IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キャンバス社会保険労務士法人の特許一覧

<>
  • 特開-情報提供装置 図1
  • 特開-情報提供装置 図2
  • 特開-情報提供装置 図3
  • 特開-情報提供装置 図4
  • 特開-情報提供装置 図5
  • 特開-情報提供装置 図6
  • 特開-情報提供装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154941
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】情報提供装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20241024BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069184
(22)【出願日】2023-04-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】523085245
【氏名又は名称】キャンバス社会保険労務士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【弁理士】
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】西澤 秀成
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA10
5L049AA10
(57)【要約】
【課題】対象とするサービスの分野における多様な質問に対する正確かつわかりやすい情報を提供可能な手段を提供すること。
【解決手段】本発明の情報提供装置1は、質問を受信するよう構成された質問受信部111と、Generative Pre-trained Transformer(GPT)に質問に対する回答を生成させるよう構成された回答生成部114と、質問に関する図表等をWeb上から取得するよう構成された図表等取得部116と、回答生成部114により生成された回答及び図表等取得部116により取得された図表等を含むレポートを生成するよう構成されたレポート生成部119と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質問を受信するよう構成された質問受信部と、
GPTに前記質問に対する回答を生成させるよう構成された回答生成部と、
前記質問に関する図表等をWeb上から取得するよう構成された図表等取得部と、
前記回答生成部により生成された回答及び前記図表等取得部により取得された図表等を含むレポートを生成するよう構成されたレポート生成部と、
を備える、情報提供装置。
【請求項2】
前記質問に関する各種情報を取得するよう構成された情報取得部をさらに備え、
前記情報取得部は、前記質問が企業その他の組織の労務管理に関する質問である場合に、前記組織から提供される組織情報を取得するよう構成され、
前記回答生成部は、前記組織情報が取得された場合に、前記組織情報を前提とした前記労務管理に関する質問に対する回答を生成するよう構成される、
請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記レポート生成部が生成するレポートにおける前記各種情報の割合を前記質問に基づいて設定するよう構成された割合設定部をさらに備え、
前記情報取得部は、データベースに格納された労務管理に関する情報から前記質問に関する各種情報を取得するよう構成され、
前記データベースに格納された労務管理に関する情報は、労務管理に関する質問への解決案、労務管理に関する行政機関の通達、及び労務管理に関する判例を含み、
前記割合設定部は、前記解決案、前記通達、及び前記判例それぞれの割合を設定するよう構成され、
前記レポート生成部は、前記解決案、前記通達、及び前記判例を前記割合設定部において設定された割合で含むレポートを生成するよう構成される、
請求項2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記回答生成部は、前記質問をあらかじめ用意された複数のグループのいずれかに分類し、分類されたグループに属する質問への回答生成に関する事前学習が行われたGPTに前記質問に対する回答を生成させるよう構成される、請求項2に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記質問に含まれる指定キーワードに基づいて前記質問を送信した質問者の感情の度合いを推定するよう構成された感情推定部と、
前記感情の度合いがオペレータの介入を要する閾値を超えた場合に人間のオペレータに対話を引継ぐよう構成された引継部と、
をさらに備える、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記回答を音声によって読み上げるよう構成された読上部をさらに備え、
前記質問受信部は、音声の態様の質問を受信した場合に前記質問の態様をテキストの態様に変換するよう構成される、
請求項1に記載の情報提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の質問に対して応答するプログラム、いわゆるチャットボットを利用した情報提供が行われている。チャットボットを利用した情報提供において、該チャットボットを用いたサービスの分野における多様な質問に対して、正確な情報を提供できるようにしたいとの要望がある。
【0003】
多様な質問に対する正確な情報の提供を意図したチャットボットに関し、特許文献1は、第1の情報端末1との間で双方向(インタラクティブ)かつリアルタイムに情報をやりとり(送受信)することで、第1の情報端末を介して第1の利用者との間でコミュニケーションを成立させるチャットボットにおいて、DNN-HMM等を用いたパターンマッチングにより利用者が発した音声をテキストデータに変換し、該テキストデータに対するあらかじめ学習された応答パターン及び/又はデータベースに格納されている応答パターンを用いて利用者に応答するテキストデータを生成し、利用者が提供する情報から誤り、不確実な情報等を排除するように構成されたシステムを開示している。特許文献1の技術によれば、利用者が提供する情報から誤りや不確実な情報を排除し、情報の信頼性を高め得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-57049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、何らかの手法でテキストデータに対してあらかじめ学習された応答パターン及び/又はデータベースに格納されている応答パターンを用いて利用者に応答するテキストデータを生成することを開示するにとどまる。そのため、特許文献1の技術は、対象とするサービスの分野における多様な質問に対する応答パターンが学習・格納されているか不明である。よって、特許文献1の技術は、対象とするサービスの分野における多様な質問に対して正確な情報を提供できるチャットボットを提供する点において、さらなる改良の余地がある。
