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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155035
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】リクライニング装置およびシート
(51)【国際特許分類】
   A47C 1/025 20060101AFI20241024BHJP
   B60N 2/10 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A47C1/025
B60N2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069401
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】増村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】梅▲崎▼ 幾世紀
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA19
(57)【要約】
【課題】カムの姿勢および角度が安定し、かつ、インターナルギヤとガイドブラケットの相対回転を規制するモーメント強度が向上したリクライニング装置を提供する。
【解決手段】リクライニング機構6は、インターナルギヤ30の内歯32に噛合する3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよびサブロックギヤ160と、当該ロックギヤ60A~60C、160を径方向に移動させるカム50と、ロックスプリング40とを備える。カム50は、3枚のメインロックギヤ60A~60Cをカム50の径方向外側へ押圧する3つのメイン押圧面52aを有する。メイン押圧面52aは、メインロックギヤ60A~60Cを噛合位置に維持するように押圧するメイン押圧部分である接触点P1~P3を含む部分を有する。3つのメイン押圧面52aのメイン押圧部分は、カムがロック角度を越えてもメインロックギヤ60A~60Cを径方向外側に押圧可能となるように形成されている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションおよびシートバックのうちの一方のフレームに固定されたガイドブラケットと、
前記ガイドブラケットと対向する位置で前記シートクッションおよび前記シートバックのうちの他方のフレームに固定され、前記ガイドブラケットに対して相対的に回転可能なインターナルギヤと、
前記インターナルギヤの内歯に噛合可能な外歯をそれぞれ備えた4枚のロックギヤであって、前記インターナルギヤの周方向に離間して配置され、かつ、前記外歯と前記内歯とが噛合する噛合位置とこれらの噛合が解除される解除位置とに亘って前記ガイドブラケットのガイド壁部に沿って前記ガイドブラケットの径方向に移動可能な4枚のロックギヤと、
前記ガイドブラケットに対して所定のロック角度と解除角度との間で相対的に回転可能なカムであって、前記解除角度から前記ロック角度への回転によって前記4枚のロックギヤを前記解除位置から前記噛合位置へ径方向に動かすカムと、
前記解除角度から前記ロック角度へ向けて前記カムを回転付勢するロックスプリングと、
を備え、
前記カムは、前記ロックスプリングの回転付勢力によって前記解除角度から前記ロック角度へ回転するにしたがって、前記4枚のロックギヤにそれぞれ接触して当該4枚のロックギヤを前記カムの径方向外側へ押圧して前記噛合位置へ移行させる4つの押圧面を有し、
前記4つの押圧面は、それぞれ円弧状の曲面を含み、
前記4つの押圧面のうちの3つの押圧面のそれぞれは、前記カムが前記ロック角度にあるときに前記噛合位置の3枚の前記ロックギヤに接触して当該3枚のロックギヤを前記噛合位置に維持するように押圧するメイン押圧部分を有し、当該メイン押圧部分は、前記カムが前記ロック角度を越えても前記3枚のロックギヤを径方向外側に押圧可能となるように形成され、
前記4つの押圧面のうちの残り1つの押圧面は、前記カムが前記ロック角度にあるときに前記噛合位置の1枚の前記ロックギヤを前記外歯と前記内歯との間にクリアランスを許容する噛合状態を維持するように押圧するサブ押圧部分を有し、当該サブ押圧部分は、前記カムが前記ロック角度を越えても前記1枚のロックギヤを前記クリアランスを許容する噛合状態を維持するように前記径方向外側に押圧可能となるように形成されている、
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリクライニング装置において、
前記メイン押圧部分は、前記カムが前記ロック角度よりもさらにロック方向へ進角したときに前記ロックギヤを押し込むことが可能な角度になるように当該ロックギヤにおける前記メイン押圧部分との接触部分に対して傾斜しており、
前記サブ押圧部分は、前記カムが前記ロック角度よりもさらにロック方向へ進角しても前記ロックギヤへの押圧力の増加を抑える角度になるように、当該ロックギヤにおける前記サブ押圧部分との接触部分に向けられている、
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のリクライニング装置において、
前記3つの押圧面に含まれる前記円弧状の曲面は、前記カムの回転中心とずれた位置に曲率半径の中心が設定された円弧状の曲面で構成され、それにより、前記メイン押圧部分は、前記カムが前記ロック角度よりもさらにロック方向へ進角したときに前記ロックギヤを押し込むことが可能な角度になるように、当該ロックギヤにおける当該メイン押圧部分との接触部分に対して傾斜している、
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のリクライニング装置において、
前記メイン押圧部分に接触する前記3枚のロックギヤのうちの2枚のロックギヤは、前記カムを挟んで直線的に並ぶように対向配置され、
前記メイン押圧部分に接触する前記3枚のロックギヤのうちの残り1枚のロックギヤと前記サブ押圧部分に接触する前記ロックギヤは、前記メイン押圧部分に接触する前記2枚のロックギヤに対して前記カムの周方向に90度離間するとともに前記カムを挟んで直線的に並ぶように対向配置されている、
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項5】
請求項4に記載のリクライニング装置において、
前記ガイドブラケットは、前記4枚のロックギヤを前記径方向に案内するガイド壁部を有し、
前記メイン押圧部分に接触する前記3枚のロックギヤのうちの前記互いに対向する2枚のロックギヤは、前記外歯を有する本体部と、当該本体部とは分離するとともに前記メイン押圧面に接触する接触面を有するくさび部とを有し、
前記本体部は、前記径方向から傾斜する方向に延びるとともに前記くさび部に当接する当接面を有し、
前記くさび部は、前記当接面と前記ガイド壁部との間に挟まれた状態で配置されている、
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項6】
シートクッションと、
前記シートクッションの後部に配置されてシート前後方向に傾動可能なシートバックと、
前記シートバックを任意の傾斜角度で固定する請求項1に記載のリクライニング装置と
を備えている、
ことを特徴とするシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング装置、および当該リクライニング装置を備えたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両等のシートには、シートバック(背もたれ)がシートクッション(座部)に対して前後方向に傾動可能な構造において、当該シートバックを任意の傾斜角度で固定するリクライニング装置を備えたシートがある。
【0003】
