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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155013
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】両軸受リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A01K89/015 C
A01K89/015 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069347
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】家敷 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】林 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】原口 仁志
(72)【発明者】
【氏名】森 成秀
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108EA03
2B108EB01
2B108EG01
2B108EG06
2B108EH04
2B108GA11
(57)【要約】
【課題】部材同士の干渉を防止しつつ両軸受リールを軽量化する。
【解決手段】リール本体1を有する魚釣用の両軸受リールであって、リール本体1に回転可能に支持されるスプール軸3と、スプール軸3が圧入され、釣糸6が巻回される糸巻き胴部40と、糸巻き胴部40の第1端部に設けられる第1フランジ部41と、糸巻き胴部40の第2端部に設けられる第2フランジ部42と、スプール軸3に対する糸巻き胴部40のスプール軸3の軸方向への伸張を規制する規制部と、を備え、規制部は、スプール軸3から径方向外側に突出し、糸巻き胴部40の第1端部に当接する環状凸部71を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体を有する魚釣用の両軸受リールであって、
前記リール本体に回転可能に支持されるスプール軸と、
前記スプール軸が圧入され、釣糸が巻回される糸巻き胴部と、
前記糸巻き胴部の第1端部に設けられる第1フランジ部と、
前記糸巻き胴部の第2端部に設けられる第2フランジ部と、
前記スプール軸に対する前記糸巻き胴部の前記スプール軸の軸方向への伸張を規制する規制部と、
を備える、両軸受リール。
【請求項2】
前記規制部は、前記スプール軸から径方向外側に突出し、前記第1端部に当接する第1凸部を有する、請求項1に記載の両軸受リール。
【請求項3】
前記第1凸部は、前記スプール軸に一体に設けられる環状凸部を有する、請求項2に記載の両軸受リール。
【請求項4】
前記第1凸部は、前記スプール軸に装着される第1止め輪を有する、請求項2に記載の両軸受リール。
【請求項5】
前記第1凸部は、前記スプール軸を径方向に突出する規制ピンを有する、請求項2に記載の両軸受リール。
【請求項6】
前記規制部は、前記スプール軸から径方向外側に突出し、前記第2端部に当接する第2凸部を有する、請求項2乃至5の何れかに記載の両軸受リール。
【請求項7】
前記第2凸部は、前記スプール軸に装着される第2止め輪を有する、請求項6に記載の両軸受リール。
【請求項8】
前記第1凸部及び第2凸部の少なくともいずれかは、前記糸巻き胴部における最大糸巻き幅の範囲よりも前記スプール軸の軸方向の外側に設けられる、請求項6に記載の両軸受リール。
【請求項9】
前記規制部は、
前記糸巻き胴部に設けられた被圧入部と、
前記スプール軸に設けられ、前記被圧入部に圧入する圧入部を有する、請求項1に記載の両軸受リール。
【請求項10】
前記被圧入部は、前記第1端部に設けられた第1被圧入部を有し、
前記圧入部は、前記スプール軸に設けられ、前記第1被圧入部に圧入する第1圧入部を有する、請求項9に記載の両軸受リール。
【請求項11】
前記被圧入部は、前記第2端部に設けられた第2被圧入部を有し、
前記圧入部は、前記スプール軸に設けられ、前記第2被圧入部に圧入する第2圧入部を有する、請求項9又は10のいずれかに記載の両軸受リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用の両軸受リールに関する。
