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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154966
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
F02M25/08 311B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069236
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 恭平
(72)【発明者】
【氏名】岩本 光司
(72)【発明者】
【氏名】角地 正旭
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144BA39
3G144GA11
(57)【要約】
【課題】圧入荷重を低減する。
【解決手段】車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタは、外側ケースと、接続ポートと、内側ケースと、少なくとも1つの第1突出部と、を備える。外側ケースは、第1方向に延びる空間を内部に有する。接続ポートは、外側ケースの内部と外部とを接続する。内側ケースは、筒状の部材であって、蒸発燃料を吸着する吸着材が内部に配置されている。第1突出部は、内側ケースの外面から外側に突出している。空間には、第1方向に流体が流れる。内側ケースは、外側ケースにおける空間を形成する部分の内部に圧入されている。少なくとも1つの第1突出部は、外側ケースにおける空間を形成する部分のうち、第1方向に延びる部分の内面に当接している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、
第1方向に延びる空間を内部に有する外側ケースと、
前記外側ケースの内部と外部とを接続する接続ポートと、
筒状の部材であって、前記蒸発燃料を吸着する吸着材が内部に配置されている内側ケースと、
前記内側ケースの外面から外側に突出している少なくとも1つの第1突出部と、
を備え、
前記空間には、前記第1方向に流体が流れ、
前記内側ケースは、前記外側ケースにおける前記空間を形成する部分の内部に圧入されており、
前記少なくとも1つの第1突出部は、前記外側ケースにおける前記空間を形成する部分のうち、前記第1方向に延びる部分の内面に当接している、
キャニスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記少なくとも1つの第1突出部は、前記接続ポートが設けられた側の反対側に位置する前記内側ケースの端部周辺に形成されている、
キャニスタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記少なくとも1つの第1突出部は、前記第1方向に沿って延びる板状の部位である、
キャニスタ。
【請求項4】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記接続ポートが設けられた側に位置する前記内側ケースの端部周辺と、前記外側ケースの内面と、の隙間を塞ぐシール部材を更に備える、
キャニスタ。
【請求項5】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記内側ケースの外周面から外側に突出し、前記外側ケースとの間に隙間を有し、前記第1方向に沿って形成された少なくとも1つの第2突出部を更に備える、
キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はキャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、燃料タンクから発生した蒸発燃料が大気中に放出されることを抑制するキャニスタが搭載されている。キャニスタの内部には、活性炭等の吸着材が充填されている。燃料タンクから発生した蒸発燃料は、キャニスタの内部へ導入されて吸着材に一時的に吸着され、内燃機関の始動時等に吸着材から脱離し、内燃機関に供給される。
【0003】
