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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154902
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】故障評価システム及び故障評価方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20241024BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20241024BHJP
【FI】
G05B23/02 302Z
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069118
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】窪岡 史章
【テーマコード(参考)】
3C223
5L049
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA11
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223FF33
3C223FF41
3C223FF52
3C223FF53
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH22
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】 プラントに含まれる機器の故障状態を実物に即して精度よく把握する。
【解決手段】 故障評価システム10は、プラント100に含まれる機器110の故障状態を評価するシステムであって、機器110に対して設置された監視装置20による自動的な監視に基づく当該機器110の故障回数である第1の回数を取得する第1取得部11と、機器110に対する点検員による点検に基づく当該機器110の故障回数である第2の回数を取得する第2取得部12と、第1取得部11によって取得された第1の回数、及び第2取得部12によって取得された第2の回数に基づいて機器110の故障状態を評価する評価部13とを備える。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに含まれる機器の故障状態を評価する故障評価システムであって、
前記機器に対して設置された監視装置による自動的な監視に基づく当該機器の故障回数である第1の回数を取得する第1取得手段と、
前記機器に対する点検員による点検に基づく当該機器の故障回数である第2の回数を取得する第2取得手段と、
前記第1取得手段によって取得された第1の回数、及び前記第2取得手段によって取得された第2の回数に基づいて前記機器の故障状態を評価する評価手段と、
を備える故障評価システム。
【請求項2】
前記評価手段は、前記第1の回数と前記第2の回数とを比較して、前記機器の故障状態を評価する請求項1に記載の故障評価システム。
【請求項3】
前記第1の回数及び前記第2の回数のうち、一方は複数の機器毎の故障回数であり、もう一方は当該複数の機器をまとめた単位での故障回数であり、
前記評価手段は、前記複数の機器毎の故障回数を合計した回数と、前記複数の機器をまとめた単位での故障回数とを比較して、前記機器の故障状態を評価する請求項2に記載の故障評価システム。
【請求項4】
前記第1の回数及び前記第2の回数のうち、少なくとも一方は複数の機器をまとめた単位での故障回数であり、
前記評価手段は、前記複数の機器をまとめた単位での故障回数に基づく、当該複数の機器毎への故障回数の割り振りを行って、当該複数の機器毎の故障状態を評価する請求項1~3の何れか一項に記載の故障評価システム。
【請求項5】
プラントに含まれる機器の故障状態を評価する故障評価システムの動作方法である故障評価方法であって、
前記機器に対して設置された監視装置による自動的な監視に基づく当該機器の故障回数である第1の回数を取得する第1取得ステップと、
前記機器に対する点検員による点検に基づく当該機器の故障回数である第2の回数を取得する第2取得ステップと、
前記第1取得ステップにおいて取得された第1の回数、及び前記第2取得ステップにおいて取得された第2の回数に基づいて前記機器の故障状態を評価する評価ステップと、
