(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155021
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】データ収集装置、データ収集方法及びデータ収集用コンピュータプログラムならびにデータ収集システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20241024BHJP
H04W 72/02 20090101ALI20241024BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20241024BHJP
【FI】
G08G1/01 A
H04W72/02
H04W4/44
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069370
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅浩
【テーマコード(参考)】
5H181
5K067
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF05
5H181MC19
5H181MC21
5K067BB03
5K067EE02
5K067EE16
5K067GG06
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】ある程度連続した区間にわたって得られた地物を表す一連のデータを欠損なく他の機器へ送信することが可能なデータ収集装置を提供する。
【解決手段】データ収集装置は、車両2の走行中において車両2に搭載されたカメラ21により生成された車両2の周囲を表す画像を記憶部32に保存する画像保存部41と、画像から検出した、車両2の周囲に存在する所定の地物を表すプローブデータを生成し、生成したプローブデータを記憶部32に保存する検出部42と、記憶部32に記憶されている一連のプローブデータのデータ量に応じて、プローブ用通信帯域を設定する通信帯域設定部43と、プローブ用通信帯域を用いることで、一連のプローブデータを記憶部32に記憶されている一連の画像よりも優先して通信装置23を介してサーバ4へ送信する通信処理部44とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行中において前記車両に搭載されたカメラにより生成された前記車両の周囲を表す画像を記憶部に保存する画像保存部と、
前記画像から所定の地物を検出し、検出した前記地物を表すプローブデータを生成し、生成した前記プローブデータを前記記憶部に保存する検出部と、
前記記憶部に記憶されている一連の前記プローブデータのデータ量に応じて、一連の前記プローブデータの全てを前記車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信できるように、前記通信装置と前記サーバ間の通信回線の通信帯域に占めるプローブ用通信帯域を設定する通信帯域設定部と、
前記プローブ用通信帯域を用いることで、一連の前記プローブデータを前記記憶部に記憶されている一連の前記画像よりも優先して前記通信装置を介して前記サーバへ送信するとともに、前記通信回線の前記通信帯域のうち、前記プローブ用通信帯域以外の残り通信帯域を用いて、一連の前記画像を、前記通信装置を介して前記サーバへ送信する通信処理部と、
を有するデータ収集装置。
【請求項2】
前記通信処理部は、収集対象領域を通る所定距離以上の区間にわたって生成された一連の前記プローブデータを前記サーバへ送信した後において、前記収集対象領域を前記車両が走行したときに生成され、かつ未送信の前記画像が前記記憶部に記憶されている場合、当該未送信の画像を前記記憶部に記憶されている他のプローブデータよりも優先して前記通信装置を介して前記サーバへ送信する、請求項1に記載のデータ収集装置。
【請求項3】
前記通信帯域設定部は、前記記憶部に記憶されている一連の前記プローブデータのデータ量が多いほど、前記プローブ用通信帯域を広くする、請求項1または2に記載のデータ収集装置。
【請求項4】
前記通信帯域設定部は、前記記憶部における、前記プローブデータ保存用の記憶領域に占める一連の前記プローブデータのデータ量の比率が所定の閾値以上となる場合、直近の所定期間において単位時間あたりに前記記憶領域に保存された前記プローブデータのデータ量よりも、単位時間あたりに前記サーバへ送信可能な前記プローブデータのデータ量の方が大きくなるように前記プローブ用通信帯域を設定する、請求項3に記載のデータ収集装置。
【請求項5】
車両の走行中において、前記車両に搭載されたカメラにより生成された前記車両の周囲を表す画像を記憶部に保存し、
前記画像から所定の地物を検出し、検出した前記地物を表すプローブデータを生成し、生成した前記プローブデータを前記記憶部に保存し、
前記記憶部に記憶されている一連の前記プローブデータのデータ量に応じて、一連の前記プローブデータの全てを前記車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信できるように、前記通信装置と前記サーバ間の通信回線の通信帯域に占めるプローブ用通信帯域を設定し、
前記プローブ用通信帯域を用いることで、一連の前記プローブデータを前記記憶部に記憶されている一連の前記画像よりも優先して前記通信装置を介して前記サーバへ送信するとともに、前記通信回線の前記通信帯域のうち、前記プローブ用通信帯域以外の残り通信帯域を用いて、一連の前記画像を、前記通信装置を介して前記サーバへ送信する、
ことを含むデータ収集方法。
【請求項6】
車両の走行中において、前記車両に搭載されたカメラにより生成された前記車両の周囲を表す画像を記憶部に保存し、
前記画像から所定の地物を検出し、検出した前記地物を表すプローブデータを生成し、生成した前記プローブデータを前記記憶部に保存し、
前記記憶部に記憶されている一連の前記プローブデータのデータ量に応じて、一連の前記プローブデータの全てを前記車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信できるように、前記通信装置と前記サーバ間の通信回線の通信帯域に占めるプローブ用通信帯域を設定し、
前記プローブ用通信帯域を用いることで、一連の前記プローブデータを前記記憶部に記憶されている一連の前記画像よりも優先して前記通信装置を介して前記サーバへ送信するとともに、前記通信回線の前記通信帯域のうち、前記プローブ用通信帯域以外の残り通信帯域を用いて、一連の前記画像を、前記通信装置を介して前記サーバへ送信する、
ことを前記車両に搭載されたプロセッサに実行させるデータ収集用コンピュータプログラム。