例えば、特許文献1記載のリクライニング装置は、シートクッションのフレームとシートバックのフレームとの連結部分に取り付けられている。このリクライニング装置は、シートクッション又はシートバックに固定されるベースプレートと、該ベースプレートに対し回転可能に組み付けられるとともに内歯を有するギヤプレートと、ベースプレートに周方向に離間して配置された4つの固定ガイドと、4つのロックギヤと、当該4つのロックギヤを動かすカムと、カムの軸心に固定されたセンターシャフトとを備える。4つのロックギヤは、ギヤプレートの内歯と噛合可能な外歯を有し、隣接する2つの固定ガイドの間をベースプレートの径方向に摺動するように、ベースプレートの中心から上下左右に離間した位置に配置される。カムは、ロックギヤの上記径方向への移動を制御し、ロックギヤをギヤプレートの内歯と噛合させる。センターシャフトは、カムとともに回転してロックギヤの上記径方向への移動を制御し、ギヤプレートの内歯との噛合を解除させる。なお、「ギヤプレート」は後述のインターナルギヤに対応し、「ベースプレート」は後述のガイドブラケットに対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-11165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような4枚のロックギヤを有するリクライニング装置では、通常の操作時(すなわち所定角度でカムを回転させる操作時)では、リクライニング装置を構成する部品における寸法のばらつきなどの影響で2枚のロックギヤ(例えば上下のロックギヤ)の外歯のみがギヤプレートの内歯に噛合することが多く、ロック強度が弱い。
【0006】
したがって、上記のリクライニング装置では、ロック状態では、カムは、2枚のロックギヤからの反力のみで姿勢を維持しているのにすぎないので、カムの姿勢および角度が安定しない。また、2枚のロックギヤの噛合のみであるため、ギヤプレート(インターナルギヤ)とベースプレート(ガイドブラケット)の相対回転を規制するモーメント強度の向上も難しい。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、カムの姿勢および角度が安定し、かつ、インターナルギヤとガイドブラケットの相対回転を規制するモーメント強度が向上したリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリクライニング装置は、シートクッションおよびシートバックのうちの一方のフレームに固定されたガイドブラケットと、前記ガイドブラケットと対向する位置で前記シートクッションおよび前記シートバックのうちの他方のフレームに固定され、前記ガイドブラケットに対して相対的に回転可能なインターナルギヤと、前記インターナルギヤの内歯に噛合可能な外歯をそれぞれ備えた4枚のロックギヤであって、前記インターナルギヤの周方向に離間して配置され、かつ、前記外歯と前記内歯とが噛合する噛合位置とこれらの噛合が解除される解除位置とに亘って前記ガイドブラケットのガイド壁部に沿って前記ガイドブラケットの径方向に移動可能な4枚のロックギヤと、前記ガイドブラケットに対して所定のロック角度と解除角度との間で相対的に回転可能なカムであって、前記解除角度から前記ロック角度への回転によって前記4枚のロックギヤを前記解除位置から前記噛合位置へ径方向に動かすカムと、前記解除角度から前記ロック角度へ向けて前記カムを回転付勢するロックスプリングと、を備え、前記カムは、前記ロックスプリングの回転付勢力によって前記解除角度から前記ロック角度へ回転するにしたがって、前記4枚のロックギヤにそれぞれ接触して当該4枚のロックギヤを前記カムの径方向外側へ押圧して前記噛合位置へ移行させる4つの押圧面を有し、前記4つの押圧面は、それぞれ円弧状の曲面を含み、前記4つの押圧面のうちの3つの押圧面のそれぞれは、前記カムが前記ロック角度にあるときに前記噛合位置の3枚の前記ロックギヤに接触して当該3枚のロックギヤを前記噛合位置に維持するように押圧するメイン押圧部分を有し、当該メイン押圧部分は、前記カムが前記ロック角度を越えても前記3枚のロックギヤを径方向外側に押圧可能となるように形成され、前記4つの押圧面のうちの残り1つの押圧面は、前記カムが前記ロック角度にあるときに前記噛合位置の1枚の前記ロックギヤを前記外歯と前記内歯との間にクリアランスを許容する噛合状態を維持するように押圧するサブ押圧部分を有し、当該サブ押圧部分は、前記カムが前記ロック角度を越えても前記1枚のロックギヤを前記クリアランスを許容する噛合状態を維持するように前記径方向外側に押圧可能となるように形成されている、ことを特徴とする。
【0009】
かかる構成では、カムは、ロックスプリングの回転付勢力によって解除角度から所定のロック角度へ回転するにしたがって、4枚のロックギヤにそれぞれ接触して当該4枚のロックギヤを前記カムの径方向外側へ押圧して噛合位置へ移行させる4つの押圧面を有する。4つの押圧面は、それぞれ円弧状の曲面を含む。4つの押圧面のうちの3つの押圧面のそれぞれは、カムがロック角度にあるときに噛合位置の3枚のロックギヤに接触して当該3枚のロックギヤを前記噛合位置に維持するように押圧するメイン押圧部分を有する。メイン押圧部分は、カムがロック角度を越えても3枚のロックギヤを径方向外側に押圧可能となるように形成されている。これにより、噛合位置の3枚のロックギヤは、ロックスプリングの付勢力によりカムがロック角度よりもさらにロック方向へ進角することによりカムの3つのメイン押圧部分によって押圧され、径方向外側へ押し込まれる。これにより、3枚のロックギヤの外歯とインターナルギヤの内歯とがクリアランス無く強固に噛合したロック状態になる。
【0010】
カムの4つの押圧面のうちの残り1つの押圧面は、カムがロック角度にあるときに噛合位置の1枚のロックギヤを外歯と内歯との間にクリアランスを許容する噛合状態を維持するように押圧するサブ押圧部分を有する。サブ押圧部分は、カムがロック角度を越えても1枚のロックギヤをクリアランスを許容する噛合状態を維持するように径方向外側に押圧可能となるように形成されている。したがって、サブ押圧部分に接触するロックギヤでは、ロックギヤの外歯とインターナルギヤの内歯とがクリアランスを許容する弱い噛合(いわゆる甘噛み)が可能になる。このロックギヤの弱い噛合は他の強固な噛合を行う3枚のロックギヤの外歯とインターナルギヤの内歯との噛合に影響を与えない。その結果、所定の3枚のロックギヤのみによるクリアランスの無い強固な噛合を確実に実現することが可能である。
【0011】
この構成では、3枚のロックギヤの強固な噛合を維持するように押圧するカムにおける3つのメイン押圧部分はカムの周方向に互いに離間して三角形を呈するように配置されるので、ロック状態ではカムは3枚のロックギヤと互いに離間する3点で接触することが可能になる。すなわち、ロック状態におけるカムは、強固な噛合を行う3枚のロックギヤによって3点で拘束されて回転も回転軸のずれも生じない状態になる。その結果、ロック状態におけるカムの姿勢および角度が安定する。
【0012】
しかも、ロック時に3枚のロックギヤの外歯をインターナルギヤの内歯に強固に噛合させることが可能であるので、リクライニング装置におけるインターナルギヤとガイドブラケットの相対回転を規制するモーメント強度が向上する。
【0013】
上記のリクライニング装置において、前記メイン押圧部分は、前記カムが前記ロック角度よりもさらにロック方向へ進角したときに前記ロックギヤを押し込むことが可能な角度になるように当該ロックギヤにおける前記メイン押圧部分との接触部分に対して傾斜しており、前記サブ押圧部分は、前記カムが前記ロック角度よりもさらにロック方向へ進角しても前記ロックギヤへの押圧力の増加を抑える角度になるように、当該ロックギヤにおける前記サブ押圧部分との接触部分に向けられているのが好ましい。
【0014】
上記の構成では、メイン押圧部分は、カムがロック角度よりもさらにロック方向へ進角したときにロックギヤを押し込むことが可能な角度になるように当該ロックギヤにおけるメイン押圧部分との接触部分に対して傾斜している。これにより、噛合位置の3枚のロックギヤは、ロックスプリングの付勢力によりカムがロック角度よりもさらにロック方向へ進角することによりカムの3つのメイン押圧部分によって押圧され、径方向外側へ押し込まれる。これにより、3枚のロックギヤの外歯とインターナルギヤの内歯とがクリアランス無く強固に噛合したロック状態になる。
【0015】
また、サブ押圧部分は、カムがロック角度よりもさらにロック方向へ進角してもロックギヤへの押圧力の増加を抑える角度になるように、当該ロックギヤにおけるサブ押圧部分との接触部分に向けられている。したがって、サブ押圧部分に接触するロックギヤでは、ロックギヤの外歯とインターナルギヤの内歯とがクリアランスを許容する弱い噛合(いわゆる甘噛み)が可能になる。このロックギヤの弱い噛合は他の3枚のロックギヤの強固な噛合に影響を与えない。その結果、所定の3枚のロックギヤのみにおけるクリアランスの無い強固な噛合を確実に実現することが可能である。
【0016】
