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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154886
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車両用成形天井材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20241024BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60R13/02 A
B32B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069094
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伏木 忍
(72)【発明者】
【氏名】永田 英暉
【テーマコード(参考)】
3D023
4F100
【Fターム(参考)】
3D023BA03
3D023BB03
3D023BC01
3D023BD01
3D023BE07
3D023BE10
3D023BE19
4F100AG00D
4F100AK01C
4F100AK51A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DC12C
4F100DG13B
4F100DG15B
4F100DG15D
4F100DJ00A
4F100EJ20
4F100EJ42
4F100GB33
4F100JD02
4F100JD02D
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】車両によって異なる吸音特性に応じて、吸音性能を調整できる車両用成形天井材を提供する。
【解決手段】車両用成形天井材10,20は、多孔質の芯材6を含んだ面形状の基材層2と、基材層2の車室内側の面に積層された表皮材4とを有し、表皮材4の車室内側の面から基材層2に向けて通気する通気量を調整可能に構成される通気コントロール機構5,21を備える。車室内で発生する音は通気コントロール機構5,21を介して、基材層2によって吸音され得る。通気コントロール機構5,21は、吸音率を上げる場合には基材層2への通気量を増やし、吸音率を下げる場合には基材層2への通気量を減らすことができる。これにより、通気コントロール機能を備えた車両用成形天井材10,20を構成することができ、車両によって異なる吸音特性に応じて車両用成形天井材10,20の吸音率を調整できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用成形天井材であって、
多孔質の芯材を含んだ面形状の基材層と、
前記基材層の車室内側の面に積層された表皮材とを有し、
前記表皮材の車室内側の面から前記基材層に向けて通気する通気量を調整可能に構成される通気コントロール機構を備えた車両用成形天井材。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用成形天井材であって、
前記通気コントロール機構は、
面状のプラスチックフィルムで構成され前記基材層と前記表皮材との間に配設されたフィルム層を有しており、
前記フィルム層は、厚さ方向に穿たれた多数の通気孔によって、前記表皮材の車室内側の面から前記基材層に向けて通気可能に構成される通気部を有しており、
車両の天井面の面積に対する前記通気孔のそれぞれの開口面積を合わせた総開口面積の割合である開口率を変えることで、前記通気量を調整する、車両用成形天井材。
【請求項3】
請求項2に記載された車両用成形天井材であって、
前記フィルム層における前記通気孔の数を変える、及び/又は、前記フィルム層における少なくとも一部の前記通気孔のそれぞれの開口径を変えることで、前記開口率を変える、車両用成形天井材。
【請求項4】
請求項3に記載された車両用成形天井材であって、
前記フィルム層は、車両の天井面において相対的に前記通気孔が密集するように設けられた第1の有孔領域と、前記通気孔が疎らに設けられた第2の有孔領域とを有する、車両用成形天井材。
【請求項5】
請求項3に記載された車両用成形天井材であって、
前記フィルム層は、車両の天井面における一部の領域に前記通気孔が偏って設けられた第3の有孔領域と、前記通気孔が設けられていない無孔領域とを有する、車両用成形天井材。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載された車両用成形天井材であって、
前記フィルム層は、前記開口率が、0.1%~50%の範囲で構成されている、車両用成形天井材。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された車両用成形天井材であって、
前記通気コントロール機構は、
面状のプラスチックフィルムで構成され、車両の天井面における一部の領域において前記基材層と前記表皮材との間に配設されたフィルム層を有しており、
前記天井面の面積に対する前記フィルム層の領域の面積を変えることで、前記通気量を調整する、車両用成形天井材。
【請求項8】
請求項1に記載された車両用成形天井材であって、
前記基材層と前記表皮材との間に配設され、前記通気コントロール機構を構成する通気コントロール層を有しており、
前記通気コントロール層は、面状の不織布層とされ、前記表皮材の車室内側の面から前記基材層に向けて通気可能であり且つ通気度が3~35cc/cm2/secの範囲で構成される通気部を有している、車両用成形天井材。
【請求項9】
請求項1に記載された車両用成形天井材であって、
前記表皮材は、前記通気コントロール機構を構成する通気コントロール層を含み、
前記通気コントロール層は、前記表皮材の車室内側の面から前記基材層に向けて通気可能であり且つ通気度が3~35cc/cm2/secの範囲で構成される通気部を有している、車両用成形天井材。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載された車両用成形天井材であって、
