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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155009
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】骨盤運動具
(51)【国際特許分類】
   A63B 22/16 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A63B22/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069338
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】523141976
【氏名又は名称】ダイヤ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 真幸
(72)【発明者】
【氏名】松尾 浩紀
(57)【要約】
【課題】使用者の健康維持を主な目的とした骨盤運動具において、座部の水平な姿勢の維持と容易な傾斜とを両立させる構造を簡素かつ廉価に実現する。
【解決手段】使用者が座る座部2と、平面に置くと上に向く支柱32を設けた基部3と、支柱32に載せた座部2及び基部3を一体に包むカバー4とから構成され、座部2は、下面に設けた平坦な支持面211を、平坦な支柱32の上端面321に接面させた状態で支柱32に載せられ、カバー4は、座部2及び基部3を一体に包んだ状態で、座部2を覆う上面41と基部を覆う下面42とを結ぶ周面43が伸縮自在に緊張している骨盤運動具1である。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が座る座部と、平面に置くと上に向く支柱を設けた基部と、支柱に載せた座部及び基部を一体に包むカバーとから構成され、
座部は、下面に設けた平坦な支持面を、平坦な支柱の上端面に接面させた状態で支柱に載せられ、
カバーは、座部及び基部を一体に包んだ状態で、座部を覆う上面と基部を覆う下面とを結ぶ周面が伸縮自在に緊張している骨盤運動具。
【請求項2】
座部及び基部は、接面する支持面と支柱の上端面との大きさが異なり、支持面又は上端面の小さい方を平面視円形とした請求項1記載の骨盤運動具。
【請求項3】
座部は、平面視の外周形状が円形で、下面の中心を含む位置に支持面が設けられ、
基部は、平面視の外周形状が円形で、上面の中心を含む位置に支柱が設けられ、
カバーは、周面を錐台又は円柱の側面とした請求項1記載の骨盤運動具。
【請求項4】
座部は、支柱の上端面に向けた凸部又は凹部を支持面に設け、
基部は、支持面の凸部又は凹部の転写構造となる凹部又は凸部を支柱の上端面に設け、
座部は、支持面の凸部又は凹部を、支柱の上端面の凹部又は凸部に嵌合させた状態で支柱に載せられた請求項1記載の骨盤運動具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座した使用者の骨盤周囲の運動を促す骨盤運動具に関する。
【背景技術】
【0002】
着座した使用者の骨盤周囲の運動を促す骨盤運動具は、種々提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1が開示する骨盤運動具(腰部運動具)は、基部(基台)が備えた支柱(上盤支持部)に座部(上盤)を支持させた構造で、座部が支柱を支点として傾斜した状態で配置され、かつ座部が支柱を中心とする全方向に傾斜自在になっている(特許文献1・[請求項1])。支柱は、回動自在な球体が取り付けられていることが望ましい(特許文献1・[請求項2])。
【0003】