を含む故障評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントに含まれる機器の故障状態を評価する故障評価システム及び故障評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラント監視制御装置が、プラントに含まれる機器から収集したプラント信号を分析して、異常を判定することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6177113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術のようにプラントに含まれる機器に対する監視装置による自動的な監視だけでは、必ずしも機器の故障状態を実物に即して精度よく把握することができない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、プラントに含まれる機器の故障状態を実物に即して精度よく把握することができる故障評価システム及び故障評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る故障評価システムは、プラントに含まれる機器の故障状態を評価する故障評価システムであって、機器に対して設置された監視装置による自動的な監視に基づく当該機器の故障回数である第1の回数を取得する第1取得手段と、機器に対する点検員による点検に基づく当該機器の故障回数である第2の回数を取得する第2取得手段と、第1取得手段によって取得された第1の回数、及び第2取得手段によって取得された第2の回数に基づいて機器の故障状態を評価する評価手段と、を備える。
【0007】
本発明に係る故障評価システムでは、監視装置による自動的な監視に基づく第1の回数に加えて、点検員による点検に基づく第2の回数に基づいて、機器の故障状態が評価される。その結果、本発明に係る故障評価システムによれば、プラントに含まれる機器の故障状態を実物に即して精度よく把握することができる。
【0008】
評価手段は、第1の回数と第2の回数とを比較して、機器の故障状態を評価することとしてもよい。この構成によれば、適切かつ確実に機器の故障状態を評価することができる。
【0009】
第1の回数及び第2の回数のうち、一方は複数の機器毎の故障回数であり、もう一方は当該複数の機器をまとめた単位での故障回数であり、評価手段は、複数の機器毎の故障回数を合計した回数と、複数の機器をまとめた単位での故障回数とを比較して、機器の故障状態を評価することとしてもよい。この構成によれば、第1の回数及び第2の回数が上記の場合に、適切かつ確実に機器の故障状態を評価することができる。
【0010】
第1の回数及び第2の回数のうち、少なくとも一方は複数の機器をまとめた単位での故障回数であり、評価手段は、複数の機器をまとめた単位での故障回数に基づく、当該複数の機器毎への故障回数の割り振りを行って、当該複数の機器毎の故障状態を評価することとしてもよい。この構成によれば、第1の回数及び第2の回数が上記の場合に、適切かつ確実に機器の故障状態を評価することができる。
【0011】
ところで、本発明は、上記のように故障評価システムの発明として記述できる他に、以下のように故障評価方法の発明としても記述することができる。これらはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0012】
即ち、本発明に係る故障評価方法は、プラントに含まれる機器の故障状態を評価する故障評価システムの動作方法である故障評価方法であって、機器に対して設置された監視装置による自動的な監視に基づく当該機器の故障回数である第1の回数を取得する第1取得ステップと、機器に対する点検員による点検に基づく当該機器の故障回数である第2の回数を取得する第2取得ステップと、第1取得ステップにおいて取得された第1の回数、及び第2取得ステップにおいて取得された第2の回数に基づいて機器の故障状態を評価する評価ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プラントに含まれる機器の故障状態を実物に即して精度よく把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る故障評価システムの構成を示す図である。
図2】比較される第1の回数と第2の回数との例を示す表である。
図3】比較される第1の回数と第2の回数との別の例を示す表である。
