(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154926
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電池制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/387 20190101AFI20241024BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20241024BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20241024BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20241024BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20241024BHJP
G01R 31/374 20190101ALI20241024BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241024BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241024BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01R31/387
G01R31/385
G01R31/382
G01R31/3828
G01R31/392
G01R31/374
H02J7/00 B
H01M10/48 P
H01M10/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069158
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】内山 正規
(72)【発明者】
【氏名】久保 俊一
(72)【発明者】
【氏名】倉知 大祐
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AA01
2G216BA01
2G216BA02
2G216BA21
2G216BA22
2G216BA41
2G216BA61
2G216BA71
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA10
5H030AA01
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】蓄電池の許容入力電力を精度良く算出し、ひいては蓄電池を適正に管理する。
【解決手段】BMU30は、組電池10における許容入力電力Winを算出する電池制御装置である。BMU30は、蓄電池10が満充電であることを判定する満充電判定部と、蓄電池10の満充電を基準として、蓄電池10の放電時の電流又は電流容量の加算、及び蓄電池10の充電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、蓄電池10の放電量として算出する放電量算出部と、放電量算出部により算出された放電量に基づいて、蓄電池10の許容入力電力Winを算出する入力電力算出部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池(10)における許容入力電力(Win)を算出する電池制御装置(30)であって、
前記蓄電池が満充電であることを判定する満充電判定部と、
前記蓄電池の満充電を基準として、前記蓄電池の放電時の電流又は電流容量の加算、及び前記蓄電池の充電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、前記蓄電池の放電量として算出する放電量算出部と、
前記放電量算出部により算出された前記放電量に基づいて、前記蓄電池における前記許容入力電力を算出する電力算出部と、
を備える電池制御装置。
【請求項2】
蓄電池(10)における許容入力電力(Win)を算出する電池制御装置(30)であって、
前記蓄電池が満充電であることを判定する満充電判定部と、
前記蓄電池の満充電を基準として、前記蓄電池の放電時の電流又は電流容量の加算、及び前記蓄電池の充電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、前記蓄電池の放電量として算出する放電量算出部と、
前記蓄電池の満放電を基準として、前記蓄電池の充電時の電流又は電流容量の加算、及び前記蓄電池の放電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、前記蓄電池の充電量として算出する充電量算出部と、
前記放電量算出部により算出された前記放電量に基づいて、前記蓄電池における前記許容入力電力を第1電力として算出する第1電力算出部と、
前記充電量算出部により算出された前記充電量に基づいて、前記蓄電池における前記許容入力電力を第2電力として算出する第2電力算出部と、
前記第1電力と前記第2電力とのいずれを前記許容入力電力として用いるかを、所定条件に基づいて使い分ける電力制御部と、
を備える電池制御装置。
【請求項3】
前記蓄電池は、電圧及び容量の関係を示す電圧-容量特性においてプラトー領域を有し、かつ当該プラトー領域内に容量に対して電圧が急変する急変域を有するものであり、
前記蓄電池の開回路電圧が検出されるタイミングにおいて、前記開回路電圧が、前記急変域よりも高容量側となる電圧であるか否かを判定する電圧判定部と、
前記放電量算出部により算出された前記放電量が、前記蓄電池の満充電容量から前記急変域までの電流容量よりも大きいか否かを判定する放電量判定部と、を備え、
前記放電量算出部は、前記開回路電圧が前記急変域よりも高容量側となる電圧であり、かつ前記放電量が、前記満充電容量から前記急変域までの電流容量よりも大きいと判定された場合に、前記放電量を減少側の値に更新する、請求項1又は2に記載の電池制御装置。
【請求項4】
前記充電量算出部は、前記蓄電池の開回路電圧が検出されるタイミングにおいて、前記開回路電圧に対応する残容量を前記充電量として設定する、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項5】
前記蓄電池は、電圧及び容量の関係を示す電圧-容量特性においてプラトー領域を有し、かつ当該プラトー領域内に容量に対して電圧が急変する急変域を有するものであり、
前記蓄電池の開回路電圧が検出されるタイミングにおいて、前記開回路電圧が、前記急変域よりも低容量側となる電圧であるか否かを判定する電圧判定部を備え、
前記充電量算出部は、前記電圧判定部により前記開回路電圧が前記急変域よりも低容量側となる電圧であると判定されたことを条件に、前記開回路電圧に対応する残容量を前記充電量として設定する、請求項4に記載の電池制御装置。
【請求項6】
前記電力制御部は、前記満充電判定部により前記蓄電池が満充電であると判定されたことを前記所定条件として用いるものであり、前記蓄電池の満充電であるとの判定後に、前記第1電力と前記第2電力とのうち前記第1電力を優先的に前記許容入力電力とする、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項7】
前記放電量算出部により算出された前記放電量の信頼性を判定する信頼性判定部を備え、
前記電力制御部は、前記信頼性判定部の判定結果を前記所定条件として用いるものであり、前記放電量の信頼性が低いと判定された場合に、前記第1電力に代えて前記第2電力を前記許容入力電力として用いる、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項8】
