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特開2024-155044画像生成装置、画像生成プログラム、および画像生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155044
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】画像生成装置、画像生成プログラム、および画像生成方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20241024BHJP
【FI】
A61B6/00 330Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069417
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】七海 隆一
(72)【発明者】
【氏名】石川 瑠奈
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA08
4C093AA18
4C093DA06
4C093EC22
4C093FA55
4C093FF35
4C093FF42
4C093FF50
(57)【要約】
【課題】鮮鋭性と背景の濃淡表現との優れた合成2D画像を生成すること。
【解決手段】本実施形態に係る画像生成装置は、放射線源を移動させ、複数の線源位置から被写体の乳房に放射線を照射することによって収集される複数の投影像に基づいて第1のボリュームデータを生成する第1のボリュームデータ生成部と、前記複数の投影像に基づいて、前記第1のボリュームデータとは異なる方法で第2のボリュームデータを生成する第2のボリュームデータ生成部と、前記第1のボリュームデータに基づいて、第1の手法により第1の仮想投影像を生成する第1の仮想投影部と、前記第2のボリュームデータに基づいて、前記第1の手法と異なる第2の手法により第2の仮想投影像を生成する第2の仮想投影部と、前記第1の仮想投影像と前記第2の仮想投影像とに基づいて第3の仮想投影像を生成する第3の仮想投影部と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源を移動させ、複数の線源位置から被写体の乳房に放射線を照射することによって収集される複数の投影像に基づいて第1のボリュームデータを生成する第1のボリュームデータ生成部と、
前記複数の投影像に基づいて、前記第1のボリュームデータとは異なる方法で第2のボリュームデータを生成する第2のボリュームデータ生成部と、
前記第1のボリュームデータに基づいて、第1の手法により第1の仮想投影像を生成する第1の仮想投影部と、
前記第2のボリュームデータに基づいて、前記第1の手法と異なる第2の手法により第2の仮想投影像を生成する第2の仮想投影部と、
前記第1の仮想投影像と前記第2の仮想投影像とに基づいて第3の仮想投影像を生成する第3の仮想投影部と、
を有することを特徴とする画像生成装置。
【請求項2】
前記第1の手法は、前記第1のボリュームデータに対して平均値投影を実行すること、
を特徴とする請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項3】
前記第1の手法は、前記第1のボリュームデータに対して低周波領域を強調した重みづけ投影を実行すること、
を特徴とする請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項4】
前記第2の手法は、前記第2のボリュームデータに対して最大値投影を実行すること、
を特徴とする請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項5】
前記第2の手法は、前記第2のボリュームデータに対して高周波領域を強調した重みづけ投影を実行すること、
を特徴とする、請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項6】
前記第2のボリュームデータ生成部は、前記第1のボリュームデータに基づいて、前記第2のボリュームデータを生成する、
請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項7】
前記第2のボリュームデータ生成部は、
前記第1のボリュームデータに基づいて、前記第1のボリュームデータにおける複数のスライス各々に対して異なる周波数帯が強調された帯域強調画像群を生成し、
前記帯域強調画像群に基づいて前記第2のボリュームデータを生成する、
ことを特徴する請求項6に記載の画像生成装置。
【請求項8】
前記第2のボリュームデータ生成部は、
前記第1のボリュームデータに基づいて、前記複数のスライス各々に対して低周波成分が強調された低周波強調画像を生成し、