図4】算出される機器毎の故障回数の例を示す表である。
図5】故障回数から故障発生状況ランクを決定するための情報の例である。
図6】本発明の実施形態に係る故障評価システムで実行される処理である故障評価方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面と共に本発明に係る故障評価システム及び故障評価方法の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に本実施形態に係る故障評価システム10を示す。故障評価システム10は、プラント100に含まれる機器(プラント100内に設置されてプラント100を構成する機器、プラント100において用いられる機器)110の故障状態を評価するシステム(装置)である。対象となるプラント100は、何らかの機器110が用いられる工場、施設等である。プラント100に含まれる機器110は、複数であってもよい。この場合、故障評価システム10は、機器110毎に故障状態を評価する。対象となるプラント100、及びプラント100に含まれる機器110は、従来のものでよい。
【0017】
プラント100は、具体的には例えば、水処理プラントである。この場合、プラント100に含まれる機器110は、具体的には例えば、ポンプ、弁及びスクリーンである。また、所定の複数の機器110は、1つの設備120を構成していてもよい(1つの設備120に含まれていてもよい)。例えば、ポンプ、弁及びスクリーンは、主ポンプ設備を構成していてもよい。
【0018】
故障評価システム10によって評価される機器110の故障状態は、例えば、予め設定された対象期間において機器110がどの程度故障しているかである。対象期間は、例えば、過去1~180か月の期間である。故障評価システム10は、例えば、上記の評価として、1~5の5段階で機器110の故障発生状況ランクを決定する。故障発生状況ランクの値が大きいほど、機器110が故障している頻度が高いことを示している。故障評価システム10による評価結果は、例えば、プラント100における機器110の入れ替えの判断に用いられる。具体的には、故障評価システム10による評価結果及びその他の要因から、機器110毎の健全度及び重要度等を考慮した総合的な評価が行われて、機器110の入れ替えの判断に用いられる。
【0019】
なお、故障評価システム10によって評価される機器110の故障状態は、機器110の故障に係る状態であれば上記以外であってもよい。また、故障評価システム10によって評価される機器110の故障状態は、上記以外の目的で用いられてもよい。
【0020】
故障評価システム10は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等のハードウェアを含むコンピュータによって構成されている。故障評価システム10の後述する各機能は、これらの構成要素がプログラム等により動作することによって発揮される。なお、故障評価システム10は、一つのコンピュータで実現されてもよいし、複数のコンピュータがネットワークにより互いに接続されて構成されるコンピュータシステムにより実現されていてもよい。また、故障評価システム10は、後述するように機器110の故障状態の評価に用いる情報の取得等のために、ネットワークを介して別の装置との間で情報を送受信する通信機能を有していてもよい。
【0021】
引き続いて、本実施形態に係る故障評価システム10の機能を説明する。図1に示すように、故障評価システム10は、第1取得部11と、第2取得部12と、評価部13とを備えて構成される。
【0022】
第1取得部11は、機器110に対して設置された監視装置20による自動的な監視に基づく当該機器110の故障回数である第1の回数を取得する第1取得手段である。
【0023】
監視装置20は、機器110の自動的な監視を行う装置(システム)である。監視装置20は、機器110の自動的な監視によって機器110の故障を検出する。監視装置20としては、従来の監視装置が用いられればよい。監視装置20による、故障の検出は、従来の監視装置と同様に行われればよい。
【0024】
例えば、監視装置20は、機器110の動作又は状態を検出する計器又はセンサを備えており、当該計器又はセンサによって得られた情報に基づいて機器110の監視を行う。また、監視装置20は、上記以外の構成によって機器110の監視を行ってもよい。監視装置20は、機器110毎、又は複数の機器110をまとめた設備120毎に監視を行う。監視装置20による監視は、常時行われてもよいし、予め設定された時間帯(例えば、機器110の稼働時)に行われてもよい。