特許文献1には、キャニスタを構成するケーシングの内部に、吸着材が充填された筒状の吸着材カートリッジを装着する蒸発燃料処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4173065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている蒸発燃料処理装置において、吸着材カートリッジの周囲には、フランジと一体に複数のリブが形成されている。当該フランジ及びリブの縁部は、ケーシングの内面形状に沿うように形成されており、当該フランジ及びリブは、ケーシングに摺動自在に嵌合されるようになっている。このため、仮に、圧入によって吸着材カートリッジをケーシングに装着する場合、吸着材カートリッジとケーシングとの接触面積が大きくなり、装着時の圧入荷重が大きくなる問題があった。
【0006】
本開示の一局面は、圧入荷重を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、外側ケースと、接続ポートと、内側ケースと、少なくとも1つの第1突出部と、を備える。外側ケースは、第1方向に延びる空間を内部に有する。接続ポートは、外側ケースの内部と外部とを接続する。内側ケースは、筒状の部材であって、蒸発燃料を吸着する吸着材が内部に配置されている。第1突出部は、内側ケースの外面から外側に突出している。空間には、第1方向に流体が流れる。内側ケースは、外側ケースにおける空間を形成する部分の内部に圧入されている。少なくとも1つの第1突出部は、外側ケースにおける空間を形成する部分のうち、第1方向に延びる部分の内面に当接している。
【0008】
このような構成によれば、内側ケースを外側ケースに装着する時、第1突出部が形成されていることにより、内側ケースが外側ケースに接触する面積が低減される。このため、内側ケースを外側ケースに圧入する時の圧入荷重を低減することできる。
【0009】
本開示の一態様では、少なくとも1つの第1突出部は、接続ポートが設けられた側の反対側に位置する内側ケースの端部周辺に形成されていてもよい。
このような構成によれば、内側ケースを外側ケースに装着する時、第1突出部が外側ケースに接触する部分の面積が低減される。このため、内側ケースを外側ケースに圧入する時の圧入荷重を低減することできる。
【0010】
本開示の一態様では、少なくとも1つの第1突出部は、第1方向に沿って延びる板状の部位であってもよい。
このような構成によれば、内側ケースを外側ケースに装着する時、第1突出部が外側ケースに接触する面積が低減される。このため、内側ケースを外側ケースに圧入する時の圧入荷重を低減することできる。
【0011】
本開示の一態様は、接続ポートが設けられた側に位置する内側ケースの端部周辺と、外側ケースの内面と、の隙間を塞ぐシール部材を更に備えてもよい。
このような構成によれば、内側ケースと外側ケースとの隙間のシール性を向上することできる。
【0012】
本開示の一態様は、内側ケースの外周面から外側に突出し、外側ケースとの間に隙間を有し、第1方向に沿って形成された少なくとも1つの第2突出部を更に備えてもよい。
このような構成によれば、内側ケースを外側ケースに装着する時の、外側ケースに対する内側ケースの傾きを抑制できる。このため、内側ケースと外側ケースとの装着が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態のキャニスタにおける、第3方向に垂直な断面の断面図である。
図2】第1実施形態のキャニスタにおける、内側ケースの斜視図である。
図3図1におけるIII-III断面図である。
図4図1におけるIV-IV断面図である。
図5】第2実施形態のキャニスタにおける、第1A突出部及び第1B突出部が設けられている部分の第1方向に垂直な断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
[1-1-1.全体構成]
図1に示すキャニスタ1は、自動車等の車両に搭載され、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着することで、蒸発燃料が車両の外部に流出することを抑制する。また、キャニスタ1は、車両の外部から大気を取り込むことで、吸着した蒸発燃料を脱離させ、脱離した蒸発燃料を車両の内燃機関へと流出させる。
【0015】
キャニスタ1は、外側ケース10と、第1室11と、第2室12と、チャージポート21と、パージポート22と、大気ポート23と、蓋部材24と、接続通路13と、を備える。
【0016】
外側ケース10は、一例として、樹脂により形成された略直方体形状の部材である。
