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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154925
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】3次元CADシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/12 20200101AFI20241024BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G06F30/12
B23K31/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069157
(22)【出願日】2023-04-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 一昌
(72)【発明者】
【氏名】松本 充弘
(72)【発明者】
【氏名】大島 雅貴
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA06
5B146DE12
5B146DG02
5B146DG07
(57)【要約】
【課題】溶接に関する情報が容易に理解できると共に、オペレーターが容易に入力できる3次元CADシステムを提供する。
【解決手段】3次元CADシステムにより作成された3次元モデルに対して、前記3次元モデルの溶接対象部位に溶接に関する情報を付与する3次元CADシステムであって、前記3次元CADシステムに予め格納され、溶接の種別ごとに付与された複数の溶接種別表示パターンから所望の溶接種別表示パターンを選択し、前記溶接対象部位を選択することにより、前記所望の溶接種別表示パターンを前記溶接対象部位に表示させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元CADシステムにより作成された3次元モデルに対して、前記3次元モデルの溶接対象部位に溶接に関する情報を付与する3次元CADシステムであって、前記3次元CADシステムに予め格納され、溶接の種別ごとに付与された複数の溶接種別表示パターンから所望の溶接種別表示パターンを選択し、前記溶接対象部位を選択することにより、前記所望の溶接種別表示パターンを前記溶接対象部位に表示させる、3次元CADシステム。
【請求項2】
前記複数の溶接種別表示パターンの各々は簡略化された図形からなる3次元モデルである、請求項1に記載の3次元CADシステム。
【請求項3】
前記3次元CADシステムに予め格納され、溶接の仕上げ内容ごとに付与された複数の仕上げ内容表示パターンから所望の仕上げ内容表示パターンを選択することにより、前記溶接対象部位に表示された前記溶接種別表示パターンが、前記所望の仕上げ内容表示パターンを伴って表示される、請求項2に記載の3次元CADシステム。
【請求項4】
前記複数の仕上げ内容表示パターンの各々は異なる色である、請求項3に記載の3次元CADシステム。
【請求項5】
突き合わせ溶接、隅肉溶接、レーザー溶接、摩擦攪拌接合の場合において、前記簡略化された図形は、その断面形状のまま溶接対象モデルに沿って延びた態様で表示され、その長さは前記突き合わせ溶接、隅肉溶接、レーザー溶接、摩擦攪拌接合の前記溶接長さと一致する、請求項4に記載の3次元CADシステム。
【請求項6】
突き合わせ溶接が開先溶接の場合において、前記所望の溶接種別表示パターンは、前記簡略化された図形がその断面形状のまま溶接対象モデルに沿って延びた態様で表示され、前記3次元モデルのうち、開先が取られる側の前記3次元モデルの端縁上面に沿って、前記所望の溶接種別表示パターンが表示される、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の3次元CADシステム。
【請求項7】
前記3次元モデルに対して、構造上および機械的制約を受けずに溶接を行うことが可能な限界領域をさらに表示する、請求項5に記載の3次元CADシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接に関する情報の付与を簡易な手法により的確に行うことができる3次元CADシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、溶接の行われる部位が線によって表示されるCADシステムについて開示されている。特許文献1においては、溶接の行われる部位に相当する線に、そこで行われる溶接についての情報が付属情報として表示されることが開示されている。特許文献1においては、溶接の行われる部位に相当する線に付与される情報は、インターフェイス部に表示される文字情報及び2次元の画像情報である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-291039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、溶接の行われる部分が共有領域を有する部分の線によって表示されるので、線情報だけでは溶接をどのように行うべきか判断することは難しい。溶接をどのように行うべきかについての詳細な情報は、溶接の行われる部分に相当するインターフェイス部の付属情報から取得することはできるが、付属情報には実際に溶接が行われる内容が文字情報及び2次元の画像情報によって示されるので、溶接の作業者は溶接内容をイメージし難い。そのため、溶接の作業者は、溶接の内容を理解することが煩雑になる。また、CADシステムに溶接の作業内容を入力するオペレーターの入力作業が煩雑になる。さらに、共有領域を有さない箇所についての溶接、例えばスポット溶接や栓溶接など、その他の溶接については開示されておらず、溶接指示としては不完全である。
【0005】
