IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-共電解システム 図1
  • 特開-共電解システム 図2
  • 特開-共電解システム 図3
  • 特開-共電解システム 図4
  • 特開-共電解システム 図5
  • 特開-共電解システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154973
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】共電解システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/04 20210101AFI20241024BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20241024BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241024BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20241024BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20241024BHJP
   C25B 9/13 20210101ALI20241024BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B1/23
C25B9/00 A
C25B15/02
C25B9/19
C25B9/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069253
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 翔一
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和政
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AA09
4K021BA02
4K021BC03
4K021DB53
4K021DC03
4K021DC15
(57)【要約】
【課題】合成ガスの目標組成比を確実に得られる共電解システムを提供する。
【解決手段】共電解システム1は、固体電解質膜21と燃料電極22と酸素電極23とを有する電解セル20と、燃料電極22にCO及びHOを供給する燃料ガス供給管3と、酸素電極23に大気を供給する大気供給管4と、燃料電極22で生成したH及びCOを含む合成ガスを排出する合成ガス排出管5と、酸素電極23で生成したOを排出する酸素排出管6とを備える。共電解システム1は、更に、合成ガスの一部を燃料ガス供給管3に還流する還流管7を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質膜と燃料電極と酸素電極とを有する電解セルと、
前記燃料電極にCO及びHOを供給する燃料ガス供給管と、
前記酸素電極に大気を供給する大気供給管と、
前記燃料電極で生成したH及びCOを含む合成ガスを排出する合成ガス排出管と、
前記酸素電極で生成したOを排出する酸素排出管と、
を備えた共電解システムであって、
前記合成ガスの一部を前記燃料ガス供給管に還流する還流管を更に備えることを特徴とする共電解システム。
【請求項2】
前記還流管を流れる前記合成ガスの流量を調整する流量調整弁と、
前記合成ガス排出管を流れる前記合成ガスの組成比の検出結果又は前記電解セルを流れる電解電流の検出結果に基づいて、前記流量調整弁の開度を制御する制御部と、
を更に備える請求項1に記載の共電解システム。
【請求項3】
前記燃料ガス供給管は、CO及びHOを所定温度以上に加熱する第1エリアと、前記第1エリアの上流側に位置するとともにCO及びHOを前記所定温度未満に加熱する第2エリアとを有し、
前記還流管は、前記合成ガス排出管と前記燃料ガス供給管の前記第1エリアとを接続する第1還流管と、前記合成ガス排出管と前記燃料ガス供給管の前記第2エリアとを接続する第2還流管とを有し、
前記第1還流管に第1流量調整弁が設けられ、前記第2還流管に第2流量調整弁が設けられ、
前記制御部は、前記合成ガスの組成比の検出結果又は前記電解電流の検出結果に基づいて、前記第1流量調整弁の開度及び前記第2流量調整弁の開度を制御する請求項2に記載の共電解システム。
【請求項4】
前記燃料ガス供給管の内部において、前記第1還流管との合流部よりも下流側の前記第1エリア、及び、前記第2還流管との合流部よりも下流側の前記第2エリアの少なくとも一方には、触媒拡散体が設けられている請求項3に記載の共電解システム。
【請求項5】
