(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154868
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】駆動補助機構
(51)【国際特許分類】
B60K 6/12 20060101AFI20241024BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20241024BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20241024BHJP
B60B 7/00 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
B60K6/12
B60L1/00 L
B60L15/20 L
B60B7/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069062
(22)【出願日】2023-04-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】518102436
【氏名又は名称】合同会社小林知財研鑽処
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 健一
【テーマコード(参考)】
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D235AA02
3D235AA23
3D235BB26
3D235BB32
3D235CC47
3D235DD47
3D235FF22
3D235FF35
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH31
5H125AA01
5H125AB01
5H125AB03
5H125AC12
5H125EE08
5H125EE41
5H125EE52
5H125FF02
(57)【要約】
【課題】圧縮空気を貯蔵した車両にて、駆動部に接続されたエア受け部へ圧縮空気を吐出させ、駆動部の回転及び走行操作を補助することが可能な駆動補助機構を提供する。
【解決手段】車両の駆動輪に動力を供給する動力部と、該動力部からの動力によって回転可能な駆動部と、圧縮空気を貯蔵可能な貯蔵部と、圧縮空気を該駆動部所定箇所に吐出可能なエアノズルと、エアノズルの開放及び閉塞を制御する制御部と、を備える車両であって、エアノズルから吐出された圧縮空気によって、駆動部の回転及び走行操作を補助する手段を採る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪に動力を供給する動力部と、該動力部からの動力によって回転可能な駆動部と、圧縮空気を貯蔵可能な貯蔵部と、圧縮空気を該駆動部所定箇所に吐出可能なエアノズルと、エアノズルの開放及び閉塞を制御する制御部と、を備える車両であって、
駆動部は、動力部からの動力で回転する駆動輪と、タイヤと、ホイールと、車体の駆動部近傍に接続されたエアノズルから吐出された圧縮空気を受け止め可能な複数のエア受け部と、から成り、
エアノズルから吐出された圧縮空気によって、駆動部の回転及び走行操作を補助する駆動補助機構。
【請求項2】
前記制御部に、車両の速度及びエンジン部の回転数により圧縮空気の吐出量が自動調整される機能が備わっていることを特徴とする請求項1に記載の駆動補助機構。
【請求項3】
前記制御部が、急制動の操作時に圧縮空気の吐出方向を逆方向に自動で変更する機能が備わっていることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の駆動補助機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
圧縮空気を利用した車両の駆動輪の回転及び走行操作に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車業界において化石燃料であるガソリンを燃料とするガソリン自動車が主流であったが、近年、太陽光や燃料電池を利用した電気自動車や、水素を燃焼させ動力とする水素自動車等、地球環境に配慮したクリーンな動力が注目されている。