前記低周波強調画像と前記帯域強調画像群とを用いて、前記第2のボリュームデータを生成する、
ことを特徴とする請求項7に記載の画像生成装置。
【請求項9】
前記第2のボリュームデータ生成部は、
前記帯域強調画像群に対して異なるノイズパラメータを使用したノイズ低減処理を適用し、
前記ノイズ低減処理を適用した前記帯域強調画像群を用いて、前記第2のボリュームデータを生成する、
ことを特徴とする請求項7に記載の画像生成装置。
【請求項10】
前記第2のボリュームデータ生成部は、
前記帯域強調画像群の各周波数帯に対して画像のエッジを強調するエッジ強調処理を適用し、
前記エッジ強調処理を適用した前記帯域強調画像群を用いて、前記第2のボリュームデータを生成する、
ことを特徴とする請求項7に記載の画像生成装置。
【請求項11】
前記第2のボリュームデータ生成部は、
前記帯域強調画像群に対して異なるノイズパラメータを使用したノイズ低減処理を適用し、
前記ノイズ低減処理を適用した前記帯域強調画像群の各周波数帯に対して画像のエッジを強調するエッジ強調処理を適用し、
前記エッジ強調処理を適用した前記帯域強調画像群を用いて、前記第2のボリュームデータを生成する、
ことを特徴とする請求項7に記載の画像生成装置。
【請求項12】
前記第2のボリュームデータ生成部は、前記第1のボリュームデータとは異なる手法もしくは異なるパラメータを用いて前記複数の投影像を再構成することで、前記第2のボリュームデータを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項13】
前記第3の仮想投影部は、前記第1の仮想投影像と前記第2の仮想投影像とのブレンディングの割合を前記第1の仮想投影像と前記第2の仮想投影像とに適用して、前記第3の仮想投影像を生成する、
請求項1乃至12のうちいずれか一項に記載の画像生成装置。
【請求項14】
前記割合は、前記複数の投影像の特性と、前記放射線の照射に関する条件と、前記放射線の照射に関する検査オーダとのうち少なくとも一つにより設定され、
前記第3の仮想投影像と前記割合とを表示する表示部をさらに有する、
請求項13に記載の画像生成装置。
【請求項15】
前記割合が調整されると、前記第3の仮想投影部は、前記調整された割合を用いて、前記第3の仮想投影像を再度生成し、
前記表示部は、前記調整された割合と、前記再度生成された第3の仮想投影像とを表示する、
請求項14に記載の画像生成装置。
【請求項16】
コンピュータに、
放射線源を移動させ、複数の線源位置から被写体の乳房に放射線を照射することによって収集される複数の投影像を用いて、前記複数の投影像に基づいて再構成された第1のボリュームデータを生成する第1のボリューム生成処理と、
前記第1のボリュームデータとは異なる方法で第2のボリュームデータを生成する第2のボリューム生成処理と、
前記第1のボリュームデータから第1の手法により第1の仮想投影像を生成する第1の仮想投影処理と、
前記第2のボリュームデータから前記第1の手法と異なる第2の手法により第2の仮想投影像を生成する第2の仮想投影処理と、
前記第1の仮想投影像と前記第2の仮想投影像とに基づいて第3の仮想投影像を生成する第3の仮想投影処理と、
を実現させることを特徴とする画像生成プログラム。
【請求項17】
放射線源を移動させ、複数の線源位置から被写体の乳房に放射線を照射することによって収集された複数の投影像を用いて、
前記複数の投影像に基づいて再構成された第1のボリュームデータを生成する第1のボリューム生成処理と、
前記第1のボリュームデータとは異なる方法で第2のボリュームデータを生成する第2のボリューム生成処理と、
前記第1のボリュームデータから第1の手法により第1の仮想投影像を生成する第1の仮想投影処理と、
前記第2のボリュームデータから前記第1の手法と異なる第2の手法により第2の仮想投影像を生成する第2の仮想投影処理と、
前記第1の仮想投影像と前記第2の仮想投影像とに基づいて第3の仮想投影像を生成する第3の仮想投影処理と、
を有することを特徴とする画像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、トモシンセシス撮影で得られた画像を処理する画像生成装置、画像生成プログラム、および画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンモグラフィ装置において、3次元画像データや断層画像データなどのボリュームデータを得る手法としてトモシンセシス撮影法がある。トモシンセシス撮影法は、デジタル検出器を用い、X線管を被検体に対し相対的に移動させながら複数回に亘ってX線撮影を行う撮影法である。トモシンセシス撮影で得られた複数の収集画像は、断層画像データに再構成される。再構成して得られた断層画像は、乳房の厚さ方向に垂直な面を断面とし、乳房上面から下面にわたってある間隔で数枚から数十枚程度で再構成される。このように被写体における複数の断層面において断層画像を生成することにより、断層面が並ぶ深さ方向に重なり合った構造を分離することができる。従来の2次元マンモグラフィ撮影に加えて断層画像も用いた診断により、2次元マンモグラフィ画像のみによる診断と比べて、癌発見率が大幅に向上する効果が期待されている。
