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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155007
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】起立補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/12 20060101AFI20241024BHJP
   A61G 5/14 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61G7/12
A61G5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069333
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 智宏
(72)【発明者】
【氏名】輿石 健
(72)【発明者】
【氏名】原 裕樹
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040JJ03
4C040JJ04
(57)【要約】
【課題】簡易な構成によってユーザの起立動作を補助する。
【解決手段】起立補助装置1は、回転軸Xを中心に回転する第1リンク4と、第1リンク4を回転可能に支持する装置本体3と、第1リンク4に回転駆動力を付与するアクチュエータ5と、第1リンク4に相対回転可能に結合する第2リンク6と、ユーザの腕を支えるべく第2リンク6に設けられる腕支持部7と、を備え、装置本体3には、所定の方向に延びるガイド部32が設けられ、第2リンク6には、ガイド部32に回転可能に係合する係合部61が設けられ、第2リンク6は、第1リンク4の回転に従い、係合部61をガイド部32に沿って移動させながら上昇する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの起立動作を補助するための起立補助装置であって、
回転軸を中心に回転する第1リンクと、
前記第1リンクを回転可能に支持する装置本体と、
前記第1リンクに回転駆動力を付与するアクチュエータと、
前記第1リンクに相対回転可能に結合する第2リンクと、
ユーザの腕を支えるべく前記第2リンクに設けられる腕支持部と、を備え、
前記装置本体には、所定の方向に延びるガイド部が設けられ、
前記第2リンクには、前記ガイド部に回転可能に係合する係合部が設けられ、
前記第2リンクは、前記第1リンクの回転に従い、前記係合部を前記ガイド部に沿って移動させながら上昇する起立補助装置。
【請求項2】
前記腕支持部は、前記第2リンクの上昇に従い、前方に向かって移動した後に上昇する請求項1に記載の起立補助装置。
【請求項3】
前記第1リンクと前記第2リンクの結合点は、前記腕支持部が前方に向かって移動する前の状態において側面視で前記ガイド部の下方に位置し、前記腕支持部が前方に向かって移動した状態において側面視で前記ガイド部と重なり、前記腕支持部が上昇した状態において側面視で前記ガイド部の前方に位置する請求項2に記載の起立補助装置。
【請求項4】
前記腕支持部は、
前記第2リンクの上端部に固定され、前後方向に延びる延出部と、
前記延出部の上面の前端部に設けられるグリップと、
前記延出部の上面の後端部に設けられる肘当てと、を備え、
前記腕支持部が前方に向かって移動する際に、前記肘当てが前記グリップに対して相対的に上昇する請求項2又は3に記載の起立補助装置。
【請求項5】
前記第1リンクは、
前記回転軸から第1の方向に延びる第1アーム部と、
前記回転軸から前記第1の方向とは異なる第2の方向に延びる第2アーム部と、を備え、
前記アクチュエータは、前記第1アーム部に相対回転可能に結合し、
前記第2リンクは、前記第2アーム部に相対回転可能に結合する請求項1~3のいずれか1項に記載の起立補助装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記第1アーム部の先端部に相対回転可能に結合し、
前記第2リンクは、前記第2アーム部の先端部に相対回転可能に結合し、
前記第2アーム部の前記先端部から前記回転軸までの距離は、前記第1アーム部の前記先端部から前記回転軸までの距離よりも長い請求項5に記載の起立補助装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは、
前記装置本体に揺動可能に支持されるベース部材と、
前記ベース部材に昇降可能に支持されるロッド部材と、を備え、
