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特開2024-155034床下断熱材、および床下断熱材の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155034
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】床下断熱材、および床下断熱材の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20241024BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20241024BHJP
   E04B 1/66 20060101ALI20241024BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20241024BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
E04B1/80 100N
E04B1/64 D
E04B1/66 A
E04B1/76 500Z
E04B1/80 100A
E04B5/43 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069400
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】角 亘
(72)【発明者】
【氏名】中道 幹芳
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001DB03
2E001DD01
2E001DH12
2E001FA11
2E001GA23
2E001GA24
2E001GA28
2E001GA42
2E001GA47
2E001HB04
2E001HD02
2E001HD03
2E001HD08
2E001HD09
2E001LA12
2E001MA01
(57)【要約】
【課題】シンプルに大掛かりな工事を経ずに床下部へ容易に床下断熱材を搬入し、かつ床組部材に対して簡単に床下断熱材を固定する。
【解決手段】床下断熱材(10)の断熱材本体(11)は、2つの床組部材(21、22)間に並列した複数の帯状の合成樹脂発泡体(12)と、合成樹脂発泡体(12)同士を連結する連結部材(13)と、を備え、連結部材(13)は、少なくとも2つの合成樹脂発泡体(12)において、上面および下面の少なくとも下面に接着しており、連結した複数の合成樹脂発泡体(12)の側面から突出し、かつ床組部材(21、22)の下面を被覆する耳部(13a)を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの床組部材間に並列して配された複数の帯状の合成樹脂発泡体と、
互いに隣り合う少なくとも2つの合成樹脂発泡体同士を連結する、少なくとも1つの可撓性の連結部材と、を備えた、板状の断熱材本体を備え、
前記少なくとも1つの連結部材は、
前記少なくとも2つの合成樹脂発泡体において、上面および下面の少なくとも下面に接着しており、
連結した複数の合成樹脂発泡体の側面から突出し、かつ前記床組部材の下面を被覆する耳部を有する、床下断熱材。
【請求項2】
前記複数の合成樹脂発泡体のうち、前記床組部材に最も近い2つの第1合成樹脂発泡体は、第1V字溝を有し、
前記第1V字溝は、前記第1合成樹脂発泡体において、前記連結部材と反対の面に形成され、前記連結部材へ向かうに従って漸次幅が狭くなっており、
前記第1V字溝を構成する側壁のうち前記床組部材に近い側壁は、前記漸次幅が狭くなる方向に弾性変形する、請求項1に記載の床下断熱材。
【請求項3】
互いに隣り合う2つの合成樹脂発泡体同士の間隔は、10mm未満である、請求項1または2に記載の床下断熱材。
【請求項4】
前記連結した複数の合成樹脂発泡体は、当該合成樹脂発泡体の並列方向と垂直な方向の両端に、延びる第2V字溝を有し、
前記第2V字溝を構成する側壁のうち前記床組部材に近い側壁は、当該第2溝の漸次幅が狭くなる方向に弾性変形する、請求項1または2に記載の床下断熱材。
【請求項5】
前記断熱材本体は、前記連結部材を介して折り畳まれるように構成されており、
折り畳まれた状態の前記断熱材本体は、少なくとも口径が600mmの開口に挿入可能である、請求項1または2に記載の床下断熱材。
【請求項6】
前記合成樹脂発泡体の並列方向に対して垂直な方向の前記断熱材本体の寸法は、250mm~450mmである、請求項1または2に記載の床下断熱材。
【請求項7】
前記連結部材は、合成樹脂フィルムおよび不織布の少なくとも1つから構成されており、前記合成樹脂フィルムおよび前記不織布は、防水機能または防湿機能を有する、請求項1または2に記載の床下断熱材。
【請求項8】
前記少なくとも1つの連結部材は、前記少なくとも2つの合成樹脂発泡体において、上面および下面のうち少なくとも下面に接着しており、
前記合成樹脂発泡体の下面に接着した前記連結部材において、前記合成樹脂発泡体と反対側の面には、調湿剤層が形成されており、
前記調湿剤層は、竹炭、セラミックス炭、およびゼオライトからなる群より選択される少なくとも1つの調湿剤が包含される、請求項1または2に記載の床下断熱材。
【請求項9】
前記合成樹脂発泡体は、ポリスチレン系樹脂発泡体、ポリオレフィン系樹脂発泡体、ポリエステル系樹脂発泡体、ポリカーボネート系樹脂発泡体、ポリウレタン系樹脂発泡体、およびフェノール系樹脂発泡体からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1または2に記載の床下断熱材。
【請求項10】
請求項1または2に記載の床下断熱材の施工方法であって、
床下点検口から、折り畳んだ状態で前記断熱材本体を建築物の床下部へ搬入する搬入工程と、
前記床下部にて、折り畳んだ状態の前記断熱材本体を拡幅し、対向する2つの床組部材間に嵌め込んで、前記断熱材本体を前記床組部材に仮固定する仮固定工程と、
