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特開2024-154877竪型射出成形機のシャットオフノズル、射出装置、および竪型射出成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154877
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】竪型射出成形機のシャットオフノズル、射出装置、および竪型射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/23 20060101AFI20241024BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B29C45/23
B22D17/20 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069082
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AJ08
4F206AM03
4F206AM24
4F206AR07
4F206AR12
4F206JA07
4F206JC08
4F206JL02
4F206JL08
4F206JN15
4F206JP17
4F206JQ45
4F206JQ46
4F206JQ57
4F206JQ78
4F206JT02
4F206JT27
(57)【要約】
【課題】ニードル弁の位置を適切に調整することができる、シャットオフノズルを提供する。
【解決手段】シャットオフノズル(5)は、射出流路(35)と斜めのニードル孔(36)とが形成されているノズル部(28)と、ニードル弁(29)と、これを駆動するシリンダユニット(31)と、これをその後端部で回転可能に支持するブラケット(33)と、を備えている。本開示は、ブラケット(33)を射出装置(3)の固定部材(42)に対して固定する固定手段(46)と、ブラケット(33)の固定部材(42)に対するスライド位置を調整するスライド位置調整手段(70)と、を備えるようにする。ブラケット(33)は固定手段(46)が解除された状態で、固定部材(42)に対して所定幅でのスライドが許容されるようにし、スライド位置調整手段(70)によりスライド位置を調整する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型の射出装置の下部に取り付けるようになっており、内部に軸方向の射出流路が形成されていると共にその外周面から前記射出流路に達するニードル孔が形成されているノズル部と、
前記ニードル孔に進退自在に挿入されて前記射出流路を開閉するニードル弁と、
前記ニードル弁を進退方向に駆動するシリンダユニットと、
前記シリンダユニットをその後端部で回転可能に支持するブラケットと、
前記ブラケットを射出装置に固定されている固定部材に対して固定する固定手段と、
前記ブラケットの前記固定部材に対するスライド位置を調整するスライド位置調整手段と、を備え、
前記ブラケットは前記固定手段が解除された状態で、前記固定部材に対して所定幅でのスライドが許容され、前記スライド位置調整手段によりスライド位置が調整されるようになっている、竪型射出成形機のシャットオフノズル。
【請求項2】
前記スライド位置調整手段は、前記固定部材に固着されている土台部と、1本または複数本のスライド位置調整ボルトと、から構成され、
前記スライド位置調整ボルトは、その頭部を下にして前記土台部に形成されている雌ネジに螺合すると共にその先端部が前記土台部を突き出て前記ブラケットの端部を押し当てており、前記土台部から突き出た雄ネジの長さを調整して前記ブラケットのスライド位置を調整するようになっている、請求項1に記載のシャットオフノズル。
【請求項3】
前記固定手段は締結用ボルトからなり、前記ブラケットには前記締結用ボルトの軸部が貫通する締結用ボルト穴が形成され、前記締結用ボルト穴は前記軸部の径より大径の穴、または長穴に形成されている、請求項1または2に記載のシャットオフノズル。
【請求項4】
前記固定部材にはノックピンが固定され、前記ブラケットには前記ノックピンが挿入されている長穴のガイド穴が開けられており、
前記ブラケットは、前記固定手段が解除されると、前記ノックピンによってスライド方向が鉛直方向に規制されるようになっている、請求項1または2に記載のシャットオフノズル。
