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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154893
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
   A47J 39/02 20060101AFI20241024BHJP
   F25D 23/12 20060101ALI20241024BHJP
   A47B 31/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A47J39/02
F25D23/12 L
A47B31/02 B
A47B31/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069105
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 園生
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】永井 洋
(72)【発明者】
【氏名】足立 吉隆
【テーマコード(参考)】
4B066
【Fターム(参考)】
4B066AA05
4B066AB10
4B066BB05
4B066BD01
(57)【要約】
【課題】2つの収容室に跨ってトレイを収容可能な貯蔵庫において、2つの収容室の断熱性を向上させる。
【解決手段】前方に開口する断熱箱体30と、断熱箱体30の内部に配されて2つの収容室R1,R2に区画する仕切壁24と、を備え、仕切壁24は、前後方向に延びて2つの収容室R1,R2を連通する状態で形成されて、2つの収容室R1,R2に跨って配置可能なトレイTの中間部Tcを挿入するためのトレイ溝24aを有し、仕切壁24におけるトレイ溝24aの下面を形成するトレイ溝下面部60aには、前後方向に延びる下面側パッキン72が配され、下面側パッキン72には、左右方向に間隔を空けて2以上の突条72dが形成されている構成とする。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口する断熱箱体と、
前記断熱箱体の内部に配されて前記断熱箱体の内部を2つの収容室に区画する仕切壁と、
を備え、
前記仕切壁は、前後方向に延びて前記2つの収容室を連通する状態で形成されて、前記2つの収容室に跨って配置可能なトレイの中間部を挿入するためのトレイ溝を有し、
前記仕切壁における前記トレイ溝の下面を形成するトレイ溝下面部には、前後方向に延びる下面側パッキンが配され、
前記下面側パッキンには、左右方向に間隔を空けて2以上の突条が形成されている貯蔵庫。
【請求項2】
前記下面側パッキンは、前記2以上の突条を有する上面部と、前記上面部の左右の縁部から下方に延び出して下方ほど互いの間隔が広がる形状とされた一対の側面部と、を備え、
前記トレイ溝下面部は、前記2以上の突条が上方に突出する状態で前記下面側パッキンを収容する下面側パッキン収容部を備え、
前記下面側パッキン収容部は、前記一対の側面部の各々に面で接する傾斜内壁面を有する請求項1に記載の貯蔵庫。
【請求項3】
前記下面側パッキンは、断面台形の筒状のものとされた請求項2に記載の貯蔵庫。
【請求項4】
前記下面側パッキンは、筒状のものとされ、内面に前後方向に延びて他の部分よりも厚みが大きな肉厚部が形成されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【請求項5】
前記下面側パッキンは、断面四角形の筒状のものとされ、
前記肉厚部は、底面側を形成する部分である底面部に形成されている請求項4に記載の貯蔵庫。
【請求項6】
前記仕切壁は、前後方向に延びて前記トレイ溝に挿入された前記トレイの下面に接して前記トレイを支持するトレイ支持面と、前記トレイ支持面の前方に形成されて前記トレイ支持面より上方に膨らんだ凸部と、を有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【請求項7】
前記仕切壁は、仕切壁本体と、前記トレイ溝の上面であるトレイ溝上面部を有して前記仕切壁本体から前記トレイ溝下面部に向けてスライド移動可能なスライダと、を備えている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【請求項8】
前記断熱箱体の開口を開閉する扉を備え、
前記仕切壁本体は、下方に開口して前記スライダを上下方向にスライド移動可能に収容するスライダ収容部を有し、
前記スライダは、前記仕切壁本体の前端面より前方に向かって突出した突出部を有し、
前記扉は、前記仕切壁本体の前記前端面に接する扉側パッキンを備えている請求項7に記載の貯蔵庫。
【請求項9】
前記仕切壁本体は、下方に開口して前記スライダを上下方向にスライド移動可能に収容するスライダ収容部を有し、
前記仕切壁は、前記スライダ収容部内の前記スライダの上面と前記仕切壁本体との間に介装された長手状の弾性材である介装パッキンを有し、
前記トレイが前記トレイ溝に挿入されておらず、前記スライダの下面である前記トレイ溝上面部が前記2以上の突条に接している状態において、前記介装パッキンは、収縮した状態とされている請求項7に記載の貯蔵庫。
【請求項10】
前記介装パッキンは、左右方向の幅が前記スライダの幅より小さな筒状のものとされ、上部に前記仕切壁本体に係合する係合部を有している請求項9に記載の貯蔵庫。
【請求項11】
前記介装パッキンは、下面側に、左右方向に間隔を空けて2以上の突条が形成されている請求項10に記載の貯蔵庫。
【請求項12】
前記スライダは、それぞれが上面から立設し、前記介装パッキンを挟んで形成された一対の立壁部を有している請求項9に記載の貯蔵庫。
【請求項13】
前記スライダは、下面側に前後方向に延びる状態で配されたスライダパッキンを有し、
前記スライダパッキンは、左右方向に間隔を空けて2以上の突条が形成されており、
前記スライダの前記トレイ溝上面部が前記トレイに接している状態において、前記スライダパッキンが弾性変形して、前記2以上の突条も前記トレイに接している請求項7に記載の貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切壁で左右に区画された2つの収容室を備える貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1,2には、収納庫内を仕切壁によって2つの収容室に区画し、一方を保温室として、他方を保冷室とした配膳車が記載されている。これらの配膳車は、仕切壁に、トレイの中間部を挿入可能なトレイ溝が形成されており、保温室と保冷室との両者に跨った状態でトレイを収容できる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-275134号公報
