(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154990
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】コンバータ装置及びその制御方法並びにモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241024BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 E
H02M7/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069280
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀男
(72)【発明者】
【氏名】大野 賢三
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
【Fターム(参考)】
5H006AA01
5H006BB05
5H006CA01
5H006CA02
5H006CB01
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC05
5H730AA02
5H730AS04
5H730AS13
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB82
5H730BB89
5H730CC02
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD21
5H730FD61
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】高調波規制を満足しながら、スイッチング損失を効果的に低減させること。
【解決手段】コンバータ装置2は、交流電源4から入力された交流電力を直流電力に変換して出力する整流回路10と、整流回路10の出力側に接続されるとともに、スイッチング素子12を有する昇圧チョッパ回路11と、昇圧チョッパ回路11の出力側に接続されるとともに、スイッチング素子12と並列に接続されたコンデンサ15と、スイッチング素子12の駆動を制御するコンバータ制御部20とを備えている。コンバータ制御部20は、スイッチング素子12のオフ状態を連続的に維持する休止期間を設けた部分スイッチング制御を行い、スイッチング素子12のスイッチング周波数は、高調波規制の規制値に対する余裕度が所定値以上であり、かつ、スイッチング損失を最小化するスイッチング周波数の値に基づいて設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換して出力する整流回路と、
前記整流回路の出力側に接続されるとともに、スイッチング素子を有する昇圧チョッパ回路と、
前記昇圧チョッパ回路の出力側に接続されるとともに、前記スイッチング素子と並列に接続されたコンデンサと、
前記スイッチング素子の駆動を制御するコンバータ制御部と
を備え、
前記コンバータ制御部は、前記スイッチング素子のオフ状態を連続的に維持する休止期間を設けた部分スイッチング制御を行い、
前記スイッチング素子のスイッチング周波数は、高調波規制の規制値に対する余裕度が所定値以上であり、かつ、スイッチング損失を最小化するスイッチング周波数の値に基づいて設定されているコンバータ装置。
【請求項2】
前記コンバータ制御部は、
目標電圧を設定する目標電圧設定部と、
前記整流回路の出力電圧と前記目標電圧との比較に基づいて前記スイッチング素子の駆動制御信号を生成する制御信号生成部と
を備え、
前記目標電圧設定部は、前記整流回路の出力電圧から前記目標電圧を算出するための係数を有し、前記係数を前記出力電圧に乗じることにより前記目標電圧を設定する請求項1に記載のコンバータ装置。
【請求項3】
前記昇圧チョッパ回路は、高周波リアクトルを有している請求項1に記載のコンバータ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のコンバータ装置と、
前記コンバータ装置から出力された直流電圧を交流電圧に変換してモータに供給するインバータ装置と
を備えるモータ駆動装置。
【請求項5】
前記コンバータ制御部は、モータ回転数が予め設定されている低速閾値未満である場合に、前記休止期間を伴う部分スイッチング制御を行い、前記モータ回転数が前記低速閾値以上である場合に、前記休止期間を伴わないフルスイッチング制御を行う請求項4に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記コンバータ制御部は、モータ回転数が予め設定されている高速閾値以上である場合に、前記モータ回転数が前記低速閾値未満である回転数領域で使用される低速キャリア周波数よりも周波数の高い高速キャリア周波数を用いてフルスイッチング制御を行う請求項5に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記コンバータ制御部は、モータ回転数に応じて設定される目標直流電圧と、前記整流回路の出力電圧との比較に基づいて休止期間を設定する休止期間設定部を備える請求項4に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換して出力する整流回路と、前記整流回路の出力側に接続されるとともに、スイッチング素子を有する昇圧チョッパ回路と、前記昇圧チョッパ回路の出力側に接続されるとともに、前記スイッチング素子と並列に接続されたコンデンサとを備えるコンバータ装置の制御方法であって、