【請求項5】
前記シャットオフノズルは調整確認用ゲージを備え、前記調整確認用ゲージは、前記シリンダユニットを駆動したとき前記ニードル弁が規定の前進位置に達しているか否かを判定するようになっている、請求項1または2に記載のシャットオフノズル。
【請求項6】
前記調整確認用ゲージは、前記シリンダユニットから突き出しているロッドの露出部分に挿入され、突き出し長さを判定するようになっている、請求項5に記載のシャットオフノズル。
【請求項7】
鉛直に設けられている加熱シリンダと、
前記加熱シリンダに入れられているスクリュと、
前記加熱シリンダの下部に設けられているシャットオフノズルと、を備え、
前記シャットオフノズルは、内部に軸方向の射出流路が形成されていると共にその外周面から前記射出流路に達するニードル孔が形成されているノズル部と、
前記ニードル孔に進退自在に挿入されて前記射出流路を開閉するニードル弁と、
前記ニードル弁を進退方向に駆動するシリンダユニットと、
前記シリンダユニットをその後端部で回転可能に支持するブラケットと、
前記ブラケットを前記加熱シリンダに固定されている固定部材に対して固定する固定手段と、
前記ブラケットの前記固定部材に対するスライド位置を調整するスライド位置調整手段と、を備え、
前記ブラケットは前記固定手段が解除された状態で、前記固定部材に対して所定幅でのスライドが許容され、前記スライド位置調整手段によりスライド位置が調整されるようになっている、射出装置。
【請求項8】
前記スライド位置調整手段は、前記固定部材に固着されている土台部と、1本または複数本のスライド位置調整ボルトと、から構成され、
前記スライド位置調整ボルトは、その頭部を下にして前記土台部に形成されている雌ネジに螺合すると共にその先端部が前記土台部を突き出て前記ブラケットの端部を押し当てており、前記土台部から突き出た雄ネジの長さを調整して前記ブラケットのスライド位置を調整するようになっている、請求項7に記載の射出装置。
【請求項9】
前記固定手段は締結用ボルトからなり、前記ブラケットには前記締結用ボルトの軸部が貫通する締結用ボルト穴が形成され、前記締結用ボルト穴は前記軸部の径より大径の穴、または長穴に形成されている、請求項7または8に記載の射出装置。
【請求項10】
前記固定部材にはノックピンが固定され、前記ブラケットには前記ノックピンが挿入されている長穴のガイド穴が開けられており、
前記ブラケットは、前記固定手段が解除されると、前記ノックピンによってスライド方向が鉛直方向に規制されるようになっている、請求項7または8に記載の射出装置。
【請求項11】
射出材料を射出する竪型の射出装置と、
金型を型締する竪型の型締装置と、を備え、
前記射出装置は、鉛直に設けられている加熱シリンダと、
前記加熱シリンダに入れられているスクリュと、
前記加熱シリンダの下部に設けられているシャットオフノズルと、を備え、
前記シャットオフノズルは、内部に軸方向の射出流路が形成されていると共にその外周面から前記射出流路に達するニードル孔が形成されているノズル部と、
前記ニードル孔に進退自在に挿入されて前記射出流路を開閉するニードル弁と、
前記ニードル弁を進退方向に駆動するシリンダユニットと、
前記シリンダユニットをその後端部で回転可能に支持するブラケットと、
前記ブラケットを前記射出装置に固定されている固定部材に対して固定する固定手段と、
前記ブラケットの前記固定部材に対するスライド位置を調整するスライド位置調整手段と、を備え、
前記ブラケットは前記固定手段が解除された状態で、前記固定部材に対して所定幅でのスライドが許容され、前記スライド位置調整手段によりスライド位置が調整されるようになっている、竪型射出成形機。
【請求項12】
前記スライド位置調整手段は、前記固定部材に固着されている土台部と、1本または複数本のスライド位置調整ボルトと、から構成され、
前記スライド位置調整ボルトは、その頭部を下にして前記土台部に形成されている雌ネジに螺合すると共にその先端部が前記土台部を突き出て前記ブラケットの端部を押し当てており、前記土台部から突き出た雄ネジの長さを調整して前記ブラケットのスライド位置を調整するようになっている、請求項11に記載の竪型射出成形機。
【請求項13】