【0003】
しかし、自動車における登坂走行や加速走行においては、通常走行時よりも大きな動力が必要であるため、燃料やバッテリ等の負担を抑えることが困難であった。
そこで、車両の走行時に、燃料やバッテリの負担を抑えつつ、走行における補助的な動力として発揮することが可能な補助動力が求められていた。
【0004】
上記問題を解決すべく、特許第5350986号公報(特許文献1)に記載の技術提案がなされている。すなわち、特許文献1では、車両の駆動輪への動力供給源として、バッテリにて動力を発生させる主動力と、圧縮空気にて動力を発生させる補助動力を備える技術提案となっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術提案では、補助動力に使用する圧縮空気は主にバッテリの電力により稼働する空気圧縮部から生成されるため、補助動力の使用時においてもバッテリの使用され続けるため、上記問題を解決するものとはなっていない。
【0006】
本出願人は、補助動力として使用可能な圧縮空気に着目し、圧縮空気自体を車体の駆動部分に吐出することで補助的な動力として使用することができないものかとの着想の元、圧縮空気を貯蔵した車両にて、駆動部に接続されたエア受け部へ圧縮空気を直接吐出し、該エア受け部にかかる圧力によって駆動部の回転及び走行操作を補助することが可能な機構を開発し、本発明にかかる「駆動補助機構」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題に鑑み、圧縮空気を貯蔵した車両にて、駆動部に接続されたエア受け部へ圧縮空気を直接吐出し、エア受け部にかかる圧力によって駆動部の回転及び走行操作を補助することが可能な駆動補助機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するため、本発明は、車両の駆動輪に動力を供給する動力部と、該動力部からの動力によって回転可能な駆動部と、圧縮空気を貯蔵可能な貯蔵部と、圧縮空気を該駆動部所定箇所に吐出可能なエアノズルと、エアノズルの開放及び閉塞を制御する制御部と、を備える車両であって、駆動部は、動力部からの動力で回転する駆動輪と、タイヤと、ホイールと、車体の駆動部近傍に接続されたエアノズルから吐出された圧縮空気を受け止め可能な複数のエア受け部と、から成り、エアノズルから吐出された圧縮空気によって、駆動部の回転及び走行操作を補助させる手段を採用する。
【0010】
また、本発明は、前記制御部に、車両の速度及びエンジン部の回転数により圧縮空気の吐出量が自動調整される機能が備わっている手段を採用する。
【0011】
さらに、本発明は、前記制御部が、急制動の操作時に圧縮空気の吐出方向を逆方向に自動で変更する機能が備わっている手段を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる駆動補助機構によれば、吐出される圧縮空気によって駆動部の回転及び走行操作が補助されることにより、動力部における動力負担を低減させることが可能となり、車両走行にかかる燃料やバッテリの消費低減に資する、と言った優れた効果を奏する。
【0013】
また、本発明にかかる駆動補助機構によれば、車両の速度及びエンジン部の回転数により圧縮空気の吐出量が自動調整されることにより、登坂走行等によって動力負荷が高く且つ速度が低下している場合、圧縮空気の吐出量を増加させて動力の補助を行う、といった優れた効果を奏する。
【0014】
さらに、本発明にかかる駆動補助機構によれば、急制動の操作時に圧縮空気の吐出方向を逆方向に自動で変更する機能が備わっていることにより、衝突の危険回避によって急制動が行われた場合でも、駆動部に逆方向への圧力がかかることにより車両の制動力が増加し、車両の停止に必要な距離を短縮させることが可能になると言った優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明にかかる駆動補助機構の実施形態を示す説明図である。
【
図2】本発明にかかる駆動補助機構の実施形態を示す説明図である。
【
図3】本発明にかかる駆動補助機構の実施形態を示す説明図である。
【