前記床組部材の下面に被覆した前記連結部材の前記耳部を、固定具を用いて、前記床組部材に固定する固定工程と、を含む、床下断熱材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下断熱材、および床下断熱材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の床断熱工法において、床下断熱材は、定尺単体に裁断され、床板下部に設置された、根太、大引等の床組部材間に嵌め込まれる。例えば特許文献1には、根太または大引間に、断熱材を分割して設置する床断熱改修工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-124577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、しかし、特許文献1の床断熱改修工法では、ある程度、床下断熱材のハンドリングが容易になるものの、次の課題が残されている。すなわち、リフォームやリノベーションにて床断熱を行う際、床下への搬入および床組部材への床下断熱材の固定の容易さの点で課題が残されている。
【0005】
本発明の一態様は、シンプルに大掛かりな工事を経ずに床下部へ容易に搬入でき、かつ床組部材に対して簡単に固定できる、床下断熱材、および床下断熱材の施工方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、以下の通りである。
【0007】
〔1〕対向する2つの床組部材間に並列して配された複数の帯状の合成樹脂発泡体と、互いに隣り合う少なくとも2つの合成樹脂発泡体同士を連結する、少なくとも1つの可撓性の連結部材と、を備えた、板状の断熱材本体を備え、前記少なくとも1つの連結部材は、前記少なくとも2つの合成樹脂発泡体において、上面および下面の少なくとも下面に接着しており、連結した複数の合成樹脂発泡体の側面から突出し、かつ前記床組部材の下面を被覆する耳部を有する、床下断熱材。
【0008】
〔2〕前記複数の合成樹脂発泡体のうち、前記床組部材に最も近い2つの第1合成樹脂発泡体は、第1V字溝を有し、前記第1V字溝は、前記第1合成樹脂発泡体において、前記連結部材と反対の面に形成され、前記連結部材へ向かうに従って漸次幅が狭くなっており、前記第1V字溝を構成する側壁のうち前記床組部材に近い側壁は、前記漸次幅が狭くなる方向に弾性変形する、〔1〕の床下断熱材。
【0009】
〔3〕互いに隣り合う2つの合成樹脂発泡体同士の間隔は、10mm未満である、〔1〕または〔2〕の床下断熱材。
【0010】
〔4〕前記連結した複数の合成樹脂発泡体は、当該合成樹脂発泡体の並列方向と垂直な方向の両端に、延びる第2V字溝を有し、前記第2V字溝を構成する側壁のうち前記床組部材に近い側壁は、当該第2溝の漸次幅が狭くなる方向に弾性変形する、〔1〕~〔3〕のいずれかの床下断熱材。
【0011】
〔5〕前記断熱材本体は、前記連結部材を介して折り畳まれるように構成されており、折り畳まれた状態の前記断熱材本体は、少なくとも口径が600mmの開口に挿入可能である、〔1〕~〔4〕のいずれかの床下断熱材。
【0012】
〔6〕前記合成樹脂発泡体の並列方向に対して垂直な方向の前記断熱材本体の寸法は、250mm~450mmである、〔1〕~〔5〕のいずれかの床下断熱材。
【0013】
〔7〕前記連結部材は、合成樹脂フィルムおよび不織布の少なくとも1つから構成されており、前記合成樹脂フィルムおよび前記不織布は、防水機能または防湿機能を有する、〔1〕~〔6〕のいずれかの床下断熱材。
【0014】
〔8〕前記少なくとも1つの連結部材は、前記少なくとも2つの合成樹脂発泡体において、上面および下面のうち少なくとも下面に接着しており、前記合成樹脂発泡体の下面に接着した前記連結部材において、前記合成樹脂発泡体と反対側の面には、調湿剤層が形成されており、前記調湿剤層は、竹炭、セラミックス炭、およびゼオライトからなる群より選択される少なくとも1つの調湿剤が包含される、〔1〕~〔7〕のいずれかの床下断熱材。
【0015】
〔9〕前記合成樹脂発泡体は、ポリスチレン系樹脂発泡体、ポリオレフィン系樹脂発泡体、ポリエステル系樹脂発泡体、ポリカーボネート系樹脂発泡体、ポリウレタン系樹脂発泡体、およびフェノール系樹脂発泡体からなる群より選択される少なくとも1つである、〔1〕~〔8〕のいずれかの床下断熱材。
【0016】
〔10〕〔1〕~〔9〕のいずれかの床下断熱材の施工方法であって、
床下点検口から、折り畳んだ状態で前記断熱材本体を建築物の床下部へ搬入する搬入工程と、前記床下部にて、折り畳んだ状態の前記断熱材本体を拡幅し、対向する2つの床組部材間に嵌め込んで、前記断熱材本体を前記床組部材に仮固定する仮固定工程と、前記床組部材の下面に被覆した前記連結部材の前記耳部を、固定具を用いて、前記床組部材に固定する固定工程と、を含む、床下断熱材の施工方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、シンプルに大掛かりな工事を経ずに床下部へ容易に床下断熱材を搬入でき、かつ床組部材に対して簡単に床下断熱材を固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態1に係る床下断熱材の概略構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態1において、床組部材間に取り付けられた状態の床下断熱材の概略構成を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態1において、床組部材間に取り付けられた状態の床下断熱材の概略構成を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態1において、連結部材を介して断熱材本体が折り畳まれた状態の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態2に係る床下断熱材の概略構成を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態2において、床組部材間に取り付けられた状態の床下断熱材の概略構成を示す断面図である。