前記固定手段は締結用ボルトからなり、前記ブラケットには前記締結用ボルトの軸部が貫通する締結用ボルト穴が形成され、前記締結用ボルト穴は前記軸部の径より大径の穴、または長穴に形成されている、請求項11または12に記載の竪型射出成形機。
【請求項14】
前記固定部材にはノックピンが固定され、前記ブラケットには前記ノックピンが挿入されている長穴のガイド穴が開けられており、
前記ブラケットは、前記固定手段が解除されると、前記ノックピンによってスライド方向が鉛直方向に規制されるようになっている、請求項11または12に記載の竪型射出成形機。
【請求項15】
竪型射出成形機のシャットオフノズルの調整方法であって、
前記シャットオフノズルは、前記竪型射出成形機の竪型の射出装置の下部に取り付けられて内部に軸方向の射出流路が形成されていると共にその外周面から前記射出流路に達するニードル孔が形成されているノズル部と、
前記ニードル孔に進退自在に挿入されて前記射出流路を開閉するニードル弁と、
前記ニードル弁を進退方向に駆動するシリンダユニットと、
前記シリンダユニットをその後端部で回転可能に支持するブラケットと、
前記ブラケットを前記射出装置に固定されている固定部材に対して固定する固定手段と、
前記ブラケットの前記固定部材に対するスライド位置を調整するスライド位置調整手段と、を備え、
前記固定手段を解除して前記固定部材に対して前記ブラケットの所定幅のスライドを許容するようにする固定解除工程と、
前記射出装置と前記ノズル部とをヒータにより加熱する昇温工程と、
前記シリンダユニットに流体を供給して前記ニードル弁に前進報告に突力を印可させた状態で前記スライド位置調整手段により前記ブラケットのスライド位置を調整して前記ニードル弁を規定の前進位置に到達させる規定前進位置調整工程と、
前記固定手段により前記ブラケットを前記固定部材に固定する固定工程と、を備えている、シャットオフノズルの調整方法。
【請求項16】
前記スライド位置調整手段は、前記固定部材に固着されている土台部と、1本または複数本のスライド位置調整ボルトと、から構成され、
前記スライド位置調整ボルトは、その頭部を下にして前記土台部に形成されている雌ネジに螺合すると共にその先端部が前記土台部を突き出て前記ブラケットの端部を押し当てており、前記土台部から突き出た雄ネジの長さを調整して前記ブラケットのスライド位置を調整するようにする、請求項15に記載のシャットオフノズルの調整方法。
【請求項17】
前記規定前進位置調整工程は、前記ニードル弁が規定の前進位置に達しているかの判定を調整確認用ゲージによって実施し、前記調整確認用ゲージは、前記シリンダユニットから突き出しているロッドの露出部分に挿入され、突き出し長さを判定するようになっている、請求項15または16に記載のシャットオフノズルの調整方法。
【請求項18】
前記固定手段は締結用ボルトであり、前記固定手段の解除は前記締結用ボルトを緩めることであり、
前記ブラケットには前記締結用ボルトの軸部が貫通する締結用ボルト穴が形成され、
前記締結用ボルト穴は前記軸部の径より大径の穴、または長穴に形成されている、請求項15または16に記載のシャットオフノズルの調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型射出成形機に設けられるシャットオフノズル、シャットオフノズルを備えた射出装置、および竪型射出成形機、ならびにシャットオフノズルの調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
竪型射出成形機の射出装置に設けられるシャットオフノズルは、射出ノズルの射出材料が流れる流路を開閉していわゆるハナタレを防止することができるようになっている。シャットオフノズルには色々なタイプがあり、例えば特許文献1に記載されているように、ノズル部と、このノズル部に対して斜めに設けられたニードル弁とからなるシャットオフノズルがある。このようなタイプのシャットオフノズルは、ノズルの外周面からノズル内の射出流路に達する斜めの孔、つまりニードル孔が開けられている。このニードル孔にニードル弁が進退自在に挿入されている。ニードル弁を前進させると射出流路が閉鎖され、後退させると射出流路が開くようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-274125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなタイプのシャットオフノズルにおいてニードル弁はシリンダユニットによって駆動されて前後進されるようになっている。