図4】本発明にかかる駆動補助機構の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明にかかる駆動補助機構1は、貯蔵した圧縮空気によって駆動輪11の回転及び操作を補助することを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる駆動補助機構1の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0017】
尚、本発明にかかる駆動補助機構1は、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができるものである。
【0018】
図1は、本発明にかかる駆動補助機構1の実施形態を示す説明図であり、詳しくは、四輪車において駆動補助機構1を採用した場合の説明図である。
図2は、本発明にかかる駆動補助機構1の実施形態を示す説明図であり、詳しくは、二輪車において駆動補助機構1を採用した場合の説明図である。
図3は、本発明にかかる駆動補助機構1の実施形態を示す説明図であり、詳しくは、
図1における駆動部3近傍の説明図である。
図4は、本発明にかかる駆動補助機構1の実施形態を示す説明図であり、詳しくは、正方向への回転補助を行う圧縮空気とエア受け部16の説明図である。
本発明にかかる駆動補助機構1は車両本体である車体7に備えられ、主に、動力部2と、駆動部3と、貯蔵部4と、エアノズル5と、制御部6にて構成される。
【0019】
動力部2は、駆動部3に備わった駆動輪11へ動力を供給するものである。
動力部2は、駆動輪11へ動力を供給することで該駆動輪11を回転させ、車両を正方向(前進)もしくは逆方向(後進)に駆動させるものであり、車両運転者(以下、単に「運転者」という場合がある。)の運転操作により回転数を変化させ、走行速度の加速及び減速等が行われる。
動力部2は従来公知の機器を使用すれば良く、例えば、ガソリン等の燃料を燃焼させて駆動力を発生させるエンジンや、バッテリ等の電源を使用して駆動力を発生させる電気モータ等が考え得る。また、動力部2の設置態様に関しても特に限定はなく、例えば四輪車であるならば、車体7の前方に動力部2として一のエンジンを備える態様の他にも、前輪及び後輪の近傍に動力部2として電動モータを夫々に備える態様等も考え得る。さらに、動力部2から駆動輪11への動力供給方法についても特に限定するものではなく、
図1に図示したようなシャフト9や、
図2に図示したようなチェーン10等を介して供給する方法等が考え得る。
【0020】
駆動部3は、動力及び圧縮空気の圧力により回転する駆動輪11の回転力をタイヤ12に伝達し、車両の前進もしくは後進を行うものである。
駆動部3は、駆動輪11と、タイヤ12と、ホイール13と、エア受け部16から構成され、動力部2から供給された動力により駆動輪11が正方向もしくは逆方向に回転し、該駆動輪11の回転力がホイール13を介してタイヤ12に伝達され回転する駆動部分である。また、補助的な動力として、エアノズル5から吐出される圧縮空気をホイール13に備えられたエア受け部16へ衝突させることにより、駆動輪11及びタイヤ12の回転力を変化させることも可能である。なお、駆動輪11及びタイヤ12の回転に伴い、車両は前進もしくは後進されることとなる。
駆動部3の設置箇所は、タイヤ12を接地させることが可能な箇所であれば特に限定はなく、例えば、車両の駐車時や平地走行時において安定性を保つことが可能な車体7の前方及び後方に夫々備えられる態様が好適である。また、駆動部3は通常、二輪車であれば前輪、または、後輪、もしくは、前後輪となり、四輪車であれば一対の前輪(FF車)、または、一対の後輪(FR車やMR車)、もしくは、一対の前輪及び後輪(4WD車)となる。
【0021】
駆動輪11は、動力部2から供給される動力によって正方向もしくは逆方向に回転するものである。
駆動輪11の形状は、動力部2からの動力供給方法によって、従来公知の機器を種々適用すればよく、例えば、
図1に図示したようにシャフト9で動力を供給される場合、駆動輪11の基端部とシャフト9を接続し、該駆動輪11の先端部をホイール13の略中央部と接続させる態様等が考え得る。かかる態様を採ることにより、動力部2から供給された動力が駆動輪11を回転させると共に、該駆動輪11に接続されたホイール13も同時に回転することにより車両の駆動が可能となる。