【特許文献2】実開平2-63757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2に記載された配膳車のように、仕切壁で左右に区画された2つの収容室を備え、仕切壁に形成されたトレイ溝に2つの収容室に跨ってトレイを挿入することが可能な構成の貯蔵庫においては、それら2つの収容室の温度に差がある場合に、トレイ溝とトレイの隙間から、空気(熱)の移動が生じやすい。そこで、上記特許文献1,2に記載の配膳車においては、トレイ溝を形成する部分に、上下方向に可動する部材を設けて、トレイの上面側を塞ぐように構成されている。しかしながら、未だ、断熱効果は十分とは言い難く、2つの収容室の断熱性(密閉性を含む)を向上させる余地が残されている。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、2つの収容室に跨ってトレイを収容可能な貯蔵庫において、2つの収容室の断熱性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本願に開示の貯蔵庫は、以下の構成とされている。
(1)前方に開口する断熱箱体と、
前記断熱箱体の内部に配されて前記断熱箱体の内部を2つの収容室に区画する仕切壁と、
を備え、
前記仕切壁は、前後方向に延びて前記2つの収容室を連通する状態で形成されて、前記2つの収容室に跨って配置可能なトレイの中間部を挿入するためのトレイ溝を有し、
前記仕切壁における前記トレイ溝の下面を形成するトレイ溝下面部には、前後方向に延びる下面側パッキンが配され、
前記下面側パッキンには、左右方向に間隔を空けて2以上の突条が形成されている貯蔵庫。
【0007】
本願に開示の貯蔵庫は、トレイ溝にトレイが挿入された状態において、そのトレイの中間部における下面に、2以上の突条が接することとなる。つまり、本願に開示の貯蔵庫においては、トレイがトレイ溝に挿入されると、トレイの下側で、2つの収容室との間に空気層が形成されるため、2つの収容室間における空気(熱)の移動を抑制することができ、2つの収容室の断熱性を向上させることができる。また、トレイ上に載置したものの重量によって、トレイに左右方向の反りが生じた場合であっても、2以上の突条の各々が前後方向に延びるライン状にトレイの裏面に接することができるため、確実に空気層を形成して、断熱性の向上を図ることができる。
【0008】
本願に開示の貯蔵庫は、2つの収容室の各々の温度を調節する冷却装置や加熱装置等の温調装置を備えたものであってもよく、2つの収容室内の温度変化を抑える(保温・保冷を行う)ためのものであってもよい。また、本願に開示の貯蔵庫は、収容室の一方が加熱(保温)され、収容室の他方が冷却(保冷)される構成のものに限定されず、2つの収容室に温度差が生じる構成のものであれば、採用可能である。さらに、本願に開示の貯蔵庫は、配膳車やカート等の移動可能なものに限定されず、固定タイプのものであってもよい。
【0009】
また、上記構成の貯蔵庫において、以下に示す種々の態様とすることが可能である。なお、本発明は以下の態様に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0010】
(2)前記下面側パッキンは、前記2以上の突条を有する上面部と、前記上面部の左右の縁部から下方に延び出して下方ほど互いの間隔が広がる形状とされた一対の側面部と、を備え、
前記トレイ溝下面部は、前記2以上の突条が上方に突出する状態で前記下面側パッキンを収容する下面側パッキン収容部を備え、
前記下面側パッキン収容部は、前記一対の側面部の各々に面で接する傾斜内壁面を有する(1)項に記載の貯蔵庫。
【0011】
この構成の貯蔵庫は、トレイ上に載置したものの重量が大きいほど、上面部が沈み込むことになるが、一対の側面部が、下面側パッキン収容部によって上端が互いに接近する方向の変形のみが許容される。つまり、この構成の貯蔵庫によれば、下面側パッキンが安定して変形すること、詳しく言えば、上面部が2つの突条が底となって撓むように変形することが可能となり、2以上の突条とトレイの裏面との密着性を確保できる。
【0012】
(3)前記下面側パッキンは、断面台形の筒状のものとされた(2)項に記載の貯蔵庫。
【0013】
この構成の貯蔵庫は、下面側パッキンの一対の側面部の下端同士が連結されているため、一対の側面部は、下端を中心として互いに近づく方向に傾倒するように変形する。したがって、この構成の貯蔵庫は、下面側パッキンをより安定して変形させることができ、2以上の突条とトレイの裏面との密着性をより高めることができる。
【0014】
(4)前記下面側パッキンは、筒状のものとされ、内面に前後方向に延びて他の部分よりも厚みが大きな肉厚部が形成されている(1)項から(3)項のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【0015】
この構成の貯蔵庫においては、下面側パッキンが、肉厚部の存在によって前後方向の剛性が高められている。例えば、トレイを挿入する際に、下面側パッキンがトレイに引っ掛かったり、吸着したりして、下面側パッキンが前後方向に収縮してしまうような事態を回避することができる。
【0016】
(5)前記下面側パッキンは、断面四角形の筒状のものとされ、
前記肉厚部は、底面側を形成する部分である底面部に形成されている(4)項に記載の貯蔵庫。
【0017】
前述したように、下面側パッキンは、上面部と側面部は、トレイの重量によって変形するため、その影響のない底面部に肉厚部を形成することで、上面部と側面部の変形を阻害することなく、下面側パッキンの前後方向の収縮を効果的に抑制することができる。
【0018】
(6)前記仕切壁は、前後方向に延びて前記トレイ溝に挿入された前記トレイの下面に接して前記トレイを支持するトレイ支持面と、前記トレイ支持面の前方に形成されて前記トレイ支持面より上方に膨らんだ凸部と、を有する(1)項から(5)項のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【0019】
この構成の貯蔵庫においては、トレイをトレイ溝に挿入する最中において、トレイの手前側(挿入方向における後端側)において凸部に接することで、トレイは挿入方向前側に向かって下降傾斜する姿勢となり、突条あるいはトレイ支持面に対して前端側において点で接することになる。したがって、この構成の貯蔵庫によれば、突条に対してライン状に接する場合に比較して、挿抜時の抵抗を低減することができるため、トレイの挿抜を容易に行うことができる。
【0020】
(7)前記仕切壁は、仕切壁本体と、前記トレイ溝の上面であるトレイ溝上面部を有して前記仕切壁本体から前記トレイ溝下面部に向けてスライド移動可能なスライダと、を備えている(1)項から(6)項のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【0021】
