(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015489
(43)【公開日】2024-02-02
(54)【発明の名称】かまど装置
(51)【国際特許分類】
F24B 1/18 20060101AFI20240126BHJP
F24B 13/00 20060101ALI20240126BHJP
F23J 11/00 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
F24B1/18 L
F24B13/00 N
F23J11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200320
(22)【出願日】2023-11-28
(62)【分割の表示】P 2022185612の分割
【原出願日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2021189356
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 勝則
(57)【要約】
【課題】本発明は、燃料となるものが限られている状況下でも簡便に高効率で加熱調理を行なうことができるかまど装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るかまど装置20は、燃料60を燃焼させる燃焼室32となる有底の筒状のかまど本体21の前面に吸気口を兼ねる焚き口33が貫通開設され、前記燃焼室の上側に釜50を配置可能なかまど装置であって、前記かまど本体は、前記燃焼室の上部に前記釜の釜底51が前記かまど本体内に侵入可能な上縁部42を有し、前記上縁部は、前記かまど本体の後面側が前記釜の周面との隙間S2が広くなる排気口上縁を有し、前記排気口上縁と前記釜の周面との間に排気口44が形成され、前記排気口の直下には、前記かまど本体の周壁41と前記釜の周面により前記排気口に連通する排気通路45が形成される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させる燃焼室となる有底の筒状のかまど本体の前面に吸気口を兼ねる焚き口が貫通開設され、前記燃焼室の上側に釜を配置可能なかまど装置であって、
前記かまど本体は、
前記燃焼室の上部に前記釜の釜底が前記かまど本体内に侵入可能な上縁部を有し、
前記上縁部は、前記かまど本体の後面側が前記釜の周壁との隙間が広くなる排気口上縁を有し、前記排気口上縁と前記釜の周面との間に排気口が形成され、
前記排気口の直下には、前記かまど本体の周壁と前記釜の周面により前記排気口に連通する排気通路が形成される、
かまど装置。
【請求項2】
前記かまど本体の前記上縁部及び前記釜は平面視円形であり、前記上縁部に比べて前記釜の直径は小さく形成され、前記釜は、前方側に偏心して配置される、
請求項1に記載のかまど装置。
【請求項3】
前記排気口上縁は、前記釜に向けて延び、前記排気口を左右に分断する分岐壁を有する、
請求項2に記載のかまど装置。
【請求項4】
前記かまど本体は、後面側の上縁が外向きに膨出している、
請求項1に記載のかまど装置。
【請求項5】
前記上縁部は、平面視楕円形であり、
前記燃焼室は、前方側に偏心して配置される、
請求項1に記載のかまど装置。
【請求項6】
前記焚き口は、前記かまど本体の前記前面に左右に並んで2つ以上開設される、
請求項1乃至請求項5の何れかに記載のかまど装置。
【請求項7】
前記かまど本体は、前記燃焼室の内面が、前記上縁部に向けて減径したネッキング部を有する、
請求項1乃至請求項5の何れかに記載のかまど装置。
【請求項8】
前記釜の釜底は、前記釜の全高の1/3~2/3が前記かまど本体内に侵入するよう配置可能である、
請求項1乃至請求項5の何れかに記載のかまど装置。
【請求項9】
前記かまど本体は、前記上縁部よりも高い位置に、前記釜を保持する支持具を具える、
請求項8に記載のかまど装置。
【請求項10】
前記焚き口は、配置される前記釜の前記釜底よりも下側に開設される、
請求項1乃至請求項5の何れかに記載のかまど装置。
【請求項11】
前記かまど本体は、前記底面から燃料を浮かせるロストルが配置される、
請求項1乃至請求項5の何れかに記載のかまど装置。
【請求項12】
前記ロストルは、前記焚き口から投入された燃料が後方側に移動することを防ぐ抑制壁を有する、
請求項11に記載のかまど装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項5に記載のかまど装置に、前記釜を配置してなるかまど調理具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時やキャンプ時などに炊飯等の加熱調理を行なうことのできるかまど装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
災害時やキャンプ時などに加熱調理を行なうことができる調理具として、かまど装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。かまど装置は、一般的に薪や炭を燃料とする。
【0003】
災害時、自治体などでは、防災対策として非常食等の食料をある程度備蓄している。しかしながら、保管場所や費用等の制限により、備蓄量には限りがあり、自助レベルでも食糧確保の準備が推奨されている。たとえば、一般家庭では、米等の食料が備蓄されていることが多く、それらが災害時に自助レベルの食料として役立ち得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、米は、加熱調理が必要な食材である。このため、災害時において燃料となる良質な薪や炭などを入手することが困難な場合に、加熱調理を如何に行なうかが課題となる。
【0006】