前記第1還流管との合流部よりも下流側の前記第1エリアの内部には、第1触媒拡散体が設けられ、前記第2還流管との合流部よりも下流側の前記第2エリアの内部には、第1触媒拡散体と異なる第2触媒拡散体が設けられている請求項4に記載の共電解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共電解システムに関し、特にCOとHOを原料として同時に電解してH及びCOを含む合成ガスを生成する固体酸化物形電解セル共電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような技術分野として、例えば特許文献1に記載されるものがある。特許文献1には、再生可能エネルギ由来の供給電力の変動に対応しながら、合成ガス目標組成比であるH/CO=2を得られる技術が開示されている。より具体的には、COとHOの電気分解によりCO及びHを同時に生成する第1装置と、HOの電気分解によりHを生成する第2装置とをそれぞれ用意し、安定電力の場合は第1装置を用いて共電解を実施し、変動電力の場合は第2装置を用いて水電解を実施する。これをもってHとCOとの比率を調整し、合成ガス目標組成比の実現を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5605437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の共電解システムでは、合成ガスの目標組成比を得られない可能性があった。
【0005】
本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、合成ガスの目標組成比を確実に得られる共電解システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る共電解システムは、固体電解質膜と燃料電極と酸素電極とを有する電解セルと、前記燃料電極にCO及びHOを供給する燃料ガス供給管と、前記酸素電極に大気を供給する大気供給管と、前記燃料電極で生成したH及びCOを含む合成ガスを排出する合成ガス排出管と、前記酸素電極で生成したOを排出する酸素排出管と、を備えた共電解システムであって、前記合成ガスの一部を前記燃料ガス供給管に還流する還流管を更に備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る共電解システムでは、CO及びHを含む合成ガスの一部を還流管を介して燃料ガス供給管に還流するので、還流合成ガス中のHが逆水性ガスシフト反応を進行させることによりCOの生成量を増やし、還流合成ガス中のCOが水性ガスシフト反応を進行させることによりHの生成量を増やすことができる。このように水性ガスシフト反応及び逆水性ガスシフト反応を利用し合成ガスの組成比を調整することができるので、合成ガスの目標組成比を確実に得られる。
【0008】
本発明に係る共電解システムにおいて、前記還流管を流れる前記合成ガスの流量を調整する流量調整弁と、前記合成ガス排出管を流れる前記合成ガスの組成比の検出結果又は前記電解セルを流れる電解電流の検出結果に基づいて、前記流量調整弁の開度を制御する制御部と、を更に備えることが好ましい。このようにすれば、制御部は合成ガスの組成比の検出結果又は電解電流の検出結果に基づいて、合成ガスの目標組成比となるように流量調整弁の開度を制御することで、合成ガスの目標組成比をより確実に得られる。
【0009】
本発明に係る共電解システムにおいて、前記燃料ガス供給管は、CO及びHOを所定温度以上に加熱する第1エリアと、前記第1エリアの上流側に位置するとともにCO及びHOを前記所定温度未満に加熱する第2エリアとを有し、前記還流管は、前記合成ガス排出管と前記燃料ガス供給管の前記第1エリアとを接続する第1還流管と、前記合成ガス排出管と前記燃料ガス供給管の前記第2エリアとを接続する第2還流管とを有し、前記第1還流管に第1流量調整弁が設けられ、前記第2還流管に第2流量調整弁が設けられ、前記制御部は、前記合成ガスの組成比の検出結果又は前記電解電流の検出結果に基づいて、前記第1流量調整弁の開度及び前記第2流量調整弁の開度を制御することが好ましい。このようにすれば、合成ガスの組成比の検出結果又は電解電流の検出結果に基づいて第1還流管と第2還流管とを切り替えるとともに、合成ガスの還流先の温度を変えることで逆水性ガスシフト反応と水性ガスシフト反応との反応比率を調整することにより、合成ガスの目標組成比をより確実に得られる。
【0010】
本発明に係る共電解システムにおいて、前記燃料ガス供給管の内部において、前記第1還流管との合流部よりも下流側の前記第1エリア、及び、前記第2還流管との合流部よりも下流側の前記第2エリアの少なくとも一方には、触媒拡散体が設けられていることが好ましい。このようにすれば、触媒拡散体を用いて水性ガスシフト反応又は逆水性ガスシフト反応を促進することで、合成ガスの目標組成比をより確実に得られる。
