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特開2024-154985ロボットの自動教示方法及びロボット制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154985
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ロボットの自動教示方法及びロボット制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20241024BHJP
   B25J 9/22 20060101ALI20241024BHJP
   B25J 9/10 20060101ALI20241024BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J9/22 A
B25J9/10
G05B19/42 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069268
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】猪股 徹也
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C269AB33
3C269BB03
3C269CC09
3C269EF02
3C269MN09
3C269MN14
3C269MN16
3C707AS24
3C707BS15
3C707JS02
3C707KS03
3C707KV12
3C707LT17
3C707MT04
3C707MT06
3C707NS13
5F131AA02
5F131CA09
5F131CA18
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB58
5F131DB62
5F131DB72
5F131DB76
5F131DB82
5F131KA12
5F131KA47
5F131KA52
5F131KA72
5F131KB05
5F131KB32
5F131KB55
5F131KB58
(57)【要約】
【課題】教示用治具を用いてロボットに対してステージ位置の自動教示を行うときに、教示結果に含まれる誤差を低減する。
【解決手段】ハンド14に設けられたスルービームセンサ25を用いて教示用治具40の円柱部42を非接触で検出し、教示用治具40の治具中心Oの座標である第1の座標を算出してステージ位置Cの座標とする。次いで、教示用治具40をハンド14によって取り上げてハンド14における既定の位置に積載し、ハンド14を作業領域に引き戻してから第1の座標に移動させ、ハンド14からステージ51に教示用治具40を降ろす。その後、ステージ51に降ろされた教示用治具40の治具中心Oの座標である第2の座標をスルービームセンサ25を用いて求め、第1の座標と第2の座標の差を自動教示における誤差として検出して、誤差の補償を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハンドを備えて作業領域の内部に配置される水平多関節型のロボットに対し、前記作業領域に接続されたステージのステージ位置を自動的に教示する自動教示方法であって、
直立する円柱部を有する教示用治具を前記ステージ位置に配置する工程と、
前記第1ハンドを前記円柱部に接近させ、前記第1ハンドに設けられたセンサによって前記円柱部を非接触で検出し、検出結果に基づいて、水平面内に定義されたロボット座標系における前記教示用治具の位置の座標である第1の座標を算出し、前記第1の座標を自動教示によって求められる前記ステージ位置の座標とする自動教示工程と、
前記自動教示工程ののち、前記教示用治具を前記第1ハンドによって取り上げて前記第1ハンドにおける既定の位置に積載し、前記第1ハンドを作業領域に引き戻してから前記第1の座標に前記第1ハンドが移動するように制御し、前記第1ハンドから前記ステージに前記教示用治具を降ろす第1の取り置き工程と、
前記第1の取り置き工程によって前記ステージに降ろされた前記教示用治具の前記円柱部に対して前記第1ハンドを接近させ、前記センサによって前記円柱部を非接触で検出して前記ロボット座標系における前記教示用治具の位置の座標である第2の座標を算出する第1の誤差検出工程と、
前記第1ハンドに関して自動教示工程において得られた前記ステージ位置の座標から、前記第1の座標と前記第2の座標との差を減算して、前記第1ハンドに関して前記自動教示による前記ステージ位置の座標における誤差を補償する第1の補償工程と、
を有する自動教示方法。
【請求項2】
前記ロボットはさらに第2ハンドを備え、
前記第1ハンドに関して前記第1の補償工程において誤差が補償された前記ステージ位置の座標を、前記第2ハンドに関する前記ステージ位置の座標に変換する変換工程と、
前記ステージ位置に配置されている前記教示用治具を前記第2ハンドによって取り上げて前記第2ハンドにおける既定の位置に搭載し、その後、前記変換工程で変換された前記ステージ位置の座標に前記第2ハンドを移動させて前記第2ハンドから前記ステージに前記教示用治具を降ろす第2の取り置き工程と、
前記第2の取り置き工程によって前記ステージに降ろされた前記教示用治具の前記円柱部に対して前記第1ハンドを接近させ、前記センサによって前記円柱部を非接触で検出して前記ロボット座標系における前記教示用治具の位置の座標である第3の座標を算出する第2の誤差検出工程と、
前記変換工程で変換された前記ステージ位置の座標から、前記変換工程で変換された前記ステージ位置の座標と前記第3の座標との差を減算し、前記第2ハンドに関して前記変換工程で変換された前記ステージ位置の座標における誤差を補償する第2の補償工程と、