【背景技術】
【0002】
両軸受リールは、釣糸が巻かれるスプールと、スプールと一体に回転するスプール軸を備えている。スプール軸はリール本体に一対の軸受を介して回転可能に支持されている。
【0003】
糸巻き量を確保しつつスプールを軽量化し、両軸受リールを軽量化するためには、スプールの糸巻き胴部の肉厚を薄くすることが必要となる。しかしながら、糸巻き胴部の肉厚を薄くすると、釣糸の締め付け力によって糸巻き胴部が変形し、糸巻き胴部やフランジ部がリール本体に干渉する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-38390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、部材同士の干渉を防止しつつ両軸受リールを軽量化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に係る魚釣用の両軸受リールは、リール本体を有する。両軸受リールは、スプール軸と、糸巻き胴部と、第1フランジ部と、第2フランジ部と、規制部と、を備える。スプール軸は、リール本体に回転可能に支持される。糸巻き胴部には、スプール軸が圧入される。糸巻き胴部には、釣糸が巻回される。第1フランジ部は、糸巻き胴部の第1端部に設けられる。第2フランジ部は、糸巻き胴部の第2端部に設けられる。規制部は、スプール軸に対する糸巻き胴部のスプール軸の軸方向への伸張を規制する。
【0007】
この構成によれば、規制部が、スプール軸に対する糸巻き胴部の伸張を規制する。そのため、糸巻き胴部に釣糸から締め付け力が作用しても、糸巻き胴部の伸張が規制され、糸巻き胴部や第1フランジ部、第2フランジ部等がリール本体に干渉することが防止される。
【0008】
本発明の第1側面に従う第2側面の両軸受リールにおいては、規制部は、第1凸部を有する。第1凸部は、スプール軸から径方向外側に突出する。第1凸部は、糸巻き胴部の第1端部に当接する。この構成によれば、第1凸部が糸巻き胴部の第1端部に当接することにより、糸巻き胴部の伸張が第1凸部によって確実に規制される。
【0009】
本発明の第2側面に従う第3側面の両軸受リールにおいては、第1凸部は、環状凸部を有する。環状凸部は、スプール軸に一体に設けられる。この構成によれば、スプール軸に環状凸部が一体に設けられるので、第1凸部を容易に形成することができると共に、第1凸部の強度も容易に確保することができる。そのため、環状凸部によって糸巻き胴部の伸張を確実に規制することができる。
【0010】
本発明の第2側面に従う第4側面の両軸受リールにおいては、第1凸部は、第1止め輪を有する。第1止め輪は、スプール軸に装着される。この構成によれば、第1止め輪をスプール軸に装着することにより容易に第1凸部を形成することができ、スプール軸の製造が容易になる。
【0011】
本発明の第2側面に従う第5側面の両軸受リールにおいては、第1凸部は、規制ピンを有する。規制ピンは、スプール軸を径方向に突出する。この構成によれば、規制ピンにより容易に第1凸部を形成することができ、スプール軸の製造が容易になる。
【0012】
本発明の第2側面乃至第5側面の何れか一つに従う第6側面の両軸受リールにおいては、規制部は、第2凸部を有する。第2凸部は、スプール軸から径方向外側に突出する。第2凸部は、糸巻き胴部の第2端部に当接する。この構成によれば、第1凸部に加えて第2凸部が設けられることにより、糸巻き胴部の伸張を第1凸部と第2凸部の双方によって両側から確実に規制することができる。
【0013】
本発明の第6側面に従う第7側面の両軸受リールにおいては、第2凸部は、第2止め輪を有する。第2止め輪は、スプール軸に装着される。この構成によれば、第2止め輪をスプール軸に装着することにより容易に第2凸部を形成することができ、スプール軸の製造が容易になる。
【0014】
本発明の第6側面又は第7側面に従う第8側面の両軸受リールにおいては、第1凸部及び第2凸部の少なくともいずれかは、糸巻き胴部における最大糸巻き幅の範囲よりもスプール軸の軸方向の外側に設けられる。この構成によれば、糸巻き胴部の伸張を効果的に規制することができる。
【0015】