他方、薪や炭などは、着火剤等があればある程度簡便に着火を行なうことができるが、着火剤なしに着火するには火起こしのスキルが要求される。また、薪や炭などは、安定した加熱源として利用できるまでに時間が掛かる。
【0007】
災害時以外においても、キャンピング時等において、食料はあるが、燃料となる良質な薪や炭などが不足した状況も発生し、また、不慣れな火起こしスキルのため着火が上手く行なえないなども想定される。
【0008】
本発明の目的は、燃料となるものが限られている状況下でも簡便に高効率で加熱調理を行なうことができるかまど装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るかまど装置は、
燃料を燃焼させる燃焼室となる有底の筒状のかまど本体の前面に吸気口を兼ねる焚き口が貫通開設され、前記燃焼室の上側に釜を配置可能なかまど装置であって、
前記かまど本体は、
前記燃焼室の上部に前記釜の釜底が前記かまど本体内に侵入可能な上縁部を有し、
前記上縁部は、前記かまど本体の後面側が前記釜の周面との隙間が広くなる排気口上縁を有し、前記排気口上縁と前記釜の周面との間に排気口が形成され、
前記排気口の直下には、前記かまど本体の周壁と前記釜の周壁により前記排気口に連通する排気通路が形成される。
【0010】
前記かまど本体の前記上縁部及び前記釜は平面視円形であり、前記上縁部に比べて前記釜の直径は小さく形成され、前記釜は、前方側に偏心して配置することができる。
【0011】
前記排気口上縁は、前記釜に向けて延び、前記排気口を左右に分断する分岐壁を有する構成とすることができる。
【0012】
前記かまど本体は、後面側の上縁が外向きに膨出した構成とすることができる。
【0013】
前記上縁部は、平面視楕円形であり、
前記燃焼室は、前方側に偏心して配置することができる。
【0014】
前記焚き口は、前記かまど本体の前記前面に左右に並んで2つ以上開設することができる。
【0015】
前記かまど本体は、前記燃焼室の内面が、前記上縁部に向けて減径したネッキング部を有することが望ましい。
【0016】
前記釜の釜底は、前記釜の全高の1/3~2/3が前記かまど本体内に侵入するよう配置可能である。
【0017】
前記釜本体は、前記上縁部よりも高い位置に、前記釜を保持する支持具を具えることが望ましい。
【0018】
前記焚き口は、配置される前記釜の前記釜底よりも下側に開設することが望ましい。
【0019】
前記かまど本体は、前記底面から燃料を浮かせるロストルを配置できる。
【0020】
前記ロストルは、前記焚き口から投入された燃料が後方側に移動することを防ぐ抑制壁を有することが望ましい。
【0021】
また、本発明のかまど調理具は、
上記かまど装置に、前記釜を配置してなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のかまど装置によれば、燃焼室で発生した熱は、釜の釜底を加熱すると共に、焚き口の上方に蓄熱され、釜の焚き口側を加熱する。また、釜底を伝って排気通路をとおり、排気口に向かう排気熱で釜の排気口側も加熱される。これにより、かまど本体内の熱が逃げ難くなって、高効率で釜に伝達でき、また、排気口からの排気により、焚き口から燃料の燃焼に必要な空気流も確保できるため、燃料を立ち消えさせず、安定して燃焼させることができる。
【0023】
従って、新聞紙や古紙等の比較的入手し易い貧弱な燃料であっても、美味しくご飯を炊くことができ、煮炊き等の調理、湯沸かし等も行なうことができる。新聞紙や古紙は、着火剤がなくても容易に着火でき、火起こしの高いスキルは要求されない。薪や炭などの燃料を備蓄する場合に比べ、新聞紙や古紙は、各家庭にある程度備蓄されているから、被災を想定して自治体が燃料を備蓄する費用も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るかまど調理具の斜視図である。
【
図2】
図2は、かまど調理具のかまど装置から釜を分離した状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5の線A-Aに沿うかまど調理具の断面図である。
【
図7】
図7は、燃焼中のかまど装置の内部の空気と熱の流れを示す説明図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係るかまど調理具を斜め前方から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、かまど調理具を右側から見た斜視図である。
【
図16】
図16は、焚き口と釜の中心を通るかまど調理具の断面図であって、かまど本体内部で燃料が燃焼している状態を示している。
【
図17】
図17は、燃料が釜の底面に接触して燃え尽きない状態で釜を取り外したときに、再燃焼を開始した状態を示す写真である。
【
図18】
図18は、かまど本体に釜と支持具を収納した収納状態を示す斜視図である。
【
図19】
図19は、本発明の第3実施形態に係るかまど調理具を斜め前方から撮影したの写真である。
【
図20】
図20は、かまど調理具を斜め後方から撮影した写真である。
【
図21】
図21は、かまど装置を斜め前方から撮影した写真である。
【
図22】
図22は、かまど装置を斜め後方から撮影した写真である。
【
図24】
図24は、かまど本体を製造するための枠部材の写真である。
【
図25】
図25は、かまど装置の焚き口に沿う横断面図である。
【
図26】
図26は、本発明の第4実施形態に係るかまど調理具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
以下、かまど調理具10について、図面を参照しながら説明を行なう。説明を判り易くするため、
図1において焚き口33が形成されている図面左側を「前」とする。
【0026】