をさらに有する請求項1に記載の自動教示方法。
【請求項3】
前記ロボットは円板状のワークを搬送するロボットであり、
前記教示用治具は、前記ワークの外周形状と一致する円板部をさらに備え、前記円板部と前記円柱部とが同軸となるように前記円板部の一方の表面から前記円柱部が直立し、前記円板部と前記円柱部の共通中心軸の位置を前記教示用治具の位置とする、請求項1または2に記載の自動教示方法。
【請求項4】
前記センサはスルービームセンサであり、前記円柱部を非接触で検出するときに、異なる3以上の方向から前記第1ハンドを前記円柱部に接近させる、請求項1または2に記載の自動教示方法。
【請求項5】
第1ハンドを備えて作業領域の内部に配置される水平多関節型のロボットを制御し、前記作業領域に接続されたステージのステージ位置をロボットに対して自動的に教示するロボット制御装置であって、
円柱部を有して前記ステージ位置に配置されている教示用治具の前記円柱部に前記第1ハンドを接近させ、前記第1ハンドに設けられたセンサによって前記円柱部を非接触で検出し、検出結果に基づいて、水平面内に定義されたロボット座標系における前記教示用治具の位置の座標である第1の座標を算出し、前記第1の座標を自動教示によって求められる前記ステージ位置の座標とする自動教示処理と、
前記自動教示処理の実行のち、前記教示用治具を前記第1ハンドによって取り上げて前記第1ハンドにおける既定の位置に積載し、前記第1ハンドを作業領域に引き戻してから前記第1の座標に前記第1ハンドが移動するように制御し、前記第1ハンドから前記ステージに前記教示用治具を降ろす第1の取り置き処理と、
前記第1の取り置き処理によって前記ステージに降ろされた前記教示用治具の前記円柱部に対して前記第1ハンドを接近させ、前記センサによって前記円柱部を非接触で検出して前記ロボット座標系における前記教示用治具の位置の座標である第2の座標を算出する第1の誤差検出処理と、
前記第1ハンドに関して自動教示処理において得られた前記ステージ位置の座標から、前記第1の座標と前記第2の座標との差を減算して、前記第1ハンドに関して前記自動教示による前記ステージ位置の座標における誤差を補償する第1の補償処理と、
を実行するロボット制御装置。
【請求項6】
前記第1ハンドに関して前記第1の補償処理において誤差が補償された前記ステージ位置の座標を、前記ロボットに備えられている第2ハンドに関する前記ステージ位置の座標に変換する変換処理と、
前記ステージ位置に配置されている前記教示用治具を前記第2ハンドによって取り上げて前記第2ハンドにおける既定の位置に搭載し、その後、前記変換処理で変換された前記ステージ位置の座標に前記第2ハンドを移動させて前記第2ハンドから前記ステージに前記教示用治具を降ろす第2の取り置き処理と、
前記第2の取り置き処理によって前記ステージに降ろされた前記教示用治具の前記円柱部に対して前記第1ハンドを接近させ、前記センサによって前記円柱部を非接触で検出して前記ロボット座標系における前記教示用治具の位置の座標である第3の座標を算出する第2の誤差検出処理と、
前記変換処理で変換された前記ステージ位置の座標から、前記変換処理で変換された前記ステージ位置の座標と前記第3の座標との差を減算し、前記第2ハンドに関して前記変換処理で変換された前記ステージ位置の座標における誤差を補償する第2の補償処理と、
をさらに実行する請求項5に記載のロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの自動教示方法と、そのような自動教示方法を実行するロボット制御装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、ワークである半導体ウエハをステージ間で搬送する搬送用のロボットが使用される。以下の説明において、ロボットによるワークの取り出し(すなわちロード)と荷降ろし(すなわちアンロード)の対象となるものをステージと総称する。半導体製造工程においてウエハの格納に用いられるカセットや、ウエハに対して何らかの処理を行うワーク処理装置は、それぞれステージである。ステージには、ロボットによって搬送されるときにワークが配置されるべき領域(ワーク配置領域と呼ぶ)が厳密に定められており、ワーク配置領域の位置のことをステージ位置と呼ぶ。ロボットを用いてステージ間でワークを搬送するためには、ステージごとにロボットの座標系におけるステージ位置の座標をロボットに教示(ティーチング)する必要がある。ステージ位置の座標は、例えば、ワーク配置領域の中心の座標である。水平多関節ロボットにより半導体ウエハなどの板状のワークを搬送する場合であれば、ワークはその水平姿勢を保ったまま搬送され、ステージ内でワークのロードやアンロードのためにワークはわずかに垂直方向に動かされるので、水平面内におけるステージ位置を正確に教示すればよい。
【0003】
ステージ位置の教示を自動的に行うために、円柱形状の教示用の治具をステージ内に配置し、ロボット先端のハンド(エンドエフェクタともいう)を異なる方向で動かしながらハンドに取り付けられたセンサによってこの治具を非接触で検出することによって、ステージ位置の座標を決定すること提案されている。ハンドに取り付けられるセンサとして、発光部と受光部とを備え、治具によって光路が遮られたことを検出するスルービームセンサが広く使用されている。この方法によって治具の位置を決定するためには、スルービームセンサの光軸が正しく調整されている必要がある。特許文献1は、スルービームセンサを用いて治具を検出するときに、多数回の検出動作を行って回帰分析を行なったり、あるいは、最小二乗近似と数値探索とを実行したりして検出精度を向上させることを開示している。特許文献2は、スルービームセンサの光軸のキャリブレーションを行うために、ロボットを用いて教示用の治具を所定の位置に載置させ、続いて治具をスルービームセンサで検出して冶具の位置を推定し、治具を載置した教示位置と推定値との差を求めることを開示している。