【0011】
本発明に係る共電解システムにおいて、前記第1還流管との合流部よりも下流側の前記第1エリアの内部には、第1触媒拡散体が設けられ、前記第2還流管との合流部よりも下流側の前記第2エリアの内部には、第1触媒拡散体と異なる第2触媒拡散体が設けられていることが好ましい。このようにすれば、水性ガスシフト反応又は逆水性ガスシフト反応を促進できる触媒拡散体をそれぞれ設けることで、合成ガスの目標組成比をより確実に得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、合成ガスの目標組成比を確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る共電解システムを示す模式図である。
図2】第2実施形態に係る共電解システムを示す模式図である。
図3】第3実施形態に係る共電解システムを示す模式図である。
図4】第4実施形態に係る共電解システムを示す模式図である。
図5】第5実施形態に係る共電解システムを示す模式図である。
図6】第5実施形態に係る共電解システムの制御処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る共電解システムの実施形態について説明する。図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複説明を省略する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態に係る共電解システムを示す模式図である。図1に示すように、本実施形態の共電解システム1は、電解スタック2と、電解スタック2の上流側に配置された燃料ガス供給管3及び大気供給管4と、電解スタック2の下流側に配置された合成ガス排出管5及び酸素排出管6とを備えている。
【0016】
電解スタック2は、複数の電解セル20を一定の方向に積層することにより形成されている。図1では、電解スタック2での化学反応や各ガスの流れを分かりやすく示すため、一つの電解セル20のみを描く。電解セル20は、いわゆる固体酸化物形電解セル(SOEC:Solid Oxide Electrolysis Cell)であって、COとHOを原料として同時に電解してHとCOを生成する。この電解セル20は、例えば600℃以上900℃以下の温度で作動する。
【0017】
図1に示すように、電解セル20は、固体電解質膜21と、固体電解質膜21の一方の主面に配置された燃料電極22と、固体電解質膜21の他方の主面に配置された酸素電極23とを有する。固体電解質膜21は、例えば固体酸化物セラミックスによって形成される。燃料電極22には例えばニッケルやセリウム系の材料、酸素電極23には例えばランタンコバルト酸化物系の材料が用いられる。
【0018】
燃料ガス供給管3は、電解セル20の上流側に配置され、電解セル20の燃料電極22にCO及びHO(水蒸気)を供給する。大気供給管4は、電解セル20の上流側に配置され、電解セル20の酸素電極23に大気を供給する。
【0019】
合成ガス排出管5は、電解セル20の下流側に配置され、燃料電極22で生成したH及びCOを含む合成ガスを外部に排出する。酸素排出管6は、電解セル20の下流側に配置され、酸素電極23で生成したOを外部に排出する。
【0020】
燃料電極22と酸素電極23との間に電力が供給され、且つ、CO及びHOが供給されると、燃料電極22では、以下の式(1)から式(3)の反応が起こり、H及びCOを生成する。生成したH及びCOを含む合成ガスは、合成ガス排出管5を介して例えば次工程の燃料合成装置(図示せず)に向けて排出される。なお、式(3)において、CO+HO→CO+Hは水性ガスシフト反応(WGS:water gas shift reaction)と呼び、その逆であるCO+H→CO+HOは逆水性ガスシフト反応(RWGS:reverse water gas shift reaction)と呼ぶ。
【0021】
一方、生成したO2-は、固体電解質膜21を通過して酸素電極23に移動する。酸素電極23では、以下の式(4)の反応が起こり、Oを生成する。生成したOは、酸素排出管6を介して外部に排出される。
2-→1/2O+2e (4)
【0022】
燃料電極22で生成したH及びCOを燃料合成装置で炭化水素系燃料(C)の製造に用いる場合、HとCOとの比率が2(H/CO=2、すなわち合成ガスの目標組成比)であることが望ましい。従って、合成ガス排出管5から排出された合成ガスを調整せずに、そのまま炭化水素系燃料(C)の製造に使用するには、燃料電極22で生成したH及びCOの比率(H/CO)が2であることが求められる。
【0023】