特許文献1が開示する骨盤運動具は、座部が全方向に傾斜可能であるため、座部に着座した使用者が支柱を中心に重心を円周方向へ移動させて、滑らかに腰部(骨盤周囲)の円運動ができる。円運動は、使用者自らがバランスを保ちながらなされ、無理な動作を強要されないので、熟年者等も安全である。また、特許文献1が開示する骨盤運動具は、使用方法が簡易で動作も軽度であるために継続使用しやすく、継続使用により腰部(骨盤周囲)の疲れや張り等が解消できる。更に、特許文献1が開示する骨盤運動具は、構造が簡素で低廉に作製できる(特許文献1・[0009])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-249710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する骨盤運動具は、座部が全方向に傾斜自在で、使用者が着座しなければ傾斜した姿勢となる。このため、使用者が安定に着座できる座部の水平な姿勢は、使用者自身がバランスをとって実現しなければならない。このような特許文献1が開示する骨盤運動具は、使用者の身体鍛錬を目的とするのであれば問題ないが、腰部(骨盤周囲)のストレッチや筋力低下の防止等の健康維持を目的とすれば、使用者自身がバランスをとって座部の水平な姿勢を実現することは、過度な運動を使用者に強要することになる。
【0006】
使用者の健康維持を目的とした骨盤運動具は、使用者に負担をかけずに座部の水平な姿勢が維持され、使用者に過度な運動を強要することなく座部が傾斜して腰部(骨盤周囲)の運動ができなければならない。更に言えば、使用者の健康維持を目的とした骨盤運動具は、簡素な構造で、廉価に製造できることが望ましい。そこで、使用者の健康維持を主な目的とした骨盤運動具において、座部の水平な姿勢の維持と容易な傾斜とを両立させる構造を簡素かつ廉価に実現するべく、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
検討の結果開発したものが、使用者が座る座部と、平面に置くと上に向く支柱を設けた基部と、支柱に載せた座部及び基部を一体に包むカバーとから構成され、座部は、下面に設けた平坦な支持面を、平坦な支柱の上端面に接面させた状態で支柱に載せられ、カバーは、座部及び基部を一体に包んだ状態で、座部を覆う上面と基部を覆う下面とを結ぶ周面が伸縮自在に緊張している骨盤運動具である。カバーは、座部及び基部を一体に包んだ状態で、座部を覆う生地を上面、基部を覆う生地を下面とし、上面及び下面を結ぶ生地を周面とする。このとき、周面が伸縮自在に緊張していればよいため、周面の生地と上面又は下面の生地とは、一体又は別体を問わない。カバーは、一部に開閉自在な開口を設け、座部及び基部を一体に開口から出し入れ自在にするとよい。
【0008】
座部は、平坦な支持面と上端面とを接面させ、水平な姿勢で支柱に載せられる。水平な姿勢にある座部は、(1)支持面が上端面より大きければ、上端面の周縁の一部に支持された部分を支点として支持面を傾け、(2)支持面が上端面より小さければ、周縁の一部を上端面に支持させた部分を支点として支持面を傾け、(3)支持面が上端面と同じ大きさであれば、上端面の周縁の接する周縁の部分を支点として支持面を傾けて、それぞれ傾斜した姿勢にできる。支持面及び上端面は、座部を支柱に載せるために接面させた状態で比較し、一方の周縁が他方の周縁の全周にわたって外側にあれば大きいとする。
【0009】
周面を伸縮自在としたカバーは、支柱に載せた座部及び基部を一体に包むことにより、支柱に載せただけの座部及び基部の分離を防止する。また、カバーは、座部及び基部を一体に包んだ状態で、緊張状態にした周面で座部及び基部を結ぶことにより、支柱に対して座部を押さえつけるように位置固定し、座部の水平な姿勢を安定させる。そして、座部を傾斜した姿勢にすると、カバーは持ち上げられた座部の側にある周面の部分を伸長させ、座部を元の水平な姿勢に戻す弾性復元力を発生させる。
【0010】