前記スイッチング素子のオフ状態を連続的に維持する休止期間を設けた部分スイッチング制御を行い、
前記スイッチング素子のスイッチング周波数は、高調波規制の規制値に対する余裕度が所定値以上であり、かつ、スイッチング損失を最小化するスイッチング周波数の値に基づいて設定されているコンバータ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンバータ装置及びその制御方法並びにモータ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバータ装置の制御方法の一つとして、特許文献1に開示される制御方法が知られている。特許文献1には、昇圧チョッパ回路を備えるコンバータ装置において、三相交流整流回路の出力直流電力と、平滑コンデンサの端子電圧とを用いてPWM制御を行い、昇圧チョッパ回路のスイッチング制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、スイッチング素子のスイッチングによって昇圧や力率改善を行うコンバータ装置においては、スイッチング素子のオンオフによって発生するスイッチング損失が問題となる。スイッチング損失を低減させるためには、スイッチング周波数を低減させればよい。しかしながら、スイッチング周波数を低減させると、入力電流の歪みが大きくなり、例えば、国際電気標準会議(IEC)、JIS等で定められる高調波規制を満足できなくなるおそれがある。また、スイッチング周波数を低くすると、リアクトルの電流リプルが大きくなり、鉄損が増加するおそれもある。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、高調波規制を満足しながら、スイッチング損失を効果的に低減させることのできるコンバータ装置及びその制御方法並びにモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換して出力する整流回路と、前記整流回路の出力側に接続されるとともに、スイッチング素子を有する昇圧チョッパ回路と、前記昇圧チョッパ回路の出力側に接続されるとともに、前記スイッチング素子と並列に接続されたコンデンサと、前記スイッチング素子の駆動を制御するコンバータ制御部とを備え、前記コンバータ制御部は、前記スイッチング素子のオフ状態を連続的に維持する休止期間を設けた部分スイッチング制御を行い、前記スイッチング素子のスイッチング周波数は、高調波規制の規制値に対する余裕度が所定値以上であり、かつ、スイッチング損失を最小化するスイッチング周波数の値に基づいて設定されているコンバータ装置である。
【0007】
本開示の一態様は、上記コンバータ装置と、前記コンバータ装置から出力された直流電圧を交流電圧に変換してモータに供給するインバータ装置とを備えるモータ駆動装置である。
【0008】
本開示の一態様は、交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換して出力する整流回路と、前記整流回路の出力側に接続されるとともに、スイッチング素子を有する昇圧チョッパ回路と、前記昇圧チョッパ回路の出力側に接続されるとともに、前記スイッチング素子と並列に接続されたコンデンサとを備えるコンバータ装置の制御方法であって、前記スイッチング素子のオフ状態を連続的に維持する休止期間を設けた部分スイッチング制御を行い、前記スイッチング素子のスイッチング周波数は、高調波規制の規制値に対する余裕度が所定値以上であり、かつ、スイッチング損失を最小化するスイッチング周波数の値に基づいて設定されているコンバータ装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0009】
本開示のコンバータ装置及びその制御方法並びにモータ駆動装置によれば、高調波規制の規制値を満足しながら、スイッチング損失を効果的に低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るモータ駆動装置の概略構成を示した図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係るコンバータ制御部が備える機能を示した機能構成図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る部分スイッチング制御時における駆動期間の出力電圧、キャリア波、及び駆動制御信号の関係を示した図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係る部分スイッチング制御時における(a)三相電源電圧、(b)入力電流、(c)リアクトル電流、(d)駆動制御信号の波形の一例を示した図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係るフルスイッチング制御時における(a)三相電源電圧、(b)入力電流、(c)リアクトル電流、(d)駆動制御信号の波形の一例を示した図である。
【
図6】モータ回転数に対する制御モードの切り替えについて説明するための図である。
【
図7】本開示の変形例に係るモータ駆動装置の概略構成を示した図である。
【
図8】本開示の第2実施形態に係るコンバータ制御部が備える機能を示した機能構成図である。
【
図9】本開示の第2実施形態に係る休止期間と駆動期間の設定方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
以下に、本開示の第1実施形態に係るコンバータ装置及びその制御方法並びにモータ駆動装置について、図面を参照して説明する。以下の説明において、モータ駆動装置は、例えば、家庭用空気調和機に適用される場合を例示して説明するが、本開示のコンバータ装置及びその制御方法並びにモータ駆動装置はその他の機器に対しても汎用的に広く適用可能である。