かまど調理具10は、
図1乃至
図6に示すように、かまど装置20と釜50から構成することができる。
【0027】
まず、釜50から説明すると、釜50は、有底51の碗状の耐火容器であり、上面に蓋体53(
図1参照)が着脱可能となっている。釜50は、断面略円形であり、底に向けてR状に湾曲した丸釜を例示できる。釜50の上縁又は側面には、外周側に突出したフランジや取手の如き突出部52が形成されていることが望ましい。釜50をかまど装置20に載置したときに、突出部52により高さ方向の位置決めを行なうためである。
【0028】
釜50として、図に示すような上縁にフランジ状の突出部52が形成された炊飯釜を採用できる。かまど装置20に釜50を位置決めする際に、突出部52を利用するためである。炊飯釜は、炊飯器に用いられているものをそのまま使うことができる。また、その他、釜50として、中程に突出部が形成された羽釜を挙げることができる。もちろん、釜50は、プレス成形による金属製の鍋、土鍋、片手鍋、両手鍋等であっても構わない。
【0029】
上記釜50は、
図1乃至
図6に示すように、かまど装置20に載置される。かまど装置20は、上面が開口した有底筒状のかまど本体21を具える。かまど本体21は、円筒状の胴体部30と、胴体部30の上部の口部40を含む。かまど本体21は、
図5に示すように、平面視略楕円形とすることができる。
図5のかまど本体21の平面視形状は、後端がやや縮径した略楕円形状、具体的には略涙滴形状である。胴体部30は、
図1、
図2、
図5等に示すように、口部40に対して前方側に偏心した位置に配置される。
【0030】
胴体部30は、
図6に示すように有底31であり、内部に燃料60が燃焼する燃焼室32が形成されている。図示の実施形態では、胴体部30は断面円形である。燃焼室32は、釜50の直下に形成されており、
図7に示すように、燃焼室32で発生した炎61の熱を直接釜50に伝達可能(矢印Q1)となっている。燃焼室32は、釜50の直径と略同じ、或いは、直径よりも小さくすることが好適である。燃焼室32を小さくすることで、熱の分散を防ぎ、燃料60の節約を行なうことができる。
【0031】
胴体部30には、前面側に次に説明する焚き口33が形成されており、燃焼室32を外部と連通させる。燃焼室32には、
図6に示すように、底面31から少し離れた位置にロストル22が配備される。ロストル22は、
図7に示すように、燃料60を燃焼室32の底面31から浮かして燃焼効果を高めると共に、内部で燃焼した燃料の灰を落とす灰落とし具としての機能を発揮する。なお、燃焼室32の底面31は、全面が塞がれている構成とすることが望ましいが、一部に底面31を貫通する開口が設けられていてもよい。
【0032】
焚き口33は、
図4に示すように、胴体部30の前面に貫通開設された開口であり、外部から燃焼室32に燃料60を投入する投入口である。焚き口33は、燃焼室32内に空気を導入する吸気口の役割もなす。焚き口33は、胴体部30のやや下方側に形成されており、焚き口33の下縁は、
図6に示すように、ロストル22と略同じ又はやや高い位置となっている。焚き口33は、新聞紙や古紙などの燃料60を丸めて投入できる大きさに形成することが望ましい。たとえば、焚き口33は、高さ4cm~6cm、幅8cm~12cmに設定することができる。焚き口33は、常時開口する構成でよい。もちろん、かまど装置20を保管等する際に、内部の灰が零れることを防ぐため、七輪のような金属製の扉を取り付けても構わない。
【0033】
口部40は、胴体部30の上部に連続する周壁41である。周壁41は、釜50が載置され、釜底51が侵入可能な燃焼室32の上部空間と、これよりも後方側の排気通路45、排気口44とを囲むように形成される。本実施形態では、
図1、
図2、
図5に示すように、周壁41の上縁部42は、涙滴状の略楕円形をなす。
【0034】
周壁41は、燃焼室32の上部空間を囲む前方側の部分(焚き口側)が、釜50が侵入可能な直径、すなわち、釜50の外径と略同じ又はやや大きい内径に形成されている。また、排気口44を形成する周壁41の後面側の上縁43(排気口側)は、釜50から離れるように、外向きに膨出している。
【0035】
具体的実施形態として、
図6に示すように、口部40は、釜底51がかまど本体21内に侵入可能な直径に形成されている。
【0036】
釜50の前方側を囲う口部40の周壁41及びその上縁部42は、熱流出抑制のため、釜50との間隔をできるだけ小さくする。たとえば、熱膨張差や製造誤差等を考慮し、釜50と周壁41、上縁部42との間の隙間S1(
図1、
図6、
図7参照)は、3mm~10mm程度とすることが好適である。
【0037】
一方、上縁部42のうち、排気口44の後縁を形成する排気口上縁43は、
図1に示すように、釜50との間に隙間S2が広くなる楕円形形状であって、後方側の周壁41と釜50との間が広がっており、排気通路45をなす。排気、排煙を好適に行なうために、後方側の周壁41、排気口上縁43は、釜50との間に排気隙間S2を設ける。排気隙間S2は、10mm~50mm、釜50の外周の1/4~1/2周(図示では約1/2周)程度が排気通路45に露出するように形成することが好適である。燃焼室32に熱を篭もらせ、排気通路45、排気口44からの煙突効果を得るためである。かまど本体21及び釜50の外径が大きくなった場合に、排気口44が広くなりすぎると、排気口44を通じて熱が逃げ、煙突効果も低減する虞がある。このため、かまど本体21や釜50の外径が大きい場合には、釜50は排気通路45に1/4~1/3程度露出するように形成することが望ましい。
【0038】
排気通路45は、
図7に示すように釜50を載せたときに、釜50の後方側周面と後方側の周壁41により区画され、燃焼室32と排気口44とを繋ぐ通路となる。釜50の周面が排気通路45の一部を構成したことで、排気通路45を通過する排気の熱も釜50の加熱に利用できる。また、排煙用の煙突を別部材で作製する場合に比べて低コスト化を図ることができる。
