(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154927
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】検査物の表面検査を行う検査装置、検査物の表面検査を行う検査装置を備えた製造ライン及び検査物の表面検査を行う検査方法。
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G01N21/90 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069160
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】栃木 隆之
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA21
2G051AB02
2G051BA02
2G051BA20
2G051BB01
2G051CA04
2G051DA02
2G051DA08
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、コストの安い検査装置の提供である。
【解決手段】本発明は、ターレットと撮影装置と制御部を備え、前記ターレットは、検査物を自転させながら公転させるものであり、前記撮影装置は、1台であり、撮影範囲が固定されており、前記検査物の外表面を撮影するものであり、前記撮影範囲は、前記検査物が自転により1周する間に公転で移動する範囲を少なくとも含むものであり、前記制御部は、前記撮影装置に対して、自転する前記検査物の全外周の前記外表面を複数回の撮影で撮影するよう制御するものであることを特徴とする検査物の表面検査を行う検査装置とすることで課題を解決した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターレットと撮影装置と制御部を備え、
前記ターレットは、検査物を自転させながら公転させるものであり、
前記撮影装置は、1台であり、撮影範囲が固定されており、前記検査物の外表面を撮影するものであり、
前記撮影範囲は、前記検査物が自転により1周する間に公転で移動する範囲を少なくとも含むものであり、
前記制御部は、前記撮影装置に対して、自転する前記検査物の全外周の前記外表面を複数回の撮影で撮影するよう制御するものであることを特徴とする、
検査物の表面検査を行う検査装置。
【請求項2】
撮影回数は、5~18回である請求項1記載の検査物の表面検査を行う検査装置。
【請求項3】
前記ターレットは、前記撮影範囲に前記検査物が1つのみ含まれる間隔で前記検査物がセットされる請求項1記載の検査物の表面検査を行う検査装置。
【請求項4】
さらに、照明装置を備え、
前記照明装置は、前記ターレットの外周側に離れて配置されており、前記ターレットの外周を囲むよう円弧状に配設されており、かつ、前記検査物の自転軸方向の両側に設けられている請求項1記載の検査物の表面検査を行う検査装置。
【請求項5】
前記照明装置は、前記自転軸方向に対して10度~60度の範囲で傾けて配置されている請求項4記載の検査物の表面検査を行う検査装置。
【請求項6】
前記撮影装置は固定焦点で撮影するものであり、前記固定焦点は、前記撮影範囲にある前記検査物が最も近くなる撮影位置と最も遠くなる撮影位置の間に設定されている請求項1記載の検査物の表面検査を行う検査装置。
【請求項7】
前記表面検査が行われる検査対象は、前記検査物の前記外表面の傷または前記検査物の前記外表面に施された印刷である請求項1記載の検査物の表面検査を行う検査装置。
【請求項8】
前記検査物は、樹脂被覆缶であり、
前記ターレットは、前記樹脂被覆缶を製造する製造ライン中に設けられている請求項1記載の検査物の表面検査を行う検査装置。
【請求項9】
前記表面検査の検査対象は、前記検査物の前記外表面に施された外面フィルムの傷である請求項8記載の検査物の表面検査を行う検査装置。
【請求項10】
前記ターレットは、トリマ、プリンタ又はネッカーに使われているターレットである請求項8記載の検査物の表面検査を行う検査装置。
【請求項11】
前記検査装置は前記検査物の製造ライン内に設けられており、
前記製造ラインは、プリンタを少なくとも含む製造ラインであり、前記検査装置は、前記プリンタより手前に設けられている請求項1記載の検査物の表面検査を行う検査装置。
【請求項12】
請求項1~請求項11いずれかに記載の検査装置を備えた製造ライン。
