(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155041
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】情報処理装置、データ生成方法および画像形成システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20241024BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241024BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20241024BHJP
H04N 1/405 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G06F3/12 344
B41J2/01 201
B41J2/205
H04N1/405 510
G06F3/12 308
G06F3/12 385
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069410
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健太
(72)【発明者】
【氏名】秋山 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】村井 宏亘
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
5C077
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EC07
2C056EC73
2C056EC76
2C056EC77
2C056ED05
2C057AF29
2C057AF39
2C057AM18
2C057AM28
2C057AM29
5C077NN08
5C077NN19
5C077PP01
5C077TT05
(57)【要約】
【課題】人間の感度の高い周波数領域だけでなく、着弾ずれの公差内において粒状性の悪化を抑制することができる情報処理装置、データ生成方法および画像形成システムを提供する。
【解決手段】複数のノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドを備えた画像形成装置に対する印刷データを生成する情報処理装置であって、複数のノズルを複数の画素グループに分割し、それぞれの画素グループに対応する複数のノズルから吐出されるインクのドットの周波数特性を、視覚伝達関数の感度が凸形状となる周波数領域のスペクトラム、および、画素グループ間で生じるインクの着弾ずれについての公差内に対応する周波数領域のスペクトラムを抑制する周波数特性とするハーフトーンデータを、画像形成対象となる画像データから生成する第1生成部と、ハーフトーンデータに基づいて印刷データを生成する第2生成部と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドを備えた画像形成装置に対する印刷データを生成する情報処理装置であって、
前記複数のノズルを複数の画素グループに分割し、それぞれの前記画素グループに対応する複数の前記ノズルから吐出されるインクのドットの周波数特性を、視覚伝達関数の感度が凸形状となる周波数領域のスペクトラム、および、前記画素グループ間で生じるインクの着弾ずれについての公差内に対応する周波数領域のスペクトラムを抑制する周波数特性とするハーフトーンデータを、画像形成対象となる画像データから生成する第1生成部と、
前記ハーフトーンデータに基づいて前記印刷データを生成する第2生成部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記第1生成部は、前記画像データからディザマトリクスを用いて前記ハーフトーンデータを生成し、
前記ディザマトリクスからそれぞれの前記画素グループに対応して分割されたそれぞれの分割マトリクスは、配置された閾値に対応するインクのドットが前記周波数特性を有する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ディザマトリクスは、前記複数の画素グループそれぞれに含まれるノズル群間でインクの吐出回数が均等となる前記閾値が配置された請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ディザマトリクスは、前記画素グループに含まれる複数のノズル群間でインクの吐出回数が均等となるように前記閾値が配置された請求項2または3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記インクジェットヘッドは、第1シングルヘッドと、第2シングルヘッドとを含み、
前記複数の画素グループとして、前記第1シングルヘッドのノズル群に対応する第1画素グループと、前記第2シングルヘッドのノズル群に対応する第2画素グループとが含まれる請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記インクジェットヘッドは、第1シングルヘッドと、第2シングルヘッドとを含み、
前記複数の画素グループとして、前記第1シングルヘッドおよび前記第2シングルヘッドそれぞれに含まれる複数のノズル列ごとに対応する画素グループが含まれる請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記複数の画素グループは、複数の方式により分割された前記画素グループが含まれる請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第1生成部は、前記インクジェットヘッドの前記複数のノズル全体から吐出されるインクのドットの周波数特性を、ブルーノイズ特性またはグリーンノイズ特性とする前記ハーフトーンデータを生成する請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項9】
複数のノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドを備えた画像形成装置に対する印刷データの生成に用いるディザマトリクスのデータ生成方法であって、
前記ディザマトリクスを、前記複数のノズルを分割した複数の画素グループそれぞれに対応する分割マトリクスに分割するステップと、
それぞれの前記分割マトリクスに設定された閾値の配置の周波数特性を、視覚伝達関数の感度が凸形状となる周波数領域のスペクトラム、および、前記画素グループ間で生じるインクの着弾ずれについての公差内に対応する周波数領域のスペクトラムを抑制する周波数特性とする前記ディザマトリクスを生成する生成ステップと、
を有するデータ生成方法。
【請求項10】
複数のノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドを備えた画像形成装置と、前記画像形成装置対する印刷データを生成する情報処理装置と、を含む画像形成システムであって、
前記情報処理装置は、
前記複数のノズルを複数の画素グループに分割し、それぞれの前記画素グループに対応する複数の前記ノズルから吐出されるインクのドットの周波数特性を、視覚伝達関数の感度が凸形状となる周波数領域のスペクトラム、および、前記画素グループ間で生じるインクの着弾ずれについての公差内に対応する周波数領域のスペクトラムを抑制する周波数特性とするハーフトーンデータを、画像形成対象となる画像データから生成する第1生成部と、
前記ハーフトーンデータに基づいて前記印刷データを生成する第2生成部と、
前記第2生成部により生成された前記印刷データを、前記画像形成装置へ送信する送信部と、
を備え、
前記画像形成装置は、前記送信部から送信された前記印刷データを受信し、該印刷データに基づいて画像形成を行う画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、データ生成方法および画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタが広く普及しており、インク媒体上にドットを形成して中間色を表現するハーフトーン処理と称する技術が知られている。このようなインクジェットプリンタでは、印刷速度の向上および印刷媒体の長尺化に対応するため、インクを吐出するインクジェットヘッドのノズルの増加等が行われている。しかし、インクを吐出するノズルの増加に伴い、印刷媒体の副走査方向の送り量の誤差、およびノズルのばらつきに起因して、インクの理想的な着弾位置からずれた位置に着弾することにより、画像形成された画像の粒状性が悪化して画質の劣化を招くという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するために、複数のノズルで構成されるノズルグループから吐出されるインクのドットがより形成される複数の画素グループの周波数特性が、VTF(Visual Transfer Function:視覚伝達関数)と称する空間周波数に対する人間の視覚の感度特性において、人間の感度が高い周波数領域で粒状性を抑制する特性となるようにする技術が開示されている(例えば特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、インクの理想的な着弾位置からのずれ(着弾ずれ)についての公差内において粒状性の悪化を抑制することには着目されていないという課題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、人間の感度の高い周波数領域だけでなく、着弾ずれの公差内において粒状性の悪化を抑制することができる情報処理装置、データ生成方法および画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数のノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドを備えた画像形成装置に対する印刷データを生成する情報処理装置であって、前記複数のノズルを複数の画素グループに分割し、それぞれの前記画素グループに対応する複数の前記ノズルから吐出されるインクのドットの周波数特性を、視覚伝達関数の感度が凸形状となる周波数領域のスペクトラム、および、前記画素グループ間で生じるインクの着弾ずれについての公差内に対応する周波数領域のスペクトラムを抑制する周波数特性とするハーフトーンデータを、画像形成対象となる画像データから生成する第1生成部と、前記ハーフトーンデータに基づいて前記印刷データを生成する第2生成部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、人間の感度の高い周波数領域だけでなく、着弾ずれの公差内において粒状性の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る画像形成システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る画像形成装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る画像形成装置のインクジェットヘッドの概略構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、インクジェットヘッドから吐出されるインクの着弾ずれを説明する図である。
【
図5】