前記通気コントロール層は、車両の天井面における一部の領域に配設され、
前記天井面の面積に対する前記通気コントロール層の領域の面積を変えることで、前記通気量を調整する、車両用成形天井材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用成形天井材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の成形天井材として種々のものが知られている。例えば、特許文献1には、ポリウレタン発泡体の表面に、熱硬化性樹脂を含浸させたガラスマットなどを貼着した自動車用の内装基材が開示されている。このように、ポリウレタン発泡体などの多孔質素材にガラスマットなどの繊維補強材を積層させることで、成形天井材の軽量化と剛性確保を図ることができる。特許文献1に記載の内装基材は、繊維補強材と表皮材の間に熱硬化性樹脂の浸透を防ぐ非通気性フィルムが配設されている。また、特許文献2には、ポリウレタンフォームの両面に、ガラスマットに代えてポリカーボネートフイルムを積層させた成形天井用芯材が開示されている。
【0003】
ところで、特許文献1や特許文献2に記載された成形天井材のように非通気性のフィルムが含まれる構成の場合、吸音材料部分への通気がフィルムによって阻害されるため、成形天井材の吸音性能を十分に備えていないものが多い。そこで、成形天井材の軽量化と剛性等に加えて吸音性能が求められる場合には、特許文献3に開示されている成形天井材のように、例えば非通気性のフィルムを含まない構成として、ポリウレタンフォームへの通気が阻害されるのを防いだり、ポリウレタンフォームの厚さを厚くしたりするなどして吸音性能の向上を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-39142号公報
【特許文献2】特許第3563181号公報
【特許文献3】特開2012-162138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年は車両の室内の音響性能が改善されており、各車両によって天井の吸音の周波数特性が異なる。これに伴い、車両の吸音特性に応じて要求される成形天井材の吸音性能も異なっている。そのため、通気が阻害されないように非通気性フィルムを含まない構成とした成形天井材では、それぞれの車両の吸音特性に適した吸音性能を備えることは困難な傾向にあった。そこで、少なくとも要求され得る範囲内で吸音性能を調整できる車両用成形天井材が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両によって異なる吸音特性に応じて吸音性能を調整できる車両用成形天井材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する車両用成形天井材の一つの特徴は、多孔質の芯材を含んだ面形状の基材層と、前記基材層の車室内側の面に積層された表皮材とを有し、前記表皮材の車室内側の面から前記基材層に向けて通気する通気量を調整可能に構成される通気コントロール機構を備えている。
【0008】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用成形天井材は、表皮材の車室内側の面から多孔質の芯材を含んだ基材層に向けて通気する通気量を調整可能に構成される通気コントロール機構を備えている。車室内で発生する音は、通気コントロール機構を介し、基材層によって吸音され得る。すなわち、車室内側からの音に対して吸音性能を備えた車両用成形天井材を構成できる。また、吸音率を上げる場合には基材層への通気量を増やし、吸音率を下げる場合には基材層への通気量を減らすことができる。これにより、通気コントロール機能を備えた車両用成形天井材を構成することができ、基材層の厚さによらず車両用成形天井材の吸音率を調整し得る。よって、車両の吸音特性に対応した吸音性能を備える車両用成形天井材を提供できる。
【0009】
上記車両用成形天井材について、前記通気コントロール機構は、面状のプラスチックフィルムで構成され前記基材層と前記表皮材との間に配設されたフィルム層を有しており、前記フィルム層は、厚さ方向に穿たれた多数の通気孔によって前記表皮材の車室内側の面から前記基材層に向けて通気可能に構成される通気部を有しており、車両の天井面の面積に対する前記通気孔のそれぞれの開口面積を合わせた総開口面積の割合である開口率を変えることで、前記通気量を調整する構成としても良い。
【0010】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両の吸音特性に応じて通気量が調整されたフィルム層が、基材層と表皮材の間に配設されており、通気コントロール機構が構成されている。フィルム層には、厚さ方向に穿たれた多数の通気孔が設けられており、表皮材の車室内側の面から基材層に向けて通気可能な通気部が構成されている。これにより、車室内で発生する音は通気部を介して、基材層によって吸音され得る。そして、フィルム層において、車両の天井面の面積に対する通気孔の総開口面積、すなわち開口率を変えることで、基材層への通気量を調整し得る。したがって、車両用成形天井材の吸音性能を車両の吸音特性に応じて調整できる。
【0011】
上記車両用成形天井材について、前記フィルム層における前記通気孔の数を変える、及び/又は、前記フィルム層における少なくとも一部の前記通気孔のそれぞれの開口径を変えることで、前記開口率を変える構成としても良い。
【0012】
上記構成の一つの特徴及び利点は、通気コントロール機構は、フィルム層に設けられる一部またはすべての通気孔のそれぞれの開口径を変えることで通気孔の総開口面積を変更し、又は通気孔の数を変えることで通気孔の総開口面積を変更する。すなわち、通気量を増やす場合は通気孔の開口径を大きくし、通気量を抑制する場合は通気孔の開口径を小さくして、通気孔の開口率を変更する。又は、通気孔の開口径を変えずに、通気孔の数を増減させることで、通気孔の開口率を変更する。さらに、通気コントロール機構は、フィルム層に設けられる通気孔の開口径の変更と、通気孔の配置の数の変更を組み合わせることで、通気孔の開口率を変更しても良い。これにより、基材層への通気量を調整し得る。よって、車両用成形天井材の吸音性能を車両の吸音特性に応じて調整できる。