【請求項13】
ターレットは、検査物を自転させながら公転させるものであり、
撮影装置は、1台であり、撮影範囲が固定されており、前記検査物の外表面を撮影するものであり、
前記撮影範囲は、前記検査物が自転により1周する間に公転で移動する範囲を少なくとも含むものであり、
前記撮影装置を、自転する前記検査物の全外周の前記外表面を複数回の撮影で撮影するよう作動させる工程があり、
得られた前記全外周の前記外表面の画像を用い、検査を行う工程を含む、
検査物の表面検査を行う検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体などの検査物の表面検査を行う検査装置、当該の表面検査を行う検査装置を備えた製造ライン及び当該検査物の表面検査を行う検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
缶体(検査対象)などの検査装置は、ターレットを使って搬送される缶体(検査対象)を複数台の撮影装置を用いて外表面を撮影し、傷などの検査が行われていた。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査装置において、缶体(検査対象)は、ターレット外縁に保持されターレットの公転に伴い搬送され、その場で自転する。自転する缶体(検査対象)の外表面全周を検査しようとする場合、缶体(検査対象)が公転により移動してしまうため、特許文献1のように、ターレットの外周側に複数台の撮影装置を設置する必要があった。このように従来の外表面検査装置は、複数台の撮影装置を検査装置に組み込む必要があり、コストが高くならざるを得なかったため、コストの安い検査装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様1は、ターレットと撮影装置と制御部を備え、前記ターレットは、検査物を自転させながら公転させるものであり、前記撮影装置は、1台であり、撮影範囲が固定されており、前記検査物の外表面を撮影するものであり、前記撮影範囲は、前記検査物が自転により1周する間に公転で移動する範囲を少なくとも含むものであり、前記制御部は、前記撮影装置に対して、自転する前記検査物の全外周の前記外表面を複数回の撮影で撮影するよう制御するものであることを特徴とする検査物の表面検査を行う検査装置とすることで課題を解決した。
【0006】
本明細書は、実施例として前記態様1に加えて、撮影回数は、5~18回としたものである検査物の表面検査を行う検査装置とする態様2を開示する。
【0007】
本明細書は、実施例として、前記態様1に加えて、前記ターレットは、前記撮影範囲に前記検査物が1つのみ含まれる間隔で前記検査物がセットされる検査物の表面検査を行う検査装置である態様3を開示する。
【0008】
本明細書は、実施例として、前記態様1に照明装置を加え、前記照明装置は、前記ターレットの外周側に離れて配置されており、前記ターレットの外周を囲むよう円弧状に配設されており、かつ、前記検査物の自転軸方向の両側に設けられている検査物の表面検査を行う検査装置である態様4を開示する。
【0009】
本明細書は、実施例として、前記態様4の照明装置は、前記自転軸方向に対して10度~60度の範囲で傾けて配置されている検査物の表面検査を行う検査装置である態様5を開示する。
【0010】
本明細書は、実施例として、前記態様1の撮影装置は固定焦点で撮影するものであり、前記固定焦点は、前記撮影範囲にある前記検査物が最も近くなる撮影位置と最も遠くなる撮影位置の間に設定されている検査物の表面検査を行う検査装置である態様6を開示する。
【0011】
本明細書は、実施例として、前記態様1の表面検査が行われる検査対象は、前記検査物の前記外表面の傷または前記検査物の前記外表面に施された印刷である態様7を開示する。
【0012】
本明細書は、実施例として、前記態様1の検査物は、樹脂被覆缶であり、前記ターレットは、前記樹脂被覆缶を製造する製造ライン中に設けられている態様8を開示する。
【0013】
本明細書は、実施例として、前記態様8の検査対象は、前記検査物の前記外表面に施された外面フィルムの傷である態様9を開示する。
【0014】
本明細書は、実施例として、前記態様8のターレットはトリマ、プリンタ又はネッカーに使われているターレットである態様10を開示する。
【0015】
