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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154946
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/76 20060101AFI20241024BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241024BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L29/78 652R
H01L29/78 653C
H01L29/78 652H
H01L29/78 657D
H01L29/78 655B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069193
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】ミネベアパワーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白石 正樹
(57)【要約】
【課題】
RC-IGBTにおけるスナップバック現象を抑制する。
【解決手段】
同一チップ内にIGBT領域21とダイオード領域22とを有する半導体装置100において、IGBT領域21のIGBTは、第1導電型のドリフト層1と、トレンチ3と、トレンチ3内に設けられたゲート電極5と、第2導電型のボディ層2と、第1導電型のエミッタ層7と、ゲート絶縁膜(絶縁膜4)と、第2導電型のコレクタ層11とを有し、ダイオード領域22のダイオードは、ドリフト層1と、ドリフト層1よりも表面側に設けられた第2導電型の第1半導体層12と、ドリフト層1よりも裏面側に設けられた第1導電型の第2半導体層13とを有し、IGBT領域21は、ダイオード領域22との境界部に、ドリフト層1を貫通してボディ層2とコレクタ層11とに接する第2導電型の境界部ピラー層8Aを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一チップ内にIGBT領域とダイオード領域とを有する半導体装置において、
前記IGBT領域のIGBTは、第1導電型のドリフト層と、トレンチと、前記トレンチ内に設けられたゲート電極と、前記ドリフト層よりも表面側に前記トレンチに隣接して設けられた第2導電型のボディ層と、前記ボディ層の表面側に設けられた第1導電型のエミッタ層と、前記ボディ層および前記エミッタ層と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜と、前記ドリフト層よりも裏面側に設けられた第2導電型のコレクタ層とを有し、
前記ダイオード領域のダイオードは、前記ドリフト層と、前記ドリフト層よりも表面側に設けられた第2導電型の第1半導体層と、前記ドリフト層よりも裏面側に設けられた第1導電型の第2半導体層とを有し、
前記IGBT領域は、前記ダイオード領域との境界部に、前記ドリフト層を貫通して前記ボディ層と前記コレクタ層とに接する第2導電型の境界部ピラー層を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ダイオード領域は、前記ドリフト層の内部に設けられ前記第1半導体層に接する第2導電型のダイオード部ピラー層と、前記ドリフト層の内部であって前記第1半導体層よりも前記第2半導体層に近い位置に設けられた低ライフタイム領域とを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記IGBT領域は、前記ドリフト層と前記コレクタ層との間で、前記境界部ピラー層を除く領域に、第1導電型のバッファ層を有し、
前記ダイオード領域は、前記ドリフト層と前記第2半導体層との間に、前記バッファ層を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記ダイオード部ピラー層と前記バッファ層とが接していることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記ダイオード部ピラー層と前記バッファ層との間に前記ドリフト層が存在することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記低ライフタイム領域は、前記ダイオード部ピラー層と前記バッファ層との間の位置に設けられていることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一チップ内にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とダイオードとを内蔵するRC-IGBT(RC:Reverse-Conducting、逆導通IGBT)は、IGBTとダイオードのターミネーション領域を共通化できるため、チップサイズ低減ができるメリットがある。また、IGBTとダイオードが動作するタイミングがそれぞれ異なるため、IGBT領域とダイオード領域とのうち一方で発生した損失による熱が他方に分散され、チップ全体で放熱できるため、熱抵抗が低減できるメリットもある。
