(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155005
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】高炉炉底部冷却構造
(51)【国際特許分類】
C21B 7/10 20060101AFI20241024BHJP
F27B 1/24 20060101ALI20241024BHJP
F27D 9/00 20060101ALI20241024BHJP
F27D 1/12 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C21B7/10 303
F27B1/24
F27D9/00
F27D1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069327
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱本 将典
(72)【発明者】
【氏名】北川 利也
(72)【発明者】
【氏名】尾形 知輝
(72)【発明者】
【氏名】森 賢治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大悟
【テーマコード(参考)】
4K015
4K045
4K051
4K063
【Fターム(参考)】
4K015CA07
4K045AA02
4K045MA03
4K051AA02
4K051AB05
4K051HA03
4K051HA08
4K063AA02
4K063CA01
4K063CA05
4K063EA02
(57)【要約】
【課題】冷却性能が高くかつ熱変形を許容できる高炉炉底部冷却構造を提供する。
【解決手段】高炉炉底部冷却構造は、高炉の炉底部に設置された炉底板34と、炉底板34の下方に炉底板34と所定間隔で支持された冷却管71と、冷却管71および炉底板34にそれぞれ当接する伝熱部材91と、を有し、伝熱部材91は、炉底板34に沿った方向へ変位可能な摺動部95,96を有する。摺動部95,96は、摺動面に接触圧力を付与しかつ接触圧力を調整可能な与圧機構951,961を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の炉底部に設置された炉底板と、前記炉底板の下方に前記炉底板と所定間隔で支持された冷却管と、前記冷却管および前記炉底板にそれぞれ当接する伝熱部材と、を有し、
前記伝熱部材は、前記炉底板に沿った方向へ変位可能な摺動部を有する高炉炉底部冷却構造。
【請求項2】
前記伝熱部材は金属で形成され、
前記摺動部は、前記炉底板の下面に当接する摺動面および前記冷却管の表面に当接する摺動面の少なくとも一方を有する、請求項1に記載の高炉炉底部冷却構造。
【請求項3】
前記摺動部は、前記摺動面に接触圧力を付与しかつ前記接触圧力を調整可能な与圧機構を有する、請求項2に記載の高炉炉底部冷却構造。
【請求項4】
前記伝熱部材は、上面に前記炉底板と当接する前記摺動面と、前記摺動面を通って前記伝熱部材を下向きに貫通する挿通孔と、を有し、
前記与圧機構は、前記炉底板の下面に固定されて前記挿通孔に挿通されるボルトと、前記ボルトに螺合されて前記炉底板との間に前記伝熱部材を挟持するナットと、を有する、請求項3に記載の高炉炉底部冷却構造。
【請求項5】
前記伝熱部材は、下面に前記冷却管と当接する前記摺動面を有し、
前記与圧機構は、前記冷却管の下面側に当接しかつ両端に挿通孔を有する支持部材と、前記伝熱部材に接続されて前記冷却管の両側を通り前記支持部材の前記挿通孔に挿通される一対のボルトと、前記ボルトに螺合されて前記支持部材を支持するナットと、を有する、請求項3に記載の高炉炉底部冷却構造。
【請求項6】
前記伝熱部材は、前記冷却管の延伸方向に沿って間欠的に設置されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の高炉炉底部冷却構造。
【請求項7】