本明細書は、実施例として、前記態様1の検査装置において、前記検査装置は前記検査物の製造ライン内に設けられており、前記製造ラインは、プリンタを少なくとも含む製造ラインであり、前記検査装置は、前記プリンタより手前に設けられている態様11の検査物の表面検査を行う検査装置を開示する。
【0016】
本明細書は、実施例として、前記態様1~11の検査装置を備えた製造ラインである態様12を開示する。
【0017】
本明細書は、実施例として、ターレットは、検査物を自転させながら公転させるものであり、撮影装置は、1台であり、撮影範囲が固定されており、前記検査物の外表面を撮影するものであり、前記撮影範囲は、前記検査物が自転により1周する間に公転で移動する範囲を少なくとも含むものであり、前記撮影装置を、自転する前記検査物の全外周の前記外表面を複数回の撮影で撮影するよう作動させる工程があり、得られた前記全外周の前記外表面の画像を用い、検査を行う工程を含む検査物の表面検査を行う検査方法の態様13を開示する。
【0018】
これらの態様に加えて、開示する全実施例及び全変形例は、技術的な矛盾が生じない限り、態様や実施例などの引用関係に関係なく適宜組み合わせることできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の外表面検査装置は、従来品に比べコストが安く製造できた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(A)は、トリマとヒートセットオーブンの間に、検査用ターレットを有する実施形態1(製造ライン)の概念図である。
図1(B)は、トリマのターレットを検査装置のターレットと兼用する実施形態2(製造ライン)の概念図である。
【
図2】
図2は、ターレットとターレット上を周回する缶体(検査物)の動きを説明する概念図である。
【
図3】
図3(A)は検査装置全体の説明図である。
図3(B)は
図3(A)に付した枠A内の拡大図である。
図3(C)はオーバーラップ代の説明図である。
【
図4】
図4は撮影タイミング1~撮影タイミング3までの検査画像の概念図である
【
図5】
図5は照明装置の説明図であり、
図5(A)は撮影装置と照明の関係を説明する平面図、
図5(B)は撮影装置と照明の関係を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0022】
まず、検査装置3を設ける製造ライン1上の位置に関する実施例1は、実施形態1と実施形態2に分けて説明される。
[実施例1:実施形態1]
図1(A)は、トリマ13とヒートセットオーブン14の間に、検査用ターレット25を有する実施形態1(製造ライン1)の概念図である。検査装置3と検査用ターレット25の詳細は後述するが、検査装置3は、検査用ターレット25の外周側に設けられている。製造ライン1は、樹脂被覆缶のラインである。
検査物Wは樹脂被覆缶(缶体W)である。樹脂被覆缶を製造する製造ライン1は、以下で説明する製造工程を経るごとに処理が施され、徐々に形状や表面が変化する。この明細書でいう「缶体W」は、製造中の状態を含めすべて検査物となる場合は、「缶体W」ということにする。
製造ライン1が有する装置は、工程を追いながら説明される。
【0023】
(缶胴成形工程)
図1(A)で図示されている実施形態1の製造ライン1は、カップを形成する缶胴成形工程61から始まる例である。
缶胴成形工程61で使われるカッピングプレス11は、樹脂被覆缶の材料である樹脂層を有するアルミ材(いわゆる「シート」)の供給を受け、ブランクの打抜き及びカップに成形する装置である。
カッピングプレス11で成形されたカップは、ボディーメーカー12に送られ、絞りしごき加工がなされて、缶体Wの原型となる底部を有する筒状部材に成形される。
次いで、成形された底部を有する筒状部材のハイトは、ばらつきが出ているためトリマ13により切断されて、所定のハイトに整えられる。カッピングプレス11からトリマ13までの缶胴成形工程61を終えた缶体Wは、外表面W1が樹脂で覆われたアルミ製の缶体Wとなっている。図示しないが、トリマ13は、トリマ用のターレット2を備えている。
【0024】
(検査工程)
実施形態1の製造ライン1は、トリマ13の後に検査用ターレット25を備えている。
検査装置3は、検査用ターレット25と撮影装置4と制御部44を主な構成要素としており、トリマ13で加工された缶体W(検査物)の全外周の外表面W1を複数回の撮影で撮影するよう制御している。
検査工程、すなわち、検査用ターレット25の位置は、一連の製造工程(製造ライン1)中の適宜位置でよく、検査目的に応じて好ましい位置が選ばれる。なお、検査装置3で行われる検査工程65の詳細は、後述する。