【0012】
図1は、本実施形態に係るモータ駆動装置1の概略構成を示した図である。
図1に示すように、本実施形態に係るモータ駆動装置1は、コンバータ装置2及びインバータ装置3を主な構成として備えている。コンバータ装置2は、整流回路10、昇圧チョッパ回路11、コンデンサ15及びコンバータ制御部20を主な構成として備えている。
【0013】
整流回路10は、例えば、交流電源4から入力された三相の交流電力を直流電力に変換して出力する。例えば、整流回路10は、2つで1対をなすダイオード素子がブリッジ接続された構成とされている。なお、整流回路10に用いられる素子は、ダイオードに限られず、サイリスタなどの整流素子を用いてもよい。なお、入力電圧は、三相に限られない。例えば、二相、四相であってもよい。
【0014】
昇圧チョッパ回路11は、例えば、スイッチング素子12、リアクトル13、及びダイオード14を備えている。
スイッチング素子12は、整流回路10の出力端子間に接続されている。スイッチング素子12は、例えば、IGBT、FET等の半導体素子である。また、スイッチング素子12として、高周波でもスイッチング損失を効果的に低減することのできるSiC等のワイドギャップ半導体を用いることとしてもよい。スイッチング素子12のオンオフは、後述するコンバータ制御部20によって制御される。
【0015】
スイッチング素子12の出力側には、スイッチング素子12と並列にコンデンサ15が接続されている。コンデンサ15は、スイッチング素子12のオンオフに応じて、電荷の充電及び放電を行う。
【0016】
リアクトル13は、例えば、整流回路10とスイッチング素子12との間の電力線に設けられている。リアクトル13は、例えば、ダストコア、スーパーコア(6.5%ケイ素鋼板)、アモルファス等の材料から構成された高周波リアクトルを採用可能である。
【0017】
図1では、リアクトル13は、高圧側電力線に設けられているが、これに限られない。例えば、リアクトル13は、整流回路10とスイッチング素子12との間の低圧側電力線に設けられてもよいし、高圧側と低圧側の両方(計2個)に設けられてもよい。
【0018】
スイッチング素子12とコンデンサ15との間の高圧側電力線にはダイオード14が設けられている。
図1では高圧側電力線にダイオード14を設ける場合を例示しているが、ダイオード14は、低圧側電力線に設けられていてもよく、また、高圧側電力線と低圧側電力線との両方に設けられていてもよい。ダイオード14によって、コンデンサ15に充電された電荷の逆流が防止される。なお、ダイオード14に代えて、他の整流素子を用いてもよい。
【0019】
更に、コンバータ装置2は、交流電源4から整流回路10に入力される入力電圧V1を検出し、コンバータ制御部20に出力する電圧検出部16、整流回路10から出力される出力電圧V2を検出し、コンバータ制御部20に出力する電圧検出部17を備えている。入力電圧V1は、例えば、3相のうちのいずれか2相の相間電圧である。また、電圧検出については、公知の推定技術を用いることとしてもよい。例えば、入力電圧V1から出力電圧V2を推定することとしてもよい。この場合、電圧検出部17は省略可能である。
【0020】
コンバータ制御部20は、スイッチング素子12の駆動を制御する。コンバータ制御部20は、後述するように、スイッチング素子12のオフ状態を連続的に維持する休止期間を設けた部分スイッチング制御を行う。以下、説明の便宜上、部分スイッチング制御において、スイッチングを停止している期間を「休止期間」、スイッチングを行っている期間を「駆動期間」という。
【0021】
コンバータ制御部20は、例えば、マイクロコンピュータであり、CPUがROMなどに記憶された制御プログラムをRAMに読みだして実行することにより、後述する各部の機能が実現される。なお、コンバータ制御部20は、各種機能を実現するアナログ回路やデジタル回路等として構成されていてもよい。
駆動回路18は、コンバータ制御部20から供給される駆動制御信号Vpamに基づいてスイッチング素子(例えば、IGBT)のゲート入力信号を生成し、スイッチング素子12を駆動する。
【0022】
インバータ装置3は、コンバータ装置2から出力された直流電圧を三相交流電圧に変換してモータ5に出力する。本実施形態において、モータ5は、家庭用空気調和機に用いられる圧縮機モータである。インバータ装置3は、例えば、6つのスイッチング素子を有する三相ブリッジ型のインバータ回路31と、インバータ回路31を制御するインバータ制御部32とを備えている。インバータ回路31が備える各スイッチング素子は、例えば、インバータ制御部32から出力されるPWM信号に基づいて駆動される。
【0023】
図2は、本実施形態に係るコンバータ制御部20が備える機能を示した機能構成図である。
図2に示すように、コンバータ制御部20は、目標電圧設定部21と、キャリア波(三角波)生成部22と、制御信号生成部23と、フィルタ部24とを備えている。
【0024】
目標電圧設定部21は、例えば、目標電圧Vtarを設定する。例えば、目標電圧設定部21は、整流回路10の出力電圧V2から目標電圧Vtarを算出するための係数Kを有し、係数Kを用いて目標電圧Vtarを設定する。ここで、係数Kは、1よりも大きい値に設定されている。また、係数Kについては、事前に最適化処理を行い、後述するキャリア周波数との兼ね合いから最適化範囲内で決定すればよい。
【0025】