【請求項7】
車両に搭載されたデータ収集装置と、前記データ収集装置と通信可能に接続されるサーバとを有するデータ収集システムであって、
前記データ収集装置は、
記憶部と、
前記車両の走行中において前記車両に搭載されたカメラにより生成された前記車両の周囲を表す画像を前記記憶部に保存する画像保存部と、
前記画像から所定の地物を検出し、検出した前記地物を表すプローブデータを生成し、生成した前記プローブデータを前記記憶部に保存する検出部と、
前記記憶部に記憶されている一連の前記プローブデータのデータ量に応じて、一連の前記プローブデータの全てを前記車両に搭載された通信装置を介して前記サーバへ送信できるように、前記通信装置と前記サーバ間の通信回線の通信帯域に占めるプローブ用通信帯域を設定する通信帯域設定部と、
前記プローブ用通信帯域を用いることで、一連の前記プローブデータを前記記憶部に記憶されている一連の前記画像よりも優先して前記通信装置を介して前記サーバへ送信するとともに、前記通信回線の前記通信帯域のうち、前記プローブ用通信帯域以外の残り通信帯域を用いて、一連の前記画像を、前記通信装置を介して前記サーバへ送信する通信処理部と、
を有するデータ収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図を生成または更新するために用いられるデータを収集するデータ収集装置、データ収集方法及びデータ収集用コンピュータプログラムならびにデータ収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転システムが車両を自動運転制御するために参照する高精度な地図には、道路に関する情報を正確に表していることが求められる。そこで、所定の領域を実際に走行した車両から、その車両に搭載されたセンサにより得られた、その所定の領域内の道路または道路の周囲の地物を表すデータが収集される。ただし、車両とサーバ間の通信回線の通信容量には制限が有る。そのため、場合によっては、車両側でデータを一時保存する記憶装置の容量が足りずに、データがサーバへ送信される前に記憶装置から消去されてしまうことがある。そこで、車両において検出されたデータの収集において、車載装置と外部装置との間の通信回線の回線速度の変化に応じて、車載センサのセンサ情報を適切な順序で外部装置にアップロードするための技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された技術では、車載装置は、通信回線の回線速度情報に基づき、センサ情報の解析結果及びセンサ情報のうちいずれを優先して送信するかを判定する。そして車載装置は、その判定結果に応じて、解析結果及びセンサ情報のうちいずれかを優先して送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地物を表すデータの収集対象となる道路区間の途中でデータの送信が途切れると、サーバ側で収集されるデータが不十分となるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、ある程度連続した区間にわたって得られた地物を表す一連のデータを欠損なく他の機器へ送信することができるデータ収集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、データ収集装置が提供される。このデータ収集装置は、車両の走行中において車両に搭載されたカメラにより生成された車両の周囲を表す画像を記憶部に保存する画像保存部と、画像から所定の地物を検出し、検出した地物を表すプローブデータを生成し、生成したプローブデータを記憶部に保存する検出部と、記憶部に記憶されている一連のプローブデータのデータ量に応じて、その一連のプローブデータの全てを車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信できるように、通信装置とサーバ間の通信回線の通信帯域に占めるプローブ用通信帯域を設定する通信帯域設定部と、プローブ用通信帯域を用いることで、一連のプローブデータを記憶部に記憶されている一連の画像よりも優先して通信装置を介してサーバへ送信するとともに、通信回線の通信帯域のうち、プローブ用通信帯域以外の残り通信帯域を用いて、一連の画像を、通信装置を介してサーバへ送信する通信処理部とを有する。
【0008】
また、このデータ収集装置において、通信処理部は、収集対象領域を通る所定距離以上の区間にわたって生成された一連のプローブデータをサーバへ送信した後において、収集対象領域を車両が走行したときに生成され、かつ未送信の画像が記憶部に記憶されている場合、その未送信の画像を記憶部に記憶されている他のプローブデータよりも優先して通信装置を介してサーバへ送信することが好ましい。
【0009】
また、このデータ収集装置において、通信帯域設定部は、記憶部に記憶されている一連のプローブデータのデータ量が多いほど、プローブ用通信帯域を広くすることが好ましい。
【0010】
さらに、通信帯域設定部は、記憶部における、プローブデータ保存用の記憶領域に占める一連のプローブデータのデータ量の比率が所定の閾値以上となる場合、直近の所定期間において単位時間あたりに記憶領域に保存されたプローブデータのデータ量よりも、単位時間あたりにサーバへ送信可能なプローブデータのデータ量の方が大きくなるようにプローブ用通信帯域を設定することが好ましい。
【0011】
本発明の他の形態によれば、データ収集方法が提供される。このデータ収集方法は、車両の走行中において車両に搭載されたカメラにより生成された車両の周囲を表す画像を記憶部に保存し、画像から所定の地物を検出し、検出した地物を表すプローブデータを生成し、生成したプローブデータを記憶部に保存し、記憶部に記憶されている一連のプローブデータのデータ量に応じて、その一連のプローブデータの全てを車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信できるように、通信装置とサーバ間の通信回線の通信帯域に占めるプローブ用通信帯域を設定し、プローブ用通信帯域を用いることで、一連のプローブデータを記憶部に記憶されている一連の画像よりも優先して通信装置を介してサーバへ送信するとともに、通信回線の通信帯域のうち、プローブ用通信帯域以外の残り通信帯域を用いて、一連の画像を、通信装置を介してサーバへ送信する、ことを含む。
【0012】