前記ロッド部材の先端部は、前記第1アーム部に相対回転可能に結合する請求項5に記載の起立補助装置。
【請求項8】
前記第2リンクは、上下方向に延びており、
前記第2リンクの上端部には、前記腕支持部が設けられ、
前記第2リンクの下端部は、前記第2アーム部に相対回転可能に結合し、
前記第2リンクの前記上端部と前記下端部の間の中間部には、前記係合部が設けられている請求項5に記載の起立補助装置。
【請求項9】
前記アクチュエータは、正逆回転可能な電動モータを含み、
前記第1リンクは、前記電動モータの正回転に従い、第1回転方向に回転し、前記電動モータの逆回転に従い、前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転し、
前記第2リンクは、前記第1リンクの前記第1回転方向の回転に従い、前記係合部を前記ガイド部に沿って移動させながら上昇し、前記第1リンクの前記第2回転方向の回転に従い、前記係合部を前記ガイド部に沿って移動させながら下降する請求項1~3のいずれか1項に記載の起立補助装置。
【請求項10】
前記ガイド部は、前記装置本体の側壁部に設けられたガイド溝であり、
前記係合部は、前記ガイド溝に係合する係合突起である請求項1~3のいずれか1項に記載の起立補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの起立動作を補助するための起立補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間の動作の訓練又は補助に関する研究開発が注目されている。特に、人間の起立動作に関するデータ等を取得し、人間の起立動作を補助するための研究開発が盛んに行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、被介助者の体の一部を支えて、被介助者の起立および着座を補助する介助ロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-209548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の介助ロボットは、モータとアームを3つずつ含む複雑な構成のロボットアーム部によって、被介助者の起立および着座を補助している。そのため、介助ロボットの製造コストが高くなる虞がある。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、簡易な構成によってユーザの起立動作を補助することが可能な起立補助装置を提供することを課題とする。延いては、人間の動作の訓練又は補助に関する研究開発に寄与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、ユーザの起立動作を補助するための起立補助装置(1)であって、回転軸(X)を中心に回転する第1リンク(4)と、前記第1リンクを回転可能に支持する装置本体(3)と、前記第1リンクに回転駆動力を付与するアクチュエータ(5)と、前記第1リンクに相対回転可能に結合する第2リンク(6)と、ユーザ(U)の腕を支えるべく前記第2リンクに設けられる腕支持部(7)と、を備え、前記装置本体には、所定の方向に延びるガイド部(32)が設けられ、前記第2リンクには、前記ガイド部に回転可能に係合する係合部(61)が設けられ、前記第2リンクは、前記第1リンクの回転に従い、前記係合部を前記ガイド部に沿って移動させながら上昇する。
【0008】
この態様によれば、アクチュエータと第1、第2リンクを用いた簡易な構成によって、ユーザの起立動作を補助することができる。
【0009】
上記の態様において、前記腕支持部は、前記第2リンクの上昇に従い、前方に向かって移動した後に上昇しても良い。
【0010】
この態様によれば、ユーザが腕支持部に腕を置くことで、ユーザの上半身が前傾し、ユーザの起立動作の屈曲相が完了する。また、ユーザの腕が置かれた腕支持部が前方に向かって移動することで、ユーザの臀部がシートから離間し、ユーザの起立動作の離殿相が完了する。更に、ユーザの腕が置かれた腕支持部が上昇することで、ユーザの両足が伸びて、ユーザの起立動作の伸展相が完了する。このように、簡易な構成の起立補助装置によって、ユーザの起立動作の3相を補助することができる。
【0011】
上記の態様において、前記第1リンクと前記第2リンクの結合点(Z2)は、前記腕支持部が前方に向かって移動する前の状態において側面視で前記ガイド部の下方に位置し、前記腕支持部が前方に向かって移動した状態において側面視で前記ガイド部と重なり、前記腕支持部が上昇した状態において側面視で前記ガイド部の前方に位置しても良い。