【0004】
ステージ位置の教示を行う前はロボットにはステージ位置の正確な座標が設定されていないから、自動教示の際にロボットと周囲の物体との衝突が起こる恐れがある。そのような衝突を防ぐために特許文献3は、一般的にはワーク処理装置の内部に配置される教示用の治具のほかにワーク処理装置の外部に補助用の治具を設け、補助用の治具の位置に基づいて大まかな自動教示を行い、その後、教示用の治具を用いて正確に自動教示を行うことを開示している。特許文献4は、ハンドにツールを把持させて処理を行う形態のロボットにおいて、処理対象に対して処理を行う際に使用される機器の位置を測定する第1の位置測定センサをハンドに把持させた状態で、所定の位置に固定された位置基準器具の位置を第1の位置測定センサにより測定することによって、第1の位置測定センサの把持位置のずれを検出することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2022-520052号公報
【特許文献2】特開2005-118951号公報
【特許文献3】国際公開第2007/010275号
【特許文献4】国際公開第2017/042971号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハンドに設けられたスルービームセンサを用いて円柱状の治具を非接触に検出することによってステージ位置の座標値を求める場合においては、センサの検知誤差やロボットの絶対位置誤差などに起因する計算誤差のために、算出されるステージ位置の座標値には誤差が含まれることがある。ロボットの絶対位置誤差には、ハンドの組付けに関する誤差や各アームにおける角度伝達誤差なども含まれる。この誤差があるとロボットは実際のステージ位置とは異なる位置に移動することになる。誤差が大きい場合には、搬送ミスが発生して装置の稼働率が低下したり、最悪の場合には衝突が発生してワークであるウエハやワーク処理装置、ロボットのアームの破損が起こるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、ステージ位置を正確に教示できる自動教示方法と、そのような自動教示方法を実行するロボット制御装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、第1ハンドを備えて作業領域の内部に配置される水平多関節型のロボットに対し、前記作業領域に接続されたステージのステージ位置を自動的に教示する自動教示方法は、
直立する円柱部を有する教示用治具を前記ステージ位置に配置する工程と、
前記第1ハンドを前記円柱部に接近させ、前記第1ハンドに設けられたセンサによって前記円柱部を非接触で検出し、検出結果に基づいて、水平面内に定義されたロボット座標系における前記教示用治具の位置の座標である第1の座標を算出し、前記第1の座標を自動教示によって求められる前記ステージ位置の座標とする自動教示工程と、
前記自動教示工程ののち、前記教示用治具前記第1ハンドによって取り上げて前記第1ハンドにおける既定の位置に積載し、前記第1ハンドを作業領域に引き戻してから前記第1の座標に前記第1ハンドが移動するように制御し、前記第1ハンドから前記ステージに前記教示用治具を降ろす第1の取り置き工程と、
前記第1の取り置き工程によって前記ステージに降ろされた前記教示用治具の前記円柱部に対して前記第1ハンドを接近させ、前記センサによって前記円柱部を非接触で検出して前記ロボット座標系における前記教示用治具の位置の座標である第2の座標を算出する第1の誤差検出工程と、
前記第1ハンドに関して自動教示工程において得られた前記ステージ位置の座標から、前記第1の座標と前記第2の座標との差を減算して、前記第1ハンドに関して前記自動教示による前記ステージ位置の座標における誤差を補償する第1の補償工程と、
を有する。
【0009】
一態様の自動教示方法では、教示用治具を用いる一般的な自動教示工程を実施して自動教示によるステージ位置の座標を求めたのち、自動教示により得られた座標を利用して教示用治具を実際に取り上げてハンドに載置し、その後、ハンドからステージに教示用治具を降ろす第1の取り置き工程を実施する。教示用治具は、自動教示での誤差のために当初の位置からずれた位置にハンドから降ろされるので、再度、教示用治具の位置を決定すれば、自動教示での誤差量を知ることができる。したがってこの自動教示方法では、ステージ位置をより正確に教示できるようになる。
【0010】
ロボットがさらに第2ハンドを備えるいわゆるダブルハンドロボットである場合には、一態様の自動教示方法では、
前記第1ハンドに関して前記第1の補償工程において誤差が補償された前記ステージ位置の座標を、前記第2ハンドに関する前記ステージ位置の座標に変換する変換工程と、
前記ステージ位置に配置されている前記教示用治具を前記第2ハンドによって取り上げて前記第2ハンドにおける既定の位置に搭載し、その後、前記変換工程で変換された前記ステージ位置の座標に前記第2ハンドを移動させて前記第2ハンドから前記ステージに前記教示用治具を降ろす第2の取り置き工程と、
前記第2の取り置き工程によって前記ステージに降ろされた前記教示用治具の前記円柱部に対して前記第1ハンドを接近させ、前記センサによって前記円柱部を非接触で検出して前記ロボット座標系における前記教示用治具の位置の座標である第3の座標を算出する第2の誤差検出工程と、
