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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154951
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20241024BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241024BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L29/78 658H
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 652H
H01L29/78 652T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069198
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】ミネベアパワーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 悠佳
(72)【発明者】
【氏名】須藤 建瑠
(72)【発明者】
【氏名】三木 浩史
(72)【発明者】
【氏名】辻川 友紀
(57)【要約】
【課題】
製造が容易で、MOSFETのオン抵抗の増加を抑制しつつリカバリ電流を低減する。
【解決手段】
半導体装置1は、第1導電型のドレイン領域11と、ドレイン領域11よりも上方に配置され、ドレイン領域11よりも不純物濃度が低い第1導電型のドリフト領域10と、ドリフト領域10よりも上方に配置された第2導電型のボディ領域9と、ボディ領域9よりも上方に配置された第1導電型のソース領域3と、ボディ領域9とソース領域3とに接する第2導電型のチャネル領域5と、チャネル領域5に接するゲート絶縁膜6と、ゲート絶縁膜6に接するゲート電極7と、隣接する2つのボディ領域9の間に配置された第1導電型のJFET領域8と、JFET領域8に重ならず、ボディ領域9とドリフト領域10との間に配置され、第2導電型の不純物を6×1011cm-2以上1×1013cm-2以下の範囲で含む、第1導電型の低ライフタイム領域4とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のドレイン領域と、
前記ドレイン領域よりも上方に配置され、前記ドレイン領域よりも不純物濃度が低い第1導電型のドリフト領域と、
前記ドリフト領域よりも上方に配置された第2導電型のボディ領域と、
前記ボディ領域よりも上方に配置された第1導電型のソース領域と、
前記ボディ領域と前記ソース領域とに接する第2導電型のチャネル領域と、
前記チャネル領域に接するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜に接するゲート電極と、
前記ドレイン領域に電気的に接続されたドレイン電極と、
前記ソース領域に電気的に接続されたソース電極と、
前記ドリフト領域よりも上方、かつ、隣接する2つの前記ボディ領域の間に配置された第1導電型のJFET領域と、
前記ボディ領域と前記ドリフト領域との間に配置され、第2導電型の不純物を6×1011cm-2以上1×1013cm-2以下の範囲で含む、第1導電型の低ライフタイム領域とを有し、
前記低ライフタイム領域は前記JFET領域と前記ドリフト領域との間には配置されていないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記低ライフタイム領域は、第1導電型の不純物濃度から第2導電型の不純物濃度を差し引いた正味の不純物総量が、前記ドリフト領域の不純物総量の15%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記低ライフタイム領域は、第2導電型の不純物濃度のプロファイルが深さ方向にフラットな領域を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1導電型はn型であり、前記第2導電型はp型であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記低ライフタイム領域は、前記第2導電型の不純物としてアルミニウムを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記ドリフト領域の一部に、プロトンまたはヘリウムを含むとともに格子欠陥が形成された格子欠陥領域を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記JFET領域は、前記ドリフト領域よりも不純物濃度が高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極は前記チャネル領域の上方に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記ソース領域および前記チャネル領域よりも深い位置まで形成されたトレンチを有し、