【0003】
一方、RC-IGBTは、IGBTがオンする際に、特にダイオードとの境界部近傍のIGBTの表面側から注入された電子が、IGBTの裏面側のコレクタ層であるp層から抜けず、ダイオードのカソード層であるn+層に抜けてMOS動作をしてしまい、裏面側のpn接合のビルトイン電圧以上の電圧を印加しないと、裏面側のp層からのホール注入が起こらないという現象が起きる。このため、IGBTがオンする際に、電圧が上昇した後に一旦小さくなるというスナップバック現象が起きるという課題がある。
【0004】
ここで、IGBTとダイオードとを内蔵する通常のRC-IGBTではなく、IGBTとMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)とを内蔵し、さらにSJ(Super Junction)構造としたSJ-RC-IGBTに関する技術ではあるが、スナップバック現象を抑制する技術として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、SJ-RC-IGBTにおいて、SJ構造の繰り返しピッチと、繰り返し構造の厚みと、SJ構造の不純物濃度と、バッファ層の厚みおよび不純物濃度と、IGBTとMOSFETの繰り返しピッチを調節することで、スナップバック電圧が小さく、高い電流密度でもMOSFET動作を行うことが可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/179379号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、特許文献1の図1に示すように、N-ドリフト層(1)とP-ドリフト層(2)の繰り返しによるSJ構造の下に、Nバッファ層(11)が存在するため、IGBTにおいて注入されたキャリアである電子がPコレクタ層(12)から抜けずにNバッファ層(11)を通ってMOSFETのNコレクタ層(13)側に抜ける可能性があるため、スナップバック現象を小さくするのには限界があるという問題がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、RC-IGBTにおけるスナップバック現象を抑制できる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の半導体装置は、同一チップ内にIGBT領域とダイオード領域とを有する半導体装置において、前記IGBT領域のIGBTは、第1導電型のドリフト層と、トレンチと、前記トレンチ内に設けられたゲート電極と、前記ドリフト層よりも表面側に前記トレンチに隣接して設けられた第2導電型のボディ層と、前記ボディ層の表面側に設けられた第1導電型のエミッタ層と、前記ボディ層および前記エミッタ層と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜と、前記ドリフト層よりも裏面側に設けられた第2導電型のコレクタ層とを有し、前記ダイオード領域のダイオードは、前記ドリフト層と、前記ドリフト層よりも表面側に設けられた第2導電型の第1半導体層と、前記ドリフト層よりも裏面側に設けられた第1導電型の第2半導体層とを有し、前記IGBT領域は、前記ダイオード領域との境界部に、前記ドリフト層を貫通して前記ボディ層と前記コレクタ層とに接する第2導電型の境界部ピラー層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、境界部ピラー層によってIGBT領域からダイオード領域へキャリアが移動するのを抑制できるので、RC-IGBTにおけるスナップバック現象を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の半導体装置の概略構成を説明する断面図。
図2】RC-IGBTにおけるスナップバック現象を説明する電流電圧特性。
図3】実施例2の半導体装置の概略構成を説明する断面図。
