境界スリット11bs上に非連続点が発生することが抑制される。
【0110】
上述したように、本実施形態の液晶表示装置100では、液晶配向の非連続点に起因する表示不良を好適に抑制することができる。
【0111】
なお、図5などには、画素電極11の境界領域BRが、3個の境界スリット11bs、2個の第1連結部11c1および1個の窪みパターン11dを有する例を示したが、境界領域BRは、n個(nは3以上の整数)の境界スリット11bs、(n-1)個の第1連結部11c1および(n-2)個の窪みパターン11dを有していればよく、本発明の実施形態は、nが3の場合に限定されない。境界領域BRは、例えば、図14Aに示す構造を有していてもよい。図14Aに示す例では、境界領域BRは、4個の境界スリット11bs、3個の第1連結部11c1、2個の第2連結部11c2および2個の窪みパターン11dを有している(つまりnが4の場合である)。
【0112】
図14Bに、図14Aに示した画素電極11を用いた場合の画素P内における透過率分布を示す。図14Bから、境界領域BRにおいて、各配向固定パターン(3個の第1連結部11c1のそれぞれおよび2個の窪みパターン11dのそれぞれ)に対応する位置に非連続点が固定されており、配向固定パターン以外の箇所に非連続点が存在していないことがわかる。
【0113】
ここで、図15も参照しながら、画素電極11の境界領域BRの好ましい構造を説明する。
【0114】
窪みパターン11dから、その窪みパターン11dに隣接する2個の第1連結部11c1のそれぞれまでの距離d1およびd2は、それぞれ10μm以上30μm以下であることが好ましい。暗線の合計面積を少なくして高い透過率を実現する観点からは、距離d1およびd2は大きいことが好ましいが、距離d1およびd2が30μmを超えると、窪みパターン11dとそれに隣接する第1連結部11c1との間に非連続点が発生するおそれがある。また、距離d1およびd2が10μm未満であると、内側境界スリット11bsiの効果が十分に得られず、透過率のロスが生じるおそれがある。
【0115】
第1連結部11c1の、画素短手方向D2に沿った幅w1は、小さいほど配向乱れが少なくなるが、小さすぎると製造しにくくなるおそれがある。第1連結部11c1の幅w1は、具体的には、2.5μm以上3.5μm以下であることが好ましく、例えば約3μmである。
【0116】
第1窪み部11d1および第2窪み部11d2のそれぞれの、画素長手方向D1に沿った長さL1およびL2は、窪みパターン11dを配向固定パターンとして十分に機能させる観点からは、1.5μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。
【0117】
既に説明したように、第2連結部11c2は、配向固定パターンとしては機能しないが、第2連結部11c2が設けられていることにより、第2スリット形成領域R2と第3スリット形成領域R3との電気的な接続をより確実に確保することができる。つまり、第2連結部11c2は、電気的な接続に関する冗長構造として機能し得る。電気的な接続の確保の観点から、第2連結部11c2の、画素短手方向D2に沿った幅w2は、6.0μm以上であることが好ましい。
【0118】
2個の外側境界スリット11bsoの、画素短手方向D2に沿った長さL3およびL4は、距離d1およびd2について説明したのと同様の理由から、それぞれ10μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0119】
配向の安定性の観点からは、上述した距離d1、d2、長さL3、L4は、略同一である(つまり実質的にd1=d2=L3=L4である)ことが好ましい。つまり、境界領域BRに存在する複数の境界スリット11bsを1つの連続したスリットに見立てたとき、それが配向固定パターンによって略等分割されることが好ましい。
【0120】