【0025】
故障評価システム10において対象とする故障は、予め設定される故障である。例えば、故障評価システム10において対象とする故障は、プラント100の稼働に大きな支障をきたす重大な故障である重故障である。
【0026】
監視装置20は、機器110の監視結果である機器110の故障回数に係る情報を出力する。例えば、監視装置20は、監視の単位となる機器110又は設備120毎に故障を検出したら、その旨の情報を出力する。監視装置20は、通信機能を有しており、故障評価システム10との間で情報の送受信を行えるようになっていてもよい。その場合、監視装置20は、上記の情報を故障評価システム10に送信する。
【0027】
第1取得部11は、監視装置20から送信された情報を受信する。第1取得部11は、受信した情報から、監視の単位となる機器110又は設備120毎に故障の回数を、第1の回数としてカウントして取得する。第1の回数は、例えば、上記の対象期間の機器110の故障回数である。
【0028】
なお、第1取得部11は、上記以外の方法で第1の回数を取得してもよい。例えば、第1取得部11は、監視装置20から直接情報を受信するのではなく、監視装置20の監視結果を参照したプラント100の管理者等による故障評価システム10への情報の入力を受け付けて第1の回数を取得してもよい。また、第1取得部11は、第1の回数をカウントするのではなく、第1の回数を監視装置20、又はプラント100の管理者等から取得してもよい。第1取得部11は、取得した第1の回数を評価部13に出力する。
【0029】
第2取得部12は、機器110に対する点検員による点検に基づく当該機器110の故障回数である第2の回数を取得する第2取得手段である。
【0030】
本実施形態では、故障の検出は、監視装置20だけではなく、点検員による(人手による)点検によっても行われる。点検員は、点検によって機器110の故障を検出する。点検員による、故障(例えば、上記の重故障)の検出のための点検は、従来と同様に行われればよい。
【0031】
点検員は、機器110毎、又は複数の機器110をまとめた設備120毎に点検を行う。なお、監視装置20による監視の機器110の単位と、点検員による点検の機器110の単位とは、互いに異なっていてもよい。点検員による点検は、予め設定されたタイミング等に適宜行われればよい。
【0032】
点検員は、機器110の点検結果である機器110の故障回数に係る情報を故障評価システム10に伝える。例えば、点検員は、故障評価システム10との間で情報の送受信を行える通信機能を有している点検員用端末30を有している。点検員は、点検の単位となる機器110又は設備120毎に故障を検出したら、点検員用端末30を用いてその旨の情報を故障評価システム10に送信する。
【0033】
第2取得部12は、点検員用端末30から送信された情報を受信する。第2取得部12は、受信した情報から、点検の単位となる機器110又は設備120毎に故障の回数を、第2の回数としてカウントして取得する。第2の回数は、第1の回数に係る対象期間と同じ対象期間の機器110の故障回数である。
【0034】
なお、第2取得部12は、上記以外の方法で第2の回数を取得してもよい。例えば、第2取得部12は、点検員用端末30から直接情報を受信するのではなく、点検員の点検結果を参照したプラント100の管理者等による故障評価システム10への情報の入力を受け付けて第2の回数を取得してもよい。また、第2取得部12は、第2の回数をカウントするのではなく、第2取得部12を点検員用端末30、又はプラント100の管理者等から取得してもよい。第2取得部12は、取得した第2の回数を評価部13に出力する。
【0035】
上記のように第1の回数及び第2の回数のうち、一方は複数の機器110毎の故障回数であり、もう一方は当該複数の機器110をまとめた単位(例えば、設備120単位)での故障回数であってもよい。また、第1の回数及び第2の回数のうち、少なくとも一方は複数の機器110をまとめた単位での故障回数であってもよい。
【0036】