キャリア波生成部22は、波高値をVtarとしたキャリア波Vsを生成する。このように、目標電圧Vtarの波高値を持つキャリア波とすることで、スイッチング素子のオン期間に対する休止期間の比率を一定にすることができる。
ここで、キャリア波の周波数であるキャリア周波数(スイッチング周波数)は、高調波規制の規制値に対する余裕度が所定値以上であり、かつ、スイッチング損失を最小化するスイッチング周波数の値に基づいて設定されている。例えば、キャリア周波数は、リアクトル13を流れるリアクトル電流に含まれる高調波、休止期間の長さ、及びスイッチング損失をパラメータとして最適化処理された値に基づいて設定されている。
【0026】
すなわち、キャリア周波数を低く、若しくは、休止期間をなくす又は短くすれば、スイッチング損失は低減するが、その一方で、リアクトルを流れるリアクトル電流の歪み(リップル)が大きくなり、高調波規格の規制値への余裕度が減少する。そこで、本実施形態では、これらの3つの要素をパラメータとして、事前にシミュレーションや試験を行い、所望の高調波規格の規制値への余裕度が所定値以上であり、かつ、スイッチング損失を可能な限り低減できるようなキャリア周波数の数値範囲を特定し、この数値範囲から採用するキャリア周波数を決定する。また、上記3つの要素だけでなく、モータ5の回転数、要求出力電圧等を要素として含めて最適化処理を行ってもよい。
【0027】
上記高調波規制の規制値の一例として、例えば、「JIS C 61000-3-2」に規定されるエアコンディショナに適用する限度値、「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」に規定される限度値、EN規格の高調波電流規制である「EN61000-3-2」に規定される限度値、EMC(Electromagnetic compatibility)の電磁両立性(EMC)-第3-2部:限度値-高調波電流エミッションの限度値(機器の入力電流,相当たり16A以下)等が挙げられる。
【0028】
制御信号生成部23は、キャリア波生成部22によって生成されたキャリア波Vsと電圧検出部16によって検出された出力電圧V2とを比較することにより、スイッチング素子12の駆動制御信号Vpamを生成する。
図3は、出力電圧V2、キャリア波Vs、及び駆動制御信号Vpamの関係を示した図である。
図3に示すように、制御信号生成部23は、キャリア波Vsが出力電圧V2以上のレベルとなっている間はHighレベル「1」、キャリア波Vsが出力電圧V2以下のレベルとなっている間はLowレベル「0」となる矩形波信号である駆動制御信号Vpamを生成する。制御信号生成部23は、生成した駆動制御信号Vpamを駆動回路18に出力する。なお、
図3では、説明の便宜上、出力電圧V2を直線として描いているが、実際には三相整流電圧のリップルが含まれていることから、例えば、
図9に示すような波形となる。
【0029】
フィルタ部24は、予め設定された休止期間において、制御信号生成部23から入力された駆動制御信号VpamをLowレベルにして駆動回路18に出力する。例えば、休止期間は、交流電圧の1周期において所定の位相範囲として設定されている。ここで、休止期間は、交流電圧の1周期において、複数の位相範囲として設定されていてもよい。このように、複数の位相範囲として設定することで、交流電圧の1周期において、駆動期間と休止期間とが複数回にわたって切り替えられることとなる。
フィルタ部24は、電圧検出部16から入力される入力電圧V1において、予め設定されている休止期間においては、Lowレベル「0」の駆動制御信号Vpamを出力し、休止期間以外の期間、すなわち、駆動期間においては、制御信号生成部23から入力された駆動制御信号Vpamを出力する。
【0030】
駆動回路18は、フィルタ部24から出力された駆動制御信号Vpamに基づいて、スイッチング素子12のオンオフ制御を行う。これにより、駆動制御信号VpamがHighレベルのときにはスイッチング素子12がオン状態に、駆動制御信号VpamがLowレベルのときにはスイッチング素子12がオフ状態に制御される。
【0031】
次に、本実施形態に係るモータ駆動装置1の動作について説明する。
まず、交流電源4から出力された交流電圧は、整流回路10によって全波整流され、リアクトル13を介してスイッチング素子12、例えば、IGBTのコレクタ・エミッタ間に供給される。
【0032】
一方、交流電源4から整流回路10に入力される入力電圧V1、整流回路10の出力電圧V2は、それぞれ電圧検出部16、17によって検出され、コンバータ制御部20に出力される。
目標電圧設定部21は、電圧検出部17によって検出された出力電圧V2に係数Kを乗じることにより目標電圧Vtarを算出する。
【0033】
キャリア波生成部22は、入力電圧V1に同期し、予め設定された所定の周波数であって、波高値として目標電圧Vtarを有するキャリア波Vsを生成する。
制御信号生成部23は、出力電圧V2とキャリア波Vsとを比較することにより、矩形波信号である駆動制御信号Vpamを生成する。
フィルタ部24は、電圧検出部16によって検出された入力電圧V1に基づいて、休止期間として設定されている位相範囲において、Lowレベル「0」の駆動制御信号Vpamを出力し、休止期間以外の位相範囲において、制御信号生成部23によって生成された駆動制御信号Vpamを出力する。
駆動回路18は、フィルタ部24からの駆動制御信号Vpamに基づくデューティ比でスイッチング素子12をオン/オフ制御する。ここで、インバータ装置3に供給される出力電圧の大きさは、スイッチング素子12をオンオフするデューティ比に応じて決定される。
【0034】