ただし、図16Aに示すように、配向固定パターンによる分割が等分割でなくてもよい。図16Aに示す例では、距離d1、d2よりも、長さL3、L4の方が大きい(つまりd1、d2<L3、L4)。図16Bに、図16Aに示した画素電極11を用いた場合の画素P内における透過率分布を示す。図16Bから、境界領域BRにおいて、各配向固定パターンに対応する位置に非連続点が固定されており、配向固定パターン以外の箇所に非連続点が存在していないことがわかる。なお、図16Aに示した例とは逆に、距離d1、d2よりも、長さL3、L4の方が小さく(つまりd1、d2>L3、L4)てもよい。
【0121】
[実施形態2]
図17図18および図19を参照しながら、本実施形態における液晶表示装置200を説明する。図17は、液晶表示装置200の1つの画素Pに対応した領域を示す平面図である。図18は、液晶表示装置200の画素電極11を示す平面図であり、図19は、画素電極11の境界領域BR近傍を拡大して示す図である。以下の説明においては、液晶表示装置200が実施形態1における液晶表示装置100と異なる点を中心に説明を行う。
【0122】
液晶表示装置200は、図17図18および図19に示すように、画素電極11の境界領域BRが、第2連結部11c2を含んでいない点において、実施形態1の液晶表示装置100と異なっている。第2連結部11c2が省略されていても、実施形態1の液晶表示装置100と同様に、液晶配向の非連続点に起因する表示不良を抑制することができる。
【0123】
図20に、本実施形態の液晶表示装置200の画素P内における透過率分布を示す。図20から、境界領域BRにおいて、各配向固定パターンに対応する位置に非連続点が固定されており、配向固定パターン以外の箇所に非連続点が存在していないことがわかる。
【0124】
なお、本実施形態の液晶表示装置200では、第2連結部11c2が省略されている。そのため、第2スリット形成領域R2と第3スリット形成領域R3との電気的な接続をより確実に確保する観点からは、第1連結部11c1の、画素短手方向D2に沿った幅w1は、6.0μm以上であることが好ましい。
【0125】
[実施形態3]
図21図22および図23を参照しながら、本実施形態における液晶表示装置300を説明する。図21は、液晶表示装置300の1つの画素Pに対応した領域を示す平面図である。図22は、液晶表示装置300の画素電極11を示す平面図であり、図23は、画素電極11の境界領域BR近傍を拡大して示す図である。以下の説明においては、液晶表示装置300が実施形態1における液晶表示装置100と異なる点を中心に説明を行う。
【0126】
本実施形態における液晶表示装置300の画素電極11は、実施形態1の液晶表示装置100の画素電極11と同様に、第1スリット形成領域R1、第2スリット形成領域R2、第3スリット形成領域R3および第4スリット形成領域R4と、境界領域BRとを有する。
【0127】
液晶表示装置300の画素電極11の境界領域BRは、n個(nは3以上の整数)の境界スリット11bsと、(n-1)個の第1連結部11c1と、2個の第2連結部11c2とを有する。図21などには、nが3の場合を例示している。つまり、境界スリット11bsおよび第1連結部11c1の個数は、それぞれ3、2である。
【0128】
3個の境界スリット11bsは、それぞれ画素短手方向D2に略平行に延びている。また、3個の境界スリット11bsは、画素短手方向D2に沿って並んでいる。
【0129】
2個の第1連結部11c1のそれぞれは、3個の境界スリット11bsのうちの互いに隣接する2個の境界スリット11bs間に位置している。第1連結部11c1は、第2スリット形成領域R2と第3スリット形成領域R3とを連結する。
【0130】
2個の第2連結部11c2は、画素電極11の画素短手方向D2における両端に位置している。第2連結部11c2は、第1連結部11c1と同様、第2スリット形成領域R2と第3スリット形成領域R3とを連結する。
【0131】
3個の境界スリット11bsのうち、画素短手方向D2におけるもっとも外側に位置する一対の境界スリット11bsoを「外側境界スリット」と呼び、それ以外の境界スリット11bsiを「内側境界スリット」と呼ぶこととする。内側境界スリット11bsiは、2個の第1連結部11b1間に位置している。
【0132】