図5は、従来技術において着弾ずれが発生した際の周波数特性の変動の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、従来技術、先行技術および本発明における粒状度の抑制効果の対比イメージを表す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る画像形成装置の画素グループの周波数特性の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る情報処理装置の機能ブロックの構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、画像データ、ディザマトリクスおよびドットパターンの関係を説明する図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る情報処理装置におけるディザマトリクス生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施形態に係る情報処理装置におけるディザマトリクス生成処理において閾値=0を探索する処理を説明する図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る情報処理装置におけるディザマトリクス生成処理において閾値=1を探索する処理を説明する図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る情報処理装置におけるディザマトリクス生成処理において閾値=16を探索する処理を説明する図である。
【
図16】
図16は、変形例1に係る情報処理装置においてシングルヘッド分割およびノズル列分割の場合におけるディザマトリクス生成処理において閾値=0を探索する処理を説明する図である。
【
図17】
図17は、変形例2に係る情報処理装置においてタンデム方式の場合におけるディザマトリクス生成処理において閾値=0を探索する処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照しながら、本発明に係る情報処理装置、データ生成方法および画像形成システムの実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0010】
(画像形成システムの全体構成)
図1は、実施形態に係る画像形成システムの全体構成の一例を示す図である。
図1を参照しながら、本実施形態に係る画像形成システム1の全体構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成システム1は、画像形成装置10と、情報処理装置20と、を含む。
図1に示すように、各装置は、ネットワークNを介して、互いにデータ通信が可能となっている。ネットワークNは、例えば、LAN(Local Area Network)またはインターネット等を含むネットワークであり、有線ネットワーク、無線ネットワークまたはこれら混在するネットワークである。
【0012】
画像形成装置10は、情報処理装置20により生成された印刷データに基づいて、インクジェット方式により印刷媒体に対して画像形成(印刷)を行うインクジェットプリンタとである。画像形成装置10は、例えばインクジェット方式の商用印刷機である。なお、
図1では、画像形成装置10が一台のみ記載されているが、これに限定されるものではなく、複数の画像形成装置10が画像形成システム1に含まれるものとしてもよい。
【0013】
情報処理装置20は、画像データから後述するハーフトーン処理を行うことによりドットパターンを示す印刷データを生成し、当該印刷データを画像形成装置10へ送信するPC(Personal Computer)、スマートフォンまたはタブレット端末等である。なお、情報処理装置20は、印刷対象となる画像データから所定の画像処理を行い画像形成装置10へ入力する印刷データを生成するDFE(Degital Front End)であってもよい。
【0014】
(画像形成装置の全体構成)
図2は、実施形態に係る画像形成装置の全体構成の一例を示す図である。
図3は、実施形態に係る画像形成装置のインクジェットヘッドの概略構成の一例を示す図である。
図2および
図3を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成について説明する。
【0015】
図2に示す画像形成装置10は、給紙されたシート状の印刷媒体に対して、ラインヘッドによるインクジェット方式により当該印刷媒体に画像形成を行った後、当該印刷媒体を排紙する印刷装置の一例である。画像形成装置10は、
図2に示すように、搬入部30と、印刷部40と、搬出部90と、を備えている。
【0016】
搬入部30は、シート状の印刷媒体Pを搬入するユニットである。搬入部30は、
図2に示すように、複数の印刷媒体Pを収容する下段搬入トレイ31aおよび上段搬入トレイ31bと、下段搬入トレイ31aから印刷媒体Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置32aと、上段搬入トレイ31bから印刷媒体Pを1枚ずつ分離して送り出す給紙装置32bと、を含む。搬入部30は、給送装置32a、32bにより送り出された印刷媒体Pを、印刷部40へ供給する。なお、搬入部30と印刷部40との間に印刷媒体Pに前処理液等の塗布液を塗布する前処理部等を配置することもできる。
【0017】
印刷部40は、搬入部30から供給された印刷媒体Pに対してラインヘッドによるインクジェット方式によりインクを吐出して画像形成するユニットである。印刷部40は、
図2に示すように、作像部50と、定着部60と、両面機構部70と、制御部41と、表示部42と、を有する。
【0018】
作像部50は、搬入部30から供給され、搬送ローラ対502により搬入経路501上を搬送されてきた印刷媒体Pに対して、液体吐出ユニット52により印刷媒体Pにインクを吐出させて画像形成する機構である。作像部50は、ドラム51と、液体吐出ユニット52と、入口回転体54と、出口回転体55と、を有する。
【0019】
ドラム51は、入口回転体54から送られてきた印刷媒体の先端をグリッパにより把持して、回転動作により印刷媒体Pを搬送する回転体部材である。また、ドラム51は、表面に複数の吸引孔が分散して形成され、吸引手段により当該吸引孔から内側へ吸い込み気流を発生させることにより、印刷媒体Pを周面に吸着担持させる。
【0020】
液体吐出ユニット52は、ドラム51の回転により搬送されてきた印刷媒体Pに対してインクを吐出して画像形成するユニットである。液体吐出ユニット52は、シアン(C)のインクを吐出する液体吐出ユニット52Cと、マゼンタ(M)のインクを吐出する液体吐出ユニット52Mと、イエロー(Y)のインクを吐出する液体吐出ユニット52Yと、ブラック(K)のインクを吐出する液体吐出ユニット52Kと、を含む。なお、液体吐出ユニット52は、CMYKに限定されるものではなく、白色、金色、銀色、蛍光色、クリア(透明)等の特殊なインクの吐出を吐出する液体吐出ユニットを含んでいてもよい。
【0021】
液体吐出ユニット52は、印刷データに応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラム51に担持された印刷媒体Pが、液体吐出ユニット52と対向するドラム51の周面領域を通過するときに、液体吐出ユニット52から各色のインクが吐出され、当該印刷データに応じた画像が形成(印刷)される。画像が形成された印刷媒体Pは、ドラム51から出口回転体55に受け渡される。
【0022】
なお、液体吐出ユニット52C、52M、52Y、52Kはドラム51の周方向に沿って配置されたドラム形式としているが、これに限定されるものではなく、直線上を搬送される印刷媒体Pの搬送方向に沿って液体吐出ユニット52C、52M、52Y、52Kが配置されている構成でであってもよい。
【0023】
液体吐出ユニット52C、52M、52Y、52Kは、
図3に示すように、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッド520を備えている。本実施形態のインクジェットヘッド520は、ラインヘッド方式のインクジェットヘッドであり、
図3に示すように、シングルヘッド521(第1シングルヘッドの一例)と、シングルヘッド522(第2シングルヘッドの一例)とが結合されて構成されている。すなわち、各色のインクジェットヘッド520は、複数のシングルヘッドで構成されている。
【0024】
シングルヘッド521は、
図3に示すように、複数のノズルNzでそれぞれ構成されたノズル列521-L1と、ノズル列521-L2と、ノズル列521-L3と、ノズル列521-L4と、を有する。シングルヘッド522は、
図3に示すように、複数のノズルNzでそれぞれ構成されたノズル列522-L1と、ノズル列522-L2と、ノズル列522-L3と、ノズル列522-L4と、を有する。シングルヘッド521、522の各ノズル列は、
図3に示すように、互いに平行に配設されている。このような搬送方向において物理的に異なる位置に配置されている8つのノズル列は、印刷媒体Pの搬送方向への移動に応じて、
図3に示すように、印刷媒体Pの主走査方向の同一ライン上にインクを吐出する。ノズル列521-L1からインクが吐出してドット521-D1が形成され、ノズル列521-L2からインクが吐出してドット521-D2が形成され、ノズル列521-L3からインクが吐出してドット521-D3が形成され、ノズル列521-L4からインクが吐出してドット521-D4が形成される。また、ノズル列522-L1からインクが吐出してドット522-D1が形成され、ノズル列522-L2からインクが吐出してドット522-D2が形成され、ノズル列522-L3からインクが吐出してドット522-D3が形成され、ノズル列522-L4からインクが吐出してドット522-D4が形成される。その結果、副走査方向である搬送方向と直交する主走査方向の同一ライン上に形成されるインクのドットは、
図3の紙面視左側からドット521-D1、ドット522-D2、ドット521-D2、ドット522-D2、ドット521-D3、ドット522-D3、ドット521-D4、ドット522-D4の順の繰り返しで形成される。すなわち、印刷媒体Pの搬送方向に形成されるドット列のうち奇数列は、シングルヘッド521から吐出されたインクのドットにより形成され、偶数列は、シングルヘッド522から吐出されたインクのドットにより形成される。このように主走査方向の同一ライン上に形成されるインクのドット、および搬送方向に形成されるインクのドットの解像度は、例えば1200×1200[dpi]である。
【0025】
インクジェットヘッド520における8つのノズル列の位置関係から、印刷媒体Pが搬送方向に最初に通過するシングルヘッド521のノズル列521-L4の吐出タイミングが最も早く、シングルヘッド522のノズル列522-L1の吐出タイミングが最も遅い。8つのノズル列間の位置調整は、印刷媒体Pに印刷した調整用パターンを用いることにより、例えばノズル列521-L1の各ノズルNzに対して、他のノズル列の各ノズルが±0.5画素以内のずれに収まるように位置が調整される。
【0026】
しかしながら、8つのノズル列間の位置調整が完了し、着弾ずれがほぼ生じない状態であっても、長時間の画像形成装置10の使用により、各ノズル列間でインクの着弾位置にずれが発生する場合がある。特に、シングルヘッド521とシングルヘッド522とは物理的に別体となっているため、シングルヘッド521が形成するドット列(奇数列)と、シングルヘッド522が形成するドット列(偶数列)との着弾ずれが発生しやすい。このような着弾ずれが発生した場合に形成された画像においては、粒状性が悪化し画質が劣化しやすい。本実施形態においては、このような着弾ずれが発生した場合においても粒状性の悪化を抑制する処理を実現する。