【0025】
検査は、缶体W(検査物)の外表面W1に対して行われ、実施形態1では樹脂層に付いた傷などが検査される。検査対象は、傷に限られないが、具体例として傷を検査対象とする場合、缶体W(検査物)が樹脂被覆缶であれば、外面フィルムに付いた傷である。缶体W(検査物)が樹脂被覆ではない金属缶であれば、缶体W(検査物)の金属の外表面W1に付いた傷である。缶体W(検査物)が印刷後であれば、印刷及び/又は印刷部分に付いた傷である。このように、検査対象は、様々に細分化され、様々な態様があり得る。
【0026】
(WAX除去・歪除去工程)
WAX除去・歪除去工程62で使用されるヒートセットオーブン14は、缶胴成形工程61の絞りしごき加工で潤滑剤として使われたWAXを熱により除去する装置である。また、ヒートセットオーブン14は、缶体Wの外表面W1を覆う樹脂に残る歪を除去する装置でもある。図示しないが、ヒートセットオーブン14は、缶体Wを搬送するコンベアを備えている。
【0027】
(外表面印刷・塗装・乾燥工程)
外表面印刷・塗装・乾燥工程63で使用されるプリンタ15は、缶体Wの外表面W1に印刷を行ったりニスを塗布したりする。そして、キュアリングオーブン16はプリンタ15で処理された缶体Wを乾燥させる装置である。実施形態1のプリンタ15は、ターレット2を有している。
【0028】
(ネック成形工程)
ネック成形工程64で使用されるネッカー17は、円筒形の缶体Wの開口側を金型やスピンロールにより窄ませる装置である。実施形態1のネッカー17は、ネッカー用のターレット2を有している。
【0029】
(製造ラインにおける検査工程の位置)
製造ライン1における検査工程65の位置は、検査目的より異なる。印刷の良し悪しを検査したいのであれば、外表面印刷・塗装・乾燥工程63の後に検査工程65が置かれる。
また、ネッカー17による処理の良し悪しを検査したいのであれば、ネック成形工程64の後に検査工程65が置かれる。
さらに、そのすべての位置に検査工程65が置かれてもよい。
検査の結果、欠陥や十分な品質に達していない缶体Wがあると検査装置3が判断した缶体Wは、適宜な箇所で製造ライン1から排除される。
【0030】
(製造ラインに含まれる工程や装置)
製造ライン1は、ネック成形工程64のあとに、さらなる処理工程を含む製造ライン1が続いていても実施形態1に含まれる。
また、中間段階の缶体W(たとえば、印刷前の缶胴)までの製造ライン1としたり、プリンタ15とキュアリングオーブン16を省いて無地缶を製造する製造ライン1とすることも可能である。
製造ライン1に検査工程65(検査装置3)が存在するならば、本発明の実施形態1に含まれる製造ライン1ということができる。
【0031】
[実施例1:実施形態2]
図1(B)は、トリマ13用のターレット2を検査用ターレット25として使う(兼用する)実施形態2(製造ライン1)の概念図である。
トリマ13がターレット2を備えていることは前述したとおりである。トリマ13が有するターレット2を検査用にも使う場合、検査用ターレット25を不要にでき、その分コストを削減できる。
実施例は、ターレット上を公転する缶体W(検査物)の傷の検査を缶体W(検査物)の全外周行えるものであるが、必要とされる撮影装置4は1台だけである。缶体W(検査物)の傷の検査を缶体W(検査物)の全外周行う場合、従来の検査装置3は、複数の撮影装置4が必要とされていた。様々な付属装置で建て込んだ製造ライン1中にあるトリマ13に複数の撮影装置4を取り付けることも従来なされていたが、簡単でないことが理解されよう。
詳しくは後述するが、実施例の検査装置3の撮影装置4は、1台だけであるため、様々な付属装置で建て込んだ製造ライン1であっても、簡単に配置できる。
【0032】
実施形態2の製造ライン1の構成は、検査用ターレット25がなくトリマ13に検査装置3が設けられている以外は実施形態1のそれと同様である。
実施形態1で、ターレット2が用いられているのは、トリマ13の他に、プリンタ15やネッカー17などがある。実施形態2は、これらのターレット2にそれぞれ検査装置3を付加することが可能である。
【0033】
(検査物)
実施例1は、検査物を缶体Wとしたが、検査物は、ターレット2で搬送可能な検査物であれば缶体Wに限られない。以下の実施例を含め、検査物である缶体Wは例示に過ぎない。
【0034】
(検査装置の位置)
缶体W(検査物)の傷を検査対象とする場合、缶体W(検査物)に印刷があると傷の検査ができない、または、精度を落とすことがあり得る。