内側境界スリット11bsiは、それぞれが画素短手方向D2に延びる第1部分p1および第2部分p2を有している。第2部分p2は、第1部分p1に対して略0°方向に(図中右側に)隣接している。つまり、第1部分p1は相対的に左側に、第2部分p2は相対的に右側に位置している。また、第2部分p2は、画素長手方向D1における位置が第1部分p1とずれている。より具体的には、第2部分p2の画素長手方向D1における位置は、第1部分p1から90°方向に(図中上側に)ずれている。第1部分p1と第2部分p2とは、画素短手方向D2に交差する方向に延びる接続部p3によって接続されている。図示している例では、接続部p3は、内側境界スリット11bsiの長さ方向における略中央であり、内側境界スリット11bsiを略二等分する位置である。
【0133】
第1部分p1と第2部分p2とがずれている構造は、窪みパターン11dと同様に、液晶配向の非連続点を固定する配向固定パターンとして機能し得る。図24に、接続部p3近傍における液晶分子31の配向状態を示す。
【0134】
図24からわかるように、第1部分p1と第2部分p2とがずれている構造(接続部p3近傍の領域)は、図7Bに示すタイプの非連続点を固定するための配向固定パターンとして機能する。以下では、配向固定パターンの中心に位置する接続部p3を「ずれ部」とも呼ぶ。ずれ部p3が、配向固定パターンとして機能していると言うこともできる。
【0135】
本実施形態の液晶表示装置300では、画素電極11の境界領域BRにおいて3個の配向固定パターン(2個の第1連結部11c1および1個のずれ部p3)が設けられているので、画素サイズが比較的大きくなっても、非連続点の固定を好適に行う(固定されない非連続点の発生を抑制する)ことができる
図25に、本実施形態の液晶表示装置300の画素P内における透過率分布を示す。図25から、境界領域BRにおいて、各配向固定パターンに対応する位置に非連続点が固定されており、配向固定パターン以外の箇所に非連続点が存在していないことがわかる。
【0136】
図26Aは、比較例5の画素電極11Eの境界領域BR近傍を示す図である。比較例5の画素電極11Eでは、境界領域BRは、1個の境界スリット11bsと、2個の第2連結部11c2とを有しており、境界スリット11bsにずれ部p3が設けられている。つまり、境界領域BRに配向固定パターンが1個だけ設けられている。
【0137】
図26Bに、比較例5の画素電極11Eを用いた場合の画素P内における透過率分布を示す。図26Bから、境界領域BRにおいて、配向固定パターンに対応する位置に固定された1つの非連続点の他に、境界スリット11bs上に2つの非連続点が存在していることがわかる。
【0138】
このように、境界領域BRに配向固定パターンが1個だけ設けられている場合には、本実施形態の液晶表示装置300とは異なり、境界スリット11bs上に、配向固定パターンによって固定されていない、新たな非連続点が発生し得る。
【0139】
また、本実施形態の液晶表示装置300では、境界領域BRにおいて2種類の配向固定パターンが交互に配置されており、且つ、画素短手方向D2におけるもっとも外側にはずれ部p3ではなく第1連結部11c1が配置されている。このような構成も、非連続点の好適な固定に寄与している。
【0140】
図27Aは、比較例6の画素電極11Fの境界領域BR近傍を示す図である。比較例6の画素電極11Fでは、境界領域BRは、3個の境界スリット11bsと、2個の第1連結部11c1と、2個の第2連結部11c2とを有しており、各境界スリット11bsにずれ部p3が設けられている。つまり、境界領域BRに配向固定パターンが5個設けられている。ただし、画素短手方向D2におけるもっとも外側には第1連結部11c1ではなくずれ部p3が配置されている。
【0141】
図27Bに、比較例6の画素電極11Fを用いた場合の画素P内における透過率分布を示す。図27Bから、境界領域BRにおいて、5個の配向固定パターンに対応する位置に固定された5つの非連続点の他に、右側の境界スリット11bs上に1つの非連続点が存在していることがわかる。
【0142】