この構成の貯蔵庫は、スライダによってトレイの上面側の断熱性を確保するとともに、トレイが挿入されていない状態における断熱性を確保することができる。
【0022】
(8)前記断熱箱体の開口を開閉する扉を備え、
前記仕切壁本体は、下方に開口して前記スライダを上下方向にスライド移動可能に収容するスライダ収容部を有し、
前記スライダは、前記仕切壁本体の前端面より前方に向かって突出した突出部を有し、
前記扉は、前記仕切壁本体の前記前端面に接する扉側パッキンを備えている(7)項に記載の貯蔵庫。
【0023】
スライダは、スライダ収容部より一回り小さな大きさとされるため、スライダの前方側に隙間が生じやすいが、この構成の貯蔵庫によれば、スライダの突出部が扉側パッキンに嵌まり込むまで延び出しているため、スライダの前方側において2つの収容室間の隙間が生じにくく、2つの収容室の断熱性をより高めることができる。
【0024】
(9)前記仕切壁本体は、下方に開口して前記スライダを上下方向にスライド移動可能に収容するスライダ収容部を有し、
前記仕切壁は、前記スライダ収容部内の前記スライダの上面と前記仕切壁本体との間に介装された長手状の弾性材である介装パッキンを有し、
前記トレイが前記トレイ溝に挿入されておらず、前記スライダの下面である前記トレイ溝上面部が前記2以上の突条に接している状態において、前記介装パッキンは、収縮した状態とされている請求項7または請求項8に記載の貯蔵庫。
【0025】
この構成の貯蔵庫は、スライダが介装パッキンによって常時下方に向かって(トレイ溝下面部に向かって)付勢されている。したがって、トレイが挿入されている状態においては、スライダをトレイ上面に確実に密着させるとともに、トレイの下面をトレイ溝下面部の2以上の突条に対する密着力を高めることができる。また、トレイが挿入されていない状態においては、スライダをトレイ溝下面部の2以上の突条に対して密着させることができるため、2つの収容室の間に空気層が形成され、2つの収容室の断熱性を高めることができる。
【0026】
(10)前記介装パッキンは、左右方向の幅が前記スライダの幅より小さな筒状のものとされ、上部に前記仕切壁本体に係合する係合部を有している(9)項に記載の貯蔵庫。
【0027】
この構成の貯蔵庫は、介装パッキンが仕切壁本体に対して上部において固定されていることで、介装パッキンが左右にずれることがない。例えば、介装パッキンが左右にずれると、スライダ収容部の側壁に当接して変形が妨げられたり、スライダ収容部内で左右方向における位置が偏って、スライダが左右方向に傾斜してしまったりする虞がある。この構成の貯蔵庫によれば、介装パッキンの左右方向の位置ズレが生じることがなく、また、介装パッキンの左右に介装パッキンがつぶれる変形を許容するスペースを確保することができるため、介装パッキンを安定して変形させることができる。ひいては、トレイの挿抜を安定して行うことができる。
【0028】
(11)前記介装パッキンは、下面側に、左右方向に間隔を空けて2以上の突条が形成されている(10)項に記載の貯蔵庫。
【0029】
この構成の貯蔵庫は、介装パッキンとスライダの上面との間に前後方向に延びる空気層が形成されているため、スライダ収容部内において、左右の空間の断熱性を高めることができ、ひいては、2つの収容室の断熱性を向上させることができる。
【0030】
(12)前記スライダは、それぞれが上面から立設し、前記介装パッキンを挟んで形成された一対の立壁部を有している(9)項から(11)項のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【0031】
2つの収容室の一方が加熱(保温)され、他方が冷却(保冷)されている場合、介装パッキンは、冷却された空間の温度によって、加熱された空間の温度より低くなり、加熱された空間に面している部分に結露が生じやすい。その結露水は、スライダの上面に滴下することになる。この構成の貯蔵庫は、その結露水がスライダの上面において前後方向に流される。つまり、結露水がスライダの側面をつたってトレイの上に滴下するような事態を回避することができる。
【0032】
(13)前記スライダは、下面側に前後方向に延びる状態で配されたスライダパッキンを有し、
前記スライダパッキンは、左右方向に間隔を空けて2以上の突条が形成されており、
前記スライダの前記トレイ溝上面部が前記トレイに接している状態において、前記スライダパッキンが弾性変形して、前記2以上の突条も前記トレイに接している請求項7から請求項12のいずれか一項に記載の貯蔵庫。
【0033】
この構成の貯蔵庫は、挿入されたトレイとスライダとの間に、前後方向に延びる空気層が形成される。したがって、この構成の貯蔵庫によれば、2つの収容室の断熱性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、2つの収容室に跨ってトレイを収容可能な貯蔵庫において、2つの収容室の断熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態1である再加熱カートユニットの分解斜視図
図2】再加熱カートユニットの斜視図
図3】カートの斜視図
図4】カートの正面図
図5】フレームカートの斜視図
図6】再加熱カートユニットの正面断面図
図7】仕切壁の斜視図
図8】セパレータの斜め上方からの視点における斜視図
図9】セパレータの斜め下方からの視点における斜視図
図10】フレームカートの上端を拡大して示す斜視図
図11図8における前方側の端部の拡大図
図12】セパレータ本体の正面断面図
図13】トレイを挿入した状態における仕切壁の一部を拡大して示す正面断面図
図14】トレイをトレイ溝に挿入した状態を示す仕切壁の側面断面図
図15】トレイ溝にトレイが挿入されていない状態を示す仕切壁の側面断面図
図16】トレイをトレイ溝に挿入した状態を示す側面図
図17】トレイをトレイ溝に挿入している最中を示す側面図
図18】実施形態2の貯蔵庫が備えるカートの正面断面図
図19】実施形態3の貯蔵庫が備えるカートの斜視図
図20図19に示すカートの要部を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0036】
<実施形態1>
本発明の貯蔵庫の第1の実施形態として再加熱カートユニット10を例示する。この再加熱カートユニット10(以下、単に「ユニット10」と呼ぶ場合がある)は、いわゆるニュークック・チルシステムに用いられるものであり、具体的には、急速冷却後に食器に盛付けられた状態の料理等を、チルド保存して定められた時間等に再加熱することが可能な再加熱機器である。本実施形態のユニット10は、図1および図2に示すように、食器に盛り付けられた料理を収容してその料理を保温・保冷可能な断熱性を有するカート12と、そのカート12を格納可能でカート12内に温風および冷風を循環させるステーション14と、からなる。そして、再加熱後は、カート12をステーション14から取り出して運搬・配膳することができる構成とされている。以下に、本実施形態の再加熱カートユニット10について、概略的な構成を、図1から図6を参照しつつ説明する。なお、図面には、符号F,B,L,R,U,Dを用いて方向を示しており、それぞれ、カート12がステーション14に格納された状態において本ユニット10を正面から視たときの手前側(前側),奥側(後側),左側,右側,上側,下側を表している。