前記変換工程で変換された前記ステージ位置の座標から、前記変換工程で変換された前記ステージ位置の座標と前記第3の座標との差を減算し、前記第2ハンドに関して前記変換工程で変換された前記ステージ位置の座標における誤差を補償する第2の補償工程と、
を実行するようにしてもよい。このように追加の工程を実施することにより、第2ハンドにセンサが設けられていなくても、自動教示によるステージ位置の座標に含まれる誤差を、第2ハンドに関しても補償することができる。
【0011】
一態様の自動教示方法では、ロボットは例えば円板状のワークを搬送するロボットであり、その場合、教示用治具はワークの外周形状と一致する円板部をさらに備えて、円板部と円柱部とが同軸となるように円板部の一方の表面から円柱部が直立していることが好ましい。このような教示用治具を使用するときには、円板部と円柱部の共通中心軸の位置を教示用治具の位置とすることにより、実際のワーク形状に基づいた、より正確な自動教示を行うことが可能になる。
【0012】
一態様の自動教示方法では、センサとしてスルービームセンサを用いて、円柱部を非接触で検出するときに異なる3以上の方向から第1ハンドを円柱部に接近させることが好ましい。このように構成することによって、ロボットにおける複雑はハードウェアの追加を伴なうことなく、自動教示を容易に行うことができるようになる。
【0013】
本発明の一態様によれば、第1ハンドを備えて作業領域の内部に配置される水平多関節型のロボットを制御し、前記作業領域に接続されたステージのステージ位置をロボットに対して自動的に教示するロボット制御装置は、
円柱部を有して前記ステージ位置に配置されている教示用治具の前記円柱部に前記第1ハンドを接近させ、前記第1ハンドに設けられたセンサによって前記円柱部を非接触で検出し、検出結果に基づいて、水平面内に定義されたロボット座標系における前記教示用治具の位置の座標である第1の座標を算出し、前記第1の座標を自動教示によって求められる前記ステージ位置の座標とする自動教示処理と、
前記自動教示処理の実行のち、前記教示用治具を前記第1ハンドによって取り上げて前記第1ハンドにおける既定の位置に積載し、前記第1ハンドを作業領域に引き戻してから前記第1の座標に前記第1ハンドが移動するように制御し、前記第1ハンドから前記ステージに前記教示用治具を降ろす第1の取り置き処理と、
前記第1の取り置き処理によって前記ステージに降ろされた前記教示用治具の前記円柱部に対して前記第1ハンドを接近させ、前記センサによって前記円柱部を非接触で検出して前記ロボット座標系における前記教示用治具の位置の座標である第2の座標を算出する第1の誤差検出処理と、
前記第1ハンドに関して自動教示処理において得られた前記ステージ位置の座標から、前記第1の座標と前記第2の座標との差を減算して、前記第1ハンドに関して前記自動教示による前記ステージ位置の座標における誤差を補償する第1の補償処理と、
を実行する。
【0014】
一態様のロボット制御装置は、教示用治具を用いる一般的な自動教示処理を実施して自動教示によるステージ位置の座標を求めたのち、自動教示により得られた座標を利用して教示用治具を実際に取り上げてハンドに載置し、その後、ハンドからステージに教示用治具を降ろす第1の取り置き処理を実行する。教示用治具は、自動教示での誤差のために当初の位置からずれた位置にハンドから降ろされるので、ロボット制御装置は、教示用治具の位置を再度決定する誤差検出処理を実行する。これにより、自動教示での誤差量が算出されるので、このロボット制御装置によればステージ位置をより正確に教示できる。
【0015】
ロボットがさらに第2ハンドを備えるいわゆるダブルハンドロボットである場合には、一態様のロボット制御装置は、
前記第1ハンドに関して前記第1の補償処理において誤差が補償された前記ステージ位置の座標を、前記ロボットに備えられている第2ハンドに関する前記ステージ位置の座標に変換する変換処理と、
前記ステージ位置に配置されている前記教示用治具を前記第2ハンドによって取り上げて前記第2ハンドにおける既定の位置に搭載し、その後、前記変換処理で変換された前記ステージ位置の座標に前記第2ハンドを移動させて前記第2ハンドから前記ステージに前記教示用治具を降ろす第2の取り置き処理と、
前記第2の取り置き処理によって前記ステージに降ろされた前記教示用治具の前記円柱部に対して前記第1ハンドを接近させ、前記センサによって前記円柱部を非接触で検出して前記ロボット座標系における前記教示用治具の位置の座標である第3の座標を算出する第2の誤差検出処理と、
前記変換処理で変換された前記ステージ位置の座標から、前記変換処理で変換された前記ステージ位置の座標と前記第3の座標との差を減算し、前記第2ハンドに関して前記変換処理で変換された前記ステージ位置の座標における誤差を補償する第2の補償処理と、
をさらに実行することが好ましい。このようなロボット制御装置によれば、第2ハンドにセンサが設けられていなくても、自動教示によるステージ位置の座標に含まれる誤差を、第2ハンドに関しても補償することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自動教示に含まれる誤差を補償できてステージ位置をより正確に教示できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)はロボットの一例を示す平面図であり、(b)は図1(a)のB-B線に沿った概略断面図であり、(c)はハンドを示す拡大平面図である。
図2】(a),(b)は、それぞれ教示用治具の正面図及び平面図である。
図3】本発明の実施の一形態の自動教示方法を説明する図である。
図4】(a)はロボットの別の例を示す平面図であり、(b)は図3(a)に示すロボットの概略断面図である。