そこで本開示は、溶接に関する情報が容易に理解できると共に、オペレーターが容易に入力できる3次元CADシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本開示の3次元CADシステムは、3次元CADシステムにより作成された3次元モデルに対して、前記3次元モデルの溶接対象部位に溶接に関する情報を付与する3次元CADシステムであって、前記3次元CADシステムに予め格納され、溶接の種別ごとに付与された複数の溶接種別表示パターンから所望の溶接種別表示パターンを選択し、前記溶接対象部位を選択することにより、前記所望の溶接種別表示パターンを前記溶接対象部位に表示させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、入力された指示内容に対応する溶接ビードの3次元モデルの表示パターンが選択され、選択された溶接ビードの3次元モデルの表示パターンがCADシステム上の空間で表示されるので、溶接の作業者は、3次元モデルの表示パターンを見ただけで溶接の指示内容を理解することができ、溶接内容の理解が容易になる。また、CADシステム上に溶接の作業内容を入力するオペレーターは、入力作業が容易になる。また、溶接の行われる部位を表示するのに必要とされるデータ量を少なく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る3次元CADシステム及び溶接ロボットのブロック図である。
図2図1の3次元CADシステムによって作成された溶接の行われる部位についての出力装置上の画像での表示と、実際の斜視図とを並べた説明図である。
図3図1の3次元CADシステム上の空間における画像上の表示を作成するためのフローチャートである。
図4図3の処理Aのフローチャートの前半部である。
図5図4のフローチャートの後半部である。
図6図3の処理Bのフローチャートの前半部である。
図7図6のフローチャートの後半部である。
図8】溶接の行われる部位に、突き合わせ開先溶接が行われる場合の図1の3次元CADシステム上の空間における溶接の行われる部位についての出力装置上の画像である。
図9】溶接の行われる部位に、隅肉溶接が行われる場合の図1の3次元CADシステム上の空間における溶接の行われる部位についての出力装置上の画像である。
図10】溶接の行われる部位に、栓溶接が行われる場合の図1の3次元CADシステム上の空間における溶接の行われる部位についての出力装置上の画像である。
図11】溶接の行われる部位に、円周溶接が行われる場合の図1の3次元CADシステム上の空間における溶接の行われる部位についての出力装置上の画像である。
図12】溶接の行われる部位に、レーザー溶接が行われる場合の図1の3次元CADシステム上の空間における溶接の行われる部位についての出力装置上の画像である。
図13】溶接の行われる部位に、スポット溶接が行われる場合の図1の3次元CADシステム上の空間における溶接の行われる部位についての出力装置上の画像である。
図14】溶接の行われる部位に、摩擦攪拌接合が行われる場合の図1の3次元CADシステム上の空間に表示された溶接の行われる部位についての出力装置上の画像である。
図15】溶接の行われる部位に、隅肉断続溶接が行われる場合の図1の3次元CADシステム上の空間における溶接の行われる部位についての出力装置上の画像である。
図16】レーザー溶接によって平板に部品が接合された状態を示す斜視図である。
図17】溶接ロボットによって溶接が行われる際に限界領域の3次元モデルの表示パターンを示す斜視図である。
図18図17の限界領域の3次元モデルの表示パターンの側面図である。
図19図17の限界領域の3次元モデルの表示パターンの断面図である。
図20】溶接ロボットによってレーザー溶接が行われる際のワーク、溶接ロボットのローラー及び溶接ヘッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態に係る3次元CADシステムについて、添付図面を参照して説明する。図1に、実施形態に係る3次元CAD(Computer Aided Design)システムのブロック図を示す。図1に示されるように、本実施形態の3次元CADシステム1は、サーバー2及びパソコン(Personal Computer)3を備えている。サーバー2は、処理回路4を備えており、処理回路4は、演算処理を行う演算部としてのプロセッサ5と、プログラムやデータの記憶を行うメモリ6と、パソコン3との通信を行う通信部7とを有している。
【0010】
本実施形態においては、メモリ6には、3次元CADシステム1によって出力装置に画像の表示を行わせる表示プログラム8が格納されている。また、メモリ6には、溶接ビードの3次元モデルの複数種類の表示パターン9が格納されている。メモリ6は、溶接ビードの3次元モデルの表示パターン9のそれぞれを、溶接に関する種別と仕上げ内容に関連付けて記憶している。また、メモリ6には、3次元CADシステム1上の空間に、構造上及び機械的制約を受けずに溶接を行うことが可能な限界領域を示す3次元モデルを作成するための限界領域作成プログラム10が格納されている。
【0011】
パソコン3は、入力装置11、出力装置12及び通信部13を備えている。入力装置11は、例えばキーボード、マウス等である。本実施形態においては、溶接に関する指示内容が入力装置11を介してサーバー2のプロセッサ5に入力される。出力装置12は、例えばディスプレイである。入力装置11からの指示内容に基づき、プロセッサ5によって演算され、3次元CADシステムによって作成された画像を、出力装置12に表示することによって出力する。また、本実施形態においては、3次元CADシステム1は、溶接を行う溶接ロボット14に接続されている。
【0012】
本実施形態においては、プロセッサ5は、メモリ6に格納された表示プログラム8に基づき、出力装置12に3次元CADシステム上における溶接の行われる部位を表示させる。本実施形態においては、処理回路4のプロセッサ5が溶接ロボット14に接続され、溶接ロボット14によって行われる溶接についての内容がプロセッサ5から溶接ロボット14に伝達される。ここではレーザー溶接を行うロボットを例示する。
【0013】
また、本実施形態においては、入力装置11によって入力された溶接に関する種別と仕上げ内容に基づき、サーバー2の処理回路4で処理が行われることによって溶接ビードの3次元モデルの表示パターン9が決定される。処理回路4は、決定された溶接ビードの3次元モデルの表示パターン9が3次元CADシステム上の空間における、溶接の行われる部分についての画像を作成し、処理回路4によって作成された画像が出力装置12によって出力される。
【0014】