【0013】
上記車両用成形天井材について、前記フィルム層は、車両の天井面において相対的に前記通気孔が密集するように設けられた第1の有孔領域と、前記通気孔が疎らに設けられた第2の有孔領域とを有する構成としても良い。
【0014】
上記構成の一つの特徴及び利点は、フィルム層には車両の天井面において相対的に通気孔が密集して配置された第1の有孔領域と、通気孔が疎らに配置された第2の有孔領域が設けられている。したがって、第1の有孔領域では相対的に基材層への通気量が多く、吸音率が高くなり、第2の有孔領域では基材層への通気量が少なく、吸音率が低くなる。すなわち、天井面における通気孔の配置の数や開口率を部分的に異ならせることで、車室内のそれぞれの場所ごとに吸音性能を調整できる。
【0015】
上記車両用成形天井材について、前記フィルム層は、車両の天井面における一部の領域に前記通気孔が偏って設けられた第3の有孔領域と、前記通気孔が設けられていない無孔領域とを有する構成としても良い。
【0016】
上記構成の一つの特徴及び利点は、フィルム層には車両の天井面において第3の有孔領域と無孔領域が設けられている。無孔領域には通気孔を設けず、第3の領域に通気孔が偏って設けられる。したがって、車室内において、無孔領域では相対的に基材層への通気量が抑制されて吸音率が低くなり、第3の有孔領域では無孔領域よりも基材層への通気量が多いため吸音率が高くなる。すなわち、車室内の場所ごとに吸音性能を調整できる。
【0017】
上記車両用成形天井材について、前記フィルム層は、前記基材層の面積に対する前記通気孔の開口率が、0.1%~50%の範囲で構成されても良い。
【0018】
上記構成の一つの特徴及び利点は、フィルム層における通気孔が開口率0.1%~50%の範囲で構成される。したがって、基材層と表皮材の間に非通気性フィルム等を配設した場合に比べて基材層への通気量を増やすことができるとともに、過度な通気を抑制し得る。これにより、要求される吸音性能に応じて、適度に基材層への通気量を調整でき、より好適な車両用成形天井材の吸音性能を得ることができる。
【0019】
上記車両用成形天井材について、前記通気コントロール機構は、面状のプラスチックフィルムで構成され、車両の天井面における一部の領域において前記基材層と前記表皮材との間に配設されたフィルム層を有しており、前記天井面の面積に対する前記フィルム層の面積を変えることで、前記通気量を調整する構成としても良い。
【0020】
上記構成の一つの特徴及び利点は、フィルム層は、車両の天井面における一部の領域に配設される。このフィルム層の通気量を一定量に抑制し、又は通気がなされないようにすることで、吸音率が低い領域が構成される。したがって、車両の天井面に対するフィルム層の領域の面積を変えることで、天井面に対する吸音率が低い領域の面積の割合を変えることができ、天井面全体の通気量を調整し得る。
【0021】
上記車両用成形天井材について、前記基材層と前記表皮材との間に配設され、前記通気コントロール機構を構成する通気コントロール層を有しており、前記通気コントロール層は、面状の不織布層とされ、前記表皮材の車室内側の面から前記基材層に向けて通気可能であり且つ通気度が3~35cc/cm2/secの範囲で構成される通気部を有する構成としても良い。
【0022】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両の吸音特性に応じて通気量が調整された不織布層(通気コントロール層)が、基材層と表皮材との間に配設されている。不織布層(通気コントロール層)は、通気度3~35cc/cm2/secの範囲で表皮材から基材層への通気量が調整されている。したがって、基材層と表皮材の間に非通気性フィルム等を配設した場合に比べて基材層への通気量を適度に増やすことができるとともに、過度な通気を抑制し得る。これにより、要求される吸音性能に応じて、適度に基材層への通気量を調整でき、より好適な車両用成形天井材の吸音性能を得ることができる。
【0023】
上記車両用成形天井材について、前記表皮材は、前記通気コントロール機構を構成する通気コントロール層を含み、前記通気コントロール層は、前記表皮材の車室内側の面から前記基材層に向けて通気可能であり且つ通気度が3~35cc/cm2/secの範囲で構成される通気部を有する構成としても良い。
【0024】
上記構成の一つの特徴及び利点は、表皮材は、車両の吸音特性に応じて通気量が調整された通気コントロール層を含み、基材層の車室内側に配設されている。これにより、表皮材4を通気コントロール機構として兼用し得る。
【0025】
上記車両用成形天井材について、前記通気コントロール層は、車両の天井面における一部の領域に配設され、前記天井面の面積に対する前記通気コントロール層の領域の面積を変えることで、前記通気量を調整する構成としても良い。
【0026】
上記構成の一つの特徴及び利点は、通気コントロール層は、車両の天井面における一部の領域に配設される。この通気コントロール層の通気量を一定量に抑制することで、吸音率が低い領域が構成される。したがって、車両の天井面に対する通気コントロール層の領域の面積を変えることで、天井面に対する吸音率が低い領域の面積の割合を変えることができ、天井面全体の通気量を調整し得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、上記構成をとることにより、車両によって異なる吸音特性に応じて吸音性能を調整できる車両用成形天井材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態に係る成形天井材の断面構造を模式的に示す図である。