前記伝熱部材は、前記高炉の溶銑の直下領域にある前記冷却管に設置され、前記直下領域の外側の前記冷却管には設置されていない、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の高炉炉底部冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高炉炉底部冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の炉底部には冷却管を用いた冷却構造が設置される。例えば、特許文献1に記載の冷却構造では、コンクリート製の基礎構造の上方に炉底板を設置し、炉底板と基礎構造との間の空間に冷却管を設置したのち、同空間にキャスタブルを充填している。
このような冷却構造では、冷却管と炉底板との間に所定厚みでキャスタブルが介在し、十分な冷却性能が得られないことがある。
これに対し、特許文献2に記載の冷却構造のように、炉底板を支持する鋼製梁材に冷却管を溶接し、冷却管から梁材ないし炉底板まで鋼材を連続させることで、高い伝熱性能が得られ、冷却構造としての冷却性能を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-210981号公報
【特許文献2】実開昭56-95559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献2の冷却構造では、冷却管から梁材ないし炉底板まで鋼材を連続させることで、高い冷却性能が得られる。しかし、冷却管と梁材ないし炉底板とが溶接などで固定されることで、冷却管と梁材ないし炉底板との間で熱変形による変位を許容できず、固定部分の破断などが生じる可能性があった。
とくに、特許文献1のような大規模な高炉の炉底においては、冷却管や炉底板が長大で変位量が大きくなるうえ、多数の冷却管が並列に配置されて熱変形が各々の延伸方向に偏り、炉底板との変位差が生じやすく破断の可能性が顕著となっていた。
【0005】
本発明の目的は、冷却性能が高くかつ熱変形を許容できる高炉炉底部冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高炉炉底部冷却構造は、高炉の炉底部に設置された炉底板と、前記炉底板の下方に前記炉底板と所定間隔で支持された冷却管と、前記冷却管および前記炉底板にそれぞれ当接する伝熱部材と、を有し、前記伝熱部材は、前記炉底板に沿った方向へ変位可能な摺動部を有する。
【0007】
このような本発明では、伝熱部材に炉底板の熱が直接伝達され、さらに伝熱部材の熱が冷却管へと直接伝達され、これにより炉底板から冷却管への伝熱性能を高め、冷却構造としての冷却性能を高くできる。
さらに、伝熱部材は、摺動部において炉底板に沿った方向(炉底板の表面と平行な全方向)へ変位可能であり、これにより炉底板と冷却管との熱変形挙動が相違しても互いの変位を許容でき、熱変形に伴う損傷などを防止できる。なお、摺動部としては、炉底板と伝熱部材との間、伝熱部材の途中、伝熱部材と冷却管との間など、伝熱部材の任意の部位に形成することができる。
【0008】
前記伝熱部材は金属で形成され、前記摺動部は、前記炉底板の下面に当接する摺動面および前記冷却管の表面に当接する摺動面の少なくとも一方を有することが好ましい。
このような本発明では、伝熱部材の摺動面により摺動部を形成でき、構造を簡素化できる。
【0009】
前記摺動部は、前記摺動面に接触圧力を付与しかつ前記接触圧力を調整可能な与圧機構を有することが好ましい。
本発明の与圧機構としては、摺動面に交差方向に配置されたボルトで炉底板と伝熱部材とを締結する構造、あるいは同様ボルトで配管に巡らせた帯状部材と伝熱部材とを締結する構造などが利用できる。
このような本発明では、摺動面で当接する冷却管と伝熱部材あるいは炉底板と伝熱部材との間で、所期の接触圧力を付与することができる。この際、ボルトの締付状態などを加減することで接触圧力を調整し、摺動部における通過熱量、および摺動部での熱変位の許容性能を所期の状態とすることができる。
【0010】
前記伝熱部材は、上面に前記炉底板と当接する前記摺動面と、前記摺動面を通って前記伝熱部材を下向きに貫通する挿通孔と、を有し、前記与圧機構は、前記炉底板の下面に固定されて前記挿通孔に挿通されるボルトと、前記ボルトに螺合されて前記炉底板との間に前記伝熱部材を挟持するナットと、を有することが好ましい。