本発明のさらに他の形態によれば、データ収集用コンピュータプログラムが提供される。このデータ収集用コンピュータプログラムは、車両の走行中において車両に搭載されたカメラにより生成された車両の周囲を表す画像を記憶部に保存し、画像から所定の地物を検出し、検出した地物を表すプローブデータを生成し、生成したプローブデータを記憶部に保存し、記憶部に記憶されている一連のプローブデータのデータ量に応じて、その一連のプローブデータの全てを車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信できるように、通信装置とサーバ間の通信回線の通信帯域に占めるプローブ用通信帯域を設定し、プローブ用通信帯域を用いることで、一連のプローブデータを記憶部に記憶されている一連の画像よりも優先して通信装置を介してサーバへ送信するとともに、通信回線の通信帯域のうち、プローブ用通信帯域以外の残り通信帯域を用いて、一連の画像を、通信装置を介してサーバへ送信する、ことを車両に搭載されたプロセッサに実行させる命令を含む。
【0013】
本発明のさらに他の形態によれば、車両に搭載されたデータ収集装置と、データ収集装置と通信可能に接続されるサーバとを有するデータ収集システムが提供される。このデータ収集システムにおいて、データ収集装置は、記憶部と、車両の走行中において車両に搭載されたカメラにより生成された車両の周囲を表す画像を記憶部に保存し、画像から所定の地物を検出し、検出した地物を表すプローブデータを生成し、生成したプローブデータを記憶部に保存する検出部と、記憶部に記憶されている一連のプローブデータのデータ量に応じて、その一連のプローブデータの全てを車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信できるように、通信装置とサーバ間の通信回線の通信帯域に占めるプローブ用通信帯域を設定する通信帯域設定部と、プローブ用通信帯域を用いることで、一連のプローブデータを記憶部に記憶されている一連の画像よりも優先して通信装置を介してサーバへ送信するとともに、通信回線の通信帯域のうち、プローブ用通信帯域以外の残り通信帯域を用いて、一連の画像を、通信装置を介してサーバへ送信する通信処理部とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係るデータ収集装置は、ある程度連続した区間にわたって得られた地物を表す一連のデータを欠損なく他の機器へ送信することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】データ収集装置が実装されるデータ収集システムの概略構成図である。
【
図3】一つの実施形態によるデータ収集装置のハードウェア構成図である。
【
図4】データ収集装置のプロセッサの機能ブロック図である。
【
図5】(a)及び(b)は、それぞれ、未送信のプローブデータのデータ量と一フレーム当たりにサーバへアップロードされる収集対象データの一例を示す図である。
【
図6】データ収集処理のうち、プローブデータの生成及びプローブデータと画像の保存に関する処理の動作フローチャートである。
【
図7】データ収集処理のうち、収集対象データのアップロードに関する処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照しつつ、データ収集装置、データ収集装置にて実行されるデータ収集方法及びデータ収集用コンピュータプログラムならびにデータ収集システムについて説明する。このデータ収集装置は、車両に搭載される。このデータ収集装置は、地図の生成または更新に利用される、道路上または道路周囲の所定の地物を表すデータ(以下、プローブデータと呼ぶ)を、車両の周囲を表す画像に基づいて生成する。そしてこのデータ収集装置は、収集対象領域を車両が走行している間に生成されたプローブデータを、通信装置を介してサーバへ送信する。その際、このデータ収集装置は、通信装置とサーバ間の通信回線の通信帯域に占める、プローブデータの送信に利用される通信帯域を設定する。そしてこのデータ収集装置は、設定した通信帯域を用いて、収集対象領域において生成され、メモリに保存されている一連のプローブデータを、メモリに記憶されている他の収集対象データよりも優先してサーバへ送信する。さらに、このデータ収集装置は、通信回線の通信帯域のうち、収集対象データの送信に利用可能な残りの通信帯域を用いて、画像といった他の収集対象データをサーバへ送信する。
【0017】
図1は、データ収集装置が実装されるデータ収集システムの概略構成図である。本実施形態では、データ収集システム1は、少なくとも一つの車両2に搭載されたデータ収集装置3と、サーバ4とを有する。データ収集装置3は、例えば、サーバ4が接続される通信ネットワーク5とゲートウェイ(図示せず)などを介して接続される無線基地局6にアクセスすることで、無線基地局6及び通信ネットワーク5を介してサーバ4と接続される。なお、
図1では、一つの車両2のみが図示されているが、データ収集システム1は、データ収集装置3が搭載された車両2を複数有してもよい。同様に、複数の無線基地局6が通信ネットワーク5に接続されていてもよい。
【0018】
先ず、車両2及びデータ収集装置3について説明する。上記のように、データ収集システム1には、データ収集装置3が搭載された車両2が複数含まれてもよいが、データ収集処理に関して各車両2及び各データ収集装置3は同じ構成を有し、かつ同じ処理を実行すればよいので、以下では、一つの車両2及び一つのデータ収集装置3について説明する。
【0019】
図2は、車両2の概略構成図である。車両2は、車両2の周囲を撮影するためのカメラ21と、GPS受信機22と、無線通信端末23と、データ収集装置3とを有する。カメラ21、GPS受信機22、無線通信端末23及びデータ収集装置3は、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。また、車両2は、LiDARセンサといった、車両2の周囲の物体までの距離を測定するための測距センサ(図示せず)をさらに有してもよい。
【0020】
カメラ21は、撮像部の一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ21は、例えば、車両2の前方を向くように、例えば、車両2の車室内に取り付けられる。そしてカメラ21は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両2の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ21により得られた画像は、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両2には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラ21が設けられてもよい。
【0021】
カメラ21は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してデータ収集装置3へ出力する。