本発明の骨盤運動具において、座部及び基部は、接面する支持面と支柱の上端面との大きさが異なり、支持面又は上端面の小さい方を平面視円形にするとよい。座部は、小さい方の支持面又は上端面が平面視円形の周縁の一部を相手方に支持させて支点とし、傾斜できる。このとき、小さい方の支持面又は上端面の平面視円形である周縁は、周方向のどの部分であっても相手方に同じように支持される。これにより、座部は、全方向に同じ動き及び同じ負荷で傾斜させることができる。
【0011】
本発明の骨盤運動具において、座部は、平面視の外周形状が円形で、下面の中心を含む位置に支持面が設けられ、基部は、平面視の外周形状が円形で、上面の中心を含む位置に支柱が設けられ、カバーは、周面を錐台又は円柱の側面にするとよい。座部及び基部の平面視の外周形状の大きさは、同じでも異なってもよい。座部は、支柱を中心に全方向へ等しく傾斜できる。基部は、座部からの負荷が中心に加わり、全方向に転倒しにくい。カバーは、座部の平面視の外周形状に倣う上面が円形、基部の平面視の外周形状に倣う下面が円形となり、伸縮自在な周面が錐台又は円柱の側面になるので、座部がどの方向に傾斜しても、復元力を同じように発生させることができる。
【0012】
本発明の骨盤運動具において、座部は、支柱の上端面に向けた凸部又は凹部を支持面に設け、基部は、支持面の凸部又は凹部の転写構造となる凹部又は凸部を支柱の上端面に設け、座部は、支持面の凸部又は凹部を、支柱の上端面の凹部又は凸部に嵌合させた状態で支柱に載せられるとよい。座部及び基部は、座部を水平な姿勢にした状態で凸部及び凹部を嵌合させ、位置ずれが防止される。座部及び基部は、座部が傾斜して凸部及び凹部の嵌合が解除されても、座部が水平な姿勢に復帰すると凸部及び凹部が再び嵌合し、位置ずれが防止又は解消される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の骨盤運動具は、使用者の健康維持を主な目的として、座部の水平な姿勢の維持と容易な傾斜とを両立させ、骨盤周囲の適度な運動を使用者に促すことができる。座部の水平な姿勢の維持は、平坦な支持面と支柱の上端面とを接面させた状態で座部を支柱に載せたことによる効果である。周面を伸縮自在としたカバーは、座部及び基部を一体に包み込むことにより、周面の伸縮性を利用して、水平な姿勢な座部の状態を維持する働きや、傾斜した座部を水平な姿勢に復帰する運動を助ける働きがある。
【0014】
支持面又は上端面の小さい方を平面視円形にした本発明の骨盤運動具は、座部を傾斜させる運動が全方向で同じ動き及び同じ負荷となる。これにより、本発明の骨盤運動具の使用者は、骨盤を全方向に同じように傾倒させ、より効用のある骨盤周囲の運動ができる。また、平面視の外周形状が円形である座部の中心を含む支持面を、平面視の外周形状が円形である基部の中心を含む支柱の上端面に載せた本発明の骨盤運動具は、座部を安定に全方向へ傾斜させ、また安定に水平な姿勢に復帰させて、使用者の骨盤の傾倒に際する転倒を防止し、より安全な骨盤周囲の運動を可能にする。
【0015】
支持面及び上端面に凸部及び凹部を振り分けて設けた本発明の骨盤運動具は、座部が水平な姿勢にある状態はもちろん、座部が傾斜して復帰したときでも、凸部及び凹部を嵌合させて、座部及び基部の位置ずれを防止する。これにより、水平な姿勢にある座部に対する使用者の着座安定性が確保される。使用者の着座安定性は、高齢者や体力弱者が本発明の骨盤運動具をより安全に使用できるようにする利点をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用した骨盤運動具の一例を上方から見た斜視図である。
図2】本例の骨盤運動具を下方から見た斜視図である。
図3】本例の骨盤運動具を表す側面図である。
図4】本例の骨盤運動具の座部を下方から、基部を上方から見た斜視図である。
図5】本例の骨盤運動具の座部が傾いた状態を表す側面図である。
図6】本例の骨盤運動具に使用者が着座した状態を表す側面図である。