溶接の行われる部分について、本実施形態の3次元CADシステムを用いて作成された画像と、実際の溶接の行われる部位の斜視図とを並べた説明図を図2に示す。図1の3次元CADシステム1を用いて作成された画像については、パソコン3の入力装置11を用いて入力が行われて、サーバー2の処理回路4にて作成された画像が出力装置12にて出力される。図2に示されるように、本実施形態に係る3次元CADシステムにおいては、実際の溶接の行われる部位15が、溶接の種別ごとに紐付けられた簡略図形として表現される表示パターン(以後、溶接種別表示パターンと称す)が3次元モデル16として出力装置12に表示される。
【0015】
図3乃至7に、本実施形態の表示方法によって表示が行われる際のフローチャートを示す。図3を参照し、本実施形態において溶接が行われる場合のフローについて説明する。溶接についてのフローがスタートすると、入力装置11を介して溶接に関する分類指定を選択する。(S101)。S101で溶接に関する分類指定が受け付けられると、S101の内容に基づき、溶接がアーク溶接であるかレーザー溶接であるかが判断される(S102)。アーク溶接が行われる場合には、フローは処理Aに進み、後述する図4のフローに進む。レーザー溶接が行われる場合には、フローは処理Bに進み、後述する図5のフローに進む。処理A及び処理Bにおいて溶接に関する分類が決定すると、フローは終了する。尚、分類「アーク溶接」、分類「レーザー溶接」との区分は操作の単純化を図るべく、便宜上この2分類としたものであって、ある溶接に限定したものではない。
【0016】
次に、処理Aのフローについて説明する。図4乃至5に、処理Aについてのフローチャートを示す。処理Aにおいては、まず、入力装置11を介して溶接種別を選択することにより入力が受け付けられる(S0)。尚、ここでは突き合わせ溶接についてのフローを例示するが、溶接種別には、例えば、隅肉溶接、栓溶接、円周溶接、スポット溶接や摩擦攪拌接合などが挙げられる。図3においては、処理Aがアーク溶接のうちの突き合わせ溶接である場合について示されている。また、図3においては、処理A以外の処理として、処理A1、処理A2、処理A3が示されている。また、本実施形態においては、例えば、処理A1は隅肉溶接であり、処理A2はスポット溶接であり、処理A3は栓溶接である。アーク溶接に属する処理として、突き合わせ溶接としての処理A、隅肉溶接としての処理A1、スポット溶接としての処理A2、栓溶接としての処理A3が、処理A群として区分されている。入力装置11を介して処理回路4に溶接種別が入力され、処理が選択されると、その入力された溶接種別に応じて、3次元CADシステム上の空間に表示される溶接種別表示パターンが決定される(S1)。本実施形態においては、予め複数種類の溶接種別表示パターンが、溶接の種別にそれぞれ関連付けて記憶されており、指示内容に対応する溶接種別表示パターンが決定される。
【0017】
決定された溶接種別表示パターンを3次元モデル上に配置するために、次に3次元モデル上の溶接対象部位を指定する(S2)。この時に、基準ワークの面を選択し、参照ワークの面を選択し、溶接すべきエッジを選択することで溶接対象部位の指定が行われる。基準ワークとは3次元モデルのうち溶接対象として基準となる3次元モデルのことであり、参照ワークとは基準ワークに溶接される3次元モデルのことである。
【0018】
次に、入力された突合せ溶接が開先溶接であるか否かを選択する(S3)。開先溶接である場合には、開先加工が行われるワークを選択する(S4)。開先加工が行われるワークを選択すると、開先加工の行われるワーク上の端縁に沿って溶接種別表示パターンが3次元モデル上に配置されるようになる。本実施形態においては、図8で示す正四角柱の溶接種別表示パターンが配置されるようになる。ここで、突合せ溶接において開先加工が両開先の場合は、基準ワーク及び参照ワークの両方を選択すればよい。そうすると、図8で示すようにふたつの溶接種別表示パターンが、当該エッジ上で隣り合うように並んだ態様で表示される。また、開先加工を行わない単なる突き合わせ溶接の場合は、ひとつの溶接種別表示パターンが3次元モデルの基準ワークと参照ワークとが接するエッジ上を跨ぐような態様で表示される。
【0019】
S3で開先溶接ではない場合には、フローは、そのままS5に進む。上記の溶接のほか、本開示の3次元CADシステムでは、溶接の種別ごとに異なる溶接種別表示パターンが用意されている。本実施形態において、開先溶接であるか、否かが決定されると、フローはS5に進み、各種のパラメータが入力される。ここで入力とは3次元モデル作画時の情報に基づき自動取得されるものも含まれ、入力されるパラメータとしては、基準ワーク及び参照ワークのそれぞれのワークについての情報が含まれる。
【0020】
基準ワーク及び参照ワークについての情報としては、例えば、ワークの品番、板厚及び材質のほか、開先角度、開先深さ、ビード形状などが挙げられる。ワークについての情報の入力は、基準ワークと参照ワークの両方に対して行われる。ワークについての情報が入力されると、フローはS6に進む。
【0021】
S6では処理回路4によって溶接が可能であるか否かが判断される。溶接が可能であるか否かが判断された結果、溶接を行うことが可能である場合には、フローはS8に進む。例えば、溶接の行われる部位に対して溶接トーチを向けられないような場合には、溶接を行うことが不可能であると判断され、フローはS7に進み、出力装置12にエラー表示が出力される。
【0022】
フローがS8に進むと、溶接の範囲指定を行うか否かを決定する。溶接の範囲指定が必要な場合には、S9のフローに進み、溶接の範囲を指定する。溶接の範囲指定が不要な場合は、フローはそのままS10に進む。
【0023】
次に、断続溶接か否かの指示を行う。断続溶接である場合、S11のフローに進み、断続溶接の溶接長さとその個数を入力する。そうすると、溶接種別表示パターンが3次元モデルの対象モデル(基準ワークと参照ワーク)上に、前述した一連の指示内容に則した溶接長さ及び個数に分割された態様にて3次元モデル上に配置され、出力装置12に表示される。断続溶接でない場合は、対象モデルの全長またはS9において指定した範囲に溶接種別表示パターンが3次元モデル上に配置されて出力装置12に表示される(SP)。
【0024】