前記蓄電池が満充電であると判定されてからの前記蓄電池の電流積算の期間である積算期間が所定期間よりも長いことを判定する積算期間判定部を備え、
前記電力制御部は、前記積算期間判定部の判定結果を前記所定条件として用いるものであり、前記積算期間が前記所定期間よりも長いと判定された場合に、前記第1電力に代えて前記第2電力を前記許容入力電力として用いる、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項9】
前記蓄電池は、電圧及び容量の関係を示す電圧-容量特性においてプラトー領域を有し、かつ当該プラトー領域内に容量に対して電圧が急変する急変域を有するものであり、
前記蓄電池の開回路電圧が検出されるタイミングにおいて、前記開回路電圧が、前記急変域よりも低容量側となる電圧であるか否かを判定する電圧判定部を備え、
前記電力制御部は、前記電圧判定部の判定結果を前記所定条件として用いるものであり、前記開回路電圧が前記急変域よりも低容量側となる電圧であると判定された場合に、前記第1電力に代えて前記第2電力を前記許容入力電力として用いる、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項10】
前記蓄電池を備える電源システムに適用される電池制御装置であり、前記電源システムにおいてシステムスイッチのオンにより前記蓄電池の通電が可能となり、前記システムスイッチのオフにより前記蓄電池の通電が不可となっており、
前記電力制御部は、前記蓄電池が満充電であると前回判定されてからの前記システムスイッチのオン時間と、オフ時間と、それらオン時間及びオフ時間の合算時間との少なくともいずれかである判定時間が、所定時間未満であることを前記所定条件として用いるものであり、当該所定条件の成立時に、前記第1電力を前記許容入力電力として用い、当該所定条件の不成立時に、前記第2電力を前記許容入力電力として用いる、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項11】
前記蓄電池は、複数の単電池(11)が直列に接続されてなる組電池であり、
前記満充電判定部は、前記単電池ごとに満充電であることを判定するものであり、
前記放電量算出部は、前記単電池ごとに満充電を基準として前記放電量を算出し、
前記第1電力算出部は、前記複数の単電池における前記放電量のうち最も小さい放電量に基づいて前記第1電力の算出を行う、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項12】
前記蓄電池は、複数の単電池(11)が直列に接続されてなる組電池であり、
前記充電量算出部は、前記単電池ごとに満放電を基準として前記充電量を算出し、
前記第2電力算出部は、前記複数の単電池における前記充電量のうち最も大きい充電量に基づいて前記第2電力の算出を行う、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項13】
前記第1電力を前記許容入力電力として用いる状態から、前記第2電力を前記許容入力電力として用いる状態に移行する場合に、移行直前の前記第1電力を上限値として前記許容入力電力を制限する電力制限部を備える、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項14】
前記第1電力を前記許容入力電力として用いる状態から、前記第2電力を前記許容入力電力として用いる状態に移行する場合に、移行直前の前記第1電力から移行後の前記第2電力に対して前記許容入力電力を徐変させる電力徐変部を備える、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項15】
蓄電池(10)における許容入力電力(Win)を算出すべく、制御装置により実行されるプログラムであって、
前記蓄電池が満充電であることを判定する満充電判定処理と、
前記蓄電池の満充電を基準として、前記蓄電池の放電時の電流又は電流容量の加算、及び前記蓄電池の充電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、前記蓄電池の放電量として算出する放電量算出処理と、
前記放電量算出処理により算出された前記放電量に基づいて、前記蓄電池における前記許容入力電力を算出する入力電力算出処理と、
を備えるプログラム。
【請求項16】
蓄電池(10)における許容入力電力(Win)を算出すべく、制御装置により実行されるプログラムであって、
前記蓄電池が満充電であることを判定する満充電判定処理と、
前記蓄電池の満充電を基準として、前記蓄電池の放電時の電流又は電流容量の加算、及び前記蓄電池の充電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、前記蓄電池の放電量として算出する放電量算出処理と、
前記蓄電池の満放電を基準として、前記蓄電池の充電時の電流又は電流容量の加算、及び前記蓄電池の放電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、前記蓄電池の充電量として算出する充電量算出処理と、
前記放電量算出処理により算出された前記放電量に基づいて、前記蓄電池における前記許容入力電力を第1電力として算出する第1電力算出処理と、
前記充電量算出処理により算出された前記充電量に基づいて、前記蓄電池における前記許容入力電力を第2電力として算出する第2電力算出処理と、
前記第1電力と前記第2電力とのいずれを前記許容入力電力として用いるかを、所定条件に基づいて使い分ける電力制御処理と、
を備えるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓄電池では、過充電が行われることにより劣化が進行することが懸念される。そのため、蓄電池において許容入力電力(Win)を定めておき、その許容入力電力により蓄電池に対する電力の入力(蓄電池の充電)を制限する技術が知られている。例えば、蓄電池の満充電容量に対する残容量の比率を示すSOC(State Of Charge)を、蓄電池のOCV(開回路電圧:Open Circuit Voltage)に基づいて算出するとともに、そのSOCに基づいて許容入力電力を算出する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池では、電圧及び容量の関係を示す電圧-容量特性において、容量増加に対して急峻な電圧増加が生じる残容量が満充電容量となっており、その満充電容量を上限として、蓄電池に対する電力の入力が制限される。ただしこの場合、蓄電池において、劣化に伴い満充電容量付近の特性が変化すると、OCVによるSOC算出の精度低下が生じ、ひいてはSOCによる許容入力電力の算出精度が低下することが考えられる。また、満充電容量の変化に起因して、満充電容量に対する容量余裕度合(充電の余裕度)を正しく把握することが困難になると、やはり許容入力電力の算出精度が低下することが考えられる。許容入力電力が過大であると、蓄電池の保護が不十分になり、許容入力電力が過小であると、蓄電池の保護が過剰になることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄電池の許容入力電力を精度良く算出し、ひいては蓄電池を適正に管理することができる電池制御装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、第1の発明は、
蓄電池における許容入力電力を算出する電池制御装置であって、
前記蓄電池が満充電であることを判定する満充電判定部と、
前記蓄電池の満充電を基準として、前記蓄電池の放電時の電流又は電流容量の加算、及び前記蓄電池の充電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、前記蓄電池の放電量として算出する放電量算出部と、