【0022】
GPS受信機22は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両2の自己位置を測位する。そしてGPS受信機22は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両2の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してデータ収集装置3へ出力する。なお、車両2は、GPS受信機22以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両2の自己位置を測位すればよい。
【0023】
無線通信端末23は、通信装置の一例であり、所定の無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器であり、例えば、無線基地局6にアクセスすることで、無線基地局6及び通信ネットワーク5を介してサーバ4と接続される。すなわち、無線基地局6及び通信ネットワーク5を介して、無線通信端末23とサーバ4間に通信回線が確立される。そして無線通信端末23は、サーバ4から受信した、収集指示信号または収集対象領域を表す信号を含むダウンリンクの無線信号を受信し、受信したそれらの信号をデータ収集装置3へ出力する。また、無線通信端末23は、データ収集装置3から受け取った、指定された種別の収集対象データ(例えば、プローブデータまたは画像)を含むアップリンクの無線信号を生成する。そして無線通信端末23は、そのアップリンクの無線信号を無線基地局6へ送信することで、収集対象データをサーバ4へ送信する。さらに、無線通信端末23は、無線基地局6との接続が確立される度、あるいは、無線基地局6と無線通信端末23間で利用可能な通信帯域に変動が生じる度に、無線基地局6と無線通信端末23間でデータ収集装置3が収集対象データの送信に利用可能な通信帯域を表す情報をデータ収集装置3へ通知する。なお、無線基地局6と無線通信端末23間で収集対象データの送信に利用可能な通信帯域は、実質的にサーバ4と無線通信端末23間でのその送信に利用可能な通信帯域となる。
【0024】
図3は、データ収集装置3のハードウェア構成図である。データ収集装置3は、カメラ21から受け取った画像を一時的に保存する。さらに、データ収集装置3は、画像などに基づいてプローブデータを生成し、生成したプローブデータを一時的に保存する。そしてデータ収集装置3は、プローブデータ及び画像を、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する。そのために、データ収集装置3は、通信インターフェース31と、メモリ32と、プロセッサ33とを有する。
【0025】
通信インターフェース31は、車内通信部の一例であり、データ収集装置3を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。すなわち、通信インターフェース31は、車内ネットワークを介して、カメラ21、GPS受信機22及び無線通信端末23と接続される。そして通信インターフェース31は、カメラ21から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ33へわたす。また、通信インターフェース31は、GPS受信機22から測位情報を受信する度に、受信した測位情報をプロセッサ33へわたす。さらに、通信インターフェース31は、無線通信端末23から、収集指示信号といったサーバ4からの情報を受信する度に、その情報をプロセッサ33へわたす。さらにまた、通信インターフェース31は、無線通信端末23から、無線通信端末23と無線基地局6間の無線通信において利用可能な通信帯域を表す情報を受信すると、その情報をプロセッサ33へわたす。さらにまた、通信インターフェース31は、プロセッサ33から受け取った、収集対象データなどを、車内ネットワークを介して無線通信端末23へ出力する。
【0026】
メモリ32は、記憶部の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ32は、ハードディスク装置といった他の記憶装置をさらに有してもよい。そしてメモリ32は、データ収集装置3のプロセッサ33により実行されるデータ収集に関連する処理において使用される各種のデータを記憶する。例えば、メモリ32は、車両2の識別情報、カメラ21の焦点距離、撮影方向、設置位置といったカメラ21のパラメータ、カメラ21から受信した画像から地物を検出するための識別器を特定するための各種パラメータ、及び、GPS受信機22から受信した測位情報などを記憶する。さらに、メモリ32は、サーバ4から受信した収集対象領域を表す情報を記憶する。さらに、メモリ32は、プロセッサ33で実行される各処理を実現するためのコンピュータプログラムなどを記憶してもよい。さらにまた、メモリ32は、無線通信端末23とサーバ4間の通信回線においてデータ収集装置3が利用可能な通信帯域を表す通信帯域情報を記憶する。
【0027】
さらに、メモリ32には、画像保存用の記憶領域(以下、画像保存領域と呼ぶ)と、プローブデータ保存用の記憶領域(以下、プローブ保存領域と呼ぶ)とが設けられる。画像保存領域のサイズとプローブ保存領域のサイズの比率は、同じ道路区間について生成された画像とプローブデータの両方が保存可能なように設定されることが好ましい。そのために、画像のデータサイズ、カメラ21からの画像の取得周期、プローブデータのデータサイズ、及び、プローブデータの生成頻度に応じて、画像保存領域のサイズとプローブ保存領域のサイズの比率が設定される。例えば、単位時間当たりに得られる画像のデータサイズとプローブデータのデータサイズの比が100:1であり、画像の取得頻度とプローブデータの生成頻度の比が1:10であるとする。この場合、画像保存領域のサイズとプローブ保存領域のサイズの比は10:1に設定される。そしてデータ収集装置3がカメラ21から受信した画像は、画像保存領域に一時的に記憶される。また、プロセッサ33により生成されたプローブデータは、プローブ保存領域に一時的に記憶される。
【0028】
プロセッサ33は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ33は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ33は、車両2が走行している間、データ収集処理を実行する。
【0029】