【0006】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、対象とするサービスの分野における多様な質問に対する正確かつわかりやすい情報を提供可能な手段の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、質問に対する回答をGPTに生成させ、この回答とWeb上から取得した質問に関する図表とを合わせたレポートを生成することによって、上記の目的を達成できることを見いだした。そして、本発明者らは、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
本発明は、質問を受信するよう構成された質問受信部と、GPTに前記質問に対する回答を生成させるよう構成された回答生成部と、前記質問に関する図表等をWeb上から取得するよう構成された図表等取得部と、前記回答生成部により生成された回答及び前記図表等取得部により取得された図表等を含むレポートを生成するよう構成されたレポート生成部と、を備える、情報提供装置を提供する。
【0009】
質問に対する回答を生成する機械学習の手法として、確率的な手法によるパターンマッチングを用いた機械学習によって予め用意されたグループに質問を分類し、該グループに対する応答パターンとして人間が用意した回答を出力する手法がある。しかしながら、このような手法では、あらかじめ用意されたグループに分類できない質問に対して回答を生成することができない。よって、このような手法は、対象とするサービスの分野における多様な質問に対する情報を提供する点において、さらなる改良の余地がある。
【0010】
本発明の情報提供装置は、大規模なテキストデータのコーパスで人間のようなテキストを生成するよう訓練されたGPTに質問に対する回答を生成させる。よって、本発明は、対象とするサービスの分野における多様な質問に対する回答を生成できる。
【0011】
質問に対する回答は、図、表、及び画像等によって例示される図表等が付されて補足されることにより、より理解しやすく正確な情報となる。しかしながら、GPTは、人間のようなテキストを生成する言語モデルであり、質問に対する回答を補足する図表等を生成する言語モデルではない。よって、GPTのみを用いる手法は、質問に対するより理解しやすく正確な情報を提供する点において、さらなる改良の余地がある。
【0012】
本発明の情報提供装置は、質問に関する図表等をWeb上から取得し、GPTによって生成された回答に取得した図表等を付したレポートを生成できる。対象とするサービスの分野が、例えば、労務管理に関する助言を与えるサービスである場合、Web上には、省庁等が提供する労務管理に関する図表等によって例示される、多様な質問に対する回答を補足できる正確な図表等が多数存在する。これにより、本発明は、質問に対し、図、表、及び画像等によって例示される図表等が付された、より理解しやすく正確な情報を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、対象とするサービスの分野における多様な質問に対する正確かつわかりやすい情報を提供可能な手段を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態におけるシステムSのハードウェア構成及びソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態の情報提供装置1で実行される情報提供処理の好ましい流れの一例を示すメインフローチャートである。
図3図3は、図2から続く図である。
図4図4は、図3から続く図である。
図5図5は、本実施形態の情報提供処理において生成されたレポートの一例である。
図6図6は、各種情報が設定された割合で含まれるよう生成されたレポートの一例である。
図7図7は、各種情報が図6と異なる割合で含まれるよう生成されたレポートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下は、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明するものである。
【0016】
図1は、本実施形態におけるシステムSのハードウェア構成及びソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。情報提供システムS(システムS)は、少なくとも、情報提供装置1を含んで構成される。システムSは、ネットワークNを介して情報提供装置1と通信可能な端末Tを含んで構成されることが好ましい。
【0017】
〔情報提供装置1〕
情報提供装置1は、少なくとも、制御部11、記憶部12、及び通信部13を備える。情報提供装置1の種類は、特に限定されない。該種類として、例えば、サーバ、クラウドサーバ等が挙げられる。
【0018】
[制御部11]
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等を備える。
【0019】
制御部11は、必要に応じて記憶部12及び/又は通信部13と協働する。そして、制御部11は、情報提供装置1で実行される本実施形態のプログラムのソフトウェア構成要素である、質問受信部111、感情推定部112、引継部113、回答生成部114、読上部115、図表等取得部116、割合設定部117、情報取得部118、レポート生成部119等を実現する。本実施形態のプログラムのソフトウェア構成要素それぞれが提供する機能は、後述する情報提供処理の好ましい流れの説明において示される。
【0020】
[記憶部12]
記憶部12は、データ及び/又はファイルが記憶される装置であって、ハードディスク、半導体メモリ、記録媒体、及びメモリカード等によるデータのストレージ部を有する。
【0021】
記憶部12は、ネットワークNを介してNAS、SAN、クラウドストレージ、ファイルサーバ及び/又は分散ファイルシステム等の記憶装置又は記憶システムとの接続を可能にする仕組みを有してもよい。
【0022】
記憶部12には、マイクロコンピューターで実行されるプログラム、受信した質問、質問に対する回答、対話の履歴、質問に対するレポート、言語モデル(GPT)、労務管理情報データベース、レポートにおける解決案、通達、及び判例それぞれの割合、感情の度合いを示す指定キーワード群、感情の度合い、人間のオペレータへの引継ぎに関する情報、音声認識モデル、音声合成モデル、等が記憶されている。
【0023】
(言語モデル)
言語モデルは、Generative Pre-trained Transformer又はこれに基づく言語モデルであれば特に限定されない。以下、このような言語モデルは、単に「GPT」とも称される。言語モデルは、記憶部12に格納されていてもよく、情報提供装置1の記憶部12の構成を簡略化すべく、通信部13を介した通信によって利用可能な他のサーバに格納されていてもよい。