図4】実施例3の半導体装置の概略構成を説明する断面図。
図5】実施例4の半導体装置の概略構成を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。各図、各実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【実施例0012】
図1は、実施例1の半導体装置の概略構成を説明する断面図である。
【0013】
実施例1の半導体装置100は、RC-IGBTであり、同一チップ内(同一の半導体基板上)にIGBT領域21とダイオード領域22とを有する。
【0014】
IGBT領域21には、IGBTが形成されており、IGBTは、例えば、第1導電型のドリフト層1と、トレンチ3と、トレンチ3内に設けられたゲート電極5と、ドリフト層1よりも表面側にトレンチ3に隣接して設けられた第2導電型のボディ層2と、ボディ層2の表面側に設けられた第1導電型のエミッタ層7と、ボディ層2およびエミッタ層7とゲート電極5との間に設けられたゲート絶縁膜として機能する絶縁膜4と、ドリフト層1よりも裏面側に設けられた第2導電型のコレクタ層11とを有する。
【0015】
ダイオード領域22には、ダイオードが形成されており、ダイオードは、例えば、ドリフト層1と、ドリフト層1よりも表面側に設けられた第2導電型の第1半導体層12と、ドリフト層1よりも裏面側に設けられた第1導電型の第2半導体層13とを有する。
【0016】
なお、図1では第1導電型をn型、第2導電型をp型とした例を用いて説明している。この場合、第1半導体層12はアノード層、第2半導体層13はカソード層となる。なお、これに限られず、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。その場合は、キャリアである電子およびホールが逆になるとともに、第1半導体層12はカソード層、第2半導体層13はアノード層となる。
【0017】
また、半導体装置100は、IGBT領域21とダイオード領域22とに共通して、表面側に設けられた図示しない表面電極と、裏面側に設けられた図示しない裏面電極とを有している。
【0018】
表面電極は、IGBT領域21とダイオード領域22とにおいて、図示しないコンタクトホールおよび第2導電型のコンタクト層を介してボディ層2および第1半導体層12と接続されている。表面電極は、エミッタ層7にも接続されている。表面電極は、エミッタ電位Eであるとともに、アノード電位Aでもある。
【0019】
裏面電極は、コレクタ層および第2半導体層13に接続されている。裏面電極は、コレクタ電位であるとともに、カソード電位でもある。
【0020】
IGBT領域21において、ゲート電極5は、トレンチ3内に形成された絶縁膜4を介してボディ層2およびエミッタ層7と隣接している。ゲート電極5に接する絶縁膜4は、ゲート絶縁膜として機能する。ゲート電極5と表面電極との間は、層間絶縁膜9によって絶縁されている。本実施例では層間絶縁膜9がトレンチ3内に形成されている例を示しているが、トレンチ3の外部にも図示しない層間絶縁膜が形成されてる構成としてもよい。ゲート電極5には、図示しないゲート駆動回路などからゲート電位Gが供給される。
【0021】
ダイオード領域22にもトレンチ3を有しており、ダイオード領域22のトレンチ3内には絶縁膜4とダミー電極6とが設けられている。ダミー電極6には、例えばエミッタ電位Eが供給されているが、これに限られず、例えばゲート電位Gなどの他の電位としてもよい。なお、ダイオード領域22の第1半導体層12にはエミッタ層7は設けられていないので、ダミー電極6はゲート電極としては機能しない。
【0022】
本実施例および後述する他の実施例において、各層の不純物濃度は、例えば、ドリフト層1の不純物濃度は低濃度のn-であり、エミッタ層7の不純物濃度は高濃度のn+であり、第2半導体層13の不純物濃度は高濃度のn+であり、これ以外はnまたはpである例を用いて説明しているが、これに限られず、各実施例で意図した動作が可能な範囲で適宜変更可能である。
【0023】
ここで、実施例1の半導体装置100は、IGBT領域21が、ダイオード領域22との境界部に、ドリフト層1を貫通してボディ層2とコレクタ層11とに接する第2導電型のピラー層8である境界部ピラー層8Aを有する。この境界部ピラー層8Aによって、IGBT領域21からダイオード領域22へキャリアである電子33が移動するのを抑制できるので、RC-IGBTにおけるスナップバック現象を抑制できる。
【0024】
図2は、RC-IGBTにおけるスナップバック現象を説明する電流電圧特性である。図2において、横軸は電圧V、縦軸は電流Iである。図2では、スナップバックなしの特性31を点線で、スナップバックありの特性32を実線で図示している。