第1室11及び第2室12は、いずれも外側ケース10の内部において、内壁101によって仕切られる各空間を形成する部分である。第1室11及び第2室12は、いずれも第1方向に延び、第1方向に直交する第2方向に並んでいる。以下、第1方向及び第2方向のいずれにも直交する方向を第3方向とする。第1室11及び第2室12の第1方向の長さは、特に限定されず、第1室11及び第2室12の第2方向又は第3方向の長さよりも、長くても短くてもよく、同じであってもよい。
【0017】
チャージポート21及びパージポート22は、いずれも第1室11における第1方向の第1端部に設けられた部位である。以下、第1方向におけるチャージポート21及びパージポート22が設けられている側を第1側といい、第1方向における第1側の反対側を第2側という。チャージポート21は、燃料タンクに接続されており、蒸発燃料を第1室11の内部に取り込むように構成されている。パージポート22は、車両の内燃機関の吸気管に接続されており、蒸発燃料を第1室11の内部から流出させるように構成されている。
【0018】
大気ポート23は、第2室12における第1側の端部に設けられた部位である。すなわち、大気ポート23は、第1方向においてチャージポート21及びパージポート22と同じ側に設けられている。大気ポート23は、車両の外部と繋がっており、大気を第2室12の内部に取り込む又は第2室12の内部から流出させるように構成されている。
【0019】
蓋部材24は、外側ケース10における第2側の端部を閉塞する部材である。
接続通路13は、外側ケース10における第2側の端部の内部において、第1室11及び第2室12と蓋部材24との間に形成される空間である。第1室11及び第2室12は、接続通路13によって連通している。
【0020】
外側ケース10の内部において、第1室11、接続通路13及び第2室12は、蒸発燃料や大気等の流体が流れる略U字状の流路を形成している。流体は、第1室11及び第2室12の内部を第1方向に沿って流れる。
【0021】
[1-1-2.キャニスタ内部の構成]
第1室11の内部における第1側の端部には、複数の支柱45によって支持されたフィルタ42a,42bが配置されている(図1)。また、第1室11の内部における第2側の端部には、グリッド43aによって支持されたフィルタ42cが配置されている。グリッド43aには、蒸発燃料や大気等の流体が通過する複数の孔が形成されている。流体は、フィルタ42a,42b,42cを介して第1室11の内部に流入又は第1室11の内部から流出する。
【0022】
第1室11の内部におけるフィルタ42a及びフィルタ42bとフィルタ42cとの間には、蒸発燃料を吸着する吸着材41が充填されている。吸着材41の一例として、活性炭がある。
【0023】
グリッド43aと蓋部材24との間には、両者を連結するように、弾性部材であるスプリング44a,44bが配置されている。スプリング44a,44bは、グリッド43a及びフィルタ42cを介して、吸着材41をチャージポート21及びパージポート22側に向けて付勢する。
【0024】
第2室12は、第2主室121と、第2副室122と、を有する。第2主室121は、蓋部材24がない状態では、第2側の端部において開口している。第2主室121は、第2側で接続通路13に接続し、第1側で第2副室122に接続している。第2副室122は、第2側で第2主室121に接続し、第1側で大気ポート23に接続している。
【0025】
第2主室121における第1方向に垂直な断面は、略矩形状であり、断面積は第2側から第1側に向かうにつれて小さくなっている。第2副室122における第1方向に垂直な断面は、第2主室121の断面よりも小さい。
【0026】
第2主室121の内部には、内側ケース30が装着されている。内側ケース30は、内部に吸着材41が充填されており、第1方向に沿って延びる略直方体形状の部材である。内側ケース30の第1方向の長さは、特に限定されず、内側ケース30の第2方向又は第3方向の長さよりも、長くても短くてもよく、同じであってもよい。内側ケース30は、第1側及び第2側のいずれの端部においても開口している。内側ケース30の第1側は、第2副室122に接続している。内側ケース30の第2側は、接続通路13に接続している。内側ケース30は、第1側及び第2側のいずれの端部においても、第2主室121の内面に当接する。当接する部分については、後述する。
【0027】