図4は、データ収集装置3のプロセッサ33の機能ブロック図である。プロセッサ33は、画像保存部41と、検出部42と、通信帯域設定部43と、通信処理部44とを有する。プロセッサ33が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ33上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ33が有するこれらの各部は、プロセッサ33に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0030】
画像保存部41は、データ収集装置3がカメラ21から画像を受け取る度に、メモリ32の画像保存領域に画像を書き込む。その際、画像保存部41は、カメラ21から画像を受信する度に、最新の測位情報で表される車両2の位置及び方位センサ(図示せず)により示される車両2の向きをその画像に関連付ける。さらに、画像保存部41は、カメラ21の焦点距離、設置位置及び撮影方向といったカメラ21のパラメータも、その画像に関連付けてもよい。これらの画像に関連付けられた情報は、画像がサーバ4へアップロードされる際に、画像そのものとともにサーバ4へアップロードされる。画像保存領域が一杯になると、画像保存部41は、画像保存領域に記憶されている画像のうち、古い方の画像から順に新しく保存する画像で上書きする。
【0031】
検出部42は、車両2の走行中において、所定の周期ごとに、あるいは、車両2が所定距離走行する度に、カメラ21により生成された最新の画像から所定の地物を検出する。なお、所定の地物は、生成または更新対象となる地図に表される地物であり、例えば、各種の道路標示、各種の道路標識、縁石、ガードレール、信号機あるいは道路標識などを設置するためのポールである。そして検出部42は、画像上で検出された地物の種類及びその地物の位置を表すプローブデータを生成する。
【0032】
例えば、検出部42は、画像を識別器に入力することで、入力された画像に表された所定の地物を検出する。検出部42は、そのような識別器として、Single Shot MultiBox Detector、または、Faster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。あるいは、検出部42は、そのような識別器として、Vision Transformerといった、self attention network(SAN)型のアーキテクチャを有するDNNを用いてもよい。あるいはまた、検出部42は、そのような識別器として、AdaBoost識別器といった、他の機械学習手法に基づく識別器を用いてもよい。このような識別器は、画像から検出対象となる所定の地物を検出するように、その地物が表された多数の教師画像を用いて誤差逆伝搬法といった所定の学習手法に従って予め学習される。そして識別器は、入力された画像上で検出対象となる地物が含まれる領域(例えば、検出対象となる地物の外接矩形、以下、物体領域と呼ぶ)を表す情報、及び、物体領域に表された地物の種類を表す情報を出力する。
【0033】
検出部42は、画像から検出された物体領域の重心に対応する、カメラ21からの方位、画像生成時の車両2の位置、進行方向及びカメラ21の撮影方向、焦点距離及び設置位置といったパラメータに基づいて、その物体領域に表された地物の位置を推定する。そして検出部42は、検出された地物の種類及び推定された位置を表す情報を含むプローブデータを生成する。検出部42は、さらに、画像生成時の車両2の位置及び進行方向を表す情報をプローブデータに含めてもよい。検出部42は、物体領域のサイズ及び画像上での位置を表す情報をさらにプローブデータに含めてもよい。なお、検出部42は、検出された地物一つにつき、一つのプローブデータを生成する。そのため、一つの画像から複数の地物が検出される場合、一つの画像から複数のプローブデータが生成される。
【0034】
検出部42は、プローブデータを生成する度に、生成したプローブデータをメモリ32のプローブ保存領域に書き込む。プローブ保存領域が一杯になると、検出部42は、プローブ保存領域に記憶されているプローブデータのうち、古い方のプローブデータから順に新しく保存するプローブデータで上書きする。
【0035】
通信帯域設定部43は、プローブ保存領域に保存されている、未送信の一連のプローブデータのデータ量に応じて、無線通信端末23とサーバ4間の通信回線においてデータ収集装置3が収集対象データの送信に利用可能な通信帯域のうち、プローブデータの送信に利用される通信帯域を設定する。その際、通信帯域設定部43は、未送信の一連のプローブデータの全てを、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信できるように、収集対象データの送信に利用可能な通信帯域全体のサイズにかかわらず、優先的にその通信帯域を設定する。以下では、プローブデータの送信に利用される通信帯域を、プローブ用通信帯域と呼ぶ。
【0036】
例えば、通信帯域設定部43は、車両2が収集対象領域に進入したタイミング、あるいは、無線通信端末23と無線基地局6間の無線通信が可能となったタイミングにおいて、プローブ用通信帯域を設定する。また、通信帯域設定部43は、無線通信端末23と無線基地局6間の通信帯域幅が所定量以上変動したタイミングにおいて、プローブ用通信帯域を再設定してもよい。あるいは、通信帯域設定部43は、プローブ保存領域に占める未送信の一連のプローブデータのデータ量の比率(以下では、未送信データ占有率と呼ぶ)が所定の閾値(例えば、0.5~0.8)を超えたタイミングにおいて、プローブ用通信帯域を再設定してもよい。
【0037】
車両2が収集対象領域に進入したタイミングにおいてプローブ用通信帯域が設定される場合、通信帯域設定部43は、メモリ32に記憶されている、収集対象領域を表す情報と、最新の測位情報とを参照して、車両2が収集対象領域に進入したか否か判定する。なお、収集対象領域は、例えば、連続した1以上の道路区間ごと、あるいは、所定の形状を有する領域ごとに指定される。収集対象領域が道路の区間として指定される場合、収集対象領域を表す情報は、その道路の区間を識別するための識別情報及びその道路区間に進入または退出可能な端部の位置を表す情報を含む。また、収集対象領域が所定の形状を有する領域である場合、収集対象領域を表す情報は、その領域の外縁の位置を表す情報を含む。そして、最新の測位情報で表される車両2の位置が、収集対象領域で表される情報で示される領域または道路区間に含まれる場合、通信帯域設定部43は、車両2が収集対象領域に進入したと判定する。
【0038】