前記放電量算出部により算出された前記放電量に基づいて、前記蓄電池における前記許容入力電力を算出する入力電力算出部と、
を備える。
【0007】
蓄電池では、過充電による劣化を抑制すべく、蓄電池の許容入力電力が適宜設定される。この場合、蓄電池の劣化等に起因して満充電容量のずれが生じると、許容入力電力を正しく算出できないことが懸念される。この点を鑑み、蓄電池が満充電であることを判定するとともに、蓄電池の満充電を基準として、蓄電池の放電時の電流又は電流容量の加算、及び蓄電池の充電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、蓄電池の放電量として算出するようにした。また、その放電量に基づいて、蓄電池における許容入力電力を算出するようにした。この場合、仮に蓄電池の劣化により満充電容量が変化していても、満充電に対する容量余裕度合に応じた許容入力電力を適正に算出することができる。その結果、蓄電池の許容入力電力を精度良く算出し、ひいては蓄電池を適正に管理することができる。
【0008】
また、第2の発明は、
蓄電池における許容入力電力を算出する電池制御装置であって、
前記蓄電池が満充電であることを判定する満充電判定部と、
前記蓄電池の満充電を基準として、前記蓄電池の放電時の電流又は電流容量の加算、及び前記蓄電池の充電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、前記蓄電池の放電量として算出する放電量算出部と、
前記蓄電池の満放電を基準として、前記蓄電池の充電時の電流又は電流容量の加算、及び前記蓄電池の放電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、前記蓄電池の充電量として算出する充電量算出部と、
前記放電量算出部により算出された前記放電量に基づいて、前記蓄電池における前記許容入力電力を第1電力として算出する第1電力算出部と、
前記充電量算出部により算出された前記充電量に基づいて、前記蓄電池における前記許容入力電力を第2電力として算出する第2電力算出部と、
前記第1電力と前記第2電力とのいずれを前記許容入力電力として用いるかを、所定条件に基づいて使い分ける電力制御部と、
を備える。
【0009】
蓄電池が満充電であることを判定するとともに、蓄電池の満充電を基準とする充放電量の積算(電流又は電流容量の積算)により蓄電池の放電量を算出し、その放電量に基づいて、蓄電池の許容入力電力を第1電力として算出するようにした。この場合、仮に蓄電池の劣化により満充電容量が変化していても、第1電力は、都度の満充電に対する容量余裕度合に応じたものとなる。そのため、第1電力を許容入力電力として用いることにより、許容入力電力を適正に設定できるものとなる。
【0010】
また、蓄電池の満放電を基準とする充放電の積算(電流又は電流容量の積算)により蓄電池の充電量を算出し、その充電量に基づいて、蓄電池の許容入力電力を第2電力として算出することとした。そして、第1電力と第2電力とのいずれを許容入力電力として用いるかを、所定条件に基づいて使い分けるようにした。この場合、蓄電池の満充電を基準とする放電量に基づき算出される第1電力について、仮に算出精度が低下したとしても、蓄電池の満放電を基準とする充電量に基づき算出される第2電力を許容入力電力として用いることで、好適なサポートを実現できる。その結果、蓄電池の許容入力電力を精度良く算出し、ひいては蓄電池を適正に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】劣化時における満充電容量のずれを説明するための図。
【
図3】第1積算容量ΔQ1、第2積算容量ΔQ2を説明するための図。
【
図4】第1電力W1、第2電力W2の算出に用いる関係を示す図。
【
図5】2つの単電池についてOCV-容量特性を示す図。
【
図6】2つの単電池について第1積算容量ΔQ1の違いを示す図。
【
図7】許容入力電力を算出する手順を示すフローチャート。
【
図8】電流及び電圧をプロットした二次元座標を示す図。
【
図9】別の実施形態において許容入力電力を算出する手順を示すフローチャート。
【
図10】別の実施形態において許容入力電力の切替処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電源システムの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に搭載される電源システムについて具体的な構成を説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における電源システムの概略構成を示す図である。電源システムは、蓄電池10と、蓄電池10からの電力供給先である電気負荷としての回転電機ユニット20と、蓄電池10の状態を監視するBMU30(Battery Management Unit)とを備えている。蓄電池10は、複数の単電池11が直列接続された組電池により構成されている。単電池11は、例えばリチウムイオン蓄電池であり、より具体的には、正極活物質としてリチウム、鉄、リンを用いたLFP電池(リン酸鉄リチウムイオン蓄電池、LiFePO4バッテリ)である。単電池11は、例えば複数の電池セルが直列接続されたものであってもよい。
【0014】
蓄電池10に接続された電気経路12には電流センサ13が設けられている。また、蓄電池10には、単電池11ごとの両端電圧を検出する電圧センサ14が設けられている。電圧センサ14により、全ての単電池11について端子電圧がそれぞれ検出される。
【0015】
回転電機ユニット20は、多相(例えば3相)のステータ巻線を有する回転電機21と、その回転電機21に対する電力の入出力を調整するインバータ22とを備えている。回転電機21は、車両の走行動力源として設けられており、力行機能と回生発電機能とを有するものとなっている。インバータ22は、ステータ巻線の各相巻線の通電を制御する複数のスイッチング素子を有しており、不図示のMG制御装置により各スイッチング素子のスイッチング制御が行われることで、各相の通電電流が制御される。なお、蓄電池10には、回転電機ユニット20以外の電気負荷も接続されるが、ここでは図示及び説明を割愛する。
【0016】
蓄電池10は、外部充電設備での外部充電が可能となっている。具体的には、蓄電池10の正側及び負側の電気経路12には、ケーブルを介して充電装置40が接続可能となっており、車両の停車中において充電装置40による蓄電池10の充電が行われる。
【0017】
BMU30は、CPUや各種メモリを有するマイクロコンピュータを備えた電子制御装置であり、BMU30には、上述した電流センサ13、電圧センサ14など各種センサから検出信号が適宜入力される。BMU30は、メモリ内に記憶されているプログラムに基づいて、蓄電池10に関する各種演算処理を実行する。具体的には、BMU30は、電圧センサ14の検出信号を取得し、蓄電池10の通電が行われていない状態下、すなわち通電電流=ゼロとなる状態下で各単電池11の端子電圧をOCV(開回路電圧)として検出する。また、BMU30は、所定の時間周期で電流センサ13の検出信号を取得し、蓄電池10の充放電電流を検出する。
【0018】
また、BMU30は、蓄電池10において入力可能(充電可能)とする電力を許容入力電力Winとして算出し、蓄電池10に対する過充電を抑制すべく、蓄電池10への入力電力が許容入力電力Win以内となるように電力制御を実施する。本実施形態では、BMU30が「電池制御装置」に相当する。なお、許容入力電力Winは、上限入力電力や最大充電電力、目標充電電力とも称される電力である。また、電圧一定の場合を想定すれば、許容入力電力Winは、許容入力電流又はそれに相当する値として規定されていてもよい。
【0019】