評価部13は、第1取得部11によって取得された第1の回数、及び第2取得部12によって取得された第2の回数に基づいて機器110の故障状態を評価する評価手段である。評価部13は、第1の回数と第2の回数とを比較して、機器110の故障状態を評価してもよい。評価部13は、複数の機器110毎の故障回数を合計した回数と、複数の機器110をまとめた単位(例えば、設備120単位)での故障回数とを比較して、機器110の故障状態を評価してもよい。評価部13は、複数の機器110をまとめた単位(例えば、設備120単位)での故障回数に基づく、当該複数の機器110毎への故障回数の割り振りを行って、当該複数の機器110毎の故障状態を評価してもよい。
【0037】
評価部13は、例えば、以下のように機器110の故障状態を評価する。評価部13は、第1取得部11から第1の回数を入力する。評価部13は、第2取得部12から第2の回数を入力する。
【0038】
まず、評価部13は、以下のように機器110に応じて、第1の回数と第2の回数とを比較して、機器110毎の故障回数を算出する。第1の回数と第2の回数とが何れも機器110単位で取得されている場合、評価部13は、機器110毎に第1の回数と第2の回数とを比較して、それらの回数のうち大きい値を当該機器110についての故障回数として採用する。
【0039】
図2(a)の表におけるXXポンプ、XX弁、XXスクリーンのように第1の回数(監視装置20の監視による重故障回数)と第2の回数(点検記録の重故障回数)とが同じ場合、評価部13は、第1の回数及び第2の回数の何れかを、当該機器110についての故障回数として採用する。例えば、評価部13は、第1の回数を、当該機器110についての故障回数として採用する。この場合、監視装置20による監視と、点検員による点検との両者何れも、故障の検出の取りこぼしはないと解釈する。
【0040】
図2(b)の表におけるXX弁のように第2の回数(点検記録の重故障回数)が、第1の回数(監視装置20の監視による重故障回数)よりも大きい場合、評価部13は、第2の回数を、当該機器110についての故障回数として採用する。この場合、監視装置20による監視に、故障の検出の取りこぼしがあると解釈する。
【0041】
図2(c)の表におけるXX弁のように第1の回数(監視装置20の監視による重故障回数)が、第2の回数(点検記録の重故障回数)よりも大きい場合、評価部13は、第1の回数を、当該機器110についての故障回数として採用する。この場合、点検員による点検に、故障の検出の取りこぼしがあると解釈する。
【0042】
第1の回数と第2の回数との少なくとも一方が、複数の機器110をまとめた設備120単位で取得されている場合、評価部13は、第1の回数と第2の回数との少なくとも一方について合計して、合計した値を用いて比較を行う。比較する値は、同一の複数の機器110に係る値とする。例えば、図3の各表のように第1の回数(監視装置20の監視による重故障回数)が、XXポンプ、XX弁及びXXスクリーンをまとめた主ポンプ設備についての値であり、第2の回数(点検記録の重故障回数)が、XXポンプ、XX弁及びXXスクリーン毎の値である場合、評価部13は、XXポンプ、XX弁及びXXスクリーン毎の第2の回数を合計して、合計した値と、主ポンプ設備の第1の回数とを比較する。
【0043】
評価部13は、それらの回数のうち大きい値に基づいて、当該機器110についての故障回数を算出する。それらの回数が同じ場合、評価部13は、機器110毎の回数を、当該機器110毎についての故障回数として採用する。例えば、図3(a)の表のように、主ポンプ設備の第1の回数(監視装置20の監視による重故障回数)と、XXポンプ、XX弁及びXXスクリーンの第2の回数(点検記録の重故障回数)の合計値とが同じ場合、評価部13は、機器110毎の第2の回数を、当該機器110毎についての故障回数として採用する。この場合、監視装置20による監視と、点検員による点検との両者何れも、故障の検出の取りこぼしはないと解釈する。
【0044】
機器110毎の回数の合計値が、複数の機器110をまとめた設備120単位の回数よりも大きい場合、評価部13は、機器110毎の回数を、当該機器110毎についての故障回数として採用する。例えば、図3(b)の表のように、XXポンプ、XX弁及びXXスクリーンの第2の回数(点検記録の重故障回数)の合計値が、主ポンプ設備の第1の回数(監視装置20の監視による重故障回数)よりも大きい場合、評価部13は、機器110毎の第2の回数を、当該機器110毎についての故障回数として採用する。この場合、監視装置20による監視に、故障の検出の取りこぼしがあると解釈する。
【0045】
複数の機器110をまとめた設備120単位の回数が、機器110毎の回数の合計値よりも大きい場合、評価部13は、設備120単位の回数に基づく、複数の機器110毎への故障回数の割り振りを行って、機器110毎についての故障回数を算出する。