図5図4に示すロボットに対する教示データを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の一形態の自動教示方法が適用されるロボットを示している。図示されるロボット1は、水平多関節ロボットであって、例えば長方形状の空間である作業領域5内に設置され、作業領域5を囲む壁面に設けられたステージ51の相互間で板状のワーク50を搬送するために用いられる。ワーク50は、例えば半導体ウエハである。作業領域5は、ワーク50をステージ51間で搬送する際にロボット1が壁面などと干渉することなくそのアーム11~13やハンド14を動かすことができる空間である。また各ステージ51は、ロボット1によるワーク50のロード及びアンロードが行われる場所であり、その接続部52を介して作業領域5に対して接続している。接続部52は、ワーク50を搭載したロボット1のハンド14がステージ51の内部にアクセスできるように作業領域5の壁面に設けられた開口として構成されている。したがって、ロボット1によりステージ51に対してワーク50のロードやアンロードを行う場合、接続部52を通過するときのハンド14の移動方向は、一般に、作業領域5の壁面に垂直な方向である。また、ステージ51には、ロボット1によりワーク50のロードやアンロードを行うときに、そのステージ51においてワーク50が配置される領域であるワーク配置領域53が規定されている。ワーク配置領域53の外周形状は、そのステージ51において取り扱われるワーク50の外周形状と一致している。ワーク配置領域53の中心位置がステージ位置Cであり、ステージ位置Cの座標が自動教示の対象となる。
【0019】
次に、ロボット1の詳細な構成について説明する。ロボット1は、作業領域5の床面上に配置されて固定される基台10と、基台10に対して直列に連結された3本のアームすなわち第1アーム11、第2アーム12及び第3アーム13と、第3アーム13に取り付けられたハンド14とを備えている。基台10は、昇降モータ(図示せず)によって駆動されて上下方向に昇降する昇降筒15を備えている。各アーム11~13及びハンド14はいずれも基端部と先端部とを有し、第1アーム11の基端部が昇降筒15に対して回転可能に連結することにより第1アーム11は基台10によって保持される。第1アーム11は、昇降筒15の昇降に伴って基台10に対して昇降可能である。昇降筒15の昇降によりアーム11~13及びハンド14が一体的に昇降するが、本実施形態は水平多関節ロボット1の水平面内での教示に関するものであり、昇降筒15による高さ方向の動きは水平面内でのアーム11~13やハンド14の動きに比べて小さいので、以下では、昇降筒15による高さ方向でのロボット1の移動についての詳細は説明しない。
【0020】
第1アーム11は、昇降筒15に内蔵されたモータ21によって駆動されて回転軸J0の周りで水平面内を回転する。第2アーム12の基端部が第1アーム11の先端部に回転可能に連結されており、第2アーム12は、第1アーム11によって保持されるとともに第1アーム11に内蔵されたモータ22によって駆動されて回転軸J1の周りで水平面内を回転する。同様に第3アーム13は、その基端部が第2アーム12の先端部に回転可能に保持されており、第2アーム12に内蔵されたモータ23によって駆動されて回転軸J2の周りで水平面内を回転する。ハンド14は、その基端部が第3アーム13の先端部に回転可能に保持されており、第3アーム13に内蔵されたモータ24によって駆動されて回転軸J3の周りで水平面内を回転する。
【0021】
図1(c)はハンド14の構成を示す拡大平面図である。ハンド14では、その先端部側がフォーク状に2つに分岐してフォーク部20を構成している。ワーク50は、搬送時にはハンド14においてフォーク部20の表面において水平に載置される。フォーク部20における一方の分岐の先端にはレーザー光を発する発光部26が設けられ、他方の分岐の先端には発光部26からのレーザー光が入射する受光部27が設けられており、発光部26と受光部27とによってスルービームセンサ25が構成されている。図において発光部26から受光部27に向かう矢印は、発光部26から受光部27に向かう光の光路28を示している。スルービームセンサ25によれば、受光部27において発光部26からの光を検出できたかどうかによって、発光部26と受光部27との間の光路28を遮る物体の有無を非接触で検知できる。このようなスルービームセンサ25は、ステージ51が半導体ウエハなどのワーク50をスロットごとに格納するカセットであるときに、そのカセットでのスロットごとの在荷状況を調べるマッピングを行うために、半導体ウエハの搬送に用いられるロボット1には一般的に設けられているものである。
【0022】
図には示していないがワーク配置領域53においてステージ51の表面にはいくつかの突起部が形成されており、ワーク50は、この突起部の頂面に接触した状態でワーク配置領域53に載置される。したがって、ワーク50をワーク配置領域53に配置したときにステージ51の表面とワーク50との間には隙間が形成され、ワーク50と接触しないようにこの隙間にハンド14のフォーク部20を差し込み、ハンド14を上昇させることによって、ワーク50をすくい上げてフォーク部20の上面に載置することができる。ワーク50をフォーク部20の上面に載置するためにフォーク部20によってワーク50をすくい上げるような操作を取り上げ動作と呼ぶ。反対に、ワーク50を載置したハンド14をワーク配置領域53の上方に移動させ、そののちハンド14を下降させることにより、ワーク50が突起部の頂面に当接してハンド14から離れ、その後、ハンド14を水平に移動させることによって、ハンド14からワーク50をワーク配置領域53に降ろすことができる。
【0023】