このようにして、スイッチング素子12がオンすると、リアクトル13を流れる電流が増加し、リアクトル13にエネルギーが蓄積される。そして、スイッチング素子12がオフされると、リアクトル13に蓄積されていたエネルギーが放出され、ダイオード14を通じてコンデンサ15を充電する。そして、コンデンサ15に充電された電圧がインバータ装置3のインバータ回路31に出力電圧として供給される。
【0035】
インバータ装置3では、インバータ制御部32によってインバータ回路31のスイッチング素子が所定のデューティ比でオンオフされることにより、三相交流電圧が生成され、この三相交流電圧がモータ5に供給されることにより、モータ5が回転制御される。
【0036】
図4は、本実施形態に係る部分スイッチング制御時における(a)三相電源電圧、(b)入力電流、(c)リアクトル電流、(d)駆動制御信号Vpamの波形の一例を示した図である。また、
図5は、休止期間を設けないフルスイッチング制御時における(a)三相電源電圧、(b)入力電流、(c)リアクトル電流、(d)駆動制御信号Vpamの波形の一例を示した図である。
図4に示すように、本実施形態に係る(b)入力電流、(c)リアクトル電流は、
図5に示した(b)入力電流、(c)リアクトル電流に比べて多少歪みが大きいが、いずれも高調波規制値以内である。また、本実施形態によれば、休止期間を設けていることから、休止期間を設けていない場合と比べて、スイッチング損失を効果的に低減させることが可能となる。
【0037】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、スイッチングを行わない休止期間を設ける部分スイッチング制御を行うので、スイッチング損失を低減することができる。更に、スイッチング素子12のスイッチング周波数が、高調波規制の規制値に対する余裕度が所定値以上であり、かつ、スイッチング損失を最小化するスイッチング周波数の値に基づいて設定されている。これにより、高調波規制の規制値を満足しながら、スイッチング損失を効果的に低減させることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態によれば、昇圧チョッパ回路11を構成するリアクトル13として、例えば、ダストコア、スーパーコア(6.5%ケイ素鋼板)、アモルファス等の材料から構成された高周波リアクトルを採用する。これにより、インダクタンスを小さくすることができ、スイッチングの際のリアクトルの鉄損を低減することができる。また、高周波リアクトルを採用することにより、重量比率の大きいリアクトルを小型化及び軽量化することが可能となる。これにより、スイッチング周波数を低減することによるリアクトルへの鉄損の増加や温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
【0039】
〔変形例1〕
例えば、コンバータ制御部20は、モータ回転数を入力信号として取得し、モータ回転数に基づいて上述した部分スイッチング制御を行うか否かを決定することとしてもよい。例えば、
図6に示すように、コンバータ制御部20は、休止期間を伴う部分スイッチング制御を行うモータ回転数の低速閾値R1を有しており、モータ回転数が低速閾値R1未満の低速領域Aにおいて、上述した部分スイッチング制御(例えば、
図4参照)を行うこととし、モータ回転数が低速閾値R1以上の場合に、休止期間を設けないフルスイッチング制御(例えば、
図5参照)を行うこととしてもよい。
【0040】
〔変形例2〕
上記変形例1に加えて、コンバータ制御部20は、例えば、モータ回転数を入力信号として取得し、モータ回転数に基づいて高速スイッチングを行うか否かを決定することとしてもよい。例えば、
図6に示すように、コンバータ制御部20は、高速スイッチングを行うモータ回転数の高速閾値R2を有しており、モータ回転数が高速閾値R2以上の高速領域Bにおいて、予め設定されている高速領域用のキャリア周波数を用いてフルスイッチング制御(例えば、
図5参照)を行うこととしてもよい。ここで、高速領域用のキャリア周波数は、モータ回転数が低速閾値R1未満の低速領域Aで使用されるキャリア周波数よりも高い周波数に設定されている。
【0041】
このように、変形例2によれば、コンバータ制御部20は、低速領域Aの低速キャリア周波数と、高速領域Bの高速キャリア周波数とを保有しており、モータ回転数に応じてキャリア周波数を切り替える。なお、低速領域Aと高速領域Bとの間の中間領域については、低速キャリア周波数を適用することとしてもよいし、高速キャリア周波数を適用することとしてもよい。また、中間領域用のキャリア周波数を更に保有しており、多段階にキャリア周波数を変更することとしてもよい。
【0042】
変形例2によれば、モータ回転数が低速閾値R1未満(
図6における低速領域A)の場合には、部分スイッチング制御を行うとともに、高調波規制に対する高調波余裕度を考慮してスイッチング周波数を可能な限り低減させる。これにより、APF(通年エネルギー消費効率)への寄与率の高い低速領域Aにおいて効果的にスイッチング損失を低減させることが可能となり、APFを効果的に向上させることが可能となる。
また、モータ回転数が予め設定されている高速閾値R2以上である高速領域Bにおいては、低速キャリア周波数よりも周波数の高い高速キャリア周波数を用いてフルスイッチング制御を行うので、入力電流の歪みを低減でき、高周波を抑制することが可能となる。また、高速領域(高出力)で高速キャリア周波数に切り替えることにより、リアクトルの損失(鉄損)を低減し、発熱を抑えることが可能となる。
なお、
図6では、低速閾値R1と高速閾値R2とを異なる値に設定していたが、同じ値に設定されていてもよい。この場合には、中間領域がなくなり、2段階でキャリア周波数が切り替えられることとなる。