【0024】
具体的な言語モデルとして、例えば、OpenAIによるChatGPT、GPT-3、GPT-4、EleutherAIによるGPT-J等が挙げられる。これらの言語モデルが大規模なテキストデータのコーパスで訓練されているため、本実施形態の情報提供装置1は、対象とするサービスの分野における多様な質問に対する回答であって、人間が書いたかのような回答を生成できる。
【0025】
言語モデルは、労務管理に関する質問への回答の生成に関する事前学習が行われたGPTであることが好ましい。これにより、情報提供装置1は、対象とするサービスの分野が労務管理に関する助言を与えるサービスである場合において、該サービスにおける多様な質問に対する正確な情報を提供可能な手段を提供できる。ここで言う事前学習は、特に限定されない。該事前学習として、例えば、労務管理に関する質問及び該質問への回答のデータセットを用いた転移学習及び/又はファインチューニング等が挙げられる。
【0026】
ところで、労務管理に関する質問は、しばしば、いくつかの典型的な質問のグループに分類される。質問が属するグループが事前に判別され得る場合、言語モデルは、あらかじめ用意された複数のグループそれぞれについて、該グループに属する質問への回答の生成に関する事前学習が行われたGPT(グループ別事前学習済GPT)を含むことが好ましい。これにより、該GPTは、対応するグループに属する質問に対するより正確な情報を提供できる。また、そのようなGPTは、グループが未判別の質問に対する正確な回答を生成するGPTより軽量化が可能である。
【0027】
質問のグループは、例えば、労働時間に関する質問のグループ、賃金に関する質問のグループ、安全衛生に関する質問のグループ、教育訓練に関する質問のグループ、補助金に関する質問のグループ等である。
【0028】
グループ別事前学習済GPTは、例えば、労働時間に関する質問への回答に関する事前学習が行われた労働時間事前学習済GPT、賃金に関する質問への回答に関する事前学習が行われた賃金事前学習済GPT、安全衛生に関する質問への回答に関する事前学習が行われた安全衛生事前学習済GPT、教育訓練に関する質問への回答に関する事前学習が行われた教育訓練事前学習済GPT、補助金に関する質問のグループへの回答に関する事前学習が行われた補助金事前学習済GPT等である。
【0029】
賃金に関する質問への回答に関する事前学習が行われた賃金事前学習済GPTが記憶部12に記憶されることにより、情報提供装置1は、賃金への質問について、質問を行った質問者が属する組織の規模、属性等に応じた適切な賃金を提案する回答を生成できる。
【0030】
安全衛生に関する質問への回答に関する事前学習が行われた安全衛生事前学習済GPTが記憶部12に記憶されることにより、情報提供装置1は、安全衛生への質問について、現行の申請様式に沿った傷病手当金の申請方法等、安全衛生に関する制度の利用方法を提案する回答を生成できる。
【0031】
教育訓練に関する質問への回答に関する事前学習が行われた教育訓練事前学習済GPTが記憶部12に記憶されることにより、情報提供装置1は、教育訓練への質問について、質問を行った質問者が属する組織の規模、属性等に応じた採用・定着に結び付きやすい教育訓練等の採用を提案する回答を生成できる。
【0032】
補助金に関する質問のグループへの回答に関する事前学習が行われた補助金事前学習済GPTが記憶部12に記憶されることにより、情報提供装置1は、補助金・助成金等への質問について、質問を行った質問者が属する組織の規模、属性等に応じた補助金等の利用を提案する回答を生成できる。
【0033】
また、言語モデルは、既に学習してある言語モデルを使用し、より軽量な言語モデルを生み出す「蒸留」によって軽量化された言語モデルでもよい。これにより、情報提供装置1は、より軽量な処理により、迅速に情報を提供できる。特に、労務管理に関する質問への回答の生成に関する事前学習が行われた後に「蒸留」が行われた言語モデルを用いることにより、情報提供装置1は、質問から回答までの時間が事前学習によって長くなることを防ぐことができる。
【0034】
(労務管理情報データベース)
労務管理情報データベース(データベース)には、労務管理に関する情報が格納される。格納される情報には、労務管理に関する質問へのレポートに添えられることで該レポートを補足可能な情報である、レポート労務管理に関する質問への解決案、労務管理に関する行政機関の通達、及び労務管理に関する判例が含まれることが好ましい。
【0035】
質問者による内容の確認を可能とすべく、格納される情報は、ワールドワイドウェブ(Web)上から取得された情報を含むことが好ましい。最新の知見を反映させるべく、格納される情報は、クローリング等によってWeb上から定期的に取得された情報であることが好ましい。正確な情報であることが担保されるべく、格納される情報は、人間によって内容が確認された情報を含むことが好ましい。質問と適切に関連付けられるべく、格納される情報は、人間によって質問と対応付けられた情報を含むことが好ましい。
【0036】
(指定キーワード群)
指定キーワード群は、質問者の感情の度合いと対応付けられた1以上の指定キーワードからなる。指定キーワードとして、例えば、「わかってない」「不親切だ」「冷たい」「無理」「無茶」等の正の値を取る感情の度合いと対応付けられたキーワード、「ありがとう」「なるほど」「感謝」「わかりました」等の負の値を取る感情の度合いと対応付けられたキーワード等が挙げられる。記憶部12に指定キーワード群が格納されることにより、情報提供装置1は、質問に含まれる指定キーワードに基づいて質問を送信した質問者の感情の度合いを推定できる。
【0037】
(音声認識モデル)
音声認識モデルは、質問(質問データ)の態様を音声からテキストに変換可能なモデルであれば、特に限定されない。音声認識モデルは、例えば、音響分析に関するモデル、音響モデル、言語モデル等を含む。
【0038】
音声認識モデルに音響分析に関するモデルが含まれることにより、情報提供装置1は、質問を構成する音声の特徴量(周波数や音の強弱)を調べ、音響モデルにおいて扱いやすいデータとして抽出し変換できる。
【0039】
音声認識モデルに音響モデルが含まれることにより、情報提供装置1は、音響分析においてデータ化された特徴量を事前学習された音響モデルのデータと照らし合わせ、音波の最小単位である音素を抽出できる。
【0040】
音声認識モデルに言語モデルが含まれることにより、情報提供装置1は、抽出された音素を正確なテキストデータに変換できる。認識精度を高めるため、音声認識モデルは、例えば、OpenAIによる音声認識モデルWhisper等によって例示される、ニューラルネットワークを用いたモデルであることが好ましい。
【0041】
(音声合成モデル)
音声合成モデルは、回答生成部114において生成された回答等のテキストデータを、該テキストデータを読み上げる音声に変換可能なモデルであれば、特に限定されない。音声合成モデルは、例えば、規則合成の音声合成モデル、波形接続型音声合成の音声合成モデル、統計的パラメトリック音声合成の音声合成モデル等でよい。