本発明の第1側面乃至第8側面の何れか一つに従う第9側面の両軸受リールにおいては、規制部は、被圧入部と、圧入部を有する。被圧入部は、糸巻き胴部に設けられる。圧入部は、スプール軸に設けられる。圧入部は、被圧入部に圧入する。この構成によれば、糸巻き胴部の被圧入部とスプール軸の圧入部とにより、糸巻き胴部の伸張を規制することができる。そのため、規制部を容易に構成することができる。
【0016】
本発明の第9側面に従う第10側面の両軸受リールにおいては、被圧入部は、第1被圧入部を有する。第1被圧入部は、糸巻き胴部の第1端部に設けられる。圧入部は、第1圧入部を有する。第1圧入部は、スプール軸に設けられる。第1圧入部は、第1被圧入部に圧入する。この構成によれば、糸巻き胴部の第1端部に第1被圧入部が設けられるので、糸巻き胴部の第1端部において、糸巻き胴部の伸張を効果的に規制することができる。
【0017】
本発明の第9側面又は第10側面に従う第11側面の両軸受リールにおいては、被圧入部は、第2被圧入部を有する。第2被圧入部は、糸巻き胴部の第2端部に設けられる。圧入部は、第2圧入部を有する。第2圧入部は、スプール軸に設けられる。第2圧入部は、第2被圧入部に圧入する。この構成によれば、糸巻き胴部の第2端部に第2被圧入部が設けられるので、糸巻き胴部の第2端部において、糸巻き胴部の伸張を効果的に規制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、規制部が糸巻き胴部の伸張を規制するので、糸巻き胴部や第1フランジ部、第2フランジ部がリール本体に干渉することを防止することができる。そのため、糸巻き胴部を薄肉軽量化することができ、両軸受リールを軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態における両軸受リールを右側から見た要部外観図。
図2図1のA-A断面図。
図3図2の要部拡大図。
図4図3の要部拡大図。
図5図2の要部拡大図。
図6】同両軸受リールのスプールを示す断面図。
図7】(a)は、同両軸受リールのスプール軸を示す正面図、(b)は、同スプール軸の要部断面図。
図8】同両軸受リールのスプールにスプール軸が圧入された状態を示す断面図。
図9】本発明の他の実施形態における両軸受リールのスプール軸の要部を示し、(a)は正面図、(b)は断面図。
図10】本発明の他の実施形態における両軸受リールのスプール軸の要部を示し、(a)は正面図、(b)は断面図。
図11】(a)は、本発明の他の実施形態における両軸受リールのスプールにスプール軸が圧入された状態を示す要部断面図、(b)は同スプール軸の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る魚釣用の両軸受リールについて、図1図8を参酌しつつ説明する。本実施形態の両軸受リール(以下、単にリールと称する)は、モータで釣糸を巻き取ることができる電動リールである。但し、リールは、電動ではなく手動のものであってもよい。
【0021】
図1及び図2のように、リールは、リール本体1と、ハンドル7と、モータと、スプール2と、スプール軸3と、第1回転伝達機構4と、第2回転伝達機構5とを備える。尚、以下の説明において、スプール2及びスプール軸3の軸方向を左右方向とする。平面視において左右方向と直交する方向を前後方向とする。前後方向は、釣竿の軸方向であり、スプール2から釣糸6が繰り出される方向を前側とする。本実施形態では、ハンドル7は、リール本体1の右側に設けられる。即ち、リールは、右ハンドル仕様である。但し、左ハンドル仕様のリールであってもよい。
【0022】
リール本体1は、釣竿のリールシートに装着される。ハンドル7は、リール本体1に回転可能に取り付けられる。リール本体1は、フレーム10と、フレーム10の左右両側を覆う第1側カバー11及び第2側カバー12とを備える。フレーム10は、装着部10aを有する。装着部10aは、リールシートに装着される。モータはフレーム10に固定される。第1側カバー11は、フレーム10の右側に位置する。即ち、第1側カバー11はハンドル7側に位置する。第2側カバー12は、フレーム10の左側に位置する。即ち、第2側カバー12は、ハンドル7と反対側に位置する。
【0023】