【0027】
入口回転体54は、上流側から送り込まれた印刷媒体Pを受け取ってドラム51との間で印刷媒体Pを受け渡す回転体である。入口回転体54は、搬送ローラ対502により搬入経路501上を搬送されてきた印刷媒体Pをグリッパにより把持して、回転動作により印刷媒体Pをドラム51へ搬送する。グリッパにより先端が把持された印刷媒体Pは、入口回転体54の回転に伴って搬送され、入口回転体54とドラム51との対向位置において、ドラム51へと受け渡される。
【0028】
出口回転体55は、ドラム51の回転により搬送されてきた印刷媒体Pを受け取って、定着部60へ受け渡す回転体である。出口回転体55は、ドラム51の回転により搬送されてきた印刷媒体Pをグリッパにより把持して、回転動作により印刷媒体Pを定着部60の搬送ベルト61へ搬送する。なお、出口回転体55は、入口回転体54とギヤを介して連結されており、連動して回転するものとしてもよい。
【0029】
定着部60は、作像部50で画像形成された印刷媒体P上のインクを乾燥させて定着させる機構である。これによって、印刷媒体P上のインク内の水分等の液分が蒸発し、印刷媒体P上にインク中に含まれる着色剤が定着し、さらに印刷媒体Pのカールが抑制される。定着部60は、
図2に示すように、搬送ベルト61と、加熱部62と、シート検知センサ63と、吸引部64と、を有する。
【0030】
搬送ベルト61は、出口回転体55から受け渡された印刷媒体Pを搬送する、駆動ローラ601と従動ローラ602との間に架け渡された無端状ベルトである。搬送ベルト61は、印刷媒体Pの搬送動作を行っているとき、所定の搬送速度で加熱部62を通過するように、印刷媒体Pを下流へ搬送する。搬送ベルト61により搬送される印刷媒体Pの搬送速度は、駆動ローラ601の回転速度により設定される。駆動ローラ601の回転速度は、制御部41によって制御される。出口回転体55から印刷媒体Pの先端が離れて搬送ベルト61に渡されるとき、搬送ベルト61が所定の搬送速度で動作するように駆動ローラ601の回転速度が調整される。また、搬送ベルト61の表面には、複数の吸引孔が分散して形成され、吸引部64による吸い込み気流によって、印刷媒体Pは搬送ベルト61に吸着担持される。
【0031】
加熱部62は、搬送ベルト61で搬送される印刷媒体Pを加熱する装置である。加熱部62は、印刷媒体Pに対する加熱により、印刷媒体P上のインクを乾燥させて定着させる。
【0032】
シート検知センサ63は、出口回転体55から搬送ベルト61へ受け渡され、定着部60内に搬送されてきた印刷媒体Pを検知するセンサである。
【0033】
吸引部64は、吸引動作によって搬送ベルト61の表面に形成された複数の吸引孔への吸い込み気流を発生させ、印刷媒体Pを搬送ベルト61に吸着させる装置である。
【0034】
定着部60を通過した印刷媒体Pは、搬出経路801を搬送ローラ対802の回転によって搬送され、両面機構部70または搬出部90へ送られる。
【0035】
両面機構部70は、印刷媒体Pの両面に印刷を行う場合に、定着部60を通過した印刷媒体Pを反転させて、作像部50の上流側、すなわち搬入経路501へ再度給送する機構である。両面機構部70は、
図2を示すように、反転経路71と、両面経路72と、を有する。
【0036】
反転経路71は、搬送ローラ対702の回転により、定着部60を通過した印刷媒体Pを受け入れて表裏反転する経路である。
【0037】
両面経路72は、反転経路71で反転された印刷媒体Pを、搬送ローラ対701の回転により作像部50の上流側まで搬送し、搬入経路501へ再度給送する経路である。
【0038】
制御部41は、画像形成装置10全体の動作を制御するコントローラである。制御部41は、例えば、作像部50での画像形成動作、および、定着部60での乾燥動作、および各種搬送経路の搬送動作等を制御する。なお、搬入部30または搬出部90は、制御部41とは異なる別の制御部によって制御されるものとしてもよい。
【0039】
表示部42は、画像形成装置10の動作状態、印刷設定情報、およびジョブ状態等の各種情報を表示する表示装置である。なお、表示部42は、表示機能だけでなく、例えばタッチ入力機能を実現するタッチパネルを備えていてもよい。
【0040】
搬出部90は、印刷部40から搬出された印刷媒体Pを蓄積するためのユニットである。搬出部90は、複数の印刷媒体Pが積載される搬出トレイ91を備えている。印刷部40から搬送されてくる印刷媒体Pは、搬出トレイ91上に順次積み重ねられて保持される。
【0041】
(インクの着弾ずれについて)
図4は、インクジェットヘッドから吐出されるインクの着弾ずれを説明する図である。
図5は、従来技術において着弾ずれが発生した際の周波数特性の変動の一例を示す図である。
図4および
図5を参照しながら、インクの着弾ずれ、およびそれに伴うドットの周波数特性の変動について説明する。
【0042】
図4(a)には、シングルヘッド521が形成するドット列(奇数列)、およびシングルヘッド522が形成するドット列(偶数列)の着弾ずれがない理想的な着弾位置を示している。しかしながら、上述したように、シングルヘッド521とシングルヘッド522とは物理的に別体となっているため、シングルヘッド521が形成するドット列(奇数列)と、シングルヘッド522が形成するドット列(偶数列)との着弾ずれが発生しやすい。
図4(b)には、搬送方向に1画素程度の着弾ずれが発生した状態を示している。すなわち、シングルヘッド521に対して、シングルヘッド522の位置が搬送方向に1画素分ずれると、
図4(b)に示すように、シングルヘッド522のノズル列(偶数列)の全体が、シングルヘッド521のノズル列(奇数列)に対して1画素分ずれることになる。なお、このような着弾ずれについてずれ量として許容される上限値を公差と称するものとする。
【0043】
図5に示す周波数特性1000は、例えばシングルヘッド521、522のような2つのシングルヘッドで構成されたインクジェットヘッドにおいて、着弾ずれがない理想的な着弾位置で形成されたインクのドットの従来の周波数特性である。この場合、横軸を空間周波数[サイクル/mm]を示し、縦軸は周波数成分の強度(スペクトラム、周波数スペクトル)を示している。また、
図5に示すグラフVTFは、周波数(空間周波数)に応じて人間の粒状感の感じやすさを示す視覚伝達関数である。この場合、横軸を空間周波数[サイクル/mm]を示し、縦軸は粒状間の感じやすさを示す数値を正規化したものであり、視覚伝達関数(VTF)は、以下の式(1)で示される。
【0044】
VTF(f)=5.05・exp(-0.138・π・D・f/180)
・{1-exp(-0.1・π・D・f/180)}・・・(1)
【0045】
上記の式(1)において、Dは印刷媒体に対する想定視認距離(例えば350[mm]等)であり、fは空間周波数である。
図5のグラフVTFが示すように、空間周波数が1[サイクル/mm]近傍の周波数領域が、人間が粒状感を感じやすい領域であることが把握される。また、従来の周波数特性1000は、人間が粒状感を感じやすい周波数領域においてスペクトラムが抑えられるように設計されている。
【0046】
図5(a)に示す周波数特性1001は、2つのシングルヘッドが4画素分(上述のようにドットの解像度が1200[dpi]である場合、約84[μm])の着弾ずれが生じた結果として、周波数特性1000から変動した周波数特性を示す。この場合、
図5(a)に示すように、約6[サイクル/mm]、すなわち周期としては上記の着弾ずれの倍の約168[μm/サイクル]近傍のスペクトラムが増大し、周波数特性が大きく劣化していることが把握される。
図5(a)に示すグラフ1011は、周波数特性1000から周波数特性1001へ変動した場合の周波数特性の劣化度合いの影響度を概念的に示すグラフである。
【0047】
図5(b)に示す周波数特性1002は、2つのシングルヘッドが8画素分(上述のようにドットの解像度が1200[dpi]である場合、約169[μm])の着弾ずれが生じた結果として、周波数特性1000から変動した周波数特性を示す。この場合、
図5(a)に示すように、約3[サイクル/mm]、すなわち周期としては上記の着弾ずれの倍の約338[μm/サイクル]近傍のスペクトラムが増大し、周波数特性が大きく劣化していることが把握される。
図5(b)に示すグラフ1012は、周波数特性1000から周波数特性1002へ変動した場合の周波数特性の劣化度合いの影響度を概念的に示すグラフである。
【0048】
このような周波数特性の劣化は、シングルヘッド単位(奇数列、偶数列)で周波数特性を観察した場合、従来技術においてはシングルヘッド単位での周波数特性がホワイトノイズ特性を示すように設計されていることが原因である。ここで、ホワイトノイズ特性とは、周波数の全域にわたって平坦な周波数スペクトルを有する周波数特性をいうものとする。これに対して、例えば上述の先行技術においては、シングルヘッド単位(奇数列、偶数列)で周波数特性がブルーノイズ特性またはグリーンノイズ特性を示すように設計することにより、人間が粒状感を感じやすい周波数領域において周波数特性の劣化を抑制するものとしている。ここで、ブルーノイズ特性とは、後述する
図7に示すように、空間周波数の低い領域で周波数スペクトルが抑えられた右上がりの形状を示す周波数特性をいうものとする。また、グリーンノイズ特性とは、ブルーノイズ特性において周波数スペクトルを抑える周波数領域よりも低い周波数領域について周波数スペクトルを抑える周波数特性をいうものとする。ただし、当該先行技術では、人間が粒状感を感じやすい周波数領域において周波数特性の劣化を抑制することが図られているものの、着弾ずれの公差内における周波数特性の劣化の抑制には着目されていない。したがって、公差内の着弾ずれによっては、周波数特性の劣化を十分に抑制できない可能性がある。本実施形態では、人間が粒状感を感じやすい周波数領域において周波数特性の劣化を抑制するだけでなく、着弾ずれの公差内における周波数特性の劣化を抑制することができるハーフトーン処理を実現するものである。
【0049】
(画像形成システムにおける粒状性悪化の抑制について)
図6は、従来技術、先行技術および本発明における粒状度の抑制効果の対比イメージを表す図である。
図7は、実施形態に係る画像形成装置の画素グループの周波数特性の一例を示す図である。
図6および
図7を参照しながら、本実施形態に係る画像形成システム1のハーフトーン処理による粒状性悪化の抑制動作の概要について説明する。
【0050】
上述のように、従来技術においては、シングルヘッド単位での周波数特性がホワイトノイズ特性を示すように設計されていることにより、
図6に示すように、各シングルヘッドが形成するインクのドットの理想的な着弾位置から着弾ずれが生じると粒状性が大きく悪化する。また、上述のように、先行技術では、シングルヘッド単位(奇数列、偶数列)で周波数特性がブルーノイズ特性またはグリーンノイズ特性を示すように設計することにより、人間が粒状感を感じやすい周波数領域において周波数特性の劣化を抑制することを実現している。これにより、
図6に示すように、理想的な着弾位置から着弾ずれが生じることによる粒状性の悪化は、従来技術と比較して大きく改善される。
【0051】