上記のリクライニング装置において、前記3つの押圧面に含まれる前記円弧状の曲面は、前記カムの回転中心とずれた位置に曲率半径の中心が設定された円弧状の曲面で構成され、それにより、前記メイン押圧部分は、前記カムが前記ロック角度よりもさらにロック方向へ進角したときに前記ロックギヤを押し込むことが可能な角度になるように、当該ロックギヤにおける当該メイン押圧部分との接触部分に対して傾斜しているのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、カムのメイン押圧面がカムの回転中心とずれた位置に曲率半径の中心が設定された円弧状の曲面を含むことにより、メイン押圧面のうちの噛合位置のロックギヤと接触するメイン押圧部分を、ロックギヤにおける当該メイン押圧部分との接触部分に対して、カムがロック角度よりもさらにロック方向へ進角したときにロックギヤを押し込むことが可能な角度になるように、確実に傾斜させることが可能になる。その結果、メイン押圧面を含むカムの設計および製造が容易になる。
【0018】
上記のリクライニング装置において、前記メイン押圧部分に接触する前記3枚のロックギヤのうちの2枚のロックギヤは、前記カムを挟んで直線的に並ぶように対向配置され、前記メイン押圧部分に接触する前記3枚のロックギヤのうちの残り1枚のロックギヤと前記サブ押圧部分に接触する前記ロックギヤは、前記メイン押圧部分に接触する前記2枚のロックギヤに対して前記カムの周方向に90度離間するとともに前記カムを挟んで直線的に並ぶように対向配置されているのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、カムの3つのメイン押圧部分に接触する3枚のロックギヤのうち、カムを挟んで互いに対向する2枚のロックギヤとこれら2枚のロックギヤに対してカムの周方向に90度離間して配置された1枚のロックギヤは、互いに離間した3か所の位置でインターナルギヤの内歯と安定した状態で噛合することが可能であり、リクライニング装置におけるインターナルギヤとガイドブラケットの相対回転を規制するモーメント強度がさらに向上する。
【0020】
上記のリクライニング装置において、前記ガイドブラケットは、前記4枚のロックギヤを前記径方向に案内するガイド壁部を有し、前記メイン押圧部分に接触する前記3枚のロックギヤのうちの前記互いに対向する2枚のロックギヤは、前記外歯を有する本体部と、当該本体部とは分離するとともに前記メイン押圧面に接触する接触面を有するくさび部とを有し、前記本体部は、前記径方向から傾斜する方向に延びるとともに前記くさび部に当接する当接面を有し、前記くさび部は、前記当接面と前記ガイド壁部との間に挟まれた状態で配置されているのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、互いに対向する2枚のロックギヤでは、ロック時においてカムのメイン押圧面からの押圧力をくさび部におけるメイン押圧面に接触する接触面で受けることにより、くさび部は、ガイドブラケットの径方向から傾斜した本体部の当接面とガイドブラケットのガイド壁部との間に挟まれた状態で本体部を径方向外側のインターナルギヤへ向けて確実に押し込むことが可能である。また、くさび部が径方向外側に押し込まれることで、本体部が本体部の当接面を介してくさび部とは反対側のガイドブラケットのガイド壁部に押し付けられるため、ロックギヤにおけるガタツキを抑制し、ロック状態の安定性を向上することが可能である。
【0022】
本発明のシートは、シートクッションと、前記シートクッションの後部に配置されてシート前後方向に傾動可能なシートバックと、前記シートバックを任意の傾斜角度で固定する上記のリクライニング装置とを備えていることを特徴とする。
【0023】
かかる構成のシートでは、リクライニング装置のカムの姿勢および角度が安定し、かつ、インターナルギヤとガイドブラケットの相対回転を規制するモーメント強度を向上することが可能になるので、シートバックの安定した固定が可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のリクライニング装置およびシートによれば、カムの姿勢および角度が安定し、かつ、インターナルギヤとガイドブラケットの相対回転を規制するモーメント強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係るリクライニング装置を備えたシートの全体構成を示す斜視図である。
図2図1のコネクトロッドおよびリクライニング機構を分離した状態の斜視図である。
図3図2のリクライニング機構の分解斜視図である。
図4図3のカムの斜視図である。
図5図3のガイドブラケットを外面側から見た図である。
図6図3のインターナルギヤ、3枚のメインロックギヤ、サブロックギヤ、カム、ガイドブラケット、および取付リングを組み合わせたリクライニング機構の完成状態を示す図であって、(a)は取付リングの外側から軸方向に見た図、(b)は(a)のA―A線断面図である。
図7図3のカム、3枚のメインロックギヤ、1枚のサブロックギヤ、およびインターナルギヤの配置を示す図である。
図8図7のメインロックギヤとカムとの接触部分を示す拡大図である。
図9図3のガイドブラケットの内面側に2個のロックスプリングとカムが取り付けられた状態を示す図である。
図10図9の2個のロックスプリングの外側端部がカムの凸部の係合端部に係合した状態をガイドブラケットの外面側から見た図である。
図11図7のカムがロック方向に回転することにより、3枚のメインロックギヤおよび1枚のサブロックギヤが径方向に移動して3枚のメインロックギヤの強固な噛合およびサブロックギヤのクリアランスを許容した弱い噛合をしたロック状態のリクライニング機構を示す説明図である。
図12図11のカムのメイン押圧面の傾きを示す角度θを説明するための説明図である。
図13】本発明の変形例のリクライニング機構の分解斜視図である。
図14図13のカム、3枚のメインロックギヤ(くさび部を有する上下のメインロックギヤとくさび部を有しない右側のメインロックギヤ)、1枚のサブロックギヤ、およびインターナルギヤの配置を示す図である。
図15図14のくさび部を有するメインロックギヤとカムとの接触部分を示す拡大図である。
図16図14のカムがロック方向に回転することにより、3枚のメインロックギヤおよび1枚のサブロックギヤが径方向に移動して3枚のメインロックギヤの強固な噛合およびサブロックギヤのクリアランスを許容した弱い噛合をすることを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0027】
図1に示されるように、本実施形態のシート1は、車両等のシートであって、着座者の臀部を支持するシートクッション2と、着座者の背中を支持するためにシートクッション2の後部に配置され、シートクッション2に対してシート1の前後方向Xに傾動可能なシートバック3と、シートクッション2の下部に取り付けられたスライド装置4と、リクライニング装置5とを備えている。
【0028】
スライド装置4は、シートクッション2をシート1の前後方向Xにスライド可能に案内するとともに当該シートクッション2を任意の位置で固定可能な構成を有している。なお、本発明のシートではスライド装置4は必須ではなく無くてもよい。
【0029】
リクライニング装置5は、主要な構成として、シートバック3を任意の傾斜角度で固定することが可能なリクライニング機構6を有する。
【0030】
具体的には、図2~3に示されるように、本実施形態のリクライニング装置5は、一対のリクライニング機構6と、一対のリクライニング機構6に連結されるコネクトロッド7と、コネクトロッド7の両側の端部の近傍に嵌合される一対の樹脂ブッシュ8とを備えている。なお、樹脂ブッシュ8は無くてもよい。
【0031】
一対のリクライニング機構6は、シート1の幅方向Yの両側の位置に配置されている。各リクライニング機構6は、シートバック3を任意の傾斜角度で固定するためのクラッチの役目をする機構である。
【0032】
リクライニング機構6は、図3および図6(a)、(b)に示されるように、円板状のガイドブラケット20と、ガイドブラケット20に対向して配置され、内歯32を有するインターナルギヤ30と、内歯32に噛合可能な外歯63、163を有する4枚のロックギヤ、すなわち、3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160と、メインロックギヤ60A~60Cおよびサブロックギヤ160をガイドブラケット20の径方向に動かすカム50と、カム50を回転付勢する少なくとも1つ(本実施形態では2個)のロックスプリング40と、インターナルギヤ30をガイドブラケット20に取り付ける取付リング70とを備える。3枚のメインロックギヤ60A~60C、1枚のサブロックギヤ160、カム50、および2個のロックスプリング40は、ガイドブラケット20とインターナルギヤ30との間に配置されている。
【0033】