フレーム10は、右側に設けられる第1側板13と、左側に設けられる第2側板14と、第1側板13と第2側板14とを左右方向に連結する複数の連結部15とを有する。第2側板14は、第1側板13に対して左側に間隔をあけて対向して設けられる。連結部15は、例えば、リール本体1の前部、後部、上部及び下部に設けられる。下部の連結部15に装着部10aが設けられる。尚、装着部10aは、連結部15に一体に設けられてもよいし、別体に設けられてもよい。第1側カバー11は、第1側板13を外側であって右側から覆う。第2側カバー12は、第2側板14を外側であって左側から覆う。
【0024】
スプール2は、釣糸6を巻き取る。モータは、釣糸6を巻き取るために、第1回転伝達機構4を介してスプール2を回転させる。尚、スプール2は、ハンドル7を回転させることによっても第1回転伝達機構4を介して回転する。スプール軸3は、スプール2に一体に装着される。スプール軸3は、フレーム10に回転可能に支持される。スプール2は、スプール軸3と一体に回転する。図3から図5に要部の拡大図を示している。スプール軸3は、フレーム10の第1側板13を左右方向に貫通している。第1側板13には、筒状の軸受けホルダ20が装着されている。軸受けホルダ20の内周面に第1軸受21が嵌り込む。スプール軸3は、第1軸受21を介して軸受けホルダ20に回転可能に支持されている。第2側板14には、支持カバー22が装着されている。支持カバー22は、支持筒部22aを有する。支持筒部22aの内周面に第2軸受23が嵌り込む。スプール軸3は、第2軸受23を介して支持カバー22に回転可能に支持される。尚、第2側カバー12は、支持カバー22の左側に配置されて支持カバー22を覆う。第1軸受21及び第2軸受23は、何れもボールベアリングであってよい。
【0025】
スプール2は、第1軸受21と第2軸受23の左右方向の間に位置する。スプール2の右側の端面である第1端面31は、第1軸受21に左側から対峙している。スプール2の左側の端面である第2端面32は、第2軸受23に右側から対峙している。
【0026】
第1回転伝達機構4は、第1側板13の右側(左右方向の外側)に設けられる。従って、第1回転伝達機構4は、第1軸受21よりも右側に位置している。第1側板13と第1側カバー11との間には収容空間33が形成されており、収容空間33に第1回転伝達機構4が収容されている。第1回転伝達機構4は、モータの回転を減速してスプール軸3に伝達する。また、第1回転伝達機構4は、ハンドル7の回転を増速してスプール軸3に伝達する。
【0027】
第2回転伝達機構5は、支持カバー22の右側(左右方向の内側)に設けられ、第2軸受23よりも左側(外側)に位置している。第2回転伝達機構5は、支持カバー22によって覆われている。第2回転伝達機構5は、スプール軸3の回転をレベルワイダ機構に伝達する。
【0028】
図6に、スプール2を単体の状態で示している。スプール2は、糸巻き胴部40と第1フランジ部41と第2フランジ部42とを有する。糸巻き胴部40の第1端部40a(右端部)に第1フランジ部41が設けられ、糸巻き胴部40の第2端部40b(左端部)に第2フランジ部42が設けられる。糸巻き胴部40の第2端部40bは、第1端部40aとは左右方向の反対側の端部である。第1フランジ部41と第2フランジ部42は、糸巻き胴部40の外周面から径方向外側に突出する。第1フランジ部41と第2フランジ部42は環状である。第1フランジ部41と第2フランジ部42は互いに左右方向に対向する。
【0029】
糸巻き胴部40は筒状である。糸巻き胴部40の外周面に釣糸6が巻回される。釣糸6は、第1フランジ部41と第2フランジ部42との左右方向の間に巻回される。糸巻き胴部40の最大糸巻き幅の範囲43は、第1フランジ部41の内側面の第1最外周部41aと、第2フランジ部42の内側面の第2最外周部42aとの間の左右方向の範囲である。
【0030】
スプール軸3は、糸巻き胴部40を左右方向に貫通する。スプール軸3は、糸巻き胴部40の内周面に第1端部40a側から圧入される。糸巻き胴部40の内周面には、右側から順に、第1被圧入部50と、第1逃げ部51と、第2被圧入部52と、第2逃げ部53とが設けられる。第1被圧入部50と第2被圧入部52は被圧入部であり、被圧入部には、後述するスプール軸3の圧入部が圧入する。被圧入部と圧入部は、スプール軸3に対する糸巻き胴部40の左右方向への伸張を規制する規制部である。図中、第1被圧入部50と第2被圧入部52には多数のドットを付して示している。第1被圧入部50と第2被圧入部52にスプール軸3が圧入される。第1被圧入部50及び第2被圧入部52にスプール軸3の外周面が密着する。第1逃げ部51及び第2逃げ部53は、スプール軸3の外周面には当接せず、スプール軸3の外周面に対して径方向外側に離間する。