【0012】
この態様によれば、腕支持部の軌道を適切なものにすることができる。
【0013】
上記の態様において、前記腕支持部は、前記第2リンクの上端部に固定され、前後方向に延びる延出部(71)と、前記延出部の上面の前端部に設けられるグリップ(72)と、前記延出部の上面の後端部に設けられる肘当て(73)と、を備え、前記腕支持部が前方に向かって移動する際に、前記肘当てが前記グリップに対して相対的に上昇しても良い。
【0014】
この態様によれば、腕支持部が前方に向かって移動するのに従い、ユーザの上半身の前傾姿勢を維持しつつ、ユーザの臀部をシートから離間させることができる。これにより、ユーザの起立動作の離殿相をより適切に補助することができる。
【0015】
上記の態様において、前記第1リンクは、前記回転軸から第1の方向に延びる第1アーム部(41)と、前記回転軸から前記第1の方向とは異なる第2の方向に延びる第2アーム部(42)と、を備え、前記アクチュエータは、前記第1アーム部に相対回転可能に結合し、前記第2リンクは、前記第2アーム部に相対回転可能に結合しても良い。
【0016】
この態様によれば、簡易な構成の第1リンクによって、アクチュエータと第2リンクを接続することができる。
【0017】
上記の態様において、前記アクチュエータは、前記第1アーム部の先端部に相対回転可能に結合し、前記第2リンクは、前記第2アーム部の先端部に相対回転可能に結合し、前記第2アーム部の前記先端部から前記回転軸までの距離は、前記第1アーム部の前記先端部から前記回転軸までの距離よりも長くても良い。
【0018】
この態様によれば、アクチュエータの小さなストロークで第2リンクを大きく上昇させることができる。
【0019】
上記の態様において、前記アクチュエータは、前記装置本体に揺動可能に支持されるベース部材(51)と、前記ベース部材に昇降可能に支持されるロッド部材(52)と、を備え、前記ロッド部材の先端部は、前記第1アーム部に相対回転可能に結合しても良い。
【0020】
この態様によれば、簡易な構成のアクチュエータによって、第1リンクに回転駆動力を付与することができる。
【0021】
上記の態様において、前記第2リンクは、上下方向に延びており、前記第2リンクの上端部には、前記腕支持部が設けられ、前記第2リンクの下端部は、前記第2アーム部に相対回転可能に結合し、前記第2リンクの前記上端部と前記下端部の間の中間部には、前記係合部が設けられていても良い。
【0022】
この態様によれば、簡易な構成の第2リンクによって、第1リンクと腕支持部を接続することができる。
【0023】
上記の態様において、前記アクチュエータは、正逆回転可能な電動モータ(53)を含み、前記第1リンクは、前記電動モータの正回転に従い、第1回転方向に回転し、前記電動モータの逆回転に従い、前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転し、前記第2リンクは、前記第1リンクの前記第1回転方向の回転に従い、前記係合部を前記ガイド部に沿って移動させながら上昇し、前記第1リンクの前記第2回転方向の回転に従い、前記係合部を前記ガイド部に沿って移動させながら下降しても良い。
【0024】
この態様によれば、電動モータを正逆回転させることによって、ユーザの起立動作と着座動作の両方を補助することができる。
【0025】
上記の態様において、前記ガイド部は、前記装置本体の側壁部(31)に設けられたガイド溝であり、前記係合部は、前記ガイド溝に係合する係合突起であっても良い。
【0026】
この態様によれば、ガイド部と係合部の構成を簡易なものとすることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上の態様によれば、簡易な構成によってユーザの起立動作を補助することが可能な起立補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る起立補助装置において、ユーザの起立動作が開始される前の状態を示す斜視図
図2】本発明の一実施形態に係る起立補助装置において、腕支持部が前方に向かって移動する前の状態を示す側面図
図3】本発明の一実施形態に係る起立補助装置において、腕支持部が前方に向かって移動する前の状態を示す平面図
図4】人間の起立動作を示す説明図
図5】本発明の一実施形態に係る起立補助装置において、ユーザの起立動作の屈曲相が完了した状態を示す斜視図
図6】本発明の一実施形態に係る起立補助装置において、腕支持部が前方に向かって移動した状態を示す側面図