前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極は、前記トレンチの内部に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記ソース領域および前記チャネル領域よりも深い位置まで形成された複数のトレンチを有し、
前記ソース領域および前記チャネル領域は、前記複数のトレンチで区切られたフィン構造となっている領域を有し、
前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極は、前記複数のトレンチの内部に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の一種であるMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)は、スイッチング素子であるとともに、ダイオードを内蔵している。ダイオードは、順方向にバイアスして導通している状態から、逆バイアスになったときに、導通時に蓄積されたキャリアによって逆方向にリカバリ電流が流れる。
【0003】
このリカバリ電流を低減する技術としては、例えば特許文献1がある。特許文献1の図1および要約には、「半導体装置は、N型炭化珪素基板(1)のおもて面側にN型炭化珪素層(2)、P型領域(3)、N型ソース領域(4)、P型コンタクト領域(5)、ゲート絶縁膜(6)、ゲート電極(7)及びソース電極(8)を有する。半導体装置は、N型炭化珪素基板(1)の裏面にドレイン電極(9)を有する。半導体装置は、少なくともN型炭化珪素層(2)とP型領域(3)の底面との界面全体に、ライフタイムキラーを注入したライフタイムキラー導入領域(10)を有する。ライフタイムキラーは、N型炭化珪素基板(1)のおもて面側に素子の表面構造を作製した後、ドレイン電極(9)を設ける前に、N型炭化珪素基板(1)の裏面側からヘリウムまたはプロトンを注入することによって、N型炭化珪素層(2)とP型領域(3)の底面との界面全体に導入される。このようにすることで、半導体装置に内蔵されているPNダイオードの逆回復損失を低減することができる。」と記載されている。
【0004】
また、特許文献1の段落0007には、「少数キャリアに対する再結合中心となるライフタイムキラーが、第1導電型炭化珪素層と第2導電型領域の底面との界面全体に導入されているため、内蔵PNダイオードがオフする際に少数キャリアの消滅が高速化される。」と記載されている。
【0005】
さらに、特許文献1の図10および段落0079には、「図10に示すように、実施の形態3にかかる半導体装置は、図1に示す実施の形態1にかかる半導体装置において、隣り合うP型領域3とP型領域3との間のJfet領域にもライフタイムキラーが導入されているものである。つまり、ライフタイムキラー導入領域10は、N型炭化珪素層2とP型領域3の底面との界面と同じ深さの領域全体に設けられている。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/039071号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、リカバリ電流を低減するためのライフタイムキラーを、ヘリウムまたはプロトンを注入することによってできる格子欠陥により形成しているので、特許文献1の図1のようにライフタイムキラー導入領域(10)を部分的に形成するためにはマスクが必要になるので製造するのが難しく、精度よく製造することが困難であるという問題がある。また、特許文献1の図10のようにライフタイムキラー導入領域(10)を全面に形成する場合は、MOSFET動作時の電流経路を含んでしまい、MOSFET動作時の電流経路でも半導体中のキャリア量が減少することでMOS動作時のオン抵抗が増大するという問題がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、製造が容易で、MOSFETのオン抵抗の増加を抑制しつつリカバリ電流を低減できる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置は、第1導電型のドレイン領域と、前記ドレイン領域よりも上方に配置され、前記ドレイン領域よりも不純物濃度が低い第1導電型のドリフト領域と、前記ドリフト領域よりも上方に配置された第2導電型のボディ領域と、前記ボディ領域よりも上方に配置された第1導電型のソース領域と、前記ボディ領域と前記ソース領域とに接する第2導電型のチャネル領域と、前記チャネル領域に接するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜に接するゲート電極と、前記ドレイン領域に電気的に接続されたドレイン電極と、前記ソース領域に電気的に接続されたソース電極と、前記ドリフト領域よりも上方、かつ、隣接する2つの前記ボディ領域の間に配置された第1導電型のJFET領域と、前記ボディ領域と前記ドリフト領域との間に配置され、第2導電型の不純物を6×1011cm-2以上1×1013cm-2以下の範囲で含む、第1導電型の低ライフタイム領域とを有し、前記低ライフタイム領域は前記JFET領域と前記ドリフト領域との間には配置されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体装置によれば、第2導電型の不純物を含む第1導電型の低ライフタイム領域により、製造が容易で、MOSFETのオン抵抗の増加を抑制しつつリカバリ電流を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の半導体装置の断面図。
図2】実施例1の半導体装置における図1のZ1-Z1’方向の深さに対する不純物濃度プロファイル。
図3】実施例2の半導体装置の断面図。
図4】実施例3の半導体装置の斜視図。
図5】実施例3の半導体装置における図4のX1-X1’断面図。
図6】実施例3の半導体装置における図4のX2-X2’断面図。
図7】実施例3の半導体装置における図4のY1-Y1’断面図。
図8】実施例4の半導体装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。各図、各実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【実施例0013】
図1は、実施例1の半導体装置の断面図である。
【0014】
実施例1の半導体装置1は、第1導電型のドレイン領域11と、ドレイン領域11よりも上方に配置され、ドレイン領域11よりも不純物濃度が低い第1導電型のドリフト領域10と、ドリフト領域10よりも上方に配置された第2導電型のボディ領域9と、ボディ領域9よりも上方に配置された第1導電型のソース領域3と、ボディ領域9とソース領域3とに接する第2導電型のチャネル領域5とを有する。
【0015】
なお、実施例1では、第1導電型がn型、第2導電型がp型である場合を例に説明するが、これに限られず、第1導電型がp型、第2導電型がn型としてもよい。
【0016】
また、実施例1の半導体装置1は、チャネル領域5に接するゲート絶縁膜6と、ゲート絶縁膜6に接するゲート電極7と、ドレイン領域11に電気的に接続されたドレイン電極13と、ソース領域3に電気的に接続されたソース電極12とを有する。
【0017】
ここで、実施例1の半導体装置1は、プレーナ型のMOSFETであり、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7はチャネル領域5の上方に配置されている。
【0018】
実施例1の半導体装置1は、ドリフト領域10よりも上方、かつ、隣接する2つのボディ領域9の間に配置された第1導電型のJFET領域8を有する。JFET領域8は、ドリフト領域10よりも不純物濃度が高いことが望ましいが、これに限られず、不純物濃度がドリフト領域10と同じでもよい。
【0019】
他にも、実施例1の半導体装置1は、層間絶縁膜14を有するが、これに限られない。
【0020】
ここまでは一般的なMOSFETの構造であり、細部の構造は図1に示したものに限られない。実施例1の半導体装置1は、例えばn+型のSiC基板で形成することが可能であるが、これに限られない。また、例えばn+型のSiC基板でn+型のドレイン領域11を形成し、エピタキシャル成長でn-型のドリフト領域10を形成するなど、一般的な半導体装置の製造方法で製造が可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0021】
ここで、実施例1の半導体装置1は、MOSFETの内蔵ダイオードのリカバリ電流を低減するために、ボディ領域9とドリフト領域10との間に配置され、第2導電型の不純物を6×1011cm-2以上1×1013cm-2以下の範囲で含む、第1導電型の低ライフタイム領域4を有する構成とした。また、JFET領域8とドリフト領域10との間は、MOSFET動作時の電流経路となるので、オン抵抗の増加を避けるために、ここには低ライフタイム領域4を配置しないようにした。すなわち、低ライフタイム領域4は、MOSFET動作時の電流経路となるJFET領域8には重ならないように形成されている。なお、第2導電型をp型とした場合、低ライフタイム領域4は、第2導電型の不純物としてアルミニウムを有することが望ましい。p型の不純物にはアルミニウムとボロンが知られているが、アルミニウムは特にホールのライフタイムを低減させる効果が高いため、リカバリ電流の低減には効果的である。