そこで、缶体W(検査物)の製造ライン1中で、傷を検査する場合はプリンタ15より手前(上流側)に、傷の検査装置3が設けられることが好ましい。
【0035】
[実施例2]
(ターレット)
図2は、ターレット2とターレット2上を周回する缶体W(検査物)の動きを説明する概念図である。ターレット2は公転軸21が中心に有し、当該公転軸21を中心に回転する搬送装置である。ターレット2の外周には、缶体W(検査物)を収める部位が多数設けられており、缶体W(検査物)が自転軸22を中心に回転するようになっている。プリンタ15のターレット2であれば、プリンタ15のターレット2の内又は外に印刷装置が組み込まれ、自転する缶体W(検査物)の外表面W1に印刷が施される。
トリマ13のターレット2であれば、自転する缶体W(検査物)の上端を切断して整える切断装置がトリマ13のターレット2の内又は外に組み込まれている。
【0036】
(検査装置)
図3(A)は検査装置3全体の説明図である。検査装置3のターレット2は、トリマ13などのターレット2を利用できることは、[実施例1:実施形態2]で説明したところである。検査装置3を分かりやすくする説明するため、
図3(A)に図示した検査装置3は、[実施例1:実施形態1]で説明した検査用ターレット25を備えた、検査装置3である。
太線で描かれた円は、検査装置3のターレット2上にある缶体W(検査物)の現在の位置を示している。図示されているように、実施例2の検査装置3のターレット2には、太線で表される3つの缶体W(検査物)が、公転軸21を中心にそれぞれ120°ずつ離れて搬送されている。実施例2のターレット2は、同時に3つの缶体W(検査物)を自転させながら公転させている様子が、
図3(A)に図示されている。
【0037】
既存の製造ライン1に含まれるターレット2を検査装置3のターレット2として利用することで、検査用ターレット25を不要にすることができる。検査用ターレット25を別途設けることなく、既存のターレット2に検査装置3が取付けられるため、コスト削減になり、また、製造ライン1の長さも短くすることができる。この態様は、製造ライン1のコンパクト化にも寄与できる。
【0038】
ターレット2で搬送されるそれぞれの缶体W(検査物)は、自転軸22を中心に回転している。自転軸22は、缶体W(検査物)のハイト方向に通る缶体W(検査物)の中心軸と一致しており、缶体W(検査物)はターレット2の上で滑らかに自転する。
図3(A)の図中の鎖線で示された円は、太線で描かれた円で示される缶体W(検査物)現在の位置を基準にして、現在より前の位置と現在より後の位置を示している。
【0039】
図3(B)は、
図3(A)に付した枠A内の拡大図である。1台の撮影装置4が、ターレット2の最外縁から離れた位置に置かれている。撮影装置4はエリアカメラであり、撮影範囲41がθ°に固定されており、缶体W(検査物)の外表面W1を撮影するような位置関係に配置されている。
ターレット2の公転速度と自転速度はθ°の撮影範囲41を缶体W(検査物)が動く間に、缶体W(検査物)の外表面W1が一周するように設定されている。実施例2のターレット2の公転速度や自転速度は、制御部44で調整することができる。
【0040】
実施例2の撮影装置4は、缶体W(検査物)が公転しながら、自転で1周する間に、複数回の撮影を行うように設定されている。
図3(B)の丸の中に数字を入れた1~9の文字は、撮影タイミングを表している。撮影装置4は、制御部44により制御され、撮影タイミング1~撮影タイミング9まで等間隔に合計9回の撮影を行う。実施例では、公転軸21を中心に10°缶体W(検査物)が移動するごとに1回の撮影が行われ、合計9回の撮影中に缶体W(検査物)は公転軸21を中心に90°移動する。缶体W(検査物)の全外周を検査したい場合、好ましい撮影回数は、5回~18回であり、より好ましくは、8回~12回である。
【0041】
(検査用外表面)
本明細書でいう外表面W1は、缶体W(検査物)の外表面W1をいう。これに対して、検査用外表面W2は、撮影画像Gに写っている缶体W(検査物)の内、検査に使う画像の領域をいう。
より具体的に説明すると、
図4は、撮影タイミング1~撮影タイミング3までの撮影画像Gの概念図である。撮影された検査用外表面W2は、撮影された外表面W1から、傷等の検査を行うのに使用する画像の範囲である。撮影タイミング1~撮影タイミング3の間で、缶体W(検査物)の公転移動に伴い、撮影画像G上の撮影された外表面W1の位置は次第にずれて行く。なお、