【0042】
なかでも、音声合成モデルは、隠れマルコフモデル音声合成、ニューラルネットワーク音声合成によって例示される統計的パラメトリック音声合成の音声合成モデルであることが好ましい。これにより、情報提供装置1は、隠れマルコフモデルに比べて表現力が高く、より自然な音声合成を行える。
【0043】
音声認識モデルと音声合成モデルとが記憶部12に格納されることにより、情報提供装置1は、音声対話によって、対象とするサービスの分野における多様な質問に対する正確な情報を提供できる。特に、音声認識モデルと統計的パラメトリック音声合成の音声合成モデルとが記憶部12に格納されることにより、情報提供装置1は、人間と対話するときのような自然な音声対話によって、対象とするサービスの分野における多様な質問に対する正確な情報を提供できる。
【0044】
[通信部13]
通信部13は、情報提供装置1をネットワークNに接続して端末T等と通信可能にするものであれば特に限定されない。通信部13として、例えば、携帯電話ネットワークに対応した無線装置、無線LANに接続可能なデバイス、及びイーサネット規格に対応したネットワークカード等が挙げられる。
【0045】
〔ネットワークN〕
ネットワークNの種類は、情報提供装置1及び端末T等を互いに通信可能にするものであれば特に限定されない。ネットワークNの種類は、例えば、インターネット、携帯電話ネットワーク、無線LAN等である。
【0046】
〔端末T〕
端末Tは、例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等である。端末Tは、情報提供装置1から提供された情報を表示する処理、ユーザインタフェースを介した利用者の入力を情報提供装置1に提供する処理等を実行可能である。
【0047】
〔情報提供処理のメインフローチャート〕
図2は、本実施形態の情報提供装置1で実行される情報提供処理の好ましい流れの一例を示すメインフローチャートである。図3は、図2から続く図である。図4は、図3から続く図である。以下、図2から図4を用いて、本実施形態の情報提供装置1で実行される情報提供処理の好ましい流れの一例が説明される。
【0048】
まず、制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して質問受信部111を実行する。そして、制御部11は、質問受信部111に関する処理である、ステップS1からステップS3の処理を実行する。
【0049】
[ステップS1:質問を受信]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、端末T等から質問を受信する処理を実行する(ステップS1、質問受信ステップ)。制御部11は、処理をステップS2に移す。質問受信ステップで受信可能な質問の態様は、テキストの態様を含む。
【0050】
対象とするサービスの分野における多様な質問に対する正確な情報を情報提供装置1が音声対話によって提供できるようにすべく、質問受信ステップで受信可能な質問の態様は、音声の態様を含むことが好ましい。このとき、管理処理は、ステップS2からステップS3の処理を含むことが好ましい。
【0051】
[ステップS2:質問が音声の態様であるか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、ステップS1で受信された質問の態様が音声であるか判別する処理を実行する(ステップS2、質問態様判別ステップ)。音声であると判別したならば、制御部11は、処理をステップS3に移す。音声であると判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS4に移す。
【0052】
[ステップS3:質問をテキストの態様に変換]
制御部11は、記憶部12と協働して、ステップS2で音声の態様であると判別された質問の態様を、記憶部12に格納された音声認識モデルを用いて、テキストの態様に変換する処理を実行する(ステップS3、音声認識ステップ)。制御部11は、処理をステップS4に移す。
【0053】
質問の受信後、制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して感情推定部112及び引継部113を実行することが好ましい。このとき、制御部11は、感情推定部112に関する処理であるステップS4の処理及び引継部113に関する処理であるステップS5からステップS6の処理を実行する。
【0054】
GPTにより生成された回答を用いて対話を行う場合、生成される回答が人間により書かれたものであるかのような回答であるため、質問を行った利用者が人間を相手にするときのように感情的になることが懸念される。情報提供装置1は、ステップS4からステップS6の処理を実行することにより、感情的になり、本実施形態のプログラムによる対応が困難となった質問者への応対を人間のオペレータに引き継げる。
【0055】
なお、以下に示すステップS4からステップS6では、感情の度合いが閾値を超えたことを原因とする引継ぎが説明されるが、引継ステップへ遷移する原因は、感情の度合いに限定されない。該原因は、例えば、GPTにより生成された回答に質問の意図を理解できないことを示すフレーズ等が含まれているとの原因、質問に公序良俗に反する回答を促すフレーズ等が含まれているとの原因等でもよい。
【0056】
GPTは、多様な質問に対して回答を生成しようとするため、GPTが正確な回答を生成できない場合に、不正確な回答を生成することが懸念される。質問の意図を理解できないことを示すフレーズ等が回答に含まれているとの判別に基づいて引継ステップへ遷移するよう構成された情報提供装置1は、そのような回答が生成されることを防ぎ得る。
【0057】
GPTは、多様な質問に対して回答を生成可能であるため、例えば、公序良俗に反する回答を促す質問等により、情報提供装置1の提供者の評判を貶めるような回答を生成することが懸念される。質問に公序良俗に反する回答を促すフレーズ等が含まれているとの判別に基づいて引継ステップへ遷移するよう構成された情報提供装置1は、そのような回答が生成されることを防ぎ得る。
【0058】
[ステップS4:質問者の感情の度合いを推定]
制御部11は、記憶部12と協働して、ステップS1で受信された質問に含まれる指定キーワードに基づいて、質問を送信した質問者の感情の度合いを推定する処理を実行する(ステップS4、感情推定ステップ)。制御部11は、処理をステップS5に移す。
【0059】
感情推定ステップにおける「指定キーワード」は、記憶部12に格納された指定キーワード群に含まれる指定キーワードそれぞれを指す。該ステップは、例えば、指定キーワード群に含まれる指定キーワードそれぞれについて、指定キーワードが質問に含まれる数に該指定キーワードと対応付けられた感情の度合いを乗じた値の合計が質問者の感情の度合いに相当すると推定する手順等を含む。
【0060】
[ステップS5:感情の度合いが閾値を超えているか判別]