【0031】
スプール2の第1端面31は、糸巻き胴部40の第1端面と第1フランジ部41の外側面とにより構成される。スプール2の第1端面31の外周部には、即ち、第1フランジ部41の外側面の外周部には、左右方向の外側(右側)に向けて突出する環状の第1係合壁54が設けられる。図2のように第1係合壁54は、第1側板13の第1係合凹部55に係合する。スプール2の第1端面31の径方向中央部には、左側に向けて凹んだ円形の第1凹部56が設けられる。図4のように第1被圧入部50は、面取り部57を介して第1凹部56に隣接する。第1被圧入部50は、糸巻き胴部40の第1端部40aに設けられる。
【0032】
第1逃げ部51は、第1被圧入部50と第2被圧入部52との左右方向の間に設けられる。第1逃げ部51は、第1被圧入部50及び第2被圧入部52に隣接する。第1逃げ部51は、糸巻き胴部40の内周面の全長のうち半分以上を占め、大部分を占めている。第1逃げ部51は、第1被圧入部50よりも大径であり、第2被圧入部52よりも大径である。
【0033】
第2被圧入部52は、糸巻き胴部40の第2端部40bに設けられる。第2被圧入部52は、第1被圧入部50よりも小径である。即ち、第2被圧入部52は、糸巻き胴部40の内周面において最も小径の部分である。第2逃げ部53は、第2被圧入部52の外側(左側)に隣接している。第2逃げ部53は、第2被圧入部52よりも大径であり、第1逃げ部51よりも大径である。
【0034】
スプール2の第2端面32は、糸巻き胴部40の第2端面と第2フランジ部42の外側面とにより構成される。スプール2の第2端面32の外周部には、即ち、第2フランジ部42の外側面の外周部には、左右方向の外側(左側)に向けて突出する環状の第2係合壁58が設けられる。図2のように、第2係合壁58は、支持カバー22の第2係合凹部59に係合する。スプール2の第2端面32の径方向中央部には、右側に向けて凹んだ円形の第2凹部60が設けられる。図5のように、第2凹部60の最内周部であって糸巻き胴部40の内周面との境界部には、左側に向けて突出する環状のスラスト凸部61が設けられている。スラスト凸部61は、第2凹部60の底面から左側に突出する。スラスト凸部61の突出量は、第2凹部60の凹み量よりも小さい。スラスト凸部61は、第2凹部60よりも外側に突出せず、第2凹部60内に留まる。
【0035】
図7に、スプール軸3を単体の状態で示している。スプール軸3の外周面には、第1支持部70と、第1支持部70の左側に隣接する環状凸部71と、環状凸部71の左側に隣接する第1圧入部72と、第1圧入部72の左側に隣接する中間部73と、中間部73の左側に隣接する第2圧入部74と、第2圧入部74の左側に隣接する第2支持部75とが設けられる。図中、第1圧入部72と第2圧入部74には多数のドットを付して示している。
【0036】
第1支持部70は、第1軸受21に支持される。環状凸部71は、スプール軸3から径方向外側に突出して糸巻き胴部40の第1端部40aに当接する第1凸部である。第1凸部は、スプール軸3に対する糸巻き胴部40の左右方向への伸張を規制する規制部である。環状凸部71は、第1支持部70よりも大径であり、第1圧入部72よりも大径である。環状凸部71は、スプール軸3の外周面に一体に形成される。環状凸部71は、スプール軸3の外周面から径方向外側に全周に亘って突出する。環状凸部71は、第1軸受21の第1内輪21aよりも大径であることが好ましく、第1軸受21の第1外輪21bよりも小径であることが好ましい。環状凸部71は、第1軸受21の第1内輪21aと第1外輪21bのうち第1内輪21aのみに左右方向に当接可能であることが好ましい。環状凸部71は、スプール2の第1端面31の第1凹部56の底面に右側から当接する。環状凸部71がスプール2の第1端面31の第1凹部56の底面に当接することにより、スプール軸3はそれ以上スプール2に対して左側に圧入されず、スプール2に対するスプール軸3の左右方向の位置が定まる。即ち、環状凸部71は、スプール2にスプール軸3を圧入する際のストッパとして機能し、位置決めとして機能する。