これを実現するために、HO/CO=2の燃料ガスを供給することにより、H/CO=2(合成ガスの目標組成比)の合成ガスを狙うことが既に知られている。しかし、再生可能エネルギの供給電力を利用した場合、その供給電力の変動によって電解電流が変動し、これに伴い共電解で生成した合成ガスの組成比も変動する。特に、電解電流が高いほどH/COの値が高くなる。その結果、HO/CO=2の燃料ガスを供給しても、H/CO=2の合成ガスを得られない問題が生じている。
【0024】
そこで、本願発明者らは、上述の式(3)に示す水性ガスシフト反応及び逆水性ガスシフト反応に着目し、生成した合成ガスの一部を燃料ガス供給管に還流することで、合成ガスの組成比を調整できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
従って、本実施形態の共電解システム1は、更に、合成ガスの一部を燃料ガス供給管3に還流する還流管7を備えている。図1に示すように、還流管7は、合成ガス排出管5と燃料ガス供給管3とを接続するように形成されている。
【0026】
本実施形態に係る共電解システム1では、合成ガス排出管5と燃料ガス供給管3とを接続する還流管7を備えることで、COとHを含む合成ガスの一部を還流管7を介して燃料ガス供給管3に還流できる。還流した合成ガス中のHが逆水性ガスシフト反応(CO+H→CO+HO)を進行させることによりCOの生成量を増やし、還流した合成ガス中のCOが水性ガスシフト反応(CO+HO→CO+H)を進行させることによりHの生成量を増やすことができる。このように水性ガスシフト反応及び逆水性ガスシフト反応を利用し合成ガスの組成比を調整できるので、合成ガスの目標組成比を確実に得られる。その結果、供給電力の変動による電解電流が変動した場合であっても、合成ガス目標組成比を確実に実現することが可能になる。
【0027】
[第2実施形態]
以下、図2を参照して共電解システムの第2実施形態を説明する。本実施形態の共電解システム1Aは、還流管7に電磁弁8と逆止弁9とが設けられる点、及び、電流検出センサ10を更に備える点において、上述した第1実施形態と異なっている。その他の構造は第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0028】
図2に示すように、電流検出センサ10は、電解セル20を流れる電解電流、すなわち燃料電極22と酸素電極23との間の電流を検出し、検出した結果を電磁弁8に出力する。電磁弁8は、還流管7の合成ガス排出管5に近い側に配置されており、電流検出センサ10の検出結果(検出電解電流)に基づいて開閉を行う。例えば電磁弁8は、検出電解電流を取得して予め設定された電流閾値と比較し、検出電解電流が電流閾値を超えた場合に開弁し、電流閾値以下である場合に閉弁するように構成されている。なお、電流閾値は、例えば合成ガスの目標組成比(H/CO=2)と対応する電流値であって、経験値等に基づいて設定される。
【0029】
一方、逆止弁9は、例えば還流管7の燃料ガス供給管3に近い側に配置され、燃料ガス供給管3側からの逆流を防止する。
【0030】
本実施形態の共電解システム1Aによれば、上述の第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、還流管7に電磁弁8が設けられているので、必要に応じて還流のあり/なしを切り替えることができる。
【0031】
[第3実施形態]
以下、図3を参照して共電解システムの第3実施形態を説明する。本実施形態の共電解システム1Bは、還流管7に流量調整弁11と逆止弁9とが設けられる点、及び、電流検出センサ10と制御部12とを更に備える点において、上述した第1実施形態と異なっている。その他の構造は第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0032】
図3に示すように、流量調整弁11は、例えば還流管7の合成ガス排出管5に近い側に配置されている。逆止弁9は、例えば還流管7の燃料ガス供給管3に近い側に配置されている。
【0033】
また、本実施形態の共電解システム1Bは、電流検出センサ10及び制御部12を更に備えている。電流検出センサ10は、電解セル20を流れる電解電流、すなわち燃料電極22と酸素電極23との間の電流を検出し、検出した結果を制御部12に出力する。
【0034】
制御部12は、例えば、演算を実行するCPU(Central Processing Unit)と、演算のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって共電解システム1Bの全体の制御を行う。
【0035】