射出装置の所定の固定部材に対してボルトによりブラケットが取り付けられ、シリンダユニットはその後端部でブラケットに対して回転可能に支持されている。ブラケットが固定部材に対して適切な位置で取り付けられていると、ニードル弁は適切な位置でシリンダユニットによって駆動されることになる。つまりニードル弁はニードル孔に精度良く整合した状態になるので、ニードル弁は滑らかに前後進して射出ノズルの流路を開閉する。しかしながら、固定部材に対するブラケットの位置が適切でないと、ニードル弁は適切な位置からずれてしまい、滑らかな駆動ができなくなる。
【0005】
ブラケットはボルト等によって固定部材に固定されており、ブラケットを固定部材に対して適切な位置に調整するには、ボルトを緩めてブラケットの位置を調整し、再度ボルトを締める必要がある。しかしながら、竪型射出成形機においてシャットオフノズルは射出装置の下部に設けられており、シャットオフノズルには鉛直方向に重量が作用している。ボルトを緩めて固定部材に対するブラケットの固定状態を解除しても、重量に抗してブラケットの位置を調整するのは困難である。
【0006】
本開示において、ニードル弁の位置を適切に調整することができる、シャットオフノズルを提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、竪型射出成形機のシャットオフノズルとして構成する。シャットオフノズルは、軸方向の射出流路と斜めのニードル孔とが形成されているノズル部と、ニードル孔に挿入されているニードル弁と、ニードル弁を駆動するシリンダユニットと、シリンダユニットをその後端部で回転可能に支持するとブラケットと、を備えている。本開示は、シャットオフノズルに、ブラケットを射出装置の固定部材に対して固定する固定手段と、ブラケットの固定部材に対するスライド位置を調整するスライド位置調整手段と、を備えるようにする。ブラケットは固定手段が解除された状態で、固定部材に対して所定幅でのスライドが許容されるようにし、スライド位置調整手段によりスライド位置を調整するように構成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、ニードル弁の位置を適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る竪型射出成形機を示す正面図である。
図2】第1の実施形態に係るシャットオフノズルと射出装置の一部を示す正面断面図である。
図3】第1の実施形態に係るシャットオフノズルのブラケットと、スライド位置調整機構とを示す側面図である。
図4】第1の実施形態に係るシャットオフノズルのノズル部の一部とニードル弁の一部とを示す正面断面図である。
図5】第1の実施形態に係るゲージを示す斜視図である。
図6】第1の実施形態に係るシャットオフノズルの調整方法を説明するフローチャートである。
図7A】第1の実施形態に係るシャットオフノズルの正面断面図である。
図7B】第1の実施形態に係るシャットオフノズルの正面断面図である。
図7C】第1の実施形態に係るシャットオフノズルのノズル部の一部とニードル弁の一部とを示す正面断面図である。
図7D】第1の実施形態に係るシャットオフノズルの正面断面図である。
図7E】第1の実施形態に係るシャットオフノズルのノズル部の一部とニードル弁の一部とを示す正面断面図である。
図7F】第1の実施形態に係るシャットオフノズルの正面断面図である。
図8A】第2の実施形態に係るシャットオフノズルの正面断面図である。
図8B】シャットオフノズルのブラケットと、スライド位置調整機構とを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
[第1の実施形態]
<竪型射出成形機>
第1の実施形態に係る竪型射出成形機1は、図1に示されているように、トグル式の型締装置2と、射出装置3と、を備えている。竪型射出成形機1には制御装置4が設けられ、型締装置2、射出装置3を制御するようになっている。
【0013】
<型締装置>