図2】第1実施形態に係る成形天井材における通気孔の配置パターンの一例を示す図である。
図3】成形天井材における通気孔の配置について他の実施例を示す図である。
図4】成形天井材における通気孔の配置について他の実施例を示す図である。
図5】成形天井材における通気孔の配置について他の実施例を示す図である。
図6】成形天井材におけるフィルム層の配設について一例を示す図である。
図7】第2実施形態に係る成形天井材の断面構造を模式的に示す図である。
図8】実施例1、比較例1及び比較例2の吸音率測定結果を示す図である。
図9】実施例2、実施例3の吸音率測定結果を示す図である。
図10】実施例4の吸音率測定結果を示す図である。
図11】実施例5の吸音率測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
以下に、本発明の実施形態について、図を用いて説明する。車両には屋根として鋼板製の天井パネルが構成されている。第1実施形態に係る車両用の成形天井材10は、この天井パネルの車室内側に装着される天井内装材である。成形天井材10は、図1に示すように、基材層2、裏材3、表皮材4、フィルム層5(通気コントロール層)を含む積層体が、例えば熱プレスで加熱及び加圧成形されている。
【0030】
基材層2は、多孔質の芯材6と、芯材6の両面に積層された繊維補強層7,8を含み、熱硬化性接着剤等で固化されている。芯材6は、成形天井材10の形状保持と剛性確保のために設けられており、天井パネルの表面に沿った面形状に成形されている。本実施形態に係る芯材6は、ウレタン樹脂発泡体からなる半硬質層のウレタンフォームが選択される。
【0031】
芯材6の車体側の面には第1の繊維補強層7が、車室内側の面には第2の繊維補強層8がそれぞれ積層されている。第1と第2の繊維補強層7,8は、成形天井材10の形状保持と剛性確保のために設けられている。これらの繊維補強層7,8は、表面に熱硬化性接着剤(熱可塑性樹脂)が塗布、または含浸されており、芯材6の両面にそれぞれ接着されている。第1及び第2の繊維補強層7,8には、ガラス繊維マットが選択される。ガラス繊維マットは、無機繊維であるガラス繊維を適宜の長さに切断したチョップドストランドを適宜バインダーで固めることによりシート状に形成されている。
【0032】
これらの繊維補強層7,8は、ガラス繊維を切断することなくバインダーで固めたもの(コンテイニアスマット)であっても良い。またこれに代えて、スパンレース、スパンボンド不織布、ガラスペーパー、ガラス繊維織布でも良い。また、実施形態における目付量は、要求される強度、その他の種々の条件に適合するように目付量を選択し得る。
【0033】
これらの繊維補強層7,8に用いる繊維補強材は、チョップドストランド等の無機繊維や、有機繊維であるジュート(黄麻)、ケナフ(洋麻)、ラミー、ヘンプ(麻)、サイザル麻、竹等の天然繊維等を適宜選択して、アクリル等のバインダーまたはニードル加工によってシート状、マット状にしたものでも良い。
【0034】
熱硬化性接着剤は、イソシアネート樹脂からなる熱硬化性樹脂が選択される。イソシアネートは、半硬質層のウレタンフォームからなる芯材6となじみやすいという観点から好適である。なお、熱硬化性接着剤は、イソシアネート樹脂に限られず適宜選択できる。熱硬化性接着剤は、スプレー、ロールコーター等によって塗布される。上記のように、熱硬化性樹脂を含んだ繊維補強層7,8と芯材6を積層させた構成とすることにより、成形天井材10の強度を高めることができる。
【0035】
基材層2の車体側には裏材3が配設される。裏材3は、例えばニードルパンチ不織布またはスパンボンド不織布が選択され、裏材3の材質としては、例えばPET樹脂繊維不織布などが選択される。裏材3には、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリルニトリル系等、種々の合成繊維不織布が適用できる。
【0036】
基材層2の車室内側には表皮材4が配設される。表皮材4は、成形天井材10の意匠面を担う部位である。表皮材4は、例えば表面層と、ウレタンフォームシートが積層されたものが選択される。表面層は、ファブリック、クロス、ニット等の布帛や、織布、不織布、希毛布等の布部材、合成皮革、人工皮革、本革等、種々適用できる。ウレタンフォームシートは、成形天井材10に柔らかい触感を得るためにウレタン樹脂発泡体からなる軟質層を適用して積層される。なお、ウレタンフォームシートが積層されない構成としても良い。
【0037】
成形天井材10は、表皮材4の車室内側の面から基材層2に向けて通気する通気量を調整可能に構成される通気コントロール機構を備えている。言い換えれば、通気コントロール機構は、車室内側からの基材層2への通気量を調整する機能(通気コントロール機能)を備えている。通気コントロール機構は、車室内から表皮材4を介して基材層2に向けて適度に通気させる、又は通気される通気量が過度にならないように抑制する等、車両の吸音性能に応じて通気量が調整されている。すなわち通気コントロール機構は、成形天井材10の吸音性能をより好適にし得るものである。
【0038】
表皮材4と基材層2の間には、通気コントロール機構を構成するフィルム層5(通気コントロール層)が配設されている。フィルム層5は、例えば伸縮性を備えた面状のプラスチックフィルムで構成される。図1に示すように、フィルム層5には、厚さ方向に穿たれた多数の通気孔12が配置され、通気部13が構成される。通気部13は、通気孔12を介することにより表皮材4の車室内側の面から基材層2に向けて通気可能に構成されている。そして、車両の天井面の面積に対する通気孔12のそれぞれの開口面積を合わせた総開口面積の割合、すなわち開口率を変更することで、基材層2への通気量を調整し得る。本実施形態における開口率は、要求される吸音性能に適合するように設定される。例えば、開口率が0.1%~50%の範囲となるように通気孔12が設けられている。より好適な開口率は、0.5%~20%の範囲であり、要求される吸音性能への適合性が向上する。
【0039】