次にS12からの溶接仕上げに関するフローについて説明する。ここではまず溶接後の溶接ビードへの仕上げ処理の内容が入力される。ここで入力される処理内容としては、溶接が行われた後の溶接ビードについてのグラインダーによる研削仕上げや機械加工といった仕上げ内容が挙げられる。本実施形態では、溶接後の溶接ビードへの仕上げ処理に応じて、複数の表示色により定義づけられた仕上げ内容表示パターンを選択することにより行われる(S12)。所望の仕上げ内容表示パターンを選択すると仕上げ内容に応じた表示色が決定され、3次元モデル上に配置された溶接種別表示パターンの外観色が選択された表示色に変更されて表示される。(S13)。
【0025】
仕上げ内容に応じた表示色が溶接種別表示パターンに付されると、S14で溶接ビードについての細かな情報が入力される。ここで入力される情報としては、溶接ビードの最大脚長、最小脚長や、水密の要否、気密要否等が挙げられる。溶接ビードについての情報は、入力装置11を介して入力される。溶接ビードについての情報が入力されると、入力された情報がプロパティ情報として登録される(S15)。本実施形態においては、溶接種別表示パターンにプロパティ情報として、文字情報によって登録される。溶接ビードについての細かな情報が溶接種別表示パターンに登録されると、アーク溶接についてのフローが終了する。
【0026】
次に、レーザー溶接が行われる場合についてのフローについて説明する。本実施形態において、レーザー溶接は、溶接ロボット14により溶接ヘッドとローラーとを移動させながら溶接を行う。溶接が行われる際には、ワークが上方に浮かないように、ローラーがワークを下方へ押さえつけながら、溶接ヘッドからレーザー光を照射して溶接を行う。
【0027】
レーザー溶接が行われる際には、図6及び7に示すフローによって、まず、入力装置11を介してレーザー溶接の溶接種別表示パターンを選択することにより入力が受け付けられる(S22)。そうすると、3次元CADシステム上の空間に表示されるレーザー溶接の溶接種別表示パターン(本例の場合、半円柱)が決定される(S23)。決定された溶接種別表示パターンを3次元モデル上に配置するために、次に3次元モデル上の溶接対象部位を指定する(S24)。この時、基準ワークの面を選択し、参照ワークの面を選択し、基準ワークのエッジを選択することで溶接対象部位の指定が行われる。
【0028】
この溶接対象部位の指定の際に各種のパラメータが入力される(S25)。ここで入力とは3次元モデル作画時の情報に基づき自動取得されるものも含まれる。入力されるパラメータとしては、基準ワーク及び参照ワークのそれぞれのワークについての情報が含まれる。基準ワーク及び参照ワークについての情報としては、例えば、ワークの品番、板厚及び材質のほか、基準ワークのエッジの長さなどが挙げられる。そして、フローはS26に進み、溶接が可能であるか否かが処理回路4によって判断される。溶接が可能であるか否かが判断された結果、溶接を行うことが可能である場合には、フローはS27に進む。例えば、溶接の行われる部位が溶接ヘッドを溶接位置に向けられないような構造上の問題がある場合には、溶接を行うことが不可能であると判断される。溶接が不可能な場合には、フローはS28に進み、出力装置12にエラー表示が出力される。
【0029】
続いて、オフセット値の入力を行う(S27)。オフセット値とは、溶接対象部位に照射されるレーザー光の照射位置、すなわち溶接位置を指定するためのもので、基準ワークのエッジから溶接位置までの距離を指している。尚、オフセット値は、溶接基準に従った値としてデフォルト設定されており、通常は自動取得されるようになっている。
【0030】
次に溶接の範囲指定を行うか否かを決定する(S29)。溶接の範囲指定が必要な場合には、S30のフローに進み、溶接の範囲を指定する。そうすると溶接長さが算出される。溶接の範囲指定が不要な場合は、フローはそのままS31に進み、基準ワークのエッジの長さを溶接長さとして算出される。
【0031】
溶接長さが算出されると、フローはS31に進み、機械的な制約によって溶接が不可能な状態にあるか否かが判断される。
本実施形態においては、溶接が溶接ロボット14を用いて行われているので、溶接には、溶接ロボット14による機械的な制約と、それに関係する構造上の制約も生じる。フローS31においては、溶接ロボット14による機械的な制約によって溶接を行うことができないようになっていないかの確認が行われる。本実施形態においては、溶接ロボット14によって溶接ヘッドとローラーとが用いられて溶接が行われるので、溶接ヘッドとローラーとが移動可能な領域にのみ溶接を行うことが可能である。そのため、ワークの形状等から溶接ヘッドとローラーとの移動可能な領域が求められ、溶接ビードが溶接ヘッドとローラーとの移動可能な領域の内部にあるか否か、ワークに干渉しないかなどが判断される。
【0032】
溶接ロボット14の機械的制約としては、例えば、溶接が行われる際に、溶接を行う溶接ロボット14の移動する軌跡において、ワークからのクリアランスが確保されているか否かが判断される。また、溶接ヘッド及びローラーが、溶接を終えた後に、ワークから離間するために移動するためのスペースが確保されているか否かが判断される。その他、溶接ビードによる曲率半径が、溶接ヘッド及びローラーが回転可能な最小半径よりも大きいか否かや、溶接の行われる面が、溶接を行うことが可能である最大高さ以下の位置に収まっているか否かなどの判断をS26のフローとは別に再度行われる。
【0033】
S31で機械的な制約、構造上の制約によって溶接が不可能な状態にあると判断された場合には、フローはS32に進み、出力装置12でエラー表示を出力する。S31で溶接が可能な状態にあると判断されると、レーザー溶接の溶接種別表示パターンが前述した一連の指示内容に則して3次元モデルの溶接対象モデルに配置され、出力装置12に表示される(SP)。
【0034】
SPで溶接種別表示パターンが3次元モデルの対象モデル上に配置されると、次に、S33で溶接後の溶接ビードへの仕上げ内容が入力される。本実施形態では、溶接後の溶接ビードへの仕上げ内容に応じて紐付けられた表示色を有する仕上げ内容表示パターンを選択する(S33)。そうすると、3次元モデルの対象モデル上に配置された溶接種別表示パターンの外観色が選択したパターン色に変更される(S34)。また、特に仕上げ処理の必要がない場合は変更されず、溶接種別表示パターンはデフォルト色のままS35のフローに進む。