このように、画素短手方向D2におけるもっとも外側にずれ部p3が配置されている場合には、もっとも外側の境界スリット11bs上に新たな非連続点が発生し得る。これに対し、本実施形態の液晶表示装置300では、画素短手方向D2におけるもっとも外側に第1連結部11c1が配置されていることにより、画素電極11の端部における配向規制力(液晶分子31を画素Pの内側に倒すように作用する)と画素短手方向D2におけるもっとも外側の配向固定パターンによる配向規制力とが整合し、もっとも外側の境界スリット11bs上に非連続点が発生することが抑制される。
【0143】
上述したように、本実施形態の液晶表示装置300では、液晶配向の非連続点に起因する表示不良を好適に抑制することができる。また、図9図25との比較からわかるように、本実施形態の液晶表示装置300では、実施形態1の液晶表示装置100と比べ、境界領域BRに生じる二重暗線の幅が小さくなるので、透過率のいっそうの向上を図ることができる。そのため、金属材料から形成された配線を境界領域BRに配置する場合にも、その配線の幅内に二重暗線が十分に収まり、透過率のロスを最小限にすることができる。
【0144】
なお、図22などには、画素電極11の境界領域BRが、3個の境界スリット11bs、2個の第1連結部11c1および1個のずれ部p3を有する例を示したが、境界領域BRは、n個(nは3以上の整数)の境界スリット11bs、(n-1)個の第1連結部11c1および(n-2)個のずれ部p3を有していればよく、本発明の実施形態は、nが3の場合に限定されない。境界領域BRは、例えば、図28Aに示す構造を有していてもよい。図28Aに示す例では、境界領域BRは、4個の境界スリット11bs、3個の第1連結部11c1、2個の第2連結部11c2および2個のずれ部p3を有している(つまりnが4の場合である)。
【0145】
図28Bに、図28Aに示した画素電極11を用いた場合の画素P内における透過率分布を示す。図28Bから、境界領域BRにおいて、各配向固定パターン(3個の第1連結部11c1のそれぞれおよび2個のずれ部P3のそれぞれ)に対応する位置に非連続点が固定されており、配向固定パターン以外の箇所に非連続点が存在していないことがわかる。
【0146】
なお、ここで例示したように、第2液晶ドメイン(液晶ドメインB)のディレクタt2の方位が略45°方向で、第3液晶ドメイン(液晶ドメインC)のディレクタt3の方位が略225°方向である場合、内側境界スリット11bsiのずれ部P3が配向固定パターンとして好適に機能するためには、第2部分p2の画素長手方向D1における位置は、第1部分p1から90°方向にずれていることが好ましい。
【0147】
図29Aは、比較例7の画素電極11Gの境界領域BR近傍を示す図である。比較例7の画素電極11Gでは、内側境界スリット11bsiの第2部分p2の画素長手方向D1における位置は、第1部分p1から270°方向に(図中下側に)ずれている。
【0148】
図29Bに、比較例7の画素電極11Gを用いた場合の画素P内における透過率分布を示す。図29Bから、内側境界スリット11bsiにおいて、ずれ部P3に対応する位置に非連続点が固定されていないことがわかる。
【0149】
ここで、図30も参照しながら、画素電極11の境界領域BRの好ましい構造を説明する。
【0150】
内側境界スリット11bsiの第1部分p1および第2部分p2のそれぞれの、画素短手方向D2に沿った長さL5およびL6は、それぞれ10μm以上30μm以下であることが好ましい。暗線の合計面積を少なくして高い透過率を実現する観点からは、長さL5およびL6は大きいことが好ましいが、長さL5およびL6が30μmを超えると、ずれ部P3とそれに隣接する第1連結部11c1との間に非連続点が発生するおそれがある。また、長さL5およびL6が10μm未満であると、内側境界スリット11bsiの効果が十分に得られず、透過率のロスが生じるおそれがある。
【0151】
第1連結部11c1の、画素短手方向D2に沿った幅w1は、小さいほど配向乱れが少なくなるが、小さすぎると製造しにくくなるおそれがある。第1連結部11c1の幅w1は、具体的には、2.5μm以上3.5μm以下であることが好ましく、例えば約3μmである。
【0152】