型締装置2は、いわゆる竪型型締装置からなり、ベッド7に固定されている固定盤9と、この固定盤9の上方に設けられている上可動盤10と、ベッド7内に設けられている下可動盤11とを備えている。この実施の形態において、上可動盤10と下可動盤11は3本のタイバー12、12、…で連結されている。下可動盤11と固定盤9の間にはトグル機構14が設けられ、固定盤9の上にはターンテーブル15が設けられている。上可動盤10には上側金型17が、そしてターンテーブル15には下側金型18が設けられている。トグル機構14を駆動すると上側金型17と下側金型18が型開閉される。
【0014】
<射出装置>
射出装置3は、型締装置2の上可動盤10の上に設けられている。射出装置3は、実質的に鉛直に立てられている加熱シリンダ19と、加熱シリンダ19内に設けられているスクリュ20と、スクリュ駆動装置22と、射出装置3全体を昇降する昇降装置23と、を備えている。加熱シリンダ19には、次に詳しく説明するが、図2に示されているように第1の実施形態に係るシャットオフノズル5が設けられている。そして、加熱シリンダ19とシャットオフノズル5にはヒータ25、25、…が設けられ、これらが加熱されるようになっている。ヒータ25、25、…により加熱し、そしてスクリュ20を回転すると射出材料が溶融され、計量される。スクリュ20を軸方向に駆動すると射出材料が射出される。
【0015】
<シャットオフノズル>
第1の実施形態に係るシャットオフノズル5は、図2に示されているように、ノズル部28と、ニードル弁29と、ニードル弁29を駆動するシリンダユニット31と、シリンダユニット31を支持するブラケット33と、を備えている。ノズル部28には、その内部に射出材料が流れる射出流路35が形成されている。本明細書において軸方向は、ノズル部28の軸の方向を意味するものとし、射出流路35は軸方向に形成されている。ノズル部28には、その外周面から射出流路35に達する孔、つまりニードル孔36も形成されている。ニードル孔36は軸方向に対して斜めに形成されており、ニードル弁29が進退自在に挿入されている。図4に示されているようにニードル孔36の先端部は球面状の凹部39に形成され、ニードル弁29の頭部38は半球状に形成されている。ニードル弁29を前進させると、この頭部38が凹部39に着座することになる。
【0016】
ニードル弁29は、シリンダユニット31によって駆動されるようになっており、ニードル弁29の後端部はシリンダユニット31のロッド40に対してカップリング41により接続されている。後で説明するように、シャットオフノズル5の調整が適切にされている場合、ニードル弁29を最前進位置に駆動するとき、露出しているロッド40の長さ43が規定の長さになる。この長さ43をチェックして、シャットオフノズル5の調整が適切にされているか否かを判定することができる。
【0017】
シリンダユニット31は、その後端部がブラケット33によって回転可能に支持されている。ブラケット33は、射出装置3に固定されている固定部材42に対して取り付けられている。固定部材42は、射出装置3の加熱シリンダ19の軸方向と並行になっており比較的長い部材からなる。つまり固定部材42は射出装置3に設けられ、射出装置3の軸方向と並行に延在する構造になっている。ブラケット33にはフランジ部44が形成され、このフランジ部44が固定手段つまり締結用ボルト46、46、…によって固定部材42に固定されている。
【0018】
図3にはブラケット33を図2における矢印47の方向から見た図が示されている。フランジ部44には、4個のボルト穴49、49、…が空けられている。図3において、締結用ボルト46、46、…はその軸部50、50が示されている。軸部50、50の径に対してボルト穴49、49、…の径は大きい。したがって締結用ボルト46、46、…を緩めると、締結用ボルト46、46、…の軸部50、50はボルト穴49、49、…の範囲で移動が可能になる。つまり、ブラケット33を固定部材42(図2参照)に対して若干の範囲でスライドさせることができる。
【0019】
図2図3に示されているように、第1の実施形態においては固定部材42とブラケット33との間にノックピン52、52が設けられている。ノックピン52、52は固定部材42に埋め込まれ、その一部が露出している。ブラケット33には図3に示されているように長穴のガイド孔53、53が形成されている。ノックピン52、52の露出した部分は、このガイド孔53、53に入れられている。したがって、ノックピン52、52はガイド孔53、53に沿って長手方向での移動が可能になる。つまり、締結用ボルト46、46、…を緩めると、ブラケット33は、ノックピン52、52によってスライドの方向が規制された状態で、固定部材42に対して若干のスライドが許容されることになる。なお、スライドの方向は、射出装置3の軸方向に沿った方向、つまり略鉛直方向になる。