図7】本発明の実施形態2において、連結部材を介して断熱材本体が折り畳まれた状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本願の明細書及び特許請求の範囲の記載において、数値範囲を表わす「X~Y」は、X以上でかつY以下の意味である。X以上でかつY以下以外の数値範囲については、「X以上(または超)Y未満(または以下)」と明記する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る床下断熱材10の概略構成を示す斜視図である。図2および図3は、床組部材21~24間に取り付けられた状態の床下断熱材10の概略構成を示す断面図である。図2は、幅方向に垂直な断面図であり、図3は、長さ方向に対して垂直な断面図である。
【0021】
図1図3に示すように、本実施形態に係る床下断熱材10は、板状の断熱材本体11を有する。断熱材本体11は、複数の帯状の合成樹脂発泡体12と、可撓性の連結部材13と、を備えている。また、図2に示すように、合成樹脂発泡体12は、対向する2つの床組部材21および22間に並列して配置されている。また、連結部材13は、互いに隣り合う少なくとも2つの合成樹脂発泡体12同士を連結する。
【0022】
ここで、板状の断熱材本体11において、合成樹脂発泡体12が並列する方向を長さ方向とし、当該長さ方向に対して垂直な方向を幅方向とする。幅方向および長さ方向に垂直な方向を、高さ方向または厚み方向とする
合成樹脂発泡体12は、それぞれ、幅方向に垂直な断面形状が矩形である帯状である。合成樹脂発泡体12は、少なくとも幅方向の寸法が略同じになっている。そして、複数の合成樹脂発泡体12は、幅方向の側面が面一になるように、長さ方向に並列して配されている。
【0023】
連結部材13は、互い隣り合う少なくとも2つの合成樹脂発泡体12を連結するように構成されている。さらに、連結部材13は、少なくとも2つの合成樹脂発泡体12において、上面および下面の少なくとも下面に接着している。本実施形態に係る床下断熱材10では、合成樹脂発泡体12全てに対して、1つの連結部材13が設けられている。全ての合成樹脂発泡体12の下面を覆うように1つの連結部材13が接着することにより、合成樹脂発泡体12同士は連結している。図2に示すように、床下断熱材10は、連結部材13が下側になるように、床組部材21および22間に嵌め込まれる。
【0024】
連結部材13は、連結した複数の合成樹脂発泡体12の上側の面よりも大きい寸法となっており、余尺部が存在する。図2に示すように、連結部材13は、長さ方向において、連結した複数の合成樹脂発泡体12の側面から突出し、かつ床組部材21および22の下面を被覆する耳部13aを有する。換言すると、連結部材13の耳部13aは、複数の合成樹脂発泡体12において、長さ方向で床組部材21または22と対向する側面から突出している。
【0025】
また、図3に示すように、連結部材13は、幅方向において、連結した複数の合成樹脂発泡体12の側面から突出し、かつ床組部材23および24の下面を被覆する耳部13bを有する。換言すると、連結部材13の耳部13bは、複数の合成樹脂発泡体12において、幅方向で床組部材23または24と対向する側面から突出している。
【0026】
床組部材21~24は、床板Fの下部に設けられた床組を構成する部材である。床組部材21~24は、従来の床組に使用される部材を採用することができ、例えば、大引、根太等が挙げられる。また、床組部材21および22は、互いに平行であり、床組部材23および24は、互いに平行である。また、床板Fの下側から見て、床組部材21および22と、床組部材23および24とは直交している。
【0027】
また、図2に示すように、複数の合成樹脂発泡体12のうち、床組部材21および22に最も近い合成樹脂発泡体12Aおよび12B(第1合成樹脂発泡体)は、V字溝14(第1V字溝)を有する。V字溝14は、合成樹脂発泡体12Aおよび12Bにおいて、連結部材13と反対側の面に形成されている。V字溝14は、連結部材13へ向かうに従い漸次幅が狭くなっている。すなわち、V字溝14は、合成樹脂発泡体12Aおよび12Bにおいて、上面に形成され、下面へ向かうに従い漸次幅が狭くなっている。また、V字溝14は、幅方向に延びている。そして、V字溝14を構成する側壁のうち、床組部材21および22に近い側壁14a・14aは、V字溝14の漸次幅が狭くなる方向に弾性変形するようになっている。換言すれば、側壁14a・14aは、長さ方向に弾性変形するようになっている。
【0028】
さらに、図3に示すように、連結した複数の合成樹脂発泡体12は、合成樹脂発泡体12の並列方向に対して垂直な方向の両端にV字溝15(第2V字溝)を有する。すなわち、V字溝15は、連結した複数の合成樹脂発泡体12の幅方向の両端に形成されている。V字溝15は、複数の合成樹脂発泡体12それぞれに対して、長さ方向に延びて形成されている。各合成樹脂発泡体12のV字溝15は、長さ方向に沿った1本の直線を形成するように、複数の合成樹脂発泡体12間で互いに長さ方向に連続して形成されている。そして、V字溝15を構成する側壁のうち、床組部材23および24に近い側壁15a・15aは、V字溝15の漸次幅が狭くなる方向に弾性変形するようになっている。換言すれば、側壁15a・15aは、幅方向に弾性変形するようになっている。また、V字溝15は、V字溝14と同様に、合成樹脂発泡体12において、連結部材13と反対側の面に形成されている。V字溝15は、連結部材13へ向かうに従い漸次幅が狭くなっている。
【0029】