本発明において、挿通孔はボルトに対して、炉底板と伝熱部材との摺動を許容するのに十分な大径としておく。
このような本発明では、伝熱部材上面の摺動面により炉底板の熱を伝熱部材に伝達できるとともに、伝熱部材と炉底板とは摺動面に沿って変位可能である。そして、与圧機構においては、ナットの締め付け状態を調整することにより摺動部における接触圧力を調整できる。
【0011】
前記伝熱部材は、下面に前記冷却管と当接する前記摺動面を有し、前記与圧機構は、前記冷却管の下面側に当接しかつ両端に挿通孔を有する支持部材と、前記伝熱部材に接続されて前記冷却管の両側を通り前記支持部材の前記挿通孔に挿通される一対のボルトと、前記ボルトに螺合されて前記支持部材を支持するナットと、を有することが好ましい。
このような本発明では、伝熱部材下面の摺動面により伝熱部材の熱を冷却管に伝達できるとともに、伝熱部材と冷却管とは摺動面に沿って冷却管の延伸方向に変位可能である。そして、与圧機構においては、ナットの締め付け状態を調整することにより摺動部における接触圧力を調整できる。
【0012】
前記伝熱部材は、前記冷却管の延伸方向に沿って間欠的に設置されていることが好ましい。
このような本発明では、伝熱部材の設置数で伝熱性能を調整できるとともに、要求される伝熱性能が異なる高炉に対して同じ伝熱部材を使用でき、コスト低減を図ることができる。
【0013】
前記伝熱部材は、前記高炉の溶銑の直下領域にある前記冷却管に設置され、前記直下領域の外側の前記冷却管には設置されていないことが好ましい。
このような本発明では、炉底板の熱負荷が高い溶銑直下領域での伝熱性能を高めるとともに、その外側領域では伝熱部材を省略してコスト低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷却性能が高くかつ熱変形を許容できる高炉炉底部冷却構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態の冷却構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
図1および
図2には、本発明に基づく冷却構造7を有する高炉1が示されている。
高炉1は、コンクリート製の基礎2を有し、その上面に敷ビーム3を有する。敷ビーム3の上面には炉体を形成する鉄皮4が設置され、その内側には炉内レンガ5が張られている。炉内レンガ5は、敷ビーム3の上面(後述する炉底板34)の上にも敷きつめられ、これらの炉内レンガ5の内側に溶銑が貯留される炉内空間6が形成されている。
【0017】
前述した敷ビーム3は、枠状に組まれた鋼製の主梁31の内側に、格子状に組まれた鋼製の下梁32および上梁33を有する。
下梁32は、主梁31と交差方向に配列され、両端が主梁31に接続されている。上梁33は、下梁32の上に支持され、主梁31と平行で下梁32と交差方向に配列されており、両端が主梁31に接続されている。
下梁32に支持された上梁33の上面は、主梁31の上面と同じ高さとされており、これらの上面には鋼製の炉底板34が張られている。
【0018】
炉底板34と基礎2との間の空間のうち、下梁32が配置されている下側空間には、耐熱性コンクリートなどの充填材35が充填されている。一方、上梁33が配置されている上側空間には、冷却構造7を形成する複数の冷却管71が、上梁33と平行に配置され、その周囲には熱伝導率が高い炭化ケイ素(SiC)を主成分とするキャスタブル36が充填されている。
冷却構造7は、前述した冷却管71と、冷却管71に冷却水を供給する図示しない給水装置とを有し、炉底板34および炉内レンガ5を通して伝達される炉内空間6の高熱に対して、炉内レンガ5および敷ビーム3以下の構造の冷却が可能である。
【0019】
キャスタブル36に埋設された冷却管71は、キャスタブル36の充填に先立って炉底板34によりその下面側に吊り下げ支持されている。
前述した炉内空間6の外周より外側の領域では、冷却管71に沿って所定間隔で外側吊下具80が設置されている。