制御部11は、記憶部12と協働して、ステップS4で推定された感情の度合いがオペレータの介入を要する閾値を超えているか判別する処理を実行する(ステップS5、感情閾値超過判別ステップ)。超えていると判別したならば、制御部11は、処理をステップS6に移す。超えていると判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS7に移す。閾値は、特に限定されず、例えば、システムSの管理者等によって指定された値でよい。
【0061】
[ステップS6:人間のオペレータに引継ぎ]
制御部11は、記憶部12と協働して、ステップS1で受信した質問に関する対話を人間のオペレータに引継ぐ処理を実行する(ステップS6、引継ステップ)。制御部11は、情報提供処理を終了し、処理をステップS1に戻す。
【0062】
引継ステップにおける引継ぎの手段は、特に限定されない。該手段として、例えば、人間のオペレータとのチャットへの自動遷移、人間のオペレータの連絡先(メールアドレス、URL、電話番号等)の提示等が挙げられる。引継ぎを円滑に行うべく、引継ステップは、当該質問に関する経緯(例えば、一連の質問及び回答等)の通知を含むことが好ましい。
【0063】
続いて、制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して回答生成部114を実行する。そして、制御部11は、回答生成部114に関する処理である、ステップS7の処理を実行する。
【0064】
[ステップS7:質問に対する回答を生成させる]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、記憶部12に格納されたGPTに、ステップS1で受信された質問に対する回答を生成させる処理を実行する(ステップS7、回答生成ステップ)。制御部11は、処理をステップS8に移す。
【0065】
処理の肥大化を防ぐべく、回答生成ステップは、回答生成におけるトークン数に上限(例えば、4096トークン)が設けられた手順であることが好ましい。「トークン」は、GPTにおける文字、単語等に相当する処理単位である。回答生成におけるトークン数は、履歴のトークン数、質問のトークン数、回答のトークン数の合計である。これにより、本実施形態の情報提供装置1は、回答生成における処理の肥大化を防ぎ、より迅速に情報を提供できる。
【0066】
ところで、回答生成におけるトークン数に上限が設けられた場合、回答のトークン数が制限され得る。これにより、質問への回答として十分な情報が含まれない回答が生成され得る。質問への回答として十分な情報が含まれた回答を生成すべく、回答生成ステップは、あらかじめ用意されたグループに質問を分類する手順を含むことが好ましい。質問を分類する手順は、特に限定されない。該手順は、質問の分類に関する手順が記録されたRPAを用いた手順でも良く、質問を分類することに関する事前学習が行われたGPTを用いた手順でも良い。
【0067】
回答生成ステップが質問を分類する手順を含むことにより、情報提供装置1は、分類後の下流タスクとして、グループ別事前学習済GPTに質問に対する回答を生成させることができる。このとき、情報提供装置1は、グループ別事前学習済GPTにおける生成の前提であり、履歴を介して該GPTに伝える必要が無い情報である、上述の分類に関する情報を除いて、回答を生成させることができる。よって、上述の手順を含む回答生成ステップを実行する情報提供装置1は、回答生成におけるトークン数に上限が設けられた場合であっても、質問への回答として十分な情報が含まれた回答を生成できる。
【0068】
また、回答生成ステップが質問を分類する手順を含むことにより、情報提供装置1は、グループが未判別の質問に対する回答を生成するGPTに回答を生成させる場合より軽量化されたグループ別事前学習済GPTに、より正確な回答を生成させることができる。
【0069】
回答生成ステップは、正確な回答を生成するために十分な情報が質問に含まれていない場合に、質問を補足するよう促す回答を生成する手順を含むことが好ましい。これにより、情報提供装置1は、元の質問とこのような回答によって促された質問者からの補足情報とに基づくより正確な回答を生成できる。
【0070】
回答生成ステップは、ステップS1で受信された質問が企業その他の組織の労務管理に関する質問であると判別された場合に、情報取得部118によって当該組織から提供される組織情報を取得する手順を含むことが好ましい。組織情報は、特に限定されず、例えば、当該組織の就業規則、当該組織で用いられている雇用契約書、当該組織の賃金台帳、当該組織のタイムカード、当該組織の規模・業種等によって例示される、労務管理に関する基礎的な情報が含まれる。
【0071】
これにより、情報提供装置1は、回答生成ステップにおいて、この組織情報が取得された後に、該組織情報を履歴に含めてGPTに質問に対する回答を生成させる手順を実行できる。そして、情報提供装置1は、当該組織から提供された労務管理に関する基礎的な情報を踏まえた、より正確な回答をGPTによって生成し、提供できる。
【0072】
回答生成ステップは、質問に対する回答の構成をGPTにより生成し、当該構成に含まれる回答要素をGPTによりさらに生成する手順を含むことが好ましい。これにより、情報提供装置1は、回答生成におけるトークン数に上限が設けられた場合であっても、トークン数の上限を上回る長さの回答を生成できる。
【0073】
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して読上部115を実行することが好ましい。このとき、制御部11は、読上部115に関する処理であるステップS8の処理を実行する。これにより、情報提供装置1は、音声対話によって、対象とするサービスの分野における多様な質問に対する正確な情報を提供できる。
【0074】
[ステップS8:回答を音声により読み上げ]
制御部11は、記憶部12と協働して、ステップS7で生成された回答を音声により読み上げる処理を実行する(ステップS8、読上ステップ)。制御部11は、処理をステップS9に移す。
【0075】
読上ステップにおける読み上げの手順は、特に限定されず、従来技術の音声合成技術を用いた手順でよい。該手順は、パラメトリック音声合成の音声合成モデルを用いた手順を含むことが好ましい。これにより、情報提供装置1は、隠れマルコフモデルに比べて表現力が高く、より自然な音声合成を行える。該手順は、なかでも、隠れマルコフモデル音声合成より表現力が高く自然な音声合成を行える、ニューラルネットワーク音声合成を用いた手順を含むことが好ましい。
【0076】
GPTによる回答が生成されると、制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働し、質問に対するレポートを生成する前に、さらなる対話を要するか判別するステップS9の処理を実行する。労務管理に関する質問への回答等の情報提供においては、図表等が含まれるレポートより、対話が重要な場面がある。ステップS9の処理が実行されることにより、情報提供装置1は、対話が重要な場面において、レポートの提示によって対話を中断させることを防げる。