ところで、蓄電池10の劣化等に起因して満充電容量のずれが生じると、許容入力電力Winを正しく算出できないことが懸念される。劣化時における満充電容量のずれを
図2を用いて説明する。
図2(a)は、蓄電池10においてOCVと容量との相関であるOCV-容量特性を示す図であり、
図2(b)は、蓄電池10においてOCVとSOCとの相関であるOCV-SOC特性を示す図である。
図2(a),(b)において、実線は初期特性を示し、破線は劣化後の特性を示す。なお、
図2(a),(b)では、容量変化に対するOCV変化が微小となるプラトー領域において、容量に対して電圧が急変する急変域Xを有する特性が示されている。プラトー領域は、その領域よりも低容量側及び高容量側と比べて、容量変化に対するOCV変化が小さい領域である。急変域Xは、低容量側及び高容量側の2つのプラトー領域の間に挟まれた段差領域である。
【0020】
図2(a)のOCV-容量特性において、蓄電池10の劣化が生じると、満充電容量が減少し、低容量側にシフトする。この場合、満充電容量のずれに起因して、満充電に対する容量余裕度合(充電の余裕度)を正しく把握することが困難になる。なお、プラトー領域の中間位置の急変域Xよりも低容量側において特性のずれはない。
【0021】
また、
図2(b)のOCV-SOC特性において、蓄電池10の劣化が生じると、満充電容量の減少に伴い特性線の全体が高SOC側にシフトする。この場合、OCVに対するSOC値として図示のごとく誤差が生じる。
【0022】
そこで本実施形態では、蓄電池10の満充電を基準として、放電側への電流積算により蓄電池10の放電量を算出し、その放電量に基づいて、蓄電池10における許容入力電力Winを算出することとしている。また、本実施形態では、許容入力電力Winに相当する電力として、2種類の演算手法により第1電力W1と第2電力W2とを算出し、それら第1電力W1及び第2電力W2の使い分けにより許容入力電力Winを決定することとしており、その構成について以下に詳しく説明する。
【0023】
図1に示すように、BMU30は、許容入力電力Winの算出に関する構成として、満充電判定部31と、第1積算容量算出部32と、第2積算容量算出部33と、第1電力算出部34と、第2電力算出部35と、電力制御部36とを有している。
【0024】
満充電判定部31は、蓄電池10が満充電であることを判定する。このとき、満充電に相当する高容量域まで充電が行われたことが判定される。具体的には、下記のいずれかが成立した場合に、満充電であると判定されるとよい。
・規定の充電終了条件に達したこと。充電終了条件は、例えば、充電装置40による充電時においてCCV(閉回路電圧)が所定値よりも大きくなったこと、又は定電圧充電時において充電電流が所定値よりも小さくなったことである。
・蓄電池10のOCVが、満充電判定のための閾値電圧よりも高いこと。
・満充電であると判定されてからの放電量が所定値以下であること。
【0025】
第1積算容量算出部32は、蓄電池10の満充電を基準として、放電側への電流積算により第1積算容量ΔQ1を算出する。
図3(a)に示すように、第1積算容量ΔQ1は、満充電を基準とする放電量として算出される。
図3(a)では、初期特性と劣化時の特性とが満充電の容量を一致させた状態で示されている。第1積算容量算出部32は、満充電判定時にリセットされた規定値に対して、所定周期で放電時の電流容量を逐次加算するとともに充電時の電流容量を逐次減算することで、第1積算容量ΔQ1を算出する。なお、第1積算容量算出部32が「放電量算出部」に相当する。
【0026】
第2積算容量算出部33は、蓄電池10の満放電を基準として、充電側への電流積算により第2積算容量ΔQ2を算出する。満放電の容量は例えば残容量ゼロである。
図3(b)に示すように、第2積算容量ΔQ2は、満放電を基準とする充電量として算出される。
図3(b)では、初期特性と劣化時の特性とが満放電の容量を一致させた状態で示されている。第2積算容量算出部33は、OCV検出時においてOCVに対応する残容量により第2積算容量ΔQ2のベース値を算出するとともに、そのベース値に対して、所定周期で充電時の電流容量を逐次加算するとともに放電時の電流容量を逐次減算することで、第2積算容量ΔQ2を算出する。なお、第2積算容量算出部33が「充電量算出部」に相当する。
【0027】
第1電力算出部34は、第1積算容量算出部32により算出された第1積算容量ΔQ1に基づいて、蓄電池10の許容入力電力Winを第1電力W1として算出する。第1電力算出部34は、例えば
図4(a)に示す関係を用いて、第1電力W1を算出する。
図4(a)では、第1積算容量ΔQ1が大きくなるほど、第1電力W1が大きくなる関係が定められている。
【0028】
第2電力算出部35は、第2積算容量算出部33により算出された第2積算容量ΔQ2に基づいて、蓄電池10の許容入力電力Winを第2電力W2として算出する。第2電力算出部35は、例えば
図4(b)に示す関係を用いて、第2電力W2を算出する。
図4(b)では、第2積算容量ΔQ2が大きくなるほど、第2電力W2が大きくなる関係が定められている。
【0029】
電力制御部36は、所定条件に基づいて、第1電力W1と第2電力W2とのいずれかを許容入力電力Winとして使い分ける。所定条件については、後で詳しく説明するが、例えば、第1積算容量ΔQ1の信頼性の判定結果を所定条件として用い、信頼性が低いと判定された場合に、第1電力W1に代えて第2電力W2を許容入力電力Winとして用いることとしている。
【0030】
蓄電池10では、各単電池11のOCV-容量特性が互いに異なるものとなり、各単電池11において第1積算容量ΔQ1や第2積算容量ΔQ2に差違が生じることが考えられる。この点を鑑みて、本実施形態では、第1電力算出部34及び第2電力算出部35において、各単電池11における特性のばらつきを加味して第1電力W1及び第2電力W2を算出することとしている。以下に、第1電力W1及び第2電力W2の算出について補足する。なおここでは、満充電判定部31は、蓄電池10の満充電判定として、単電池11ごとに満充電であることを判定するものとしている。また、第1積算容量算出部32は、単電池11ごとに、満充電を基準として第1積算容量ΔQ1を算出し、第2積算容量算出部33は、単電池11ごとに、満放電を基準として第2積算容量ΔQ2を算出するものとしている。
【0031】
図5には、蓄電池10における2つの単電池11についてOCV-容量特性を示す。
図5(a)は単電池Aの特性、
図5(b)は単電池Bの特性を示している。各単電池A,Bは、満充電となる容量(満充電容量)が相違しており、単電池Aの満充電容量はCfa、単電池Bの満充電容量はCfbである。この場合、各単電池A,Bの満充電容量が相違していると、各単電池A,Bで第1積算容量ΔQ1が相違する。これを
図6を用いて説明する。
図6では、時系列で(a)の状態、(b)の状態、(c)の状態に変化するものとしている。
【0032】
図6において(a)の状態では、単電池A,Bにおいて第1積算容量ΔQ1がそれぞれΔQ1a,ΔQ1b(ΔQ1a<ΔQ1b)となっており、その状態からX[Ah]の充電が行われることで(b)の状態となる。(b)の状態では、単電池Aが満充電になることで第1積算容量ΔQ1が0にリセットされる一方、単電池Bの第1積算容量ΔQ1が「ΔQ1b-X」となる。また、(b)の状態からY[Ah]の放電が行われることで(c)の状態となる。(c)の状態では、単電池Aの第1積算容量ΔQ1が「Y」、単電池Bの第1積算容量ΔQ1が「ΔQ1b-X+Y」となる。
【0033】
この場合、第1電力算出部34は、複数の単電池11における第1積算容量ΔQ1のうち最も小さい第1積算容量ΔQ1に基づいて第1電力W1の算出を行う。
図6では、単電池A,Bの第1積算容量ΔQ1a,ΔQ1bのうち、第1積算容量ΔQ1aに基づいて第1電力W1が算出されるとよい。