【0022】
第2導電型をp型とした場合の例で説明すると、リカバリ電流を低減するためには、キャリアであるホールを低ライフタイムにするのが効果的である。ここで、単にボディ領域9とドリフト領域10との間にn型の低ライフタイム領域4を形成するだけでは、低ライフタイムの効果は小さい。n型の不純物濃度を上げれば低ライフタイムの効果は大きくなるが、n型の不純物濃度を上げすぎると、耐圧が落ちるという問題がある。
【0023】
そこで、実施例1の半導体装置1では、n型の低ライフタイム領域4の中にp型の不純物を含ませることで、n型の不純物濃度からp型の不純物濃度を差し引いた正味の不純物総量は低濃度にしつつ、キャリアであるホールを低ライフタイムにすることを実現した。なお、ボディ領域9の中にもp型の不純物は存在するが、ボディ領域9の中にはホールもたくさんあるので、ボディ領域9の中のp型の不純物はリカバリ電流の低減には寄与しない。したがって、n型の低ライフタイム領域4の中にp型の不純物を含ませることがリカバリ電流を低減するのに有効である。
【0024】
また、従来のようにヘリウムまたはプロトンを注入することによってできる格子欠陥によって低ライフタイムを実現する方法では、部分的に低ライフタイム領域を形成することが難しいという問題があり、また、ウェハ全面に渡って低ライフタイム領域を形成する場合は、MOSFET動作時の電流経路が含まれてしまうのでMOSFET動作時のオン抵抗が大きくなってしまうという問題があるが、実施例1の第2導電型の不純物を含む第1導電型の低ライフタイム領域4であれば、MOSFET動作時の電流経路に低ライフタイム領域4が含まれないように精度よく形成するのがヘリウムまたはプロトンを部分的に注入するのに比べれば容易であるため、低ライフタイム領域4を追加したことによるオン抵抗の増加を抑制することができる。
【0025】
第2導電型の不純物を含む第1導電型の低ライフタイム領域4は、不純物の打ち戻しで製造することが可能である。第1導電型の不純物濃度と第2導電型の不純物濃度との差分が低ライフタイム領域4の濃度となる。打ち戻しの順序には特に制限はなく、第1導電型の不純物と第2導電型の不純物のどちらを先にしてもよい。また、第1導電型のJFET領域8の形成工程を兼ねてもよい。
【0026】
低ライフタイム領域4は、第1導電型の不純物濃度から第2導電型の不純物濃度を差し引いた正味の不純物総量が、ドリフト領域10の不純物総量の15%以下であることが望ましい。低ライフタイム領域4の中の第2導電型の不純物の量を多くするためには打ち戻す第1導電型の不純物のドーズ量を多くする必要があるが、ドーズ量を多くすると、正味の不純物総量が多くなり、耐圧が低下する。低ライフタイム領域4の正味の不純物総量がドリフト領域10の不純物総量の15%より大きくなると顕著な耐圧の劣化となるため、15%以下に抑えることが望ましい。
【0027】
また、低ライフタイム領域4は、リカバリ電流の低減の効果を大きくするために、第2導電型の不純物のドーズ量を6×1011cm-2以上とすることが望ましいが、第1導電型の不純物の打ち戻し量を抑えるために、ドーズ量を1×1013cm-2以下の範囲とすることが望ましい。
【0028】
リカバリ電流の経路は、ボディ領域9とドリフト領域10との間を通るので、低ライフタイム領域4は、ボディ領域9の下面の全体に形成することが望ましい。
【0029】
図2は、実施例1の半導体装置における図1のZ1-Z1’方向の深さに対する不純物濃度プロファイルである。図2において、縦軸は不純物濃度ICをlogスケールで示しており、横軸は深さDPである。図2のnとpは、それぞれn型(第1導電型)とp型(第2導電型)の不純物濃度のプロファイルを示している。
【0030】
図2に示すように、第2導電型の不純物を含む第1導電型の低ライフタイム領域4は、第2導電型の不純物濃度のプロファイル(図2のp)が深さ方向にフラットな領域を有することが望ましい。これにより、第2導電型の不純物を含む第1導電型の低ライフタイム領域4を深く(厚く)形成することができる。このようなフラットな領域を有するプロファイルは、例えば、半導体基板の結晶軸とイオン注入の向きを合わせたチャネリング注入により形成することができる。図2では、第2導電型の不純物の注入を2回に分けて行っており、ボディ領域9を形成するための第2導電型の不純物の注入を通常のイオン注入で行い、低ライフタイム領域4を形成するためのフラットな領域を有する第2導電型の不純物の注入をチャネリング注入で行った例を示している。
【0031】
なお、実施例1では、一例として、JFET領域8はn型、ボディ領域9はp型、ドリフト領域10と低ライフタイム領域4は低濃度のn-型、ドレイン領域11は高濃度のn+型として図示しているが、実施例1で意図した動作を実現可能であればこれに限られない。例えば、JFET領域8は低濃度のn-型であってもよい。
【0032】