一方で、上述のように、先行技術では、人間が粒状感を感じやすい周波数領域において周波数特性の劣化を抑制することが図られているものの、着弾ずれの公差内における周波数特性の劣化の抑制には着目されていない。これに対して、本実施形態では、人間が粒状感を感じやすい周波数領域において周波数特性の劣化を抑制するだけでなく、着弾ずれの公差内における周波数特性の劣化を抑制することができるハーフトーン処理を実現する。すなわち、視覚伝達関数の感度が凸形状となる周波数領域のスペクトラムを抑制し、かつ、後述する画素グループ間で生じるインクの着弾ずれについての公差内に対応する周波数領域のスペクトラムを抑制するハーフトーン処理を実現する。これによって、
図6に示すように、理想的な着弾位置から着弾ずれが生じた場合、当該着弾ずれが少なくとも公差TL内である場合には、粒状性の悪化について先行技術よりも抑制することができる。
【0052】
ここで、
図7に、2つのシングルヘッドのうち奇数列のドットについての従来技術、先行技術および本実施形態の周波数特性を示し、横軸の空間周波数を対数軸として示している。なお、偶数列のドットについての周波数特性についても、
図7に示す形状と同様の形状を示す。上述のように、従来技術では、シングルヘッド単位での周波数特性がホワイトノイズ特性を示すように設計されているため、
図7に示すように、奇数列のドットの周波数特性がホワイトノイズ特性の形状となっている。また、上述の先行技術では、シングルヘッド単位での周波数特性がブルーノイズ特性またはグリーンノイズ特性を示すように設計されているため、
図7に示すように、奇数列のドットの周波数特性がブルーノイズ特性の形状となっている。
【0053】
一方、本実施形態については、奇数列のドットの周波数特性を、
図7に示すように、空間周波数の低い領域および高い領域で周波数スペクトルが抑えられた下に凸形状の周波数特性となるように設計する。このような形状の周波数特性をグレーノイズ特性と称するものとする。なお、偶数列のドットについての周波数特性についても、
図7に示すグレーノイズ特性の形状と同様の形状とする。具体的には、
図7に示すような下の凸形状の周波数特性(グレーノイズ特性)とすることにより、人間が粒状感を感じやすい周波数領域、すなわち1[サイクル/mm]近傍の周波数領域では、先行技術のブルーノイズ特性と同様に周波数スペクトルを低く抑えると共に、着弾ずれが公差内(例えば、上述の
図5で公差内と想定される着弾ずれとして例示した約3[サイクル/mm]、約6[サイクル/mm]等)の周波数領域においては先行技術のブルーノイズ特性よりも周波数スペクトルを低く抑えるものとしている。
【0054】
なお、従来技術、先行技術および本実施形態について、奇数列および偶数列を合わせたインクジェットヘッド全体で形成されるインクのドットの周波数特性は、一般にブルーノイズ特性またはグリーンノイズ特性を有する。これは、全体のドットとしては低周波数の領域でもスペクトルを抑えた周波数特性としないと、着弾ずれにより粒状性が悪化してしまうためである。
【0055】
(画像形成装置のハードウェア構成)
図8は、実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図8を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置10の制御部41のハードウェア構成について説明する。
【0056】
図8に示すように、画像形成装置10の制御部41は、CPU(Central Processing Unit)301と、ROM(Read Only Memory)302と、RAM(Random Access Memory)303と、外部I/F304と、ヘッド駆動制御回路311と、回転駆動回路312と、搬送駆動回路313と、加熱駆動回路314と、吸引駆動回路315と、センサI/F316と、搬送駆動回路317と、を備えており、これらはバスラインを介して互いにデータ通信可能となっている。
【0057】
CPU301は、ROM302に記憶された各種プログラムを、ワーク領域として利用するRAM303に読み込んで、各種機能を実現する演算装置である。
【0058】
外部I/F304は、有線または無線等のデータ伝送路により構築されたLAN(Local Area Network)またはインターネット等のネットワークを介して接続される外部機器である情報処理装置20と通信を行うためのインターフェースである。
【0059】
ヘッド駆動制御回路311は、CPU301の指令に従って、印刷データに基づいて、作像部50の液体吐出ユニット52のインクジェットヘッド520の吐出動作を駆動制御する駆動回路である。
【0060】
回転駆動回路312は、CPU301の指令に従って、作像部50のドラム51、入口回転体54および出口回転体55の回転動作を駆動制御する駆動回路である。なお、入口回転体54および出口回転体55は、ドラム51の回転に応じて回転するように連結されている構成であってもよく、その場合には、回転駆動回路312は、ドラム31の回転動作を駆動制御するものとすればよい。
【0061】
搬送駆動回路313は、CPU301の指令に従って、定着部60の駆動ローラ601の回転動作を駆動制御し、搬送ベルト61により印刷媒体Pを搬送する駆動回路である。
【0062】
加熱駆動回路314は、CPU301の指令に従って、定着部60の加熱部62による加熱動作を駆動制御する駆動回路である。
【0063】
吸引駆動回路315は、CPU301の指令に従って、定着部60の吸引部64に吸引動作を駆動制御する駆動回路である。
【0064】
センサI/F316は、画像形成装置10に配置されたシート検知センサ63等の各種のセンサにより検出された検出情報を受信するインターフェースである。
【0065】
搬送駆動回路317は、CPU301の指令に従って、搬送ローラ対502、搬送ローラ対802、搬送ローラ対701、および搬送ローラ対702等の各種ローラの回転動作を駆動制御する駆動回路である。
【0066】
なお、
図8に示した制御部41のハードウェア構成は一例であり、他の構成要素が含まれていてもよい。例えば、制御部41は、
図8に示すもののほか、不揮発性メモリであるNVRAM(Non-Volatile RAM)、画像処理等を実行するASIC(Application Specific Integrated Circuit)、または入出力信号処理等を行うFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を有するものとしてもよい。
【0067】
(情報処理装置のハードウェア構成)
図9は、実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図9を参照しながら、本実施形態に係る情報処理装置20のハードウェア構成について説明する。
【0068】
図9に示すように、情報処理装置20は、CPU401と、ROM402と、RAM403と、補助記憶装置405と、メディアドライブ407と、ディスプレイ408と、ネットワークI/F409と、キーボード411と、マウス412と、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ414と、を備えている。
【0069】
CPU401は、情報処理装置20全体の動作を制御する演算装置である。ROM402は、情報処理装置20用のプログラムを記憶している不揮発性記憶装置である。RAM403は、CPU401のワークエリアとして使用される揮発性記憶装置である。
【0070】
補助記憶装置405は、各種データおよびプログラム等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。メディアドライブ407は、CPU401の制御に従って、フラッシュメモリ等の記録メディア406に対するデータの読み出しおよび書き込みを制御する装置である。
【0071】
ディスプレイ408は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字または画像等の各種情報を表示する液晶または有機EL(Electro-Luminescence)等によって構成された表示装置である。
【0072】
ネットワークI/F409は、ネットワークNを介して画像形成装置10等の外部装置とデータ通信するためのインターフェースである。ネットワークI/F409は、例えば、Ethernet(登録商標)に対応し、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)等に準拠した有線通信または無線通信が可能なNIC(Network Interface Card)等である。
【0073】
キーボード411は、文字、数字、各種指示の選択、およびカーソルの移動等を行う入力装置である。マウス412は、各種指示の選択および実行、処理対象の選択、ならびにカーソルの移動等を行うための入力装置である。
【0074】
DVDドライブ414は、着脱自在な記憶媒体の一例としてのDVD-ROMまたはDVD-R(Digital Versatile Disk Recordable)等のDVD413に対するデータの読み出しおよび書き込みを制御する装置である。
【0075】
上述のCPU401、ROM402、RAM403、補助記憶装置405、メディアドライブ407、ディスプレイ408、ネットワークI/F409、キーボード411、マウス412およびDVDドライブ414は、アドレスバスおよびデータバス等のバスライン410によって互いに通信可能に接続されている。
【0076】
なお、
図9に示した情報処理装置20のハードウェア構成は一例を示すものであり、
図9に示した構成要素を全て含む必要はなく、または、その他の構成要素を含むものとしてもよい。
【0077】
(情報処理装置の機能ブロックの構成および動作)
図10は、実施形態に係る情報処理装置の機能ブロックの構成の一例を示す図である。
図11は、画像データ、ディザマトリクスおよびドットパターンの関係を説明する図である。
図10および
図11を参照しながら、本実施形態に係る情報処理装置20の機能ブロックの構成および動作について説明する。
【0078】
図10に示すように、本実施形態に係る情報処理装置20は、解像度変換部201と、色変換部202と、ハーフトーン処理部203(第1生成部の一例)と、生成部204(第2生成部の一例)と、送信部205と、マトリクス生成部206と、表示制御部211と、記憶部212と、アプリケーション221と、を有する。
【0079】
アプリケーション221は、描画ソフトウェア等の所定の機能を発揮する情報処理装置20にインストールされたアプリケーションである。アプリケーション221は、当該機能を発揮することによって画像形成(印刷)対象となる画像データを生成する。
【0080】
解像度変換部201は、アプリケーション221により生成された画像データの解像度を、印刷用の解像度に変換する機能部である。
【0081】
色変換部202は、解像度変換部201により解像度が変換された画像データのRGBの色空間を、記憶部212に記憶された色変換テーブルを用いて、印刷用の色空間であるCMYKの色空間に色変換する機能部である。
【0082】
ハーフトーン処理部203は、色変換部202により色変換された画像データの入力階調値を、ディザ法または誤差拡散法により、ドット形式で表現可能な出力階調値へ減色(階調変換)したハーフトーンデータを生成するハーフトーン処理を実行する機能部である。なお、以下ではディザ法に基づくハーフトーン処理として説明するが、誤差拡散法に対しても適用可能である。
【0083】
ディザ法の場合、まず、ハーフトーン処理部203は、記憶部212に記憶されたディザマトリクスを読み出す。ディザマトリクスは、例えば画像データの各画素値が256階調値で形成されている場合、
図11(b)に示すように、各画素値として0~255の閾値が設定されたマトリクスである。そして、ハーフトーン処理部203は、
図11(a)に示すような画像データの画素値(階調値)と、