【0077】
[ステップS9:さらなる対話を要するか判別]
制御部11は、記憶部12と協働して、さらなる対話を要するか判別する処理を実行する(ステップS9、対話続行判別ステップ)。要すると判別したならば、制御部11は、対話の履歴を記憶部12に格納し、処理をステップS1に移す。要すると判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS10に移す。対話続行判別ステップは、特に限定されない。該ステップは、例えば、レポートの生成が指示及び/又は示唆されていない場合、ステップS7において質問を補足するよう促す回答が生成された場合等にさらなる対話を要すると判別する手順を含む。
【0078】
質問に対する回答が生成された後に、制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して図表等取得部116を実行する。そして、制御部11は、図表等取得部116に関する処理である、ステップS10からステップS11の処理を実行する。
【0079】
質問に対する回答は、図、表、及び画像等によって例示される図表等が付されて補足されることにより、より理解しやすく正確な情報となる。しかしながら、GPTは、人間のようなテキストを生成する言語モデルであり、質問に対する回答を補足する図表等を生成する言語モデルではない。よって、GPTのみを用いる手法は、質問に対するより理解しやすく正確な情報を提供する点において、さらなる改良の余地がある。
【0080】
図表等取得部116に関する処理が実行されることにより、本実施形態の情報提供装置1は、質問に関する図表等をWeb上から取得し、GPTによって生成された回答に取得した図表等を付したレポートを生成できる。対象とするサービスの分野が、例えば、労務管理に関する助言を与えるサービスである場合、Web上には、省庁等が提供する労務管理に関する図表等の多様な質問に対する回答を補足できる正確な図表等が多数存在する。これにより、本発明は、質問に対し、図、表、及び画像等によって例示される図表等が付された、より理解しやすく正確な情報を提供できる。
【0081】
[ステップS10:検索フレーズを生成]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、ステップS1で受信した質問に基づいてWeb上から図表等を検索するための検索フレーズを生成する処理を実行する(ステップS10、検索フレーズ生成ステップ)。制御部11は、処理をステップS11に移す。
【0082】
検索フレーズ生成ステップは、特に限定されない。該ステップは、例えば、検索フレーズの生成手順が記録されたRPAを用いた手順でも良く、検索フレーズの生成に関する事前学習が行われたGPTを用いた手順でも良い。
【0083】
[ステップS11:Web上から図表等を取得]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、ステップS10で生成された検索フレーズを用いてステップS1で受信した質問に関する図表等をWeb上から取得する処理を実行する(ステップS11、図表等取得ステップ)。制御部11は、処理をステップS12に移す。
【0084】
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して割合設定部117及び情報取得部118を実行することが好ましい。このとき、制御部11は、割合設定部117に関する処理であるステップS12の処理及び情報取得部118に関する処理であるステップS13からステップS14の処理を実行する。
【0085】
[ステップS12:レポートにおける各種情報の割合を設定]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、後にレポート生成部119によって生成されるレポートにおける情報取得部118によって取得された各種情報の割合を設定する処理を実行する(ステップS12、割合設定ステップ)。制御部11は、処理をステップS13に移す。
【0086】
割合設定ステップは、特に限定されない。該ステップは、例えば、質問者の指定に基づく手順でも良く、各種情報の割合の設定に関する手順が記録されたRPAを用いた手順でも良く、履歴から各種情報の割合を設定することに関する事前学習が行われたGPTを用いた手順でも良い。質問者の指定に基づく手順として、例えば、あらかじめ用意された5段階の割合を利用者に提示し、その中から各種情報の割合を選択させる手順等が挙げられる。
【0087】
割合設定ステップは、各種情報ごとに、該情報が含まれる割合の下限及び上限等によって示された範囲によって割合を設定することが好ましい。これにより、生成される回答、取得される図表等、取得される各種情報の量を細かく制御できない場合であっても、情報提供装置1は、割合設定ステップにおいて設定された範囲で示された割合で、解決案、通達、及び判例を含むようレポートを生成できる。
【0088】
組織は、事業規模、事業内容、立地等によって例示される組織の性質によって、労務管理に関する質問において期待する回答の傾向が異なる場合がある。そのため、割合設定ステップは、ステップS7において示した組織から提供された組織情報を用いて組織をその性質ごとにあらかじめ用意された複数のグループのいずれかに分類し、該グループに関連付けられた割合を設定する手順を含むことが好ましい。
【0089】
割合設定ステップは、レポートに含まれる質問された労務管理に関する課題に対応する解決案の割合、該課題に関する官公庁等からの通達の割合、及び該課題に関する裁判所における判例の割合を設定する手順を含むことが好ましい。これにより、情報提供装置1は、解決案、通達、課題のそれぞれが含まれる割合を質問者が属する組織の性質に応じて適切に設定できる。
【0090】
[ステップS13:各種情報の取得を要するか判別]
制御部11は、記憶部12と協働して、ステップS12で割合が設定された各種情報の取得を要するか判別する処理を実行する(ステップS13、取得要否判別ステップ)。要すると判別したならば、制御部11は、処理をステップS14に移す。要すると判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS16に移す。取得要否判別ステップは、特に限定されず、例えば、ステップS12において設定された各種情報の割合のいずれかが0でない場合に各種情報の取得を要すると判別する手順等を含む。
【0091】
[ステップS14:各種情報を取得]
制御部11は、記憶部12と協働して、ステップS13で取得を要すると判別された各種情報を記憶部12に記憶された労務管理情報データベースから取得する処理を実行する(ステップS14、情報取得ステップ)。制御部11は、処理をステップS15に移す。
【0092】
情報取得ステップで取得される情報は、ステップS13での判別に基づいて、労務管理に関する質問への解決案、労務管理に関する行政機関の通達、及び/又は労務管理に関する判例を含むことが好ましい。これにより、情報提供装置1は、労務管理情報データベースに格納された、人間によって内容が確認され、質問と対応付けられた解決案、通達、判例等の各種情報が添えられたレポートを生成できる。