ここで、リフォームやリノベーションにて現状の床構造を維持したまま床断熱の施工を行う場合、床板Fの下側から施工する必要がある。このため、床下点検口等の開口面積が小さい部位から床板Fの下部空間へ床下断熱材10を搬入する必要がある。従来、床下点検口から搬入できる断熱材として、変形可能なグラスウール、ロックウール等の無機繊維系断熱材が適用されており、合成樹脂発泡体からなる断熱材が適用されることは稀であった。無機繊維系断熱材を適用した場合、経年の吸湿および荷重による変形によって床下断熱材の垂れ下がりが発生し、所望の断熱性能を得ることができないとともに、当該断熱性能を維持できない。
【0030】
本実施形態に係る床下断熱材10によれば、上述したように、合成樹脂発泡体12全てに対して、1つの連結部材13が設けられている。全ての合成樹脂発泡体12の下面を覆うように1つの連結部材13が接着することにより、合成樹脂発泡体12同士は連結している。このため、床下断熱材10の断熱材本体11は、可撓性の連結部材13の屈曲作用により折り畳まれ、板状から様々な形状に変形し得る。より具体的には、合成樹脂発泡体12と反対方向に連結部材13を屈曲または折り畳むことにより、断熱材本体11は、板状から様々な形状に変形し得る。図4は、連結部材13を介して断熱材本体11が折り畳まれた状態の一例を示す図である。
【0031】
図4に示すように、床下断熱材10の断熱材本体11は、長さ方向の両端に形成された2つの耳部13a同士が重なるように、略円筒形状に折り畳み可能である。さらに、断熱材本体11は、図4に示す状態から、さらに略円筒形状が細くなるように折り畳み可能である。さらには、2重、3重、またはそれ以上、断熱材本体11を巻くことにより、さらに細くなった断熱材本体11の巻回体を構成することができる。本実施形態に係る床下断熱材10によれば、このように板状の断熱材本体11を細い筒状または柱状に折り畳み変形することができる。それゆえ、このように折り畳み変形した断熱材本体11を、例えば床下点検口等の開口部位から床板Fの下部空間へ搬入することが可能である。それゆえ、本実施形態に係る床下断熱材10によれば、シンプルに大掛かりな工事を経ずに、床下点検口等の開口面積が小さい部位から床板Fの下部へ断熱材本体11を容易に搬入できる。さらには、床板Fの下側空間においても、断熱材本体11の仮置きスペースを小さくすることができ、省スペース化を実現できる。
【0032】
さらに、本実施形態に係る床下断熱材10によれば、連結部材13は、耳部13aおよび13bを有する。それゆえ、耳部13aおよび13bを床組部材21~24にタッカー打ちすることによって、床組部材21~24に対して床下断熱材10を簡単に固定することができる。さらに、タッカー打ちにより、耳部13aおよび13bを介して張力が連結部材13全体に及ぶため、連結部材13は全体的にピンと張った状態となるので、複数の合成樹脂発泡体12と床板Fとを密着させることができる。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、シンプルに大掛かりな工事を経ずに床下部へ容易に床下断熱材10を搬入でき、かつ床組部材21~24に対して簡単に床下断熱材10を固定できるという効果を奏する。なお、連結部材13は、耳部13a、13bの少なくとも1つを有していればよい。
【0034】
また、床下断熱材10の断熱材本体11を折り畳んだ際の形状は、上述のような円筒または円柱形状に限定されない。当該形状は、連結部材13の屈曲または折り畳みの程度に応じて適宜設定可能である。例えば、隣り合う合成樹脂発泡体12同士が近接するように連結部材13を折り曲げることにより、当該形状は、直方体形状になり得る。
【0035】
図1図4に示された構成では、合成樹脂発泡体12全てに対して、1つの連結部材13が設けられていた。しかし、本実施形態に係る床下断熱材10の連結部材は、この構成に限定されず、互いに隣り合う少なくとも2つの合成樹脂発泡体12の少なくとも下面に設けられていればよい。本実施形態に係る床下断熱材10は、例えば、合成樹脂発泡体12全ての下面に対して、連結部材13が複数設けられた構成であってもよい。
【0036】
例えば、床下点検口の一般的な間口寸法は、450mm×450mm、600mm×600mm、450mm×600mm、900mm×600mm等がある。このような床下点検口に挿入可能とする観点では、断熱材本体11は、上述のように連結部材13を介して折り畳まれるように構成されており、折り畳まれた状態の断熱材本体11は、好ましくは少なくとも口径が600mmの開口、より好ましくは少なくとも口径が450mmの開口に挿入可能であることが好ましい。ここでいう「口径」とは、円状に開口したものである場合、当該円の直径を意図する。また、矩形状に開口したものである場合、矩形の短辺を意図する(矩形が正方形である場合は任意の一辺)。
【0037】
例えば、長さ方向の両端に形成された2つの耳部13a同士が重なるように断熱材本体11を円筒形状に折り畳んだ場合、当該円筒の外径は、600mm以下であることが好ましく、450mm以下であることがより好ましい。ここで、外径とは、折り畳まれた状態において、合成樹脂発泡体12の上面により構成される略円筒の径を意味する。当該折り畳まれた状態では、連結部材13により形成される円筒の径が内径となる。このような構成の断熱材本体11であれば、少なくとも口径が600mmの開口に挿入可能である。
【0038】
また、本実施形態に係る床下断熱材10によれば、V字溝14は、合成樹脂発泡体12Aおよび12Bにおいて、連結部材13と反対側の面に形成されている。さらに、V字溝14を構成する側壁のうち、床組部材21および22に近い側壁14a・14aは、V字溝14の漸次幅が狭くなる方向に弾性変形するようになっている。このため、床下断熱材10の床組部材21~24への取付けに際し、断熱材本体11本体は、側壁14a・14aがV字溝14の漸次幅が狭まる方向に変形しつつ、床組部材21および22間に挿入される。そして、側壁14a・14aの弾発力により、断熱材本体11は床組部材21および22間に圧接嵌合する。このように、床下断熱材10によれば、側壁14a・14aの弾発力により、床組部材21および22間に断熱材本体11を嵌め込むことができ、断熱材本体11の床組部材21および22への仮固定が容易になる。