【0025】
IGBTは、通常はスナップバックなしの特性31のように、裏面側のpn接合部(図1ではp型のコレクタ層11とn型のドリフト層1)がビルトイン電圧以上になるとホール注入が始まってIGBT動作が始まり、電圧Vに対して電流Iが曲線状に立ち上がる。
【0026】
しかしながら、RC-IGBTでは、IGBTがオンする際に、最初は裏面側のpn接合部がビルトイン電圧より低いので、IGBT領域21とダイオード領域22との境界部近傍において、IGBTの表面側のボディ層2から注入された電子33が、IGBTの裏面側のコレクタ層11であるp層から抜けず、ダイオードの第2半導体層13(図1ではカソード層)であるn+層に抜けてしまい、スナップバックありの特性32に示すように、最初は電圧Vに対して電流Iが直線状に増加するというMOS動作をする。その理由は、IGBTの裏面のp層をn+層にした構造はMOSFETの構造と同じになるからである。その後、裏面側のpn接合部にかかる電圧が上昇してビルトイン電圧を超えるとIGBT動作が始まる。そのとき、スナップバックなしの特性31と同じ特性に戻るので、スナップバックありの特性32に示すように、電圧Vが上昇した後に一旦小さくなる。このような現象をスナップバック現象と呼んでいる。スナップバック現象が発生すると、通常のIGBT動作での波形に比べて、MOS動作中は電圧が高くなり、その分だけ損失が大きくなるという問題がある。
【0027】
これに対して、図1に示すように、実施例1の半導体装置100では、境界部ピラー層8Aがキャリアである電子33に対する障壁となることで、IGBT領域21からダイオード領域22へキャリアである電子33が移動するのを抑制できるので、RC-IGBTにおけるスナップバック現象を抑制できる。
【実施例0028】
図3は、実施例2の半導体装置の概略構成を説明する断面図である。
【0029】
実施例2は、実施例1の変形例であり、実施例1との相違点は、ダイオード領域22が、ドリフト層1の内部に設けられ第1半導体層12に接する第2導電型のピラー層8であるダイオード部ピラー層8Bと、ドリフト層1の内部であって第1半導体層12よりも第2半導体層13に近い位置に設けられた低ライフタイム領域14とを有する点である。なお、図3ではダイオード部ピラー層8Bと第2半導体層13とが接している例を示しているが、これに限られず、ダイオード部ピラー層8Bと第2半導体層13との間にドリフト層1が存在するようにしてもよい。また、図3では低ライフタイム領域14がIGBT領域21にも設けられている例を示しているが、これに限られず、少なくともダイオード領域22に設けられていればよい。これ以外は実施例1と同じである。
【0030】
低ライフタイム領域14は、プロトンやヘリウムなどの軽イオンの照射によって格子欠陥を形成した領域であり、キャリアのライフタイムを短くすることができる。
【0031】
通常は、ダイオード部ピラー層8Bは設けられておらず、また、ダイオードのリカバリー時のピーク電流を低減するために、半導体装置100の表面側から軽イオンの照射を行って、ドリフト層1の内部であって第1半導体層12に近い位置に低ライフタイム領域14を形成している。この位置に形成する理由は、ダイオードのリカバリー時のピーク電流が発生する時点では、ダイオードのアノード-カソード間の電圧は上昇途中であるため、ドリフト層1における空乏層は表面側のpn接合部(図3ではp型の第1半導体層12とn型のドリフト層1との間の接合部)からあまり広がっていないからである。
【0032】
しかしながら、表面側から軽イオンの照射を行うと、IGBT領域21の絶縁膜4(ゲート絶縁膜)にも照射され、絶縁膜4(ゲート絶縁膜)に界面電荷が発生して、IGBTのゲートのしきい値電圧変動が生じるという問題が発生する。なお、メタルマスクによってIGBT領域21に軽イオンの照射が行われないようにすることも可能であるが、メタルマスクなどの設備が必要になり、製造コストが上昇するという問題が発生する。また、裏面側から軽イオンの照射を行って第1半導体層12に近い位置に低ライフタイム領域14を形成する場合は、打ち込みエネルギーを大きくする必要があるので分散が大きくなるとともに、ウエハ厚さにばらつきがあると照射位置がばらつくという問題が発生する。
【0033】