【0037】
カート12は、図3および図4に示すように、複数のトレイTをセット可能なフレームカート16と、そのフレームカート16を内部に収納可能な概して箱状の断熱カート18と、からなる。フレームカート16は、図5に示すように、ベース20と、そのベース20左右の側縁から立設する一対のサイドフレーム21と、ベース20に設けられた車輪22と、ベース20の底面に設けられて当該フレームカート16の移動を禁止するためのロック機構23と、を備える。また、フレームカート16は、一対のサイドフレーム21の左右方向における中央に、前後方向においてベース20と略同じ寸法で立設する断熱性を有する仕切壁24を備えている。その仕切壁24は、前後方向に長手状のセパレータ25が積み上げられて形成されている。そして、このフレームカート16は、上下に並んだ2つのセパレータ25の間に、トレイTを挿入可能とされている。また、前方および後方の両者から、トレイTを挿入可能とされている。なお、一対のサイドフレーム21には、複数のトレイガイド21aが、中央に向かって張り出した状態で設けられており、そのトレイガイド21aおいて、トレイTの左右の両端を支持するようになっている。このような構成により、フレームカート16は、複数のトレイTを、前方側と後方側の各々において、上下複数段にわたってセット可能なものとされている。
【0038】
断熱カート18は、図3および図4に示すように、前方および後方に開口する概して矩形状の断熱箱体30と、断熱箱体30の前後の開口を開閉する断熱扉31と、断熱箱体30の底面に設けられた車輪32と、断熱箱体30の底面に設けられて当該断熱カート18の移動を禁止するためのロック機構33と、を備えている。断熱扉31は、観音開き式のものである。断熱カート18は、前方の断熱扉31の脇に、使用者が運搬等を行う際に把持することが可能なグリップ34,35が設けられている。また、断熱カート18は、前方の断熱扉31を開いて、この前方側の開口から上述したフレームカート16を出し入れ可能となっている。なお、フレームカート16が断熱カート18内に収納されると、断熱箱体30内がフレームカート16の仕切壁24によって左右に仕切られて、2つの収容室である第1収容室R1および第2収容室R2が区画形成されるようになっている。
【0039】
断熱カート18は、ステーション14との間で、空気(温風および冷風)の受け渡しが行われるようになっている。具体的には、断熱箱体30は、図3に示すように、天面部30aに、上方に開口する吸気口36A,36Bおよび排気口37A,37Bを有している。また、断熱箱体30は、図6に示すように、断熱箱体30の両側の側壁部30b,30cの各々に、吸気口36A,36Bから各収容室R1,R2に空気を案内する空気供給路38A,38Bが形成されている。なお、断熱箱体30は、外箱と内箱との間に断熱材としてメラミンフォームやウレタンフォーム等の発泡材が充填された構成のものであるが、側壁部30b,30cは、内側に間隔を空けて設けられたダクト部材39も含んで構成されており、空気供給路38A,38Bは、ダクト部材39と内箱との間に形成されている。そして、吸気口36A,36Bから吸い込まれて空気供給路38A,38Bを流れる空気は、ダクト部材39に形成された複数の長孔からなる吹出口39a(図1参照)から、各収容室R1,R2内に吹き出される。一方、各収容室R1,R2内の空気は、天面部30aを厚み方向に貫通形成された排気口37A,37Bに向かって流れることになる。
【0040】
ステーション14は、図1に示すように、前方視で門型に開口するカート格納部40aを有する本体部40を主体として構成され、上記カート12をカート格納部40aに対して前方側から出し入れ可能とされている。ステーション14は、図2に示すように、本体部40の上側に一対のサイドパネル41とフロントパネル42とを備え、それらによって形成される機械室R3を有するものとなっている。機械室R3には、冷凍サイクル式の冷却ユニット44の一部,加湿装置45,コントロールボックス46が配されている。冷却ユニット44は、後に詳しく説明するが、圧縮機50と、凝縮器51aと凝縮器ファン51bとからなる凝縮器ユニット51と、2つの冷却器52A,52Bと、を含んで構成される。
【0041】
本体部40は、カート格納部40aの上方に、ディスプレイ47を有するディスプレイパネル48が配されている。このディスプレイ47は、本ユニット10における各種情報が表示される表示部47a(表示パネル)を含み、例えば、庫内の温度や運転状態を示す情報等が表示される。また、ディスプレイ47は、使用者が本ユニット10を操作する操作部47bを含み、例えば、運転に関する各種設定の入力や運転指示などを行うことが可能とされている。
【0042】
図6に示すように、ステーション14は、ディスプレイパネル48で覆われた部分に、つまり、カート格納部40aと機械室R3との間に、左右に並んで2つの熱交換室R4,R5を有している。第1熱交換室R4には、第1冷却器52Aが収容され、第2熱交換室R5には、第2冷却器52Bが収容されている。第1冷却器52Aおよび第2冷却器52Bは、冷媒管や開閉弁を介して圧縮機50や凝縮器51aと並列接続されているその開閉弁を切り替えられることにより、2つの冷却器52A、52Bに対する冷媒の供給が制御される。つまり、本ユニット10は、第1冷却器52Aと第2冷却器52Bとが両方作動している状態、第1冷却器52Aのみが作動している状態、第2冷却器52Bのみが作動している状態を、切り替えることができるようになっている。
【0043】
また、第1熱交換室R4には、ヒータ54が収容されており、第1熱交換室R4内の空気を加熱することも可能とされている。さらに、この第1熱交換室R4内の空気は、加湿装置45によって、加湿することも可能とされている。加湿装置45は、湯沸かしタンク45aを主体とするもので、給水した水を沸騰させ、それによる蒸気を、スチームパイプ45bを介して第1熱交換室R4に供給することで、第1熱交換室R4内の空気を加湿するようになっている。
【0044】
第1熱交換室R4および第2熱交換室R5には、第1循環ファン55A,第2循環ファン55Bが収容されている。これら第1循環ファン55A,第2循環ファン55Bは、下方側から空気を吸い込んで、後方側に配された第1冷却器52A,第2冷却器52B側に空気を送り出すことで、連結されたカート12の収容室R1,R2との間で、空気を循環させるものである。以下に、ステーション14とカート12との間で空気を循環させる構造について説明する。
【0045】