通信帯域設定部43は、直近の所定期間において生成されたプローブデータの数をその所定期間の長さで除することで、単位時間当たりのプローブデータの生成数を算出する。そして通信帯域設定部43は、単位時間当たりのプローブデータの生成数に、プローブデータ一つ当たりのデータ量を乗じることで、単位時間当たりにメモリ32に保存されるプローブデータのデータ量を算出する。さらに、通信帯域設定部43は、単位時間当たりにメモリ32に保存されるプローブデータのデータ量に、未送信の一連のプローブデータのデータ量に応じた所定の係数を乗じることで得られる単位時間当たりのデータ量の送信速度に相当する帯域となるようにプローブ用通信帯域を設定する。なお、所定の係数は、未送信のプローブデータのデータ量が多いほど、大きい値に設定されることが好ましい。これにより、メモリ32に保存されている一連のプローブデータのデータ量が多いほど、プローブ用通信帯域は広くなる。また、所定の係数は、未送信データ占有率が所定の閾値以上のときに1よりも大きい値(例えば、1.2~2)となるように設定される。したがって、未送信のプローブデータのデータ量が増加すると、プローブデータの書き込み速度よりもプローブデータの送信速度の方が速くなる。すなわち、単位時間あたりにプローブ保存領域に保存されるプローブデータのデータ量よりも、単位時間あたりにサーバ4へ送信可能なプローブデータのデータ量の方が大きくなる。そのため、未送信の一連のプローブデータの全てをサーバ4へ送信することが可能となる。また、一時的に無線通信端末23と無線基地局6間の無線通信が不可能となっている間に未送信のプローブデータが増加しても、データ収集装置3は、無線通信が再開された後に未送信データ占有率を低下させることができる。
【0039】
あるいは、通信帯域設定部43は、未送信データ占有率とプローブ用通信帯域の関係を表す通信帯域テーブルを参照することで、未送信データ占有率に対応するプローブ用通信帯域を設定してもよい。この場合でも、通信帯域テーブルにおいて、未送信データ占有率が所定の閾値以上のときに、プローブデータの書き込み速度よりもプローブデータの送信速度の方が速くなるようにプローブ用通信帯域は設定される。なお、通信帯域テーブルは、メモリ32に予め記憶されていればよい。
【0040】
通信帯域設定部43は、プローブ用通信帯域を設定する度に、設定したプローブ用通信帯域を通信処理部44へ通知する。
【0041】
通信処理部44は、メモリ32に記憶されている収集対象データを、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する。
【0042】
通信処理部44は、通信帯域設定部43において説明したように、収集対象領域を表す情報と、最新の測位情報とを参照して、車両2が収集対象領域に進入したか否かを判定すればよい。そして車両2が収集対象領域に進入すると、通信処理部44は、収集指示信号にて指定される、その収集対象領域についての収集対象データを、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する。
【0043】
具体的に、プローブデータが収集対象データとして指定されていると、通信処理部44は、メモリ32のプローブ保存領域に記憶されているプローブデータを古い方から順に無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する。
【0044】
また、プローブデータ及び画像が収集対象データとして指定されていると、通信処理部44は、メモリ32のプローブ保存領域に記憶されているプローブデータと、画像保存領域に記憶されている画像とを、それぞれ、古い方から順に無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する。
【0045】
さらに、収集対象データとして指定される画像は、部分画像であってもよい。この場合、通信処理部44は、画像保存領域に記憶されている個々の画像のそれぞれについて、その画像から路面が表されていると推定される範囲を切り出すことで部分画像を生成する。そして通信処理部44は、メモリ32のプローブ保存領域に記憶されているプローブデータとともに、生成した部分画像を、それぞれ、古い方から順に無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する。
【0046】
さらにまた、収集対象データとして指定される画像は、画像上で注目すべき領域を強調する特徴量画像であってもよい。この場合、通信処理部44は、画像保存領域に記憶されている個々の画像のそれぞれに対して、特徴量を抽出するための演算を実行することで、特徴量画像を生成する。なお、特徴量を抽出するための演算には、例えば、エッジ強調フィルタ演算及びエッジ検出フィルタ演算が含まれる。そして通信処理部44は、メモリ32のプローブ保存領域に記憶されているプローブデータとともに、生成した特徴量画像を、それぞれ、古い方から順に無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する。
【0047】
通信処理部44は、通信帯域設定部43により設定されたプローブ用通信帯域を利用してプローブデータをサーバ4へ送信する。このように、収集対象データの送信に利用可能な通信帯域全体のサイズにかかわらず、優先的に設定されたプローブ用通信帯域をプローブデータの送信に利用することで、プローブデータは、他の収集対象データよりも優先してサーバ4へアップロードされる。さらに、通信処理部44は、収集対象データにプローブデータ以外のデータ(画像、部分画像または特徴量画像)が含まれる場合、そのデータを、収集対象データの送信に利用可能な通信帯域のうち、プローブ用通信帯域以外の残りの通信帯域を用いてサーバ4へ送信する。一方、収集対象データがプローブデータのみの場合、通信処理部44は、収集対象データの送信に利用可能な通信帯域全てを利用してプローブデータを送信すればよい。
【0048】
例えば、通信帯域が時分割可能な場合、通信処理部44は、一つのフレームに占めるプローブデータの送信に利用されるサブフレーム(以下では、プローブ用サブフレームと呼ぶ)の長さを、プローブ用通信帯域に応じた長さに設定する。すなわち、通信処理部44は、一フレーム当たりのデータ送信量に、一フレームの長さに対するプローブ用サブフレームの長さの比を乗じた値がプローブ用通信帯域となるように、プローブ用サブフレームの長さを設定する。
【0049】
通信処理部44は、フレームごとに、プローブ用サブフレームにおいて、無線通信端末23を介してプローブデータをサーバ4へ送信し、フレームの残りのサブフレームにおいて、無線通信端末23を介してプローブデータ以外の収集対象データをサーバ4へ送信する。
【0050】
図5(a)及び
図5(b)は、それぞれ、未送信のプローブデータのデータ量と一フレーム当たりにサーバ4へアップロードされる収集対象データの関係の一例を示す図である。
図5(a)及び
図5(b)において、横軸は時間を表す。
【0051】