図11(b)に示すようなディザマトリクスにおいて当該画像データの階調値に対応する画素値(閾値)とを比較する。そして、ハーフトーン処理部203は、当該比較の結果、画像データの階調値が、対応するディザマトリクスの閾値よりも大きい場合、
図11(c)に示すようなドットデータの対応する画素でドットが形成されるものとし、画像データの階調値が、対応するディザマトリクスの閾値よりも小さい場合、ドットデータの対応する画素でドットが形成されないものとして、最終的なドットデータ(ハーフトーンデータ)を生成する。
図11に示す例では、例えば2行目かつ4列目の画素に注目した場合、画像データの階調値は「90」であり、ディザマトリクスの閾値は「46」であり、当該階調値が当該閾値よりも大きいため、ドットデータの対応する画素でドットが形成されることとなる。このように、ディザ法では、画像データの階調値とディザマトリクスの閾値との比較という単純処理により、画素毎のドットの形成の有無を判断することができるため、ハーフトーン処理を迅速に実行することが可能となる。すなわち、ディザマトリクスの閾値をどのように配置するかによって、生成されるドットデータのドットの粒状性等の画質を制御できることになる。そして、本実施形態では、このようなハーフトーン処理により生成されるドットデータのドットのうち、シングルヘッド521の奇数列のノズルに対応するドットの周波数特性、およびシングルヘッド522の偶数列のノズルに対応するドットの周波数特性が、グレーノイズ特性となるようなディザマトリクスを設計する。
【0084】
なお、
図11(b)に示したディザマトリクスは5×5画素のサイズを例として示しているが、当該サイズに限定されるものではない。また、上述の画像データ、ディザマトリクス、ドットデータ、およびドットデータに基づく印刷データにより画像形成された印刷画像のように画素の概念があるものについて、例えば上述のようにシングルヘッドごとに対応する画素のグループに分けられる場合における当該グループを「画素グループ」と称する場合がある。
【0085】
生成部204は、ハーフトーン処理部203により生成されたハーフトーンデータ(ドットデータ)から、画像形成装置10で画像形成するための印刷データを生成する機能部である。
【0086】
送信部205は、生成部204により生成された印刷データを、ネットワークI/F409を介して画像形成装置10へ送信する機能部である。
【0087】
マトリクス生成部206は、ハーフトーン処理部203によるハーフトーン処理で使用するディザマトリクスを生成する機能部である。マトリクス生成部206は、上述のように、ハーフトーン処理により生成されるドットデータのドットのうち、シングルヘッド521の奇数列のノズルに対応するドットの周波数特性、およびシングルヘッド522の偶数列のノズルに対応するドットの周波数特性が、グレーノイズ特性となるようなディザマトリクスを生成する。マトリクス生成部206によるディマトリクスの生成処理については、後述の
図12~
図15で詳述する。マトリクス生成部206は、生成したディザマトリクスを記憶部212に記憶させる。
【0088】
表示制御部211は、ディスプレイ408の表示動作を制御する機能部である。例えば、表示制御部211は、アプリケーション221により生成された画像データをディスプレイ408に表示させる。
【0089】
記憶部212は、上述の色変換テーブルおよびディザマトリクス等の各種データを記憶する機能部である。記憶部212は、
図9に示した補助記憶装置405によって実現される。
【0090】
上述の解像度変換部201、色変換部202、ハーフトーン処理部203、生成部204、送信部205およびマトリクス生成部206は、例えば
図9に示したCPU401によりプリンタドライバ等のプログラムが実行されることによって実現される。また、上述の表示制御部211は、例えば
図9に示したCPU401によりグラフィックドライバ等のプログラムが実行されることによって実現される。なお、解像度変換部201、色変換部202、ハーフトーン処理部203、生成部204、送信部205、マトリクス生成部206および表示制御部211のうちの一部または全部は、ソフトウェアであるプログラムではなく、FPGAまたはASIC等の集積回路によって実現されてもよい。
【0091】
なお、マトリクス生成部206は、情報処理装置20とは異なるサーバ等の情報処理装置に備えられているものとしてもよい。
【0092】
また、
図10に示す情報処理装置20の各機能部は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、
図10に示す情報処理装置20で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、
図10に示す情報処理装置20で1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
【0093】
(情報処理装置のディザマトリクス生成処理について)
図12は、実施形態に係る情報処理装置におけるディザマトリクス生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13は、実施形態に係る情報処理装置におけるディザマトリクス生成処理において閾値=0を探索する処理を説明する図である。
図14は、実施形態に係る情報処理装置におけるディザマトリクス生成処理において閾値=1を探索する処理を説明する図である。
図15は、実施形態に係る情報処理装置におけるディザマトリクス生成処理において閾値=16を探索する処理を説明する図である。
図12~
図15を参照しながら、本実施形態に係る情報処理装置20によるディザマトリクス生成処理の詳細について説明する。
【0094】
なお、ディザマトリクス生成処理は、ディザマトリクスに閾値を配置する処理であるが、すべての階調におけるドット構成が特定の周波数特性を示すようにするため、ハイライトから閾値を設定していくことが原則であれば、初期パターンを設定して中間調から閾値を設定していくことも可能である。また、
図12~
図15では、ディザマトリクスDMの画素について、シングルヘッド521の奇数列のドットに対応する画素グループ(以下、単に「奇数列の画素グループ」と称する)(第1画素グループの一例)と、シングルヘッド522の偶数列のドットに対応する画素グループ(以下、単に「偶数列の画素グループ」と称する)(第2画素グループの一例)とに分けるものとして説明する。また、
図13~
図15に示すステップS11~S15の処理は、
図12に示すステップS11~S15の処理に対応する。
図13に示すステップS11~S15のフローは、ディザマトリクスDMに基づいてドットパターンのドットが最初に形成される閾値「0」の画素を、いずれの画素に決定するかについての処理を示している。
図14に示すステップS11~S15のフローは、ディザマトリクスDMに基づいてドットパターンのドットが2番目に形成される閾値「1」の画素を、いずれの画素に決定するかについての処理を示している。
図15に示すステップS11~S15のフローは、ディザマトリクスDMに基づいてドットパターンのドットが17番目に形成される閾値「16」の画素を、いずれの画素に決定するかについての処理を示している。
【0095】
<ステップS11>
情報処理装置20のマトリクス生成部206は、閾値の設定の対象となる所定のサイズのディザマトリクス(
図12~
図15においては8×8画素のディザマトリクスDM)を、所定の画素グループに対応するマトリクス(以下、分割マトリクスと称する場合がある)にそれぞれ分割する。本実施形態においては、マトリクス生成部206は、
図13~
図15に示すように、ディザマトリクスDMを、奇数列の画素グループに対応する分割マトリクスSM1と、偶数列の画素グループに対応する分割マトリクスSM2とに分割する。すなわち、分割マトリクスSM1は、ディザマトリクスDMのうち奇数列の画素グループに属する画素と、空欄の状態の画素とから構成される。また、分割マトリクスSM2は、ディザマトリクスDMのうち偶数列の画素グループに属する画素と、空欄の状態の画素とから構成される。
【0096】
図13に示す閾値「0」の画素を決定するフローでは、ディザマトリクスDMに対して閾値がまだ設定されていないため、マトリクス生成部206は、空の状態のディザマトリクスDMを、分割マトリクスSM1と分割マトリクスSM2とに分割する。
図14に示す閾値「1」の画素を決定するフローでは、マトリクス生成部206は、閾値「0」が設定されたディザマトリクスDMを、分割マトリクスSM1と分割マトリクスSM2とに分割する。
図15に示す閾値「16」の画素を決定するフローでは、マトリクス生成部206は、閾値「0」~「15」が設定されたディザマトリクスDMを、分割マトリクスSM1と分割マトリクスSM2とに分割する。
【0097】
そして、ステップS12およびS13へ移行する。
【0098】
<ステップS12>
マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMのうち閾値が未だ設定されていない画素(以下、次ドット候補と称する場合がある)に仮に閾値を設定した場合、当該閾値を仮に設定した画素と、閾値が既に設定されている画素と、の関係がどの程度ブルーノイズ特性またはグリーンノイズ特性に適合しているかを示すスコア(指標値)を当該次ドット候補について算出する。当該スコアの算出については、公知技術(例えば特許第6222255号公報)を適用することが可能である。本実施形態では、当該スコアが高いほどブルーノイズ特性またはグリーンノイズ特性への適合度が高いものとして説明する。例えば、閾値が既に設定されている画素に近いほど次ドット候補のスコアが低くなる(ブルーノイズ特性またはグリーンノイズ特性への適合度が低くなる)傾向となる。マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMの閾値が未だ設定されていないすべての画素についてスコアを算出する。
【0099】
図13に示す閾値「0」の画素を決定するフローでは、ディザマトリクスDMに対して閾値がまだ設定されていないため、マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMの画像のすべてが次ドット候補となり、そのスコアとして「0」を設定する。
図14に示す閾値「1」の画素を決定するフローでは、ディザマトリクスDMに対して左上の画素に閾値「0」が既に設定されており、マトリクス生成部206は、閾値「0」が設定された画素(黒塗りの画素)と、閾値が設定されていない各次ドット候補との関係から、当該各次ドット候補のスコアを算出する。
図15に示す閾値「16」の画素を決定するフローでは、ディザマトリクスDMに対して閾値「0」~「15」が既に設定されており、マトリクス生成部206は、閾値「0」~「15」が設定された画素と、閾値が設定されていない各次ドット候補との関係から、当該各次ドット候補のスコアを算出する。
【0100】
<ステップS13>
マトリクス生成部206は、分割マトリクスSM1、SM2それぞれにおいて閾値が未だ設定されていない画素(上述と同様に、次ドット候補と称する場合がある)に仮に閾値を設定した場合、当該閾値を仮に設定した画素と、閾値が既に設定されている画素と、の関係がどの程度グレーノイズ特性に適合しているかを示すスコア(指標値)を当該次ドット候補について算出する。当該スコアの算出については、例えば以下の式(2)および(3)により算出されるスコア算出用係数に基づいて算出することが可能である。本実施形態では、当該スコアが高いほどグレーノイズ特性への適合度が高いものとして説明する。例えば、閾値が既に設定されている画素に近いほど次ドット候補のスコアが低くなる(グレーノイズ特性への適合度が低くなる)傾向となる。また、人間が粒状感を感じやすい周波数領域において周波数スペクトラムが低くし、着弾ずれの公差内における周波数スペクトラムが低い次ドット候補ほどスコアが高くなる。