内側ケース30の内部における第1側の端部には、内側ケース30における第1側の開口部分に設けられている格子部39によって支持されたフィルタ42dが配置されている。また、内側ケース30における第2側の端部には、グリッド43bによって支持されたフィルタ42eが配置されている。なお、フィルタ42eは、内側ケース30やグリッド43b等に接合(例えば、溶着)されておらず、グリッド43bから突き出た爪によって支持されている。格子部39及びグリッド43bには、蒸発燃料や大気等の流体が通過する複数の孔が形成されている。流体は、フィルタ42d,42eを介して内側ケース30の内部に流入又は内側ケース30の内部から流出する。また、流体は、内側ケース30の内部を第1方向に沿って流れる。
【0028】
グリッド43bと蓋部材24との間には、両者を連結するように、弾性部材であるスプリング44c,44dが配置されている。スプリング44c,44dは、グリッド43b及びフィルタ42eを介して、吸着材41を第2副室122側(換言すれば、大気ポート23側)に向けて付勢する。
【0029】
第2副室122の内部には、ハニカムフィルタ46と、保持部材47と、シールラバー48と、が配置されている。ハニカムフィルタ46は、第1方向に延びる筒状の吸着材であり、第1方向に貫通する複数の流路を有する。ハニカムフィルタ46は、一例として活性炭で構成される。ハニカムフィルタ46の第1側の外周は、外側ケース10及び内壁101の内面と当接する筒状の保持部材47(一例として、ウレタン製)によって覆われている。一方、ハニカムフィルタ46の第2側の外周面と、外側ケース10及び内壁101の内面との隙間は、筒状のシールラバー48によって密閉されている。このため、ハニカムフィルタ46は、保持部材47及びシールラバー48によって支持されている。
【0030】
[1-1-3.内側ケースの構成]
内側ケース30は、第1フランジ31と、第2フランジ32と、第1A突出部35aと、第1B突出部35bと、第2A突出部36aと、第2B突出部36bと、を有する(図2)。
【0031】
第1フランジ31は、内側ケース30の第1側の端部における外周面から外側に突出した鍔状の部位である。第1フランジ31の外周には、溝37が設けられている。溝37には、弾性部材であるシール部材38が装着されている(図1)。シール部材38は、一例として、Oリングである。内側ケース30を第2主室121の内部に装着した状態において、内側ケース30の第1側における端部に位置する第1フランジ31と第2主室121との隙間は、シール部材38によって密閉される。
【0032】
第2フランジ32は、内側ケース30の第2側の端部における外周面から外側に突出した鍔状の部位である。
内側ケース30における第3方向に垂直な2つの外周面を第1側面33とし、内側ケース30における第2方向に垂直な2つの外周面を第2側面34とする。内側ケース30の外周面から当該外周面に垂直な方向の距離を高さとする。
【0033】
第1A突出部35aは、第1側面33における第2側の端部から内側ケース30の外側に突出した部位であって、第1方向及び第3方向に沿って広がる板状の部位である。第1A突出部35aは、第2フランジ32における第1側の面に繋がっている。本実施形態では一例として、第1A突出部35aは、2つの第1側面33にそれぞれ2つずつ合計4つ設けられている。なお、第1A突出部35aは、第2フランジ32から離れていてもよい。
【0034】
第1A突出部35aは、第1A先端部351aと、第1A傾斜部352aと、を有する。第1A先端部351aは、第1A突出部35aにおける第3方向の端面であって、第1方向に沿って第1側面33と略平行に延び、かつ、第1側面33から離れるに従い板厚が小さくなっている部位である。本実施形態では一例として、第1A先端部351aの第1方向に垂直な断面は、三角形状である。第1A先端部351aは、第1A突出部35aにおける他の部分よりも脆弱で変形しやすくなっている。第1A先端部351aの高さは、第2フランジ32の端面の高さよりも高い。第1A傾斜部352aは、第1A突出部35aにおける端面であって、第1A先端部351aの第1側の端部から第1側面33に向かって延びている。第1A傾斜部352aは、第1側に向かうに従い第1A傾斜部352aの高さが低くなるように第1側面33に対して傾斜する。
【0035】
第2A突出部36aは、第1側面33から内側ケース30の外側に向かって第3方向に突出し、第1側面33における第2側の端部から第1側面33における第1側の端部付近まで第1方向に沿って延びる板状の部位である。第2A突出部36aは、第2フランジ32における第1側の面に繋がっている。本実施形態では一例として、第2A突出部36aは、2つの第1側面33にそれぞれ1つずつ合計2つ設けられている。なお、第2A突出部36aは、第2フランジ32から離れていてもよい。