【0003】
しかしながら上記のような2次元マンモグラフィ撮影とトモシンセシス撮影を併用する方法は、放射線被ばく量の増加を招く。このため、3次元の断層画像を深さ方向に投影することにより従来の2次元マンモグラフィ画像と同等の疑似的な2次元画像を得る手法が、特許文献1に開示されている。以下、このように生成される2次元画像を合成2D画像と称する。合成2D画像の生成技術により、従来の2次元マンモグラフィ撮影を行う必要がなくなるため、放射線被ばく量の増加を抑制することができる。
【0004】
トモシンセシス撮影は、上述のように複数回のX線撮影を行うため、1回の投影あたりの線量を低く抑えている。そのため、必然的にトモシンセシスによる断層像は、2次元マンモグラフィ画像よりも物理的にノイズが多い画像となる。このため、トモシンセシスによる断層像において、微小な石灰化などの病変検出が困難になる。断層像から作成された合成2D画像についてもこれと同様の課題が生じる。
【0005】
トモシンセシス投影像と、投影像から再構成した3次元断層画像の双方を利用して合成2D画像を生成するアルゴリズムが、非特許文献1に示されている。非特許文献1では、3次元断層画像に多重解像度処理を行うことで3次元データのノイズを低減し、投影像から低周波情報を取得することで、合成2D画像を従来2Dの画像に近づけていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-68032号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“Synthesizing mammogram from digital breast tomosynthesis”,Jun Wei et al 2019 Phys. Med. Biol. 64 045011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の手法のように、最大値投影法(MIP:Maximum Intensity Projection)を用いて合成2D画像を生成すると、ボリュームのノイズが強調された画像になる。このため、MIPによる合成2D画像では、背景の濃淡表現に乏しい画像となる。また、重み付き平均値投影法(AIP:Average Intensity Projection)によって合成2D画像を生成する手法も記載されているが、この手法だとノイズが低減できる一方で組織の鮮鋭性が損なわれた画像となってしまう。
また、非特許文献1に記載の手法では、投影像にノイズが多く含まれるため、従来の2次元マンモグラフィ画像2次元マンモグラフィ画像相当の鮮明な画像を得ることが難しい。
以上のように、合成2D画像を生成する従来の技術では鮮鋭性や背景の濃淡表現の観点で診断に十分な画質をえることが難しい。
【0009】
本実施形態の目的は、上記課題を鑑みて、鮮鋭性と背景の濃淡表現との優れた合成2D画像を生成することを可能とする画像生成装置を提供することである。
【0010】
すなわち、本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、鮮鋭性と背景の濃淡表現との優れた合成2D画像を生成することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本実施形態に係る画像生成装置は、第1のボリュームデータ生成部と、第2のボリュームデータ生成部と、第1の仮想投影部と、第2の仮想投影部と、第3の仮想投影部と、を有する。第1のボリュームデータ生成部は、放射線源を移動させ、複数の線源位置から被写体の乳房に放射線を照射することによって収集される複数の投影像に基づいて第1のボリュームデータを再構成する。第2のボリュームデータ生成部は、前記複数の投影像に基づいて、前記第1のボリュームデータとは異なる方法で第2のボリュームデータを生成する。第1の仮想投影部は、前記第1のボリュームデータに基づいて、第1の手法により第1の仮想投影像を生成する。第2の仮想投影部は、前記第2のボリュームデータに基づいて、前記第1の手法と異なる第2の手法により第2の仮想投影像を生成する。第3の仮想投影部は、前記第1の仮想投影像と前記第2の仮想投影像とに基づいて第3の仮想投影像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係わるマンモグラフィ装置の構成の一例を示す図。
図2図2は、図1のマンモグラフィ装置のX線撮影台の主要部構造の一例を示す図。