【0035】
S33で溶接後の溶接ビードへの仕上げ処理の内容に即した表示色が溶接種別表示パターンに対して付されると、S35で溶接ビードについての細かな情報が入力される。ここで入力される情報としては、溶接ビードの表面形状や、水密の要否、気密要否等が挙げられる。溶接ビードについての仕上げ情報が溶接種別表示パターンに登録されると、レーザー溶接についてのフローが終了する。なお、図3に示されるフローにおいて、溶接がアーク溶接であるかレーザー溶接であるかが判断されるS102では、アーク溶接、レーザー溶接以外の溶接が選択されてもよい。本実施形態においては、アーク溶接、レーザー溶接以外の溶接として、摩擦攪拌接合が選択されることが可能である。図3には、アーク溶接、レーザー溶接以外の溶接として、処理B1が示されている。本実施形態においては、例えば、処理B1は摩擦攪拌接合である。
【0036】
(溶接種別表示パターンについて)
次に、溶接種別表示パターンの各々について説明する。
最初に、突き合わせ溶接が行われる場合について説明する。アーク溶接における突き合わせ溶接が行われる場合には、溶接種別表示パターンとして、正四角柱の表示パターンが選択される。図8に示されるように、溶接が行われていく方向D1に直交する断面が正方形である角柱によって溶接種別表示パターンが表示されている。
【0037】
本実施形態においては、突き合わせ溶接が行われる際に、図8に示されるようにワーク15、16同士が突き合わされて、互いに突き合わされるワーク15、16の両方に対し開先加工が行われる形態について説明する。図8においては、互いに突き合わされるワーク15、16の両方の上方に溶接種別表示パターン17、18が配置されている。本実施形態においては、互いに突き合わされるワーク15、16の両方に対し開先加工が行われ、それに対応して、開先溶接の行われるお互いのワーク15、16の両方の上方に溶接種別表示パターン17、18が配置されている。上述のように、突き合わせ溶接が行われる際に、開先加工が行われるワークの端縁上部に溶接種別表示パターン17、18を配置することにより、開先加工が行われるワークがどれなのかを溶接種別表示パターンが配される位置により理解できるようになっている。
【0038】
図8においては、互いに突き合わされるワーク15、16の両方に対し開先加工が行われるので、突き合わされたワーク15、16の両方の端縁上部に溶接種別表示パターン17、18が配置されている。互いに突き合わされるワークのうちの、片方のワークのみに開先加工が行われる場合には、開先加工の行われる側のワークの端縁上部に配置される。
【0039】
互いに突き合わされたワーク15、16の両方に対し開先が形成されて溶接が行われるときには、実際には、溶接ビードが開先の内部に形成されると共に、溶接ビードが開先の上方に突出して溶接ビードがワーク15、16の上面よりも上方へ盛り上がるように形成されるが、本実施形態においては、簡易図形により表示された溶接種別表示パターンによって溶接の行われる部位を表現するために、正四角の表示パターンによって溶接の行われる部位が表示されている。
【0040】
次に、隅肉溶接が行われる場合について説明する。アーク溶接において、隅肉溶接が行われる場合には、溶接ビードが、溶接が行われていく方向に直交する断面が扇形である柱体である溶接種別表示パターンによって表示される。隅肉溶接を表示する際には、ワークが例えばL字状に配置され、その配置されたワークの両方に対し溶接種別表示パターンが接するように表示される。
【0041】
図9に、隅肉溶接が行われる場合の溶接種別表示パターン19を示す。図9に示されるように、隅肉溶接の際に選択される、溶接が行われていく方向D2に直交する断面が扇形の溶接種別表示パターン19が、L字状に突き合わされたワーク20、21の両方に接するように配置されている。
【0042】
次に、栓溶接が行われる場合について説明する。栓溶接は、重なり合うワークの一方に孔をあけ、その孔を埋め戻すように溶接ビードが配置される溶接である。図10に、栓溶接が行われる場合の溶接種別表示パターン22及びワーク23、24の斜視図を示す。栓溶接が行われる場合には、図10に示されるように、上下方向に2つのワーク23、24が重ねられ、上側のワーク23の孔があけられた箇所に、半球状の、溶接種別表示パターン22が表示される。
【0043】
次に、円周溶接が行われる場合について説明する。円周溶接は、上下に配置した2つのワークを接続するように、上側のワークにあけられた孔の上端面から下側のワークの上端面に向けてリング状の溶接ビードを架け渡すように溶接ビードが配置された溶接である。円周溶接においては、溶接ビードを平面視したときに、溶接ビードが円環状の形状を有している。円周溶接が行われる場合には、図11に示されるように、上側のワーク25の上端面と下側のワーク26の上端面との間に位置し、上側のワーク25の上端面から下方に向かうにつれて直径が狭まる円環によって溶接種別表示パターン27が表示される。
【0044】
次に、レーザー溶接が行われる場合について説明する。レーザー溶接が行われる場合には、図12に示されるように、溶接が行われていく方向D3に直交する面に沿う断面が円を均等に2分割したときの半円である溶接種別表示パターン28が表示される。本実施形態においては、上下方向に2つ重ねられたワーク29、30を上下方向に接続するために行われる。上下方向に2つ重ねられたワーク29、30に対しレーザー溶接が行われたときには、実際には、溶接ビードは上側のワーク29を貫通するように形成されるが、本実施形態においては、簡易図形として示される溶接種別表示パターンを用いている。
【0045】
次に、スポット溶接が行われる場合について説明する。スポット溶接が行われる場合には、図13に示されるように、上下に重ねられたワーク31、32のうち、上側のワーク31のスポット点に円柱の形状を有する溶接種別表示パターン33が配置されて表示される。
【0046】
次に、摩擦攪拌接合が行われる場合について説明する。図14に示されるように、互いに突き合わされた2つのワーク35、36に対し摩擦攪拌接合が行われる場合には、摩擦攪拌接合が行われていく方向D4に直交する断面が三角形である三角柱によって溶接種別表示パターン34が表示される。