【0036】
第2A突出部36aは、第2A頂部361aと、第2A傾斜部362aと、を有する。第2A頂部361aは、第2A突出部36aにおける第3方向の端面であって、第1方向に沿って第1側面33と略平行に延びる部位である。第2A頂部361aの高さは、第2フランジ32の端面の高さよりも低い。第2A傾斜部362aは、第2A突出部36aにおける端面であって、第2A頂部361aの第1側の端部から第1側面33に向かって延びている。第2A頂部361aは、第1側に向かうに従い第2A傾斜部362aの高さが低くなるように第1側面33に対して傾斜する。
【0037】
第1B突出部35bは、第2側面34における第2側の端部から内側ケース30の外側に突出した部位であって、第1方向及び第2方向に沿って広がる板状の部位である。第1B突出部35bは、第2フランジ32における第1側の面に繋がっている。本実施形態では一例として、第1B突出部35bは、2つの第2側面34にそれぞれ1つずつ合計2つ設けられている。なお、第1B突出部35bは、第2フランジ32から離れていてもよい。
【0038】
第1B突出部35bは、第1B先端部351bと、第1B傾斜部352bと、を有する。第1B先端部351bは、第1B突出部35bにおける第2方向の端面であって、第1方向に沿って第2側面34と略平行に延び、かつ、第2側面34から離れるに従い板厚が小さくなっている部位である。本実施形態では一例として、第1B先端部351bの第1方向に垂直な断面は、三角形状である。第1B先端部351bは、第1B突出部35bにおける他の部分よりも脆弱で変形しやすくなっている。第1B先端部351bの高さは、第2フランジ32の端面の高さよりも高い。第1B傾斜部352bは、第1B突出部35bにおける端面であって、第1B先端部351bの第1側の端部から第2側面34に向かって延びている。第1B傾斜部352bは、第1側に向かうに従い第1B傾斜部352bの高さが低くなるように第2側面34に対して傾斜する。
【0039】
第2B突出部36bは、第2側面34から内側ケース30の外側に向かって第2方向に突出し、第1B突出部35bにおける第1B傾斜部352bから第2側面34における第1側の端部付近まで第1方向に沿って延びる板状の部位である。第2B突出部36bは、第1B突出部35bと同じ厚さで一体になっている。本実施形態では一例として、第2B突出部36bは、2つの第2側面34にそれぞれ1つずつ合計2つ設けられている。なお、第2B突出部36bは、第1B突出部35bから離れていてもよい。
【0040】
第2B突出部36bは、第2B頂部361bと、第2B傾斜部362bと、を有する。第2B頂部361bは、第2B突出部36bにおける第2方向の端面であって、第1方向に沿って第2側面34と略平行に延びる部位である。第2B頂部361bの高さは、第2フランジ32の端面の高さよりも低い。第2B傾斜部362bは、第2B突出部36bにおける端面であって、第2B頂部361bの第1側の端部から第2側面34に向かって延びている。第2B頂部361bは、第1側に向かうに従い第2B傾斜部362bの高さが低くなるように第2側面34に対して傾斜する。
【0041】
本実施形態では一例として、第1A突出部35a、第1B突出部35b、第2A突出部36a、及び第2B突出部36bの厚さは、2~3ミリメートルである。
内側ケース30が第2主室121に装着された状態において、第1A突出部35a、第1B突出部35b、及びシール部材38は、第2主室121の内面に当接する(図1図3)。一方、第2A突出部36a、第2B突出部36b及び第2フランジ32と、第2主室121の内面と、の間には、隙間51が形成されている(図1図4)。なお、第2A突出部36a及び第2B突出部36bにおける第1側の端部は、第2主室121の内面に当接していてもよい。
【0042】
[1-1-4.内側ケースの装着工程]
キャニスタ1の製造方法は、内側ケース30を第2主室121の内部に装着する工程として、圧入を行わない第1工程と、圧入を行う第2工程と、を備える。
【0043】
まず、第1工程において、内側ケース30の第1フランジ31(すなわち、第1側)が、外側ケース10における第2主室121の第2側の端部の開口に挿入される。その後、内側ケース30は、第1A突出部35a及び第1B突出部35bが第2主室121における第2側の端部に当接するまで、第1方向の第1側に向かって第2主室121の内部に挿入される。
【0044】