図3図3は、本実施形態において、トモシンセシス撮影時のX線管の動きの一例を示す図。
図4図4は、本実施形態に係わる課題を説明する図。
図5図5は、第1の実施形態における画像処理の手順の一例を示すフローチャート。
図6図6は、第1乃至第3の実施形態に係わる画像データの処理過程の一例を示した図。
図7図7は、第1の実施形態に係わる画像データの処理過程の一例を示した図。
図8図8は、第1の実施形態に係わるボリューム改変処理の処理過程の一例を示した図。
図9図9は、第2の実施形態に係わるボリューム改変処理の処理過程の一例を示した図。
図10図10は、第3の実施形態に係わるボリューム改変処理の処理過程の一例を示した図。
図11図11は、第4の実施形態に係わる画像データの処理過程の一例を示した図。
図12図12は、実施形態におけるその他の投影手段の一例について示した図。
図13図13は、実施形態におけるその他の投影手段の一例について示した図。
図14図14は、実施形態におけるその他の投影手段の一例について示した図。
図15図15は、実施形態の応用例としての画像生成装置の構成の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る画像生成装置、画像生成プログラム、および画像生成方法について説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明は適宜省略する。また、以下では、本実施形態に係る画像生成装置として、マンモグラフィ装置を例にとり説明する。なお、本実施形態に係る画像生成装置はマンモグラフィ装置に限定されず、各種放射線診断装置などに適用可能である。
【0014】
放射線診断装置は、例えば、消化器用のX線診断装置(X線TV装置)、一般撮影用のX線診断装置、循環器用のX線診断装置(X線アンギオグラフィー装置)、および回診用X線診断装置などの各種X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT(Computed Tomography)装置)、陽電子放出コンピュータ断層撮影装置(PET:Positron Emission Computed Tomography)および単一光子放射断層撮影装置(SPECT:Single Photon Emission Computed Tomography)などの核医学診断装置、およびこれらの装置の複合装置などである。また、本実施形態に係る画像生成装置は、ワークステーション、サーバ装置などの各種医用画像生成装置により実現されてもよい。
【0015】
(第1の実施形態)
以下、図1を用いて第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置について説明する。図1は、第1の実施形態に係わるマンモグラフィ装置90の構成を示している。マンモグラフィ装置90は、X線撮影台1を有している。図2は、図1のマンモグラフィ装置90のX線撮影台1の主要部構造の一例を示している。
【0016】
X線撮影台1は、図2に示すように、フレーム20とフレーム21を有している。フレーム20およびフレーム21は、支柱22に水平に取り付けられた軸部23に接続されている。フレーム20、21は、軸部23の軸心を回転中心軸Rとして個別に回転可能なように支柱22により支持される。この回転方向をβ方向とする。
【0017】
フレーム20の端には、X線管装置24が装備されている。X線管装置24はX線管2を収容する。X線管2は、高電圧発生器3から高電圧の印加とフィラメント電流の供給とを受けてX線を発生する。
【0018】
フレーム21の端には、X線管2に対向する向きに平面検出器(フラット・パネル・ディテクタ/FPDとも呼ばれる)5が装備されている。平面検出器5は、入射X線を直接的に電気信号に変換する直接変換形又は入射X線を蛍光体で光に変換しその光を電気信号に変換する間接変換形の複数の半導体検出素子を有する。この複数の半導体検出素子は、2次元格子状に配列される。平面検出器5は、X線検出器と称されてもよい。X線入射に伴って複数の半導体検出素子で発生した信号電荷は、データ収集回路6を介してデジタル信号として読み出される。データ収集回路6は、データ収集部に対応する。
【0019】
図2に示すように、フレーム21の端には、平面検出器5とともに下側圧迫板25が取り付けられている。下側圧迫板25の背面には、平面検出器5が配置される。上側圧迫板26は、下側圧迫板25に対向して位置し、下側圧迫板25と接近/離反する方向に移動可能にフレーム21に取り付けられている。ここで、回転中心軸RをZ軸として、Y軸をX線の発生の焦点と平面検出器5の有効面の中心とを結ぶ線(撮影軸)に規定し、X軸をYZ平面に垂直に規定する。なお、XYZ座標系はZ軸を中心とした回転座標系を構成する。下側圧迫板25と上側圧迫板26との間の距離を矢印α方向とする。下側圧迫板25は、フレーム21に矢印α方向に関して移動可能に支持された上側圧迫板26とともに、被検体の乳房をスラブ状に圧迫するために設けられている。