【0101】
PS=RR・f・2π ・・・(2)
CF(f)=VTF・sin(PS/2) ・・・(3)
【0102】
上記の式(2)において、RRは想定される着弾ずれ量である。また、上記の式(3)において、PSはRRと空間周波数とから求まる位相変位量であり、CFはスコア算出用係数である。マトリクス生成部206は、分割マトリクスSM1、SM2それぞれにおいて、閾値が未だ設定されていないすべての画素についてスコアを算出する。
【0103】
図13に示す閾値「0」の画素を決定するフローでは、分割マトリクスSM1、SM2それぞれについて閾値がまだ設定されていないため、マトリクス生成部206は、分割マトリクスSM1、SM2それぞれの画素のすべてが次ドット候補となり、そのスコアとして「0」を設定する。
図14に示す閾値「1」の画素を決定するフローでは、分割マトリクスSM1について左上の画素に閾値「0」が既に設定されており、マトリクス生成部206は、閾値「0」が設定された画素(黒塗りの画素)と、閾値が設定されていない各次ドット候補との関係から、当該各次ドット候補のスコアを算出する。また、分割マトリクスSM2について閾値がまだ設定されていないため、マトリクス生成部206は、分割マトリクスSM2の画像のすべてが次ドット候補となり、そのスコアとして「0」を設定する。
図15に示す閾値「16」の画素を決定するフローでは、分割マトリクスSM1、SM2に対して閾値「0」~「15」が既に設定されており、マトリクス生成部206は、分割マトリクスSM1、SM2それぞれについて閾値が設定された画素(黒塗りの画素)と、閾値が設定されていない各次ドット候補との関係から、当該各次ドット候補のスコアを算出する。
【0104】
ステップS12およびS13の処理が終了すると、ステップS14へ移行する。
【0105】
<ステップS14>
マトリクス生成部206は、ステップS12で算出したディザマトリクスDMの各次ドット候補のスコアと、ステップS13で算出した分割マトリクスSM1の各次ドット候補のスコアと、分割マトリクスSM2の各次ドット候補のスコアとを合算することによりスコアの合算値を求める。すなわち、マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDM、分割マトリクスSM1および分割マトリクスSM2の対応する画素(次ドット候補)ごとにスコアの合算値を算出する。
図13~
図15では、マトリクス生成部206により算出したスコアの合算値を、ディザマトリクスDMの対応する次ドット候補に記載して示している。そして、ステップS15へ移行する。
【0106】
<ステップS15>
マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMにおける各次ドット候補に対応するスコアの合算値のうち良好な合算値(すなわち値が最も高い合算値)の次ドット候補に対応するディザマトリクスDMの画素に、決定対象の閾値を設定することによってディザマトリクスDMを更新する。
【0107】
図13に示す閾値「0」の画素を決定するフローでは、ディザマトリクスDMにおけるすべての画素(次ドット候補)に対応するスコアの合算値がすべて「0」であるため、ここでは左上の画素に閾値「0」を設定することによってディザマトリクスDMを更新する。
図14に示す閾値「1」の画素を決定するフローでは、ディザマトリクスDMについて左上の画素に閾値「0」が既に設定されており、マトリクス生成部206は、各次ドット候補のスコアの合算値のうち良好な合算値(すなわち最も高い合算値)の次ドット候補に対応するディザマトリクスDMの画素に、閾値「1」を設定することによってディザマトリクスDMを更新する。
図15に示す閾値「16」の画素を決定するフローでは、ディザマトリクスDMについて閾値「0」~「15」が既に設定されており、マトリクス生成部206は、各次ドット候補のスコアの合算値のうち良好な合算値(すなわち最も高い合算値)の次ドット候補に対応するディザマトリクスDMの画素に、閾値「16」を設定することによってディザマトリクスDMを更新する。
【0108】
そして、ステップS16へ移行する。
【0109】
<ステップS16>
マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMのすべての画素に閾値が設定されたか否かを確認する。ディザマトリクスDMのすべての画素に閾値が設定されていない場合(ステップS16:No)、既に設定されている閾値のうち最大の閾値の次に大きい閾値を設定するためにステップS11へ戻る。一方、ディザマトリクスDMのすべての画素に閾値が設定されている場合(ステップS16:Yes)、ディザマトリクス生成処理を終了する。
【0110】
以上のステップS11~S16のディザマトリクス生成処理により生成されるディザマトリクスを用いることによって、人間が粒状感を感じやすい周波数領域において周波数特性の劣化を抑制すると共に、公差内で着弾ずれが発生しても周波数特性の劣化を抑制することができるハーフトーン処理を実現することができる。
【0111】
以上のように、本実施形態に係る情報処理装置20では、複数のノズルからインクを吐出するインクジェットヘッド520を備えた画像形成装置10に対する印刷データを生成するものであり、ハーフトーン処理部203は、複数のノズルを複数の画素グループに分割し、それぞれの画素グループに対応する複数のノズルから吐出されるインクのドットの周波数特性を、視覚伝達関数の感度が凸形状となる周波数領域のスペクトラム、および、画素グループ間で生じるインクの着弾ずれについての公差内に対応する周波数領域のスペクトラムを抑制する周波数特性とするハーフトーンデータを、画像形成対象となる画像データから生成し、生成部204は、ハーフトーンデータに基づいて印刷データを生成するものとしている。人間の感度の高い周波数領域だけでなく、着弾ずれの公差内において粒状性の悪化を抑制することができる。
【0112】
なお、インクジェットヘッド520は消耗品であるため、シングルヘッド521とシングルヘッド522とでインクの吐出量が均等になることが望ましい。そこで、ディザマトリクスDMにおいて奇数列の画素グループに対応する画素に設定された閾値の数、および偶数列の画素グループに対応する画素に設定された閾値の数のうち、ディザマトリクスDMに既に設定された閾値の数の1/2よりも少ない方の画素グループに対して、算出するスコアに対して一律に所定値を加算、または重みを付けることによって、画素グループ間、すなわちシングルヘッド間でインクの吐出量が均等になるように制御することができる。この場合、算出するスコアに対して一律に所定値を加算、または重みを付ける対象は、ディザマトリクスDMに対するスコアであってもよく、分割マトリクスSM1、SM2に対するスコアであってもよく、または双方に対するスコアであってもよい。
【0113】
また、上述のステップS12で算出されるディザマトリクスDMに対するスコアと、ステップS13で算出される分割マトリクスSM1、SM2に対するスコアとを等比率で合算しているものしているが、これに限定されるものではなく、いずれかの比重を大きくして合算するものとしてもよい。これによって、周波数特性の設計の自由度を向上させることができる。
【0114】
(変形例1)
変形例1に係る画像形成システム1について、上述の実施形態に係る画像形成システム1と相違する点を中心に説明する。上述の実施形態では、シングルヘッド521の奇数列のドットに対応する画素グループと、シングルヘッド522の偶数列のドットに対応する画素グループとに分けた場合について説明した。本変形例では、奇数列の画素グループと偶数列の画素グループとに分けるだけでなく、シングルヘッド521、522の各ノズル列のドットに対応する画素グループに分けて、ディザマトリクスを生成する動作について説明する。なお、本変形例に係る画像形成システム1の全体構成、画像形成装置10および情報処理装置20のハードウェア構成、ならびに情報処理装置20の機能ブロックの構成は、上述の実施形態で説明した構成と同様である。
【0115】
図16は、変形例1に係る情報処理装置においてシングルヘッド分割およびノズル列分割の場合におけるディザマトリクス生成処理において閾値=0を探索する処理を説明する図である。
図16を参照しながら、本変形例に係る情報処理装置20によるディザマトリクス生成処理の詳細について説明する。
【0116】
本変形例では、ディザマトリクスDMの画素について、奇数列の画素グループと、偶数列の画素グループとに分けるだけでなく、シングルヘッド521の各ノズル列(ノズル列521-L1~521-L4)に対応する画素グループと、シングルヘッド522の各ノズル列(ノズル列522-L1~522-L4)に対応する画素グループとにさらに分けたうえで、ディザマトリクスDMを生成する。本変形例のディザマトリクス生成処理についての生成フローは、上述の
図12に示した生成フローに準じるが、
図16に示すステップS11~S15のフローは、ディザマトリクスDMに基づいてドットパターンのドットが最初に形成される閾値「0」の画素を、いずれの画素に決定するかについての処理を一例として示している。
【0117】
<ステップS11>
情報処理装置20のマトリクス生成部206は、閾値の設定の対象となる所定のサイズのディザマトリクス(
図16においては8×8画素のディザマトリクスDM)を、所定の画素グループに対応する分割マトリクスにそれぞれ分割する。本変形例においては、マトリクス生成部206は、
図16に示すように、ディザマトリクスDMを、奇数列の画素グループに対応する分割マトリクスSM1と、偶数列の画素グループに対応する分割マトリクスSM2と、ノズル列521-L1~521-L4にそれぞれ対応する分割マトリクスSM1a~SM1dと、ノズル列522-L1~522-L4にそれぞれ対応する分割マトリクスSM2a~SM2dと、に分割する。すなわち、分割マトリクスSM1は、ディザマトリクスDMのうち奇数列の画素グループに属する画素と、空欄の状態の画素とから構成される。また、分割マトリクスSM2は、ディザマトリクスDMのうち偶数列の画素グループに属する画素と、空欄の状態の画素とから構成される。また、分割マトリクスSM1a~SM1dは、ディザマトリクスDMのうちノズル列521-L1~521-L4にそれぞれ対応する画素グループに属する画素と、空欄の状態の画素とから構成される。また、分割マトリクスSM2a~SM2dは、ディザマトリクスDMのうちノズル列522-L1~522-L4にそれぞれ対応する画素グループに属する画素と、空欄の状態の画素とから構成される。
【0118】
図16に示す閾値「0」の画素を決定するフローでは、ディザマトリクスDMに対して閾値がまだ設定されていないため、マトリクス生成部206は、空の状態のディザマトリクスDMを、分割マトリクスSM1と、分割マトリクスSM2と、分割マトリクスSM1a~SM1dと、分割マトリクスSM2a~SM2dと、に分割する。
【0119】
そして、ステップS12およびS13へ移行する。
【0120】
<ステップS12>
マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMのうち閾値が未だ設定されていない画素(次ドット候補)に仮に閾値を設定した場合、当該閾値を仮に設定した画素と、閾値が既に設定されている画素と、の関係がどの程度ブルーノイズ特性またはグリーンノイズ特性に適合しているかを示すスコア(指標値)を当該次ドット候補について算出する。当該スコアの算出方法については、上述の実施形態で説明した通りである。マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMの閾値が未だ設定されていないすべての画素についてスコアを算出する。
【0121】
図16に示す閾値「0」の画素を決定するフローでは、ディザマトリクスDMに対して閾値がまだ設定されていないため、マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMの画像のすべてが次ドット候補となり、そのスコアとして「0」を設定する。
【0122】
<ステップS13>
マトリクス生成部206は、分割マトリクスSM1、SM2、SM1a~SM1d、SM2a~SM2dそれぞれにおいて閾値が未だ設定されていない画素(次ドット候補)に仮に閾値を設定した場合、当該閾値を仮に設定した画素と、閾値が既に設定されている画素と、の関係がどの程度グレーノイズ特性に適合しているかを示すスコア(指標値)を当該次ドット候補について算出する。当該スコアの算出方法については、上述の実施形態で説明した通りである。マトリクス生成部206は、分割マトリクスSM1、SM2、SM1a~SM1d、SM2a~SM2dそれぞれにおいて、閾値が未だ設定されていないすべての画素についてスコアを算出する。
【0123】
図16に示す閾値「0」の画素を決定するフローでは、分割マトリクスSM1、SM2、SM1a~SM1d、SM2a~SM2dそれぞれについて閾値がまだ設定されていないため、マトリクス生成部206は、分割マトリクスSM1、SM2、SM1a~SM1d、SM2a~SM2dそれぞれの画素のすべてが次ドット候補となり、そのスコアとして「0」を設定する。
【0124】
ステップS12およびS13の処理が終了すると、ステップS14へ移行する。
【0125】
<ステップS14>
マトリクス生成部206は、ステップS12で算出したディザマトリクスDMの各次ドット候補のスコアと、ステップS13で算出した分割マトリクスSM1、SM2、SM1a~SM1d、SM2a~SM2dの各次ドット候補のスコアとを合算することによりスコアの合算値を求める。すなわち、マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDM、および分割マトリクスSM1、SM2、SM1a~SM1d、SM2a~SM2dの対応する画素(次ドット候補)ごとにスコアの合算値を算出する。
図16では、マトリクス生成部206により算出したスコアの合算値を、ディザマトリクスDMの対応する次ドット候補に記載して示している。そして、ステップS15へ移行する。
【0126】
<ステップS15>
マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMにおける各次ドット候補に対応するスコアの合算値のうち良好な合算値(すなわち値が最も高い合算値)の次ドット候補に対応するディザマトリクスDMの画素に、決定対象の閾値を設定することによってディザマトリクスDMを更新する。
【0127】
図16に示す閾値「0」の画素を決定するフローでは、ディザマトリクスDMにおけるすべての画素(次ドット候補)に対応するスコアの合算値がすべて「0」であるため、ここでは左上の画素に閾値「0」を設定することによってディザマトリクスDMを更新する。
【0128】
そして、ステップS16へ移行する。
【0129】
<ステップS16>
マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMのすべての画素に閾値が設定されたか否かを確認する。ディザマトリクスDMのすべての画素に閾値が設定されていない場合(ステップS16:No)、既に設定されている閾値のうち最大の閾値の次に大きい閾値を設定するためにステップS11へ戻る。一方、ディザマトリクスDMのすべての画素に閾値が設定されている場合(ステップS16:Yes)、ディザマトリクス生成処理を終了する。
【0130】
以上のステップS11~S16のディザマトリクス生成処理により生成されるディザマトリクスを用いることによって、人間が粒状感を感じやすい周波数領域において周波数特性の劣化を抑制すると共に、シングルヘッド521とシングルヘッド522とのずれによる公差内の着弾ずれだけでなく、同一のシングルヘッド内のノズル列間でずれが発生した場合においても周波数特性の劣化を抑制することができる。
【0131】
なお、本変形例では、ディザマトリクスDMを分割マトリクスSM1と、分割マトリクスSM2と、分割マトリクスSM1a~SM1dと、分割マトリクスSM2a~SM2dとに分割するものとしているが、これに限定されるものではない。すなわち、ディザマトリクスDMを分割マトリクスSM1a~SM1dと、分割マトリクスSM2a~SM2dとに分割するものとし、分割マトリクスSM1および分割マトリクスSM2についてのスコアの算出および合算は行わないものとしてもよい。
【0132】
また、インクジェットヘッド520は消耗品であるため、シングルヘッド521、522の各ノズル列間でインクの吐出量が均等になることが望ましい。そこで、ディザマトリクスDMにおいて各ノズル列の画素グループに対応する画素に設定された閾値の数のうち、ディザマトリクスDMに既に設定された閾値の数をインクジェットヘッド520のノズル列数で割った値よりも少ないノズル列の画素グループに対して、算出するスコアに対して一律に所定値を加算、または重みを付けることによって、画素グループ間、すなわちノズル列間でインクの吐出量が均等になるように制御することができる。この場合、算出するスコアに対して一律に所定値を加算、または重みを付ける対象は、ディザマトリクスDMに対するスコアであってもよく、分割マトリクスSM1、SM2に対するスコアであってもよく、分割マトリクスSM1a~SM1d、SM2a~SM2dに対するスコアであってもよく、またはすべてのマトリクスに対するスコアであってもよい。
【0133】
(変形例2)
変形例2に係る画像形成システム1について、上述の実施形態に係る画像形成システム1と相違する点を中心に説明する。上述の実施形態では、シングルヘッド521の奇数列のドットに対応する画素グループと、シングルヘッド522の偶数列のドットに対応する画素グループとに分けた場合について説明した。本変形例では、搬送方向の同じ列上にノズルが配置されたインクジェットヘッドにより、交互に主走査方向のラインにインクと吐出する、いわゆるタンデム打ちにより印刷動作の高速化を図る場合において使用するディザマトリクスを生成する動作について説明する。なお、本変形例に係る画像形成システム1の全体構成、画像形成装置10および情報処理装置20のハードウェア構成、ならびに情報処理装置20の機能ブロックの構成は、上述の実施形態で説明した構成と同様である。
【0134】
図17は、変形例2に係る情報処理装置においてタンデム方式の場合におけるディザマトリクス生成処理において閾値=0を探索する処理を説明する図である。
図17を参照しながら、本変形例に係る情報処理装置20によるディザマトリクス生成処理の詳細について説明する。
【0135】
本変形例では、ディザマトリクスDMの画素について、主走査方向の奇数ラインに対応する画素グループ(以下、奇数ラインの画素グループと称する場合がある)と、偶数ラインに対応する画素グループ(以下、偶数ラインの画素グループと称する場合がある)とを分けたうえで、ディザマトリクスDMを生成する。本変形例のディザマトリクス生成処理についての生成フローは、上述の
図12に示した生成フローに準じるが、
図17に示すステップS11~S15のフローは、ディザマトリクスDMに基づいてドットパターンのドットが最初に形成される閾値「0」の画素を、いずれの画素に決定するかについての処理を一例として示している。
【0136】
<ステップS11>
情報処理装置20のマトリクス生成部206は、閾値の設定の対象となる所定のサイズのディザマトリクス(
図17においては8×8画素のディザマトリクスDM)を、所定の画素グループに対応する分割マトリクスにそれぞれ分割する。本変形例においては、マトリクス生成部206は、
図17に示すように、ディザマトリクスDMを、奇数ライン画素グループに対応する分割マトリクスSM11と、偶数ラインの画素グループに対応する分割マトリクスSM12と、に分割する。すなわち、分割マトリクスSM11は、ディザマトリクスDMのうち奇数ラインの画素グループに属する画素と、空欄の状態の画素とから構成される。また、分割マトリクスSM12は、ディザマトリクスDMのうち偶数ラインの画素グループに属する画素と、空欄の状態の画素とから構成される。
【0137】
図17に示す閾値「0」の画素を決定するフローでは、ディザマトリクスDMに対して閾値がまだ設定されていないため、マトリクス生成部206は、空の状態のディザマトリクスDMを、分割マトリクスSM11と、分割マトリクスSM12と、に分割する。
【0138】
そして、ステップS12およびS13へ移行する。
【0139】
<ステップS12>
マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMのうち閾値が未だ設定されていない画素(次ドット候補)に仮に閾値を設定した場合、当該閾値を仮に設定した画素と、閾値が既に設定されている画素と、の関係がどの程度ブルーノイズ特性またはグリーンノイズ特性に適合しているかを示すスコア(指標値)を当該次ドット候補について算出する。当該スコアの算出方法については、上述の実施形態で説明した通りである。マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMの閾値が未だ設定されていないすべての画素についてスコアを算出する。
【0140】
図17に示す閾値「0」の画素を決定するフローでは、ディザマトリクスDMに対して閾値がまだ設定されていないため、マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMの画像のすべてが次ドット候補となり、そのスコアとして「0」を設定する。
【0141】
<ステップS13>
マトリクス生成部206は、分割マトリクスSM11、SM12それぞれにおいて閾値が未だ設定されていない画素(次ドット候補)に仮に閾値を設定した場合、当該閾値を仮に設定した画素と、閾値が既に設定されている画素と、の関係がどの程度グレーノイズ特性に適合しているかを示すスコア(指標値)を当該次ドット候補について算出する。当該スコアの算出方法については、上述の実施形態で説明した通りである。マトリクス生成部206は、分割マトリクスSM11、SM12それぞれにおいて、閾値が未だ設定されていないすべての画素についてスコアを算出する。
【0142】
図17に示す閾値「0」の画素を決定するフローでは、分割マトリクスSM11、SM12それぞれについて閾値がまだ設定されていないため、マトリクス生成部206は、分割マトリクスSM11、SM12それぞれの画素のすべてが次ドット候補となり、そのスコアとして「0」を設定する。
【0143】
ステップS12およびS13の処理が終了すると、ステップS14へ移行する。
【0144】
<ステップS14>
マトリクス生成部206は、ステップS12で算出したディザマトリクスDMの各次ドット候補のスコアと、ステップS13で算出した分割マトリクスSM11、SM12の各次ドット候補のスコアとを合算することによりスコアの合算値を求める。すなわち、マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDM、および分割マトリクスSM11、SM12の対応する画素(次ドット候補)ごとにスコアの合算値を算出する。