次に、第1工程に続く第2工程において、内側ケース30は、第1方向の第1側に向かって第2主室121の内部に圧入される。圧入を行う手段は特に限定されない。本実施形態では一例として、圧入は、一般的な圧入機を用いて空気圧によって行われる。以下、第1A突出部35aの第1A先端部351a、第1B突出部35bの第1B先端部351b、及び第1フランジ31の外周の溝37に装着されたシール部材38を、圧入部分とする。圧入部分は、圧入により、第2主室121の内面に押圧されて変形する。一方、第2A突出部36a、第2B突出部36b、及び第2フランジ32は、第2主室121の内面に押圧されて変形することはない。内側ケース30は、第1フランジ31における第1側の面が第2主室121における第1側の端部の内面に当接するまで、第2主室121の内部に圧入される。
【0045】
第1工程及び第2工程において、第2A突出部36a及び第2B突出部36bが第2主室121の内面に当接しないように、内側ケース30を第2主室121に挿入することが可能である。しかし、挿入時の手振れ等によって、第2A突出部36a又は第2B突出部36bが第2主室121の内面に当接することがあってもよい。
【0046】
[1-2.作用、効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の作用及び効果が得られる。
(1a)内側ケース30を第2主室121の内部に装着する工程のうち、圧入を行う第2工程において、第1A突出部35aの第1A先端部351a及び第1B突出部35bの第1B先端部351bは、圧入により、第2主室121の内面に押圧されて変形する。また、内側ケース30を第2主室121の内部に装着した状態において、第1A突出部35a及び第1B突出部35bは、第2主室121の内面に当接する。
【0047】
一方、第2A突出部36a、第2B突出部36b、及び第2フランジ32は、第2主室121の内面に押圧されて変形することはない。また、内側ケース30を第2主室121の内部に装着した状態において、第2A突出部36a、第2B突出部36b、及び第2フランジ32は、第2主室121の内面に当接しない。
【0048】
ここで、内側ケース30を第2主室121の内部に圧入する時に必要な荷重(以下、圧入荷重という。)は、内側ケース30(シール部材38を含む。)と第2主室121とが接触する部分の摩擦力等になる。上述のような構成によれば、内側ケース30を第2主室121に装着する時の圧入荷重は、第1A先端部351a、第1B先端部351b及びシール部材38と第2主室121の内面とが接触する部分の摩擦力等になる。一方、第2A突出部36a、第2B突出部36b及び第2フランジ32が圧入荷重に与える影響はない又は非常に小さい。このため、内側ケース30を第2主室121の内部に圧入する時の圧入荷重を低減することができる。
【0049】
また、一般的に、シール部材38圧入時にねじれ等の不具合が生じた場合、不具合が生じない場合よりも圧入荷重が大きくなる。上述のような構成によれば、不具合が生じない場合の圧入荷重を低減できるため、不具合が生じた場合と生じない場合との圧入荷重の差が大きくなり、不具合の検知が容易になる。
【0050】
(1b)圧入によって変形する第1A先端部351a及び第1B先端部351bは、内側ケース30における第2側の端部に設けられている。
このような構成によれば、内側ケース30を第2主室121の内部に装着する工程において、内側ケース30は第1側から第2主室121に挿入され、第1A突出部35a及び第1B突出部35bが第2主室121の第2側の端部に当接するまで圧入が行われない。このため、圧入が行われる期間を短縮することができる。
【0051】
(1c)内側ケース30は、第2主室121の内部に圧入されている。内側ケース30が第2主室121に装着された状態において、第1A突出部35a、第1B突出部35b、及びシール部材38は、第2主室121の内面に当接する。
【0052】
このような構成によれば、内側ケース30が第2主室121の内部に装着された状態で緩みが生じることが抑制される。このため、車両振動等によって内側ケース30がガタつくことを抑制することができる。また、車両振動等による内側ケース30のガタつきによって活性炭等の吸着材41が微粉化することを抑制できる。
【0053】
(1d)第1A突出部35a及び第1B突出部35bは、第1方向に沿って延びる板状の部位である。
このような構成によれば、第1A突出部35a及び第1B突出部35bが第2主室121の内面に接触する部分の面積が低減されるため、内側ケース30を第2主室121に圧入する時の圧入荷重を低減することできる。