本実施形態において、制御部12は、電流検出センサ10の検出結果(検出電解電流)に基づいて流量調整弁11の開度を制御する。例えば、制御部12には、電解セル20を流れる電解電流の大きさとH/COとの関係を示すテーブルやグラフが記憶されている。このようなテーブルやグラフは、例えば蓄積された実測値等に基づいて予め作成されたものである。
【0036】
制御部12は、検出電解電流と上記テーブルやグラフとに基づいて、合成ガスの目標組成比(H/CO=2)となるように流量調整弁11の開度を制御する。例えば検出電解電流がH/CO=2の関係に対応する電流閾値以下である場合、制御部12は、流量調整弁11を閉弁する。一方、検出電解電流が電流閾値を超えた場合、流量調整弁11を開弁する。更に、開弁した場合において、制御部12は、検出電解電流の変動に応じて上記テーブルやグラフに基づいて、H/CO=2となるように流量調整弁11の開度を調整する。例えば検出電解電流が増加した場合、制御部12は、流量調整弁11の開度を大きくして還流合成ガスの流量を増やすことによりHとCOの生成量を調整する。
【0037】
本実施形態の共電解システム1Bによれば、上述の第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、更に以下の作用効果を得られる。すなわち、制御部12は、電流検出センサ10の検出結果と予め記憶された関係テーブルやグラフ等とに基づいて、H/CO=2となるように流量調整弁11の開度を制御するので、電解セル20を流れる電解電流の変動に応じて還流合成ガスの流量を調整することができ、合成ガスの目標組成比をより確実に得られる。
【0038】
なお、本実施形態において、制御部12及び流量調整弁11に代えてMFC(Mass Flow Controller マスフローコントローラ)を用いてもよい。
【0039】
[第4実施形態]
以下、図4を参照して共電解システムの第4実施形態を説明する。本実施形態の共電解システム1Cは、還流管7に流量調整弁11と逆止弁9とが設けられる点、及び、制御部12と組成比検出センサ13とを更に備える点において、上述した第1実施形態と異なっている。その他の構造は第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0040】
図4の上段に示すように、流量調整弁11は、例えば還流管7の合成ガス排出管5に近い側に配置されている。逆止弁9は、例えば還流管7の燃料ガス供給管3に近い側に配置されている。
【0041】
また、本実施形態の共電解システム1Cは、組成比検出センサ13及び制御部12を更に備えている。組成比検出センサ13は、合成ガス排出管5に設けられ、例えば合成ガス排出管5を流れるH及びCOの濃度をそれぞれ計測することにより合成ガスの組成比(すなわち、H/CO)を検出する。組成比検出センサ13は、その検出結果を制御部12に出力する。
【0042】
本実施形態において、制御部12は、組成比検出センサ13の検出結果に基づいて流量調整弁11の開度を制御する。例えば、制御部12には、H/COと還流合成ガスの流量との関係を示すグラフやテーブル等が記憶されている。H/COと還流合成ガスの流量との関係を示すグラフは、例えば図4の下段に示すようなものであり、例えば蓄積された実測値等に基づいて作成されたものである。図4の下段において、横軸で示す還流合成ガス流量は、還流合成ガスの流量のことである。
【0043】
制御部12は、組成比検出センサ13の検出結果(すなわち、H/CO)と上記関係テーブルやグラフとに基づいて、合成ガスの目標組成比(H/CO=2)となるように流量調整弁11の開度を制御し、還流合成ガスの流量を調整する。
【0044】
本実施形態の共電解システム1Cによれば、上述の第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、更に以下の作用効果を得られる。すなわち、制御部12は、組成比検出センサ13の検出結果と予め記憶された関係テーブルやグラフ等とに基づいて、H/CO=2となるように流量調整弁11の開度を制御するので、合成ガス排出管5を流れる合成ガスの組成比に応じて、還流合成ガスの流量を調整することができる。従って、合成ガスの目標組成比をより確実に得られる。
【0045】
[第5実施形態]
以下、図5及び図6を参照して共電解システムの第5実施形態を説明する。本実施形態の共電解システム1Dは、組成比検出センサ13と制御部12と2つの還流管とを備える点、及び、各還流管に逆止弁と流量調整弁とがそれぞれ設けられる点において、上述した第1実施形態と大きく異なっている。その他の構造は第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0046】