図7】本発明の一実施形態に係る起立補助装置において、ユーザの起立動作の離殿相が完了した状態を示す斜視図
図8】本発明の一実施形態に係る起立補助装置において、腕支持部が上昇した状態を示す側面図
図9】本発明の一実施形態に係る起立補助装置において、ユーザの起立動作の伸展相が完了した状態を示す斜視図
図10】本発明の他の実施形態に係る起立補助装置において、ユーザの起立動作の屈曲相が完了した状態を示す斜視図
図11】本発明の他の実施形態に係る起立補助装置において、ユーザの起立動作の屈曲相が完了した状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0029】
<起立補助装置1>
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る起立補助装置1について説明する。以下、上下、前後、左右等の方向を示す用語は、起立補助装置1を利用するユーザUから見た方向を基準として用いる。各図に適宜付される矢印Frは、起立補助装置1の前方を示す。
【0030】
起立補助装置1は、ユーザUの起立動作及び着座動作を補助するための装置である。ユーザUの起立動作とは、シートS(例えば、ベッドや便座)に着座しているユーザUが起立する動作である。ユーザUの着座動作とは、起立しているユーザUがシートSに着座する動作である。起立補助装置1は、フロアFに敷かれた矩形状のプレートPの右側部に固定されている。
【0031】
図1図3を参照して、起立補助装置1は、装置本体3と、第1リンク4と、アクチュエータ5と、第2リンク6と、腕支持部7と、を備えている。以下、図1図3に示す状態(第2リンク6が最も下降した状態)を基準として、起立補助装置1の構成要素について説明する。
【0032】
<装置本体3>
図1図3を参照して、装置本体3は、箱型を成している。なお、図2では、箱型の装置本体3の内部を表示するために、装置本体3のうちの一方の側壁部31のみが表示されている。
【0033】
装置本体3の側壁部31には、ガイド溝32(ガイド部の一例)が設けられている。ガイド溝32は、上方に向かって前方に傾斜する方向に直線状に延びている。装置本体3の上壁部33は、後方に向かって下方に傾斜している。装置本体3の上壁部33には、貫通穴34が設けられている。貫通穴34は、カバー(図示せず)によって覆われている。
【0034】
<第1リンク4>
図2を参照して、第1リンク4は、装置本体3の下部に収容されている。第1リンク4は、装置本体3の側壁部31に回転可能に支持されており、回転軸Xを中心に回転するように構成されている。
【0035】
第1リンク4は、回転軸Xから前上方(第1の方向の一例)に直線状に延びる第1アーム部41と、回転軸Xから後下方(第2の方向の一例)に直線状に延びる第2アーム部42と、を有する。第1アーム部41と第2アーム部42とは、回転軸Xから互いに逆方向に延びている。第2アーム部42の先端部から回転軸Xまでの距離は、第1アーム部41の先端部から回転軸Xまでの距離よりも長い。
【0036】
<アクチュエータ5>
図2を参照して、アクチュエータ5は、装置本体3の前部に収容されている。アクチュエータ5は、第1リンク4に回転駆動力を付与する装置である。アクチュエータ5は、電動シリンダ機構によって構成された直動型アクチュエータである。アクチュエータ5は、装置本体3の側壁部31に揺動可能に支持されるベース部材51と、ベース部材51に昇降可能に支持されるロッド部材52と、を備える。
【0037】
ベース部材51は、その上端部に設けられた揺動軸Yを中心に揺動するように構成されている。ベース部材51には、電動モータ53が収容されている。電動モータ53は、正逆回転可能に設けられている。
【0038】
ロッド部材52は、ボールねじ機構(図示せず)を介して電動モータ53に接続されており、電動モータ53の正逆回転に応じて昇降するように構成されている。ロッド部材52の先端部(下端部)は、第1結合軸Z1を介して、第1リンク4の第1アーム部41の先端部に相対回転可能に結合している。
【0039】
<第2リンク6>
図1図2を参照して、第2リンク6は、上下方向に直線状に延びている。第2リンク6は、装置本体3の上壁部33に設けられた貫通穴34を貫通している。第2リンク6の上端部は、装置本体3の外部に露出している。第2リンク6の下端部は、装置本体3に収容されている。第2リンク6の下端部は、第2結合軸Z2を介して、第1リンク4の第2アーム部42の先端部に相対回転可能に結合している。
【0040】