水平多関節型のロボットであるロボット1の動作を説明するために、水平面内にXY座標を設定する。ここでは図示するように作業領域5が長方形の空間であってその長辺に沿って複数のステージ51が配置しているときに、長辺の延びる方向をX方向とし、X方向に垂直な方向をY方向とする。ロボット1がそのハンド14を用いてステージ51にアクセスするときは、ハンド14は、Y方向に移動して接続部52を通過し、ステージ51の内部に進入する。水平面内におけるロボット1の座標系(以下、ロボット座標系と呼ぶ)は、回転軸J0の位置を原点とする上述したようなXY座標系で表される。以下、このようにしてXY座標系が設定された水平面をXY平面と呼ぶ。また、ステージ51に対してワーク50をロードまたはアンロードするときには、ロボット座標系でのステージ位置Cの座標を用いてロボット1を動作させる必要があり、したがって、ロボット1の教示を行うときは、XY平面におけるステージ位置Cの正確な座標を教示する必要がある。なおステージ位置Cの正確な座標は、ハンド14の角度によって表される成分を含んでいてもよい。例えば、ハンド14の中心がステージ位置Cに一致するときのJ3軸のXY座標値と、そのときにハンド14の向きを示す角度値によってステージ位置Cの座標値を表してもよい。
【0024】
図1(b)に示すように、ロボット1にはロボット1の制御を行なうロボット制御装置30が接続しており、ロボット制御装置30は、外部から入力する指令に基づいて、モータ21~24及び昇降用モータ(不図示)を駆動し制御することができる。ロボット制御装置30は、例えば、マイクロコンピュータやマイクロプロセッサなどを用い、これらのマイクロコンピュータやマイクロプロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムにより実現することができる。またロボット制御装置30は、ロボット1を制御して以下に説明する自動教示を実行することができる。
【0025】
次に、ロボット座標系におけるステージ位置Cを正確に求める自動教示について説明する。自動教示では、水平面内でのロボット座標系でのステージ位置Cの座標、すなわち上述したXY平面でのステージ位置Cの座標を求める。本実施形態の自動教示では、特許文献1,2に記載されたものと同様に、ステージ位置Cの教示のために、ステージ51内のワーク配置領域53に、教示用治具40を載置する。図2(a),(b)は、それぞれ、教示用治具40の一例の構成を示す正面図及び平面図である。
【0026】
本実施形態ではワーク50は、例えばほぼ真円の板状形状であるので、ワーク配置領域53も円形の領域であり、その直径はワーク50の直径と一致している。このようなワーク配置領域53に載置される教示用治具40は、真円である円板部41と円板部41の一方の表面から直立する真円柱である円柱部42とからなる。円板部41と円柱部42とは同軸に設けられている。以下、円板部41と円柱部42との共通中心軸のことを教示用治具40の治具中心Oと呼ぶ。円板部41の直径Dは、ワーク配置領域53の直径、すなわちワーク50の直径と等しい。教示用治具40もワーク50と同様に、ハンド14の上に取り上げて載置し、またハンド14からステージ51に降ろすことができる。教示用治具40をハンド14の上に載置したり、ワーク配置領域53に載置するときは、円板部41と円柱部42のうち円板部41が下側となる。
【0027】
図3は、本実施形態における自動教示を説明する図である。教示用治具40は、その治具中心Oがステージ位置Cに正確に一致するように、ワーク配置領域53に載置される。教示用治具40をワーク配置領域53に載置する作業自体は人手で行ってもよいが、これ以降の作業はロボット制御装置30において自動教示用のプログラムを実行することにおって実施される。
【0028】
作業領域5におけるロボット1の設置位置及び設置方向と、作業領域5に対するステージ51の配置とから、ロボット座標系におけるステージ位置Cの大まかな座標値は既知である。そこでステージ位置Cの大まかな座標値を用いてロボット1を動作させ、図3(a)に示すように、異なる3以上の方向からハンド14を教示用治具40の円柱部42に向けて接近させる。ハンド14を教示用治具40の円柱部42に接近させると、スルービームセンサ25の光路28が円柱部42によって遮られる。ハンド14の移動中に光路28が遮られる瞬間において、その光路28は、XY平面において円柱部42の外周を表す円の接線と一致することになる。光路28が遮られた瞬間のロボット1の各軸の角度はモータ21~24に接続されたエンコーダの出力から知ることができ、また、ロボット1のアーム11~13やハンド14の長さは既知であるから、円柱部42によって光路28が遮られたことに基づいて、XY平面において円柱部42が表す円の接線の方程式を得ることができる。
【0029】
異なる3つの方向からハンド14を円柱部42に接近させれば円の接線の方程式を3つ得られ、これらの3つの方程式から円の中心、すなわちXY平面における教示用治具40の治具中心Oの座標を決定することができる。異なる4以上の方向からハンド14を円柱部42に接近させたことにより接線の方程式が4以上得られているときは、最小二乗法などを用いて治具中心Oのより正確な座標を決定すればよい。このようにして決定された治具中心Oの座標のことを第1の座標と呼ぶ。教示用治具40は、その治具中心Oがステージ位置Cと正確に一致するようにステージ51のワーク配置領域53に載置されているから、治具中心Oの座標すなわち第1の座標はステージ位置Cの座標そのものであり、第1の座標を求めることでステージ位置Cの自動教示が行なえたことになる。したがって、第1の座標を決定する工程を自動教示工程と呼ぶ。自動教示工程で得られたステージ位置Cのロボット座標系での座標は、ロボット制御装置30内に格納される。