【0034】
また、
図5(a),(b)では、各単電池A,BにおいてOCVに対応する残容量が相違している。この場合、第2電力算出部35は、複数の単電池11における第2積算容量ΔQ2のうち最も大きい第2積算容量ΔQ2に基づいて第2電力W2の算出を行う。
図5(a),(b)では、単電池A,Bの残容量Ca,Cb(例えばOCV対応の残容量)のうち、大きい方の残容量Caに対応する第2積算容量ΔQ2に基づいて第2電力W2が算出されるとよい。
【0035】
上記のごとく第1電力W1及び第2電力W2が算出されることで、許容入力電力Winが過剰に大きい値として算出されることが抑制される。これにより、蓄電池10において劣化抑制を適切に行わせることができる。
【0036】
図7は、許容入力電力Winを算出する手順を示すフローチャートであり、本処理は、車両の電源スイッチ(IGスイッチ)がオンされた後のシステム作動状態において、BMU30により所定周期で繰り返し実行される。本実施形態では、
図7の処理により、上述した満充電判定部31、第1積算容量算出部32、第2積算容量算出部33、第1電力算出部34、第2電力算出部35及び電力制御部36の各機能が実現されるものとなっている。
【0037】
図7において、ステップS11では、電流センサ13による検出電流に基づいて、蓄電池10の充放電により増減変化した電流容量を算出する。このとき、電流容量は、例えば充電時の電流を正として算出される。
【0038】
ステップS12では、蓄電池10の満充電を基準とする第1積算容量ΔQ1を算出するとともに、蓄電池10の満放電を基準とする第2積算容量ΔQ2を算出する。具体的には、第1積算容量ΔQ1の前回値に対して、ステップS11で算出した電流容量を減算して、第1積算容量ΔQ1の今回値を算出する。このとき、蓄電池10の満充電からの放電側への電流積算として、放電側への電流容量の積算が行われる。また、第2積算容量ΔQ2の前回値に対して、ステップS11で算出した電流容量を加算して、第2積算容量ΔQ2の今回値を算出する。このとき、蓄電池10の満放電からの充電側への電流積算として、充電側への電流容量の積算が行われる。
【0039】
その後、ステップS13では、蓄電池10が満充電であるか否かを判定する。そして、満充電であれば、ステップS14に進み、満充電でなければ、ステップS16に進む。
【0040】
ステップS14では、第1積算容量ΔQ1を規定値にリセットする。規定値は、満充電からの放電量を算出するための基準値であり、例えば0である。ただし、OCVに基づいて満充電判定を行う場合には、OCVの値に応じて規定値を変更してもよい。例えば、OCVが低いほど規定値を大きい値にすることが好ましい。また、蓄電池10の低温時には抵抗が増加して満充電に至りにくいことから、電池温度に応じて規定値を変更してもよい。この場合、低温ほど規定値が大きくなるようにしてもよい。
【0041】
その後、ステップS15では、許容入力電力Winとして第1電力W1を優先的に用いることを示すフラグFWに1をセットする。なお、フラグFWは、システム起動時において、初期値として1がセットされるものとなっており、既にFW=1であればその状態が維持される。
【0042】
また、ステップS16では、今現在、OCVの検出タイミングであるか否かを判定し、OCVの検出タイミングであれば、ステップS17でOCVを取得する。このとき、例えば車両の起動直後(電源スイッチのオン直後)であり、かつ蓄電池10の通電開始前である場合に、OCVの検出タイミングであると判定され、電圧センサ14により検出されたOCVが取得されるとよい。なお、OCVの検出条件には前回の車両停止時からの放置時間が所定時間以上であることが加えられていてもよい。OCVは、所定の単電池11のOCVであるとよい。
【0043】
また、車両の電源スイッチのオン中(車両走行時)において、所定期間(例えば数秒~数分程度の期間)ごとにOCVが検出される構成であってもよい。この場合、
図8に示すように、定期的に蓄電池10の電流及び電圧が取得され、その電流及び電圧が二次元座標にプロットされる。そして、その二次元座標上における近似直線の電圧軸切片の電圧がOCVとして算出される。なお、所定期間内の電流変化が小さい場合、又は所定期間内において充電及び放電のうち一方が偏って生じている場合には、OCVの検出精度が低下する懸念があり、OCV検出が非実施とされるとよい。
【0044】
その後、ステップS18では、蓄電池10のOCVが、OCV-容量特性の急変域Xよりも低容量側となる電圧であるか否かを判定する。この場合、急変域Xに対応する電圧閾値を定めておき、OCVが電圧閾値よりも低ければ、OCVが急変域Xよりも低容量側となる電圧であると判定され、OCVが電圧閾値よりも高ければ、OCVが急変域Xよりも高容量側となる電圧であると判定されるとよい。そして、蓄電池10のOCVが急変域Xよりも低容量側となる電圧であれは、ステップS19に進み、蓄電池10のOCVが急変域Xよりも高容量側となる電圧であれは、ステップS21に進む。
【0045】
ステップS19では、OCV-容量の相関関係を用い、OCVに対応する残容量を算出するとともに、その残容量を第2積算容量ΔQ2として設定する(第2積算容量ΔQ2をリセットする)。
【0046】
一方、ステップS21では、ステップS12で算出した第1積算容量ΔQ1が、蓄電池10の満充電容量から急変域Xまでの電流容量ΔQAよりも大きいか否かを判定する。電流容量ΔQAは、初期特性での満充電容量から急変域Xまでの電流容量であるとよい。ただし、電流容量ΔQAは、蓄電池10の劣化を想定して、初期特性での満充電容量から急変域Xまでの電流容量よりも小さい電流容量であってもよい。
【0047】
そして、ステップS21が否定されれば、ステップS22を読み飛ばし、ステップS21が肯定されれば、ステップS22に進む。ステップS22では、第1積算容量ΔQ1を減少側の値に更新する。このとき、第1積算容量ΔQ1は、満充電容量から急変域Xまでの電流容量ΔQAを減算分として減算されるとよい。又は、第1積算容量ΔQ1は、予め定めた所定容量を減算分として減算されるとよい。
【0048】
その後、ステップS23では、第1積算容量ΔQ1の信頼性が低いか否かを判定する。第1積算容量ΔQ1の信頼性は、下記の各判定手法のうち少なくともいずれか1つにより判定されるとよい。
・蓄電池10が満充電であると判定されてからの蓄電池10の電流積算の期間である積算期間T1が所定期間よりも長いか否かにより信頼性判定が行われるとよい。積算期間T1が所定時間よりも長いと判定された場合に、信頼性が低いと判定される。具体的には、蓄電池10の満充電の判定後において、電源スイッチのオン状態での経過時間(オン時間)が所定時間以上となった場合に、電流センサ値の積算誤差が大きくなったとみなし、第1積算容量ΔQ1の信頼性が低いと判定されるとよい。
・蓄電池10が満充電であると判定された後において蓄電池10の充放電の制御が停止されている状態である充放電停止の期間T2が所定期間よりも長いか否かにより信頼性判定が行われるとよい。充放電停止の期間T2が所定時間よりも長いと判定された場合に、信頼性が低いと判定される。具体的には、車両の放置時間、すなわち電源スイッチのオフ状態での経過時間(オフ時間)が所定時間以上となった場合に、電池自己放電等により電流センサ13により検出されない放電が多量に生じたとみなし、第1積算容量ΔQ1の信頼性が低いと判定されるとよい。
・積算期間T1と充放電停止の期間T2とを合わせた期間、すなわち蓄電池10が満充電であると判定された後の経過時間が所定期間よりも長いか否かにより信頼性判定が行われるとよい。満充電判定からの経過時間(T1+T2)が所定時間よりも長いと判定された場合に、信頼性が低いと判定されるとよい。
【0049】