4枚のロックギヤ、すなわち、3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160は、インターナルギヤ30の周方向に離間して配置され、かつ、これらの外歯63、163とインターナルギヤ30の内歯32とが噛合する噛合位置とこれらの噛合が解除される解除位置とに亘ってガイドブラケット20に沿ってガイドブラケット20の径方向に移動可能である。具体的には、メインロックギヤ60A~60Cは、内歯32に噛合可能な外歯63をそれぞれ有し、強固な噛合を行うロックギヤである。サブロックギヤ160は、内歯32に噛合可能な外歯163を有し、クリアランスを許容した状態の弱い噛合(甘噛み)を行うロックギヤである。本実施形態では、ロックスプリング40として、小型の渦巻ばねが採用されている。
【0034】
ここで、メインロックギヤ60A~60Cの「強固な噛合」とは、外歯63と内歯32とがそれぞれの歯面が接触して押し合う状態で噛み合うことをいう。一方、サブロックギヤ160の「クリアランスを許容した状態の弱い噛合(甘噛み)」とは、外歯63が隣接する2枚の内歯32の間に入り込んでいる(すなわち、外歯63の歯先円と内歯32の歯先円とが重なっている)が、それぞれの歯面が接触しないかわずかに接触している程度の歯面同士が押し合わない噛合いをいう。
【0035】
ガイドブラケット20は、中央に円形のセンター穴22を有する板状の部材である。本実施形態のガイドブラケット20は、シートクッション2およびシートバック3のいずれか一方として、シートクッション2のフレーム2a(図1~2参照)(具体的にはサイドフレーム)の後部付近に固定されている。
【0036】
ガイドブラケット20は、具体的には、図3図5図6(b)、図9に示されるように、中央に円形のセンター穴22が形成された円板状の本体部21と、ロックスプリング40をそれぞれ収容する2つの収容部23と、本体部21の外周に沿って設けられたフランジ部24とを有する。
【0037】
2個の収容部23は、それぞれ、ガイドブラケット20におけるインターナルギヤ30との対向面、すなわち、本体部21の内面21bのセンター穴22の周囲においてインターナルギヤ30から退避する方向(すなわち、外面21a側)に凹んだ凹部23a(いわゆる半貫部)を有する。凹部23aは、本体部21の内面21b側に開口するとともにセンター穴22に連通しているので、ロックスプリング40の渦巻き部分が凹部23aに収容された状態で、外側端部41をセンター穴22の内部に突出させることが可能である。
【0038】
ガイドブラケット20は、さらに、図7~9に示されるように、本体部21の内面21b(上記の対向面)において、3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160をガイドブラケット20の径方向に案内する複数のガイド壁部25(ガイド部)を有する。複数のガイド壁部25は、センター穴22の周囲に互いに周方向に等間隔に離れて設けられ、ガイドブラケット20の径方向にそれぞれ延びている。さらに具体的には、複数のガイド壁部25は、センター穴22を中心として一対ずつ組になって4方向に放射状に延びている。これにより、四対のガイド壁部25によって、3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160をガイドブラケット20の径方向に案内することが可能である。
【0039】
インターナルギヤ30は、ガイドブラケット20と対向する位置で、シートクッション2およびシートバック3の他方として、シートバック3のフレーム3a(図1~2参照)(具体的にはサイドフレーム)の下部付近に固定されている。
【0040】
インターナルギヤ30は、図3および図6(a)、(b)に示されるように、インターナルギヤ30の軸方向から見て円形に形成されると共に断面略凹状に形成された凹状部31を有する。凹状部31の内周面31aには、当該内周面31aの全周にわたって内歯32が形成されている。インターナルギヤ30は、凹状部31の底面31bをガイドブラケット20の本体部21の内面21b(対向面)に対向させて配置される。凹状部31の中央には、貫通孔33が形成されている。貫通孔33は、図2に示されるように、シートバック3のフレーム3aの貫通孔3bに重なるように配置される。貫通孔33を通して、コネクトロッド7および樹脂ブッシュ8のそれぞれの端部がリクライニング機構6の内部に挿入される。
【0041】
図3および図6(b)に示されるように、ガイドブラケット20とインターナルギヤ30の凹状部31とが対向した状態で、凹状部31の周縁部がガイドブラケット20の段差部26(すなわち、図6(b)に示される本体部21とフランジ部24との間の段差部26)に嵌合される。これにより、インターナルギヤ30は、ガイドブラケット20に対しての径方向の位置決めがなされる。
【0042】
さらに、取付リング70がフランジ部24に溶接などで固定されてインターナルギヤ30の軸方向への抜け止めがなされる。これによって、インターナルギヤ30は、ガイドブラケット20に対して相対的に回転可能に連結されている。
【0043】
3枚のメインロックギヤ60A~60Cは、図3に示されるように、インターナルギヤ30の内歯32に噛合可能な外歯63をそれぞれ備えた平面視で略長方形の形状を有する部材(いわゆるロックプレート)である。メインロックギヤ60A~60Cは、ガイドブラケット20の内面21bに沿って、当該内面21b形成された上記のガイド壁部25によってガイドブラケット20の径方向に案内されながら移動可能に配置されている。これにより、メインロックギヤ60A~60Cは、外歯63と内歯32とがクリアランス無く強固に噛合する噛合位置とこれらの噛合が解除される解除位置とに変位することが可能である。各メインロックギヤ60A~60Cの内周面には、カム50の周方向に延びるように略円弧状に切り欠かれた被係合溝61が形成されている。被係合溝61は、後述のカム50の係合突起52と係合するための溝である。また、上記のように周方向に延びる被係合溝61が形成されることにより、メインロックギヤ60A~60Cの内周面には、被係合溝61よりも径方向内側に略L字状の係合突起64が形成されている。
【0044】
図3および図7に示されるように、3枚のメインロックギヤ60A~60Cのうち上下方向に対向する2枚のメインロックギヤ60A、60Cは、カム50を挟んで直線的に並ぶように対向配置(本実施形態では上下方向に対向配置)されている。
【0045】
3枚のメインロックギヤ60A~60Cのうちの残り1枚のメインロックギヤ60Bとサブロックギヤ160は、2枚のメインロックギヤ60A、60Cに対してカム50の周方向に90度離間するとともにカム50を挟んで直線的に並ぶように対向配置されている。
【0046】
3枚のメインロックギヤ60A~60Cは、径方向内側に突出する突起65を有する。メインロックギヤ60A~60Cの噛合位置においてカム50(具体的には、後述の係合突起52の外周面である円弧状のメイン押圧面52a)に接触する円弧状のメイン接触面65aを有する。
【0047】
サブロックギヤ160は、上記のメインロックギヤ60A~60Cと基本的に同じ構成を有する。すなわち、サブロックギヤ160は、図3に示されるように、インターナルギヤ30の内歯32に噛合可能な外歯163をそれぞれ備えた平面視で略長方形の形状を有する部材(いわゆるロックプレート)である。サブロックギヤ160は、ガイドブラケット20の内面21bに沿って、当該内面21bに形成された上記のガイド壁部25によってガイドブラケット20の径方向に案内されながら移動可能に配置されている。これにより、サブロックギヤ160は、外歯63と内歯132とがクリアランスを許容した状態で弱く噛合する噛合位置とこれらの噛合が解除される解除位置とに変位することが可能である。サブロックギヤ160の内周面にも、上記のメインロックギヤ60Bの被係合溝61と同様に、カム50の周方向に延びるように略円弧状に切り欠かれた被係合溝161が形成されている。被係合溝161は、後述のカム50の係合突起52と係合するための溝である。また、上記のように周方向に延びる被係合溝161が形成されることにより、サブロックギヤ160の内周面には、被係合溝161よりも径方向内側に略L字状の係合突起164が形成されている。
【0048】
サブロックギヤ160は、メインロックギヤ60Bにおける突起65と対応する形状の径方向内側に突出する突起165を有する。突起165は、噛合位置においてカム50(具体的には、後述の係合突起52の外周面である円弧状のサブ押圧面52b)と接触する円弧状のサブ接触面165aを有する。
【0049】