ステーション14は、図6に示すように、第1熱交換室R4および第2熱交換室R5の下方に、それぞれに連通する排気ダクト56A,56Bと、吸気ダクト57A,57Bと、を備えている。これら4本のダクト56A,56B,57A,57Bは、ゴム等の弾性材によって蛇腹状に形成された部材であり、上下方向に伸縮可能なものとされている。ステーション14内にカート12が格納されると、排気ダクト56A,56Bの直下に、断熱カート18の吸気口36A,36Bが位置するとともに、吸気ダクト57A,57Bの直下に、断熱カート18の排気口37A,37Bが位置することとなる。
【0046】
ステーション14は、4本のダクト56A,56B,57A,57Bを伸縮させる伸縮機構58を有している。その伸縮機構58は、レバー58a(図2参照)が回動させられることで、4本のダクト56A,56B,57A,57Bを保持したダクト保持部材58bを昇降させて、4本のダクト56A,56B,57A,57Bを伸縮させるものとされている。つまり、使用者は、カート12をステーション14内に格納した後、レバー58aを回動させ、4本のダクト56A,56B,57A,57Bを伸長させて、それら4本のダクト56A,56B,57A,57Bの下端を下降させる。それにより、4本のダクト56A,56B,57A,57Bの下端は、吸気口36A,36Bおよび排気口37A,37Bを覆う状態で、断熱カート18の天面部30aに接することになり、カート12とステーション14とが連結された状態となるのである。
【0047】
カート12とステーション14とが連結された状態で、第1循環ファン55Aが作動させられると、第1熱交換室R4の空気は、第1排気ダクト56Aからカート12の第1吸気口36A,第1空気供給路38Aを介して第1収容室R1に送られ、その第1収容室R1の空気は、第1排気口37Aから第1吸気ダクト57Aを介して、第1熱交換室R4に戻される。そして、第1熱交換室R4は、第1冷却器52Aによって内部の空気を冷却すること、あるいは、ヒータ54および加湿装置45によって内部の空気を加熱・加湿することが可能とされており、第1熱交換室R4から冷風あるいは温風が送られる第1収容室R1は、冷蔵室あるいは温蔵室として機能する。
【0048】
また、同様に、第2循環ファン55Bが作動させられると、第2熱交換室R5の空気は、第2排気ダクト56Bからカート12の第2吸気口36B,第2空気供給路38Bを介して第2収容室R2に送られ、その第2収容室R2の空気は、第2排気口37Bから第2吸気ダクト57Bを介して、第2熱交換室R5に戻される。この第2熱交換室R5は、第2冷却器52Bによって空気を冷却することが可能とされており、第2熱交換室R5から冷風が送られる第2収容室R2は、冷蔵室として機能する。
【0049】
以上のように構成された本実施形態の再加熱カートユニット10は、コントロールボックス46内に収容された制御装置によって制御される。例えば、使用者は、急速冷却した料理を食器に盛付けて各トレイTに載置する。トレイTの一方には温食が、他方には冷食が載置される。その複数のトレイTを収容したカート12をステーション14に格納し、それらカート12とステーション14とを互いに連結する。そして、使用者は、例えば、設定された時刻(配膳時刻)にトレイTに載置した料理を食事できる状態とすべく、ディスプレイ47から運転の設定と開始操作を行う。
【0050】
本ユニット10におけるその運転では、制御装置は、まず、料理を再加熱し始める直前となるまでは、トレイT上の料理をチルド保存するチルド運転を行う。つまり、冷却ユニット44を制御して、第1収容室R1および第2収容室R2の両者がチルド保冷される。そして、設定された時間になると、ヒータ54および加湿装置45を制御して第1収容室R1を加熱するとともに乾燥防止のために加湿する再加熱運転を行い、第2収容室R2に対しては、チルド保冷の設定温度より温度を上昇させ、冷食用の温度に保冷する保冷運転を行う。そして、第1収容室R1に収容されている料理の再加熱が完了すると、第1収容室R1に対しては、加湿装置45を制御して、料理の乾燥等を防ぐための蒸らし運転を行う。そして、使用者は、運転を停止してカート12とステーション14との連結を解除し、カート12をステーション14から取り出して、配膳を行うことができる。
【0051】
上述したように、本ユニット10においては、カート12内において、第1収容室R1に対する加熱運転と、第2収容室R2に対する保冷運転とが同時に行われる場合がある。そのため、第1収容室R1と第2収容室R2との間の断熱性の向上が望まれる。本実施形態の再加熱カートユニット10は、第1収容室R1と第2収容室R2との間の断熱性を向上させるべく、カート12の内部、詳しく言えば、断熱箱体30の内部を2つの収容室R1,R2に区画する仕切壁24に特徴を有するものとなっている。以下に、仕切壁24の構造について、図7図17を参照しつつ詳しく説明する。
【0052】
仕切壁24は、前述するとともに図7に示すように、複数のセパレータ25が積み上げられて形成され、上下に並んだ2つのセパレータ25の間に、トレイTを挿入するためのトレイ溝24aが形成されている。なお、トレイTは、第1トレイ部Ta(図3等において第1収容室R1に収容されている部分)と、第2トレイ部Tb(図3等において第2収容室R2に収容されている部分)とが、連結部(トレイTの中間部、図13参照)Tcにおいて左右に繋がれた形状のものとされている。トレイTは、連結部Tcにおいて断面山型形状となっており、この連結部Tcを、トレイ溝24aに挿入可能とされている。
【0053】
各セパレータ25は、図8および図9に示すように、前後方向に長手状の部材であり、前後方向において対称形状のものとなっている。各セパレータ25の前方側の部分および後方側の部分は、前方側,後方側の各々から挿入されたトレイTの連結部Tcが重なって、トレイTを支持するトレイ支持部60,61とされている。それらトレイ支持部60,61の中間部(当該セパレータ25の前後方向中央部である)62は、トレイ支持部60,61の上面より上方側に延び出した形状とされている。この中間部62の上面には、矩形状の凸所63が形成され、中間部62の下面には、矩形状の凹所64が形成されている。この中間部62の凸所63に、上側のセパレータ25の凹所64を嵌め入れるようにして、複数のセパレータ25が積み上げられている。このように、積み上げられたセパレータ25間においては、下側のセパレータ25の中間部62の上面と、上側のセパレータ25の中間部62の下面とが接することで、セパレータ25同士の間隔が規定される。つまり、仕切壁24のトレイ溝24aの上下方向の隙間寸法が規定されることとなる。また、凸所63および凹所64が矩形状とされていることで、積み上げられたセパレータ25の間で、前後方向および左右方向にズレが生じることもない。
【0054】
仕切壁24の最上端は、図7に示すように、最上段セパレータ65によって形成されている。この最上段セパレータ65は、下側部分は、セパレータ25の下側部分と同一構造のものであるが、上面が平面状に形成されている。つまり、最上段セパレータ65には、下面に凹所64が形成されており、セパレータ25の上側に積み上げられている。