図5(a)に示される例では、未送信データ占有率ROが所定の閾値Th未満となっている。この場合、通信処理部44は、フレームFごとに、プローブ用サブフレームS1において、車両2が60秒間走行する間に得られたプローブデータを送信し、残りのサブフレームS2において、車両2が60秒間走行する間に得られた画像を送信する。
【0052】
一方、
図5(b)に示される例では、未送信データ占有率ROが所定の閾値Th以上となっている。この場合、通信処理部44は、フレームFごとに、プローブ用サブフレームS1において、車両2が120秒間走行する間に得られたプローブデータを送信し、残りのサブフレームS2において、車両2が54秒間走行する間に得られた画像を送信する。
【0053】
なお、データ収集装置3とサーバ4間の通信において、時分割以外の多重化方式が利用可能である場合には、通信処理部44は、その多重化方式に従って、設定されたプローブ用通信帯域を確保すればよい。
【0054】
また、通信処理部44は、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信した収集対象データをメモリ32から消去する。
【0055】
通信処理部44は、車両2が収集対象領域から退出すると、メモリ32を参照して、その退出時点で未送信の収集対象データを特定する。そして通信処理部44は、特定した収集対象データのサーバ4への送信が完了した時点で、収集対象データの送信を終了する。なお、通信処理部44は、車両2が収集対象領域に進入したか否かの判定と同様に、収集対象領域を表す情報と、最新の測位情報とを参照することで、車両2が収集対象領域から退出したか否かを判定すればよい。
【0056】
図6は、データ収集処理のうち、プローブデータの生成及びプローブデータと画像の保存に関する処理の動作フローチャートである。プロセッサ33は、所定の周期ごと、あるいは車両2が所定距離走行する度に、以下の動作フローチャートに従ってプローブデータの生成及びプローブデータと画像の保存に関する処理を実行する。
【0057】
プロセッサ33の画像保存部41は、カメラ21からデータ収集装置3が受信した画像を、メモリ32の画像保存領域に書き込む(ステップS101)。また、プロセッサ33の検出部42は、最新の画像から所定の地物を検出し、検出した地物を表すプローブデータを生成する(ステップS102)。そして検出部42は、生成したプローブデータを、メモリ32のプローブ保存領域に書き込む(ステップS103)。
【0058】
図7は、データ収集処理のうち、収集対象データのアップロードに関する処理の動作フローチャートである。プロセッサ33は、車両2が収集対象領域に進入すると、以下の動作フローチャートに従って収集対象データのアップロードに関する処理を実行する。
【0059】
プロセッサ33の通信帯域設定部43は、メモリ32のプローブ保存領域に保存されている未送信のプローブデータのデータ量に基づいて、プローブ用通信帯域を設定する(ステップS201)。
【0060】
プロセッサ33の通信処理部44は、設定したプローブ用通信帯域を利用することで、メモリ32のプローブ保存領域に保存されている未送信の一連のプローブデータを、他の収集対象データよりも優先してサーバ4へ送信する(ステップS202)。また、通信処理部44は、収集対象データの送信に利用可能な通信帯域のうちの残りの通信帯域を利用して、メモリ32の画像保存領域に保存されている一連の画像といった他の収集対象データを、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する(ステップS203)。そしてプロセッサ33は、収集対象データのアップロードに関する処理を終了する。
【0061】
次に、サーバ4について説明する。サーバ4は、個々の車両2に搭載されたデータ収集装置3から送信されたプローブデータまたは画像を保存する。そしてサーバ4は、それらのプローブデータまたは画像に基づいて、収集対象領域の地図を生成し、あるいは、更新する。さらに、サーバ4は、個々の車両2に対して、収集対象領域を通知する。さらに、サーバ4は、収集対象領域について収集対象となるデータの種別を指定し、指定した種別のデータを収集対象データとして表す収集指示信号を、個々の車両2へ通知する。
【0062】
図8は、サーバ4のハードウェア構成図である。サーバ4は、通信インターフェース51と、ストレージ装置52と、メモリ53と、プロセッサ54とを有する。通信インターフェース51、ストレージ装置52及びメモリ53は、プロセッサ54と信号線を介して接続されている。サーバ4は、キーボード及びマウスといった入力装置と、液晶ディスプレイといった表示装置とをさらに有してもよい。
【0063】
通信インターフェース51は、通信部の一例であり、サーバ4を通信ネットワーク5に接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース51は、個々の車両2に搭載されたデータ収集装置3と、通信ネットワーク5及び無線基地局6を介して通信可能に構成される。すなわち、通信インターフェース51は、個々の車両2のデータ収集装置3から無線基地局6及び通信ネットワーク5を介して受信した収集対象データなどをプロセッサ54へわたす。また、通信インターフェース51は、プロセッサ54から受け取った収集指示信号などを、通信ネットワーク5及び無線基地局6を介して個々の車両2のデータ収集装置3へ送信する。
【0064】
ストレージ装置52は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置52は、種別指定情報、及び、複数の道路区間のそれぞれについて、その道路区間について収集された収集対象データなどを記憶する。ストレージ装置52は、個々の車両2の識別情報をさらに記憶してもよい。さらに、ストレージ装置52は、プロセッサ54上で実行される、サーバ4側でのデータ収集処理を実行するためのコンピュータプログラムを記憶してもよい。さらにまた、ストレージ装置52は、収集対象データに基づいて生成または更新される地図を記憶してもよい。
【0065】
メモリ53は、記憶部の他の一例であり、例えば、不揮発性の半導体メモリ及び揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ53は、データ収集処理の実行中に生成される各種データ、及び、プローブデータ及び画像といった個々の車両2との通信により取得される各種データなどを一時的に記憶する。
【0066】
プロセッサ54は、制御部の一例であり、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ54は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ54は、サーバ4側でのデータ収集処理を実行する。