【0039】
さらに、V字溝14は、合成樹脂発泡体12Aおよび12Bにおいて、タッカー固定される連結部材13と反対側の面に形成されている。合成樹脂発泡体12Aおよび12Bにおいて、タッカー固定される連結部材13側の面にV字溝14が形成される場合、連結部材13は、V字溝14を覆う構成となる。この場合、側壁14a・14aが弾性変形すると、連結部材13も変位する。このため、断熱材本体11を床組部材21および21間に嵌め込むに際し、側壁14a・14aの弾性変形に伴い連結部材13も変形してしまうため、連結部材13に皺が発生する。床下断熱材10によれば、V字溝14は、合成樹脂発泡体12Aおよび12Bにおいて、タッカー固定される連結部材13と反対側の面に形成されているので、上述した連結部材13の皺は発生しない。
【0040】
また、床下断熱材10によれば、連結した複数の合成樹脂発泡体12は、合成樹脂発泡体12の並列方向に対して垂直な方向の両端にV字溝15を有する。そして、V字溝15を構成する側壁のうち、床組部材23および24に近い側壁15a・15aは、V字溝15の漸次幅が狭くなる方向に弾性変形するようになっている。V字溝15は、上述したV字溝14と同様の機能を有する。それゆえ、床下断熱材10によれば、床組部材21および22間に加え、床組部材23および24間においても、断熱材本体11の仮固定が容易になる。
【0041】
(合成樹脂発泡体12の長さ方向の寸法)
床下断熱材10において、個々の合成樹脂発泡体12の長さ方向(並列方向)の寸法L1は、20mm~50mmであることが好ましく、25mm~40mmであることがより好ましく、30mm~35mmであることがさらに好ましい。当該寸法L1が20mm未満である場合、断熱材本体11をコンパクトに折り畳むことができる一方、合成樹脂発泡体12同士の連結部が多くなり、当該連結部からの熱欠損の懸念が増大するので、適正な断熱性能が発揮できない傾向にある。当該寸法L1が50mmを超える場合、断熱材本体11をコンパクトに折り畳むことが難しくなる傾向にあり、断熱材本体11の収納スペースに難が生じる懸念がある。
【0042】
(合成樹脂発泡体12の厚み)
床下断熱材10において、合成樹脂発泡体12の厚みは、10mm~150mmの範囲が好ましい。合成樹脂発泡体12の厚みが10mm未満であると、断熱効果が低下する傾向にある。また、合成樹脂発泡体12の厚みが150mmを超えると、断熱材本体11のスペースが大きくなり、さらに、断熱材本体11の折り畳み時に嵩張り、折り畳み状態の断熱材本体11の巻き径が大きくなり、点検口から床下への投入ができなくなる懸念が生じる。さらには、高価になり経済的でない。
【0043】
(合成樹脂発泡体12同士の間隔)
床下断熱材10において、互いに隣り合う合成樹脂発泡体12同士の間隔は、10mm未満であることが好ましく、5mm未満であることがより好ましく、1mm未満であることがさらに好ましい。当該間隔が上記数値範囲であることにより、互いに隣り合う合成樹脂発泡体12同士の隙間を通じて熱橋となることに起因した、床下断熱材10の熱欠損を極力抑制することができる。
【0044】
(断熱材本体11の幅方向の寸法)
床下断熱材10において、合成樹脂発泡体12の並列方向に対して垂直な方向の断熱材本体11の寸法Wは、250mm~450mmであることが好ましい。すなわち、断熱材本体11の幅方向の寸法Wは、250mm~450mmであることが好ましい。
【0045】
寸法Wが250mm未満である場合、床組部材21および22間に断熱材本体11を幅方向に何枚も並列して使用する必要があり、床下に敷設する断熱材本体11の数量が増加するため、好ましくない。また、建築基準法22条にて、床高さは、直下の地面より450mm以上が定められている。それゆえ、寸法Wが450mmを超える場合、建築基準法で定められている床高さの床下部分に対し、床下点検口からの断熱材本体11の挿入が困難になる傾向にある。
【0046】
(合成樹脂発泡体12を構成する樹脂)
合成樹脂発泡体12の素材は、特に限定されないが、(1)柔軟性を有し、かつ圧縮可能であり、(2)反発弾性を有し、床組部材間に圧挿した際に床組部材と密着性を有する性質であるものが好ましい。具体的には、合成樹脂発泡体12は、ポリスチレン系樹脂発泡体、ポリオレフィン系樹脂発泡体、ポリエステル系樹脂発泡体、ポリカーボネート系樹脂発泡体、ポリウレタン系樹脂発泡体、およびフェノール系樹脂発泡体からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。さらに、合成樹脂発泡体12は、素材となる、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリカーボネート樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの合成樹脂を、押出発泡成形またはビーズ発泡成形により成形したものであることが好ましい。
【0047】
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂を含む樹脂が挙げられる。スチレン系単量体としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が好適に挙げられる。スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂としては、1種のスチレン系単量体を重合してなるスチレン系単量体の単独重合体、又は2種以上のスチレン系単量体を重合してなるスチレン系単量体の共重合体が挙げられる。スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂としては、スチレン系単量体の単独重合体及びスチレン系単量体の共重合体、即ち、スチレン系単量体に由来する構成単位のみを有する樹脂であるポリスチレン樹脂を好ましく使用し得る。
