(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154913
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】サッシおよびサッシの製造方法
(51)【国際特許分類】
E06B 3/22 20060101AFI20241024BHJP
E06B 1/28 20060101ALI20241024BHJP
B29C 48/16 20190101ALI20241024BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
E06B3/22
E06B1/28
B29C48/16
B29C44/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069133
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】植木 希
(72)【発明者】
【氏名】八尾 尚志
(72)【発明者】
【氏名】門木 健
(72)【発明者】
【氏名】熊野 崇史
【テーマコード(参考)】
2E014
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
2E014AA01
2E014BA08
2E014BB05
4F207AA15
4F207AA50
4F207AB02
4F207AG03
4F207AG09
4F207AG20
4F207AH48
4F207KA11
4F207KA20
4F207KB26
4F207KL88
4F207KW23
4F214AA15
4F214AA50
4F214AB02
4F214AG03
4F214AG09
4F214AG20
4F214AH48
4F214UA11
4F214UB02
4F214UB26
4F214UC02
4F214UC24
4F214UN01
4F214UP88
(57)【要約】
【課題】再生塩化ビニル系樹脂への安定剤の混入量を把握しなくても、強度を向上させるとともに、軽量化することが可能なサッシを提供する。
【解決手段】サッシ10は、再生塩化ビニル系樹脂を含む発泡体11の外周部に、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む被覆層12が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生塩化ビニル系樹脂を含む発泡体の外周部に、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む被覆層が形成されている、サッシ。
【請求項2】
前記発泡体の発泡倍率が1.5倍以上10倍以下である、請求項1に記載のサッシ。
【請求項3】
前記再生塩化ビニル系樹脂に対する前記未使用の塩化ビニル系樹脂の質量比が0.1以上100以下である、請求項1に記載のサッシ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のサッシを製造する方法であって、
前記再生塩化ビニル系樹脂および化学発泡剤を含む発泡体用組成物と、前記未使用の塩化ビニル系樹脂を含む被覆層用組成物と、を共押出成形する工程を含む、サッシの製造方法。
【請求項5】
前記化学発泡剤は、炭酸水素ナトリウムおよびアゾジカルボンアミドを含む、請求項4に記載のサッシの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サッシおよびサッシの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用済みの塩化ビニル系樹脂を再生した再生塩化ビニル系樹脂を利用することが検討されている。例えば、再生塩化ビニル系樹脂を押出成形して、サッシが製造されているが、再生塩化ビニル系樹脂が劣化して靭性が低下していると、サッシの強度が低下する。
【0003】
特許文献1には、塩化ビニル系樹脂とオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂とを含んでなる廃材を平均粒子径0.50~1.5mmの粉体に粉砕し、得られた粉砕物を主成分とする組成物(A)と未使用の塩化ビニル系樹脂又は未使用のアクリル系樹脂を主成分とする組成物(B)とを、異形押出成形する合成樹脂製窓材の製造方法が記載されている。ここで、得られる合成樹脂製窓材の少なくとも屋外に対面する部分の表層が組成物(B)で形成されるように共押出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている合成樹脂製窓材の製造方法を使用すると、サッシを軽量化することができない。また、組成物(A)と、組成物(B)とを、異形押出成形する際には、発泡を防止するため、安定剤を添加する必要がある。しかしながら、組成物(A)への安定剤の混入量を把握することが困難である。このため、組成物(A)の発泡を防止するための安定剤の添加量を最適化することが困難である。
【0006】
したがって、発明者は、再生塩化ビニル系樹脂への安定剤の混入量を把握しなくても、強度を向上させるとともに、軽量化することが可能なサッシを提供する、という課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、サッシにおいて、再生塩化ビニル系樹脂を含む発泡体の外周部に、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む被覆層が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のサッシの一例を示す断面図である。
【
図2】本実施形態のサッシを製造する際に使用する押出成形機の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[サッシ]
サッシ10は、
図1に示すように、再生塩化ビニル系樹脂を含む、中空状の発泡体11の外周部に、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む被覆層12が形成されている。ここで、サッシ10は、発泡体11を有するため、軽量化される。また、サッシ10は、発泡体11の外周部に、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む被覆層12が形成されているため、サッシ10の強度が向上する。さらに、再生塩化ビニル系樹脂は、発泡体11に含まれるため、再生塩化ビニル系樹脂への安定剤の混入量を把握する必要が無い。これは、再生塩化ビニル系樹脂に安定剤が混入していても、発泡体11に及ぼす影響が軽微であるためである。
【0011】
なお、発泡体11は、中実状であってもよい。また、サッシの形状としては、特に限定されず、公知の形状を使用することができる。
【0012】
発泡体11の発泡倍率は、1.5倍以上10倍以下であることが好ましく、4倍以上8倍以下であることがさらに好ましい。発泡体11の発泡倍率が1.5倍以上であると、サッシ10が軽量化され、10倍以下であると、サッシ10の強度が向上する。
【0013】
なお、発泡体11の発泡倍率は、発泡体11の比重に対する発泡体11を構成する材料(未発泡状態)の比重の比である。例えば、発泡体11が再生塩化ビニル系樹脂のみからなる場合、発泡体11の発泡倍率は、発泡体11の比重に対する未発泡状態の再生塩化ビニル系樹脂の比重の比である。