【0043】
〔変形例3〕
上述した実施形態では、1つの昇圧チョッパ回路11を備えるコンバータ装置2について説明したが、この例に限られない。例えば、2つ以上の昇圧チョッパ回路を備えていてもよい。例えば、
図7に示すように、モータ駆動装置1aは、2つの昇圧チョッパ回路11a、11bを備えるインターリーブ方式のコンバータ装置2aを備えていてもよい。
コンバータ装置2aにおいて、昇圧チョッパ回路11aは、スイッチング素子12a、リアクトル13a及びダイオード14aを備えている。同様に、昇圧チョッパ回路11bは、スイッチング素子12b、リアクトル13b及びダイオード14bを備えている。
【0044】
コンバータ制御部20aは、スイッチング素子12a、12bのスイッチング制御を行う。具体的には、以下のような制御を行うための駆動制御信号Vpam’を生成し、生成した駆動制御信号Vpam’を駆動回路18aに出力する。駆動回路18aは、駆動制御信号Vpam’に基づいてスイッチング素子12a、12bのオンオフ制御を行う。
【0045】
コンバータ制御部20aは、モータ出力(モータ5の出力電力)が予め設定されている低出力閾値未満の場合に、スイッチング素子12aのみを駆動させ、モータ出力が低出力閾値以上の場合に、スイッチング素子12a及びスイッチング素子12bを駆動させる。2つのスイッチング素子12a、12bを駆動する場合、コンバータ制御部20aは、例えば、交流電源4の入力電圧の半周期毎に駆動するスイッチング素子を切り替える。例えば、入力電圧V1の位相0°から180°においてスイッチング素子12aをフルスイッチング制御させる一方でスイッチング素子12bのスイッチングを停止させ、入力電圧V1の位相180°~360°においてスイッチング素子12bをフルスイッチング制御する一方でスイッチング素子12aのスイッチングを停止させる。
【0046】
コンバータ制御部20aによって生成された駆動制御信号Vpam’は、駆動回路18aに出力される。駆動回路18aは、駆動制御信号Vpam’に基づいてスイッチング素子12a、12bのオンオフ制御を行う。
【0047】
そして、変形例3においても、モータ回転数が
図6に示した低速閾値R1未満の低速領域Aにおいて、スイッチング素子12aの部分スイッチング制御(例えば、
図4参照)を行うこととし、モータ回転数が低速閾値R1以上の場合に、休止期間を設けないフルスイッチング制御(例えば、
図5参照)を行う。また、スイッチング素子12a、12bの両方を駆動する場合においても所定の回転数範囲において、部分スイッチング制御を行ってもよい。この場合、高調波規制の規制値を満足するように、スイッチング周波数を決定する必要がある。
【0048】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係るコンバータ装置及びその制御方法並びにモータ駆動装置について、図面を参照して説明する。以下、上述した第1実施形態と共通の構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0049】
まず、モータ駆動装置の全体の構成については、
図1と同様であるため、ここでの説明は省略する。ただし、本実施形態では、必要に応じて電圧検出部16を省略することが可能である。また、コンバータ制御部20c(
図8参照)には、モータ回転数が入力信号として入力される。
【0050】
図8は、本実施形態に係るコンバータ制御部20cが備える機能を示した機能構成図である。
図8に示すように、コンバータ制御部20cは、目標電圧設定部21cと、キャリア波生成部22と、制御信号生成部23cと、休止期間設定部25とを備えている。
【0051】
休止期間設定部25は、例えば、モータ回転数に応じて設定される目標直流電圧Vdcと出力電圧V2との比較に基づいて休止期間を設定する。例えば、休止期間設定部25は、モータ回転数と目標直流電圧Vdcとが関連付けられた情報(例えば、テーブルや演算式など)を有しており、この情報を用いて入力信号として得たモータ回転数に対応する目標直流電圧Vdcを得る。そして、出力電圧V2が目標直流電圧Vdc以下のときに駆動期間を設定し、出力電圧V2が目標直流電圧Vdcよりも大きい場合に休止期間を設定する。
【0052】
具体的には、休止期間設定部25は、
図9に示すように、V2≦Vdcの間はHighレベル「1」の休止信号Stを出力し、V2>Vdcの間はLowレベル「0」の休止信号を出力する。休止信号がHighレベルの場合に休止期間となる。
【0053】
目標電圧設定部21cは、例えば、モータ回転数から決定される目標直流電圧Vdcに所定の係数Kを乗じることにより目標電圧Vtarを算出する。係数Kは、1よりも大きい値とされている。また、所定の係数Kについては、事前に最適化処理を行い、キャリア周波数との兼ね合いから最適化範囲内で決定すればよい。
【0054】
キャリア波生成部22は、波高値をVtarとしたキャリア波Vsを生成する。ここで、キャリア波の周波数については、上述した第1実施形態と同様の手法により事前に設定されている。すなわち、キャリア波の周波数であるキャリア周波数(スイッチング周波数)は、高調波規制の規制値に対する余裕度が所定値以上であり、かつ、スイッチング損失を最小化するスイッチング周波数の値に基づいて設定されている。例えば、キャリア周波数は、リアクトル13を流れるリアクトル電流に含まれる高調波、休止期間の長さ、及びスイッチング損失をパラメータとして最適化処理された値に基づいて設定されている。
【0055】