図7】本例の骨盤運動具に使用者が着座した状態を表す背面図である。
図8】本例の骨盤運動具に着座した使用者が背中を丸めて後方に傾いた状態を表す側面図である。
図9】本例の骨盤運動具に着座した使用者が背中を反らせて前方に傾いた状態を表す側面図である。
図10】本例の骨盤運動具に着座した使用者が右方に屈曲して左方に傾いた状態を表す背面図である。
図11】本例の骨盤運動具に着座した使用者が左方に屈曲して右方に傾いた状態を表す背面図である。
図12】別例1の骨盤運動具の座部を下方から、基部を上方から見た斜視図である。
図13】別例1の骨盤運動具の座部が傾いた状態を表す側面図である。
図14】別例2の骨盤運動具の座部を下方から、基部を上方から見た斜視図である。
図15】別例2の骨盤運動具の座部が傾いた状態を表す側面図である。
図16】別例3の骨盤運動具の座部を下方から、基部を上方から見た斜視図である。
図17】別例3の骨盤運動具の座部が傾いた状態を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の骨盤運動具1は、図1図3に見られるように、使用者が座る座部2と、平面に置くと上に向く支柱32を設けた基部3と、支柱32に載せた座部2及び基部3を一体に包むカバー4とから構成される。カバー4の周面43に囲まれる部分は、座部2の支持板21と基部3の接地板31との間に形成される空間である。これにより、本例の骨盤運動具1は、伸縮性を備えた周面43を撓ませて座部2の下面に手を差し込み、座部2を手に持って移動させることができる。
【0018】
本例の座部2は、平面視の外周形状が円形である樹脂製の支持板21の上面に、支持板21と平面視同形で発泡樹脂製のクッション板22を載せた構成である。支持板21は、平坦な下面全体が支持面211である。支持面211は、支持板21の剛性を高めるため、直交する直線凸条と支持面211の中心と同心とする円環凸条とを交差させた交差凸条212を設けている(図4参照)。支持板21とクッション板22とは、接着により一体化しても、分離自在にクッション板22を支持板21に載せただけでもよい。
【0019】
本例の基部3は、平面視の外周形状が円形である樹脂製の接地板31の上面から、円柱である樹脂製の支柱32を立てた構成である。本例の接地板31は、座部2の支持板21よりも小さい。支柱32は、接地板31の上面中心に同心で設けている。平面視円形である支柱32の上端面321は、交差凸条212の円環凸条を囲む中心部分の転写構造である交差凹溝322が設けられている(図4参照)。座部2は、交差凸条212の直線凸条と交差凹溝322の直線凹溝とを一致させ、交差凸条212の円環凸条を囲む中心部分を交差凹溝322に嵌合させて、支柱32の上端面321に載せる。
【0020】
カバー4は、座部2及び基部3を一体に包んだ状態で、座部2のクッション板22の上面を覆う上面41と、基部3の接地板31の下面を覆う下面42とを、伸縮自在な円錐台状の周面43を緊張状態で結んだ構成である。上面41は、非伸縮性の生地から構成され、クッション板22の平面視形状に等しい円形である。下面42は、上面41を構成する生地に貼り合わせた伸縮性の生地の一部で、接地板31の平面視形状に倣った円形な部分である。上面41及び下面42を結ぶ周面43は、上面41を構成する生地に貼り合わせた伸縮性の生地から下面42の部分を除いた残部で、下面42が上面41より小さいため、下窄まりの円錐台の側面である。
【0021】
カバー4は、少なくとも周面43に伸縮性を要する。本例のカバー4は、上面41を非伸縮の生地で構成しながら、下面42及び周面43を連続する伸縮性の生地で構成し、座部2及び基部3を一体に包んだ状態で、伸縮性の生地に基部3の接地板31が押し当てられる部分を下面42とし、残余を周面43としている。下面42を形成する接地板31が伸縮性の生地を押し広げることから、周面43は緊張状態となる。スライドファスナーで開閉自在な開口44は、上面41を構成する非伸縮の生地と、周面43を構成する伸縮性生地との接合縁に設けている。座部2及び基部3は、一体にして開口44からカバ-4に出し入れできる。