【0046】
例えば、図3(c)の表のように、主ポンプ設備の第1の回数(監視装置20の監視による重故障回数)が、XXポンプ、XX弁及びXXスクリーンの第2の回数(点検記録の重故障回数)の合計値よりも大きい場合、評価部13は、第1の回数に基づく、複数の機器110毎への故障回数の割り振りを行う。
【0047】
例えば、評価部13は、第1の回数から第2の回数の合計値を減算した値(第1の回数と第2の回数の合計値との差分)を算出する。評価部13は、算出した差分値を、第1の回数と比較した第2の回数(合計した第2の回数)に係る機器110の数に等分して、等分した値を機器110毎の第2の回数に加算して、加算した回数を当該機器110毎についての故障回数とする。図3(c)の表の場合に算出される機器110毎の故障回数の例を図4に示す。この場合、点検員による点検に、故障の検出の取りこぼしがあると解釈する。この場合、算出される故障回数に小数点以下の値を含むことがあるが、評価部13は、端数処理を行ってもよい。例えば、評価部13は、算出した故障回数の小数点以下を切り捨ててもよい。
【0048】
なお、図3で示した例では、第1の回数が、複数の機器110をまとめた単位(設備120単位)での故障回数であり、第2の回数が、複数の機器110毎の故障回数であったが、逆に、第2の回数が、複数の機器110をまとめた単位(設備120単位)での故障回数であり、第1の回数が、複数の機器110毎の故障回数であってもよい。その場合でも、上記と同様に第1の回数と第2の回数との比較に基づく、機器110毎の故障回数を算出すればよい。
【0049】
第1の回数と第2の回数との比較に基づき機器110毎の故障回数を算出すると、評価部13は、算出した故障回数に基づいて、機器110の故障状態の評価結果である機器110毎の故障発生状況ランクを決定する。評価部13は、図5に示す、故障回数(対象期間中の重故障発生回数)から、故障発生状況ランクを決定するための情報(表)を予め記憶しておく。この情報は、故障回数の範囲毎に、故障発生状況ランクを対応付けたものである。本実施形態の例では、故障回数が大きい範囲程、故障発生状況ランクの値が大きい値となるようにする。評価部13は、機器110毎に、当該情報に基づいて算出した故障回数から故障発生状況ランクを決定する。
【0050】
評価部13は、決定した機器110毎の故障発生状況ランクを出力する。例えば、評価部13は、機器110毎の故障発生状況ランクを、上述した機器110毎の総合的な評価を行うシステム、又は故障評価システム10のユーザの端末に出力(送信)する。また、評価部13は、機器110毎の故障発生状況ランクを、故障評価システム10のユーザが認識可能な形式で出力(例えば、表示又は音声出力)してもよい。また、評価部13は、上記以外の方法で、機器110毎の故障発生状況ランクを出力してもよい。
【0051】
なお、評価部13による機器110の故障状態の評価結果は、第1の回数及び第2の回数に基づいて得られるものであれば、故障発生状況ランク以外であってもよい。評価部13による機器110の故障状態の評価の方法も、第1の回数及び第2の回数に基づいて行われれるものであれば、上記以外であってもよい。以上が、本実施形態に係る故障評価システム10の機能である。
【0052】
引き続いて、図6のフローチャートを用いて、本実施形態に係る故障評価システム10で実行される処理(故障評価システム10が行う動作方法)である故障評価方法を説明する。
【0053】
故障評価システム10では、第1取得部11によって、機器110に対して設置された監視装置20による自動的な監視に基づく当該機器110の故障回数である第1の回数が取得される(S01、第1取得ステップ)。また、第2取得部12によって、機器110に対する点検員による点検に基づく当該機器110の故障回数である第2の回数が取得される(S02、第2取得ステップ)。上記の第1取得ステップ(S01)及び第2取得ステップ(S02)は、互いに独立に行われ得るので、必ずしも上記の順番で行われる必要はない。
【0054】
続いて、評価部13によって、第1の回数及び第2の回数に基づいて機器110の故障状態が評価される(S03、評価ステップ)。例えば、上述したように機器110毎の故障発生状況ランクが決定される。続いて、評価部13によって、評価結果、例えば、機器110毎の故障発生状況ランクが出力される(S04)。本実施形態に係る故障評価システム10で実行される処理である故障評価方法である。