【0020】
図2に示されているように、固定部材42にはニードル弁29をその後端部近傍で支持するガイド部55が設けられている。ガイド部55には斜めの貫通孔56が空けられており、ニードル弁29はこの貫通孔56に挿入されている。第1の実施形態において貫通孔56の内径はニードル弁29におけるこの部分の径よりも若干大きくなっており、ニードル弁29は若干の隙間が確保された状態で緩やかに挿入されている。
【0021】
<スライド位置調整手段>
シャットオフノズル5(図2参照)は、ニードル弁29の位置が適切に調整されているときニードル弁29がニードル孔36に精度良く整合し、シリンダユニット31の駆動によりニードル弁29を滑らかに前後進させることができる。ニードル弁29の位置を適切に調整するには、固定部材42に対するブラケット33のスライド位置を調整する必要がある。第1の実施形態に係るシャットオフノズル5は、固定部材42に対するブラケット33のスライド位置を調整するスライド位置調整手段、つまりスライド位置調整機構70が設けられている。これを説明する。
【0022】
第1の実施形態においてスライド位置調整機構70は、固定部材42に固着されている土台部71と、スライド位置調整ボルト73と、から構成されている。土台部71は、ブラケット33のフランジ部44の近傍であって、その下方に設けられている。スライド位置調整ボルト73はその頭部を下にして土台部71に形成されている雌ネジに螺合すると共にその先端部が土台部71を突き出ている。図3に示されているように、第1の実施形態においてスライド位置調整ボルト73、73は2本になっている。しかしながら、1本であってもよいし、あるいは3本以上であってもよい。
【0023】
スライド位置調整ボルト73、73は、土台部71から突き出た先端部がブラケット33のフランジ部44に接している。したがって、締結用ボルト46、46を緩めてブラケット33のスライドを許容させておき、スライド位置調整ボルト73、73を回転させて土台部71から突き出た雄ネジの長さを調整すると、ブラケット33のスライド位置を調整することができる。
【0024】
<ゲージ>
次に説明する第1の実施形態に係るシャットオフノズル5(図2参照)の調整方法では、ブラケット33が固定部材42に対して適切なスライド位置になっているか否かを確認するために、ロッド40の露出部分の長さ43が適切かどうかをチェックする。図5には、このチェックを行うためのゲージ60が示されている。ゲージ60は肉厚の円筒を半割にしたような構造をしている。ゲージ60の内周面61は、その内径がロッド40(図2参照)の径より若干大きく、ロッド40に接するようになっている。ゲージ60の幅62は、ロッド40の長さ43に対応しており、これが適切な長さかどうかをチェックできるようになっている。
【0025】
<シャットオフノズルの調整方法>
第1の実施形態に係るシャットオフノズル5の調整方法を説明する。最初に図6に示されているように固定解除工程(ステップS01)を実施する。すなわち、図7Aに示されているように、締結用ボルト46、46を緩めてブラケット33の固定部材42に対する固定状態を解除する。そうすると、ブラケット33はノックピン52と長穴のガイド孔53とによってその方向が略鉛直方向に規制された状態で、所定範囲でスライドが許容されることになる。ただし、このときブラケット33とシリンダユニット31の自重によりブラケット33は落下する。つまり固定部材42に対してブラケット33は最下方位置にスライドする。
【0026】
図6に示されているように昇温工程(ステップS02)を実施する。すなわちヒータ25、25(図7A参照)により加熱シリンダ19とノズル部28とを加熱する。加熱によりこれらが運転可能な状態に昇温されるまで待機する。そうすると熱膨張により加熱シリンダ19とノズル部28がわずかに伸張する。
【0027】
加熱シリンダ19とノズル部28が昇温したら図6に示されているように、規定前進位置調整工程(ステップS03)を実施する。まず、図7Bに示されているように、シリンダユニット31に流体を供給してニードル弁29を前進方向に駆動する。ニードル弁29は、図7Cに示されているように、その頭部38がノズル部28のニードル孔36の凹部39に着座し、ニードル弁29の前進は停止する。このときブラケット33は固定部材42に対して最下方位置にスライドしているので、ニードル弁29の前進の長さは短い。引き続きシリンダユニット31(図7B参照)に流体を供給しニードル弁29に前進方向の駆動力を印可しておく。