カム50は、ガイドブラケット20に対して所定のロック角度と解除角度との間で相対的に回転可能なカムである。カム50は、図3~4、および図6(b)に示されるように、本体部51と、本体部51からガイドブラケット20に向かって当該カム50の軸方向に突出してガイドブラケット20のセンター穴22に挿入された軸部Sとを有する。
【0050】
本体部51は、解除角度からロック角度へのカム50の回転によって3枚のメインロックギヤ60A~60Cを強固な噛合位置と解除位置との間で径方向に動かすとともに1枚のサブロックギヤ160を弱い噛合位置と解除位置との間で径方向に動かすことが可能な構成を有する。具体的には、本体部51は、3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160のそれぞれを径方向に動かす複数の操作部分である4つの係合突起52を有する。4つの係合突起52は、3枚のロックギヤ60A~60Cのそれぞれの被係合溝61および1枚のサブロックギヤ160の被係合溝161(図3参照)に係合可能な方向に延び、さらに詳細に言えば、円周方向に等間隔に略円弧状で角状に延びる。
【0051】
図8図11~12に示されるように、カム50は、ロックスプリング40の回転付勢力によって解除角度からロック角度へ回転するにしたがって、4枚のロックギヤ(メインロックギヤ60A~60Cおよびサブロックギヤ160)にそれぞれ接触して当該4枚のロックギヤをカム50の径方向外側へ押圧して噛合位置へ移行させる4つの押圧面(3つのメイン押圧面52aおよび1つのサブ押圧面52b)を有する。3つのメイン押圧面52aは、噛合位置へ移行する3枚のメインロックギヤ60A~60Cにそれぞれ接触して当該メインロックギヤ60A~60Cをカム50の径方向外側へ押圧する。1つのサブ押圧面52bは、噛合位置へ移行するサブロックギヤ160に接触して当該サブロックギヤ160をカム50の径方向外側へ押圧する。本実施形態では、メイン押圧面52aは、カム50の4つの係合突起52のうち3枚のメインロックギヤ60A~60Cのそれぞれのメイン接触面65aに接触する3つの係合突起52の外周面によって構成される。サブ押圧面52bは、1枚のサブロックギヤ160のサブ接触面165aに接触する係合突起52の外周面によって構成される。3つのメイン押圧面52aおよびサブ押圧面52bは、それぞれ円弧状の曲面を含む。
【0052】
図11に示されるように、3つのメイン押圧面52aのそれぞれは、カム50が所定のロック角度にあるときに噛合位置の3枚のメインロックギヤ60A~60C(具体的には、これらの3つのメイン接触面65a)に接触して当該メインロックギヤ60A~60Cを噛合位置に維持するように押圧するメイン押圧部分として、接触点P1~P3を含む部分を有する。
【0053】
3つのメイン押圧面52aのメイン押圧部分である接触点P1~P3を含む部分は、三角形を呈するように配置されている。
【0054】
メイン押圧面52aのメイン押圧部分である接触点P1~P3を含む部分は、カム50がロック角度を越えても3枚のメインロックギヤ60A~60Cを径方向外側に押圧可能となるように形成されている。具体的には、メイン押圧面52aの接触点P1~P3を含む部分は、カム50が所定のロック角度よりもさらにロック方向Rへ進角したときにメインロックギヤ60A~60Cを押し込むことが可能な角度になるように当該メインロックギヤ60A~60Cにおけるメイン押圧部分との接触部分(3つのメイン接触面65aにおける接触点P1~P3を含む部分)に対して傾斜している。
【0055】
また、サブ押圧面52bは、噛合位置のサブロックギヤ160(具体的には、サブ接触面165a)に接触して外歯163と内歯32との間にクリアランスを許容する噛合状態を維持するように押圧するサブ押圧部分として、接触点P4を含む部分を有する。
【0056】
サブ押圧面52bのサブ押圧部分である接触点P4を含む部分は、カム50がロック角度を越えてもサブロックギヤ160をクリアランスを許容する噛合状態を維持するように径方向外側に押圧可能に形成されている。具体的には、サブ押圧面52bの接触点P4を含む部分は、カム50が所定のロック角度よりもさらにロック方向Rへ進角してもサブロックギヤ160への押圧力の増加をメインロックギヤ60A~60Cへの押圧力の増加よりも低く抑える角度になるように、当該サブロックギヤ160におけるサブ押圧部分との接触部分(具体的には、サブ接触面165aにおける接触点P4を含む部分)に向けられている。すなわち、接触点P4におけるサブ押圧面52bと当該サブロックギヤ160におけるサブ押圧部分との接触部分との傾斜角度は、小さい角度、具体的には、上記の接触点P1~P3におけるメイン押圧面52aと3つのメイン接触面65aとの傾斜角度に比べて小さい角度に設定されている。好ましくは、サブ押圧面52bの接触点P4を含む部分は、サブロックギヤ160におけるサブ押圧部分との接触部分(具体的には、サブ接触面165aにおける接触点P4を含む部分)と法線方向が一致またはそれに近い向きを向いていればよい。
【0057】
本実施形態では、図11~12に示されるように、3つのメイン押圧面52aに含まれる円弧状の曲面は、カム50の回転中心O1とずれた位置に曲率半径の中心O2が設定された円弧状の曲面(図12の曲率半径r1の円弧面)により構成される。具体的には、メイン押圧面52aの円弧状曲面の曲率半径の中心O2の位置は、接触点P1を基準(回転中心)として、カム50の回転中心O1の位置から反時計回りに角度θ回転した位置に設定されている。これにより、図12において、メイン押圧面52aに含まれる円弧状の曲面(曲率半径の中心O2の曲面)は、カム50の回転中心O1と曲率半径の中心が一致する円周面に対して、当該円周面とメインロックギヤ60Aの円弧状のメイン接触面65aとの接触点P1を回転軸として反時計回りに傾斜する(すなわち、回転中心O1と曲率半径の中心が一致する円周面から角度θ傾く)が、接触点P1を通る曲面になる。
【0058】
上記のようにメイン押圧面52aに含まれる円弧状の曲面を構成することにより、メイン押圧面52aのメイン押圧部分である接触点P1~P3を含む部分は、カム50がロック角度よりもさらにロック方向Rへ進角したときにメインロックギヤ60A~60Cを押し込むことが可能な角度になるように、当該メインロックギヤ60A~60Cにおける当該メイン押圧部分との接触部分(3つのメイン接触面65aの接触点P1~P3を含む部分)に対して傾斜している。したがって、カム50がロックスプリング40の付勢力によりロック方向Rへ付勢されたときには、カム50のメイン押圧面52aがメインロックギヤ60A~60Cを解除位置から径方向外側へ強く押し出し、メインロックギヤ60A~60Cが噛合位置に到達した後では、メイン押圧面52aのメイン押圧部分である接触点P1~P3を含む部分により、メインロックギヤ60A~60Cの外歯63をインターナルギヤ30の内歯32に強固に噛合した噛合位置へ確実に押し込むことが可能である。
【0059】
一方、図11および図12に示されるように、サブ押圧面52bは、カム50の回転中心O1と一致する曲率半径の中心が設定された円弧面(図12の曲率半径r5の曲面)を含む。それにより、サブ押圧面52bのうちのサブ押圧部分である接触点P4を含む部分は、カム50がロック角度よりもさらにロック方向Rへ進角してもサブロックギヤ160への押圧力の増加を抑える角度になるように、サブロックギヤ160におけるサブ押圧面52bのうちのサブ押圧部分である接触点P4を含む部分に向けられている。したがって、カム50がロックスプリング40の付勢力によりロック方向Rへ付勢されたときには、カム50のサブ押圧面52bがサブロックギヤ160を解除位置から径方向外側へ押し出すが、サブロックギヤ160の外歯163をインターナルギヤ30の内歯32にクリアランスを許容した状態で弱く噛み合う噛合位置へ移行したときにはカム50のサブ押圧面52bの押圧部分である接触点P4を含む部分からサブロックギヤ160へ押圧力が作用しないので、サブロックギヤ160は弱く噛み合う噛合位置を維持できる。
【0060】
また、係合突起52を除いたカム50の本体部51には、各係合突起52の基部から所定角度隔てた位置に外径が大きくなるように膨出する膨出部55(図4参照)が4箇所に形成されている。
【0061】
図11および図12に示されるように、膨出部55の外面55aのうちのメインロックギヤ60A~60Cの係合突起64およびサブロックギヤ160の係合突起164とそれぞれ接触する部分(図11および図12の膨出部55の外面55aの接触点P11~P14を含む部分)は、カム50がロック角度よりもさらにロック方向Rへ進角してもメインロックギヤ60A~60Cおよびサブロックギヤ160への押圧力の増加を抑える角度に傾斜するように形成されることが好ましい。具体的には、カム50の4個の膨出部55の外面55aにおける上記の接触点P11~P14を含む部分は、カム50の回転中心O1と一致する曲率半径の中心が設定された円弧面(図12の曲率半径r3の曲面)を含むことにより、上記のように押圧力の増加を抑える角度に傾斜するように形成されている。