【0048】
ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂の単量体(以下、オレフィン系単量体と称する場合もある)の具体例として、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン-1、イソブテン、ペンテン-1、3-メチル-ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、3,4-ジメチル-ブテン-1、ヘプテン-1、3-メチル-ヘキセン-1、オクテン-1、デセン-1などの炭素数2~12のα-オレフィン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
また、オレフィン系単量体と共重合性を有するその他の単量体としては、例えば、シクロペンテン、ノルボルネン、1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,8,8a,6-オクタヒドロナフタレン等の環状オレフィン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレンを主成分とするポリエチレン系樹脂、プロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
エチレンを主成分とするポリエチレン系樹脂としては、α-オレフィンがエチレンである、エチレンを共重合単量体成分として含有するポリプロピレン系樹脂が入手容易であり、加工成形性に優れている。
【0052】
ポリプロピレン系樹脂としては、単量体の主成分としてプロピレンを含んでいれば、特に限定はなく、例えば、プロピレンホモポリマー、α-オレフィン-プロピレンランダム共重合体、α-オレフィン-プロピレンブロック共重合体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、脂肪族系ポリエステル樹脂、芳香族系ポリエステル樹脂、脂肪族芳香族系ポリエステル樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンアジペート-co-ブチレンテレフラレート)(PBAT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。また、ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)(PHBV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0054】
また、ポリカーボネート系樹脂としては、芳香族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。芳香族ポリカーボネート系樹脂は、炭酸成分と、少なくともビスフェノール系化合物を含む芳香族ジオール成分若しくはこれを主とするジオール成分と、から形成されるポリ炭酸エステル、又はそれらの混合物である。このうち、分子鎖にジフェニルアルカンを有する芳香族ポリカーボネート系樹脂は、結晶性が高く高融点である上、耐熱性、耐侯性及び耐酸性に優れている点で好適である。
【0055】
このようなポリカーボネート系樹脂としては、2,2-ビス(4-オキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-オキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-オキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-オキシフェニル)イソブタン、1,1-ビス(4-オキシフェニル)エタン等のビスフェノール系化合物から形成されるポリカーボネート系樹脂が例示される。
【0056】
また、発泡樹脂の発泡に用いられる発泡剤としては、プロパン、イソブタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の揮発性の炭化水素系発泡剤、空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス、及び水を用いることが可能である。無機ガスを用いる場合は、比較的高い発泡倍率の発泡粒子が得られやすいことから、二酸化炭素が好ましい。これら発泡剤は、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0057】
(連結部材13の素材;防水&防湿機能層)
床下断熱材10において、可撓性の連結部材13は、合成樹脂フィルムおよび不織布の少なくとも1つから構成されており、上記合成樹脂フィルムおよび前記不織布は、防水機能または防湿機能を有することが好ましい。
【0058】
防湿性を有する合成樹脂フィルムとしては、透湿度がおよそ50g/m・24hrよりも低いフィルムが望ましい。具体的には、ポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、同時に防水性も有する。
【0059】
また、合成樹脂フィルムの厚みは、特に限定されないが、合成樹脂フィルムの剛性および経済性を鑑み、0.1~1mm程度であることが好ましい。
【0060】
さらに、防湿気密性能を向上させるために、連結部材13として、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着層等により形成される芯材の表裏面に、上記で例示した合成樹脂フィルムからなる合成樹脂層が設けられた3層構造の積層シートを用いることもできる。
【0061】
このような防湿気密性能を有する連結部材とすることにより、床下の湿気に起因する結露発生を抑制でき、カビ、ダニが発生し難い床下環境をつくることができる。また、床組部材の腐朽を防止できる。
【0062】