また、実施例1における各構成要素の一例を以下に示すが、実施例1で意図した動作を実現可能であればこれに限られない。
【0033】
ドレイン領域11は、SiCウェハであり、1×1018cm-3程度のn型の不純物(窒素)を含む。厚さは50~500umの範囲であるが、代表的な例では150um程度である。
【0034】
ドリフト領域10は、SiCウェハ上に形成されたSiCのエピタキシャル層であり、1×1014cm-3から1×1017cm-3の範囲のn型の不純物(窒素)を含む。厚さは5~100umの範囲である。代表的な例では、1×1016cm-3、厚さは10umである。ドリフト領域10でオフ状態での耐圧が決まる。代表的な例は耐圧1200Vの仕様である。
【0035】
ボディ領域9は、ストライプ状に複数形成されており、p型の不純物(アルミニウム)のイオン注入にて形成する。深さは1um程度であり、濃度は1×1018cm-3程度である。
【0036】
ソース領域3は、ボディ領域9の内部に形成されており、深さ(厚さ)は0.4um程度、濃度は1×1020cm-3程度である。
【0037】
チャネル領域5は、ボディ領域9の表面に形成ており、p型の不純物(アルミニウム)のイオン注入にて形成する。深さは0.2um程度であり、濃度は1×1017cm-3程度である。なお、チャネル領域5をボディ領域9と同じ濃度にしてもよい。この場合は、ボディ領域9の一部がチャネル領域5として機能する。
【0038】
ゲート絶縁膜6は、SiOを主成分とする膜であり、厚さは50nm程度である。SiCとSiOの界面付近には、界面特性を改善するために窒素が導入されている。
【0039】
ゲート電極7は、n型の不純物を高濃度で含有するポリシリコンである。
【0040】
低ライフタイム領域4は、ボディ領域9の下面の全体に形成されており、ボディ領域9の底部をn型の不純物で打ち戻すことで形成する。p型の不純物であるアルミニウムを6×1011cm-2以上含んでいる。
【0041】
ソース電極12とドレイン電極13は、アルミニウムなどの金属で形成されている。
【実施例0042】
実施例2は、実施例1の変形例であり、トレンチ型のMOFSETに適用した実施例である。
【0043】
図3は、実施例2の半導体装置の断面図である。
【0044】
実施例2の半導体装置1は、ソース領域3およびチャネル領域5よりも深い位置まで形成されたトレンチ2を有し、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7は、トレンチ2の内部に配置されている。
【0045】
なお、細部の構造は図3に示したものに限られない。例えば、トレンチ2は、図3に示すように2つのボディ領域9の間に配置されてトレンチ2の側面の両方がチャネル領域5に接するようになっていてもよいし、トレンチ2の側面の片側がチャネル領域5に接するようになっていてもよい。
【0046】
トレンチ構造を有するMOSFETは、チャネル抵抗が低いため、大電流密度で使用することができる。このとき、内蔵ダイオードに流れるホール電流も大きくなるため、リカバリ電流が大きくなる。したがって、リカバリ電流を低減する必要性が高く、低ライフタイム領域4によってリカバリ電流を低減できることの効果が大きくなる。
【実施例0047】
実施例3は、実施例1の変形例であり、縦チャネルフィン構造のトレンチMOSFETに適用した実施例である。
【0048】
図4は、実施例3の半導体装置の斜視図であり、図5は、実施例3の半導体装置における図4のX1-X1’断面図であり、図6は、実施例3の半導体装置における図4のX2-X2’断面図であり、図7は、実施例3の半導体装置における図4のY1-Y1’断面図である。なお、図4では、ゲート電極7、ゲート絶縁膜6、層間絶縁膜14、ソース電極12、ドレイン電極13は図示を省略している。また、図4図5の断面における点線で示したトレンチ2は、他の構成要素とトレンチ2との位置関係を説明するために仮想的にトレンチ2に対応する位置を示したものである。
【0049】
実施例3の半導体装置1は、ソース領域3およびチャネル領域5よりも深い位置まで形成された複数のトレンチ2を有し、ソース領域3およびチャネル領域5は、複数のトレンチ2で区切られたフィン構造となっている領域を有し、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7は、複数のトレンチ2の内部に配置されている。なお、細部の構造は図4から図7に示したものに限られない。
【0050】
縦チャネルフィン構造のトレンチMOSFETについても、トレンチ構造を有しており、実施例2と同様に、チャネル抵抗が低いため、大電流密度で使用することができる。したがって、実施例2と同様に、リカバリ電流が大きくなるので、リカバリ電流を低減する必要性が高く、低ライフタイム領域4によってリカバリ電流を低減できることの効果が大きくなる。
【0051】