第2リンク6の上端部と下端部の間の中間部には、係合突起61(係合部の一例)が設けられている。係合突起61は、装置本体3のガイド溝32に回転可能に係合している。これにより、第2リンク6が装置本体3に昇降可能に支持されると共に、第2リンク6が係合突起61を中心に回転可能となっている。
【0041】
<腕支持部7>
図1図3を参照して、腕支持部7は、ユーザUの右腕を支えるべく第2リンク6の上端部に設けられている。腕支持部7は、前方に向かって延びている。
【0042】
腕支持部7は、前後方向に延びる延出部71と、延出部71の前端部の上面に設けられるグリップ72と、延出部71の後端部の上面に設けられる肘当て73と、を備えている。
【0043】
延出部71の前部は、第2リンク6の上端部に取り付けられている。これにより、腕支持部7が第2リンク6によって支持されている。延出部71は、前後方向に伸縮可能に設けられていても良い。
【0044】
グリップ72は、ユーザUが右手で握る部分である。グリップ72は、上方に向かって前方に傾斜している。グリップ72の先端部には、第2リンク6の上昇操作及び下降操作を受け付ける操作部74が設けられている。
【0045】
肘当て73は、ユーザUが右肘を置く部分である。肘当て73は、前後方向に延びる底壁部76と、底壁部76の左右両側から上方に向かって延びる左右両壁部77と、左右両壁部77の後端部同士を接続すべく、底壁部76の後側から上方に向かって延びる後壁部78と、によって構成されている。
【0046】
<人間の起立動作>
次に、人間の起立動作について説明する。
【0047】
図4を参照して、一般的に、人間の起立動作は、屈曲相、離殿相、伸展相の3相によって構成されている。屈曲相、離殿相、伸展相は、それぞれ、人間の起立動作の第1段階、第2段階、第3段階と言い換えることができる。
【0048】
まず、屈曲相において、人間は、シートに着座したまま上半身を前傾させることで、重心を臀部から両足に移動させる。次に、離殿相において、人間は、臀部を持ち上げることで、臀部をシートから離間させる。最後に、伸展相において、人間は、上半身を起こしながら両足を伸ばす。これにより、人間の起立動作が完了する。
【0049】
<起立動作の補助>
次に、起立補助装置1によるユーザUの起立動作の補助について説明する。
【0050】
図1図2を参照して、ユーザUがシートSに着座している状態では、腕支持部7が装置本体3の後上方に配置されている。また、係合突起61は、ガイド溝32の下端部に係合している。
【0051】
図5を参照して、ユーザUは、まず、シートSに着座したまま、腕支持部7に右腕を置いて右手でグリップ72を握る。これにより、ユーザUの上半身が前傾し、ユーザUの重心が臀部から両足に移動する。即ち、ユーザUの起立動作の屈曲相が完了する。
【0052】
ユーザUは、次に、グリップ72の操作部74に対して第2リンク6の上昇操作を行う。これに応じて、電動モータ53が正回転し、電動モータ53にボールねじ機構(図示せず)を介して接続されたロッド部材52がベース部材51に対して下降する。
【0053】
図6を参照して、このようにロッド部材52がベース部材51に対して下降すると、ベース部材51が揺動軸Yを中心に前方に揺動すると共に、第1リンク4が回転軸Xを中心に第1回転方向(図6では、反時計方向)に回転する。これに従い、第2リンク6が係合突起61を中心に上記の第1回転方向に回転する。同時に、第2リンク6が係合突起61をガイド溝32に沿って移動させながら上昇する。これに従い、腕支持部7が前方に向かって移動する。その際に、腕支持部7の肘当て73がグリップ72に対して相対的に上昇する。
【0054】
図7を参照して、上記のように腕支持部7が前方に向かって移動すると、腕支持部7の動きによる力を受けて腕支持部7に右腕を置いたユーザUの重心が前方に移動することで、ユーザUの臀部がシートSから離間する。即ち、ユーザUの起立動作の離殿相が完了する。
【0055】
図8を参照して、ロッド部材52がベース部材51に対して更に下降すると、ベース部材51が揺動軸Yを中心に後方に揺動すると共に、第1リンク4が回転軸Xを中心に第1回転方向に更に回転する。これに従い、第2リンク6が係合突起61を中心に上記の第1回転方向とは反対の第2回転方向(図6では、時計方向)に回転する。同時に、第2リンク6が係合突起61をガイド溝32に沿って移動させながら更に上昇する。これに従い、腕支持部7が上昇する。
【0056】
図9を参照して、このように腕支持部7が上昇すると、腕支持部7に右腕を置いたユーザUの上半身が上昇し、ユーザUの上半身が起きると共に、ユーザUの両足が伸びる。即ち、ユーザUの起立動作の伸展相が完了し、ユーザUが起立する。