通気孔12は、例えば円形状であり、天井面の任意の位置に設けられる。図2に示すように、通気孔12は、例えば平面視において格子状に複数配置され、縦方向に隣接する通気孔12の中心間の距離L1と横方向に隣接する通気孔12の中心間の距離L2が、配置間隔として設定される。通気孔12の配置間隔は、天井面全体において一定間隔としても良く、天井面の一部を占める領域ごとに異なる間隔としても良い。また、通気孔12の配置パターンは格子状に限られず、千鳥状など、適宜設定される。通気孔12の開口径Dは、適宜設定される。例えば、フィルム層5における少なくとも一部の通気孔12(一部またはすべての通気孔12)のそれぞれの開口径Dを大きくすることで、通気孔12の開口率を高くすることができ、それぞれの通気孔12の開口径Dを小さくすることで、開口率を低くすることができる。すなわち通気孔12の開口径Dを変えることで、開口率を変えることができ、基材層2への通気量を調整し得る。
【0040】
フィルム層5における通気孔12の数は、適宜設定される。例えば通気孔12のそれぞれの開口径Dは変えずに、通気孔12の数を増やすことで開口率を高くすることができ、通気孔12の数を減らすことで開口率を低くすることができる。すなわち、フィルム層5における通気孔12の数を変えることで、開口率を変えることができ、通気量を調整し得る。また、フィルム層5における通気孔12の数を変えるとともに、フィルム層5における少なくとも一部の通気孔12(一部またはすべての通気孔12)のそれぞれの開口径Dを変えることで、開口率を変えても良い。
【0041】
図3に示すように、フィルム層5は、第1の有孔領域15と第2の有孔領域16を有する構成としても良い。第1の有孔領域15は、車両の天井面において相対的に通気孔12が密集するように設けられた領域である。第2の有孔領域16は、通気孔12が疎らに設けられた領域である。したがって、第1の有孔領域15は、第2の有孔領域16より開口率が高く、通気量も大きくなる。すなわち、天井面の場所によって通気量が異なる構成としても良い。これにより、車室内の場所によって、異なる吸音性能を備えた成形天井材10を構成できる。例えば、車室内の前方と後方における吸音性能が異なる成形天井材10を構成できる。
【0042】
図4に示すように、フィルム層5は、第3の有孔領域17と無孔領域18を有する構成としても良い。第3の有孔領域17は、車両の天井面における一部の領域に通気孔12が偏って設けられた領域である。無孔領域18は、通気孔12が設けられていない領域である。したがって、天井面において車室内側から基材層2に向けて一定以上の通気がされて吸音可能な領域と、通気が抑えられた非吸音の領域を有する成形天井材10を構成できる。また、フィルム層5は、例えば図4に示すように、車室内の前方と後方の領域に第3の有孔領域17と無孔領域18それぞれ設けても良く、図5に示すように、車室内の右側と左側の領域に第3の有孔領域17と無孔領域18をそれぞれ設けても良い。
【0043】
フィルム層5の厚さは、適宜設定される。フィルム層5の厚さと、通気孔12の大きさや配置パターンを組み合わせることにより、基材層2への通気量を調整できる。
【0044】
成形天井材10は、図6に示すように、車両の天井面における一部の領域にフィルム層5aを配設しても良い。フィルム層5aは、通気孔12を有さない、無孔フィルムからなる構成としても良い。このように、天井面の一部の領域を無孔のフィルム層5aを配設して通気がなされないようにすることで、非吸音の領域を構成できる。フィルム層5aが配設されない領域は、吸音領域とされる。そして、天井面の面積に対するフィルム層5aの面積を変えることで、天井面に対する非吸音の領域の面積の割合を変えることができ、天井面全体における通気量を調整し得る。なお、天井面における一部の領域に、通気孔12を有するフィルム層5を配設しても良い。例えばフィルム層5の通気量を抑制することで、フィルム層5が配設された領域を非吸音の領域として構成できる。
【0045】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る車両用の成形天井材20は、天井パネルの車室内側に装着される天井内装材である。成形天井材20は、図7に示すように、基材層2、裏材3、表皮材4、不織布層21(通気コントロール層)を含む積層体が、例えば熱プレスで加熱及び加圧成形されている。なお、第1実施形態と実質的に同様の構成については、説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0046】
基材層2は、第1実施形態と同様に、芯材6の両面に繊維補強層7,8が積層され、熱硬化性接着剤で固化されている。基材層2の車体側には、裏材3が配設される。基材層2の車室内側には、表皮材4が配設される。
【0047】
成形天井材20は、表皮材4の車室内側の面から基材層2に向けて通気する通気量を調整可能に構成される通気コントロール機構を備えている。すなわち通気コントロール機構は、車室内側からの基材層2への通気量を調整する機能(通気コントロール機能)を備えており、成形天井材20の吸音性能をより好適にし得るものである。成形天井材20の表皮材4と基材層2の間には、通気コントロール機構を構成する通気コントロール層として不織布層21が配設されている。
【0048】
不織布層21は、例えば伸縮性を備えた薄い面状のニードルパンチ不織布またはスパンボンド不織布が選択される。不織布の材質としては、例えばポリエステル、ポリプロピレン等が適宜選択される。不織布層21は、表皮材4の車室内側の面から基材層2に向けて通気可能な通気部として機能するとともに、空気が過度に透過しないように通気量が調整されている。基材層2への通気量を適正な値に調整することにより、成形天井材20の吸音性能が向上する。不織布層21の通気度は、要求される吸音性能に適合するように設定され、不織布の厚さや繊維の重なり方、目の粗さ、目付量等を変えたり、不織布を複数積層させたりすることで調整される。また、例えば車室内の前方と後方で通気度が異なる構成、又は車室内の左側と右側で通気度が異なる構成等、成形天井材20において不織布層21の通気度が異なる領域を有する構成としても良い。本実施形態における不織布層21の通気度の範囲は、例えば3~35cc/cm2/secの範囲とされ、最適な通気度の範囲は、10~20cc/cm2/secである。