【0030】
しかしながらここで説明した自動教示工程によって決定されたステージ位置Cの座標値には、センサの検知誤差やロボットの絶対位置誤差などに起因する計算誤差が含まれている。そこでこの計算誤差を補償してステージ位置Cを正確に教示するため、本実施形態では、図3(b)に示すように、自動教示工程で得られた第1の座標を用いて教示用治具40に対してハンド14を接近させ、図3(c)に示すように、ステージ51から教示用治具40を取り上げてハンド14上に積載(すなわちロードまたはゲット)する。このとき、教示用治具40が、ハンド14においてあらかじめ定められている位置、すなわち既定の位置に正確に積載される必要がある。例えば、治具中心Oがハンド14の中心に一致しているか、ハンドの中心からの位置関係が変化しない既定の位置に一致している必要がある。そのため、ハンド14としてエッジグリップ型のものを用いることが好ましい。エッジグリップ型のハンドでなくても、ハンド14上に教示用治具40を載置した状態で手作業で教示用治具40の位置を修正してよい。
【0031】
教示用治具40を積載した状態で、ステージ51からハンド14を作業領域5まで引き戻し、その後、再びステージ51内にハンド14を進入させる制御を行ない、先に求めた第1の座標にハンド14を移動させてハンド14から教示用治具40をステージ51に降ろす(すなわちアンロードまたはプットする)。教示用治具40が降ろして無積載状態となったハンド14は、ステージ51から退出させられる。このようにハンド14上に教示用治具40を取り上げて載置し、ハンド14を作業領域まで引き戻したのちにハンド14を第1の座標に移動させて教示用治具をハンド14から降ろす工程を第1の取り置き工程と呼ぶ。教示用治具40を積載したまま作業領域5側までハンドを後退させ、その後、再びステージ51内にハンド14を進入させるのは、第1の座標に含まれている種々の誤差を顕在化させるためである。
【0032】
図3(d)は、第1の取り置き工程によってステージ51に降ろされた状態の教示用治具40を示しており、図において破線の円は、ステージ51のワーク配置領域53を示している。図示されるように、教示用治具40の降ろさされた位置とワーク配置領域53とはずれている。このずれは、第1の座標計算処理における計算誤差によるものである。ずれの量は、ステージ位置Cと降ろされた教示用治具40の治具中心Oとの間の距離で表される。そこでずれの量を知るために、次に、図3(e)に示すように、ワーク配置領域53からずれた位置に降ろされている教示用治具40の円柱部42に対し、再び、異なる3以上の方向からハンド14を接近させ、自動教示工程のときと同様の処理を行って、教示用治具40の治具中心Oの座標を求める。こうして求めた治具中心Oの座標を第2の座標とし、第2の座標を求める処理を第1の誤差検出工程と呼ぶ。第1の座標と第2の座標との差は、ステージ位置Cと、ステージ51に降ろされた状態での教示用治具40の治具中心Oとのずれを表わし、第1の座標に含まれる誤差を表す。自動教示工程で得られたステージ位置Cの座標から、誤差すなわち第1の座標と第2の座標との差を減算することによって、自動教示工程における誤差を補償し、ロボット座標系におけるステージ位置Cのより正確な座標値を求めることができる。自動教示工程においてロボット制御装置30内に格納されたステージ位置Cの座標値は、このようにして誤差の補償がなされた後のステージ位置Cの座標値によって書き換えられる。
【0033】
第1の誤差検出工程を経てロボット座標系におけるステージ位置Cのより正確な座標値を求めることができたら、その座標値を利用して、図3(d)に示すようにステージ位置Cから治具中心Oがずれている状態でステージ51に降ろされている教示用治具40を再びハンド14に載せてハンド14を移動させることによって、ワーク配置領域53に正確に一致する位置に教示用治具40を降ろすことができる。すなわち、ステージ位置Cに治具中心Oが位置するように教示用治具40の位置を変更することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の自動教示方法によれば、ステージ位置Cをより正確に教示することが可能になり、搬送ミスなどを防いで装置の稼働率を高めることが可能になる。
【0035】
半導体ウエハなどのワークの搬送に用いられるロボットには、例えばダブルハンドロボットと呼ばれる、ハンドを2つ備えるロボットがある。そのようなロボットに対しても本発明に基づく自動教示方法を適用することができる。図4は、2つのハンド14,16を備えるロボットの例を示す図であって、(a)は平面図、(b)はアーム11~13とハンド14,16とを伸ばした状態を示す概略断面図である。
【0036】
図4に示すロボット1は、図1に示すロボット1において、第3アーム13に対し、ハンド14に加えてハンド16を取り付けたものである。ハンド14と同様にハンド16も、その基端部が第3アーム13の先端部に回転可能に保持されており、第3アーム13に内蔵されたモータ29によって駆動されて回転軸J3の周りで水平面内を回転する。2つのハンド14,16のうち、ハンド14の方がハンド16よりも上方にあるから、ハンド14のことを上側のハンドと呼び、ハンド16のことを下側のハンドと呼ぶ。ロボット1がステージ51にアクセスするときは、両方のハンド14,16が同時にステージ51内に進入することはない。図4(a)に示されるように例えばハンド14がステージ51内に進入するときは、ハンド16は、J3軸の周りでハンド14となす角が鈍角になるように配向する。また、ハンド14,16は同一の形状であるが、スルービームセンサ25は上側のハンド14にのみ設けられている。
【0037】