また、耳部13aまたは13b(余尺部またはのりしろ部ともいえる)の寸法は、床組部材に固定できる寸法が確保されていれば特に指定されない。タッカーでの固定を容易にする観点では、耳部13aまたは13bは、断熱材本体11の側面から長さ方向または幅方向に延びる長さが、25mm以上、好ましくは50mm以上、より好ましくは100mm以上であることが好ましい。また、当該長さの上限は、経済性を考慮すると、200mm以下であることが好ましい。
【0063】
また、上記不織布は、繊維シート、ウェブまたはパットで繊維が一方向またはランダムに配向しており、交絡、融着、接着によって繊維間が結合されたものである。上記不織布としては、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布等の不織布に対して、防水、防湿機能を付与するために樹脂フィルム等を積層した不織布ラミネート加工品が用いられる。
【0064】
(調湿層)
本実施形態に係る床下断熱材10において、少なくとも1つの連結部材13は、少なくとも2つの合成樹脂発泡体12において、上面および下面のうち少なくとも下面に接着していることが好ましい。図1図4に示す床下断熱材10においては、連結部材13が合成樹脂発泡体12の下面に接着している。
【0065】
そして、合成樹脂発泡体12の下面に接着した連結部材13において、合成樹脂発泡体12と反対側の面には、調湿層が形成されていることが好ましい。ここでいう調湿層とは、床下空間の湿度が高いときには、吸湿し、床下空間が乾燥しているときには、放湿して、床下空間の湿度を調整可能な層のことをいう。
【0066】
このような調湿層には、粒子状の調湿剤が包含されており、当該調湿剤としては、竹炭、セラミック炭、ゼオライト、石膏、製鋼スラグ、マグネシアセメント、木炭、または、これらを混合したもの等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性、並びに吸湿性能および放湿性能の点から、調湿層は、竹炭、セラミックス炭、およびゼオライトからなる群より選択される少なくとも1つの調湿剤が包含されることが好ましい。調湿層は、これらの調湿剤を連結部材に担持させることにより、得られる。
【0067】
竹炭は、多孔質素材であり、径が約30~55nmの微細な孔が多数開いている構造である。それゆえ、竹炭は、木炭より小さく、かつ表面積が大きいので、優れた湿気の吸着および放出機能を有する素材である。
【0068】
セラミック炭は、多孔質素材であり、間伐材などを主原料にセラミックをコーティングし、高温・短時間で焼成炭化することにより得られる。セラミック炭は、空間率が80%程度であり、優れた湿気の吸着および放出機能を有する素材である。
【0069】
ゼオライトは、一般に、
(MI、MII1/2)m(AlSi2(m+n))・HO (n≧m)
(MI:Li、Na、K等、MII:Ca2+、Mg2+、Ba2+等)
の組成で表される含水ケイ酸塩である。ゼオライトは、多孔質の白色岩塩であり、水分子と細孔の大きさが近く、吸着力が非常に大きい特徴を有する。
【0070】
調湿層の厚みは、10mm~200mmの範囲が好ましい。調湿層の厚みが10mm未満であると、調湿層が薄すぎてしまい調湿効果が小さくなる。一方、調湿層の厚みが200mmを超えると、調湿効果は向上するが、調湿層が厚すぎてしまいスペースをとったり、高価になり経済的でない。
【0071】
竹炭、セラミック炭、またはゼオライトといった調湿剤の優れた吸湿性を利用して、調湿剤を上述した連結部材13上に形成することによって、床下の湿気を調整することができる。
【0072】
連結部材13に調湿剤を担持させる方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。当該方法として、例えば、(1)調湿剤を不織布等の袋状物に封入し、フィルム状の連結部材13に接着積層する方法、(2)上述のように調湿剤を封入した袋状物をステープルで固定積層する方法、(3)バインダー樹脂により不織布態様の連結部材に調湿剤を担持させる方法、等が挙げられる。
【0073】
(床下断熱材10の施工方法)
本実施形態に係る床下断熱材10の施工方法(以下、本施工方法と称する場合がある)は、搬入工程と、仮固定工程と、固定工程と含んでいればよい。
【0074】
本施工方法は、まず、図1図4に示された断熱材本体11を準備する準備工程を含む。当該準備工程では、合成樹脂発泡体12および可撓性の連結部材13を準備する。準備する連結部材13は、断熱材本体11の嵌め込み対象である、互いに対向する床組部材21および22(または床組部材23および24)の間の距離よりも長い寸法である。また、準備する複数の合成樹脂発泡体12は、図1図3に示すような断面矩形の定尺帯状部材である。そして、並列方向の長さが床組部材21および22間の距離と略同じになるように、長さ方向の寸法および個数が設定された複数の合成樹脂発泡体12を準備する。そして、連結部材13に対して複数の合成樹脂発泡体12を並列して接着することにより、図1図3に示す、折り畳み可能な断熱材本体11を準備する。
【0075】
そして、搬入工程では、作業者は、床下点検口から、折り畳んだ状態で断熱材本体11を建築物の床下部(床板Fの下側空間)へ搬入する。さらに、作業者も床下点検口から床下部へ入る。
【0076】
仮固定工程では、床下部にて、折り畳んだ状態の断熱材本体11を拡幅し、対向する2つの床組部材21および22間に嵌め込んで、断熱材本体11を床組部材21および22に仮固定する。このとき、作業者は、折り畳んだ状態の断熱材本体11を拡幅し、合成樹脂発泡体12を上側に、連結部材13を下側にし、合成樹脂発泡体12Aの側面を床組部材22に当接させ、合成樹脂発泡体12Aを床組部材22に固定する。さらに、合成樹脂発泡体12Bの側面を床組部材21の側面に当接させながら、長さ方向に連結した複数の合成樹脂発泡体12のバランスが整うように、断熱材本体11を床板F側へ徐々に押し込み、断熱材本体11を床組部材21および22に仮固定する。このとき、合成樹脂発泡体12Aおよび12Bに形成されたV字溝14の弾発力により、断熱材本体11は、対向する床組部材21および22の間に圧接篏合され、保持される。