内側境界スリット11bsiのずれ部p3を配向固定パターンとして十分に機能させる観点からは、第1部分p1と第2部分p2との、画素長手方向D1における位置のずれ量d3は、1.5μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。
【0153】
既に説明したように、第2連結部11c2は、配向固定パターンとしては機能しないが、第2連結部11c2が設けられていることにより、第2スリット形成領域R2と第3スリット形成領域R3との電気的な接続をより確実に確保することができる。つまり、第2連結部11c2は、電気的な接続に関する冗長構造として機能し得る。電気的な接続の確保の観点から、第2連結部11c2の、画素短手方向D2に沿った幅w2は、6.0μm以上であることが好ましい。
【0154】
2個の外側境界スリット11bsoの、画素短手方向D2に沿った長さL3およびL4は、長さL5およびL6について説明したのと同様の理由から、それぞれ10μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0155】
配向の安定性の観点からは、上述した長さL3、L4、L5およびL6は、略同一である(つまり実質的にL3=L4=L5=L6である)ことが好ましい。つまり、境界領域BRに存在する複数の境界スリット11bsを1つの連続したスリットに見立てたとき、それが配向固定パターンによって略等分割されることが好ましい。
【0156】
ただし、配向固定パターンによる分割が等分割でなくてもよい。例えば、長さL5、L6よりも、長さL3、L4の方が大きく(つまりL5、L6<L3、L4)てもよいし、長さL5、L6よりも、長さL3、L4の方が小さく(つまりL5、L6>L3、L4)てもよい。
【0157】
また、第2連結部11c2が省略されてもよい。第2連結部11c2が省略されても、液晶配向の非連続点に起因する表示不良を抑制することができる。
【0158】
なお、第2連結部11c2が省略される場合、第2スリット形成領域R2と第3スリット形成領域R3との電気的な接続をより確実に確保する観点からは、第1連結部11c1の、画素短手方向D2に沿った幅w1は、6.0μm以上であることが好ましい。
【0159】
[他のドメイン配置]
画素P内における液晶ドメインの配置は、図2に示した例に限定されない。図2に示した例では、画素の長手方向D1に沿って、液晶ドメインA(基準配向方向が略315°方向)、B(基準配向方向が略45°方向)、C(基準配向方向が略225°方向)およびD(基準配向方向が略135°方向)がこの順に並ぶように配置されている。
【0160】
これに対し、図31に示すような配置を採用してもよい。図31に示す例では、画素Pにおいて、上側から下側に向かって(つまり画素の長手方向D1に沿って)液晶ドメインC、D、AおよびBがこの順に並ぶように配置されている。4つの液晶ドメインを上側から順に(つまり液晶ドメインC、D、AおよびBをそれぞれ)「第1液晶ドメイン」、「第2液晶ドメイン」、「第3液晶ドメイン」および「第4液晶ドメイン」と呼ぶこととすると、第1液晶ドメイン(液晶ドメインC)と第2液晶ドメイン(液晶ドメインD)とでは、ディレクタの方位が略90°異なる。また、第2液晶ドメイン(液晶ドメインD)と第3液晶ドメイン(液晶ドメインA)とでは、ディレクタの方位が略180°異なり、第3液晶ドメイン(液晶ドメインA)と第4液晶ドメイン(液晶ドメインB)とでは、ディレクタの方位が略90°異なる。
【0161】
図31に示す例のような配置を採用する場合、画素電極11の構造として、例えば図32に示す構造が採用され得る。図32に示す画素電極11は、液晶ドメインC(第1液晶ドメイン)に対応する領域である第1スリット形成領域R1と、液晶ドメインD(第2液晶ドメイン)に対応する領域である第2スリット形成領域R2と、液晶ドメインA(第3液晶ドメイン)に対応する領域である第3スリット形成領域R3と、液晶ドメインB(第4液晶ドメイン)に対応する領域である第4スリット形成領域R4とを有する。
【0162】