【0014】
サッシ10に含まれる、再生塩化ビニル系樹脂に対する未使用の塩化ビニル系樹脂の質量比は、0.1以上100以下であることが好ましく、0.3以上3以下であることがさらに好ましい。サッシ10に含まれる、再生塩化ビニル系樹脂に対する未使用の塩化ビニル系樹脂の質量比が0.1以上であると、サッシ10の強度が向上し、100以下であると、被覆層12に対する発泡体11の比率が高くなることに伴い、サッシ10が軽量化される。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲において、塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニル由来の構成単位を有する樹脂を意味する。
【0016】
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルの単独重合体(ポリ塩化ビニル)および共重合体のいずれであってもよい。塩化ビニルの共重合体は、塩化ビニルと、塩化ビニルと共重合することが可能なモノマーとの共重合体である。
【0017】
塩化ビニルと共重合することが可能なモノマーとしては、例えば、α-オレフィン類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル類、N-置換マレイミド類が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0018】
α-オレフィン類としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンが挙げられる。ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルが挙げられる。ビニルエーテル類としては、例えば、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。芳香族ビニル類としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンが挙げられる。N-置換マレイミド類としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドが挙げられる。
【0019】
ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0020】
塩化ビニルの共重合体は、塩化ビニルのグラフト共重合体であってもよい。塩化ビニルのグラフト共重合体は、ポリ塩化ビニル以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合することによって得られる。塩化ビニルをグラフト共重合する重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンが挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0021】
なお、塩化ビニル系樹脂は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0022】
発泡体11の熱伝導率は、特に限定されないが、例えば、0.01W/m・K以上0.1W/m・K以下である。また、被覆層12の熱伝導率は、特に限定されないが、例えば、0.1W/m・K以上0.3W/m・K以下である。
【0023】
なお、熱伝導率は、例えば、JIS A1412-2によって規定された熱流計法(HFM法)によって測定される。
【0024】
発泡体11および被覆層12は、それぞれ、添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0025】
添加剤としては、特に限定されないが、例えば、着色剤、難燃剤、安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0026】
[サッシの製造方法]
本実施形態のサッシの製造方法は、再生塩化ビニル系樹脂および化学発泡剤を含む発泡体用組成物と、未使用の塩化ビニル系樹脂を含む被覆層用組成物と、を共押出成形する工程を含む。発泡体用組成物および被覆層用組成物は、それぞれ、添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0027】
化学発泡剤は、無機系発泡剤および有機系発泡剤のいずれであってもよいし、無機系発泡剤および有機系発泡剤を併用してもよい。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、アジド化合物が挙げられる。有機系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、トリヒドラジントリアジン、ヒドラゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレートが挙げられる。
【0028】
化学発泡剤は、炭酸水素ナトリウムおよびアゾジカルボンアミドを含むことが好ましい。
【0029】
発泡体用組成物中の化学発泡剤の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。発泡体用組成物中の化学発泡剤の含有量が0.1質量%以上であると、サッシ10が軽量化され、5質量%以下であると、サッシ10の強度が向上する。
【0030】
発泡体用組成物および被覆層用組成物の形態としては、特に限定されないが、例えば、粉末、ペレットが挙げられる。
【0031】
本実施形態のサッシを製造する際に、例えば、
図2に示す押出成形機100を使用する。押出成形機100は、発泡体用組成物を押出す第1押出機110と、被覆層用組成物を押出す第2押出機120と、ダイス130と、冷却機140と、を備える。第1押出機110は、発泡体用組成物が投入される第1ホッパー111を備え、第2押出機120は、被覆層用組成物が投入される第2ホッパー121を備える。ここで、第1ホッパー111に投入された発泡体用組成物は、第1押出機110によって、所定の温度に加熱され、第1の溶融物として押出される。一方、第2ホッパー121に投入された被覆層用組成物は、第2押出機120によって、所定の温度に加熱され、第2の溶融物として押出される。第1の溶融物および第2の溶融物は、ダイス130を通過して、所定の形状となった後、冷却機140を通過して、共押出成形物Cが得られる。このとき、ダイス130において、第2の溶融物内に押し出された第1の溶融物を発泡させる。共押出成形物Cは、任意の長さに切断され、サッシ10が得られる。
【0032】
[再生塩化ビニル系樹脂の製造方法]
再生塩化ビニル系樹脂の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。例えば、まず、サッシから金属等の異物を除去した後、破砕する。次に、得られた粉末を洗浄した後、乾燥させ、再生塩化ビニル系樹脂を得る。
【0033】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されず、本開示の趣旨の範囲内で、上記の実施形態を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 サッシ、 11 発泡体、 12 被覆層、 100 押出成形機、 110 第1押出機、 111 第1ホッパー、 120 第2押出機、 121 第2ホッパー、 130 ダイス、 140 冷却機、 C 共押出成形物