なお、第1積算容量ΔQ1は満充電時にリセットされ、第2積算容量ΔQ2はOCV検出時にリセットされる。この場合、第1積算容量ΔQ1は、第2積算容量ΔQ2よりも優先的にWin算出に用いられ、かつ第1積算容量ΔQ1の方が、第2積算容量ΔQ2よりもリセットの頻度が小さいことが考えられるため、第1積算容量ΔQ1に関して電流積算期間による信頼性判定が行われるとよい。
【0050】
ステップS23において、第1積算容量ΔQ1の信頼性が低いと判定された場合には、ステップS24に進む。ステップS24では、フラグFWを0にリセットする。
【0051】
その後、ステップS25では、フラグFWに1がセットされているか否かを判定する。フラグFWに1がセットされていれば、ステップS26に進む。ステップS26では、
図4(a)の関係を用い、第1積算容量ΔQ1に基づいて第1電力W1を算出する。そして、この第1電力W1を許容入力電力Winとして設定する。ここで、蓄電池10が満充電であると判定された場合(ステップS13がYESの場合)にはフラグFWに1がセットされており、第1電力W1が優先的に用いられて許容入力電力Winが算出される。
【0052】
また、フラグFWに1がセットされていなければ、ステップS27に進む。ステップS27では、
図4(b)の関係を用い、第2積算容量ΔQ2に基づいて第2電力W2を算出する。そして、この第2電力W2を許容入力電力Winとして設定する。ステップS25~S27によれば、フラグFWの情報に基づいて第1電力W1及び第2電力W2の使い分けが行われる。この場合、少なくとも蓄電池10の満充電の判定後は第1電力W1が優先的に許容入力電力Winとして用いられる。また、ステップS23において第1積算容量ΔQ1の信頼性が低いと判定されていれば、第1電力W1に代えて第2電力W2が許容入力電力Winとして用いられる。
【0053】
その後、ステップS28では、第1電力W1を許容入力電力Winとして用いる状態から、第2電力W2を許容入力電力Winとして用いる状態に移行した直後の所定期間であるか否かを判定する。そして、移行直後の所定期間であれば、ステップS29に進む。ステップS29では、移行直前の第1電力を上限値として許容入力電力Winを制限する。つまり、許容入力電力Win(第2電力W2)を、第1電力W1よりも大きくならないように制限する。また、続くステップS30では、移行直前の第1電力W1から移行後の第2電力W2に対して許容入力電力Winを徐変させる。このとき、許容入力電力Winの今回値及び過去値(例えば直近の所定回数分の値)のなまし演算を行って許容入力電力Winを決定するとよい。所定期間は、予め定めた時間であってもよい。又は、所定期間は、なまし演算による第2電力W2の制限(徐変)がなくなるまでの期間であってもよい。
【0054】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0055】
蓄電池10が満充電であることを判定するとともに、蓄電池10の満充電を基準とする放電量である第1積算容量ΔQ1に基づいて、蓄電池10の許容入力電力Winを第1電力W1として算出するようにした。この場合、仮に蓄電池10の劣化により満充電容量が変化していても、第1電力W1は、都度の満充電に対する容量余裕度合に応じたものとなる。そのため、第1電力W1を許容入力電力Winとして用いることにより、許容入力電力Winを適正に設定できるものとなる。
【0056】
また、蓄電池10の満放電を基準とする充電量である第2積算容量ΔQ2に基づいて、蓄電池10の許容入力電力Winを第2電力W2として算出することとし、第1電力W1と第2電力W2とのいずれを許容入力電力Winとして用いるかを、所定条件に基づいて使い分けるようにした。この場合、第1積算容量ΔQ1に基づき算出される第1電力W1について仮に算出精度が低下したとしても、第2積算容量ΔQ2に基づき算出される第2電力W2を許容入力電力Winとして用いることで、好適なサポートを実現できる。その結果、蓄電池10の許容入力電力Winを精度良く算出し、ひいては蓄電池10の充放電を適正に管理することができる。
【0057】
蓄電池10の劣化に伴う特性変化や第1積算容量ΔQ1の算出誤差等に起因して、蓄電池10のOCVがOCV-容量特性の急変域Xよりも高容量側となる電圧であるにもかかわらず、第1積算容量ΔQ1(満充電からの放電量)が、蓄電池10の満充電容量から急変域Xまでの電流容量よりも大きくなることが生じうる。この点を鑑み、蓄電池10のOCVが急変域Xよりも高容量側となる電圧であり、かつ第1積算容量ΔQ1が、満充電容量から急変域Xまでの電流容量(ΔQA)よりも大きいと判定された場合に、第1積算容量ΔQ1を減少側の値に更新するようにした。これにより、第1積算容量ΔQ1の算出精度を高め、ひいては許容入力電力Winを高精度に算出することができる。
【0058】
蓄電池10のOCVが検出されるタイミングにおいて、OCVに対応する残容量を第2積算容量ΔQ2として設定する構成とした。この場合、蓄電池10においてOCVが検出される度に第2積算容量ΔQ2の再設定(リセット)が可能になるため、第2積算容量ΔQ2を高い精度で保つことができ、ひいては許容入力電力Winの算出精度の向上に貢献できるようになっている。
【0059】
蓄電池10のOCVが検出されるタイミングにおいて、OCVがOCV-容量特性の急変域Xよりも低容量側となる電圧であることを条件に、OCVに対応する残容量を第2積算容量ΔQ2として設定する構成とした。この場合、OCV-容量特性において急変域Xよりも高容量側では蓄電池10の劣化の影響により特性変化が生じているおそれがあるが、その特性変化に起因する第2積算容量ΔQ2の算出精度の低下を抑制できる。
【0060】
蓄電池10が満充電であると判定された場合にフラグFWをセットし、第1電力W1と第2電力W2とのうち第1電力W1を優先的に許容入力電力Winとする構成とした。これにより、蓄電池10が満充電に近い状態である状況において許容入力電力Winを適正に行わせることができる。
【0061】
第1積算容量ΔQ1の信頼性の判定結果を所定条件として用い、第1積算容量ΔQ1の信頼性が低いと判定された場合に、第1電力W1に代えて第2電力W2を許容入力電力Winとして用いる構成とした。これにより、許容入力電力Winとしての第1電力W1及び第2電力W2の使い分けを適正に行わせることができる。
【0062】
蓄電池10の電流積算が行われる場合には、その積算期間が長くなるほど、電流検出の誤差が蓄積されることが考えられる。この点を考慮し、蓄電池10の満充電判定からの電流積算間が所定期間よりも長いと判定された場合に、第1電力W1に代えて第2電力W2を許容入力電力Winとして用いるようにした。これにより、電流検出の積算誤差に起因して第1積算容量ΔQ1の算出精度が低下し、結果としてWin算出精度が低下するといった不都合を抑制することができる。
【0063】
単電池11ごとに満充電を基準として第1積算容量ΔQ1を算出し、複数の単電池11における第1積算容量ΔQ1のうち最も小さい第1積算容量ΔQ1に基づいて第1電力W1を算出するようにした。また、単電池11ごとに満放電を基準として第2積算容量ΔQ2を算出し、複数の単電池11における第2積算容量ΔQ2のうち最も大きい第2積算容量ΔQ2に基づいて第2電力W2を算出するようにした。この場合、複数の単電池11からの情報のうち適正なものを用いて第1電力W1及び第2電力W2を算出し、ひいては許容入力電力Winが過剰に大きい値として算出されることを抑制することができる。
【0064】
第1電力W1を許容入力電力Winとして用いる状態から、第2電力W2を許容入力電力Winとして用いる状態に移行する場合には、第1電力W1と第2電力W2との差違が電力制御に影響を及ぼすことが懸念される。この点を鑑み、第1電力W1から第2電力W2への移行時に、移行直前の第1電力W1を上限値として許容入力電力Winを制限する構成とした。これにより、許容入力電力Winが意図せず上昇してユーザに違和感を抱かせるといった不都合を抑制できる。