【0037】
環状凸部71は、スプール2の第1端面31の第1凹部56よりも小径である。環状凸部71は、スプール2の第1端面31の第1凹部56に入り込む。環状凸部71の左右方向の寸法は、第1凹部56の深さ(左右方向の寸法)と同じかそれよりも小さいことが好ましい。環状凸部71は、第1凹部56から右側に突出しないことが好ましく、第1凹部56内に留まることが好ましい。環状凸部71は、糸巻き胴部40の外周面において径一定の範囲44よりも左右方向の外側(右側)に位置することが好ましい。また、環状凸部71は、糸巻き胴部40の最大糸巻き幅の範囲43よりも左右方向の外側(右側)に位置することが好ましい。環状凸部71は、第1フランジ部41の径方向内側に位置することが好ましい。
【0038】
図8にも示しているように、第1圧入部72は、第1被圧入部50に圧入する。第1圧入部72は、第1被圧入部50よりも大径である。第1圧入部72は、第1被圧入部50に、第1締め代(圧入代)で圧入される。第1締め代は、第1圧入部72と第1被圧入部50との間の径方向の寸法差である。第1圧入部72の左右方向の長さは、第1被圧入部50の左右方向の長さよりも長い。従って、第1圧入部72は、第1被圧入部50の径方向内側に位置すると共に、第1逃げ部51の径方向内側にも部分的に位置する。第1圧入部72は、第1逃げ部51よりも小径である。
【0039】
中間部73は、第1圧入部72よりも小径である。中間部73の左右方向の長さは、第1圧入部72の左右方向の長さよりも長く、第2圧入部74の左右方向の長さよりも長い。中間部73の左右方向の長さは、第1逃げ部51の左右方向の長さよりも短い。中間部73は、第1逃げ部51の径方向内側に位置する。中間部73は、第1逃げ部51よりも小径である。
【0040】
第2圧入部74は、中間部73よりも小径である。第2圧入部74は、第2被圧入部52に圧入する。第2圧入部74は、第2被圧入部52よりも大径である。第2圧入部74は、第2被圧入部52に、第2締め代(圧入代)で圧入される。第2締め代は、第2圧入部74と第2被圧入部52との間の径方向の寸法差である。第2締め代は、第1締め代よりも大きい。第2圧入部74の左右方向の長さは、第2被圧入部52の左右方向の長さよりも長い。第2圧入部74は、第2被圧入部52の径方向内側に位置すると共に、第1逃げ部51の径方向内側にも部分的にはみ出し、第2逃げ部53の径方向内側にも部分的にはみ出している。第2圧入部74は、第1逃げ部51よりも小径であり、第2逃げ部53よりも小径である。
【0041】
第2圧入部74には、回り止め加工部76が設けられることが好ましい。回り止め加工部76は、第2圧入部74の左右方向の全長に亘って設けられることが好ましい。回り止め加工部76は、スプール2とスプール軸3との間の相対的な回転を抑制する機能を有する。また、回り止め加工部76は、スプール2とスプール軸3との間の左右方向の相対移動を抑制する機能を有する。回り止め加工部76は、例えばローレット等である。ローレットは左右方向に沿う平目であってもよいし、綾目であってもよい。第1圧入部72にも回り止め加工部76を設けることもできる。尚、第2圧入部74に回り止め加工部76を設ける一方、第1圧入部72には回り止め加工部76を設けないことが好ましい。
【0042】
第2支持部75は、第2軸受23に支持される。第2支持部75は、第2圧入部74よりも小径である。第2支持部75は、その大部分が第2逃げ部53よりも左右方向の外側(左側)に位置する。第2軸受23の第2内輪23aに、スプール2のスラスト凸部61が当接、あるいは、若干の隙間を介して対峙する。スラスト凸部61は、第2軸受23の第2外輪23bよりも小径であり、従って、スラスト凸部61は、第2軸受23の第2内輪23aにのみ当接可能であって、第2外輪23bには当接しない。
【0043】