【0093】
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働してレポート生成部119を実行する。そして、制御部11は、レポート生成部119に関する処理であるステップS15からステップS16の処理を実行する。
【0094】
[ステップS15:図表等及び各種情報が添えられたレポートを生成]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、ステップS7で生成された回答に、ステップS11で取得された図表等とステップS14で取得された各種情報とが添えられたレポートを生成する処理を実行する(ステップS15、各種情報付レポート生成ステップ)。制御部11は、情報提供処理を終了し、処理をステップS1に戻す。
【0095】
各種情報付レポート生成ステップで生成されるレポート(各種情報付レポート)は、ステップS11で取得された図表等を所定の割合で含む。ここで言う「所定の割合で含む」は、例えば、図表等が各種情報付レポートに占める面積の割合があらかじめ設定された割合の範囲に含まれることを指す。
【0096】
各種情報付レポートは、ステップS14で取得された解決案、通達、及び判例をステップS12で設定された割合(割合設定部117によって設定された割合)で含む。ここで言う「割合で含む」は、例えば、各種情報の面積、文字数等の割合がステップS12で設定された割合の範囲に含まれることを指す。各種情報付レポートは、後に、図6及び図7を用いてより詳細に説明される。
【0097】
情報提供装置1は、図表等に加えて各種情報が設定された割合で含まれた各種情報付レポートを生成することにより、質問に関する各種情報(解決案、通達、判例等)が含まれた正確かつわかりやすい情報を提供できる。各種情報が労務管理情報データベースにあらかじめ格納された情報であるため、情報提供装置1は、クローリング等によってWeb上から定期的に取得され、利用者が確認可能な情報であり、人間によって内容が確認され、質問と適切に関連付けられる等した各種情報によって、提供される情報をより正確なものとすることができる。
【0098】
[ステップS16:図表等が添えられたレポートを生成]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、ステップS7で生成された回答に、ステップS11で取得された図表等が添えられたレポートを生成する処理を実行する(ステップS16、レポート生成ステップ)。制御部11は、情報提供処理を終了し、処理をステップS1に戻す。
【0099】
レポート生成ステップで生成されるレポート(回答レポート)は、ステップS11で取得された図表等を所定の割合で含む。ここで言う「所定の割合で含む」は、例えば、図表等が回答レポートに占める面積の割合があらかじめ設定された割合の範囲に含まれることを指す。回答レポートは、後に、図5を用いてより詳細に説明される。
【0100】
情報提供装置1は、所定の割合の図表等が含まれた各種情報付レポートを生成することにより、対象とするサービスの分野における多様な質問に対する正確かつわかりやすい情報を提供できる。
【0101】
[アンケートステップ]
情報提供処理は、GPTの追加学習、後述の履歴提供ステップ等で利用すべく、情報提供装置1への質問及び情報提供装置1からの回答からなる対話に対する質問者の評価を取得し、記憶部12に記憶するアンケートステップを含むことが好ましい。
【0102】
これにより、情報提供装置1は、対話が質問した課題の解決に寄与したと感じられたか否か、対話が感情に寄り添っていると感じられたか否か、人間のオペレータとの対話の方が好ましいか否か等によって例示される質問者の評価をGPTの追加学習、後述の履歴提供ステップ等で利用できる。これにより、情報提供装置1は、人間のオペレータへの引継ぎを行うタイミングをより的確に判断できるよう改善され得る。
【0103】
[履歴提供ステップ]
情報提供処理は、情報提供装置1において送受信した質問、回答、図表等、各種情報等の1以上を含む履歴を対象とするサービスの分野における専門家等に提供する履歴提供ステップを含むことが好ましい。これにより、当該専門家は、質問者及び該質問者が属する組織の性質に応じた助言の改善に、当該履歴の内容・傾向等を利用できる。
【0104】
これにより、例えば、対象とするサービスの分野が労務管理に関する助言を与えるサービスである場合、社労士等の労務管理に関する専門家は、質問の内容、質問の傾向、質問者が属する組織の規模・業種・立地等が含まれた履歴に基づいて、当該組織に対し、規則の整備等の作業性を向上させる助言等を行い得る。
【0105】
[情報更新ステップ]
情報提供処理は、行政機関の通達文を公開するウェブサイト、裁判所の判例を公開するウェブサイト等によって例示される所定のクローリング対象サイトをクローリングし、公開されている通達文、判例等を用いてGPTの追加訓練を行う情報更新ステップを含むことが好ましい。これにより、情報提供装置1は、改正によって古いものとなった制度、判例によって適切でないと示された運用等によって例示される、以前は正確であったが通達文、判例等によって正確でなくなった回答を生成することを防ぐことができる。
【0106】
<使用例>
以下、情報提供装置1の使用例が説明される。
【0107】
〔質問の送信〕
まず、端末Tを介して情報提供装置1を利用する利用者は、組織の労務管理に関する質問(例えば、「タイムレコーダーを良くしたい。」とのテキスト又は発話による音声データ)を情報提供装置1に送信する。情報提供装置1は、送信された質問を受信する。
【0108】
〔回答の生成〕
情報提供装置1は、質問を分類することに関する事前学習が行われたGPTを用いて受信された質問を分類し、当該質問が労働時間に関する質問であるとの分類結果を得る。そして、情報提供装置1は、労働時間に関する事前学習が行われた労働時間事前学習済GPTを用いて受信された質問への回答を生成する。
【0109】
[補足情報の要請]
ここで、質問が「タイムレコーダーを良くしたい。」との曖昧な質問であったため、労働時間事前学習済GPTは、質問の意図を絞り込むべく、「タイムレコーダーを良くするためには、どのような点を改善したいのでしょうか? 詳細をお聞かせください。」との回答を生成する。そして、情報提供装置1は、音声合成モデルを用いてこの回答を読み上げる。利用者は、端末Tにおいて読み上げられた回答を受けて、「あー、つまり、タイムレコーダーを良くして勤怠管理を効率化したいということです。」と補足する情報を送信する。
【0110】
[組織情報提供の要請]
ここで、利用者が属する組織の性質及び該組織における勤怠管理の現状が不明であるため、労働時間事前学習済GPTは、現状を確認すべく、「会社についての資料をいただけますでしょうか。また、勤怠管理の現状をお聞かせください。」との回答を生成する。利用者は、この回答を受けて、該組織の規模・業種に関する資料と、該組織で使われているタイムカードとを情報提供装置1に提供する。情報提供装置1は、提供された情報を受信し、該情報を履歴に含めて回答を生成する。