【0054】
(1e)内側ケース30を第2主室121の内部に装着する第1工程及び第2工程において、第2A突出部36a及び第2B突出部36bが第2主室121の内面に当接しないように、内側ケース30を第2主室121に挿入することが可能である。しかし、挿入時の手振れ等によって、第2A突出部36a又は第2B突出部36bが第2主室121の内面に当接することがあってもよい。
【0055】
このような構成によれば、内側ケース30を挿入する方向が第1方向からずれた場合でも、第2A突出部36a又は第2B突出部36bが第2主室121の内面に当接することによって、内側ケース30の第2方向及び第3方向へのずれが制限される。このため、内側ケース30を第2主室121に挿入する時に、第1方向に対する内側ケース30の傾きを抑制することが可能となり、内側ケース30の第2主室121への挿入が容易となる。
【0056】
(1f)第1フランジ31の外周に設けられている溝37には、弾性部材であるシール部材38が装着されている。内側ケース30を第2主室121の内部に装着した状態において、内側ケース30の第1側における端部に位置する第1フランジ31と第2主室121との隙間は、シール部材38によって密閉される。
【0057】
このような構成によれば、第1フランジ31と第2主室121との隙間のシール性を向上することができる。
(1g)内側ケース30における第2側の端部には、グリッド43bによって支持されたフィルタ42eが配置されている。フィルタ42eは、内側ケース30やグリッド43b等に接合(例えば、溶着)されておらず、グリッド43bから突き出た爪によって支持されている。
【0058】
このような構成によれば、フィルタ42eを支持するための接合が不要であるため、製造コストを低減することができる。
なお、第1実施形態では、大気ポート23が接続ポートの一例に相当し、第2主室121が外側ケースにおける空間を形成する部分の一例に相当する。
【0059】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0060】
上述した第1実施形態では、第1A突出部35a及び第2A突出部36aは、いずれも2つの第1側面33に設けられていた。また、第1B突出部35b及び第2B突出部36bは、いずれも2つの第2側面34に設けられていた。これに対し、第2実施形態では、第1A突出部35a及び第2A突出部36aは、いずれも1つの第1側面33に設けられ、また、第1B突出部35b及び第2B突出部36bは、いずれも1つの第2側面34に設けられる点で、第1実施形態と相違する(図5)。
【0061】
2つの第1側面33のうち、第1A突出部35a及び第2A突出部36aが設けられている面を第1非接触面331とし、第1A突出部35a及び第2A突出部36aが設けられていない面を第1接触面332とする。また、2つの第2側面34のうち、第1B突出部35b及び第2B突出部36bが設けられている面を第2非接触面341とし、第1B突出部35b及び第2B突出部36bが設けられていない面を第2接触面342とする。第1非接触面331及び第2非接触面341と第2主室121の内面との間には隙間がある。第1接触面332及び第2接触面342は、第2主室121の内面に面接触する。本実施形態では一例として、第1A突出部35a及び第2A突出部36aは、いずれも第1非接触面331に1つ設けられている。第1B突出部35b及び第2B突出部36bは、いずれも第2非接触面341に1つ設けられている。
【0062】
内側ケース30を第2主室121の内部に装着する工程において、第1接触面332及び第2接触面342は、第2主室121の内面に沿って摺動する。また、第1接触面332及び第2接触面342は、第2主室121の内面に押圧されて変形することはない。
【0063】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0064】
(3a)上記実施形態では、第2主室121及び内側ケース30は、略直方体形状であり、第1方向に垂直な断面は略矩形状であったが、これに限定されるものではない。例えば、第2主室121及び内側ケース30は、略多角柱形状であってもよい。また、例えば、第2主室121及び内側ケース30は、略円柱状であってもよい。内側ケース30が略円柱状の部材である場合、例えば、第1A突出部35a又は第1B突出部35bに相当する突出部が、内側ケース30の側面に、内側ケース30の周方向に沿って等間隔で3つ設けられていてもよい。
【0065】