以上のように、本実施形態におけるリールにおいては、スプール軸3に規制部としての環状凸部71が設けられ、その環状凸部71が糸巻き胴部40の第1端部40aに当接する。釣糸6が糸巻き胴部40に巻回されると、糸巻き胴部40が釣糸6によって締め付けられて、糸巻き胴部40がスプール軸3に対して左右方向に伸張しようとする。この現象は、特に、釣糸6がフロロカーボンの場合に顕著である。釣糸6の締め付け力によって糸巻き胴部40がスプール軸3に対して右側に伸張しようとしても、その伸張を環状凸部71が確実に規制する。そのため、糸巻き胴部40の伸張によってスプール2がフレーム10の第1側板13や軸受けホルダ20等に干渉する、ということが防止され、スプール2の安定した回転が確保される。また、糸巻き胴部40の伸張によって第1軸受21に大きなスラスト荷重(左右方向の力)が作用するということも防止され、第1軸受21の損傷も防止できる。
【0044】
特に、環状凸部71がスプール軸3に一体に形成されているので、環状凸部71がガタ付くことなくスプール2を右側からしっかりと支えてスプール2の伸張を防止する。また、環状凸部71の位置や形状寸法の精度を容易に高めることができ、その結果、糸巻き胴部40の伸張を確実に防止することができる。また、環状凸部71がスプール軸3の外周面の全周に亘って形成されているので、スプール2から環状凸部71に作用する力が周方向に分散される。そのため、環状凸部71の損傷も防止でき、環状凸部71の薄肉化も可能となる。
【0045】
また、環状凸部71が糸巻き胴部40の外周面における径一定の範囲44よりも右側に位置しているので、糸巻き胴部40の右側への伸張を効果的に規制することができる。更に、環状凸部71が糸巻き胴部40の最大糸巻き幅の範囲43よりも右側に位置しているので、糸巻き胴部40の右側への伸張をより一層効果的に規制することができる。また、環状凸部71が第1フランジ部41の径方向内側に位置しているので、糸巻き胴部40の右側への伸張をより一層効果的に規制することができる。環状凸部71が第1支持部70に隣接しているので、第1軸受21の損傷を効果的に防止することができる。
【0046】
更に、糸巻き胴部40の第1端部40aに、規制部として第1圧入部72及び第1被圧入部50が設けられているので、環状凸部71と共に第1圧入部72及び第1被圧入部50が糸巻き胴部40の右側への伸張を効果的に規制する。環状凸部71と第1圧入部72及び第1被圧入部50とが左右方向に隣接しているので、環状凸部71と第1圧入部72及び第1被圧入部50とが一体となって糸巻き胴部40の右側への伸張を規制する。第1圧入部72及び第1被圧入部50の少なくとも一部が糸巻き胴部40の外周面における径一定の範囲44よりも右側に位置しているので、糸巻き胴部40の右側への伸張を効果的に規制することができる。更に、第1圧入部72及び第1被圧入部50の少なくとも一部が糸巻き胴部40の最大糸巻き幅の範囲43よりも右側に位置しているので、糸巻き胴部40の右側への伸張をより一層効果的に規制することができる。また、第1圧入部72及び第1被圧入部50の少なくとも一部が第1フランジ部41の径方向内側に位置しているので、糸巻き胴部40の右側への伸張をより一層効果的に規制することができる。
【0047】
一方、糸巻き胴部40の第2端部40bには、規制部として第2圧入部74及び第2被圧入部52が設けられているので、スプール軸3に対する糸巻き胴部40の左側への伸張を規制することができる。そのため、スプール2とフレーム10の第2側板14や支持カバー22との間の干渉が防止される。また、第2軸受23の損傷も防止できる。特に、第2圧入部74及び第2被圧入部52の少なくとも一部が糸巻き胴部40の外周面における径一定の範囲44よりも左側に位置しているので、糸巻き胴部40の左側への伸張を効果的に規制することができる。更に、第2圧入部74及び第2被圧入部52の少なくとも一部が糸巻き胴部40の最大糸巻き幅の範囲43よりも左側に位置しているので、糸巻き胴部40の左側への伸張をより一層効果的に規制することができる。また、第2圧入部74及び第2被圧入部52の少なくとも一部が第2フランジ部42の径方向内側に位置しているので、糸巻き胴部40の左側への伸張をより一層効果的に規制することができる。第2圧入部74が第2支持部75に隣接しているので、第2軸受23の損傷を効果的に防止することができる。第2締め代が第1締め代よりも大きいので、糸巻き胴部40の左側への伸張を効果的に規制することができると共に圧入工程も容易になる。スプール2の内周面において第1被圧入部50と第2被圧入部52の間に第1逃げ部51が設けられているので、スプール2にスプール軸3を正確に且つ容易に圧入することができる。