【0049】
成形天井材20は、天井面における一部の領域に不織布層21を配設しても良い。不織布層21の通気量を抑制することで、不織布層21が配設された領域を非吸音の領域として構成し、不織布層21が配設されない領域を吸音領域として構成できる。そして、天井面の面積に対する不織布層21の領域の面積を変えることで、天井面に対する非吸音の領域の面積の割合を変えることができ、天井面全体における通気量を調整し得る。
【0050】
また、成形天井材20は、表皮材4が通気コントロール機構を構成する通気コントロール層を含み、基材層2の車室内側に配設された構成としても良い。通気コントロール層は、表皮材4の車室内側の面から基材層2に向けて通気可能な通気部を有しており、車両の吸音特性に応じて通気量が調整される。通気コントロール層の通気度は、例えば3~35cc/cm2/secの範囲で設定される。また、例えば10~20cc/cm2/secの範囲で設定しても良い。例えば表皮材4に含まれる面状の不織布を通気コントロール層として兼用することで、表皮材4の車室内側の面から基材層2への通気量を調整し得る。また、例えば不織布(通気コントロール層)からなる表皮材4を基材層2の車室内側の面に配設することで、成形天井材20が通気コントロール機構を備えた構成としても良い。この場合は、表皮材4が通気コントロール層(通気コントロール機構)としても機能する。
【0051】
<実施形態の効果>
上記実施形態に係る車両用の成形天井材10,20は、多孔質の芯材6を含んだ基材層2と表皮材4を有し、表皮材の車室内側の面から基材層2に向けて通気する通気量を調整可能に構成される通気コントロール機構を備えている。車室内で発生する音は、通気コントロール機構を介し、基材層2によって吸音され得る。すなわち、車室内側からの音に対して吸音性能を備えた成形天井材10,20を構成できる。また、吸音率を上げる場合には基材層2への通気量を増やし、吸音率を下げる場合には基材層2への通気量を減らすことができる。これにより、通気コントロール機能を備えた成形天井材10,20を構成することができ、基材層2の厚さによらず、成形天井材10,20の吸音率を調整できる。よって、車両の吸音特性に対応した吸音性能を備える車両用の成形天井材10,20を提供できる。
【0052】
上記実施形態に係る通気コントロール機構は、車両の吸音特性に応じて通気量が調整され、基材層2の車室内側に配設された通気コントロール層(例えばフィルム層5又は不織布層21)を有している。通気コントロール層は、表皮材4の車室内側の面から基材層2に向けて通気可能な通気部13を有している。したがって、車室内で発生する音は通気コントロール層の通気部13を介して、基材層2によって吸音され得る。よって、車室内側からの音に対して吸音性能を備えた成形天井材10,20を構成できる。さらに通気部13は、通気部13を介して通気する通気量を調整可能な構成とされ、吸音率を上げる場合には基材層2への通気量を増やし、吸音率を下げる場合には基材層2への通気量を減らすことができる。これにより、通気コントロール機能を備えた成形天井材10,20を構成することができる。
【0053】
上記実施形態に係る通気コントロール層(例えばフィルム層5又は不織布層21)は、伸縮性を備えている。したがって、成形天井材10,20の形状になじみ易く、成形時における通気コントロール層のしわや破れの発生を抑制できる。
【0054】
上記第1実施形態に係る成形天井材10は、車両の吸音特性に応じて通気量が調整されたフィルム層5(通気コントロール層)が、基材層2と表皮材4の間に配設されている。フィルム層5には、厚さ方向に穿たれた多数の通気孔12が設けられており、通気部13が構成されている。これにより、車室内で発生する音は通気部13を介して、基材層2によって吸音され得る。そして、フィルム層5において、車両の天井面の面積に対する通気孔12の総開口面積、すなわち開口率を変えることで、基材層2への通気量を調整し得る。したがって、成形天井材10の吸音性能を車両の吸音特性に応じて調整できる。
【0055】
上記第1実施形態に係る成形天井材10は、フィルム層5に設けられる一部の通気孔12またはすべての通気孔12のそれぞれの開口径Dを変えることで、通気孔12の総開口面積を変更する。すなわち、通気量を増やす場合は通気孔12の開口径Dを大きくし、通気量を抑制する場合は通気孔12の開口径Dを小さくして、通気孔12の開口率を変更する。これにより、基材層2への通気量を調整し得る。よって、成形天井材10の吸音性能を車両の吸音特性に応じて調整できる。
【0056】
上記第1実施形態に係る成形天井材10は、フィルム層5に設けられる通気孔12の数を変えることで、通気孔12の総開口面積を変更する。すなわち、通気孔12の開口径Dを変えずに、通気孔12の数を増減させることで、通気孔12の開口率を変更する。これにより、基材層2への通気量を調整し得る。よって、成形天井材10の吸音性能を車両の吸音特性に応じて調整できる。
【0057】
上記第1実施形態に係る成形天井材10は、フィルム層5に設けられる通気孔12の開口径Dの変更と、通気孔12の配置の数の変更を組み合わせることで、通気孔12の開口率を変更する。これにより、基材層2への通気量を調整し得る。よって、成形天井材10の吸音性能を車両の吸音特性に応じて調整できる。
【0058】
上記第1実施形態に係る成形天井材10は、フィルム層5に車両の天井面において相対的に通気孔12が密集して配置された第1の有孔領域15と、通気孔12が疎らに配置された第2の有孔領域16が設けられても良い。したがって、第1の有孔領域15では相対的に基材層2への通気量が多く、吸音率が高くなり、第2の有孔領域16では基材層2への通気量が少なく、吸音率が低くなる。すなわち、天井面における通気孔12の配置の数や開口率を部分的に異ならせることで、車室内のそれぞれの場所ごとに吸音性能を調整できる。