【0055】
これら積み上げられた複数のセパレータ25および最上段セパレータ65は、図7に示すように、上下方向に延びる一対の柱部材66によって左右から挟み込むように固定されている。詳しくは、一対の柱部材66は、セパレータ25および最上段セパレータ65の前後方向中央を挟み込んでいる。各柱部材66は、1枚の板金から形成されている。また、各柱部材66は、柱状をなす柱本体部66aと、上下方向に等間隔で設けられて柱本体部66aから前後に張り出した複数の前後フランジ部66bと、柱本体部66aの上端から上方に張り出した上側フランジ部66cと、を有する。複数の前後フランジ部66bは、各セパレータ25に対応して設けられたものであり、それぞれ、セパレータ25の側面に固定される。また、上側フランジ部66cは、最上段セパレータ65の側面に固定される。上述したように、柱部材66は、1枚の板金から形成されているため、セパレータ25の間隔を一定にとするとともに、料理が載せられた複数のトレイTをセットしても、その重量による上下方向の変形も抑えることができ、トレイ溝24aの隙間寸法が変化してトレイTの挿抜が困難になるような事態を回避することができる。また、セパレータ25同士の前後左右のズレをより確実に抑えることができる。なお、各柱部材66の下端は、図7に示す直角三角形状のブラケット部材67によって、ベース20に固定されており、左右方向の傾斜が抑制されている。
【0056】
図10に示すように仕切壁24と一対のサイドフレーム21の間には、一対のアーム部材68が渡されている。このアーム部材68は、内側の端部が柱部材66における柱本体部66aの上端に固定され、外側の端部がサイドフレーム21に固定された最上段のトレイガイド21aの下面に固定されていることで、仕切壁24と各サイドフレーム21との間隔を保持するものとなっている。このアーム部材68の存在により、仕切壁24が左右方向に倒れることを防止することができる。さらに言えば、仕切壁24に固定された柱部材66の上端において各サイドフレーム21との間隔を定めていることで、仕切壁24全体において、サイドフレーム21との間隔を一定にすることができ、左右方向に延びる部材が少なく、カート12内における下方から上方に向かう空気の流れ(断熱カート18の排気口37A,37Bに向かう空気の流れ)を阻害しないようになっている。また、アーム部材68は、空気の流れを阻害しないよう、枠状の部材とされている。
【0057】
図8および図9に示すように、セパレータ25は、大まかには、セパレータ本体(仕切壁本体)70と、2つのスライダ71と、からなる。セパレータ本体70は、下方に開口形成された2つのスライダ収容部70aにおいて2つのスライダ71を収容した状態で、上下方向にスライド移動可能に保持している。後に詳しく説明するが、スライダ71は、下方に向かって付勢されており、トレイTが挿入されていない状態においては、下側のセパレータ25の上面に当接し、トレイTが挿入されている状態においては、トレイTの連結部Tcの上面に当接している。つまり、セパレータ25において、トレイ支持部60,61の上面部60a,61aが、トレイ溝24aの下面を形成するトレイ溝下面部であり、スライダ71の下面部71aが、トレイ溝24aの上面を形成するトレイ溝上面部である。なお、セパレータ25の後方側の構造は、前方側の構造と同一であるため、以下の説明においては、セパレータ25の前方側を用いて説明を行うこととする。
【0058】
セパレータ本体70におけるトレイ支持部60,61を形成する部分は、正面視で概して山型形状とされている。その山型の頂点に沿って、トレイTの下面に当接する下面側パッキン72が配されている。その下面側パッキン72は、ゴム製のものであり、図11および図12に示すように、断面台形で筒状のものとされている。詳しく言えば、下面側パッキン72は、上底部(上面部)72aと、下底部(底面部)72bと、それらの左右方向に両端部をそれぞれ繋ぐ一対の側面部72cと、からなる。そして、上底部72aの上面には、左右方向に間隔を空けて、前後方向に延びて断面半円状とされた2本の突条72dが形成されている。また、下底部72bの上面(下面側パッキン72の内部)には、前後方向に延びて他の部分よりも厚みが大きな肉厚部72eが形成されている。肉厚部72eは、断面半円状の突条であり、左右方向に間隔を空けて2本形成されている。
【0059】
トレイ支持部60,61の上面部60a,61aは、上記の下面側パッキン72を収容する下面側パッキン収容部73を有している。この下面側パッキン収容部73は、上方に開口する溝状のものであり、下面側パッキン72の下底部72bと一対の側面部72cとの内面が接し、上方の開口から2本の突条72dのみが突出する状態で、下面側パッキン72を収容するものとなっている。つまり、下面側パッキン収容部73は、上方側ほど左右方向の間隔が狭くなる形状とされており、下面側パッキン72の一対の側面部72cと面で接する傾斜内壁面73aを有している。
【0060】
トレイ溝24aの下面部であるセパレータ25(トレイ支持部60,61)の上面部60a,61aが、上記のような構成とされていることで、図13に示すように、トレイ溝24aにトレイTが挿入された状態において、そのトレイTの連結部Tcにおける下面に、2本の突条72dが接することとなる。そして、それら2本の突条72dの間には、空間が形成されることになる。したがって、トレイTの下側で、2つの収容室R1,R2との間に空気層が形成されるため、2つの収容室R1,R2の間における空気(熱)の移動を抑制することができ、2つの収容室R1,R2の断熱性を向上させることができる。また、トレイT上に載置したものの重量によって、トレイTに左右方向の反り(連結部Tcを基点に第1トレイ部Taと第2トレイ部Tbが下側へ撓むこと)が生じた場合であっても、2本の突条72dの各々が前後方向に延びるライン状にトレイTの連結部Tcの裏面に接することができるため、確実に空気層を形成して、断熱性の向上を図ることができる。
【0061】
この際、下面側パッキン72が断面台形状の筒状で、かつ、下面側パッキン収容部73の傾斜内壁面73aの存在によって、下面側パッキン72は、一対の側面部72cの上端が互いに接近する方向に弾性変形することになる。つまり、下面側パッキン72は安定して変形すること、詳しく言えば、2本の突条72dが下方に沈むように変形することが可能となり、2本の突条72dとトレイTの連結部Tcの裏面との密着性を高めることができる。
【0062】
また、下面側パッキン72は、筒状のされた内部に、肉厚部72eが形成されているため、前後方向の剛性が高められている。例えば、トレイTを挿入する際に、トレイTが下面側パッキン72に引っ掛かったり、吸着したりして、下面側パッキン72が前後方向に収縮してしまうような事態を回避することができる。
【0063】