【0065】
第1電力W1を許容入力電力Winとして用いる状態から、第2電力W2を許容入力電力Winとして用いる状態に移行する場合に、移行直前の第1電力W1から移行後の第2電力W2に対して許容入力電力Winを徐変させるようにした。これにより、許容入力電力Winの急変によりユーザに違和感を抱かせるといった不都合を抑制できる。
【0066】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば次のように変更してもよい。
【0067】
・第1電力W1と第2電力W2とを使い分ける所定条件として、下記に示す条件が定められていてもよい。
【0068】
蓄電池10のOCVが検出されるタイミングにおいて、OCVが急変域Xよりも低容量側となる電圧であるか否かを判定し(電圧判定部)、その判定結果を所定条件として用い、OCVが急変域Xよりも低容量側となる電圧であれば、第1電力W1に代えて第2電力W2を許容入力電力Winとして用いるようにしてもよい。
【0069】
具体的には、
図9に示すWin算出処理が実行されるとよい。
図9は、
図7の一部を変更したものであり、同じ処理については同一のステップ番号を付している。
図9では、OCVの検出タイミングであり、かつOCVが急変域Xよりも低容量側となる電圧であると判定された場合(ステップS16,S18が共にYESの場合)に、ステップS41において、フラグFWを0にリセットする。これにより、ステップS27において、第2積算容量ΔQ2に基づいて第2電力W2が算出されることとなる。
【0070】
蓄電池10のOCV-容量特性において、蓄電池10の残容量が満充電容量から離れている程、第1積算容量ΔQ1の精度が低下すると考えられる。この点を考慮し、蓄電池10のOCVが急変域Xよりも低容量側となる電圧である場合に、第1電力W1に代えて第2電力W2を許容入力電力Winとして用いるようにした。これにより、第1積算容量ΔQ1の算出精度の低下に起因してWin算出精度が低下するといった不都合を抑制することができる。
【0071】
・ステップS23における第1積算容量ΔQ1の信頼性判定において、以下の処理が行われてもよい。すなわち、第1積算容量ΔQ1が予め定めた所定値よりも大きいか否かを判定し、第1積算容量ΔQ1が所定値よりも大きいと判定された場合に、第1積算容量ΔQ1の信頼性が低いと判定する。この場合、第1積算容量ΔQ1が所定値よりも大きいと判定されたこと条件に、第1電力W1に代えて第2電力W2が許容入力電力Winとして用いられることとなる。なお、所定値は、蓄電池10の満充電容量から急変域Xまでの電流容量ΔQAよりも大きい値であるとよい。
【0072】
・第1電力W1と第2電力W2とを使い分けるための所定条件が以下のように規定されていてもよい。ここでは、車両の電源スイッチ(IGスイッチ)を電源システムのシステムスイッチとして用いる構成において、電源スイッチのオン時間と、オフ時間と、それらオン時間及びオフ時間の合算時間とに基づいて、所定条件の成否を判断するものとしている。電源スイッチのオンにより蓄電池10の通電が可能となり、電源スイッチのオフにより蓄電池10の通電が不可となる。オン時間は、蓄電池10が満充電であると前回判定されてからの電源スイッチのオン状態での累積時間である。オフ時間は、蓄電池10が満充電であると前回判定されてからの電源スイッチのオフ状態での累積時間である。オン時間、オフ時間及び合算時間が「判定時間」に相当する。
【0073】
具体的には、
図10に示す処理がBMU30により実行されるとよい。
図10において、ステップS51では、オン時間が所定時間TH1未満であるか否かを判定し、ステップS52では、オフ時間が所定時間TH2未満であるか否かを判定し、ステップS53では、オン時間及びオフ時間の合算時間が所定時間TH3未満であるか否かを判定する。そして、ステップS31~S53が全て肯定されれば(すなわち所定条件が成立していれば)、ステップS54に進み、第1電力W1を許容入力電力Winとする。また、ステップS31~S53のうちいずれか1つが否定されれば(すなわち所定条件が非成立であれば)、ステップS55に進み、第2電力W2を許容入力電力Winとする。
【0074】
電源スイッチのオン時間が長くなると、又は電源スイッチのオフ時間が長くなると、電流検出誤差の蓄積等により第1積算容量ΔQ1の算出精度が低下する。この点、上記のとおり第1電力W1及び第2電力W2の切り替えが行われることにより、第1積算容量ΔQ1の精度低下に起因してWin算出精度が低下するといった不都合を抑制することができる。
【0075】
なお、
図10において、ステップS51~S53のうちいずれか1つの処理、又はいずれか2つの処理が実施される構成であってもよい。
図10の処理は、
図7や
図9の処理と組み合わせて実行されるとよい。
【0076】
・
図7のステップS16~S18では、OCVの検出タイミングであり、かつOCVに対応する残容量がOCV-容量特性の急変域Xよりも低容量側である場合に、OCVに対応する残容量を第2積算容量ΔQ2として設定する構成としたが、これを変更してもよい。例えば、OCVの検出タイミングである場合に、OCV相当の残容量が急変域Xよりも低容量側か否かに関係なく(すなわちステップS18の判定を行うことなく)、OCVに対応する残容量を第2積算容量ΔQ2として設定する構成としてもよい。
【0077】
・上記実施形態では、蓄電池10において、単電池11ごとに満充電であることが判定されるものとし、単電池11ごとに、満充電からの第1積算容量ΔQ1が算出されるとともに、満放電からの第2積算容量ΔQ2が算出される構成としたが、これを変更してもよい。例えば、いずれかの単電池11が満充電であると判定された場合に、単電池11ごとに区別をせず、蓄電池10の満充電からの第1積算容量ΔQ1、満放電からの第2積算容量ΔQ2が算出される構成であってもよい。
【0078】
・上記実施形態では、第1積算容量ΔQ1に基づいて算出した第1電力W1と、第2積算容量ΔQ2に基づいて算出した第2電力W2との使い分けにより許容入力電力Winを決定する構成としたが、この構成を変更し、第2電力W2の算出を行わず、常に第1電力W1を許容入力電力Winとして用いる構成であってもよい。
【0079】
・蓄電池10の満充電を基準とする放電量として、所定周期で取得される電流容量[Ah]の積算により第1積算容量ΔQ1を算出する構成に代えて、所定周期で取得される電流[A]の積算により、満充電からの積算電流を算出する構成であってもよい。また、蓄電池10の満放電を基準とする充電量として、所定周期で取得される電流容量[Ah]の積算により第2積算容量ΔQ2を算出する構成に代えて、所定周期で取得される電流[A]の積算により、満放電からの積算電流を算出する構成であってもよい。
【0080】
・電源システムは車両に搭載されるものに限られず、例えば、飛行体や船舶などの他の移動体に搭載されるものであってもよい。また、電源システムは、移動体に搭載されるシステムに限らず、定置式のシステムであってもよい。
【0081】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0082】
上述の実施形態から抽出される技術思想を以下に記載する。
[構成1]
蓄電池(10)における許容入力電力(Win)を算出する電池制御装置(30)であって、
前記蓄電池が満充電であることを判定する満充電判定部と、
前記蓄電池の満充電を基準として、前記蓄電池の放電時の電流又は電流容量の加算、及び前記蓄電池の充電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、前記蓄電池の放電量として算出する放電量算出部と、