【0047】
次に、断続溶接が行われる場合について説明する。尚、ここでは隅肉溶接の場合を例示する。断続溶接は、溶接が行われるD5方向に沿って、同一種類の溶接を、一定の間隔で、間欠的に行われる溶接であって、図4で示すフローのS11により指定された内容に基づき溶接種別表示パターンが断続した態様で表示される。図15に示されるように、隅肉断続溶接の行われる部位では、溶接種別表示パターン37が、等間隔に配置されて表示される。図15に示される形態においては、2つのワーク38、39の延在する方向D6、D7が互いに直交するように突き当てられて、突き当てられた2つのワーク38、39の両者に溶接ビードが当接するように溶接が行われている。そのため、図15においては、溶接種別表示パターン37は隅肉溶接を示す断面が扇形の表示パターンとなっている。
【0048】
なお、断続溶接は、隅肉溶接によって行われるだけでなく、他の種類の溶接によって行われる場合もある。従って、断続溶接が行われる場合には、行われる溶接の種類に応じた溶接種別表示パターンが表示される。このように、溶接の種類に応じて、対応する溶接種別表示パターンが選択され、3次元CADシステムの空間に表示される3次元モデルの溶接対象部位の指定位置に表示される。
【0049】
また、本実施形態においては、溶接後に溶接ビードに対して行われる仕上げ内容に応じた仕上げ内容表示パターンが選択されると、溶接種別表示パターンが仕上げ内容表示パターンを伴って表示されるようになる。本例においては溶接種別表示パターンの外観色が変更される。溶接後に溶接ビードに対して行われる仕上げ処理の内容については、グラインダー加工や穴あけ加工といった加工が挙げられる。また、グラインダー加工を行うにしても、溶接ビードの上面の端部のみを滑らかにする加工、ワークから突出した溶接ビードを除去する加工、溶接ビードを上方に向かって凸とする加工及び溶接ビードを上方に向かって凹とする加工を行うこと等が挙げられる。また、溶接ビードへの処理を行わない場合についても考えられる。これらの溶接後の処理内容に応じて仕上げ内容表示パターンが選択され、溶接種別表示パターンが仕上げ内容表示パターンを伴って表示される(本例では仕上げ内容に応じた色)。
【0050】
例えば、溶接後に、溶接ビードの上面の端部のみを滑らかにする加工が行われる場合には、溶接種別表示パターンの色が赤に変更されて示される。また、溶接後に、ワークから突出した溶接ビードを除去する加工が行われる場合には、溶接種別表示パターンの色が青に変更されて示される。また、溶接後に、溶接ビードを上方に向かって凸とする加工が行われる場合には、溶接種別表示パターンの色が黄色に変更されるなどにより示される。なお、溶接後に、溶接ビードへの処理を行わない場合には、溶接種別表示パターンの色は変更されず、元々設定されている溶接種別表示パターンのデフォルトの色のままである。なお、溶接種別表示パターン対して変更させる色は上記の例に限定されず、他の色であってもよい。また、溶接後に、溶接ビードへの仕上げ処理を行わない場合に、一定の色によって着色を行うように設定されていてもよい。
【0051】
以上のように、入力装置11によって入力された溶接種別に対応する溶接種別表示パターンが選択されると、3次元CADシステム上の空間に表示される3次元モデルの溶接対象部位の指定箇所に溶接種別表示パターンが表示される。
【0052】
本実施形態によれば、溶接種別に応じて溶接種別表示パターンが簡易図形として示され、溶接の仕上げ処理の内容が溶接種別表示パターン(色)として3次元モデル上の溶接対象部位に表示されるので、溶接の作業者は、溶接種別表示パターンを見ただけで溶接に関する指示内容を容易に理解することができる。また、CADシステム上に溶接の作業内容を入力するオペレーターは、溶接種別に応じた溶接種別表示パターンを選択するだけなので入力作業が容易になる。また、溶接の内容が、簡易図形として表示される3次元モデルと色によって表示されるので、3次元CADシステムの空間上で溶接の内容を反映させて溶接部位を表示させるのに必要とされるデータ量を少なく抑えることができる。
【0053】
また、本実施形態においては、突き合わせ開先溶接である場合に、3次元CADシステム上の空間において、互いに突き合わせられて溶接の行われる2つのワークのうち、開先加工を行うワークの端縁上部に突き合わせ溶接(本例では断面正四角形)の溶接種別表示パターンが配置されるので、溶接および開先加工を行う作業者は、開先加工を行うべきワークを、溶接種別表示パターンの配置位置に基づき、的確に理解することができる。また、3次元CADシステムに溶接の作業内容を入力するオペレーターは、開先加工についての情報を入力するのに、開先加工を行うワーク上に溶接種別表示パターンを配置させるようにするだけで済み、入力作業が容易であり、開先加工の指示を容易に入力することができる。
【0054】
また、本実施形態においては、溶接が行われる部分についての溶接後の仕上げ内容に応じた仕上げ内容表示パターン(色)を選択すると、それに伴い溶接種別表示パターンにその色が付されて表示されるので、溶接作業者は、溶接後の仕上げ内容の概要を溶接種別表示パターンに付された仕上げ内容表示パターン(色)から直感的に理解することができる。また、3次元CADシステムに溶接の作業内容を入力するオペレーターは、溶接後の仕上げ内容を容易に入力することができる。
【0055】
(溶接ロボットによって構造上の制約を受けずに溶接を行うことが可能な限界領域を示す3次元モデルについて)
次に、3次元CADシステム上の空間に、溶接ロボット14によって構造上の制約を受けずに溶接を行うことが可能な限界領域を示す3次元モデルを表示させる形態について説明する。3次元CADシステム上の空間に、溶接ビードの3次元モデルの表示パターンが作成されると、3次元CADシステム上の溶接に関する指示内容を溶接ロボット14に入力し、指示内容に基づいた溶接作業を溶接ロボット14に行わせる。本実施形態においては、入力装置11によって溶接に関する指示内容を入力し、3次元CADシステム上の空間に、溶接種別表示パターンを表示させる際に、3次元CADシステム上の空間に、溶接ロボット14によって構造上の制約を受けずに溶接を行うことが可能な限界領域を示す3次元モデルを表示させることができる。
【0056】