図5上段に示すように、燃料ガス供給管3は、該燃料ガス供給管3を流れるCO及びHOを所定温度以上に加熱する第1エリア3aと、第1エリア3aの上流側に位置するとともにCO及びHOを所定温度未満に加熱する第2エリア3bとを有する。第1エリア3aは例えば第1加熱部32に、第2エリア3bは例えば第2加熱部33に加熱される。ここでの所定温度は、上記式(3)に示す水性ガスシフト反応と逆水性ガスシフト反応との反応平衡が切り替わる温度であり、例えば600℃である。
【0047】
第1加熱部32は、例えば電気ヒーターによって構成され、燃料ガス供給管3の第1エリア3aを流れる燃料ガスを600℃以上になるように加熱する。第1加熱部32は、燃料ガス供給管3の第1エリア3aだけでなく、第1エリア3aと対応する大気供給管4の第1部分4a、及び電解セル20も加熱するように形成されている。
【0048】
第2加熱部33は、例えば電気ヒーターによって構成され、燃料ガス供給管3の第2エリア3bを流れる燃料ガスを600℃未満になるように加熱する。第2加熱部33は、燃料ガス供給管3の第2エリア3bだけでなく、第2エリア3bと対応する大気供給管4の第2部分4bも加熱するように形成されている。
【0049】
また、本実施形態の共電解システム1Dは、2つの還流管(第1還流管14、第2還流管15)を備えている。第1還流管14は、合成ガス排出管5と燃料ガス供給管3の第1エリア3aとを接続し、合成ガス排出管5を流れる合成ガスの一部を燃料ガス供給管3の第1エリア3aに還流する。第1還流管14には、第1流量調整弁16及び第1逆止弁17がそれぞれ設けられている。第1流量調整弁16は、例えば第1還流管14の合成ガス排出管5に近い側に配置されている。第1逆止弁17は、例えば第1還流管14における燃料ガス供給管3の第1エリア3aに近い側に配置されている。
【0050】
第2還流管15は、合成ガス排出管5と燃料ガス供給管3の第2エリア3bとを接続し、合成ガス排出管5を流れる合成ガスの一部を燃料ガス供給管3の第2エリア3bに還流する。第2還流管15には、第2流量調整弁18及び第2逆止弁19がそれぞれ設けられている。第2流量調整弁18は、例えば第2還流管15の合成ガス排出管5に近い側に配置されている。第2逆止弁19は、例えば第2還流管15における燃料ガス供給管3の第2エリア3bに近い側に配置されている。
【0051】
図5上段に示すように、燃料ガス供給管3の第1エリア3aの内部において、第1還流管14との合流部34よりも下流側には、第1触媒拡散体30が設けられている。第1触媒拡散体30は、例えば逆水性ガスシフト反応を促進するNiやCuなどの金属触媒が担持されたものであり、第1エリア3aの内周壁に固定されている。
【0052】
また、燃料ガス供給管3の第2エリア3bの内部において、第2還流管15との合流部35よりも下流側には、第2触媒拡散体31が設けられている。第2触媒拡散体31は、例えば水性ガスシフト反応を促進するFeやRhなどの金属触媒が担持されたものであり、第2エリア3bの内壁に固定されている。
【0053】
また、本実施形態の共電解システム1Dは、組成比検出センサ13及び制御部12を更に備えている。組成比検出センサ13は、上述のように合成ガスの組成比(すなわち、H/CO)を検出し、その検出結果を制御部12に出力する。
【0054】
制御部12は、組成比検出センサ13の検出結果に基づいて第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18の開度をそれぞれ制御する。ここでは、図6を参照して制御部12の制御処理を説明する。図6において、SH2/CO(単位:-)は組成比検出センサ13によって検出された合成ガス組成比、TH2/CO(単位:-)は合成ガス目標組成比(すなわち、H/CO=2)、kerrorは許容誤差(単位:%)である。また、図6に示す制御処理の開始時において、第1流量調整弁16及び第2流量調整弁18は全て閉弁状態である。
【0055】
図6に示すように、制御部12は、まず、1-SH2/CO/TH2/CO≦±kerrorという関係を満たすか否かを判定する(ステップS1)。具体的には、制御部12は、組成比検出センサ13によって検出された合成ガス組成比SH2/COを取得し、取得したSH2/COと合成ガス目標組成比TH2/COとを用いて1-SH2/CO/TH2/COを算出する。次に、制御部12は、1-SH2/CO/TH2/COの算出結果を予め設定された許容誤差±kerrorと比較する。許容誤差±kerrorは、例えば経験値等に基づいて予め設定されたものである。
【0056】
1-SH2/CO/TH2/CO≦±kerrorという関係を満たした場合、制御処理は終了する。一方、1-SH2/CO/TH2/CO≦±kerrorという関係を満たしていない(すなわち、1-SH2/CO/TH2/CO>±kerror)場合、制御部12は、更にSH2/COがTH2/CO以上か否かを判定する(ステップS2)。
【0057】