【0057】
なお、起立補助装置1は、上記の作用とは逆の作用によって、ユーザUの着座動作を補助することができる。即ち、ユーザUがグリップ72の操作部74に対して第2リンク6の下降操作を行うと、電動モータ53が逆回転し、ロッド部材52がベース部材51に対して上昇し、第1リンク4が回転軸Xを中心に上記の第2回転方向に回転する。これに従い、第2リンク6が係合突起61をガイド溝32に沿って移動させながら下降し、腕支持部7が下降した後に後方に移動する。
【0058】
<効果>
本実施形態では、アクチュエータ5が第1リンク4に回転駆動力を付与すると、第1リンク4の回転に従い、第2リンク6が係合突起61をガイド溝32に沿って移動させながら上昇する。これにより、アクチュエータ5と第1、第2リンク4、6を用いた簡易な構成によって、ユーザUの起立動作を補助することができる。
【0059】
また、腕支持部7は、第2リンク6の上昇に従い、前方に向かって移動した後に上昇する。これにより、簡易な構成の起立補助装置1によって、ユーザUの起立動作の3相(屈曲相、離殿相、伸展相)を補助することができる。
【0060】
また、図2を参照して、第2結合軸Z2(第1リンク4と第2リンク6の結合点)は、腕支持部7が前方に向かって移動する前の状態において、側面視でガイド溝32の下方に位置している。図6を参照して、第2結合軸Z2は、腕支持部7が前方に向かって移動した状態において、側面視でガイド溝32と重なる。図8を参照して、第2結合軸Z2は、腕支持部7が上昇した状態において、側面視でガイド溝32の前方に位置する。このような第2結合軸Z2とガイド溝32の位置関係により、腕支持部7の軌道を適切なものにすることができる。
【0061】
<変形例>
上記実施形態では、腕支持部7は、延出部71、グリップ72、及び肘当て73によって構成されている。図10を参照して、他の実施形態では、腕支持部7は、延出部71、グリップ72、及び肘当て73に加えて、グリップ72から前方に向かって延びる補助グリップ81を備えていても良い。このような構成により、ユーザUは、一方の手でグリップ72を握り、他方の手で補助グリップ81を握った状態で、起立動作及び着座動作を行うことができる。
【0062】
上記実施形態では、起立補助装置1がプレートPの右側部に固定されている。図10を参照して、他の実施形態では、起立補助装置1がプレートPの左側部に固定されていても良い。この場合、ユーザUは、腕支持部7に左腕を置くことになる。
【0063】
上記実施形態では、起立補助装置1がプレートPの左右一側部のみに固定されている。図11を参照して、他の実施形態では、起立補助装置1がプレートPの左右両側部に固定されていても良い(図11参照)。この場合、ユーザUは、一方の起立補助装置1の腕支持部7に一方の腕を置き、他方の起立補助装置1の腕支持部7に他方の腕を置くことになる。
【0064】
上記実施形態では、起立補助装置1がプレートPに固定されている。他の実施形態では、起立補助装置1がプレートPを介さずにフロアFに直接固定されていても良い。更に、他の実施形態では、装置本体3の下端にキャスターが取り付けられることで、起立補助装置1がフロアFに対して移動可能であっても良い。
【0065】
上記実施形態では、アクチュエータ5は、電動シリンダ機構によって構成されている。他の実施形態では、アクチュエータ5は、電動シリンダ機構以外のシリンダ機構(例えば、油圧シリンダ機構)によって構成されていても良いし、シリンダ機構以外の機構(例えば、カム機構)によって構成されていても良い。
【0066】
上記実施形態では、起立補助装置1は、ユーザUの起立動作と着座動作の両方を補助している。他の実施形態では、起立補助装置1は、ユーザUの起立動作のみを補助しても良い。つまり、起立補助装置1は、少なくともユーザUの起立動作を補助すれば良い。
【0067】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 :起立補助装置
3 :装置本体
4 :第1リンク
5 :アクチュエータ
6 :第2リンク
7 :腕支持部
31 :側壁部
32 :ガイド溝(ガイド部の一例)
41 :第1アーム部
42 :第2アーム部
51 :ベース部材
52 :ロッド部材
53 :電動モータ
61 :係合突起(係合部の一例)
71 :延出部
72 :グリップ
73 :肘当て
U :ユーザ
X :回転軸
Z2 :第2結合軸(第1リンクと第2リンクの結合点)
図1
図2
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