実施例3における各構成要素の一例を以下に示すが、実施例3で意図した動作を実現可能であればこれに限られない。
【0052】
チャネル領域5は、2つのボディ領域9に挟まれた領域で、ソース領域3の直下に形成されている。p型の不純物(アルミニウム)のイオン注入にて形成する。深さは0.6um程度であり、濃度は1×1017cm-3程度である。ソース領域3の底部からチャネル領域5の底部までの距離がチャネル長となる。
【0053】
トレンチ2は、短辺が0.5um程度、長辺が1.5um程度であり、トレンチ2の間の距離は0.5um程度である。ボディ領域9をまたぐように複数形成されており、長辺側のトレンチ2の側壁がチャネル面となる。
【0054】
図4および図5に示すように、実施例3の半導体装置1は、平面視したとき第1の方向に長手方向を有し第2の方向に短手方向を有し第2の方向に複数配列された複数のトレンチ2を有する。ソース領域3は、一部が複数のトレンチ2で区切られたフィン構造となっている領域を有する。チャネル領域5は、ソース領域3のフィン構造となっている領域の下面に接しており、複数のトレンチ2で区切られたフィン構造を有する。
【0055】
図5から図7に示すように、トレンチ2の内部に配置されたゲート電極7は、トレンチ2の外部で互いに接続されている。ゲート電極7の互いに接続している部分とソース領域3との間には、層間絶縁膜14が形成されている。この層間絶縁膜14は、ゲート電極7の互いに接続している部分の上部や側部も覆うように形成されている。ゲート電極7は、例えばポリシリコンで形成することができる。
【0056】
図5に示すように、トレンチ2は、長手方向の長さがJFET領域8を挟む両側のボディ領域9に重なるように形成されている。トレンチ2の深さは、ボディ領域9よりも浅く、チャネル領域5よりも深い。
【0057】
実施例3の半導体装置1は、トレンチ2の内部のゲート電極7にゲート駆動信号を入力して制御することで、フィン構造のチャネル領域5に縦方向にチャネル電流が流れる。すなわち、縦チャネルフィン構造のトレンチMOSFETとなっている。そのため、トレンチピッチを詰めてトレンチ2の密度を上げることでチャネル密度を上げることができ、チャネル抵抗を低減し、オン抵抗を低減することができる。
【実施例0058】
実施例4は、実施例1の変形例であり、プロトンまたはヘリウムを照射する技術との組み合わせの実施例である。
【0059】
図8は、実施例4の半導体装置の断面図である。
【0060】
実施例3の半導体装置1は、実施例1の構成に加え、ドリフト領域10の一部に、プロトンまたはヘリウムを含むとともに格子欠陥が形成された格子欠陥領域15を有する。
【0061】
実施例1の第2導電型の不純物を含む第1導電型の低ライフタイム領域4と格子欠陥領域15とを組み合わせることで、リカバリ電流をさらに低減することができる。なお、低ライフタイム領域4を設けているので、格子欠陥領域15のドーズ量は格子欠陥領域15を単独で設ける場合に比べて小さくすることができる。また、格子欠陥領域15をボディ領域9から離れた位置に形成することができる。格子欠陥領域15を全面に設けた場合は、MOSFET動作時の電流経路を含んでしまいMOSFET動作時のオン抵抗が増加するというデメリットがあるが、実施例4では格子欠陥領域15のドーズ量を小さくできるので、MOSFET動作時のオン抵抗の増加を小さくできる。
【0062】
実施例4における各構成要素の一例を以下に示すが、実施例4で意図した動作を実現可能であればこれに限られない。
【0063】
格子欠陥領域15は、プロトンまたはヘリウム照射することにより格子欠陥を形成した領域である。格子欠陥領域15により、ライフタイムを低減することができる。例えば、深さ方向としてはドリフト領域10の深さ方向の中心付近に照射し、ドーズ量は1×1010cm-2から1×1012cm-2の範囲が望ましく、代表的には5×1010cm-2程度である。
【0064】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に記載された構成に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。また、各実施例で説明した構成の一部または全部を組み合わせて適用してもよい。例えば、実施例4を、実施例2または実施例3に適用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 半導体装置
2 トレンチ
3 ソース領域
4 低ライフタイム領域
5 チャネル領域
6 ゲート絶縁膜
7 ゲート電極
8 JFET領域
9 ボディ領域
10 ドリフト領域
11 ドレイン領域
12 ソース電極
13 ドレイン電極
14 層間絶縁膜
15 格子欠陥領域
IC 不純物濃度
DP 深さ
図1
図2
図3
図4
図5
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図8