(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015504
(43)【公開日】2024-02-02
(54)【発明の名称】皮膚パック用組成物、及び、その使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20240126BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240126BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/36
A61Q19/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205912
(22)【出願日】2023-12-06
(62)【分割の表示】P 2022162611の分割
【原出願日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2021177110
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505002716
【氏名又は名称】株式会社長寿乃里
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊博
(57)【要約】
【課題】従来よりも利便性の高い皮膚パック用組成物を提供する。
【解決手段】脂肪酸及び多孔質物質を含有し、前記脂肪酸はミリスチン酸及びステアリン酸を含有し、前記多孔質物質はベントナイトを含有し、さらに、水酸化カリウムを含有し、前記水酸化カリウムの前記脂肪酸との中和価を100質量%とした場合、前記水酸化カリウムは85質量%以上95質量%以下であることで、従来に比べ利便性の高い皮膚パック用組成物を提供することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリとの反応後に脂肪酸成分が残留し、
使用時に泡立を生ずる
ことを特徴とする皮膚パック用組成物。
【請求項2】
防腐剤及び添加剤を含有しない
ことを特徴とする請求項1記載の皮膚パック用組成物。
【請求項3】
多孔質物質を含有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の皮膚パック用組成物。
【請求項4】
前記多孔質物質として、ベントナイトを含有する
ことを特徴とする請求項3に記載の皮膚パック用組成物。
【請求項5】
前記多孔質物質として、火山灰を含有する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の皮膚パック用組成物。
【請求項6】
HLB0の脂肪酸、トリグリセライド、及び多孔質物質を含有し、
前記脂肪酸は、ミリスチン酸及びステアリン酸、油脂を含有し、
前記多孔質物質は、ベントナイト、カチオンを有する多孔質物質を含有する
ことを特徴とする皮膚パック用組成物。
【請求項7】
前記ベントナイトは粒径が70μm以下である
ことを特徴とする請求項6に記載の皮膚パック用組成物。
【請求項8】
前記脂肪酸及び前記トリグリセライドの中和剤として、水酸化カリウムを含有する
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の皮膚パック用組成物。
【請求項9】
前記水酸化カリウムの前記脂肪酸との中和価を100質量%とした場合、前記水酸化カリウムは85質量%以上98質量%以下である
ことを特徴とする請求項8に記載の皮膚パック用組成物。
【請求項10】
請求項1~9のうちいずれか1項に記載の皮膚パック用組成物を部位に塗り、
前記部位に塗られた前記皮膚パック用組成物に水を加え泡立てる
ことを特徴とする使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚パック用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の石鹸は、泡立ててから顔等に使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、洗顔を泡立ててから使用するということは、換言すれば使用前に石鹸に水を含ませるということであって、これは石鹸の成分を薄めて使用している状態であるため、洗浄力がやや落ちていることになり本来持ちうる洗浄効果が、十分に発揮できないという問題がある。
【0005】
上述の課題に鑑み、本発明では利便性が高い皮膚パック用組成物及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点における皮膚パック用組成物によれば、 アルカリとの反応後に脂肪酸成分が残留し、 使用時に泡立を生ずることを特徴とする。
【0007】
好ましくは、防腐剤及び添加剤を含有しないことを特徴とする。好ましくは、多孔質物質を含有することを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記多孔質物質として、ベントナイトを含有することを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記多孔質物質として、火山灰を含有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の観点における皮膚パック用組成物によれば、HLB0の脂肪酸、トリグリセライド、及び多孔質物質を含有し、前記脂肪酸は、ミリスチン酸及びステアリン酸、油脂を含有し、前記多孔質物質は、ベントナイト、カチオンを有する多孔質物質を含有することを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記ベントナイトは粒径が70μm以下であることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記脂肪酸及び前記トリグリセライドの中和剤として、水酸化カリウムを含有することを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記水酸化カリウムの前記脂肪酸との中和価を100質量%とした場合、前記水酸化カリウムは85質量%以上98質量%以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の観点における皮膚パック用組成物によれば、前記皮膚パック用組成物を部位に塗り、前記部位に塗られた前記皮膚パック用組成物に水を加え泡立てることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る皮膚パック用組成物及びその使用方法によれば、利便性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例に係る皮膚パック用組成物に含まれる成分の一覧表である。