図17では、マトリクス生成部206により算出したスコアの合算値を、ディザマトリクスDMの対応する次ドット候補に記載して示している。そして、ステップS15へ移行する。
【0145】
<ステップS15>
マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMにおける各次ドット候補に対応するスコアの合算値のうち良好な合算値(すなわち値が最も高い合算値)の次ドット候補に対応するディザマトリクスDMの画素に、決定対象の閾値を設定することによってディザマトリクスDMを更新する。
【0146】
図17に示す閾値「0」の画素を決定するフローでは、ディザマトリクスDMにおけるすべての画素(次ドット候補)に対応するスコアの合算値がすべて「0」であるため、ここでは左上の画素に閾値「0」を設定することによってディザマトリクスDMを更新する。
【0147】
そして、ステップS16へ移行する。
【0148】
<ステップS16>
マトリクス生成部206は、ディザマトリクスDMのすべての画素に閾値が設定されたか否かを確認する。ディザマトリクスDMのすべての画素に閾値が設定されていない場合(ステップS16:No)、既に設定されている閾値のうち最大の閾値の次に大きい閾値を設定するためにステップS11へ戻る。一方、ディザマトリクスDMのすべての画素に閾値が設定されている場合(ステップS16:Yes)、ディザマトリクス生成処理を終了する。
【0149】
以上のステップS11~S16のディザマトリクス生成処理により生成されるディザマトリクスを用いることによって、人間が粒状感を感じやすい周波数領域において周波数特性の劣化を抑制すると共に、奇数ラインのドットと偶数ラインのドットとの着弾ずれが発生した場合においても周波数特性の劣化を抑制することができる。
【0150】
なお、本変形例では、ディザマトリクスDMを、奇数ライン画素グループに対応する分割マトリクスSM11と、偶数ラインの画素グループに対応する分割マトリクスSM12と、に分割する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、分割マトリクスSM11、SM12だけでなく、
図16に示したようにシングルヘッドの各ノズル列に対応するが画素グループにさらに分け、ディザマトリクスDMをこれらの画素グループに対応する分割マトリクスに分割したうえで、ディザマトリクスDMを生成するものとしてもよい。
【0151】
また、上述の実施形態、変形例1および変形例2におけるディザマトリクスDMの分割方式、すなわち画素グループを分ける方式について、いずれかを組み合わせことも可能である。この場合、画素グループに分ける方法に応じて、当該画素グループに対する分割マトリクスに対して算出されるスコアに重みを付けてもよい。これによって、周波数特性の設計の自由度を向上させることができる。
【0152】
また、上述の実施形態および各変形例に係る画像形成装置10のインクジェットヘッド520はラインヘッド方式であるものとしたが、これに限定されるものではなく、シリアル方式のインクジェットヘッドを有する画像形成装置に対しても適用が可能である。
【0153】
また、上述の実施形態および各変形例において、画像形成装置10および情報処理装置20の各機能部の少なくともいずれかがプログラムの実行によって実現される場合、そのプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。また、上述の実施形態および各変形例に係る画像形成装置10および情報処理装置20で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk-Recordable)、またはDVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態および各変形例に係る画像形成装置10および情報処理装置20で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態および各変形例に係る画像形成装置10および情報処理装置20で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、上述の実施形態および各変形例に係る画像形成装置10および情報処理装置20で実行されるプログラムは、上述した各機能部のうち少なくともいずれかを含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上述の記憶装置からプログラムを読み出して実行することにより、上述の各機能部が主記憶装置上にロードされて生成されるようになっている。
【0154】
本発明の態様は、以下の通りである。
<1>複数のノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドを備えた画像形成装置に対する印刷データを生成する情報処理装置であって、
前記複数のノズルを複数の画素グループに分割し、それぞれの前記画素グループに対応する複数の前記ノズルから吐出されるインクのドットの周波数特性を、視覚伝達関数の感度が凸形状となる周波数領域のスペクトラム、および、前記画素グループ間で生じるインクの着弾ずれについての公差内に対応する周波数領域のスペクトラムを抑制する周波数特性とするハーフトーンデータを、画像形成対象となる画像データから生成する第1生成部と、
前記ハーフトーンデータに基づいて前記印刷データを生成する第2生成部と、
を備えた情報処理装置である。
<2>前記第1生成部は、前記画像データからディザマトリクスを用いて前記ハーフトーンデータを生成し、
前記ディザマトリクスからそれぞれの前記画素グループに対応して分割されたそれぞれの分割マトリクスは、配置された閾値の配置に対応するインクのドットが前記周波数特性を有する前記<1>に記載の情報処理装置である。
<3>前記ディザマトリクスは、前記複数の画素グループそれぞれに含まれるノズル群間でインクの吐出回数が均等となる前記閾値が配置された前記<2>に記載の情報処理装置である。
<4>前記ディザマトリクスは、前記画素グループに含まれる複数のノズル群間でインクの吐出回数が均等となるように前記閾値が配置された前記<2>または<3>に記載の情報処理装置である。
<5>前記インクジェットヘッドは、第1シングルヘッドと、第2シングルヘッドとを含み、
前記複数の画素グループとして、前記第1シングルヘッドのノズル群に対応する第1画素グループと、前記第2シングルヘッドのノズル群に対応する第2画素グループとが含まれる前記<1>~<4>のいずれか一項に記載の情報処理装置である。
<6>前記インクジェットヘッドは、第1シングルヘッドと、第2シングルヘッドとを含み、
前記複数の画素グループとして、前記第1シングルヘッドおよび前記第2シングルヘッドそれぞれに含まれる複数のノズル列ごとに対応する画素グループが含まれる前記<1>~<4>のいずれか一項に記載の情報処理装置。
<7>前記複数の画素グループは、複数の方式により分割された前記画素グループが含まれる前記<1>~<4>のいずれか一項に記載の情報処理装置である。
<8>前記第1生成部は、前記インクジェットヘッドの前記複数のノズル全体から吐出されるインクのドットの周波数特性を、ブルーノイズ特性またはグリーンノイズ特性とする前記ハーフトーンデータを生成する前記<1>~<6>のいずれか一項に記載の情報処理装置である。
<9>複数のノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドを備えた画像形成装置に対する印刷データの生成に用いるディザマトリクスのデータ生成方法であって、
前記ディザマトリクスを、前記複数のノズルを分割した複数の画素グループそれぞれに対応する分割マトリクスに分割するステップと、
それぞれの前記分割マトリクスに設定された閾値の配置の周波数特性を、視覚伝達関数の感度が凸形状となる周波数領域のスペクトラム、および、前記画素グループ間で生じるインクの着弾ずれについての公差内に対応する周波数領域のスペクトラムを抑制する周波数特性とする前記ディザマトリクスを生成する生成ステップと、
を有するデータ生成方法である。
<10>複数のノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドを備えた画像形成装置と、前記画像形成装置対する印刷データを生成する情報処理装置と、を含む画像形成システムであって、
前記情報処理装置は、
前記複数のノズルを複数の画素グループに分割し、それぞれの前記画素グループに対応する複数の前記ノズルから吐出されるインクのドットの周波数特性を、視覚伝達関数の感度が凸形状となる周波数領域のスペクトラム、および、前記画素グループ間で生じるインクの着弾ずれについての公差内に対応する周波数領域のスペクトラムを抑制する周波数特性とするハーフトーンデータを、画像形成対象となる画像データから生成する第1生成部と、
前記ハーフトーンデータに基づいて前記印刷データを生成する第2生成部と、
前記第2生成部により生成された前記印刷データを、前記画像形成装置へ送信する送信部と、
を備え、
前記画像形成装置は、前記送信部から送信された前記印刷データを受信し、該印刷データに基づいて画像形成を行う画像形成システムである。
【符号の説明】
【0155】
1 画像形成システム
10 画像形成装置
20 情報処理装置
30 搬入部
31a 下段搬入トレイ
31b 上段搬入トレイ
32a、32b 給送装置
40 印刷部
41 制御部
42 表示部
50 作像部
51 ドラム
52、52C、52K、52M、52Y 液体吐出ユニット
54 入口回転体
55 出口回転体
60 定着部
61 搬送ベルト
62 加熱部
63 シート検知センサ
64 吸引部
70 両面機構部
71 反転経路
72 両面経路
90 搬出部
91 搬出トレイ
201 解像度変換部
202 色変換部
203 ハーフトーン処理部
204 生成部
205 送信部
206 マトリクス生成部
211 表示制御部
212 記憶部
221 アプリケーション
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 外部I/F
311 ヘッド駆動制御回路
312 回転駆動回路
313 搬送駆動回路
314 加熱駆動回路
315 吸引駆動回路
316 センサI/F
317 搬送駆動回路
401 CPU
402 ROM
403 RAM
405 補助記憶装置
406 記録メディア
407 メディアドライブ
408 ディスプレイ
409 ネットワークI/F
410 バス
411 キーボード
412 マウス
413 DVD
414 DVDドライブ
501 搬入経路
502 搬送ローラ対
520 インクジェットヘッド
521 シングルヘッド
521-D1~521-D4 ドット
521-L1~521-L4 ノズル列
522 シングルヘッド
522-D1~522-D4 ドット
522-L1~522-L4 ノズル列
601 駆動ローラ
602 従動ローラ
701 搬送ローラ対
702 搬送ローラ対
801 搬出経路
802 搬送ローラ対
1000、1001、1002 周波数特性
1011、1012 グラフ
DM ディザマトリクス
N ネットワーク
Nz ノズル
P 印刷媒体
SM1、SM1a~SM1d 分割マトリクス
SM2、SM2a~SM2d 分割マトリクス
SM11、SM12 分割マトリクス
VTF グラフ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0156】