【0022】
ホイール13は、車輪状の金属製ホイールであり、駆動輪11と接続されることにより該駆動輪11の回転力をホイール13の外周に嵌め込まれたタイヤ12へ伝達させるものである。
ホイール13は、駆動輪11と接続されるディスク14と、該ディスク14の外周に接続されると共にゴム製のタイヤ12が嵌め込まれるリム15によって構成される。ホイール13の素材は、通常スチールやアルミが用いられるが、特に限定はしない。
ホイール13と駆動輪11との接続方法について特に限定はしないが、例えば、該ホイール13の略中央部分に複数の孔を設けると共に、駆動輪11の先端部分にホイール13に設けた孔を貫通する複数の突起部を設け、孔に突起部を嵌合させた後、ネジ等で締結させることで固定させる態様が好適である。
ホイール13の構造には、ディスク14及びリム15が一体化したワンピースタイプや、ディスク14及びリム15夫々が独立しネジ等で締結されるツーピースタイプ等があるが、特に限定はしない。
【0023】
ディスク14は、駆動輪11と接続されることでリム15を介しタイヤ12へ回転力を伝達するものである。
ディスク14は、略中央部分に駆動輪11と接続され、該駆動輪11との接続部分から放射状に延設されるものであり、リム15の内周部と締結もしくは接続されることで、該駆動輪11の回転力をリム15に伝達させる。
ディスク14の形状は、スポークディスクやメッシュディスク、メッシュディスク等が考え得るが、駆動輪11の回転力に耐え得る強度を有している範囲内において特に限定はしない。
【0024】
リム15は、ホイール13の外周部分を構成するものであり、タイヤ12を該リム15の外周部に嵌め込むことで、駆動輪11の回転力がディスク14を介して該タイヤ12へ伝達されるものである。
リム15は、車輪状であるホイール13の外周部分を構成する略円筒状のものであり、内周部にディスク14が締結もしくは接続されると共に、外周部にタイヤ12が嵌め込まれている。
リム15の径や幅に限定はないが、嵌め込むタイヤ12の大きさや、車体7の形状等を勘案し決定されることとなる。
【0025】
エア受け部16は、圧縮空気を受け止めることで駆動部3による回転運動を補助するものである。
エア受け部16は、駆動部3の所定箇所に備えられ、該エア受け部16に圧縮空気が衝突し、それを受け止めることで、駆動部3における発進や走行、停止といった回転動作の補助を行うものである。
エア受け部16の設置箇所や設置数については、後述するエアノズル5による圧縮空気の吐出範囲内であれば特に限定はなく、例えば、
図1に図示したような複数のディスク14に夫々エア受け部16を止着させる態様や、
図2に図示したようなリム15に複数のエア受け部16を略円状に止着させる態様等が好適である。また、形状に関しても特に限定はなく、板状体や直方体、涙滴型等が考え得るが、正方向への回転時に空気の抵抗を増加させないよう傾斜をつける態様が望ましい。例えば、
図3に図示したように、正方向側を鋭角とした傾斜をつけた略三角柱を形成し、駆動部3の正方向への回転動作時に空気との接触面を狭くすることで抵抗を増加させにくい形状とする態様が望ましい。
【0026】
エア受け部16にて、吐出された圧縮空気を効率よく受け止め駆動部3の回転動作の補助を行う形状として、
図4に図示したように圧縮空気との接触面に中空部を設けた略箱形状を形成する態様も好適である。かかる態様を採ることにより、圧縮空気がエア受け部16中空部へ一時的に滞留することで、正方向へ向けた回転力が中空部の内壁にかかり、駆動部3による正方向への回転力増加に資することとなる。
【0027】
貯蔵部4は、圧縮空気を貯蔵し駆動部3へ送気させるものであり、車体7の所定箇所に備えられる。
貯蔵部4の形状は、圧縮空気の貯蔵が可能であれば特に限定はなく、例えば、タンク型やボンベ型等が考え得る。また、貯蔵部4の設置箇所についても特に限定はなく、該貯蔵部4の形状や使用態様に合わせた箇所に備えられることとなる。そして、貯蔵部4への圧縮空気充填方法にも特に限定はなく、例えば、エアコンプレッサを自宅に設置し充填する態様や、大型のエアタンクが備わったガソリンスタンドや道の駅等にて充填する態様等が考え得る。さらに、貯蔵部4には、温度変化や外形変化による圧縮空気の圧力変化に伴う破損を防ぐため、一定以上(例えば1MPa以上)の圧力を検知した場合に、圧力の調整を自動で行う安全弁が当然に備えられる。