前述した炉内空間6の直下の領域では、冷却管71に沿って所定間隔で中間吊下具90が設置されている。
【0020】
図3には外側吊下具80が示されている。
外側吊下具80は、炉底板34の下面に固定された固定部材81と、この固定部材81の下面側に接続されたU字状の吊下部材82とを有する。
固定部材81は、鋼製のブロックであり、溶接により炉底板34の下面に固定されている。固定部材81の下面には、冷却管71の外周の曲率よりやや大きな曲率を有する円弧面811が形成されている。
【0021】
吊下部材82は、鋼製の棒材をU字状に曲げたものであり、円弧面811を跨ぐように配置され、両端が固定部材81の側面に溶接されている。吊下部材82は、中間の湾曲部分の内側の曲率が冷却管71の外周の曲率に合わせて形成されている。
外側吊下具80においては、冷却管71と固定部材81および吊下部材82とが固定されておらず、従って冷却管71は外側吊下具80に対して、冷却管71の延伸方向にのみ変位可能である。
【0022】
図4、
図5、および
図6には中間吊下具90が示されている。
中間吊下具90は、炉底板34の下面に接続された伝熱部材91と、この伝熱部材91の下面側に吊り下げられた支持部材92と、を有する。
伝熱部材91は、鋼製のブロックであり、上下に貫通する挿通孔911を有するとともに、下面には冷却管71の上部を収容可能な断面台形状の凹部912が形成されている。
【0023】
伝熱部材91を接続するために、炉底板34の下面には下向きに4本のボルト93が溶接されている。ボルト93は、挿通孔911に挿通されたうえ、伝熱部材91の下面側に露出した先端にナット931が螺合されている。従って、伝熱部材91はナット931およびボルト93を介して炉底板34の下面に支持され、ナット931を締め込むことで伝熱部材91の上面が炉底板34の下面に密着される。
【0024】
挿通孔911は、ボルト93に対して大径に形成され、挿通孔911の内周とボルト93の外周との間には隙間が形成されている。この隙間があることで、伝熱部材91の上面と炉底板34の下面とが密着状態で摺動可能であり、伝熱部材91は炉底板34に対して炉底板34の面方向へ変位可能である。
【0025】
ここで、伝熱部材91の上面は炉底板34の下面に当接する摺動面であり、これらの伝熱部材91の上面および炉底板34の下面により摺動部95が形成されている。
そして、ボルト93およびナット931により、摺動部95における接触圧力を付与しかつ接触圧力を調整可能な与圧機構951が形成されている。
【0026】
支持部材92は、帯状の鋼材の中間部に冷却管71の下部を収容可能な下向きの湾曲部を形成したものであり、伝熱部材91の両端の下方に2個設置され、それぞれ湾曲部が伝熱部材91の凹部912に対向して配置されている。支持部材92の上面には、両側縁に沿って一対の丸鋼製の受け部材921が張られている。
【0027】
支持部材92を吊り下げるために、伝熱部材91の側面には下向きに、凹部912を挟んで2本ずつ計4本のボルト94が溶接されている。
ボルト94は、支持部材92の両端の水平な部分を貫通し、支持部材92の下面側に露出した先端にナット941が螺合されている。これらのナット941およびボルト94により支持部材92は伝熱部材91に吊り下げられている。
【0028】
冷却管71は、上部が伝熱部材91の凹部912に収容され、下部が支持部材92の中間の湾曲部に収容された状態で、伝熱部材91と支持部材92との間に保持されている。冷却管71は、伝熱部材91および支持部材92に対して、冷却管71の延伸方向へ変位可能である。
【0029】
冷却管71の上部外面と伝熱部材91の凹部912とは、凹部912の両側の傾斜面の2点で接触している。冷却管71の下部外面と支持部材92とは、湾曲部の両側傾斜面において受け部材921を介して接触している。ボルト94のナット941の締め込み状態を調整することで、冷却管71と伝熱部材91との接触圧力を調整可能である。
【0030】
ここで、伝熱部材91の凹部912の表面は冷却管71の上部外面に当接する摺動面であり、これらの伝熱部材91の凹部912および冷却管71の上部外面により摺動部96が形成されている。