【0022】
本例の骨盤運動具1の座部2は、平坦な支持面211と上端面321とを接面させ、水平な姿勢で支柱32に載せられる。座部2は、被せられたカバー4の周面43が緊張状態にあるから、水平な姿勢が維持される。支持面211及び上端面321は、いずれも平面視円形で、両者を同心に揃えた状態で支持面211が上端面321より大きい。このため、水平な姿勢にある座部2は、図5に見られるように、上端面321の周縁の一部に支持された部分を支点FPとして傾けて、傾斜した姿勢にできる。
【0023】
座部2の交差凸条212と支柱32の交差凹溝321とは半径方向及び周方向の2方向の条及び溝を嵌合させ、支柱32の上端面321に対する座部2の水平位置を特定し、特定された位置から座部2がずれないようにする。交差凸条212及び交差凹溝321の嵌合は、座部2が傾斜すると一時的に解除される。このとき、支柱32の上端面321に対する座部2の水平位置がずれることもあるが、座部2が水平な姿勢に復帰すると、交差凸条212及び交差凹溝321が嵌合しないと座部2が安定に支柱32に載らないため、交差凸条212及び交差凹溝321が再び嵌合して、支柱32の上端面321に対する座部2の水平位置が修正される。
【0024】
本例の骨盤運動具1を用いた骨盤周囲の運動を説明する。骨盤運動具1を用いて骨盤周囲の運動をする場合、使用者5は、図6及び図7に見られるように、骨盤運動具1を椅子や一定の高さの台の上に置き、脚部52を床に接地させた状態で骨盤運動具1に着座する。使用者の骨盤周りの筋肉が正常で、腰部51及び背部53に異常がなければ、使用者5は、自然な背骨の状態に従って腰部51及び背部53を上下方向に揃え、骨盤54を立たせた直立姿勢となり、使用者5の重心を座部2の中心付近に位置させる。これにより、座部2は傾くことなく、水平な姿勢を保つ。
【0025】
骨盤運動具1を用いて骨盤54を前後に傾ける場合、座部2が水平な姿勢にある骨盤運動具1に着座した使用者5が背部53を曲げ、脚部52を爪先立ちにして骨盤54を後方に傾けた姿勢になると、使用者5の重心が座部2の後方にずれ、骨盤運動具1は、図8に見られるように、座部2を後方に傾ける。このとき、骨盤運動具1のカバー4は、座部2の持ち上がった側、すなわち使用者5の前側(図8中右側)の周面43を伸長させ、周面43を縮ませる方向の弾性復元力を発揮させる(図8中向き合う白抜き矢印参照)。これにより、使用者5が骨盤54を後方に傾けた姿勢から直立姿勢に戻ると、座部2は弾性復元力に従って水平な姿勢へと復帰する。
【0026】
座部2が水平な姿勢にある骨盤運動具1に着座した使用者5が背部53を反らせ、脚部52で踏ん張って骨盤54を前方に傾けた姿勢になると、使用者5の重心が座部2の前方にずれ、骨盤運動具1は、図9に見られるように、座部2を前方に傾ける。このとき、骨盤運動具1のカバー4は、座部2の持ち上がった側、すなわち使用者5の後側(図9中左側)の周面43を伸長させ、周面43を縮ませる方向の弾性復元力を発揮させる(図9中向き合う白抜き矢印参照)。これにより、使用者5が骨盤54を前方に傾けた姿勢から直立姿勢に戻ると、座部2は弾性復元力に従って水平な姿勢へと復帰する。
【0027】
骨盤運動具1を用いて骨盤54を左右に傾ける場合、座部2が水平な姿勢にある骨盤運動具1に着座した使用者5が背部53を右に傾けてバランスを取りながら、骨盤54を左方に傾けた姿勢になると、使用者5の重心が座部2の左方にずれ、骨盤運動具1は、図10に見られるように、座部2を左方に傾ける。このとき、骨盤運動具1のカバー4は、座部2の持ち上がった側、すなわち使用者5の右側(図10中右側)の周面43を伸長させ、周面43を縮ませる方向の弾性復元力を発揮させる(図10中向き合う白抜き矢印参照)。これにより、使用者5が骨盤54を左方に傾けた姿勢から直立姿勢に戻ると、座部2は弾性復元力に従って水平な姿勢へと復帰する。