そこで、本実施例では、ダイオード領域22において、ドリフト層1の内部にダイオード部ピラー層8Bが設けられたSJ構造とすることで、ダイオードに電圧が印加されたときに第1半導体層12に接続されたダイオード部ピラー層8Bからも横方向に空乏層が広がるため、低い電圧でもドリフト層1が空乏化し、空乏層が裏面近傍まで広がる。そのため、ダイオードのリカバリー時のピーク電流を低減するための低ライフタイム領域14を、ドリフト層1の内部の裏面近傍に設ければよくなり、低ライフタイム領域14を形成するための軽イオンの照射も裏面側から裏面近傍に照射すればよくなる。これにより、IGBTのゲートのしきい値電圧変動や、軽イオンの照射位置がばらつくことを抑制できる。
【実施例0034】
図4は、実施例3の半導体装置の概略構成を説明する断面図である。
【0035】
実施例3は、実施例2の変形例であり、実施例2との相違点は、IGBT領域21が、ドリフト層1とコレクタ層11との間で、境界部ピラー層8Aを除く領域に、第1導電型のバッファ層10を有し、ダイオード領域22が、ドリフト層1と第2半導体層13との間に、バッファ層10を有する点である。なお、本実施例では、ダイオード部ピラー層8Bとバッファ層10とが接している例を示している。これ以外は実施例2と同じである。
【0036】
本実施例によれば、バッファ層10を設けることで、空乏層が裏面まで到達しにくくなり、耐圧が確保できる。また、IGBT領域21において、バッファ層10は、境界部ピラー層8Aを除く領域に設けられているので、IGBT領域21で注入されたキャリアである電子33がバッファ層10を通ってダイオード領域22に抜けてしまうことを防止できる。
【0037】
なお、IGBTのようなバイポーラ素子では、MOSFETのようなユニポーラ素子とは異なり、SJ構造にしてドリフト層1を高濃度化してもオン電圧の低減効果はあまり得られず、ピラー層8を追加した分だけ電流経路が狭くなるため、IGBT領域21のピラー層8は境界部ピラー層8Aのみとすることが望ましい。
【実施例0038】
図5は、実施例4の半導体装置の概略構成を説明する断面図である。
【0039】
実施例4は、実施例3の変形例であり、実施例3との相違点は、ダイオード部ピラー層8Bとバッファ層10とが接しておらず、ダイオード部ピラー層8Bとバッファ層10との間にドリフト層1が存在する点である。なお、低ライフタイム領域14は、ダイオード部ピラー層8Bとバッファ層10との間の位置に設けられていることが望ましいが、これに限られない。これ以外は実施例2と同じである。
【0040】
実施例3の構造の場合は、ダイオードのリカバリー時に、ピーク電流が流れた後、テール電流なしで一気に電流が定常値に戻ってしまう。その理由は、ダイオードのリカバリー時に、ダイオード部ピラー層8Bがあると低い電圧で空乏化するのでその部分はキャリアがなくなり、その状態で第2半導体層13まで空乏化が進むと、ピーク電流が流れた後、残存キャリアが無いのでテール電流が流れずに一気に電流が定常値に戻ってしまうからである。これにより、電流変化率(di/dt)が大きくなり、サージの跳ね上がり電圧が生じて電圧・電流の波形が振動してしまうという問題が生じる。
【0041】
そこで、本実施例では、ダイオード部ピラー層8Bとバッファ層10との間にドリフト層1が存在する構造とすることで、ダイオードのリカバリー時に、この部分のドリフト層1に残存キャリアを存在させるようにした。この残存キャリアがあることで、ダイオードのリカバリー時に、ピーク電流が流れた後、テール電流が発生し、跳ね上がり電圧や電圧・電流の波形振動を抑制できる。
【0042】
さらに、この部分に低ライフタイム領域14を設けることで、テール電流が大きくなりすぎるのを抑制できるので、跳ね上がり電圧や電圧・電流の波形振動を抑制しつつ、テール電流を低減することができる。
【0043】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に記載された構成に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。また、各実施例で説明した構成の一部または全部を組み合わせて適用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ドリフト層
2 ボディ層
3 トレンチ
4 絶縁膜
5 ゲート電極
6 ダミー電極
7 エミッタ層
8 ピラー層
8A 境界部ピラー層
8B ダイオード部ピラー層
9 層間絶縁膜
10 バッファ層
11 コレクタ層
12 第1半導体層
13 第2半導体層
14 低ライフタイム領域
21 IGBT領域
22 ダイオード領域
31 スナップバックなしの特性
32 スナップバックありの特性
33 電子
100 半導体装置
G ゲート電位
E エミッタ電位
A アノード電位
I 電流
V 電圧
図1
図2
図3
図4
図5