次に、セパレータ25におけるスライダ71の保持構造について詳しく説明する。図13に示すように、スライダ収容部70a内におけるセパレータ本体70とスライダ71の上面との間に、ゴム製の介装パッキン74が配されている。この介装パッキン74は、前後方向に延びる円筒状のものである。その外径は、スライダ71の左右方向の幅より十分に小さく、上下方向につぶれた状態であっても、スライダ71の左右方向の幅より小さい。より詳しく言えば、スライダ71には、上面における左右方向の両端から立設する一対の立壁部71bを有しており、つぶれた状態の介装パッキン74は、それら一対の立壁部71bの内寸よりも小さくされている。また、介装パッキン74は、前後方向に間隔をおいて上方に突出形成された複数の係合部74aを有しており、それら複数の係合部74aにおいて、セパレータ本体70に固定されている。さらに、介装パッキン74は、複数の係合部74aとは反対側の下側に、周方向に間隔を空けて前後方向に延びる2本の突条74bが形成されている。
【0064】
なお、トレイTがトレイ溝24aに挿入されていない状態においても、スライダ71の下面は、下段のセパレータ25の下面側パッキン72の2本の突条72dに接して、介装パッキン74は、収縮した状態とされている。つまり、セパレータ25は、介装パッキン74によって常時下方に向かって付勢されている。したがって、本実施形態においては、図14に示すように、トレイTが挿入されていない状態において、スライダ71を下段のセパレータ25の下面側パッキン72の2本の突条72dに対して密着させることができるため、2つの収容室R1,R2の間に空気層が確実に形成され、2つの収容室R1,R2の断熱性を高めることができる。また、トレイTがトレイ溝24aに挿入されている状態においては、スライダ71をトレイTの上面に確実に密着させるとともに、トレイTの下面を、下段のセパレータ25の下面側パッキン72の2本の突条72dに対する密着力を高めることができる。
【0065】
また、介装パッキン74は、セパレータ本体70に対して上部において固定されていることで、介装パッキン74が左右にずれることがない。例えば、介装パッキン74が左右にずれると、スライダ71の立壁部71bに当接して変形が妨げられたり、スライダ収容部70a内で左右方向における位置が偏って、スライダ71が左右方向に傾斜してしまったりする虞がある。本実施形態によれば、介装パッキン74の左右方向の位置ズレが生じることがなく、また、介装パッキン74の左右に介装パッキン74がつぶれる変形を許容するスペースが確保されており、介装パッキン74を安定して変形させることができる。ひいては、トレイTの挿抜を安定して行うことができる。
【0066】
さらに、介装パッキン74は、下方に2本の突条74bが形成されていることで、介装パッキン74とスライダ71の上面との間で、2本の突条74bの間に、前後方向に延びる空気層が形成される。そのため、スライダ収容部70a内において、左右の空間の断熱性を高めることができ、ひいては、2つの収容室R1,R2の断熱性を向上させることができる。
【0067】
なお、第1収容室R1が加熱(保温)され、第2収容室R2が冷却(保冷)されている場合、介装パッキン74は、第2収容室R2側(図13における右側)の冷却された温度によって、第1収容室R1側の温度より低くなり、加熱された空間に面している部分(図13における左側の面)に結露が生じやすい。そして、その結露水は、スライダ71の上面に滴下することになる。本実施形態においては、一対の立壁部71bの存在により、結露水がスライダ71の上面において前後方向に流され、結露水がスライダ71の側面をつたってトレイTの上に滴下するような事態を回避することができる。
【0068】
図11に示すように、スライダ71の前端には、前方に向かって突出する突出部71cが形成されている。セパレータ本体70の前方側の端面には、切欠70bが形成されており、図14および図15に示すように、スライダ71の突出部71cは、その切欠70bからセパレータ本体70の前端面より前方に突出する状態となっている。この突出部71cは、下縁が、前方ほど上方に傾斜する形状とされている。これにより、トレイTを挿入する際に、トレイTが突出部71cによって、トレイ溝24aに案内され、トレイTをトレイ溝24aに挿入し易くなっている。なお、この突出部71cは、2枚の断熱扉31の裏面側に設けられた扉側パッキン31aに挟まれた状態となり、図14および図15に示すように、側面視で扉側パッキン31aと突出部71cとが重なることになる。つまり、本実施形態においては、フレームカート16が収容された断熱箱体30と断熱扉31との間に、第1収容室R1と第2収容室R2とが連通する隙間がなく、2つの収容室R1,R2の断熱性をより高めることができる。
【0069】
セパレータ25において、トレイ支持部60,61の上面部60a,61aは、下面側パッキン収容部73を有して概して山型形状とされている。その山型形状とされた部分の左右方向における両脇には、図11に示すように、概して水平に延びて上方を向く面75が形成されている。これらの面75は、図16に示すようにそれぞれ、挿入されたトレイTの第1トレイ部Taと第2トレイ部Tbの各々の下面に接して、トレイTを支持するトレイ支持面として機能する部分である。また、このトレイ支持面75の前方で、セパレータ25の前端には、トレイ支持面75より上方に膨らんだ凸部76が形成されている。
【0070】
図17に示すように、トレイTをトレイ溝24aに挿入する最中には、トレイTは、第1トレイ部Taと第2トレイ部Tbの各々の下面の手前側において、凸部76が当接することになる。一方、トレイTの挿入方向における前側(奥側)は、上述したスライダ71によって下方に押し付けられる。それにより、挿入中のトレイTは、挿入方向前側に向かって下降傾斜する姿勢となる。つまり、挿入中のトレイTは、トレイTの連結部Tcの挿入方向前端Tc1において下面側パッキン72に点で接するとともに、挿入方向後端において、凸部76に点で接することとなる。したがって、本実施形態によれば、トレイTを水平に挿入して突条72dにライン状に接する場合に比較して、トレイTの挿抜時の抵抗を低減することができ、トレイTの挿抜が行い易いようになっている。
【0071】
以上のように、本実施形態のユニット10は、カート12内の2つの収容室R1,R2の間の断熱性が高く、第1収容室R1の加熱と第2収容室R2の冷却とを同時に行う場合に、効率的に行うことが可能とされている。
【0072】
<実施形態2>
図18に示す第2の実施形態の貯蔵庫100は、上記実施形態1の貯蔵庫10に対して、より断熱性を高めることが可能である。第2の実施形態の貯蔵庫100は、セパレータ102の構造が、第1の実施形態の貯蔵庫10のセパレータ25と相違する。なお、第2の実施形態の貯蔵庫100は、セパレータを除いて、第1の実施形態の貯蔵庫10と同一であるため、それら同一の部材等については、同一の符号を用い、その説明は省略する。
【0073】