図4は、撮影画像G上の撮影された外表面W1の位置など、説明のため誇張して描いており、正確ではない。
図4から分かるように撮影画像Gは、検査に使わない部分を含め外表面W1が撮影されている。缶体W(検査物)の外表面W1が曲面になっているため、撮影された外表面W1の両端は歪んでいる。検査の精度を向上させるため、制御部44は、撮影された撮影画像Gが送られて来ると、外表面W1の両端を除き、歪みの少ない中間領域を検査に使う検査用外表面W2として取得するように作動する。
【0042】
以上では、制御部44が、撮影画像Gから検査用外表面W2を切り出しているように説明したが、制御部44が検査を行う際に、撮影画像G中の検査用外表面W2の部分だけを検査対象としているという意味である。撮影画像Gから検査用外表面W2を切り出す場合は、ソフトウエア的に行うことが可能である。また、制御部44で行われる検査は、撮影画像Gから検査用外表面W2を切り出すことなく行うことが可能である。制御部44に余計な負担をかけないために、撮影画像Gから検査用外表面W2を切り出さないまま検査を行うことは、好ましい態様である。また、各撮影タイミングの検査用外表面W2は1枚に合成せずにそれぞれの画像で検査を行うのが好ましい。これにより画像を合成する処理を省き検査時間を短縮できる。
【0043】
図3(C)はオーバーラップ代51の説明図である。撮影画像Gの検査用外表面W2の端に傷等の欠陥が存在する場合、画像が切れて欠陥の判別が困難な場合がある。撮影タイミング1~撮影タイミング9での撮影は、検査用外表面W2の両端が互いに10°ずつオーバーラップ(重複)するタイミングで撮影される。その結果、撮影タイミング1~撮影タイミング9で撮影された検査用外表面W2は、10°ずつのオーバーラップ代51を含む。一つの撮影タイミングで撮影された検査用外表面W2では、画像が途切れ欠陥の判別が困難だとしても、隣接するタイミングで撮影された画像の検査用外表面W2にオーバーラップ代51があるため、欠陥は確実に検出されることになる。
【0044】
実施例2の検査装置3は、オーバーラップ代51を10°に設定したが、制御部44を介して設定を変えることでオーバーラップ代51を広くしたり、また、狭くしたりできる。
【0045】
(変形例1)
撮影回数や検査用外表面W2の範囲は、適宜決めることができることは言うまでもない。
また、缶体W(検査物)のすべての外表面W1を検査しない場合には、撮影回数は検査が必要な範囲により決めることができる。たとえば、プリンタ15による印刷を行う場合、印刷された領域が缶体W(検査物)の全周に渡っていないことがある。印刷された範囲(領域)だけ検査をすればよいのであれば、缶体W(検査物)の全周を検査する必要はなく、撮影回数はおのずと少なくなる。
【0046】
(変形例2)
ターレット2の公転速度や自転速度を変更した場合やターレット2に多くの缶体W(検査物)を搬送するように変更した場合、制御部44は、変更に伴い撮影装置4の撮影回数や、撮影タイミング、そして、検査用外表面W2の範囲を適宜修正する。
【0047】
(変形例3)
ターレット2で搬送される缶体W(検査物)の数は、撮影範囲41に缶体W(検査物)が1つだけ入るような数であることが好ましい。また、複数の缶体W(検査物)が撮影範囲41に入ってもよい。
【0048】
(変形例4)
撮影装置4は、撮影タイミングを制御できるのであれば動画撮影用のカメラであってもよい。
【0049】
[実施例3:検査手法]
検査手法は、検査目的により変わる。傷を検査したいのであれば、所定の輝度を超える又は満たない領域があれば傷と判断してもよい。また、印刷の良し悪しであれば、色や印刷形状などが判断される。検査手法は適宜である。
【0050】
検査に使用するソフトウエアは市販のものでよく、実施例3の検査装置3は、検査目的に記したソフトウエアがインストールされて使われる。
検査目的は傷、印刷エラーなど様々であり得るが、実施例3の検査装置3は、ソフトウエアを交換することで、ハードは同じでも異なる検査目的に使えるようになる。
【0051】
実施例3は、ターレット2は、検査物(缶体W)を自転させながら公転させるものであり、撮影装置4は、1台であり、撮影範囲41が固定されており、前記検査物(缶体W)の外表面W1を撮影するものであり、前記撮影範囲41は、前記検査物(缶体W)が自転により1周する間に公転で移動する範囲を少なくとも含むものであり、前記撮影装置4を、自転する前記検査物(缶体W)の全外周の前記外表面W1を複数回の撮影で撮影するよう作動させる工程があり、(複数回に分けて撮影することで)得られた前記全外周の前記外表面W1の画像を用い、検査物(缶体W)の表面検査を行う工程を含む検査方法を開示している。