【0028】
この状態で図7Dに示されているように、スライド位置調整機構70によりブラケット33を上向きにスライドさせる。つまりスライド位置調整ボルト73、73を少しだけ回転して、スライド位置調整ボルト73、73によりブラケット33を少しだけ上向きに持ち上げる。この実施形態ではスライド位置調整ボルト73、73は2本なので、これらを交互に少しずつ回転させてブラケット33に倒れが生じないように並行状態を維持してブラケット33を持ち上げる。ブラケット33のスライド位置が上に変化すると、ニードル弁29には前進方向の駆動力が印可されているので、ニードル弁29は自動的に突き出される。シリンダユニット31のロッド40の露出部分にゲージ60を挿入し、ロッド40の露出部分の長さを確認する。ゲージ60が挿入できなければ露出部分の長さが足りないと判断し、スライド位置調整ボルト73、73をさらに少しだけ回転する。
【0029】
やがて、ロッド40の露出部分の長さが適切な長さになり、ゲージ60がロッド40の露出部分に挿入される。これにより、ニードル弁29が規定前進位置に達したと判断する。ニードル弁29が規定前進位置になっているとき、図7Eに示されているように、ニードル弁29はニードル孔36に対して精度良く整合する。整合しているときニードル弁29はニードル孔36に対して実質的に同軸になる。つまり、その長さ方向においてニードル弁29の外周面とニードル孔36の内周面との間に一定のクリアランスが確保される。このようになっていると、ニードル弁29は滑らかに駆動されることになる。
【0030】
ところで、図7Eには、ニードル孔36に対して整合していない場合のニードル弁29が点線で示されている。このように整合していない場合、つまりニードル弁29の外周面がニードル孔36の内周面に対してクリアランスが不均一で偏っている場合、強く接触する箇所と若干隙間が広い箇所とができる。そうすると計量時や射出時において隙間が広い箇所から樹脂が外部に漏れる易くなる。長期の運転を経ると強く接触している部分が摩耗して製品寿命が短くなる問題もある。前記したように、規定前進位置調整工程(ステップS03)を実施すると、ニードル弁29をニードル孔36に対して実質的に同軸に調整することができ、このような問題の発生を防止することができる。規定前進位置調整工程(ステップS03)を完了する。
【0031】
図6に示されているように、固定工程(ステップS04)を実施する。すなわち、図7Fに示されているように、締結用ボルト46、46を締め付ける。そうするとブラケット33が固定部材42に対して固定される。シャットオフノズル5の調整方法を完了する。
【0032】
[第2の実施形態]
<竪型射出成形機>
第2の実施形態を説明する。第2の実施形態に係る竪型射出成形機1についても、型締装置2、射出装置3、制御装置4については、図1に示されている第1の実施形態に係る竪型射出成形機1、型締装置2、射出装置3、制御装置4と同様に構成されている。したがって、これらについての説明は省略する。
【0033】
<シャットオフノズル>
第2の実施形態に係るシャットオフノズル5Aは、図8Aに示されている。第2の実施形態に係るシャットオフノズル5Aは、固定部材42Aの構造、ブラケット33Aの構造、そしてスライド位置調整機構70Aが第1の実施形態と異なっている。そして、第1の実施形態において設けられていたガイド部55(図2参照)は、第2の実施形態においては設けられていない。第2の実施形態に係るシャットオフノズル5Aにおける他の部材、構造については図2に示されている第1の実施形態に係るシャットオフノズル5と同様に構成されているので、これらについての説明は省略する。
【0034】
第2の実施形態に係るシャットオフノズル5Aにおいて、固定部材42Aは、加熱シリンダ19の所定の一部分に固定されており、射出装置3の軸方向に延在する構造にはなっていない。既に説明したように、第1の実施形態において設けられていたガイド部55(図2参照)が設けられていないので、第2の実施形態において固定部材42Aを射出装置3の軸方向に延在するような構造にする必要がないからである。このような固定部材42Aに第2の実施形態に係るブラケット33Aが設けられている。