【0039】
なお、胴体部30と口部40は、一体に形成されてかまど本体21とすることができる。もちろん、胴体部30と口部40を別部材から構成し、機械的に連結、或いは、胴体部30の上に口部40を載置してかまど本体21としてもよい。胴体部30と口部40は、炭素鋼や低合金鋼の表面にステンレス鋼を接合したクラッド鋼などの金属製とすることができる。また、胴体部30と口部40を陶器(素焼きを含む)、アルミダイカストや磁器等から作製することで、蓄熱性にすぐれたかまど本体21を得られる。
【0040】
上記構成の周壁41の上縁部42には、
図4及び
図6に点線で示すように、釜50を保持するための支持具23を配置することができる。支持具23は、燃焼室32の上部に釜50が位置するよう、かまど本体21の前方側に配置される。支持具23は、釜50の突出部52を下から支えて位置決めし、釜底51がかまど本体21に侵入する高さを規制する。支持具23は、たとえば、針金で形成されたフレームとすることができる。支持具23を環状の筒から作製することもできるが、熱が篭もるため、炊飯用の場合はフレーム製が望ましい。図示の実施形態では、支持具23は、平面視円形とし、釜50の突出部52を安定して保持できる構成としている。
【0041】
図示の釜50は、炊飯釜であり、支持具23によって、釜50の全高L(
図6参照)の1/3~2/3がかまど本体21内に侵入し、上側の1/3~2/3が外部に露出するよう保持している。これにより、後述のとおり、釜50内に対流を生じさせて、うまく炊飯を行なうことができる。羽釜の場合は、支持具23を省略可能である。
【0042】
釜50は、クラッド鋼、アルミダイカスト、磁器等から作製することができるが、クラッド鋼製とすることで、熱の分散効率を高めることができ、釜50の内部に均等に加熱することができる。
【0043】
然して、上記構成のかまど本体21に、
図4及び
図6に示すようにロストル22を配置し、支持具23(
図4、
図6)を上縁部42に載置することでかまど装置20が得られる。釜50には、調理物、たとえば炊飯の場合は米と水が、投入され、
図1、
図7に示すように蓋体53で閉じられる。
【0044】
そして、釜50は、支持具23に突出部52を載せて配置される。釜50は、
図6では、釜底51から高さL/2までがかまど本体21の内部に侵入している。
【0045】
釜50を載せることで、
図6に示すように、釜50の周面とかまど装置20の後方側の周壁41によって、燃焼室32と排気口44とを繋ぐ排気通路45が形成される。
【0046】
然して、
図7に示すように、焚き口33から燃料60を投入し、着火する。燃料60は、新聞紙や古紙を丸めたものを用いることができる。新聞紙等は、災害時でも入手が容易であるから燃料60として好適である。古紙として、コピー用紙、雑誌などの他の紙類を例示できる。また、薪や炭などの燃料を備蓄する場合に比べ、新聞紙等は、各家庭にある程度備蓄されているから、被災を想定して自治体が燃料を備蓄する費用も低減できる。もちろん、薪や炭などを燃料60として使用することもできる。
【0047】
さらに、新聞紙等は、着火剤は不要であって、薪や炭などに比べて着火が容易であり、火起こしに高いスキルは要求されないことも利点である。
【0048】
燃焼室32で燃料60が燃え始めると、炎61により釜50が直に熱せられる(矢印Q1)。また、熱の発生により、焚き口33を吸気口として新たな外部空気が燃焼室32に導入される(矢印P1)。
【0049】
燃焼室32で発生した熱(炎61)は、
図7に示すように直接釜50を加熱Q1するだけでなく、かまど本体21の輻射熱(Q2)により釜50が加熱される。釜50と炎61との間には遮蔽物はないから、釜50を高効率で加熱できる。
【0050】
また、かまど本体21内で生じた熱は、一部が、矢印P2で示すように前方側の周壁41と釜50との間に上昇するが、前方側の周壁41と釜50との隙間S1は狭いから、かまど本体21内で熱が篭もって逃げ難く、高効率で釜50を加熱する。
【0051】
燃焼室32内で発生した煙は、かまど装置20の後方側の排気通路45を通って、排気口44から外部に放出される(P3)。また、このとき、煙突効果により、焚き口33から新鮮な外部空気が燃焼室32に導入される(P1)。従って、うちわなどで扇ぐ等の行為をしなくても、立ち消えし難く燃焼が継続され、灰の飛び散りも抑えることができる。
【0052】
外部に放出される熱せられた空気流P3は、釜50の周面と後方側の周壁41によって形成された排気通路45を通る。釜50は、排気口44よりも釜底51が低い位置にあるから、熱流出を抑えると共に、この流れP3からも高効率で加熱を受けることができる。
【0053】
上記のように、釜50には、好適に加熱が行なわれるから、小燃料、短時間で調理を行なうことができる。
【0054】
なお、新聞紙や古紙は、薪や炭に比べて燃料エネルギーが小さいため、高頻度で焚き口33に投入する必要がある。新聞紙や古紙は、厚み、サイズに応じて、投入量やタイミングの調整を行なえばよい。
【0055】
本発明では、燃焼室32にロストル22を配置しているから、燃焼して発生する灰は、ロストル22から落下して燃焼室32の底面31側に分離される。このため、灰により空気の流れが阻害されることも抑えられ、燃焼を安定させることができる。また、灰を分離できたことで、排気口44からの灰の飛び散りも抑えることができる。
【0056】
上縁にフランジ状の突出部52のある炊飯釜(図示の釜50は炊飯釜である)の場合、支持具23に突出部52を載せることで、釜50の上側をかまど本体21から露出させることができる。これにより、釜50は、上部は放熱可能な構成となるから、加熱される釜底51に対し、釜50の上下で温度差が生じ、対流を好適に発生させ、沸騰の勢いを抑えることができる。故に、吹きこぼれなく、美味しく炊飯を行なうことができる。