【0028】
座部2が水平な姿勢にある骨盤運動具1に着座した使用者5が背部53を左に傾けてバランスを取りながら、骨盤54を右方に傾けた姿勢になると、使用者5の重心が座部2の右方にずれ、骨盤運動具1は、図11に見られるように、座部2を右方に傾ける。このとき、骨盤運動具1のカバー4は、座部2の持ち上がった側、すなわち使用者5の左側(図11中左側)の周面43を伸長させ、周面43を縮ませる方向の弾性復元力を発揮させる(図11中向き合う白抜き矢印参照)。これにより、使用者5が骨盤54を前方に傾けた姿勢から直立姿勢に戻ると、座部2は弾性復元力に従って水平な姿勢へと復帰する。
【0029】
このように、座部2が水平な姿勢にある骨盤運動具1に着座した使用者5は、背部53を曲げたり(図8参照)、反らしたり(図9参照)、左右に傾けることにより(図10及び図11参照)、骨盤54を前後左右に傾けて骨盤周囲の運動を可能にする。こうした骨盤周囲の運動は、同方向(前後方向又は左右方向)に骨盤54を傾けることを繰り返すほか、前後左右に骨盤54を順番に傾ける回旋運動とすることもできる。回旋運動が可能であることは、座部2の傾きが方向による偏りがなく、全方向に傾倒自在であることによる効果である。
【0030】
座部2が傾いた骨盤運動具1は、座部2が傾くことにより発生するカバー4の周面43による弾性復元力が、過剰な座部2の傾きを抑制し、座部2が水平な姿勢に復帰することを助ける。弾性復元力による過剰な座部2の傾きの抑制は、使用者5が転倒する危険性をなくす。また、座部2が傾いた骨盤運動具1は、座部2を水平な姿勢に復帰させるための過度な運動を使用者5に要求しない。こうして、本発明の骨盤運動具1は、転倒の危険性をなくした安全性と、傾いた座部2を容易に水平な姿勢に復帰させる骨盤周囲の運動を実現する。
【0031】
本発明は、図12及び図13に見られるように、座部2の支持面211が支柱32の上端面321より小さい別例1の骨盤運動具1として構成することもできる。別例1の座部2は、支持板21及びクッション板22を本例(図1以下参照)と同様の構成としながら、支持板21の下面に扁平な円盤状の支持凸板213を設け、支持凸板213の下面を平面視円形の支持面211としている。別例1の支持面211は、支持面211に収まる大きさで、支持面211に同心とした円環凸条214を設けている。
【0032】
別例1の基部3は、接地板31及び支柱32を本例(図1以下参照)と同様の構成としながら、円環凸条214の転写構造である円環凹溝323を、支柱32の上端面321に同心に設けている。座部2は、円環凸条214を円環凹溝323に嵌合させて支柱32の上端面321に載せる。別例1の座部2及び基部3は平面視の外周形状が本例と同じで、カバー4は周面43が伸縮性を有するので、別例1の座部2及び基部3を一体に本例のカバー4を被せることができる。これにより、別例1の骨盤運動具1は、本例と外観上ほぼ同一である。
【0033】
別例1の骨盤運動具1の座部2は、支持凸板213の下面である支持面211と上端面321とを接面させ、水平な姿勢で支柱32に載せられる。水平な姿勢にある座部2は、図13に見られるように、支持凸板213の周縁の一部が上端面321に支持された部分を支点FPとして傾けて、傾斜した姿勢にできる。円環凸条214及び円環凹溝323は、周方向の条及び溝を嵌合させ、支柱32の上端面321に対する座部2の水平位置を特定し、位置ずれを防止する働きを有する。座部2が傾斜して一時的に嵌合が解除された円環凸条214及び円環凹溝323は、座部2が水平な姿勢に復帰すると再び嵌合する。
【0034】