H2/COがTH2/COより小さい場合、制御処理はステップS3に進む。ステップS3では、制御部12は、第2流量調整弁18を開弁し、その後、TH2/CO-SH2/COの大きさに応じて第2流量調整弁18の開度を制御することにより、還流合成ガスの流量を調整する。第2流量調整弁18を開弁すると、合成ガスの一部は第2還流管15を介して燃料ガス供給管3の第2エリア3bに還流する。第2エリア3bが第2加熱部33によって600℃未満に加熱するエリアであるため、第2エリア3bでは、水性ガスシフト反応(CO+HO→CO+H)が進行する。加えて、第2エリア3bの第2還流管15との合流部35よりも下流側に水性ガスシフト反応を促進する第2触媒拡散体31が設けられているので、水性ガスシフト反応が促進される。その結果、COの量が減りHの量が増えるので、H/COが大きくなる。
【0058】
一方、ステップS2において、SH2/COがTH2/CO以上の場合、制御処理はステップS4に進む。ステップS4では、制御部12は、第1流量調整弁16を開弁し、その後、SH2/CO-TH2/COの大きさに応じて第1流量調整弁16の開度を制御することにより、還流合成ガスの流量を調整する。第1流量調整弁16を開弁すると、合成ガスの一部は第1還流管14を介して燃料ガス供給管3の第1エリア3aに還流する。第1エリア3aが第1加熱部32によって600℃以上に加熱するエリアであるため、第1エリア3aでは、逆水性ガスシフト反応(CO+H→CO+HO)が進行する。加えて、第1エリア3aの第1還流管14との合流部34よりも下流側に逆水性ガスシフト反応を促進する第1触媒拡散体30が設けられているので、逆水性ガスシフト反応が促進される。その結果、Hの量が減りCOの量が増えるので、H/COが小さくなる。
【0059】
ステップS3又はS4に続くステップS5では、制御部12は、再び1-SH2/CO/TH2/CO≦±kerrorという関係を満たすか否かを判定する。このとき、制御部12は、まず、組成比検出センサ13によって新たに検出された合成ガス組成比SH2/COを取得し、取得したSH2/COと合成ガス目標組成比TH2/COとを用いて1-SH2/CO/TH2/COを再び算出する。次に、制御部12は、1-SH2/CO/TH2/COの算出結果を許容誤差±kerrorと比較する。
【0060】
ここで、1-SH2/CO/TH2/CO≦±kerrorという関係を満たした場合、制御処理は終了する。一方、1-SH2/CO/TH2/CO≦±kerrorという関係を満たしていない場合、制御処理は上述のステップS2に戻り、上述のステップS2~S5の処理が繰り返される。
【0061】
本実施形態の共電解システム1Dによれば、上述の第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、更に以下の作用効果を得られる。すなわち、制御部12は、組成比検出センサ13の検出結果に基づいて第1還流管14と第2還流管15とを切り替えるととともに、合成ガスの還流先の温度を変えることで600℃以上の第1エリア3aでの逆水性ガスシフト反応と、600℃未満の第2エリア3bでの水性ガスシフト反応との反応比率を調整することにより、合成ガス目標組成比をより確実に得られる。
【0062】
なお、本実施形態では、制御部12が組成比検出センサ13の検出結果に基づいて第1流量調整弁16の開度と第2流量調整弁18の開度とを制御する例を挙げて説明したが、組成比検出センサ13に代えて電流検出センサ10を用いてもよい。電流検出センサ10を用いる場合、制御部12は電流検出センサ10の検出結果に基づいて第1流量調整弁16の開度と第2流量調整弁18の開度とを制御する。また、制御部12は、上述の制御処理に代えて、例えば図5下段に示すグラフに基づいて第1還流管14及び第2還流管15の切り替え、及び還流合成ガスの流量を制御してもよい。更に、第1触媒拡散体30及び第2触媒拡散体31は必ずしも両方設ける必要がなく、いずれか一方を設けてもよい。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0064】
1,1A,1B,1C,1D:共電解システム、2:電解スタック、3:燃料ガス供給管、3a:第1エリア、3b:第2エリア、4:大気供給管、5:合成ガス排出管、6:酸素排出管、7:還流管、8:電磁弁、9:逆止弁、10:電流検出センサ、11:流量調整弁、12:制御部、13:組成比検出センサ、14:第1還流管、15:第2還流管、16:第1流量調整弁、17:第1逆止弁、18:第2流量調整弁、19:第2逆止弁、20:電解セル、21:固体電解質膜、22:燃料電極、23:酸素電極、30:第1触媒拡散体、31:第2触媒拡散体、32:第1加熱部、33:第2加熱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6