そして、ボルト94およびナット941により、摺動部96における接触圧力を付与しかつ接触圧力を調整可能な与圧機構961が形成されている。
【0031】
本実施形態においては、高炉1の築造にあたって、製作工場で敷ビーム3を組み立て、敷ビーム3に冷却構造7を組み込んでおく。
すなわち、主梁31、下梁32、および上梁33を組み立てたのち、主梁31および上梁33上面に炉底板34を張ってゆく。炉底板34を張る際には、その下面に外側吊下具80および中間吊下具90で冷却管71を吊り下げてゆく。この際、中間吊下具90では、設置する際に与圧機構951,961を操作し、摺動部95,96での接触圧力を予め実験的あるいは理論的に算出された所期の値に調整しておく。
以上により冷却構造7ができたら、敷ビーム3を高炉1の設置現場に搬送し、基礎2の上面に設置する。そして、敷ビーム3の下側空間に充填材35を充填したうえで、上側空間にキャスタブル36を炉底板34の下面に密着するまで充填し、養生期間を経て固化させ、炉底板34の下面側に冷却管71、外側吊下具80および中間吊下具90を埋設しておく。
こののち、炉底板34の上面に鉄皮4および炉内レンガ5を組み立て、高炉1を形成する。
【0032】
本実施形態では、次のような作用効果が得られる。
高炉1を稼働させた際には、炉内空間6が高温となって炉内レンガ5から炉底板34へと熱が伝達される。炉底板34へ伝達された熱は、冷却構造7により冷却され、敷ビーム3の下部ないし基礎2への熱伝達が緩和される。
中間吊下具90においては、伝熱部材91に炉底板34の熱が直接伝達され、さらに伝熱部材91の熱が冷却管71へと直接伝達される。このような直接的な熱伝達により、炉底板34から冷却管71への伝熱性能を高めることができ、冷却構造7として高い冷却性能が得られる。
さらに、伝熱部材91は、炉底板34と伝熱部材91との間の摺動部95において炉底板34に沿った方向へ変位可能であり、伝熱部材91と冷却管71との間の摺動部96において冷却管71に沿った方向へ変位可能である。これにより、炉底板34と冷却管71との熱変形挙動が相違しても、互いの変位を許容でき、熱変形に伴う冷却構造7ないし敷ビーム3とくに炉底板34の損傷なども防止できる。
【0033】
本実施形態では、摺動部95は、炉底板34の下面に当接する摺動面として伝熱部材91の上面を有し、摺動部96は、冷却管71の表面に当接する摺動面として凹部912の表面を有するとしたため、伝熱部材91の表面を摺動面として摺動部95、96を形成でき、構造を簡素化できる。
【0034】
本実施形態では、摺動部95,96に、摺動面に接触圧力を付与しかつ接触圧力を調整可能な与圧機構951,961を設けたので、摺動部95,96における接触圧力を、冷却管71と伝熱部材91あるいは炉底板34と伝熱部材91との間で伝熱性能が十分に得られかつ摺動性能が確保できる所期の値に調整することができる。
そして、与圧機構951,961としてボルト93,94およびナット931,941を用いたので、ボルト93,94に対するナット931,941の締付状態を加減することで接触圧力を調整し、摺動部95,96における通過熱量、および摺動部95,96での熱変位の許容性能を所期の状態とすることができる。
【0035】
本実施形態では、伝熱部材91と炉底板34との間の摺動部95の与圧機構951として、炉底板34の下面に固定されて挿通孔911に挿通されるボルト93と、ボルト93に螺合されて炉底板34との間に伝熱部材91を挟持するナット931と、を用いたので、伝熱部材91の上面の摺動面により炉底板34の熱を伝熱部材91に伝達できるとともに、伝熱部材91と炉底板34とを摺動面に沿って変位可能であり、与圧機構951においては、ナット931の締め付け状態を調整することにより摺動部95における接触圧力を調整できる。
【0036】
本実施形態では、伝熱部材91は、下面に冷却管71と当接する摺動面である凹部912を有し、与圧機構961は、冷却管71の下面側に当接しかつ両端に挿通孔を有する支持部材92と、伝熱部材91に接続されて冷却管71の両側を通り支持部材92の挿通孔に挿通される一対のボルト94と、支持部材92の下面側からボルト94に螺合されて支持部材92を支持するナット941と、を有するとしたため、伝熱部材91の凹部912の摺動面から伝熱部材91の熱を冷却管71に伝達できるとともに、伝熱部材91と冷却管71とは凹部912の連続方向である冷却管71の延伸方向に沿って変位可能である。そして、与圧機構961においては、ナット941の締め付け状態を調整することにより摺動部96における接触圧力を調整できる。