【0055】
点検員による点検作業結果も重要であるが、従来の方法では、それが考慮されていなかった。これに対して、本実施形態では、監視装置20による自動的な監視に基づく第1の回数に加えて、点検員による点検に基づく第2の回数に基づいて、機器110の故障状態が評価される。例えば、上述したように第1の回数を第2の回数で補正して、あるいは、第2の回数を第1の回数で補正して、補正後の回数に基づいて機器110の故障状態が評価される。このように、監視装置20による自動的な監視及び点検員による点検作業結果の両方を活用して故障状態を評価する。その結果、本実施形態によれば、プラント100に含まれる機器110の故障状態を実物に即して精度よく把握することができる。
【0056】
本実施形態のように、第1の回数と第2の回数とを比較して、機器110の故障状態を評価してもよい。この構成によれば、適切かつ確実に機器の故障状態を評価することができる。
【0057】
更には、図3に例を示して説明したように、第1の回数及び第2の回数のうち、一方は複数の機器110毎の故障回数であり、もう一方は当該複数の機器110をまとめた単位での故障回数であり、複数の機器110毎の故障回数を合計した回数と、複数の機器110をまとめた単位での故障回数とを比較して、機器110の故障状態を評価してもよい。この構成によれば、第1の回数及び第2の回数が上記の場合に、適切かつ確実に機器の故障状態を評価することができる。
【0058】
また、図4に例を示して説明したように、第1の回数及び第2の回数のうち、少なくとも一方は複数110の機器をまとめた単位での故障回数であり、複数の機器110をまとめた単位での故障回数に基づく、当該複数の機器110毎への故障回数の割り振りを行って、当該複数の機器110毎の故障状態を評価してもよい。この構成によれば、第1の回数及び第2の回数が上記の場合に、適切かつ確実に機器の故障状態を評価することができる。
【0059】
但し、機器の故障状態の評価は、必ずしも上記のように行われる必要はなく、第1の回数及び第2の回数に基づいて行われればよい。
【0060】
本開示の故障評価システム及び故障評価方法は、以下の構成を有する。
[1] プラントに含まれる機器の故障状態を評価する故障評価システムであって、
前記機器に対して設置された監視装置による自動的な監視に基づく当該機器の故障回数である第1の回数を取得する第1取得手段と、
前記機器に対する点検員による点検に基づく当該機器の故障回数である第2の回数を取得する第2取得手段と、
前記第1取得手段によって取得された第1の回数、及び前記第2取得手段によって取得された第2の回数に基づいて前記機器の故障状態を評価する評価手段と、
を備える故障評価システム。
[2] 前記評価手段は、前記第1の回数と前記第2の回数とを比較して、前記機器の故障状態を評価する[1]に記載の故障評価システム。
[3] 前記第1の回数及び前記第2の回数のうち、一方は複数の機器毎の故障回数であり、もう一方は当該複数の機器をまとめた単位での故障回数であり、
前記評価手段は、前記複数の機器毎の故障回数を合計した回数と、前記複数の機器をまとめた単位での故障回数とを比較して、前記機器の故障状態を評価する[2]に記載の故障評価システム。
[4] 前記第1の回数及び前記第2の回数のうち、少なくとも一方は複数の機器をまとめた単位での故障回数であり、
前記評価手段は、前記複数の機器をまとめた単位での故障回数に基づく、当該複数の機器毎への故障回数の割り振りを行って、当該複数の機器毎の故障状態を評価する[1]~[3]の何れかに記載の故障評価システム。
[5] プラントに含まれる機器の故障状態を評価する故障評価システムの動作方法である故障評価方法であって、
前記機器に対して設置された監視装置による自動的な監視に基づく当該機器の故障回数である第1の回数を取得する第1取得ステップと、
前記機器に対する点検員による点検に基づく当該機器の故障回数である第2の回数を取得する第2取得ステップと、
前記第1取得ステップにおいて取得された第1の回数、及び前記第2取得ステップにおいて取得された第2の回数に基づいて前記機器の故障状態を評価する評価ステップと、
を含む故障評価方法。
【符号の説明】
【0061】
10…故障評価システム、11…第1取得部、12…第2取得部、13…評価部、20…監視装置、30…点検員用端末、100…プラント、110…機器、120…設備。
図1
図2
図3
図4
図5
図6