【0035】
第2の実施形態に係るブラケット33Aも、第1の実施形態と同様に締結用ボルト46、46、…によって固定部材42Aに対して固定されるようになっているが、いくつかの点で第1の実施形態と異なっている。図8Bにはブラケット33Aを側方から見た様子が示されている。ブラケット33Aのフランジ部44Aには、締結用ボルト46、46、…の軸部50、50、…が入れられるボルト穴77、77、…が空けられている。第2の実施形態においてこれらのボルト穴77、77、…は長穴からなる。したがって、これらボルト穴77、77、…によって締結用ボルト46、46、…の軸部50、50、…は上下方向の移動だけが許容される。第2の実施形態においては、第1の実施形態に設けられていたノックピン52、52(図2図3参照)はないが、第1の実施形態と同様にブラケット33Aは上下方向のスライドが許容される。
【0036】
<スライド位置調整手段>
第2の実施形態に係るシャットオフノズル5Aにおけるスライド位置調整機構70Aを説明する。スライド位置調整機構70Aは、図8Aに示されているように、固定部材42に固着されている吊り下げ部78と、スライド位置調整ボルト73Aと、から構成されている。吊り下げ部78は、ブラケット33Aのフランジ部44Aの近傍であって、その上方に設けられている。スライド位置調整ボルト73A、73A、…は図8A図8Bに示されているように、その頭部が吊り下げ部78に載せられ、そしてその雄ネジは、ブラケット33Aのフランジ部44Aに形成されている雌ネジ79に螺合している。つまりブラケット33Aはスライド位置調整ボルト73A、73A、…によって吊り下げられている。
【0037】
したがって、スライド位置調整ボルト73A、73A、…を回転して、雄ネジの雌ネジ79、79、…に対する螺合の長さ調整すると、ブラケット33Aの吊り下げ位置が変化する。つまり、ブラケット33Aのスライド位置を調整することができる。第2の実施形態において図8Bに示されているように、スライド位置調整ボルト73A、73A、…は3本になっている。しかしながら、1本、または2本であってもよいし、あるいは4本以上であってもよい。
【0038】
<シャットオフノズルの調整方法>
第2の実施形態に係るシャットオフノズル5Aの調整方法も、第1の実施形態に係るシャットオフノズル5の調整方法と同様に実施することができる。つまり、図6に示されているように、固定解除工程(ステップS01)、昇温工程(ステップS02)、規定前進位置調整工程(ステップS03)を順次実施し、最後に固定工程(ステップS04)を実施すればよい。なお、規定前進位置調整工程(ステップS03)では、シリンダユニット31(図8A参照)に流体を供給してニードル弁29に前進方向の駆動力を印可させておき、ブラケット33Aのスライド位置を調整する必要がある。第2の実施形態においては、前記したようにスライド位置調整ボルト73A、73A、…を少しずつ回転してブラケット33Aの吊り下げ位置を調整すればよい。これによりブラケット33Aのスライド位置を調整することができる。
【0039】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 竪型射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御装置
5 シャットオフノズル 7 ベッド
9 固定盤 10 上可動盤
11 下可動盤 12 タイバー
14 トグル機構 15 ターンテーブル
17 上側金型 18 下側金型
19 加熱シリンダ 20 スクリュ
22 スクリュ駆動装置 23 昇降装置
25 ヒータ 28 ノズル部
29 ニードル弁 31 シリンダユニット
33 ブラケット 35 射出流路
36 ニードル孔 38 頭部
39 凹部 40 ロッド
41 カップリング 42 固定部材
43 ロッドの長さ 44 フランジ部
46 締結用ボルト 49 ボルト穴
50 軸部 52 ノックピン
53 ガイド孔 55 ガイド部
56 貫通孔 60 ゲージ
70 スライド位置調整機構 71 土台部
73 スライド位置調整ボルト 77 ボルト穴
78 吊り下げ部 79 雌ネジ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B