【0057】
調理(炊飯)が完了すると、燃料60の投入を止めればよい。なお、保温を行なう場合には、定期的に新聞紙等を投入すればよい。
【0058】
調理は、炊飯に限らず、煮炊き、湯沸かしであってもよい。
【0059】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について説明する。なお、とくに説明を行なわない限り、本実施形態及び次の第3実施形態では、第1実施形態と同じ名称、符号の部材は、同等又は実質的に同等の部材を意味し、使用方法を含め、適宜説明を省略する。
【0060】
図8乃至
図18は、本発明の第2実施形態のかまど調理具10を示している。かまど調理具10は、
図8乃至
図10に示すように、第1実施形態と同様、かまど装置20(かまど本体21)、釜50、蓋体53、及び、釜50をかまど装置20に載せる支持具23を含んでいる。第2実施形態では、かまど調理具10は、平面視円形形状のかまど装置20に、同じく平面視円形形状の釜50を前方側に偏心して配置し、後方側に排気通路45及び排気口44が形成されるようにしている。これにより、
図12に示すように、排気口44を形成する釜50と、釜50の後方側を囲うかまど本体21の上縁部42との間の隙間S2は、釜50の前方側の隙間S1よりも広くなる。
【0061】
釜50は、
図10に示すように、上縁にフランジ状の突出部52が設けられた炊飯釜を採用している。また、蓋体53は、
図11乃至
図13に示すように、釜50よりも大径であり、上面に摘まみ53aが設けられ、下面には、釜50の突出部52に内側から当接するずれ止め53bが形成されている。
【0062】
かまど装置20は、
図10に最もよく表わされるように、上縁部42が円形形状であり、円筒状の胴体部30及び底面31を具えるかまど本体21を主体として構成される。胴体部30は、
図12、
図13に示すように、上縁部42の近傍にネッキング加工が施されて内面が減径したネッキング部30aを有する。このネッキング部30aは、かまど本体21から上部に放出される炎と熱気を内向きにして釜50に伝える役割をなす。また、かまど本体21の上縁部42には、断面
図12等に示すように、支持具23を載せる環状の支持具受け42aが凹設されている。
【0063】
かまど本体21の前面には、
図8乃至
図10、
図14、
図15に示すように、下方に焚き口33が開設されている。焚き口33は、図示では2つ形成されており、これら焚き口33は、かまど本体21の前面に左右に並んで形成されている。焚き口33は、
図14に示すように、ロストル22よりも高い位置であって、載置される釜50の底面51よりも低い位置に形成している。
【0064】
各焚き口33は、第1実施形態と同様、高さ4cm~6cm、幅8cm~12cmに設定することができる。焚き口33を2つ形成する場合、焚き口33どうしの間隔は、かまど本体21の直径によって異なるが、2cm~10cm程度とすることが好適である。焚き口33,33は、
図15に示すように、各中心とかまど本体21の中心とを結ぶ中心線Cの交角Iが30度~150度程度となるように焚き口33を形成することが望ましい。これは、交角Iが大きくなると(たとえば160度~180度近く)、一方の焚き口33から投入した燃料60が他方の焚き口33から飛び出てしまう、或いは、一方の焚き口33から投入した燃料60が燃焼室32で燃焼中の燃料60を他方の焚き口33から押し出してしまう虞れがあるためである。なお、焚き口33を3つ、或いはそれ以上形成する場合には、後述する
図25に示すように、外側に位置する焚き口33どうしの中心線Cの交角Iが30度~150度となるようにすることが望ましい。
【0065】
かまど本体21には、ロストル22が配置される。ロストル22は、燃焼した灰をかまど本体21の底に落とすために、
図15に示す縦格子状や、メッシュ状、横格子状、面格子状とすることができる。ロストル22は、かまど本体21に位置決めすることが望ましい。たとえば、
図12に示すように、かまど本体21は、底面31に位置決め孔21aを設け、ロストル22には、掛かり片22aを突設している。これにより、かまど本体21にロストル22を取り付ける際に、位置決め孔21aに掛かり片22aを差し込むことで、ロストル22を位置決めでき、また、次に説明する抑制壁24をロストル22に設けた場合では前後の向きを正しく取り付けることができる。なお、ロストル22に代えて、かまど本体21の底面31に突起を設けて凹凸形状とし、灰を突起間に落下させる構成としてもよい。
【0066】
本実施形態のかまど調理具10は、かまど装置20の前方側に偏心して釜50を配置した構成である。従って、効率よく燃料60となる新聞紙を燃焼させて、釜50を加熱するには、かまど本体21は、かまど本体21の前方側となる釜50の直下で燃料60を燃焼させ、後方に排気通路45を確保する必要がある。このため、ロストル22には、
図12乃至
図15に示すように、後ろ側に燃料60の移動を防ぐ抑制壁24を設けている。抑制壁24は、高さ2cm~6cmとすることができる。なお、抑制壁24は、ロストル22に形成することが部品点数を減らし、お手入れが楽になるので望ましいが、ロストル22とは別部材としても構わない。
【0067】
かまど装置20に釜50が載せられる。本実施形態では、かまど装置20及び釜50は共に円形形状であるため、
図8、
図9、
図11、
図12等に示すように、釜50をかまど装置20の前方側に偏心して配置し、後方側が排気通路45及び排気口44となるようにしている。このような配置を可能とするため、支持具23は、