(3b)上記実施形態では、第1室11の内部にはフィルタ42a,42b,42cが配置され、第1室11の内部におけるフィルタ42a及びフィルタ42bとフィルタ42cとの間には、蒸発燃料を吸着する吸着材41が充填されている。しかし、第1室11の内部には、フィルタ42a,42b,42c及び吸着材41の代わりに、内側ケース30が装着されていてもよい。また、第1室11の内部に内側ケース30が装着されている場合、第2主室121の内部には、内側ケース30が装着される代わりに、第1側及び第2側にフィルタが配置され、当該フィルタの間に吸着材41が充填されていてもよい。
【0066】
(3c)上記実施形態では、第1A突出部35a及び第1B突出部35bはそれぞれ4つ設けられており、第2A突出部36a及び第2B突出部36bはそれぞれ2つ設けられていた。しかし、第1A突出部35a及び第1B突出部35bは少なくとも1つ設けられていてもよく、第2A突出部36a及び第2B突出部36bは少なくとも1つ設けられていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、第1A突出部35a及び第2A突出部36aは、第1側面33に設けられているが、第2側面34に設けられていてもよい。第1B突出部35b及び第2B突出部36bは、第2側面34に設けられているが、第1側面33に設けられていてもよい。
【0068】
(3d)上記実施形態では、第1A突出部35a及び第1B突出部35bは、いずれも内側ケース30の第2側の端部に設けられていたが、内側ケース30における第2側の端部以外の外周面に設けられていてもよい。
【0069】
(3e)上記実施形態では、第2A突出部36a及び第2B突出部36bは、内側ケース30の外周面における第2側の端部から第1側の端部付近まで第1方向に沿って延びる板状の部位であったが、これに限定されるものではない。例えば、第2A突出部36a及び第2B突出部36bは、それぞれ複数設けられ、内側ケース30の外周面における第2側の端部から第1側の端部付近まで第1方向に沿って間隔を空けて並んでいてもよい。
【0070】
(3f)上記実施形態では、流体は、外側ケース10における第1室11及び第2室12の内部並びに内側ケース30の内部において、いずれも第1方向に沿って流れる。しかし、流体が内側ケース30の内部を流れる方向は、第1方向以外であってもよい。例えば、内側ケース30の内部を流れる流体は、第2方向又は第3方向に沿って流れてもよい。
【0071】
(3g)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、
第1方向に延びる空間を内部に有する外側ケースと、
前記外側ケースの内部と外部とを接続する接続ポートと、
筒状の部材であって、前記蒸発燃料を吸着する吸着材が内部に配置されている内側ケースと、
前記内側ケースの外面から外側に突出している少なくとも1つの第1突出部と、
を備え、
前記空間には、前記第1方向に流体が流れ、
前記内側ケースは、前記外側ケースにおける前記空間を形成する部分の内部に圧入されており、
前記少なくとも1つの第1突出部は、前記外側ケースにおける前記空間を形成する部分のうち、前記第1方向に延びる部分の内面に当接している、
キャニスタ。
【0072】
[項目2]
項目1に記載のキャニスタであって、
前記少なくとも1つの第1突出部は、前記接続ポートが設けられた側の反対側に位置する前記内側ケースの端部周辺に形成されている、
キャニスタ。
【0073】
[項目3]
項目1又は項目2に記載のキャニスタであって、
前記少なくとも1つの第1突出部は、前記第1方向に沿って延びる板状の部位である、
キャニスタ。
【0074】
[項目4]
項目1から項目3までのいずれか一項に記載のキャニスタであって、
前記接続ポートが設けられた側に位置する前記内側ケースの端部周辺と、前記外側ケースの内面と、の隙間を塞ぐシール部材を更に備える、
キャニスタ。
【0075】
[項目5]
項目1から項目4までのいずれか一項に記載のキャニスタであって、
前記内側ケースの外周面から外側に突出し、前記外側ケースとの間に隙間を有し、前記第1方向に沿って形成された少なくとも1つの第2突出部を更に備える、
キャニスタ。
【符号の説明】
【0076】
1…キャニスタ、10…外側ケース、21…チャージポート、22…パージポート、23…大気ポート、30…内側ケース、35a…第1A突出部、35b…第1B突出部、36a…第2A突出部、36b…第2B突出部、41…吸着材。
図1
図2
図3
図4
図5