本実施形態の貯蔵庫100におけるセパレータ102は、実施形態1に係るセパレータ25と同様に、セパレータ本体103と、2つのスライダ104と、を主体として構成される。そのスライダ104は、実施形態1に係るスライダ71とは異なり、下面側に前後方向に延びるスライダパッキン105を備えている。このスライダパッキン105は、先端ほど互いに接近するように湾曲した薄板状の2枚のヒレ部105aを有している。そして、このスライダパッキン105は、スライダ本体106に対して、これら2枚のヒレ部105aの先端が、下面106aから僅かに突出した状態で固定されている。
【0074】
上記のような構成により、トレイ溝24aにトレイTが挿入された状態において、そのトレイTの連結部Tcにおける上面に、スライダ本体106の下面とともにスライダパッキン105の2本のヒレ部105aの先端が接することとなる。そして、それら2本のヒレ部105aの間には、空間が形成される。したがって、トレイTの上側で、2つの収容室R1,R2との間に空気層が形成されるため、2つの収容室R1,R2の間における空気(熱)の移動を抑制することができ、2つの収容室R1,R2の断熱性を向上させることができる。なお、トレイTが挿入されていない状態においても、下段のセパレータ102の上方に設けられた下面側パッキン72に、スライダパッキン105の2本のヒレ部105aの先端が接するため、2つの収容室R1,R2の間に空気層が形成され、2つの収容室R1,R2の断熱性を高めることができる。
【0075】
<実施形態3>
実施形態1の貯蔵庫10は、カート12がフレームカート16と断熱カート18とからなり、フレームカート16を断熱カート18内に収容するものとされていた。それに対して、第3の実施形態の貯蔵庫が備えるカート120は、図19に示すように、断熱箱体122内に、仕切壁124が固定された構成のもの、いわゆるトロリータイプのものとされている。なお、図19には、断熱扉を取り除いた状態を図示している。
【0076】
カート120の断熱箱体122は、実施形態1に係る断熱カート18の断熱箱体30と類似の構造を有するものであり、ステーション14との間で空気の受け渡しを行うため、天面部122aに2つの吸気口と2つの排気口126A,126Bが設けられるとともに、側壁部122bに吸気口から吸い込んだ空気を収容室R1,R2に吹き出すための吹出口122b1が形成されている。なお、本実施形態のカート120は、断熱箱体122の一対の側壁部122bの一方(右側のもの)の外側に、使用者が引き易いように、レバー127が設けられている。
【0077】
本実施形態におけるカート120においても、仕切壁124は、実施形態1における仕切壁と同様に、セパレータ124a(実施形態1のセパレータ25と同一)と最上段セパレータ124b(実施形態1の最上段セパレータ65とは上下方向の寸法のみ異なる)とが同様に積み上げられた構成のものとなっている。また、それらセパレータ124aおよび最上段セパレータ124bは、第1実施形態と同様に、一対の柱部材128によって左右から挟まれた状態で固定されている。そして、本実施形態においては、仕切壁124は、断熱箱体122内の天面部122aと底面部122cとに固定されている。仕切壁124の底面部122cへの固定は、実施形態1と同様であり、柱部材128がブラケット部材67(図19においては図示省略)によって固定される構成となっている。
【0078】
次に、仕切壁124の天面部122aへの固定構造について説明する。断熱箱体122には、天面部122aの下面における左右方向中央に天面ブラケット130が固定されている。この天面ブラケット130は、下方に開口する概して箱状のものとされ、最上段セパレータ124bの上側部分を収容する状態で、天面部122aに固定されている。また、本実施形態においては、図20に示すように、柱部材128の最上段のフランジ部128aは、最上段セパレータ124bとの間に天面ブラケット130を介装する状態で、共締めされている。
【0079】
仕切壁124が、複数のセパレータ124a,124bが積み上げられた構成とされているため、トレイTの重量によって、セパレータ124a,124bの間の間隔が変化し易いが、本実施形態においては、柱部材128と天面ブラケット130とを連結したことで、セパレータ124a,124bの間の間隔を保持し、トレイTの挿抜がし難くなるような事態を回避することができる。
【0080】
<他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0081】
上記実施形態において、下面側パッキン72は、2本の突条72dを有するものとされていたが、3本以上有していてもよい。また、介装パッキン74の突条74bの数、および、スライダパッキン105のヒレ部105aの数も同様に、3つ以上とすることもできる。
【0082】
上記実施形態において、仕切壁は、複数のセパレータ25を積み上げた構成とされていたが、それに限定されない。例えば、仕切壁は、一枚の壁面に、左右方向に横断するとともに、断熱箱体の開口側に開口するトレイ溝が形成された構成のものとすることもできる。
【0083】
上記実施形態において、第1収容室R1が温蔵室とされ、第2収容室R2が冷蔵室とされる構成とされていたが、それら2つの収容室に温度差が生じる状態、例えば、2つの収容室が冷蔵室および冷凍室として機能させされるような貯蔵庫に、本発明を採用することができる。
【0084】
上記実施形態では、貯蔵庫として再加熱カートユニットを例示し、それが備えるカートに本発明が採用されていたが、これに限定されない。本発明は、貯蔵庫として、保冷や保温のみが可能なものだけでなく、断熱箱体に調温装置を備えたものであってもよい。また、例えば、本発明は、貯蔵庫として、固定タイプの貯蔵庫に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0085】
10…再加熱カートユニット〔貯蔵庫〕、12…カート、24…仕切壁、24a…トレイ溝、25…セパレータ、T…トレイ、Tc…連結部〔中間部〕、30…断熱箱体、31…断熱扉、31a…扉側パッキン、R1…第1収容室、R2…第2収容室、60,61…トレイ支持部、60a,61a…上面部〔トレイ溝下面部〕、70…セパレータ本体〔仕切壁本体〕、70a…スライダ収容部、71…スライダ、71a…下面部〔トレイ溝上面部〕、71b…立壁部、71c…突出部、72…下面側パッキン、72a…上底部〔上面部〕、72b…下底部〔底面部〕、72c…側面部、72d…突条、72e…肉厚部、73…下面側パッキン収容部、73a…傾斜内壁面、74…介装パッキン、74a…係合部、74b…突条、75…トレイ支持面、76…凸部、100…貯蔵庫〔実施形態2〕、102…セパレータ、103…セパレータ本体〔仕切壁本体〕、104…スライダ、105…スライダパッキン
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