【
図2】本発明の実施例に係る皮膚パック用組成物の成分に関する実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明に係る皮膚パック用組成物及びその使用方法について、実施例により図面を用いて説明する。
【実施例0018】
本実施例に係る皮膚パック用組成物は、
図1の表中に示すように、精製水、濃グリセリン、ソルビット液、水酸化カリウム、酸化チタン、無水ケイ酸、1,3-ブチレングリコール、ベントナイト、ヒアルロン酸ナトリウム(2)、ケイ酸・ケイ酸アルミニウム焼成物、ラウロイルメチルーβーアラニンナトリウム液、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、馬油、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、グリチルリチン酸ジカリウム、水溶性プラセンタエキス、水溶性コラーゲン液(3)、ヨクイニンエキス、トウキエキス(1)、チンピエキス、シャクヤクエキス、及び、ユキノシタエキスを備えている。
【0019】
なお、本実施例に係る皮膚パック用組成物は、防腐剤及び添加剤を含有しない。
【0020】
本実施例に係る皮膚パック用組成物は、
図1の表中に示す、水酸化カリウムと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸を含む脂肪酸成分とを化学反応させることで生成される。さらに本実施例に係る皮膚パック用組成物は、無水ケイ酸、ベントナイト、及び、ケイ酸・ケイ酸アルミニウム焼成物を含有する多孔質物質(粘土成分)を入れて、カチオンを含ませている。なお、多孔質物質は火山灰を含有するようにしてもよい。
火山灰は、シラスであるとより白くなり見た目もよくなりパックとしてより適切となる。またシラスの場合、多孔質物質の火山灰の大きさが一定の範囲でそろうことにより、各種の効果をコントロールしやすくなる。
さらに、火山灰は、シラスバルーンであると、より適切である。シラスバルーンによる汚れ除去機能が働くからである。
【0021】
また、本実施例に係る皮膚パック用組成物は、水酸化カリウムの脂肪酸との中和価を100質量%とした場合、好ましくは、水酸化カリウム(アルカリ)を92質量%とし、過脂肪酸の状態(アルカリとの反応後に脂肪酸成分が反応せずに残留している状態)とする。これにより肌に対し低刺激で優しくなる。また、油成分を取りすぎるということがなくなる。
【0022】
また、肌の中でも特に顔の汚れは主として、たんぱく質が、油成分で表面に定着していることが多く、これは脂肪酸成分に溶ける。つまり、本実施例では、水で薄められる前に顔の汚れの油成分が過脂肪酸部分に溶けることになる。さらに、上記油成分は、水洗いで本実施例に係る皮膚パック用組成物を落とした後も肌に残り、肌から脂分が落ちすぎることによる乾燥を防ぐことができる(しっとり効果を奏する)。
【0023】
なお、上述では、水酸化カリウムの脂肪酸との中和価を100質量%とした場合、好ましくは水酸化カリウム(アルカリ)を92質量%として説明したが、水酸化カリウムを85質量%以上98質量%以下としてもよい。
【0024】
なぜなら、水酸化カリウムが95質量%を超えると、過脂肪酸が不足し、これにより肌荒れの発生頻度が上昇し、肌にある、必要な油脂まで、落としてしまうことになる。また、水酸化カリウムが85質量%未満になると、過脂肪酸が多くなりすぎ、これにより水洗いがしづらくなり、さっぱり感がなくなってしまうからである。
【0025】
なお、アルカリ成分については、上述では水酸化カリウムとしたが、それ以外にも、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン等、皮膚パック用組成物を作ることができるアルカリであれば代用することができる。もちろんこれらを代用することで、それに対応(100%反応)する(中和価となる)100質量%の脂肪酸の質量は変わる。
【0026】
また、本実施例における脂肪酸について、特に重要な成分は、ミリスチン酸及びステアリン酸、および、馬油などのトリグリセライドである。ミリスチン酸は、主にヤシ油又はパーム核油から得られる高級脂肪酸(飽和脂肪酸)であり、洗浄力や起泡性が高い。ステアリン酸は、主に植物油脂から得られる高級脂肪酸であり、泡を持続させる作用を有する。
【0027】
多孔質物質について、特に重要な成分はベントナイトである。ベントナイトとは、粘土鉱物であるモンモリロナイトを主成分とする岩石であり、モンモリロナイトは膨潤性や粘性が高い。
【0028】
また、ソルビット液は、刺激を低減するために使用される。
【0029】
本実施例では、これらの脂肪酸及び多孔質物質を混合することで、それぞれの特性がより活かされるという作用を奏する。
【0030】
なお、多孔質物質については、いずれも、目に入った時に容易に洗い流せるように粒の径を70μm以下としている。70μmよりも大きい径のものを用いると、目に入ってしまった場合に水で洗い流すのが難しくなり、問題が生じる可能性があるためである。
【0031】
カチオンはマイナスに帯電した物質を引き寄せる力があるため、皮脂やホコリ、タバコの煙や排気ガスなどの汚れを吸着させて取り除く作用がある。そこで、特に脂性肌の場合は多めにイオン導出も行うのが適切である。
【0032】
本実施例に係る皮膚パック用組成物は、洗浄剤としては、陰イオン、非イオンの成分を使用しているのでマイナス帯電する。これにより、肌に付着した汚れや皮脂を引き上げ、多孔質であるカチオンに吸着させ有効成分の浸透を助長することができる。
【0033】