【0059】
上記第1実施形態に係る成形天井材10は、フィルム層5に車両の天井面において第3の有孔領域17と無孔領域18が設けられても良い。無孔領域18には通気孔12を設けず、第3の有孔領域17に通気孔12が偏って設けられる。したがって、車室内において、無孔領域18では相対的に基材層2への通気量が抑制されて吸音率が低くなり、第3の有孔領域17では無孔領域18よりも基材層2への通気量が多いため吸音率が高くなる。すなわち、車室内の場所ごとに吸音性能を調整できる。
【0060】
上記第1実施形態に係る成形天井材10は、フィルム層5における通気孔12が、開口率0.1%~50%の範囲で構成される。したがって、基材層2と表皮材4の間に非通気性フィルム等を配設した場合に比べて基材層2への通気量を増やすことができるとともに、過度な通気を抑制し得る。これにより、要求される吸音性能に応じて、適度に基材層2への通気量を調整でき、より好適な成形天井材10の吸音性能を得ることができる。
【0061】
上記第1実施形態に係る成形天井材10は、フィルム層5,5aが、車両の天井面における一部の領域に配設されても良い。このフィルム層5,5aの通気量を一定量に抑制し、又は通気がなされないようにすることで、吸音率が低い領域(非吸音の領域)が構成される。したがって、車両の天井面に対するフィルム層5,5aの面積を変えることで、天井面に対する非吸音の領域の面積の割合を変えることができ、天井面全体の通気量を調整し得る。
【0062】
上記第2実施形態に係る成形天井材20は、車両の吸音特性に応じて通気量が調整された不織布層21(通気コントロール層)が基材層2の車室内側(例えば基材層2と表皮材4の間)に配設されている。不織布層21(通気コントロール層)は、通気度3~35cc/cm2/secの範囲で表皮材4から基材層2への通気量が調整されている。したがって、基材層2と表皮材4の間に非通気性フィルム等を配設した場合に比べて基材層2への通気量を適度に増やすことができるとともに、過度な通気を抑制し得る。これにより、要求される吸音性能に応じて、適度に基材層2への通気量を調整でき、より好適な成形天井材20の吸音性能を得ることができる。
【0063】
上記第2実施形態に係る成形天井材20は、表皮材4が車両の吸音特性に応じて通気量が調整された通気コントロール層(例えば不織布)を含み、基材層2の車室内側に配設された構成としても良い。これにより、表皮材4を通気コントロール機構として兼用し得る。
【0064】
上記第2実施形態に係る成形天井材20は、不織布層21(通気コントロール層)が、車両の天井面における一部の領域に配設されても良い。この不織布層21の通気量を一定量に抑制することで、吸音率が低い領域(非吸音の領域)が構成される。したがって、車両の天井面に対する不織布層21の領域の面積を変えることで、天井面に対する非吸音の領域の面積の割合を変えることができ、天井面全体の通気量を調整し得る。
【0065】
以下、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明する。
【0066】
[実施例1]
成形天井材の構成として、基材層の芯材に標準のウレタンフォーム芯材(比重31)、繊維補強層にガラスマット(100gsm)、表皮材に不織布またはニット、裏材にスパンレース不織布またはスパンボンド不織布、通気コントロール層に穴加工フィルム(通気孔を有するフィルム)を用いた。穴加工フィルムは、開口径25mmの通気孔が格子状に配置されており、配置間隔(隣接する通気孔の中心間の距離)は縦方向100mm×横方向100mm、開口率は約4.9%である。そして、これらの材料を積層させた積層体を上型140℃、下型130℃のプレスで33秒熱間成形した。
【0067】
[比較例1]
吸音仕様の成形天井材:実施例1の成形天井材における基材層と表皮材の間の穴加工フィルムを除いた構成とし、実施例1と同様の工程で熱間成形した。
【0068】
[比較例2]
非吸音仕様の成形天井材:実施例1の成形天井材における穴加工フィルムに代えて、非通気性フィルムを表皮材と基材層の間に積層させた構成とし、実施例1と同様の工程で熱間成形した。
【0069】
図8は、実施例1、比較例1及び比較例2の成形天井材の吸音率を示す図である。実施例1に係る成形天井材の吸音率は、周波数400Hz~6300Hzの範囲において、比較例1(吸音仕様)の吸音率より低く、比較例2(非吸音仕様)の吸音率より高くなっている。すなわち、実施例1に係る成形天井材は、開口率約4.9%の穴加工フィルムを用いることで、非吸音仕様よりも基材層への通気量を増やすことができるとともに、基材層と表皮材の間における過度な通気を抑制できる。よって、吸音仕様と非吸音仕様の間の吸音性能が得られる。
【0070】
[実施例2]
成形天井材における通気コントロール層として、穴加工フィルム(通気孔を有するフィルム)を用いた。開口率は約0.8%である。基材層、表皮材、裏材の構成は、実施例1と同様である。
【0071】
[実施例3]
成形天井材における通気コントロール層として、穴加工フィルム(通気孔を有するフィルム)を用いた。開口率は約7%である。基材層、表皮材、裏材の構成は、実施例1と同様である。
【0072】
図9は、実施例2及び実施例3の成形天井材の吸音率と、開口率100%(吸音仕様)で構成された成形天井材、及び開口率0%(非吸音仕様)で構成された成形天井材の吸音率を示す図である。実施例2に係る成形天井材の吸音率は、周波数630Hz~6300Hzの範囲において、吸音仕様の吸音率の半分程度又は半分より低くなっている。また実施例2の吸音率は、非吸音仕様の吸音率より6~9%程度高くなっている。すなわち、実施例2に係る成形天井材は、開口率約0.8%の穴加工フィルムを用いることで、非吸音仕様に比べて、基材層への通気量が適度に抑制され、成形天井材の吸音性能が向上し得る。
【0073】