制御信号生成部23cは、休止信号StがHighレベル「1」の場合、すなわち、休止期間の場合には、Lowレベルで一定の駆動制御信号Vpamを生成する。これに対し、休止信号StがLowレベル「0」の場合、すなわち、駆動期間の場合には、キャリア波生成部22によって生成されたキャリア波Vsと電圧検出部16によって検出された出力電圧V2とを比較することにより、スイッチング素子12の駆動制御信号Vpamを生成する。Vpamの生成手法については、上述した第1実施形態と同様である。
【0056】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、モータ回転数に基づいて決定される目標直流電圧Vdcと、整流回路10から出力された出力電圧V2とを比較し、この比較結果に基づいて休止期間を設定する休止期間設定部25を備えている。そして、休止期間設定部25によって設定された期間については、PWM制御に基づくスイッチング素子12のスイッチングが停止される。このように、リアルタイムで休止期間を設定することにより、その時々の電圧状態に応じて適切に休止期間を設けることができる。また、このように、スイッチングを行わない休止期間を設ける部分スイッチング制御を行うので、スイッチング損失を低減することができる。更に、上述した第1実施形態と同様に、スイッチング素子12のスイッチング周波数が、高調波規制の規制値に対する余裕度が所定値以上であり、かつ、スイッチング損失を最小化するスイッチング周波数の値に基づいて設定されている。これにより、高調波規制の規制値を満足しながら、スイッチング損失を効果的に低減させることが可能となる。
【0057】
また、上述した第1実施形態と同様に、昇圧チョッパ回路11を構成するリアクトル13として、例えば、ダストコア、スーパーコア(6.5%ケイ素鋼板)、アモルファス等の材料から構成された高周波リアクトルを採用する。これにより、インダクタンスを小さくすることができ、スイッチングの際のリアクトルの鉄損を低減することができる。また、高周波リアクトルを採用することにより、重量比率の大きいリアクトルを小型化及び軽量化することが可能となる。これにより、スイッチング周波数を低減することによるリアクトルへの鉄損の増加や温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
【0058】
なお、上述したコンバータ装置では、休止期間設定部25から休止信号Stを制御信号生成部23cに出力し、この休止信号に基づいて制御信号生成部23cが駆動制御信号Vpamを生成していたが、これに限られない。例えば、制御信号生成部23cの後段に休止期間設定部25を設け、休止信号StがHighレベル「1」の期間において、駆動制御信号VpamをLowレベル「0」にフィルタリングするような構成としてもよい。
【0059】
また、上述した変形例1~3についても本実施形態に係るコンバータ装置及びその制御方法並びにモータ駆動装置に適用することができる。
【0060】
〔変形例1〕
例えば、コンバータ制御部20cは、モータ回転数に基づいて上述した部分スイッチング制御を行うか否かを決定することとしてもよい。例えば、
図6に示すように、コンバータ制御部20cは、休止期間を伴う部分スイッチング制御を行うモータ回転数の低速閾値R1を有しており、モータ回転数が低速閾値R1未満の低速領域Aにおいて、上述した部分スイッチング制御(例えば、
図4参照)を行うこととし、モータ回転数が低速閾値R1以上の場合に、休止期間を設けないフルスイッチング制御(例えば、
図5参照)を行うこととしてもよい。
【0061】
〔変形例2〕
上記変形例1に加えて、コンバータ制御部20cは、例えば、モータ回転数に基づいて高速スイッチングを行うか否かを決定することとしてもよい。なお、詳細は、上述した通りである。
【0062】
〔変形例3〕
本実施形態に係るコンバータ装置は、2つ以上の昇圧チョッパ回路を備えていてもよい。なお、制御手法については上述した通りである。
【0063】
以上説明したコンバータ装置及びその制御方法並びにモータ駆動装置は、例えば以下のように把握される。
【0064】
本開示の第1態様に係るコンバータ装置(2,2a)は、交流電源(4)から入力された交流電力を直流電力に変換して出力する整流回路(10)と、前記整流回路の出力側に接続されるとともに、スイッチング素子(12,12a,12b)を有する昇圧チョッパ回路(11,11a,11b)と、前記昇圧チョッパ回路の出力側に接続されるとともに、前記スイッチング素子と並列に接続されたコンデンサ(15)と、前記スイッチング素子の駆動を制御するコンバータ制御部(20,20a)とを備え、前記コンバータ制御部は、前記スイッチング素子のオフ状態を連続的に維持する休止期間を設けた部分スイッチング制御を行い、前記スイッチング素子のスイッチング周波数は、高調波規制の規制値に対する余裕度が所定値以上であり、かつ、スイッチング損失を最小化するスイッチング周波数の値に基づいて設定されている。
【0065】
上記第1態様によれば、スイッチングを行わない休止期間を設ける部分スイッチング制御を行うので、スイッチング損失を低減することができる。加えて、スイッチング素子のスイッチング周波数が、高調波規制の規制値に対する余裕度が所定値以上であり、かつ、スイッチング損失を最小化するスイッチング周波数の値に基づいて設定されている。これにより、高調波規制の規制値を満足しながら、スイッチング損失を効果的に低減させることが可能となる。
【0066】
本開示の第2態様に係るコンバータ装置(2,2a)は、上記第1態様において、前記コンバータ制御部は、目標電圧(Vtar)を設定する目標電圧設定部(21)と、前記整流回路の出力電圧(V2)と前記目標電圧との比較に基づいて前記スイッチング素子の駆動制御信号(Vpam)を生成する制御信号生成部(23)とを備え、前記目標電圧設定部は、前記整流回路の出力電圧から前記目標電圧を算出するための係数(K)を有し、前記係数を前記出力電圧に乗じることにより前記目標電圧を設定する。