図10に示すように、下縁を形成する下枠23aに対し、上縁を形成する上枠23bを偏心した構成としている。より具体的には、下枠23aは、かまど本体21の上縁部42の支持具受け42aに嵌まる環状形状の金属ワイヤーから構成している。上枠23bは、同じく金属ワイヤーを環状形状に形成して、上枠23bが下枠23aに対して偏心するよう繋ぎ片23dで繋ぐ構成とすることができる。本実施形態では、
図10に示すように、上枠23bは、円弧状の釜支持部23cとしており、その両端を下方に向けて屈曲させつつ下枠23aに到達させた繋ぎ片23dから構成している。また、補強のために、釜支持部23cと下枠23aを補強片23eで連繋している。釜支持部23cは、支持具23をかまど本体21に装着するときに、前と後ろに夫々位置するようにして、左右には釜50と接触する枠を設けないようにしている。これにより、ユーザーが釜50の左右の突出部52を掴んで釜50を持ち上げるときに、枠に指が掛からないため、支持具23ごと釜50を持ち上げてしまうことを防止できる。
【0068】
支持具23は、上記のとおり、下枠23aに対して上枠23bを前方に偏心させているから、支持具23には前後の取付向きがある。支持具23の前後の向きを取り違えないために、
図12に示すように、支持具23の下枠23aに位置決め突起23fを設け、かまど本体21の支持具受け42aには、
図10、
図12に示すように、位置決め突起23fが嵌まる位置決め凹み42bを設けている。位置決め突起23fは、たとえば、後方の補強片23eの下端を下枠23aよりも下側に突出して形成することができる。これにより、かまど本体21に支持具23を正しい向きで装着できる。
【0069】
上記構成の各部材から、かまど調理具10が作成される。まず、
図12乃至
図15に示すように、上記構成のかまど本体21の内部にロストル22を配置する。ロストル22は、
図12に示すように、位置決め孔21aに掛かり片22aを差し込むことで、ずれなく位置決めでき、正しい向きの取付けを行なうことができる。
【0070】
続いて、かまど本体21に支持具23を取り付ける。支持具23は、
図12に示すように、位置決め突起23fを位置決め凹み42bに嵌めることで、前後方向の向きを正しく取り付けることができる。
【0071】
そして、支持具23に調理物を投入し、蓋体53を取り付けた釜50を載せる。釜50は、突出部52が上枠23bに当たるように載せる。
図10に示すように、支持具23の上枠23bは、釜支持部23cを前後に配置することで、ユーザーは、釜50を掴んだ指がかまど本体21の左右に位置するように釜50を置くことで、指挟みなく釜50を載せることができる。
【0072】
図8、
図9、
図12などに示すように、釜50は、かまど本体21に対して前方に偏心して配置されていることがわかる。かまど本体21は、釜50の直下、すなわち、抑制壁24よりも前方側が燃焼室32となり、釜50よりも後方とかまど本体21の胴体部30との間に形成された隙間S2が排気通路45となる。そして、排気通路45の上端が排気口44となる。
【0073】
然して、
図16に示すように、焚き口33から燃料60を投入し、着火する。第2実施形態では、焚き口33は2つ設けているから、最初の燃料60は、
図15に符号1で示すように、何れか一方の焚き口33から投入する。燃料60は、たとえば丸めた新聞紙である。燃焼室32内に抑制壁24を設けておくことで、
図16に示すように、燃焼中の燃料60が燃焼室32を通過して、排気通路45や排気口44の下側まで移動することを防止できる。これにより、燃料60を燃焼室32に留めることができ、効率的に炎61を釜50の加熱Q1に用いることができる。
【0074】
最初の燃料60を投入した後、続く燃料60は、
図15中符号2で示すように、もう一方の焚き口33から投入する。その後の燃料60は、2つの焚き口33に交互に投入する(符号3、4、5、…)。一方の焚き口33から投入した燃料60が燃焼する前に、他方の焚き口33から投入することで、熱量の低下を防止できる。また、燃料60を複数の焚き口33から交互に投入することで、燃焼中の燃料60を奥に押し込むような燃料60の投入を防止でき、また、燃焼中の燃料60が邪魔になって新たな燃料60を投入できないという問題を解消できる。これにより、燃料60を燃焼室32内で効率的に燃焼させることができる。
【0075】
燃焼室32で燃料60が燃え始めると、
図16に示すように、炎61により釜50が直に熱せられ(矢印Q1)、熱の発生により、焚き口33,33を吸気口として新たな外部空気が燃焼室32に導入される(矢印P1)。
【0076】
燃焼室32で発生した熱(炎61)は、直接釜50を加熱Q1するだけでなく、かまど本体21の輻射熱(Q2)により釜50が加熱される。釜50と炎61との間には遮蔽物はないから、釜50を高効率で加熱できる。本実施形態では、かまど本体21の胴体部30の上縁をネッキング加工30aにより減径させているから、かまど本体21から上部に放出される炎と熱気P2は、減径した胴体部30の内面に沿って釜50側に向かい、より効果的に釜50に熱を加えることができる。
【0077】
上記のように、釜50には、好適に加熱が行なわれるから、小燃料、短時間で調理を行なうことができる。
【0078】
高温下では燃料60となる新聞紙は、1分半から2分で燃え尽きる。このため、高火力を得るには、1分間隔で燃料60を投入する必要がある(実施例参照)。燃料60を同じ焚き口33から連続して投入すると、先に投入され、まだ完全には燃えていない燃料60を後方に押し込むことになり、燃焼効率が低下してしまうことがある。しかしながら、本実施形態では、焚き口33を2つとしており、燃料60は
図15の符号1、2、…に示すように、交互に焚き口33から投入できる。従って、先に投入された燃料60が押し込まれることはなく、高効率で燃料60を燃焼させることができる。
【0079】
なお、上記及び