【0062】
したがって、カム50がロックスプリング40の付勢力によりロック方向Rへ付勢されたときには、カム50の膨出部55の外面55aがメインロックギヤ60A~60Cの係合突起64およびサブロックギヤ160の係合突起164に当接して径方向外側へ押し出すが、メインロックギヤ60A~60Cが噛合位置に移行するとともにサブロックギヤ160が噛合位置へ移行したときにはカム50の膨出部55の外面55aからメインロックギヤ60A~60Cおよびサブロックギヤ160へ押圧力が作用しないので、メインロックギヤ60A~60Cの係合突起64およびサブロックギヤ160の係合突起164はカム50の回転中心O1から所定の距離だけ離間した位置(すなわち、図12の回転中心O1から半径r3離れた位置)を維持できる。
【0063】
また、本実施形態では、図11および図12に示されるメインロックギヤ60A~60Cのそれぞれのメイン接触面65aは、円弧状の曲面(図12の中心O3とする曲率半径r2の円弧面)を含むが、平坦な面でもよい。さらに、カム50の4つの膨出部55に接触するメインロックギヤ60A~60Cの係合突起64の外面64aおよびサブロックギヤ160の係合突起164の外面164aは、円弧状の曲面(図12の中心O4とする曲率半径r4の円弧面)を含むが、平坦な面でもよい。
【0064】
なお、カム50のその他の構成は、以下の通りである。
【0065】
図2~4に示されるように、カム50の本体部51は、中央にロッド係合孔54が形成されている。ロッド係合孔54には、上記のインターナルギヤ30の貫通孔33を通して、コネクトロッド7の端部が係合している。コネクトロッド7を手動などで回転操作することによって、リクライニング機構6の内部のカム50を回転操作することが可能である。
【0066】
カム50の軸部Sは、図4および図9に示されるように、ガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接する外周面S1と、ロックスプリング40の外側端部41が係合される被係合部(後述の係合端部53b)とを有する。
【0067】
本実施形態では、軸部Sは、本体部51から軸方向に突出する複数(本実施形態では2個)の凸部53で構成されている。外周面S1は、2個の凸部53における(カム50の径方向で見て)径方向外側の面53aで構成されている。径方向外側の面53aは、当該カム50の軸方向から見て円弧状に湾曲する面である。凸部53は、カム50を成形する際に中空になるように(いわゆる半貫形状に)形成されるのが好ましい。
【0068】
また、上記の被係合部は、本実施形態では、2個の凸部53のそれぞれにおいてカム50の周方向の一方の端部である係合端部53bで構成されている。係合端部53bは、凸部53の周方向両側の端部53b、53cのうち、カム50の周方向において係合突起52が3枚のメインロックギヤ60A~60Cの被係合溝61および1枚のサブロックギヤ160の被係合溝161に係合する回転方向(図4において時計回り)の側の端部である。
【0069】
図9に示されるように、ロックスプリング40の外側端部41が凸部53の係合端部53bに係合することにより、ロックスプリング40は、カム50を前記解除角度から前記ロック角度へ向けて所定の方向(図9のカム50のロック方向R)に回転付勢させる。具体的には、係合突起52および膨出部55が3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160をカム50の半径方向外方に押圧して外歯63がインターナルギヤ30の内歯32に強固に噛み合う噛合位置へ移動させる方向に、ロックスプリング40はカム50を回転付勢させる。このとき、サブロックギヤ160に対向する係合突起52および膨出部55もサブロックギヤ160をカム50の半径方向外方に押圧して外歯63がインターナルギヤ30の内歯32にクリアランスを許容した状態で弱く噛み合う噛合位置へ移動させる。
【0070】
カム50は、軸部Sの外周面S1がガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接することにより、当該ガイドブラケット20に対して回転可能に支持されている。
【0071】
このように、ガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aと凸部53の径方向外側の面53a(すなわち、軸部Sの外周面S1)とが当接することにより、カム50は、ガイドブラケット20に対して径方向の位置決めがなされる。
【0072】
2個のロックスプリング40は、図3図9、10に示されるように、ガイドブラケット20の本体部21の内面21b側において、上記の収容部23の凹部23aに収容されることにより、センター穴22の周囲に周方向に均等に配置、すなわち、本実施形態では、センター穴22の両側に配置されている。
【0073】
本実施形態のロックスプリング40は、帯状の金属薄板が渦巻状に巻かれた渦巻ばねであり、外側端部41と、内側端部42とを有する。内側端部42は、ガイドブラケット20の収容部23の凹部23a内に設けられた係合凸部23bに係合している。
【0074】
外側端部41は、上記のカム50の凸部53の係合端部53bに係合している。これにより、2個のロックスプリング40は、それぞれ、3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160を解除位置から噛合位置へ変位させる方向にカム50を回転付勢することが可能である。
【0075】
上記のリクライニング機構6では、通常のロック状態では、カム50は、ロックスプリング40からの回転付勢力によりロック方向R(図11~12参照)へ付勢されている。この状態では、カム50の4つの係合突起52のうち3つの係合突起52の外周面である3つのメイン押圧面52aは、メイン押圧部分(接触点P1~P3を含む部分)の部位で、3枚のメインロックギヤ60A~60Cのそれぞれのメイン接触面65aを押圧して3枚のメインロックギヤ60A~60Cを径方向外側へ強く押し込んで噛合位置に維持しているので、これらの外歯63がインターナルギヤ30の内歯32に強固に噛合している。また、カム50の残り1つの係合突起52の外周面であるサブ押圧面52bは、サブ押圧部分(接触点P1~P4を含む部分)の部位で、サブロックギヤ160のサブ接触面165aを押圧してサブロックギヤ160を径方向外側へ弱く押して噛合位置に維持しているので、この外歯163を内歯32にクリアランスを許容した状態で弱く噛合している。
【0076】
一方、コネクトロッド7に回転操作力が入力されたときには、ロックスプリング40の弾性力に抗して、カム50が逆方向(図9および図11のロック方向Rと反対方向)へ回転することによって3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160が中心方向に変位する。すなわち、図9および図11に示されるカム50がロック方向Rと反対方向に回転すると、カム50の4個の係合突起52が3枚のメインロックギヤ60A~60Cの各被係合溝61および1枚のサブロックギヤ160の被係合溝161(図3参照)に係合して、3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160をカム50の中心方向に引き寄せる。これにより、メインロックギヤ60A~60Cおよびサブロックギヤ160を径方向内側へ引き込んで上記の噛合位置から解除位置へ変位させてロック解除状態になる。ロック解除状態では、シートバック3を任意の角度に変更することが可能になる。シートバック3を任意の角度に変更後は、コネクトロッド7への回転操作力を無くせば、ロックスプリング40の回転付勢力により上記のロック状態に復帰する。
【0077】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態のリクライニング装置5の主要部であるリクライニング機構6は、ガイドブラケット20と、インターナルギヤ30と、インターナルギヤ30の内歯32に噛合可能な外歯63を有する3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび外歯163を有するサブロックギヤ160と、回転によってメインロックギヤ60A~60Cおよびサブロックギヤ160をそれぞれの噛合位置と解除位置との間で径方向に動かすカム50と、カム50を回転付勢するロックスプリング40とを備える。