【0048】
尚、本実施形態では、第1凸部として環状凸部71がスプール軸3に一体に形成されていたが、第1凸部がスプール軸3に周方向に間隔をあけて複数箇所に一体的に形成されていてもよい。
【0049】
また、第1凸部がスプール軸3とは別体の構成であってもよい。例えば、図9のように、第1凸部が第1止め輪80であってもよい。第1止め輪80は、スプール軸3の外周面に形成された第1環状溝81に装着される。第1止め輪80が糸巻き胴部40の第1端部40aに当接する。第1止め輪80は、例えばE型止め輪(Eリング)やC型止め輪(Cリング)等がある。このように、第1凸部として第1止め輪80が設けられることにより、スプール軸3の外周面の切削代を減少させることができ、スプール軸3の製造が容易になり、スプール軸3を安価に製造できる。
【0050】
また更に、図10のように第1凸部が規制ピン83であってもよい。スプール軸3にはスプール軸3を径方向に貫通する横孔84が形成され、その横孔84に規制ピン83が挿通されて固定される。例えば、規制ピン83は、横孔84に圧入されたり、接着されたりする。規制ピン83の両端部はスプール軸3の外周面から突出する。規制ピン83の両端部は突出端部83aである。規制ピン83の突出端部83aが第1凸部となって糸巻き胴部40の第1端部40aに当接する。
【0051】
尚、規制部は、第2凸部を有していてもよい。第2凸部は、スプール軸3から径方向外側に突出して糸巻き胴部40の第2端部40bに当接する。第2凸部の構成は種々であってよいが、例えば、図11のように、スプール軸3の第2環状溝91に装着される第2止め輪90であってもよい。第2止め輪90は、第1止め輪80と同様に、E型止め輪(Eリング)やC型止め輪(Cリング)等であってよい。このように、第2止め輪90を設けることにより、糸巻き胴部40のスプール軸3に対する左側への相対的な伸張を第2止め輪90によって確実に規制することができる。また、スプール2にスプール軸3を圧入した後に、スプール軸3に第2止め輪90を装着することができ、スプール軸3の構成が容易になると共に組み立て作業性が向上する。尚、図11において第2圧入部74に回り止め加工部76を設けているが、回り止め加工部76を省略してもよい。
【0052】
尚、第2凸部としてスプール軸3を径方向に貫通する第2規制ピンを設けてもよい。また、第2凸部は、第1凸部と同様に、糸巻き胴部40の外周面において径一定の範囲44よりも左右方向の外側(左側)に設けてもよい。第2凸部は、糸巻き胴部40の最大糸巻き幅の範囲43よりも左右方向の外側(左側)に設けてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 リール本体
2 スプール
3 スプール軸
4 第1回転伝達機構
5 第2回転伝達機構
6 釣糸
7 ハンドル
10 フレーム
10a 装着部
11 第1側カバー
12 第2側カバー
13 第1側板
14 第2側板
15 連結部
20 軸受けホルダ
21 第1軸受
21a 第1内輪
21b 第1外輪
22 支持カバー
22a 支持筒部
23 第2軸受
23a 第2内輪
23b 第2外輪
31 第1端面
32 第2端面
33 収容空間
40 糸巻き胴部
40a 第1端部
40b 第2端部
41 第1フランジ部
41a 第1最外周部
42 第2フランジ部
42a 第2最外周部
43 最大糸巻き幅の範囲
44 径一定の範囲
50 第1被圧入部(規制部、被圧入部)
51 第1逃げ部
52 第2被圧入部(規制部、被圧入部)
53 第2逃げ部
54 第1係合壁
55 第1係合凹部
56 第1凹部
57 面取り部
58 第2係合壁
59 第2係合凹部
60 第2凹部
61 スラスト凸部
70 第1支持部
71 環状凸部(規制部、第1凸部)
72 第1圧入部(規制部、圧入部)
73 中間部
74 第2圧入部(規制部、圧入部)
75 第2支持部
76 回り止め加工部(規制部)
80 第1止め輪(規制部、第1凸部)
81 第1環状溝
83 規制ピン
83a 突出端部(規制部、第1凸部)
84 横孔
90 第2止め輪(規制部、第2凸部)
91 第2環状溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11