前記放電量算出部により算出された前記放電量に基づいて、前記蓄電池における前記許容入力電力を算出する電力算出部と、
を備える電池制御装置。
[構成1-1]
前記蓄電池は、電圧及び容量の関係を示す電圧-容量特性においてプラトー領域を有し、かつ当該プラトー領域内に容量に対して電圧が急変する急変域を有するものであり、
前記蓄電池の開回路電圧が検出されるタイミングにおいて、前記開回路電圧が、前記急変域よりも高容量側となる電圧であるか否かを判定する電圧判定部と、
前記放電量算出部により算出された前記放電量が、前記蓄電池の満充電容量から前記急変域までの電流容量よりも大きいか否かを判定する放電量判定部と、を備え、
前記放電量算出部は、前記開回路電圧が前記急変域よりも高容量側となる電圧であり、かつ前記放電量が、前記満充電容量から前記急変域までの電流容量よりも大きいと判定された場合に、前記放電量を減少側の値に更新する、構成1に記載の電池制御装置。
[構成2]
蓄電池(10)における許容入力電力(Win)を算出する電池制御装置(30)であって、
前記蓄電池が満充電であることを判定する満充電判定部と、
前記蓄電池の満充電を基準として、前記蓄電池の放電時の電流又は電流容量の加算、及び前記蓄電池の充電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、前記蓄電池の放電量として算出する放電量算出部と、
前記蓄電池の満放電を基準として、前記蓄電池の充電時の電流又は電流容量の加算、及び前記蓄電池の放電時の電流又は電流容量の減算により電流又は電流容量を積算した値を、前記蓄電池の充電量として算出する充電量算出部と、
前記放電量算出部により算出された前記放電量に基づいて、前記蓄電池における前記許容入力電力を第1電力として算出する第1電力算出部と、
前記充電量算出部により算出された前記充電量に基づいて、前記蓄電池における前記許容入力電力を第2電力として算出する第2電力算出部と、
前記第1電力と前記第2電力とのいずれを前記許容入力電力として用いるかを、所定条件に基づいて使い分ける電力制御部と、
を備える電池制御装置。
[構成3]
前記蓄電池は、電圧及び容量の関係を示す電圧-容量特性においてプラトー領域を有し、かつ当該プラトー領域内に容量に対して電圧が急変する急変域を有するものであり、
前記蓄電池の開回路電圧が検出されるタイミングにおいて、前記開回路電圧が、前記急変域よりも高容量側となる電圧であるか否かを判定する電圧判定部と、
前記放電量算出部により算出された前記放電量が、前記蓄電池の満充電容量から前記急変域までの電流容量よりも大きいか否かを判定する放電量判定部と、を備え、
前記放電量算出部は、前記開回路電圧が前記急変域よりも高容量側となる電圧であり、かつ前記放電量が、前記満充電容量から前記急変域までの電流容量よりも大きいと判定された場合に、前記放電量を減少側の値に更新する、構成2に記載の電池制御装置。
[構成4]
前記充電量算出部は、前記蓄電池の開回路電圧が検出されるタイミングにおいて、前記開回路電圧に対応する残容量を前記充電量として設定する、構成2に記載の電池制御装置。
[構成5]
前記蓄電池は、電圧及び容量の関係を示す電圧-容量特性においてプラトー領域を有し、かつ当該プラトー領域内に容量に対して電圧が急変する急変域を有するものであり、
前記蓄電池の開回路電圧が検出されるタイミングにおいて、前記開回路電圧が、前記急変域よりも低容量側となる電圧であるか否かを判定する電圧判定部を備え、
前記充電量算出部は、前記電圧判定部により前記開回路電圧が前記急変域よりも低容量側となる電圧であると判定されたことを条件に、前記開回路電圧に対応する残容量を前記充電量として設定する、構成4に記載の電池制御装置。
[構成6]
前記電力制御部は、前記満充電判定部により前記蓄電池が満充電であると判定されたことを前記所定条件として用いるものであり、前記蓄電池の満充電であるとの判定後に、前記第1電力と前記第2電力とのうち前記第1電力を優先的に前記許容入力電力とする、構成2~5のいずれか1つに記載の電池制御装置。
[構成7]
前記放電量算出部により算出された前記放電量の信頼性を判定する信頼性判定部を備え、
前記電力制御部は、前記信頼性判定部の判定結果を前記所定条件として用いるものであり、前記放電量の信頼性が低いと判定された場合に、前記第1電力に代えて前記第2電力を前記許容入力電力として用いる、構成2~6のいずれか1つに記載の電池制御装置。
[構成8]
前記蓄電池が満充電であると判定されてからの前記蓄電池の電流積算の期間である積算期間が所定期間よりも長いことを判定する積算期間判定部を備え、
前記電力制御部は、前記積算期間判定部の判定結果を前記所定条件として用いるものであり、前記積算期間が前記所定期間よりも長いと判定された場合に、前記第1電力に代えて前記第2電力を前記許容入力電力として用いる、構成2~6のいずれか1つに記載の電池制御装置。
[構成9]
前記蓄電池は、電圧及び容量の関係を示す電圧-容量特性においてプラトー領域を有し、かつ当該プラトー領域内に容量に対して電圧が急変する急変域を有するものであり、
前記蓄電池の開回路電圧が検出されるタイミングにおいて、前記開回路電圧が、前記急変域よりも低容量側となる電圧であるか否かを判定する電圧判定部を備え、
前記電力制御部は、前記電圧判定部の判定結果を前記所定条件として用いるものであり、前記開回路電圧が前記急変域よりも低容量側となる電圧であると判定された場合に、前記第1電力に代えて前記第2電力を前記許容入力電力として用いる、構成2~6のいずれか1つに記載の電池制御装置。
[構成10]
前記蓄電池を備える電源システムに適用される電池制御装置であり、前記電源システムにおいてシステムスイッチのオンにより前記蓄電池の通電が可能となり、前記システムスイッチのオフにより前記蓄電池の通電が不可となっており、
前記電力制御部は、前記蓄電池が満充電であると前回判定されてからの前記システムスイッチのオン時間と、オフ時間と、それらオン時間及びオフ時間の合算時間との少なくともいずれかである判定時間が、所定時間未満であることを前記所定条件として用いるものであり、当該所定条件の成立時に、前記第1電力を前記許容入力電力として用い、当該所定条件の不成立時に、前記第2電力を前記許容入力電力として用いる、構成2~6のいずれか1つに記載の電池制御装置。
[構成11]
前記蓄電池は、複数の単電池(11)が直列に接続されてなる組電池であり、
前記満充電判定部は、前記単電池ごとに満充電であることを判定するものであり、
前記放電量算出部は、前記単電池ごとに満充電を基準として前記放電量を算出し、
前記第1電力算出部は、前記複数の単電池における前記放電量のうち最も小さい放電量に基づいて前記第1電力の算出を行う、構成2~10のいずれか1つに記載の電池制御装置。
[構成12]
前記蓄電池は、複数の単電池(11)が直列に接続されてなる組電池であり、
前記充電量算出部は、前記単電池ごとに満放電を基準として前記充電量を算出し、
前記第2電力算出部は、前記複数の単電池における前記充電量のうち最も大きい充電量に基づいて前記第2電力の算出を行う、構成2~11のいずれか1つに記載の電池制御装置。
[構成13]
前記第1電力を前記許容入力電力として用いる状態から、前記第2電力を前記許容入力電力として用いる状態に移行する場合に、移行直前の前記第1電力を上限値として前記許容入力電力を制限する電力制限部を備える、構成2~12のいずれか1つに記載の電池制御装置。
[構成14]
前記第1電力を前記許容入力電力として用いる状態から、前記第2電力を前記許容入力電力として用いる状態に移行する場合に、移行直前の前記第1電力から移行後の前記第2電力に対して前記許容入力電力を徐変させる電力徐変部を備える、構成2~13のいずれか1つに記載の電池制御装置。
【符号の説明】
【0083】
10…蓄電池、30…BMU。