【0078】
カム50は、ロックスプリング40の回転付勢力によって解除角度から所定のロック角度へ回転するにしたがって、4枚のロックギヤ、すなわち、3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160にそれぞれ接触して当該4枚のロックギヤをカム50の径方向外側へ押圧して噛合位置へ移行させる4つの押圧面、すなわち、3つのメイン押圧面52aおよび1つのサブ押圧面52bを有する。4つの押圧面52a、52bは、それぞれ円弧状の曲面を含む。
【0079】
4つの押圧面52a、52bのうちの3つのメイン押圧面52aのそれぞれは、カム50がロック角度にあるときに噛合位置の3枚のメインロックギヤ60A~60Cに接触して当該3枚のメインロックギヤ60A~60Cを噛合位置に維持するように押圧するメイン押圧部分(メイン押圧面52aの接触点P1~P3を含む部分)を有する。メイン押圧部分は、カム50がロック角度を越えても3枚のメインロックギヤ60A~60Cを径方向外側に押圧可能となるように形成されている。具体的には、メイン押圧部分は、カム50がロック角度よりもさらにロック方向へ進角したときにメインロックギヤ60A~60Cを押し込むことが可能な角度になるように当該メインロックギヤ60A~60Cにおけるメイン押圧部分との接触部分(3つのメイン接触面65aの接触点P1~P3を含む部分)に対して傾斜している。これにより、噛合位置の3枚のメインロックギヤ60A~60Cは、ロックスプリング40の付勢力によりカム50がロック角度よりもさらにロック方向Rへ進角することによりカム50の3つのメイン押圧部分によって押圧され、径方向外側へ押し込まれる。これにより、3枚のメインロックギヤ60A~60Cの外歯63とインターナルギヤ30の内歯32とがクリアランス無く強固に噛合したロック状態になる。このとき、メインロックギヤ60A~60Cは、3つのメイン押圧面52aのメイン押圧部分である接触点P1~P3を含む部分によって噛合位置に維持するように押圧される。
【0080】
一方、カム50のサブ押圧面52bは、カム50がロック角度にあるときに噛合位置の1枚のサブロックギヤ160を外歯163と内歯32との間にクリアランスを許容する噛合状態を維持するように押圧するサブ押圧部分(サブ押圧面52bの接触点P4を含む部分)を有する。サブ押圧部分は、カム50がロック角度を越えても1枚のサブロックギヤ160をクリアランスを許容する噛合状態を維持するように径方向外側に押圧可能となるように形成されている。具体的には、サブ押圧部分は、カム50がロック角度よりもさらにロック方向へ進角してもサブロックギヤ160への押圧力の増加を抑える角度になるように、当該サブロックギヤ160におけるサブ押圧部分との接触部分(サブ接触面165aの接触点P4を含む部分)に向けられている(好ましくは、サブ押圧部分との接触部分と法線方向が一致する向きまたはそれに近い向きを向いている)。したがって、カム50のサブ押圧部分に接触するサブロックギヤ160では、サブロックギヤ160の外歯163とインターナルギヤ30の内歯32とがクリアランスを許容する弱い噛合(いわゆる甘噛み)が可能になる。このサブロックギヤ160の弱い噛合は他の強固な噛合を行う3枚のメインロックギヤ60A~60C外歯63とインターナルギヤ30の内歯32との噛合に影響を与えない。その結果、所定の3枚のメインロックギヤ60A~60Cのみによるクリアランスの無い強固な噛合を確実に実現することが可能である。
【0081】
この構成では、3枚のメインロックギヤ60A~60Cの強固な噛合を維持するように押圧するカム50における3つのメイン押圧面52aのメイン押圧部分である接触点P1~P3を含む部分はカム50の周方向に離間して三角形を呈するように配置されるので、ロック状態では、カム50は噛合位置の3枚のロックギヤ60A~60Cと互いに離間する3点で接触することが可能になる。すなわち、ロック状態におけるカム50は、強固な噛合を行う3枚のロックギヤ60A~60Cによって3点で拘束されて回転も回転軸のずれも生じない状態になる。その結果、ロック状態におけるカム50の姿勢および角度が安定する。
【0082】
しかも、ロック時に3枚のメインロックギヤ60A~60Cの外歯63をインターナルギヤ30の内歯32に強固に噛合させることが可能であるので、リクライニング装置におけるインターナルギヤ30とガイドブラケット20の相対回転を規制するモーメント強度が向上する。
【0083】
さらに、上記の構成では、リクライニング装置に衝撃が加わって内歯32を有するインターナルギヤ30が変形した場合にはサブロックギヤ160の外歯163が内歯32に噛合することによりロックを保持するので、ロック状態を確実に維持できる。
【0084】
(2)
本実施形態のリクライニング機構6では、3つのメイン押圧面52aに含まれる円弧状の曲面は、カム50の回転中心O1とずれた位置に曲率半径の中心O2が設定された円弧状の曲面(図12の曲率半径r1の円弧面)により構成される。それにより、メイン押圧面52aのメイン押圧部分である接触点P1~P3を含む部分は、カム50がロック角度よりもさらにロック方向Rへ進角したときにメインロックギヤ60A~60を押し込むことが可能な角度になるように、当該メインロックギヤ60A~60Cにおける当該メイン押圧部分との接触部分に対して傾斜している。したがって、メイン押圧面52aのうちの噛合位置のメインロックギヤ60A~60Cと接触するメイン押圧部分(接触点P1~P3を含む部分)を上記の角度に傾斜するように確実に形成することが可能になる。その結果、メイン押圧面52aを含むカム50の設計および製造が容易になる。
【0085】
(3)
本実施形態のリクライニング機構6では、カム50の上記メイン押圧部分に接触する3枚のメインロックギヤ60A~60Cのうちの2枚のメインロックギヤ60A、60Cは、カム50を挟んで直線的に並ぶように対向配置されている。3枚のメインロックギヤ60A~60Cのうちの残り1枚のメインロックギヤ60Bとカム50の上記サブ押圧部分に接触するサブロックギヤ160は、2枚のメインロックギヤ60A、60Cに対してカム50の周方向に90度離間するとともにカム50を挟んで直線的に並ぶように対向配置されている。
【0086】
かかる構成によれば、カム50を挟んで互いに対向する2枚のメインロックギヤ60A、60Cとこれら2枚のメインロックギヤ60A、60Cに対してカム50の周方向に90度離間して配置された1枚のメインロックギヤ60Bは、互いに離間した3か所の位置でインターナルギヤ30の内歯32と安定した状態で噛合することが可能であり、リクライニング装置におけるインターナルギヤ30とガイドブラケット20の相対回転を規制するモーメント強度がさらに向上する。
【0087】
(4)
本実施形態のシート1は、図1に示されるように、シートクッション2と、シートクッション2の後部に配置されてシート前後方向に傾動可能なシートバック3と、シートバック3を任意の傾斜角度で固定する上記実施形態のリクライニング機構6を主要部とするリクライニング装置5とを備えている。
【0088】
かかる構成のシート1は、リクライニング装置5の主要部であるリクライニング機構6において、カム50の姿勢および角度が安定し、かつ、インターナルギヤ30とガイドブラケット20の相対回転を規制するモーメント強度を向上することが可能になるので、シートバック3の安定した固定が可能になる。
【0089】
(5)
また、本実施形態のリクライニング機構6では、カム50は、本体部51からガイドブラケット20に向かって当該カム50の軸方向に突出してガイドブラケット20のセンター穴22に挿入された軸部Sを有する。軸部Sは、ガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接する外周面S1と、ロックスプリング40が係合される被係合部である係合端部53bとを有する。カム50は、軸部Sの外周面S1がガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接することにより、当該ガイドブラケット20に対して回転可能に支持されている。それとともに、カム50は、係合端部53bにロックスプリング40が係合されることにより、当該ロックスプリング40によって回転付勢されている。
【0090】