【0111】
〔レポートの生成〕
情報提供装置1は、ここまでの質問及び回答からなる対話並びに提供された情報を履歴に含めて、労働時間事前学習済GPTに質問に対する回答を生成させる。また、情報提供装置1は、質問(及び補足する情報)から「勤怠管理」との検索フレーズを生成し、Web上から「勤怠管理」に関する図表等を取得する。そして、情報提供装置1は、生成された回答及び取得された図表等を含むレポートを生成する。
【0112】
図5は、本実施形態の情報提供処理において生成されたレポートの一例である。図5に示される第1レポートR1は、GPTにより生成された回答(第1表題R1T「勤怠管理の効率化に関する提案」及び勤怠管理の効率化の具体的な手法が示された第1生成テキストR1G)、Web上から取得された図表等(勤怠管理に関するアンケート結果の円グラフ、勤怠管理の現状、課題、解決策、利点がまとめられた表を含む第1図表等R1F)を含む。
【0113】
情報提供装置1は、上述の手順を経て第1レポートR1を生成することにより、対象とするサービスの分野(労務管理に関する助言を与えるサービス)における多様な質問に対する正確な情報がわかりやすく示されたレポートを提供できる。
【0114】
[各種情報が含まれたレポート]
以下は、割合設定部117及び情報取得部118を備える情報提供装置1が生成するレポートの一例である。
【0115】
図6は、各種情報が設定された割合で含まれるよう生成されたレポートの一例である。図6に示される第2レポートR2の生成において、割合設定部117は、利用者の性質に関する判別から、解決案及び通達が含まれる割合をそれぞれ1-3割に設定し、判例が含まれる割合を0割に設定した。そのため、第2レポートR2は、第1レポートR1と異なり、それぞれ2割程度の分量の第2解決案R2S(「解決案等」と題され、勤怠管理ツールの名称及びそのURLが示されている)及び第2通達R2N(「関連通達等」と題され、中小企業庁による通達及びそのURLが示されている)を含む。第2解決案R2S及び第2通達R2Nは、本実施形態のデータベースから取得された各種情報である。なお、第2レポートR2は、第1レポートR1と同様に、GPTにより生成された回答(第2表題R2T「勤怠管理の効率化に関する提案」及び勤怠管理の効率化の具体的な手法が示された第2生成テキストR2G)、Web上から取得された図表等(勤怠管理に関するアンケート結果の円グラフ、勤怠管理の現状、課題、解決策、利点がまとめられた表を含む第2図表等R2F)を含んでいる。
【0116】
図7は、各種情報が図6と異なる割合で含まれるよう生成されたレポートの一例である。図7に示される第3レポートR3の生成において、割合設定部117は、利用者の性質に関する判別から、解決案が含まれる割合を1-3割に設定し、通達及び判例が含まれる割合をそれぞれ0割に設定した。そのため、第3レポートR3は、第1レポートR1及び第2レポートR2のいずれとも異なり、2割程度の分量の第3解決案R3S(「解決案等」と題され、勤怠管理ツールの名称及びそのURLが示されている)を含み、通達等を含まない。第3解決案R3Sは、本実施形態のデータベースから取得された各種情報である。なお、第3レポートR3は、第1レポートR1及び第2レポートR2と同様に、GPTにより生成された回答(第3表題R3T「勤怠管理の効率化に関する提案」及び勤怠管理の効率化の具体的な手法が示された第3生成テキストR3G)、Web上から取得された図表等(勤怠管理に関するアンケート結果の円グラフ、勤怠管理の現状、課題、解決策、利点がまとめられた表を含む第3図表等R3F)を含んでいる。
【0117】
このように、割合設定部117及び情報取得部118を備える情報提供装置1は、利用者に合わせて各種情報が所定割合で含まれるレポートを生成するため、対象とするサービスの分野における多様な質問に対する正確な情報がよりいっそうわかりやすく示されたレポートを提供できる。
【0118】
なお、本発明の思想の範疇において、当業者であれば各種の変更例及び修正例に想到し得るものである。よって、それら変更例及び修正例は、本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
S システム
1 情報提供装置
11 制御部
111 質問受信部
112 感情推定部
113 引継部
114 回答生成部
115 読上部
116 図表等取得部
117 割合設定部
118 情報取得部
119 レポート生成部
12 記憶部
13 通信部
N ネットワーク
T 端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質問を受信するよう構成された質問受信部と、
言語モデルに前記質問に対する回答を生成させるよう構成された回答生成部と、
前記質問に関する図表をWeb上から取得するよう構成された図表取得部と、
前記回答生成部により生成された回答及び前記図表取得部により取得された図表を含むレポートを生成するよう構成されたレポート生成部と、
前記質問に関する各種情報を取得するよう構成された情報取得部をさらに備え、
前記情報取得部は、前記質問が企業その他の組織の労務管理に関する質問である場合に、前記組織から提供される組織情報を取得するよう構成され、
前記回答生成部は、前記組織情報が取得された場合に、前記組織情報を前提とした前記労務管理に関する質問に対する回答を生成するよう構成される、
を備える、情報提供装置。
【請求項2】
前記レポート生成部が生成するレポートにおける前記各種情報の割合を前記質問に基づいて設定するよう構成された割合設定部をさらに備え、
前記情報取得部は、データベースに格納された労務管理に関する情報から前記質問に関する各種情報を取得するよう構成され、
前記データベースに格納された労務管理に関する情報は、労務管理に関する質問への解決案、労務管理に関する行政機関の通達、及び労務管理に関する判例を含み、
前記割合設定部は、前記解決案、前記通達、及び前記判例それぞれの割合を設定するよう構成され、
前記レポート生成部は、前記解決案、前記通達、及び前記判例を前記割合設定部において設定された割合で含むレポートを生成するよう構成される、
請求項に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記回答生成部は、前記質問をあらかじめ用意された複数のグループのいずれかに分類し、分類されたグループに属する質問への回答生成に関する事前学習が行われた言語モデルに前記質問に対する回答を生成させるよう構成される、請求項に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記回答を音声によって読み上げるよう構成された読上部をさらに備え、
前記質問受信部は、音声の態様の質問を受信した場合に前記質問の態様をテキストの態様に変換するよう構成される、
請求項1に記載の情報提供装置。