第1スリット形成領域R1には、液晶ドメインCのチルト方向(ディレクタt3)に略平行に延びる複数の第1スリット11s1が形成されており、第2スリット形成領域R2には、液晶ドメインDのチルト方向(ディレクタt4)に略平行に延びる複数の第2スリット11s2が形成されている。また、第3スリット形成領域R3には、液晶ドメインAのチルト方向(ディレクタt1)に略平行に延びる複数の第3スリット11s3が形成されており、第4スリット形成領域R4には、液晶ドメインBのチルト方向(ディレクタt2)に略平行に延びる複数の第4スリット11s4が形成されている。
【0163】
図32に示す画素電極11の境界領域BRは、図5に示した画素電極11の境界領域BRと同じ構造を有している。図31に示すドメイン配置を採用した場合でも、画素電極11の境界領域BRが上述した構造を有していることにより、図2に示すドメイン配置を採用した場合と同様の効果を得ることができる。勿論、図32に示す画素電極11の境界領域BRは、図14A図16A図19図23図28Aに示した境界領域BRと同じ構造を有していてもよい。図23に示した境界領域BRと同じ構造を採用する場合、図33に示すように、内側境界スリット11bsiの第2部分p2の画素長手方向D1における位置は、第1部分p1から270°方向に(図中下側に)ずれていることが好ましい。第2液晶ドメイン(液晶ドメインD)のディレクタt4の方位が略135°方向で、第3液晶ドメイン(液晶ドメインA)のディレクタt1の方位が略315°方向である場合、第2部分p2の画素長手方向D1における位置が、第1部分p1から270°方向にずれていることにより、ずれ部P3が配向固定パターンとして好適に機能する。図28Aに示した境界領域BRと同じ構造を採用する場合も同様である。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明の実施形態による液晶表示装置は、テレビジョン受像機などの高品位の表示が求められる用途に好適に用いられる。本発明の実施形態は、画素サイズが比較的大きい液晶表示装置に特に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0165】
10 アクティブマトリクス基板(第1基板)
10a 基板
11 画素電極
11s スリット
11s1 第1スリット
11s2 第2スリット
11s3 第3スリット
11s4 第4スリット
11bs 境界スリット
11bsi 内側境界スリット
11bso 外側境界スリット
11c1 第1連結部
11c2 第2連結部
11d 窪みパターン
11d1 第1窪み部
11d2 第2窪み部
12 第1配向膜
12a 第1プレチルト領域
12b 第2プレチルト領域
12c 第3プレチルト領域
12d 第4プレチルト領域
13 TFT
13g ゲート電極
13s ソース電極
13d ドレイン電極
14 補助容量
14a 第1容量電極
14b 第2容量電極
15 ゲート配線
16 ソース配線
17 補助容量配線
20 対向基板(第2基板)
20a 基板
21 対向電極
22 第2配向膜
22a 第5プレチルト領域
22b 第6プレチルト領域
22c 第7プレチルト領域
22d 第8プレチルト領域
30 液晶層
31 液晶分子
41、42 偏光板
100、200、300 液晶表示装置
101 液晶表示パネル
102 バックライト(照明装置)
P 画素
D1 画素長手方向
D2 画素短手方向
A、B、C、D 液晶ドメイン
t1、t2、t3、t4 ディレクタ(基準配向方向)
PA1、PA2 偏光板の透過軸(偏光軸)
PD1、PD2、PD3、PD4 第1配向膜によって規定されるプレチルト方向
PD5、PD6、PD7、PD8 第2配向膜によって規定されるプレチルト方向
DL1、DL2、DL3、DL4、DL5、DL6、DL7 暗線
R1 第1スリット形成領域
R2 第2スリット形成領域
R3 第3スリット形成領域
R4 第4スリット形成領域
BR 境界領域
p1 内側境界スリットの第1部分
p2 内側境界スリットの第1部分
p3 内側境界スリットの第1部分
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図27A
図27B
図28A
図28B
図29A
図29B
図30
図31
図32
図33
図34
図35