したがって、ガイドブラケット20は、当該ガイドブラケット20に沿って、具体的には、インターナルギヤ30と対向する本体部21の内面21b(対向面)に沿って複数のガイド壁部25によって複数の3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160を径方向に案内するとともに、センター穴22の内周面22aがカム50の軸部Sと軸合わせをする。つまり、カム50の位置合わせおよび複数の3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160の位置合わせの両方をガイドブラケット20を基準にして行うことが可能である。これにより、ガイドブラケット20やカム50などの各部品に製造公差がある場合でも、ガイドブラケット20とカム50との間の軸ずれが生じ難くなり、カム50によって操作される複数の3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160のロックタイミングを合わせることが可能になる。
【0091】
すなわち、上記の実施形態では、カム50の軸部S(本実施形態では複数の凸部53)の外周面S1(径方向外側の面53a)がガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接しているため、カム50の回転が安定し、複数の3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160のロックタイミングのずれが抑えられる。
【0092】
上記の本実施形態のリクライニング機構6では、カム50の軸部S(複数の凸部53)の外周面S1(径方向外側の面53a)がガイドブラケット20のセンター穴22の内周面に当接するとともにカム50がガイドブラケット20に回転自在に支持される構造なので、カム50の位置合わせおよび複数の3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160の位置合わせの両方がガイドブラケット20を基準にして行われる。したがって、本実施形態のリクライニング機構6では、各部品の製造公差の影響を受けにくいので、カム50によって操作される複数の3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160のロックタイミングを合わせることが可能になることが理解される。
【0093】
(6)
本実施形態では、カム50の軸部Sは、カム50の本体部51から軸方向に突出する複数の凸部53で構成されている。外周面S1は、複数の凸部53の径方向外側の面53aで構成されている。また、ロックスプリング40の外側端部41に係合するカム50の被係合部は、複数の凸部53のそれぞれにおいて凸部53の周方向(すなわちカム50の周方向と同様の円周方向)の端部である係合端部53bで構成されている。
【0094】
このようにカム50の軸部Sが複数の凸部53で構成されているので、筒状の軸に比べて軽量化が可能である。また、複数の凸部53の径方向外側の面53aが軸部Sの外周面S1を構成しているので、カム50の複数の凸部53がガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接することにより、カム50の回転が安定し、複数の3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160のロックタイミングのずれを抑えることが可能である。
【0095】
(変形例)
(A)
本発明の変形例として、上下方向に対向する2枚のメインロックギヤ60A、60Cは、より強固な噛合に加え、がたつきの低減を実現するために、上記の径方向内側に突出する突起65に対応する部品として、後述のくさび部66を本体部67と別体として有していてもよい。
【0096】
すなわち、本発明の変形例では、図13~16に示されるように、上下方向に並んで互いに対向する2枚のメインロックギヤ60A、60Cは、外歯63および係合突起64を有する本体部67と、当該本体部67とは分離するくさび部66とを有する。くさび部66は、メインロックギヤ60A、60Cの噛合位置においてカム50(具体的には、係合突起52の外周面である円弧状のメイン押圧面52a)に接触する円弧状のメイン接触面66aを有する。
【0097】
この変形例におけるメインロックギヤ60A、60Cのくさび部66が有する円弧状のメイン接触面66aは、上記実施形態のメインロックギヤ60A、60Cの円弧状のメイン接触面65a(図3図7~8、図11図12参照)と同一形状を有する。
【0098】
本体部67は、径方向から傾斜する方向に延びるとともにくさび部66に当接する当接面67aを有する。くさび部66は、略三角形にとがったくさび形の形状を有し、当接面67aとガイド壁部25との間に挟まれた状態で配置されている。
【0099】
その他の構成は、上記実施形態の図1~11、図12に示される構成と同様である。
【0100】
この変形例のリクライニング機構6では、上記実施形態と同様に、ガイドブラケット20は、3枚のメインロックギヤ60A~60Cおよび1枚のサブロックギヤ160を径方向に案内するガイド壁部25(図7~9、図14~15参照)を有する。図13~16に示されるように、互いに対向する2枚のメインロックギヤ60A、60Cは、外歯63を有する本体部67と、当該本体部67とは分離するとともにカム50のメイン押圧面52aに接触するメイン接触面66aを有するくさび部66とを有する。本体部67は、径方向から傾斜する方向に延びるとともにくさび部66に当接する当接面67aを有する。くさび部66は、当接面67aとガイド壁部25との間に挟まれた状態で配置されている。
【0101】
この変形例の構成では、互いに対向する2枚のメインロックギヤ60A、60Cでは、ロック時においてカム50がロック方向Rへ回転し、カム50のメイン押圧面52aからの押圧力をくさび部66におけるメイン押圧面52aと接触するメイン接触面66aで受けることにより、くさび部66は、ガイドブラケット20の径方向から傾斜した本体部67の当接面67aとガイドブラケット20のガイド壁部25との間に挟まれた状態で本体部67をガイドブラケット20の径方向外側のインターナルギヤ30へ向けて確実に押し込むことが可能である。したがって、カム50からメインロックギヤ60A~60Cに大きな押圧力をかけても、当該メインロックギヤ60A、60Cの本体部67の外歯63を確実にインターナルギヤ30の内歯32に確実に噛合させることが可能になる。また、くさび部66が径方向外側に押し込まれることで、本体部67が当接面67aを介してくさび部66とは反対側のガイドブラケット20のガイド壁部25に押し付けられるため、メインロックギヤ60A、60Cにおけるガタツキを抑制し、ロック状態の安定性を向上することが可能である。
【0102】
(B)
上記実施形態では、2個のロックスプリング40がガイドブラケット20の周方向に均等に配置されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも1つのロックスプリングを備えていればよい。したがって、上記のリクライニング機構6は、1個のロックスプリングを備えた構成でも、3個以上のロックスプリングを備えた構成でもよい。また、ロックスプリングとしては、上記実施形態のように渦巻ばねを採用するだけでなく、種々の形状のばね(板ばね、コイルスプリング、ゴムばね、空気ばねなど)を採用してもよい。
【0103】
(C)
上記実施形態では、ガイドブラケット20がシートクッション2のフレーム2aに固定され、インターナルギヤ30がシートバック3のフレーム3aに固定されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガイドブラケット20およびインターナルギヤ30を入れ替えた配置であってもよい。すなわち、インターナルギヤ30がシートクッション2のフレーム2aに固定され、ガイドブラケット20がシートバック3のフレーム3aに固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 シート
2 シートクッション
2a フレーム
3 シートバック
3a フレーム
4 スライド機構
5 リクライニング装置
6 リクライニング機構
7 コネクトロッド
20 ガイドブラケット
30 インターナルギヤ
32 内歯
40 ロックスプリング
50 カム
51 本体部
52 係合突起
52a メイン押圧面
52b サブ押圧面
60A~60C メインロックギヤ(ロックギヤ)
63 外歯
65 突起
65a メイン接触面
66 くさび部
66a メイン接触面
70 取付リング
154 突起
160 サブロックギヤ(ロックギヤ)
165a サブ接触面
P1~P4、P11~P14 接触点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16