なお、貯蔵部4には、貯蔵された圧縮空気を駆動部3へ送気可能なエア管が備えられており、該エア管の先端にはエアノズル5が接続されることとなる。
【0028】
エアノズル5は、貯蔵部4から送気された圧縮空気を駆動部3の所定箇所へ吐出させ該駆動部3の回転を補助するものであり、例えば、
図1に図示したように、駆動部3近傍の車体7に備えられる態様や、
図2に図示したように、車体7と駆動部3を接続するフレーム8に備えられる態様等が考え得る。
エアノズル5は、貯蔵部4の圧縮空気が送気されるエア管が基端部に接続されると共に、圧縮空気を吐出可能な吐出口が先端部に備えられる。
エアノズル5の設置箇所については、エア受け部16へ圧縮空気を吐出可能な箇所であれば特に限定はしないが、
図1及び
図2に図示したように、駆動輪11よりも前方且つ略鉛直方向へ吐出可能な箇所に設置する態様が好ましい。かかる態様を採ることにより、駆動部3における正方向への回転力増加を行うと共に、エア受け部16と接触もしくは接触できなかった圧縮空気が下方(走行時であれば斜め後方)へ排気されることで車体重量の軽減及び正方向への推進力として期待できる。
【0029】
制御部6は、エアノズル5の開放及び閉塞(以下、単に「開閉」という場合がある。)を制御するものであり、車体7の所定箇所に備えられる。
制御部6によるエアノズル5の制御方法については、従来公知の技術を使用し、エアノズル5もしくは吐出口の開閉を手動もしくは自動にて切り替え可能な態様であれば良い。また、車両の走行速度や、動力部2の回転数、走行路面の傾斜等を、速度計や回転数計、傾斜センサ等で計測し、エアノズル5の開閉や該エアノズル5から吐出される圧縮空気量を自動的に調整する機能が備わる態様も好ましい。かかる態様を採ることにより、例えば、車両の速度が低下しつつ動力部2の回転数が増加しやすい坂道において、傾斜センサの結果により登坂と判断し、吐出される圧縮空気量を増加させることにより、速度の維持や増加が容易になり動力部2への負担を軽減させることが可能になる。
制御部6の形状や設置箇所も特に限定はなく、例えば、上記センサ類を箱形のケースに備えた制御部6を、
図1に図示したように動力部2と貯蔵部4の間隙に設け、該動力部2の動作を計測しつつ貯蔵部4と接続されたエアノズル5の制御を行う、といった態様が考え得る。
【0030】
制御部6によるエアノズル5の制御方法について、該エアノズル5の開閉を制御する以外にも、車両走行時において、危険回避等のために急制動が行われた場合、
図3に図示したように、エアノズル5の吐出口を自動的に逆方向側(破線にて表示)へ回動させ、圧縮空気をエア受け部16の逆方向へ吐出させることで、エア受け部16への空気抵抗の増加と駆動部3への制動力を生じさせる態様も好適である。かかる態様を採ることにより、急制動による車両の制動距離を短くし、危険回避可能性を高めることも可能である。この際、制御部6による車両の速度低下に伴い圧縮空気の吐出量を低下させ、車両停止時にはエアノズル5が閉塞される態様が望ましい。また、逆方向に圧縮空気を吐出させる際、エア受け部16の形状を変化させる態様も考え得る。例えば、
図3に図示したような逆方向側が開放された中空部を有する略三角柱状のエア受け部16であった場合、逆方向に吐出される圧縮空気が衝突する面を逆方向側(吐出方向に対し略垂直)へ可動させて正方向側が開放された中空部を形成し、逆方向へ吐出された圧縮空気が中空部内に一時的に貯留されることで、エア受け部16にかかる圧力が増加し、駆動部3への制動力を増加させることが可能となる。
さらに、図示してはいないが、一のエアノズル5に、正方向側と逆方向側の2箇所の吐出口を設け、夫々の開閉を制御部6によって制御する態様も好適である。かかる態様を採ることにより、エアノズル5の形状や向きを変えることなく、停車時や走行時には圧縮空気を正方向側に吐出し、制動時には逆方向側へ吐出させる、といった走行操作の補助も可能となる。
【0031】
以上の構成要素から成る駆動補助機構1について、その主な動作態様を
図1及び
図3に沿って説明する。