【0052】
[実施例4:撮影画像]
撮影タイミング1~撮影タイミング9で撮影された撮影画像Gは、制御部44に送られ、検査が行われる。
図4は、撮影タイミング1~撮影タイミング3までの撮影画像Gの概念図である。前述したように、撮影範囲41内に、缶体W(検査物)が1つしか入らないような間隔でターレット2に送られる。その結果、撮影タイミング1~撮影タイミング9までのそれぞれの撮影画像Gには、缶体W(検査物)が1つだけ撮影されている。
また、撮影装置4は撮影範囲41がθ°に固定されている。撮影タイミング1~撮影タイミング3へと移る間に、缶体W(検査物)がターレット2の公転により移動するため、撮影画像Gにおける撮影された缶体W(検査物)の外表面W1の位置もターレット2の上流側から下流側に向かって動いてゆく。
自転により、撮影タイミング1~撮影タイミング3では、外表面W1の範囲も徐々に変化して行く。
図4は、撮影タイミング1~撮影タイミング3を図示しているが、撮影タイミング1~撮影タイミング9まで撮影すると、自転により範囲を徐々に変えた外表面W1が撮影された合計9枚の撮影画像Gが取得される。これら9枚の撮影画像Gは、缶体W(検査物)全周の外表面W1の画像を含んでいる。
【0053】
図3を参照されたい。撮影装置4は、缶体W(検査物)が撮影装置4を基準として最も下方向にある撮影タイミング1から撮影を開始する。ターレット2の公転に伴い、缶体W(検査物)は上方向に移動し、撮影タイミング5で撮影範囲41の中央、かつ、撮影装置4と正対した位置に来る。撮影タイミング6~撮影タイミング9になるにつれ、缶体W(検査物)は下方向に動き撮影装置4から遠く離れて行く。
【0054】
撮影装置4は、自動焦点機能を有していない。高速で公転しながら自転し移動する缶体W(検査物)でも焦点を合わせることができる機能を付加することは、コストの増加につながるからである。
自動焦点機能を有さない撮影装置4は、被写界深度が大きい、すなわち、ピントが撮影タイミング1~撮影タイミング9まで合っている条件で撮影されることが望まれる。そして、高速で公転しながら自転し移動する缶体W(検査物)を撮影するには、シャッタ速度を上げる必要がある。シャッタ速度が遅いと、シャッタが切れるまでの間に、缶体W(検査物)が移動してしまい、撮影された缶体W(検査物)が流れるような画像になってしまう。このような画像では、精度の高い検査を行うことができない。
【0055】
実施例4の撮影装置4は、固定焦点で撮影するものである。実施例4の固定焦点位置は、撮影範囲41にある缶体W(検査物)が最も近くなる撮影タイミング5の撮影位置と最も遠くなる撮影タイミング1又は撮影タイミング9の撮影位置の間に設定されている。好ましい、固定焦点位置は、撮影回数を9回とする場合、撮影タイミング2、撮影タイミング3、撮影タイミング7又は撮影タイミング8のいずれかの位置である。さらに好ましい固定焦点の位置は、撮影タイミング1と撮影タイミング5の中間位置、または撮影タイミング7と撮影タイミング8中間位置である。
【0056】
従来、検査装置3は、撮影タイミング1~撮影タイミング9の全てで合焦した撮影画像Gであることが必須であるという固定観念があった。実施例4の撮影装置4で撮影される撮影画像Gは、合焦していない画像を含むものであり、固定観念を破棄することで、撮影装置4を1台にしてコストカットを実現したものである。若干ピントの合わない画像であっても、その合わない程度が少なければ、検査に大きな影響を与えることはない。
【0057】
また、ソフトウエア的に、ピントの合わない画像を補正することも可能である。近年、画像演算装置の価格が下がると同時に処理速度が向上し、自動焦点機能を搭載するより、ソフトウエア的に対処する方が、コストが下がることがある。
【0058】
(撮影画像の編集)
欠陥があると判別された缶体W(検査物)は、製造ライン1から排除されるように構成することができる。
また、撮影タイミング1~撮影タイミング9で撮影された撮影画像Gは、編集されないまま欠陥等の検査を行うことができる。撮影タイミング1~撮影タイミング9で撮影された撮影画像Gは、撮影タイミングに従って並べるように編集されてもよい。そのように編集された画像は、記憶部などに記憶される。
また、欠陥が撮影されている異なる缶体W(検査物)の撮影画像Gのみを集めた編集を行ってもよい。