実施例3に係る成形天井材の吸音率は、周波数630Hz~6300Hzの範囲において、吸音仕様の吸音率の半分程度であり、通気量が抑制されている。実施例3の吸音率は、非吸音仕様の吸音率より9~15%程度高くなっている。すなわち、実施例3に係る成形天井材は、開口率約7%の穴加工フィルムを用いることで、非吸音仕様に比べて基材層への通気量が適度に抑制され、成形天井材の吸音性能が向上し得る。また実施例3の吸音率は、実施例2より4~6%程度高くなっている。すなわち、開口率を変えることにより、吸音率を変えることができ、成形天井材の吸音性能を調整できる。
【0074】
[実施例4]
成形天井材における通気コントロール層として、無孔フィルムを天井面の全面又は一部の領域に配設した。そして、無孔フィルムの面積割合を変化させて、すなわち吸音可能である領域(吸音領域)と非吸音である領域(非吸音領域)の成形天井材における面積割合を変化させて、吸音率を測定した。測定した吸音領域と非吸音領域の割合は、次のとおりである。(1)は吸音仕様、(11)は非吸音仕様に相当する。
(1)吸音(吸音領域):非吸音(非吸音領域)=10:0、
(2)吸音:非吸音=9:1、(3)吸音:非吸音=8:2、
(4)吸音:非吸音=7:3、(5)吸音:非吸音=6:4、
(6)吸音:非吸音=5:5、(7)吸音:非吸音=4:6、
(8)吸音:非吸音=3:7、(9)吸音:非吸音=2:8、
(10)吸音:非吸音=1:9、(11)吸音:非吸音=0:10
【0075】
図10は、上記(1)~(11)の割合におけるそれぞれの吸音率を示す図である。例えば(9)の吸音:非吸音=2:8における吸音率は、周波数400Hz~800Hzの範囲において、(1)の吸音:非吸音=10:0における吸音率の3分の1程度になっており、周波数1000Hz~6300Hzの範囲においては、(1)における吸音率の半分程度または半分より低くなっている。すなわち、吸音仕様に比べて基材層への通気量が抑制されていることがわかる。また(9)における吸音率は、周波数400Hz~6300Hzの範囲において、(11)の吸音:非吸音=0:10における吸音率より向上している。図8に示すそれぞれの割合における吸音率によれば、周波数400Hz~6300Hzの範囲において、吸音領域の割合が増えると吸音率が高くなり、非吸音領域の割合が増えると吸音率が低くなっている。すなわち、吸音領域と非吸音領域の割合を変えることで、吸音仕様と非吸音仕様の間で成形天井材の吸音性能を調整できる。
【0076】
[実施例5]
成形天井材における通気コントロール層として、通気抑制不織布(通気度4.5cc/cm2/sec)を用いた。基材層、表皮材、裏材の構成は、実施例1と同様である。
【0077】
図11は、実施例5の成形天井材の吸音率と、吸音仕様に構成された成形天井材、及び非吸音仕様に構成された成形天井材の吸音率を示す図である。実施例5に係る成形天井材の吸音率は、周波数1000Hz~6300Hzの範囲において、吸音仕様の吸音率より10~20%程度低くなっている。また、実施例5の吸音率は、非吸音仕様の吸音率より15~30%程度高くなっている。すなわち、実施例5に係る成形天井材は、通気度4.5cc/cm2/secの通気抑制不織布を用いることで、非吸音仕様に比べて、基材層への通気量が適度に抑制され、成形天井材の吸音性能が向上し得る。
【0078】
本発明に係る車両用成形天井材は、上記実施形態において説明した外観、構成に限られず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除、構成の組み合わせにより、その他各種の形態で実施できるものである。
【0079】
上記第1実施形態に係るフィルム層(通気コントロール層)は、天井面全体の領域に積層されても良く、天井面の一部の領域に積層されても良い。
【0080】
上記第2実施形態に係る不織布層(通気コントロール層)は、天井面全体の領域に積層されても良く、天井面の一部の領域に積層されても良い。
【0081】
上記第1と第2の実施形態に係る通気コントロール層は、車室内の前方と後方で吸音性能が異なる構成としても良く、車室内の左側と右側で吸音性能が異なる構成としても良い。
【0082】
上記第1と第2の実施形態に係る表皮材4は、通気コントロール機構として機能する構成であっても良い。例えば、表皮材4に含まれる不織布のほか、種々の素材が通気コントロール層として作用し得る。この場合、通気コントロール層は、天井面全体の領域に積層された構成としても良く、天井面の一部の領域に積層された構成としても良い。
【0083】
上記第1と第2の実施形態に係る通気コントロール層は、天井面の一部の領域に配設する場合、配設する位置や範囲の大きさ等を求められる吸音性能に応じて適宜設定できる。例えば、車両の前方側又は後方側のいずれかに非吸音の領域を設けても良く、左側又は右側のいずれかに非吸音の領域を設けても良い。非吸音の領域には、通気抑制不織布、有孔フィルム、無孔フィルムなど、種々のものが適用できる。
【0084】
上記実施形態に係る基材層の構成として、ウレタンフォームの芯材と繊維補強材を積層させた構成の例を示したが、これに限られず、種々の構成を適用できる。例えばガラス繊維と熱可塑性樹脂を含んだ芯材の両面に、不織布からなる繊維層が積層された成形体、あるいは成形不織布などを基材層の構成として選択しても良い。
【0085】
基材層の車室内側に、保護用不織布を配設しても良い。保護用不織布は、目付が粗いガラス繊維マットのガラス繊維の露出を防ぎ、繊維補強層の表面を保護する。
【符号の説明】
【0086】
2 基材層
3 裏材
4 表皮材(通気コントロール層、通気コントロール機構)
5 フィルム層(通気コントロール層、通気コントロール機構)
6 芯材
7 第1の繊維補強層
8 第2の繊維補強層
10 成形天井材(車両用成形天井材)
12 通気孔
13 通気部
15 第1の有孔領域
16 第2の有孔領域
17 第3の有孔領域
18 無孔領域
20 成形天井材(車両用成形天井材)
21 不織布層(通気コントロール層、通気コントロール機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11