【0067】
プロセッサ54は、個々の車両2に対して、収集対象データの収集を指示する収集指示信号を生成する。
【0068】
プロセッサ54は、収集対象領域ごとに、その収集対象領域に対応する種別指定情報を参照する。そしてプロセッサ54は、その種別指定情報に基づいて、収集対象領域ごとに、収集対象領域について指定される、収集対象データの種別を特定する。収集対象データの種別には、車両2に搭載されたカメラ21により生成された車両2の周囲の環境を表す画像、その画像から切り出された路面が表された部分画像、または、その画像から検出された地物を表すプローブデータが含まれる。したがって、種別指定情報には、収集対象領域ごとに、収集対象データの種別として、画像、部分画像及びプローブデータの何れかが示される。
【0069】
プロセッサ54は、特定された収集対象データの種別を指定するための情報を収集指示信号に含める。種別指定情報においてプローブデータが示されている場合、プロセッサ54は、収集対象データとしてプローブデータのみを指定する。また、種別指定情報において画像が示されている場合、プロセッサ54は、収集対象データとしてプローブデータ及び画像を指定する。さらに、種別指定情報において部分画像が示されている場合、プロセッサ54は、収集対象データとしてプローブデータ及び部分画像を指定する。
【0070】
プロセッサ54は、生成した収集指示信号を、個々の車両2へ、通信インターフェース51、通信ネットワーク5及び無線基地局6を介して送信する。
【0071】
なお、プロセッサ54は、ストレージ装置52に記憶されている個々の道路区間について収集されたプローブデータの数に基づいて、収集対象領域を設定してもよい。例えば、直近の所定期間(例えば、数週間~数カ月)において収集されたプローブデータの数が所定の収集閾値未満である道路区間を収集対象領域に設定する。あるいは、プロセッサ54は、更新対象の地図に表される個々の道路区間のうち、前回の更新からの経過時間が所定の経過時間閾値以上となった道路区間を収集対象領域に設定してもよい。そしてプロセッサ54は、設定した収集対象領域を、通信インターフェース51を介して個々の車両2のデータ収集装置3へ通知すればよい。
【0072】
さらに、プロセッサ54は、収集したプローブデータ及び画像を用いて、地図を生成し、あるいは更新してもよい。この場合、プロセッサ54は、一つの車両2から連続した区間について収集されたそれぞれのプローブデータに表される地物を、過去に収集された他のプローブデータに表され、あるいは更新対象となる地図に表される対応する地物と位置合わせする。そしてプロセッサ54は、連続した区間について収集されたそれぞれのプローブデータに表される地物のうち、他のプローブデータあるいは更新対象となる地図に対応する地物が無いものを新たに設置された地物として特定する。そしてプロセッサ54は、生成または更新対象となる地図に、特定した地物に関する情報(位置及び種別)を追加する。また、プロセッサ54は、更新対象となる地図に表された地物のうち、連続した区間について収集されたそれぞれのプローブデータに表される地物において対応するものが無い地物について、撤去されたものとして特定してもよい。そしてプロセッサ54は、撤去されたものとして特定した地物に関する情報を、更新対象となる地図から削除してもよい。
【0073】
以上に説明してきたように、このデータ収集装置は、未送信のプローブデータのデータ量に基づいて、通信装置とサーバ間の通信回線の通信帯域に占める、プローブデータの送信に利用されるプローブ用通信帯域を設定する。そしてこのデータ収集装置は、プローブ用通信帯域を用いることで、メモリに保存されている一連のプローブデータを、メモリに記憶されている一連の画像よりも優先して通信装置を介してサーバへ送信する。さらに、このデータ収集装置は、通信回線の通信帯域のうち、プローブ用通信帯域以外の残り通信帯域を用いて、プローブデータ以外の収集対象データを、通信装置を介してサーバへ送信する。このように、プローブ用通信帯域は、収集対象データの送信に利用可能な通信帯域全体のサイズにかかわらず、優先的に設定される。そのため、このデータ収集装置は、ある程度連続した区間にわたって得られた地物を表す一連のプローブデータを欠損なくサーバへ送信することができる。
【0074】
変形例によれば、車両2が収集対象領域を通る所定距離以上の区間を走行している間に生成された一連のプローブデータの送信が完了した後において、収集対象領域を車両2が走行したときに生成され、かつ、未送信の画像が画像保存領域に残っていることがある。このような場合、通信処理部44は、その画像を、プローブ保存領域に記憶されている他のプローブデータよりも優先して、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信してもよい。これにより、データ収集装置3は、サーバ4側での位置合わせの精度を低下させずに、収集対象領域において生成された画像をサーバ4へ送信せずに消去してしますことを抑制できる。
【0075】
なお、通信処理部44は、車両2が収集対象領域に進入し、プローブデータの送信を開始したときから、サーバ4へ送信する個々のプローブデータに含まれる車両2の位置を参照して、それら個々のプローブデータが生成された区間の長さを求めればよい。そしてその長さが所定距離に達すると、通信処理部44は、上記のように画像の送信を優先すればよい。なお、通信処理部44は、画像の送信が完了するまで、プローブデータの送信を停止することで、画像の送信をプローブデータの送信よりも優先することができる。
【0076】
他の変形例によれば、画像保存部41は、車両2が収集対象領域外を走行している間、カメラ21から受信した画像を画像保存領域に保存せずに廃棄してもよい。同様に、検出部42は、車両2が収集対象領域外を走行している間、プローブデータの生成を停止してもよい。この場合、画像保存部41及び検出部42は、通信帯域設定部43において説明したように、収集対象領域を表す情報と、最新の測位情報とを参照して、車両2の位置が収集対象領域内に含まれるか否かを判定すればよい。
【0077】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0078】
1 データ収集システム
2 車両
21 カメラ
22 GPS受信機
23 無線通信端末
3 データ収集装置
31 通信インターフェース
32 メモリ
33 プロセッサ
41 画像保存部
42 検出部
43 通信帯域設定部
44 通信処理部
4 サーバ
51 通信インターフェース
52 ストレージ装置
53 メモリ
54 プロセッサ
5 通信ネットワーク
6 無線基地局