本実施例に係る使用方法としては、本実施例に係る皮膚パック用組成物を、水を加えない状態でクリーム(パック)のように部位に塗り、その後、水を加えることで、使用時に泡立てを生ずるものである。水を加えて泡立てる方法は、手で水を掬うようにしても、水を含ませたブラシを用いても、あるいは、水をつけたスポンジを用いても良い。その後、従来どおり水洗いして皮膚パック用組成物を流す。
本発明においては、組成物の材質よりもこの皮膚パック用組成物を部位に塗り、前記部位に塗られた前記皮膚パック用組成物に水を加え泡立てること自体も大きな特徴(この使用方法自体が発明)であると考えている。
さらにいうと、このように使うのであれば、パックである必要もなく、この使用方法で使用すること自体も発明であると考えている(=パックでなくてもこのような使用方法が発明)。
【0034】
ただし、手や、水を付けたスポンジでは、肌との接触面積が大きく、肌への摩擦抵抗が大きくなり、負担が増加する。一方で、柔らかく、毛穴よりも直径の小さい極細のブラシ(例えば60μm)を使用することで、少ない抵抗で洗顔料を泡立てることが可能であり、毛穴よりも小さいサイズの多孔質物質と相まって、汚れを掻き出し、吸着し、落とす力は高まる。
【0035】
本実施例に係る皮膚パック用組成物は、このようにして水を含ませて泡立てる前にまずパックのようにして直接部位に塗るため、水によって薄まりづらい。よって、従来よりも洗浄効果が向上し、利便性が向上する。
【0036】
また、本実施例に係る皮膚パック用組成物に含まれる成分は、種々の変更が可能である。例えば、粘度調整の成分として、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドに替えて、ヤシ油脂肪酸トリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミン、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(1)、ポリオキシプロピレンヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド(1P.O.)や、アルカリに強い水溶性高分子としてもよい。
【0037】
また、刺激を緩和する成分として、ソルビット液に替えて、ジグリセリン、グリセリルグリセリド等としてもよい。
【0038】
なお、本実施例に係る皮膚パック用組成物の製造方法は、
<1:アルカリ作成工程>
加温しながらアルカリ溶液(水、活性剤、アルカリ剤、グリセリン、グリチルリチン酸ジカリウム等)を作成する。
<2:粉体投入・分散・撹拌工程>
ベントナイト、ケイ酸・ケイ酸アルミニウム焼成物等の粉体を投入し分散させ、攪拌し
<3:脂肪酸添加工程>
前記撹拌をしながら、加温し溶解した脂肪酸を添加し、鹸化させる。
<4:温度低下・美容成分添加工程>
鹸化後は温度を下げて、40℃以下程度になったら、その他の美容成分等を添加し、十分に混合攪拌を行い完成となる。
なお、脂肪酸にベントナイト等を投入して、その後、アルカリを投入するなど、製造方法は他の方法も当然にあり得る。
【0039】
図2のように、火山灰(シラス、シラスバルーン)は、13%以下が適切である。この13%以下では、塗布時の伸びや滑り性は、ほぼ均一に抵抗が少なく滑らかに伸ばすことができた。
この13%以下では均一に塗布が可能なことから、肌を隙間なく覆い密着し、美容成分の浸透及び汚れの吸着が可能となる。
ブラシによる泡立てや洗い流しも火山灰量が17%以下までは泡立てやすいが、それ以上では泡立ちにくく、洗い残しができやすい。きれいに洗い流すには過剰なブラッシングが必要となる。
なお、火山灰の増減は水分で調整し、合計100%(重量パーセント)とした。
図1の例では、この火山灰分は、ケイ酸・ケイ酸アルミニュウム焼成物は7.0000+3.0000で10.0000%である。
【0040】
<カチオンの変形例>
カチオンとしては、ベントナイトのほか、
図1に1.5%として記載した、ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液もカチオン高分子として利用している。
なお、このポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液(以下、(1)と表記する場合がある)は、化粧品表示名称としては、ポリクオタニウム-6として表記する場合もある。
さらに、このカチオン高分子は、例えば
塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム(化粧品表示名称:グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)(以下、(2)と表記する場合もある)、
塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(化粧品表示名称:ポリクオタニウムー10)(以下、(3)と表記する場合もある)
なども利用できる。
つまり、このポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液に変えて、上記2つのカチオン高分子を単独で利用することも可能である。さらに、このポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液に加える形で、上記2つのカチオン高分子を加えることができる。
さらに、これらのカチオン高分子の2又は3つ以上の組み合わせを変えて、配合することも可能である。つまり、(2)と(3)の組み合わせ、(1)と(3)の組み合わせ、(1)と(2)の組み合わせ、(1)と(2)と(3)の組み合わせ、なども可能であり、もちろん、他のカチオン高分子との組み合わせも可能である。
【0041】
これらの、カチオン高分子は、パック剤を増粘し、マイナスに帯電している肌表面への吸着し、皮膜を形成し、保湿力を高める、添加成分の肌への吸着を助ける効果がある。
つまり、実施形態においても、カチオン化高分子は洗浄後に皮膜として肌に残り、潤いと添加成分の吸着を助け、美容成分の持続的な浸透を補助している。
しかし、配合過多の場合には、本来、残留しにくい洗浄成分の肌への吸着を促進し刺激の原因となるため、本パック剤の様な脂肪酸せっけんベースのパック剤においては1.5%以下が適切である。