図16に、本実施形態における溶接種別表示パターンが配置された3次元CADシステム上の空間の斜視図が示され、図17に、図16でレーザー溶接を表す溶接種別表示パターンによって示された溶接が溶接ロボット14によって行われるときの、構造上の制約を受けずに溶接を行うことが可能な限界領域の示された3次元CADシステム上の空間の斜視図が示される。また、図18に、図17に示される溶接ロボット14によって構造上の制約を受けずに溶接を行うことが可能な限界領域について側面から見た側面図を示す。また、図19に、図17に示される溶接ロボット14によって構造上の制約を受けずに溶接を行うことが可能な限界領域についての、溶接ビードの延びる方向に直交する面に沿う断面図を示す。
【0057】
図16に示されるように、本実施形態においては、平板40の上に、屈曲した板による部品41が複数配置され、部品41が平板40の上面に溶接によって取り付けられている。平板40の上面に配置されている部品41は、長手方向D8に長く延び、長手方向D8に交差する交差方向D9の両端に平板40に平行な板状の平行部41aと、交差方向D9の中央部において平板40から離間する方向へ突出した突出部41bとを有している。本実施形態においては、突出部41bは、平板40に平行に延在する平行部41aから上方へ突出した部分の全てを含むものとする。部品41における平行部41aと平板40とが、溶接によって接続されている。平板40上において、複数の部品41のそれぞれの長手方向が互いに平行となるように、複数の部品41が並べられている。
【0058】
本実施形態においては、レーザー溶接によって平板40と部品41との接続が行われている。溶接は、部品41の延びる長手方向D8と同じ方向に沿って行われている。溶接の種類がレーザー溶接であるので、図16の溶接種別表示パターン42は、溶接の行われる方向D8に直交する面についての断面が半円である。
【0059】
出力装置12の出力の表示モードを変えることにより、図16に示されるような溶接種別表示パターン42を表示する表示モードから、図17に示されるような3次元CADシステム上に溶接を行う溶接ロボット14が構造上の制約を受けずに移動可能な限界領域を表示する表示モードに切り替えることができる。
【0060】
出力装置12の表示モードが限界領域を表示する表示モードに切り替えられると、図17に示されるように、図16で溶接種別表示パターン42が配置されていた部分の周囲に、溶接ロボット14が構造上の制約を受けずに移動可能な限界領域を示す3次元モデル43が表示される。
【0061】
本実施形態においては、溶接ロボット14は、溶接が行われる際にワークを押さえつけるローラーと、レーザー溶接を行う溶接ヘッドとを有している。溶接ロボット14は、ローラーと溶接ヘッドとを溶接の行われる方向に沿って移動させながら溶接が行われる。図20に、溶接ロボット14が溶接を行う際に、ローラー44と溶接ヘッド45とが、溶接の行われる方向D8に沿って移動しているときの平板40、部品41、ローラー44及び溶接ヘッド45の斜視図を示す。図20においては、実際に溶接が行われているので、部品41上に実際の溶接ビード46が示されている。溶接ロボット14が溶接を行う際には、ローラー44と溶接ヘッド45とが、溶接の行われる方向に沿って移動することが必要になるので、ローラー44と溶接ヘッド45とが移動可能な領域の内部において、溶接を行うことが可能となる。従って、ローラー44と溶接ヘッド45とが移動可能な領域が、溶接ロボット14によって構造上の制約を受けずに溶接を行うことが可能な限界領域となる。
【0062】
本実施形態においては、図16に示されるように、平板40上に、平板40から離間する方向に突出した複数の部品41が溶接によって接続されることから、溶接ロボット14の溶接可能な領域が部品41によって構造上の制約を受け、溶接を行うことができない領域が生じる。本実施形態においては、図18に示されるように、限界領域を示す3次元モデル43は、平板40と部品41とが上下方向に当接しながら重ねられている部分において、平板40及び部品41の一方向に長く延びる長手方向D8に延びた長手方向領域の表示パターン43aと、部品41における長手方向D8の端部に近接した位置で、溶接ロボット14のローラー44と溶接ヘッド45とが溶接を終えた後に平板40及び部品41から逃げるために円弧上に形成された逃げ領域の表示パターン43bとを含んでいる。
【0063】
長手方向領域の表示パターン43aは、平板40及び部品41の長手方向D8と同じ方向に延びており、部品41における幅方向の中央で平板から離間する方向へ突出した突出部41bの高さとおおよそ同じ高さである。逃げ領域の表示パターン43bは、図18に示される点O1を中心とした円弧状の領域である。円弧状の逃げ領域の表示パターン43bの外径及び内径の中心が点O1である。点O1は、部品41における長手方向D8の端部41cよりも長手方向のやや内側の位置から鉛直方向上方に移動した位置にある。
【0064】
また、図19に示されるように、限界領域を示す3次元モデル43のうち、長手方向領域の表示パターン43aは、部品41における突出部41bに当接せず、突出部41bにおける交差方向D9の両端部からのクリアランスが確保されている。本実施形態においては、長手方向領域の表示パターン43aは、上下方向において、最も下方の位置で、部品41の突出部41bから最も大きく離間し、最も上方の位置で、突出部41bに最も近接している。従って、長手方向領域の表示パターン43aは、上下方向において、最も上の位置で最も広く、下方に向かうに従って徐々に狭くなる。これは、下方であればあるほど突出部41bがローラー44あるいは溶接ヘッド45の邪魔になってしまい、部品41とローラー44あるいは溶接ヘッド45とを干渉させないようにするには、下方の位置でクリアランスを大きく確保する必要があることによる。溶接ロボット14によって溶接が行われる際にワークとローラー44あるいは溶接ヘッド45との間で確保されるべきクリアランスの大きさは、レーザー溶接が行われる際のフローにおける、オフセット値の入力(S27)で行われてもよい。限界領域を示す3次元モデル43は、ワークの形状ほか、装置の仕様等に基づき、処理回路4のメモリ6に格納された限界領域作成プログラム10によって自動的に作成されるように構成されていてもよい。
【0065】