【0067】
上記第2態様によれば、部分オフスイッチング制御中において、予め設定されている係数を整流回路の出力電圧に乗じることにより目標電圧を設定する。これにより、駆動期間におけるデューティ比を適切な値にすることができる。
【0068】
本開示の第3態様に係るコンバータ装置(2,2a)は、上記第1態様または第2態様において、前記昇圧チョッパ回路は、高周波リアクトルを有している。
【0069】
上記第3態様によれば、昇圧チョッパ回路を構成するリアクトルとして、高周波リアクトルを採用するので、インダクタンスを小さくすることができ、スイッチングの際のリアクトルの鉄損を低減することができる。これにより、スイッチング周波数を低減することによるリアクトルの鉄損の増加や温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。また、高周波リアクトルを採用することにより、重量比率の大きいリアクトルを小型化及び軽量化することが可能となる。
【0070】
本開示の第4態様に係るモータ駆動装置(1,1a)は、上記第1態様から第3態様のいずれかに係るコンバータ装置(2,2a)と、前記コンバータ装置から出力された直流電圧を交流電圧に変換してモータ(5)に供給するインバータ装置(3)とを備える。
【0071】
上記第4態様によれば、上記第1態様から第3態様のいずれかに係るコンバータ装置を備えるので、スイッチング損失を効果的に低減させることのできるモータ駆動装置を提供することができる。
【0072】
本開示の第5態様に係るモータ駆動装置(1,1a)は、上記第4態様において、前記コンバータ制御部は、モータ回転数が予め設定されている低速閾値(R1)未満である場合に、前記休止期間を伴う部分スイッチング制御を行い、前記モータ回転数が前記低速閾値(R1)以上である場合に、前記休止期間を伴わないフルスイッチング制御を行う。
【0073】
上記第5態様によれば、モータ回転数が低速閾値未満である低速領域において部分スイッチング制御が行われる。これにより、APF(通年エネルギー消費効率)に寄与率の高い低速領域において、スイッチング損失を低減させることが可能となる。これにより、APFを効果的に向上させることが可能となる。
【0074】
本開示の第6態様に係るモータ駆動装置(1,1a)は、上記第5態様において、前記コンバータ制御部は、モータ回転数が予め設定されている高速閾値(R2)以上である場合に、前記モータ回転数が前記低速閾値(R1)未満である回転数領域で使用される低速キャリア周波数よりも周波数の高い高速キャリア周波数を用いてフルスイッチング制御を行う。
【0075】
上記第6態様によれば、モータ回転数が予め設定されている高速閾値以上である場合には、低速キャリア周波数よりも周波数の高い高速キャリア周波数を用いてフルスイッチング制御を行うので、入力電流の歪みを低減でき、高周波を抑制することが可能となる。
【0076】
本開示の第7態様に係るモータ駆動装置(1,1a)は、上記第4態様から第6態様のいずれかにおいて、前記コンバータ制御部は、モータ回転数に応じて設定される目標直流電圧と、前記整流回路の出力電圧との比較に基づいて休止期間を設定する休止期間設定部を備える。
【0077】
上記第7態様によれば、リアルタイムで休止期間を設定することが可能となる。これにより、その時々の電圧状態に応じて適切に休止期間を設けることができる。
【0078】
本開示の第8態様に係るコンバータ装置(2,2a)の制御方法は、交流電源(4)から入力された交流電力を直流電力に変換して出力する整流回路(10)と、前記整流回路の出力側に接続されるとともに、スイッチング素子(12,12a,12b)を有する昇圧チョッパ回路(11,11a,11b)と、前記昇圧チョッパ回路の出力側に接続されるとともに、前記スイッチング素子と並列に接続されたコンデンサ(15)とを備えるコンバータ装置(2,2a)の制御方法であって、前記スイッチング素子のオフ状態を連続的に維持する休止期間を設けた部分スイッチング制御を行い、前記スイッチング素子のスイッチング周波数は、高調波規制の規制値に対する余裕度が所定値以上であり、かつ、スイッチング損失を最小化するスイッチング周波数の値に基づいて設定されている。
【符号の説明】
【0079】
1 :モータ駆動装置
1a :モータ駆動装置
2 :コンバータ装置
2a :コンバータ装置
3 :インバータ装置
4 :交流電源
5 :モータ
10 :整流回路
11 :昇圧チョッパ回路
11a :昇圧チョッパ回路
11b :昇圧チョッパ回路
12 :スイッチング素子
12a :スイッチング素子
12b :スイッチング素子
13 :リアクトル
13a :リアクトル
13b :リアクトル
14 :ダイオード
14a :ダイオード
14b :ダイオード
15 :コンデンサ
16 :電圧検出部
17 :電圧検出部
18 :駆動回路
18a :駆動回路
20 :コンバータ制御部
20a :コンバータ制御部
20c :コンバータ制御部
21 :目標電圧設定部
21c :目標電圧設定部
22 :キャリア波生成部
23 :制御信号生成部
23c :制御信号生成部
24 :フィルタ部
25 :休止期間設定部
31 :インバータ回路
32 :インバータ制御部
A :低速領域
B :高速領域
K :係数
R1 :低速閾値
R2 :高速閾値
V1 :入力電圧
V2 :出力電圧
Vpam :駆動制御信号
Vpam’:駆動制御信号
Vs :キャリア波
Vtar :目標電圧