車両走行時、制御部6は車両の走行状態を走行速度及び動力部2の回転数並びに車体7の傾きをセンサによって把握し、運転者の走行操作及びセンサの計測値によってエアノズル5の開閉や吐出方向の操作が行われる。
まず、加速走行時における回転補助動作について説明する。
運転者による加速操作(動力部2の回転数の急上昇)を検知した制御部6は、吐出口を下方に向けたエアノズル5を開放し、圧縮空気をエア受け部16へ向けて正方向に吐出させることで、該エア受け部16に正方向へ向けた圧力がかかり、駆動輪11による正方向への回転が補助される。その後、運転者による加速操作の終了に伴い、制御部6によってエアノズル5が閉塞され、圧縮空気の吐出が停止されることとなる。
【0032】
次に、登坂走行操作時における回転補助動作について説明する。
車体7の傾きセンサにより登坂(例えば、登り勾配5%以上)と判断した制御部6は、吐出口を下方に向けたエアノズル5を開放し、圧縮空気をエア受け部16へ向けて正方向に吐出させることで、該エア受け部16に正方向へ向けた圧力がかかり、駆動輪11による正方向への回転が補助される。その後、登坂判断の終了に伴い、制御部6によってエアノズル5が閉塞され、圧縮空気の吐出が停止されることとなる。
【0033】
最後に、急制動操作時における制動補助動作について説明する。
運転者による急制動操作を検知した制御部6は、即座にエアノズル5の吐出口を逆方向側へ回動させた後、エア受け部16へ向け逆方向に圧縮空気を吐出させることでエア受け部16に逆方向へ向けた圧力がかかり、駆動輪11による正方向への回転に対する制動が補助される。その後、車両速度の低下に伴い、制御部6によってエアノズル5が閉塞され圧縮空気の吐出が停止されると共に、エアノズル5の吐出口を正方向側へ回動させることで、前記回転補助動作に備えられることとなる。
【0034】
以上、本発明にかかる駆動補助機構1の基本的構成態様、並びに、動作・作用について説明したが、本発明は、上記実施形態や図面に示す構成態様に限定するものではない。例えば、エアノズル5及びエア受け部16を、駆動部3が備わっていない一対の車輪(FF車であれば後輪側)に備え、回転及び走行操作の補助を全輪で行うことで、動力部2の負担をさらに低減させると共に、急制動時の制動力上昇にも資することとなる。また、貯蔵部4に貯蔵する圧縮空気を液化した空気に置き換え、気化させた液体空気をエアノズル5から吐出させる、といった態様も将来的に考え得る。
【0035】
以上のように、本発明にかかる駆動補助機構1は、エアノズル5からエア受け部16へ向け圧縮空気を吐出させることによって駆動部3の回転動作を補助することが可能であって、走行操作に伴う動力を圧縮空気の圧力によって補助することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、自動車やバイクといった走行車両は勿論、自転車や電動車いす等の車両全体の補助動力として採用することも可能である。したがって、本発明にかかる「駆動補助機構」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0037】
1 駆動補助機構
2 動力部
3 駆動部
4 貯蔵部
5 エアノズル
6 制御部
7 車体
8 フレーム
9 シャフト
10 チェーン
11 駆動輪
12 タイヤ
13 ホイール
14 ディスク
15 リム
16 エア受け部
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪に動力を供給する動力部と、該動力部からの動力によって回転可能な駆動部と、圧縮空気を貯蔵可能な貯蔵部と、圧縮空気を該駆動部所定箇所に吐出可能なエアノズルと、エアノズルの開放及び閉塞を制御する制御部と、を備える車両であって、
駆動部は、動力部からの動力で回転する駆動輪と、タイヤと、ホイールと、車体の駆動部近傍に接続されたエアノズルから吐出された圧縮空気を受け止め可能な複数のエア受け部と、から成り、
制御部には、急制動の操作時に圧縮空気の吐出方向を逆方向に自動で変更する機能が備わっており、
エアノズルから吐出された圧縮空気によって、駆動部の回転及び走行操作を補助する駆動補助機構。
【請求項2】
前記制御部に、車両の速度及びエンジン部の回転数により圧縮空気の吐出量が自動調整 される機能が備わっていることを特徴とする請求項1に記載の駆動補助機構。