本発明は、図14及び図15に見られるように、条及び溝の嵌合ではなく、単一の凸部及び凹部を嵌合させる別例2の骨盤運動具1として構成することもできる。別例2の座部2は、支持板21及びクッション板22が本例(図1以下参照)と同様の構成で、支持板21の下面を平面視円形の支持面211としながら、支持面211の中心に球面凸部215を設けている。球面凸部215は、支柱32の上端面321に収まる平面視形状で、後述する上端面321の球面凹部324に嵌合する。
【0035】
別例2の座部3は、接地板31及び支柱32を本例(図1以下参照)と同様の構成としながら、球面凸部215の転写構造である球面凹部324を、支柱32の上端面321に同心に設けている。座部2は、球面凸部215を球面凹部324に嵌合させて支柱32の上端面321に載せる。別例2の座部2及び基部3は平面視の外周形状が本例と同じで、カバー4は周面43が伸縮性を有するので、別例2の座部2及び基部3を一体に本例のカバー4を被せることができる。これにより、別例2の骨盤運動具1は、本例と外観上ほぼ同一である。
【0036】
別例2の骨盤運動具1の座部2は、支持板21の下面である支持面211と上端面321とを接面させ、水平な姿勢で支柱32に載せられる。水平な姿勢にある座部2は、図15に見られるように、上端面321の周縁の一部に支持された部分を支点FPとして傾けて、傾斜した姿勢にできる。球面凸部215及び球面凹部324は、半球状の立体形状を一致させて嵌合させ、支柱32の上端面321に対する座部2の水平位置を特定し、位置ずれを防止する働きを有する。座部2が傾斜して一時的に嵌合が解除された球面凸部215及び球面凹部324は、座部2が水平な姿勢に復帰すると再び嵌合する。
【0037】
本発明は、図16及び図17に見られるように、嵌合させる単一の凸部及び凹部の割り当てを座部2及び基部3で逆にした別例3の骨盤運動具1として構成することもできる。別例3の座部2は、支持板21及びクッション板22が本例(図1以下参照)と同様の構成で、支持板21の下面を平面視円形の支持面211としながら、支持面211の中心に円錐台凹部216を設けている。円錐台凹部216は、支柱32の上端面321に収まる平面視形状で、後述する上端面321の円錐台凸部325が嵌合する。
【0038】
別例3の座部2は、接地板31及び支柱32を本例(図1以下参照)と同様の構成としながら、円錐台凹部216の転写構造である円錐台凸部32を、支柱32の上端面321に同心に設けている。座部2は、円錐台凸部32を円錐台凹部216に嵌合させて支柱32の上端面321に載せる。別例3の座部2及び基部3は平面視の外周形状が本例と同じで、カバー4は周面43が伸縮性を有するので、別例3の座部2及び基部3を一体に本例のカバー4を被せることができる。これにより、別例3の骨盤運動具1は、本例と外観上ほぼ同一である。
【0039】
別例3の骨盤運動具1の座部2は、支持板21の下面である支持面211と上端面321とを接面させ、水平な姿勢で支柱32に載せられる。水平な姿勢にある座部2は、図17に見られるように、上端面321の周縁の一部に支持された部分を支点FPとして傾けて、傾斜した姿勢にできる。円錐台凹部216及び円錐台凸部32は、扁平な円錐台形状を一致させて嵌合させ、支柱32の上端面321に対する座部2の水平位置を特定し、位置ずれを防止する働きを有する。座部2が傾斜して一時的に嵌合が解除された円錐台凹部216及び円錐台凸部32は、座部2が水平な姿勢に復帰すると再び嵌合する。
【符号の説明】
【0040】
1 骨盤運動具
2 座部
21 支持板
211 支持面
212 交差凸条
213 支持凸板
214 円環凸条
215 球面凸部
216 円錐台凹部
22 クッション板
3 基部
31 接地板
32 支柱
321 上端面
322 交差凹溝
323 円環凹溝
324 球面凹部
325 円錐台凸部
4 カバー
41 上面
42 下面
43 周面
44 開口
5 使用者
51 腰部
52 脚部
53 背部
54 骨盤
FP 支点

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16
図17