上記実施形態においては、限界領域を示す3次元モデル43として、溶接ロボット14のローラー44及び溶接ヘッド45の移動可能な領域がそのまま表示されているが、限界領域を示す3次元モデル43は、溶接の種類と合わせて表示されてもよい。例えば、限界領域を示す3次元モデル43の、溶接の行われる方向D8に直交する面に沿う断面が溶接の種類によって変えられ、限界領域を示す3次元モデル43の断面の形状によって溶接の種類が表示されてもよい。限界領域を示す3次元モデル43として、溶接ロボット14のローラー44及び溶接ヘッド45の移動可能な領域が形成され、そこから溶接の行われる方向D8に直交する面に沿う断面の外形を溶接の種類に合わせて変形させられてもよい。また、溶接ロボット14のローラー44及び溶接ヘッド45の移動可能な領域として限界領域を示す3次元モデル43を表示させ、限界領域を示す3次元モデル43の上に、溶接の種類を示す溶接種別表示パターンを配置させるように表示させてもよい。このように、3次元CADシステムの同一の空間内に、限界領域の3次元モデル43と、溶接の種類を示す溶接種別表示パターンとを合わせて表示させてもよい。
【0066】
上記のように、3次元CADシステム上の空間に、構造上の制約を受けずに溶接を行うことが可能な限界領域を示す3次元モデル43が表示される。3次元CADシステム上の空間に、限界領域の3次元モデル43が表示されるので、溶接ロボット14を用いて溶接を行う場合に、溶接の行われる部位が溶接ロボット14によって溶接を行うことが可能な位置か否かを、限界領域を示す3次元モデル43によって表示することができる。溶接の行われる部位が限界領域の3次元モデル43の内部に収まっていれば溶接可能と判断することができ、溶接の行われる部位が限界領域を示す3次元モデル43から外れた位置にあれば溶接を行うことができないと判断することができる。従って、画像を見た人は、溶接ロボット14による溶接に必要とされる領域が確保されているか否かを視覚的に容易に判断することができる。
【0067】
また、限界領域は、溶接ヘッドによって溶接が行われた後に溶接ヘッド45及びローラー44がワークから逃げるのに必要とされる逃げ領域を含んでいるので、3次元CADシステムの画像を見た人は、ローラー44と溶接ヘッド45とによるワークからの逃げに必要とされている領域が確保されているか否かを視覚によって容易に判断することができる。
【0068】
(他の実施形態)
なお、溶接種別表示パターンの断面形状は上記実施形態で説明したものに限定されない。溶接の種類に応じて断面形状を変え、溶接の種類を視覚的に判別できるのであれば、他の形態であってもよい。また、溶接種別表示パターンに付される仕上げ内容表示パターン(本例では色)についても、他の形態、例えば線種によるパターンとしてもよい。
【0069】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット若しくは手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、又は、列挙された機能を実行するようにプログラム若しくは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段若しくはユニットは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0070】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 3次元CADシステム
4 処理回路
5 プロセッサ
8 表示プログラム
14 溶接ロボット
15、16、20、21、23、24、25、26、29、30、31、32、35、36、38、39 ワーク
16、17、18、19、22、27、28、33、34、37、42 溶接ビードの3次元モデルの表示パターン(溶接種別表示パターン)
43 限界領域を示す3次元モデル
44 ローラー
45 溶接ヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2024-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元CADシステムにより作成された3次元モデルに対して、前記3次元モデルの溶接対象部位に溶接に関する情報を付与する3次元CADシステムであって、前記3次元CADシステムに予め格納され、溶接の種別ごとに付与された複数の溶接種別表示パターンから所望の溶接種別表示パターンを選択し、前記溶接対象部位を選択することにより、前記所望の溶接種別表示パターンを前記溶接対象部位に表示させる、3次元CADシステム。
【請求項2】
前記複数の溶接種別表示パターンの各々は簡略化された図形からなる3次元モデルである、請求項1に記載の3次元CADシステム。
【請求項3】
前記3次元CADシステムに予め格納され、溶接の仕上げ内容ごとに付与された複数の仕上げ内容表示パターンから所望の仕上げ内容表示パターンを選択することにより、前記溶接対象部位に表示された前記溶接種別表示パターンが、前記所望の仕上げ内容表示パターンを伴って表示される、請求項2に記載の3次元CADシステム。
【請求項4】
前記複数の仕上げ内容表示パターンの各々は異なる色である、請求項3に記載の3次元CADシステム。
【請求項5】
突き合わせ溶接、隅肉溶接、レーザー溶接、摩擦攪拌接合の場合において、前記簡略化された図形は、前記簡略化された図形の断面形状のまま溶接対象モデルに沿って延びた態様で表示され、前記簡略化された図形の長さは前記突き合わせ溶接、隅肉溶接、レーザー溶接、摩擦攪拌接合の溶接長さと一致する、請求項4に記載の3次元CADシステム。
【請求項6】
突き合わせ溶接が開先溶接の場合において、前記所望の溶接種別表示パターンは、前記簡略化された図形が前記簡略化された図形の断面形状のまま溶接対象モデルに沿って延びた態様で表示され、前記3次元モデルのうち、開先が取られる側の前記3次元モデルの端縁上面に沿って、前記所望の溶接種別表示パターンが表示される、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の3次元CADシステム。
【請求項7】
前記3次元モデルに対して、構造上および機械的制約を受けずに溶接を行うことが可能な限界領域をさらに表示する、請求項5に記載の3次元CADシステム。