図16に示すように、焚き口33は、載置される釜50の底面51よりも低い位置に形成しているが、釜50の底面51が焚き口33と重なる高さに形成された場合には、新聞紙が釜50の底面51に当たることがある。また、燃料60である新聞紙を大量に焚き口33から投入した場合にも新聞紙が釜50の底面51に当たることがある。このように、新聞紙が釜50の底面51に当たった場合には、新聞紙は部分的に燃焼せず、燃え残りが発生する。燃え残りの発生は、燃焼効率の低下や、煙の発生を招く。とくに、調理完了を使用した新聞紙の枚数で管理している場合には、燃え残りが発生すると、新聞紙の投入を終えても、調理が完了しない状態を生み出す。さらには、
図17は、燃え残りが発生中のかまど調理具10から釜50を取り去った状態を示しているが、釜50を取り去ったときに、燃え残りの新聞紙(燃料60)が残り火によって着火してしまうことがある。このため、焚き口33は、載置される釜50の底面51よりも低い位置に形成し、新聞紙は多くを一度に投入せず、ある程度燃焼が進んでから投入することが望ましい。
【0080】
図18は、使用後のかまど調理具10を示している。本実施形態では、かまど本体21の内径に比べて、釜50の外径を小さくしているから、支持具23は上下を逆さにしてかまど本体21に挿し込み、その上から釜50及び蓋体53を載せることで、
図18に示すようにかまど調理具10をコンパクトに収納することができる。
【0081】
<第3実施形態>
図19、
図20は、第3実施形態のかまど調理具10を斜め方向から見た写真である。第3実施形態では、アルミ製の寸胴25内にセメント26でかまど本体21の胴体部30を形成してかまど装置20を作製している。
【0082】
かまど本体21は、
図21、
図22に中央に周面がセメント製の燃焼室32を有する。かまど本体21の上縁部42は、平面
図23に示すように、前方側が釜50の周面(一点鎖線50a)に沿う半円形状であり、半円形状の両縁から後方に延びており、寸胴25の周面に沿って円弧状に閉じるように開口している。排気口44は、釜50の後面と寸胴25の周面に沿う円弧状の排気口上縁43の隙間S2に形成される空間である。この隙間S2は、釜50の前面と円弧状の上縁部42との間の隙間S1よりも広く形成されている。
【0083】
胴体部30には、
図21、
図22に示すように、上縁部42が減径されたネッキング部30aを有する。
【0084】
また、かまど本体21の焚き口33は、前方に3つ設けている。
【0085】
上記構成のかまど本体21は、次の要領で作製できる。まず、寸胴25の前面に焚き口33となる孔をホールソーなどで3つ開設する。次いで、
図24に示すように、燃焼室32及び上縁部42の形状となるよう円筒状に巻かれたウレタン枠70を作製し、当該ウレタン枠70をアルミ製の寸胴25に収容する。図に示すように、ウレタン枠70は上縁部42が減径されるように上側は直径が小さい減径枠71であり、排気口に相当する位置に円弧状枠部材72を取り付けている。なお、
図24の枠70,71内の寸胴73はウレタンの型崩れを防止するためのものである。焚き口33には円柱状のウレタン枠74(3つ)を挿入しておく。そして、寸胴25とウレタン枠70により構成される型枠にセメントを流し込み、セメントが硬化した後、ウレタン枠70,74を抜き取ればよい。枠70,71を使用することで、ネッキングされた胴体部30を容易に作製することができる。
【0086】
作製されたかまど装置20には、
図21に示すようにロストル22を敷き、支持具23を載せて、釜50が載置される(
図19、
図20)。
【0087】
本実施形態では、釜50は、フランジの如き突出部52の外周の対向位置に樹脂製の持ち手52aの付いたものを利用している。樹脂製の持ち手52aは、炎に直接当たると焦げたり燃えたりしてしまうことがある。このため、釜50は、
図20、
図23に示すように、持ち手52aが上縁部42よりも外側の左右に位置するよう載置し、持ち手52aが直接炎に当たらず、且つ、熱気に触れないようにしている。
図23を参照すると、釜50は、突出部52がかまど本体21の上縁部42よりも外側に飛び出しており、持ち手52aがさらに外側に位置していることがわかる。
【0088】
然して、燃料60となる新聞紙を焚き口33から投入する。本実施形態では、焚き口33は3つであるから、たとえば右側、中央、左側の順で焚き口33に所定時間(たとえば1分)毎に燃料60を投入することができる。また、
図25に示すように、最初に中央の焚き口33に燃料60を投入し(符号1)、次に左右の焚き口33から同時に夫々燃料60を投入(符号2)、次いで再度中央(符号3)、左右(符号4)…の順で燃料60を投入してもよい。左右の焚き口33から同時に燃料60を投入することで、2倍の燃料60を同時に燃焼室32に入れることができるので、火力を高めることができる。この手法は、釜50のサイズが大きい場合(実施形態では10合)に、とくに有効である。
【0089】
燃料60が投入されると、第1実施形態、第2実施形態と同様に釜50が熱せられる。釜50は、樹脂製の持ち手52aを有するが、
図23に示すように、釜50とかまど本体21の上縁部42は左右の隙間が非常に狭く、また、持ち手52aは左右に飛び出している。従って、持ち手52aが炎により熱せられてしまうことを抑制でき、焦げなどを防止できる。
【0090】
本実施形態では、ウレタン製の枠70,71等を使用して、かまど本体21の胴体部30をセメント26で作製している。専門の加工業者でなくてもDIYで作製可能であり、枠70,71等の大きさを変えることで、所有する釜50に合わせたかまど装置20を作製できる利点がある。
【0091】
<第4実施形態>
図26は、本発明の第4実施形態のかまど調理具10を示している。第4実施形態のかまど調理具10は、第2実施形態のような内径円形のかまど本体21に外径円形の釜50を載せたかまど調理具10であって、釜50のサイズを大きくしたものである(第2実施形態の釜50は5合炊きであり、第4実施形態の釜50は10合炊きである)。釜50のサイズが大きくなると、排気口44を確保するためにかまど本体21の内径も大きくする必要がある。円形のかまど本体21と釜50では、かまど本体21の内径を大きくすることで、かまど本体21と釜50との間には、大きな三日月状の排気口が形成されることになる。