編集の有無にかかわらず、撮影タイミング1~撮影タイミング9で撮影された撮影画像Gは、欠陥の原因調査に使用できる。
【0059】
(撮影装置とターレットの間の距離)
ターレット2と撮影装置4の間の距離は、適宜でよいが、撮影装置4がターレット2から離れるにつれて、被写界深度が深くなるので有利である。しかし、ターレット2と撮影装置4が離れすぎると、検査装置3が占有する面積が大きくなる。ターレット2と撮影装置4の位置関係(距離)は、これらの事情を勘案して、決めることができる。望ましい距離は、ターレット2の径が400mmであるとき、ターレット2と撮影装置4の距離が900mmである。
また、缶体W(検査物)が自転で一周する間に公転で進む缶体W(検査物)の移動距離も、ターレット2と撮影装置4の間の距離に影響を与える。
撮影タイミング1~撮影タイミング9を撮影するに要する撮影範囲41は、缶体W(検査物)が公転でその間に移動する距離に応じて変わる。
缶体W(検査物)は、ターレット2の公転方向の上流側から下流側に動くが、自転で1回転する間に公転で動く距離が短ければ、固定焦点の撮影装置4の撮影範囲41は狭くて済む。撮影範囲41が狭ければ、ターレット2と撮影装置4の距離を短くすることができ、検査装置3を製造ライン1に対してコンパクトに収めることができる。
【0060】
[実施例5:照明装置]
図5は照明装置の説明図であり、
図5(A)は撮影装置4と照明の関係を説明する平面図、
図5(B)は撮影装置4と照明の関係を説明する側面図である。
実施例5の照明装置は手前側照明装置42と奥側照明装置43があり、両照明装置(42・43)は、自転軸22方向に対する角度α°で缶体W(検査物)を自転軸22方向の両側から照らす。照明光が正反射して撮影装置4に入らないように手前側照明装置42と奥側照明装置43は、前記自転軸22方向に対する角度α°が0°~60°の範囲で傾けて配置されている。角度α°の範囲は、好ましくは10°~60°である。さらに、角度α°は、好ましくは40°~50°、さらに好ましくは45°である。
図5(A)で図示されているように、手前側照明装置42と奥側照明装置43は共にターレット2の外周を囲むよう円弧状に配設されており、かつ、ターレット2の外周側に離れて配置されている。
【0061】
実施例5の検査装置3は、検査用外表面W2で拡散反射した光を撮影装置4で撮影する傷検査装置であるが、検査対象により正反射した光による検査であってもよい。
傷検査は樹脂被覆缶のフィルム傷の他に、DI缶の缶胴傷でも良い。
【0062】
実施例5の検査装置3は、青色の照明光を発する手前側照明装置42と奥側照明装置43が用いられている。照明光は白色であってもよいし、色は検査目的に応じて適宜である。色調の印刷エラーを検査する検査装置3では、白色光が用いられたりする。
さらに、手前側照明装置42と奥側照明装置43はLEDを光源としてもよいし、照明デバイスの種類は適宜である。また、LEDの白色は、青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせで作られていてもよい。
【0063】
(照明の強度)
被写界深度は、撮影装置4の絞りを絞ることで深くなるが、絞ることで画像の輝度が下がって暗い画像になる。明るい画像にするには、シャッタ速度を下げ、露出時間を長く撮る必要がある。絞りとシャッタ速度、そして、缶体W(検査物)の移動速度とシャッタ速度は互いに関連している。シャッタ速度を上げつつ被写界深度を深くする一つの手法として、照明を明るく(強度を上げる)することが挙げられる。
実施例4は、固定焦点の撮影の不利を補うため、照明の強度を上げる工夫もなされている。シャッタ速度と連動して、制御部44が照明の強度を上げるように制御するように構成してもよい。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 製造ライン
11 カッピングプレス
12 ボディーメーカー
13 トリマ
14 ヒートセットオーブン
15 プリンタ
16 キュアリングオーブン
17 ネッカー
2 ターレット
21 公転軸
22 自転軸
25 検査用ターレット
3 検査装置
4 撮影装置
41 撮影範囲
42 手前側照明装置
43 奥側照明装置
44 制御部
51 オーバーラップ代
61 缶胴成形工程
62 WAX除去・歪除去工程
63 外表面印刷・塗装・乾燥工程
64 ネック成形工程
65 検査工程
W 缶体(検査物)
W1 外表面
W2 検査用外表面
G 撮影画像