【0077】
最後に、固定工程では、床組部材21の下面に被覆した連結部材13の耳部13aを、タッカー(固定具)を用いて、床組部材21に固定する。具体的には、合成樹脂発泡体12Bを押し込み、床組部材21および22間にて、連結した複数の合成樹脂発泡体12の垂れ下がりがないことを確認した後、タッカーを用いて、床組部材21へ耳部13aを固定する。同様に、床組部材22の下面に被覆した連結部材13の耳部13aを、タッカー(固定具)を用いて、床組部材22に固定する。具体的には、合成樹脂発泡体12Aを押し込み、床組部材21および22間にて、連結した複数の合成樹脂発泡体12の垂れ下がりがないことを確認した後、タッカーを用いて、床組部材22へ耳部13aを固定する。
【0078】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0079】
図5は、本実施形態に係る床下断熱材10Aの概略構成を示す斜視図である。図6は、床組部材21および22間に取り付けられた状態の床下断熱材10Aの概略構成を示す断面図である。
【0080】
図5および図6に示すように、本実施形態に係る床下断熱材10Aは、連結部材13Aが複数の連結部材からなる点が実施形態1と異なる。具体的には、連結部材13Aは、複数の連結部材16および複数の連結部材17からなる。
【0081】
連結部材16および17は、それぞれ、互いに隣り合う2つの合成樹脂発泡体12・12同士を連結する。連結部材16は、互いに隣り合う2つの合成樹脂発泡体12・12において、下面に接着している。連結部材17は、互いに隣り合う2つの合成樹脂発泡体12・12において、上面に接着している。
【0082】
また、複数の合成樹脂発泡体12のうち、床組部材21および22に最も近い合成樹脂発泡体12Aおよび12Bに対しては、これら下面に連結部材16が接着されている。そして、当該連結部材16は、床組部材21および22の下面を覆う耳部16aを有する。
【0083】
床下断熱材10Aの断熱材本体11Aにおいて、合成樹脂発泡体12の上面および下面に対して、連結部材16と連結部材17とは、並列方向(長さ方向)に沿って、互い違いに接着している。合成樹脂発泡体12Aの次に長さ方向に沿って順に隣接して配された3つの合成樹脂発泡体12C、12D、12Eについて考えると、連結部材13Aは、次の接着態様を含むといえる。すなわち、合成樹脂発泡体12Aおよび12Cの下面に連結部材16が接着し、合成樹脂発泡体12Cおよび14Dの上面に連結部材17が接着し、合成樹脂発泡体12Dおよび12Eの下面に連結部材16が接着するという接着態様である。
【0084】
断熱材本体11Aは、可撓性の連結部材16および17の屈曲作用により折り畳まれ、板状から様々な形状に変形し得る。図7は、連結部材16および17を介して断熱材本体11Aが折り畳まれた状態の一例を示す図である。
【0085】
図7に示すように、並列した複数の合成樹脂発泡体12に対して、連結部材16および17それぞれを介して、隣接する2つの合成樹脂発泡体12同士を互い違いに折り畳むことにより、合成樹脂発泡体12が高さ方向に積層した積層体が構成される。当該積層体は、略直方体形状である。そして、図7の紙面において、当該直方体の幅は、1つの合成樹脂発泡体12の長さ方向の寸法L2と略同じであり、高さは、合成樹脂発泡体12の厚みを合成樹脂発泡体12の個数で掛けた寸法と略同じであり、奥行き方向の寸法は、1つの合成樹脂発泡体12の幅方向の寸法と略同じである。このように合成樹脂発泡体12の寸法および個数を適宜設定することにより、略直方体形状に折り畳まれた断熱材本体11Aの寸法を適宜設定できる。そして、当該設定により、例えば、少なくとも口径が600mmの開口に挿入可能な断熱材本体11Aを構成することができる。
【0086】
床下断熱材10Aによれば、このように略直方体状に折り畳み変形した断熱材本体11Aを、例えば床下点検口等の開口部位から床板Fの下部空間へ搬入することが可能である。それゆえ、本実施形態に係る床下断熱材10Aによれば、シンプルに大掛かりな工事を経ずに、床下点検口等の開口面積が小さい部位から床板Fの下部へ断熱材本体11Aを容易に搬入できる。さらには、床板Fの下側空間においても、断熱材本体11Aの仮置きスペースを小さくすることができ、省スペース化を実現できる。
【0087】
さらに、連結部材16の耳部16aを床組部材21および22にタッカー打ちすることによって、床組部材21および22に対して床下断熱材10Aを簡単に固定することができる。
【0088】
よって、本実施形態に係る床下断熱材10Aであっても、シンプルに大掛かりな工事を経ずに床下部へ容易に床下断熱材10Aを搬入でき、かつ床組部材21および22に対して簡単に床下断熱材10Aを固定できるという効果を奏する。
【0089】
また、床下断熱材10Aにおいて、個々の合成樹脂発泡体12の長さ方向(並列方向)の寸法L2は、50mmを超え350mm以下であることが好ましく、70mm~200mmであることがより好ましく、90mm~120mmであることがさらに好ましい。寸法L2が上記数値範囲であることにより、合成樹脂発泡体12同士の連結部の熱欠損を小さくでき、加工工数も減じることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、床断熱の技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
10、10A 床下断熱材
11、11A 断熱材本体
12、12C、12D、12E 合成樹脂発泡体
12A、12B 合成樹脂発泡体(第1合成樹脂発泡体)
13、13A、16、17 連結部材
13a、13b、16a 耳部
14 V字溝(第1V字溝)
15 V字溝(第2V字溝)
14a、15a 側壁
21、22、23、24 床組部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7