【0037】
前記実施形態では、伝熱部材91を含む中間吊下具90が、冷却管71の延伸方向に沿って間欠的に設置されているため、その設置数により炉底板34から冷却管71への伝熱性能を調整できるとともに、要求される伝熱性能が異なる高炉1に対して同じ中間吊下具90および伝熱部材91を使用でき、コスト低減を図ることができる。
【0038】
前記実施形態では、伝熱部材91を含む中間吊下具90は、高炉1の溶銑が貯留される炉内空間6の直下領域にある冷却管71に設置され、直下領域の外側の冷却管71には中間吊下具90ではなく外側吊下具80を設置したので、炉底板34の熱負荷が高い溶銑直下領域での伝熱性能を高めるとともに、その外側領域では伝熱部材91を省略してコスト低減を図ることができる。
【0039】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、中間吊下具90の上部に炉底板34と摺動する摺動部95を設け、下部に冷却管71と摺動する摺動部96を設けたが、例えば摺動部96を省略して摺動部95だけとしてもよい。ただし、摺動部95および摺動部96を併設することで、冷却管71に生じる延伸方向の変形を主に摺動部96で吸収でき、中間吊下具90自体のキャスタブル36に対する変位を抑制し、冷却管71の熱変形によるキャスタブル36の損傷を防止できる。
前記実施形態の摺動部96では、伝熱部材91の下面に凹部912を形成し、冷却管71と伝熱部材91との変位方向を冷却管71の延伸方向に限定したが、伝熱部材91の下面を平坦な摺動面として冷却管71を当接させてもよく、冷却管71と伝熱部材91とを冷却管71の延伸方向および交差方向にも変位させることができる。
【0040】
前記実施形態では、摺動部95,96に与圧機構951,961を設け、与圧機構951,961としてボルト93,94およびナット931,941を用いていた。これに対し、与圧機構951,961はボルトナットの螺合構造に限定されるものではなく、例えば他の締付部材の弾性を利用するものであってもよい。与圧機構951,961としては、摺動部95,96の一対の摺動面(炉底板34の下面と伝熱部材91の上面と、凹部912と冷却管71の表面と)に所期の接触圧力が得られればよく、接触圧力が調整可能な構造であることは必須ではない。
【0041】
前記実施形態では、炉内空間6の外周より外側の領域では、冷却管71に沿って所定間隔で外側吊下具80が設置され、炉内空間6の直下の領域では、冷却管71に沿って所定間隔で中間吊下具90が設置されているとした。これに対し、外側吊下具80を省略し、冷却管71の全長にわたって中間吊下具90を設置してもよい。また、冷却管71に沿った中間吊下具90の設置間隔は適宜設定すればよく、互いに等間隔ではなく領域ごとに間隔を増減させてもよい。
前記実施形態において、伝熱部材91を含む中間吊下具90は各部が鋼製であるとしたが、銅合金など鋼以外の金属であってもよく、熱伝導性能が十分であれば金属以外の材質を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は高炉炉底部冷却構造に利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1…高炉、2…基礎、3…敷ビーム、4…鉄皮、5…炉内レンガ、6…炉内空間、7…冷却構造、31…主梁、32…下梁、33…上梁、34…炉底板、35…充填材、36…キャスタブル、71…冷却管、80…外側吊下具、81…固定部材、82…吊下部材、90…中間吊下具、91…伝熱部材、92…支持部材、93…ボルト、94…ボルト、95…摺動部、96…摺動部、811…円弧面、911…挿通孔、912…凹部、921…受け部材、931…ナット、941…ナット、951…与圧機構、961…与圧機構。