ここで、上側のハンド14及び下側のハンド16を用いてステージ51にアクセスするときに用いる教示データについて説明する。図5は、上側のハンド14及び下側のハンド16についてのステージ位置Cに対する教示データの例を示している。これらの教示データは、ロボット制御装置30に格納される。上側のハンド14によってステージ51にアクセスするときは、図5において「上側のハンド」の欄に記載された教示データを使用し、下側のハンド16によってステージ51にアクセスするときは、「下側のハンド」の欄に記載された教示データを使用する。「Z座標値」は、上下方向(高さ方向)での各ハンド14,16の位置を示す。上側のハンド14と下側のハンド16との高さの差が10mmであるとすると、ステージ51にアクセスするためには、下側のハンド16を用いるときは、上側のハンド14を用いるときに比べてアーム11~13及びハンド14,16を10mm高い位置にしなければならないから、そのことがZ座標値として示される数値にも反映している。「上側のハンドの角度」及び「下側のハンドの角度」は、ステージ51に対してアクセスするときの対応するハンドの向きを角度により表示したものである。ステージ51にアクセスするときのハンドの角度が90°であるとすると、図5に示すように、2つのハンド14,16のうちの実際にステージ51にアクセスする方のハンドの角度は90°とされ、アクセスしない方のハンドの角度は例え220°とされる。したがって、上側のハンド14に対する教示データにおけるZ軸座標値に、上側のハンド14と下側のハンド16との高さの差に相当するオフセット値を加算し、さらに上側のハンドの角度の値と下側のハンドの角度の値とを入れ替えたものが、下側のハンド16に対する教示データとなる。上側のハンド14についての自動教示が終了した時点で、上側のハンド14だけでなく下側のハンド16の教示データを作成してロボット制御装置30に格納することができる。
【0038】
上側のハンド14と下側のハンド16の教示データにおける上述した関係を念頭において、図4に示すロボット1に対する本発明に基づく自動教示方法の適用について説明する。スルービームセンサ25は上側のハンド14にしか取り付けられていないので、図3を用いて説明した自動教示工程、第1の取り置き工程及び第1の誤差検出工程は、上側のハンド14を用いて実行される。その結果、上側のハンド14に関しては、ステージ位置Cの座標値に関して正確な教示がなされたことになる。図5を用いて説明した関係を利用すれば、下側のハンド16についてもステージ位置Cの座標に関しての教示が行われたことになる。しかしながら、この段階では、下側のハンド16に関連した誤差の補償はなされていない。そこで下側のハンド16に関連した誤差の補償を行う必要がある。
【0039】
下側のハンド16に関連した誤差の補償のためには、既に上側のハンド14については第1の誤差検出工程まで終了してステージ位置Cの正確な座標値が求められているとして、ステージ位置Cに治具中心Oが一致するように教示用治具40をステージ51に配置する。そののち、ステージ51から下側のハンド16の上に教示用治具40を取り上げて載置する。このとき、ハンド16において規定の位置に教示用治具40が載置される必要がある。そしてステージ位置Cの座標値を用いて下側のハンド16を移動させ、ハンド16からステージ51に教示用治具40を降ろす。このような工程を第2の取り置き工程と呼ぶ。上側のハンド14に対する下側のハンド16の位置に誤差がなければ、元の位置に教示用治具40は降ろされることになるが、ハンド16の位置に誤差があると、元の位置からずれた位置に教示用治具40は降ろされる。第1の取り置き工程とは異なって第2の取り置き工程では、ハンド16を作業領域5まで引き戻す必要はない。
【0040】
第2の取り置き工程によってステージ上51上に降ろされた教示用治具40の治具中心Oとステージ位置Cとのずれは、既に正確なステージ位置Cに対して教示済みである上側ハンド14に対する下側ハンド16の誤差と一致する。そこで第2の取り置き工程によってステージ51に降ろされた教示用治具40の円柱部42に対し、異なる3以上の方向からハンド14を接近させ、自動教示工程のときと同様の処理を行って、教示用治具40の治具中心Oの座標を求める。こうして求めた治具中心Oの座標を第3の座標とし、第3の座標を求める処理を第2の誤差検出工程と呼ぶ。先に説明した第1の誤差検出工程を経て誤差の補償がなされているステージ位置Cの座標と第3の座標との差は、既に正確なステージ位置Cに対して教示済みである上側ハンド14に対する下側ハンド16の誤差を表わす。そこで誤差の補償後のステージ位置Cの座標から、このステージ位置Cの座標と第3の位置との差を減算することによって、下側のハンド16に関しても、ステージ位置Cについての正確な教示が行われたことになる。このように補償が行われたデータによって、既にロボット制御装置30に格納されている教示データが書き換えられる。
【0041】
以上説明したように本実施形態の自動教示方法によれば、2つのハンド14,16を備え、下側のハンド16にはスルービームセンサ25が設けられていないようなロボット1において、両方のハンド14,16に関してステージ位置Cの座標における自動教示におる誤差を補償することができ、より正確な自動教示を行うことができる。
【0042】
1…ロボット;5…作業領域;10…基台;11…第1アーム;12…第2アーム;13…第3アーム;14,16…ハンド;15…昇降筒;20…フォーク部;21~24,29…モータ;25…スルービームセンサ;26…発光部;27…受光部;28…光路;30…ロボット制御装置;40…教示用治具;41…円板部;43…円柱部50…ワーク;51…カセット;52…ステージ;53…ワーク配置領域;C…ステージ位置;O…治具中心。
図1
図2
図3
図4
図5