【0092】
この大きな三日月状の排気口を有するかまど調理具で炊飯を行なった場合、釜の中央のご飯は炊けるが、左右は炊けずに粥状になってしまうという炊きムラが生じることがあった。この炊きムラの発生原因を検討したところ、燃焼室から排気口に向かう空気流が、三日月状の排気口の開口幅の最も広い中央付近に集中する結果、炎及び釜への加熱も中央付近に集中し、釜の左右は十分加熱されていないことによるものであることがわかった。
【0093】
そこで、本実施形態では、
図26に示すように、排気口上縁43の中央から排気口44を分断させる分岐壁43aを突出している。分岐壁43aは、載置される釜50の周面50aに向けて内向きに延びる構成であり、先端を釜50の周面50aに沿う円弧状としている。なお、かまど本体21は、第3実施形態と同様、枠により寸胴25内にセメント26を硬化させて形成できる。
【0094】
かまど本体21に釜50を載せた状態で、分岐壁43aによって、排気口44は、左右の排気口44a,44aに分断される。すなわち、大きな三日月状の排気口は、左右2つに分かれた排気口44a,44aとなる。この構成のかまど調理具10に焚き口33から燃料60を投入すると(第3実施形態参照)、炊飯時に焚き口33から燃焼室32を通り、排気口44a,44aに向かう空気の大まかな流れは、
図26に平面視矢印R1、R2で示すとおりとなる。具体的には、中央の焚き口33からの空気流R1は、釜50の直下を通過し、左右に分岐して、排気口44a,44aから排気される。また、左右の各焚き口33からの空気流R2は、釜50の左右下方を通過して、夫々左右の焚き口33から排気される。空気流R1,R2の通り道は、炎の通り道にもなるから、排気口44a,44aに向けて空気流Rが分岐することで、釜50への加熱も中央に集中することなく万遍なく分散され、釜50がほぼ均一に加熱される。結果、サイズの大きい釜50を用いた場合であっても、炊きムラを防止することができる。
【0095】
なお、分岐壁43aは、
図26のように、排気口上縁43に直接形成せずに、板状部材やブロック、レンガなどを排気口上縁43に載せて、排気口44の中央を塞ぐ構成であってもよい。
【実施例0096】
第1実施形態の
図1等に示すかまど調理具10を作製し、炊飯を行なった。釜50として、電気炊飯器に用いられる5合用の炊飯釜を用い、釜50に3合の米を水と共に投入し、蓋体53で塞いだ。
【0097】
燃料として、新聞紙(見開きを半分に切断したものを1枚とカウント)を使用した。新聞紙は、1枚ずつトイレットペーパーの芯に押し込んで丸めた後、芯から取り出して塊状とした。
【0098】
釜50をかまど装置20に載置し、焚き口33から新聞紙塊を最初に1つ投入し、着火を行なった。着火は、マッチやライターにより容易に行なうことができた。
【0099】
炊飯のため、最初は弱火で加熱が好ましいから、1枚目投入後、2分毎に1つずつ合計5枚の新聞紙塊を焚き口33から投入した。
【0100】
続いて、ご飯を炊き上げるために、1分毎に1つずつ、合計10枚の新聞紙塊を焚き口33から投入した。
【0101】
10枚目の新聞紙塊を焚き口33に投入した後、蒸らしのため15分放置し、蓋体53を開けたところ、炊飯が完了していた。
【0102】
できたご飯は、直火で炊いたにも拘わらず、焦げが少なく、綺麗に炊飯されおり、美味であった。なお、保温を行なう場合、30分毎に1枚の新聞紙塊を焚き口33から投入し、着火すればよい。
【0103】
本発明のかまど装置20、かまど調理具10によれば、上記のように、新聞紙15枚だけで3合の米を炊くことができ、小燃料化を図ることができた。2合の場合は13枚、4合の場合17枚の新聞紙で炊飯を行なうことができた。
【0104】
本発明のかまど装置20により、新聞紙の如き貧弱な燃料60を少量使用するだけでも上手く炊飯を行なえたのは、熱がかまど装置20内の前方側(焚き口側)に篭もって逃げ難くなり(
図7の矢印P2)、高効率で釜50が加熱されたこと、排気通路45の一部が釜50により構成されていることで、排気通路45を通過する加熱された空気流P3により、釜50が加熱を受けたこと、さらに、排気口44よりも釜底51が低い位置にあるから、熱流出を抑えることができたこと等が理由として挙げられる。また、薪の場合、発生した熱エネルギーの1割も炊飯に使えていないが、本発明のかまど調理具10では、新聞紙塊の約9割の熱エネルギーを釜50の加熱に用いることができ、少量の新聞紙塊で炊飯できたと考えられる。
【0105】
その他、新聞紙は、薪等に比べて入手可能な点が燃料60に採用する効果として挙げられる。また、新聞紙は、薪等ほどの火起こしスキル、また、着火剤を必要としない。さらに、新聞紙の場合、火力の調整も容易である。上記実施例では、新聞紙を例に挙げているが、新聞紙以外でも、コピー用紙、雑誌などの他の紙類を用いることもできる。その場合、紙類の、厚み、サイズに応じて、投入量やタイミングの調整を行うことで、同様の炊飯が可能となる。
【0106】
上記のように、本発明のかまど調理具10は、少量の新聞紙塊で炊飯を行なうことができ、災害時やキャンプ時などで加熱調理を行なう調理具として好適である。
【0107】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0108】
たとえば、各部材の厚さや大きさ、幅などは一例であり、上記実施形態に限定されるものではない。また、かまど本体21や釜50の形状について、円形や楕円形などの表記は、真円形や真楕円形だけでなく、実質的に円形や楕円形、略円形、略楕円形などの形態も含まれることは理解されたい。