【0020】
第1の実施形態に係わるマンモグラフィ装置90は、X線撮影台1とともに、システム制御回路7、撮影制御回路8、入力インターフェース9、メモリ10、処理回路120、ディスプレイ13を備えている。処理回路120は、画像処理回路12を備えている。なお、処理回路120は、システム制御回路7および撮影制御回路8をさらに有していてもよい。また、処理回路120は、システム制御回路7、撮影制御回路8、および画像処理回路12を、システム制御機能、撮影制御機能、および画像処理機能として有していてもよい。また、画像処理回路12は、処理回路120に搭載されることなく単独でバスに電気的に接続されてもよい。この時、処理回路120は、不要となる。
【0021】
上記データ収集回路6、システム制御回路7、撮影制御回路8、処理回路120、および画像処理回路12は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM等のメモリとを有する。また、当該各種回路は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)などのプロセッサにより実現されてもよい。
【0022】
なお、図1においては単一の画像処理回路12にて、第1のボリュームデータ生成機能121、第2のボリュームデータ生成機能122、第1の仮想投影機能123、第2の仮想投影機能125、および第3の仮想投影機能127が実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて画像処理回路12を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、画像処理回路12が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0023】
図3は、トモシンセシス撮影時のX線管2の動きの一例を示す図である。図3に示すように、トモシンセシス撮影は、X線管2を平面検出器5の鉛直方向から片側にある角度θ傾けた位置から開始し、β方向に連続的に移動させながら一定間隔でX線発生・画像収集を繰り返す。X線撮影は、X線管2が平面検出器5の鉛直方向に関し開始位置から反対側にある角度φ傾いた位置で終了する。このようなトモシンセシス撮影を行うために、システム制御回路7は、マンモグラフィ装置90全体を制御する。システム制御回路7は、システム制御部に相当する。
【0024】
撮影制御回路8は、トモシンセシス撮影を行うための所定の手順に従って、支持機構4を制御する。また、撮影制御回路8は、X線発生条件(X線継続時間、管電流、管電圧などであって撮影条件または撮影プロトコルとも称される)に基づいて高電圧発生器3を制御することで、X線管2からX線を発生させる。撮影制御回路8は、データ収集回路6を制御することで、デジタル信号を収集する。このように、撮影制御回路8が繰り返し支持機構4と高電圧発生器3とデータ収集回路6とを制御することで、トモシンセシス撮影が可能となる。撮影制御回路8は、撮影制御部に相当する。
【0025】
メモリ10は、トモシンセシス撮影によって得られた複数の投影画像(当該画像は、投影像と称されてもよい)を記憶する。このとき、メモリ10は、画像記憶部として機能する。なお、メモリ10は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ10は、データ収集回路6により収集されたデジタル信号(投影像)、画像処理回路12により生成された第1のボリュームデータおよび第2のボリュームデータ、X線発生条件、ネットワークを介して放射線科情報システム(RIS:Radiology Information System)から取得された被写体の検査オーダなどを記憶する。また、例えば、メモリ10は、マンモグラフィ装置90に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、メモリ10は、マンモグラフィ装置90とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0026】
(従来技術について)
本実施形態の目的は、トモシンセシス投影像から従来の2D(Dimension)マンモグラフィ画像と同等の、読影に適した2次元画像を得ることである。複数の投影像を再構成して得られた3次元ボリュームデータから仮想投影を行って仮想的な合成2D画像を得る手法として従来一般的であるのは、最大値投影(Maximum Intensity Projection/以下MIPと呼ぶ)像又は平均値投影(Average Intensity Projection/以下AIPと呼ぶ)像を得る手法などである。すなわち、仮想投影は、3次元画像データ(ボリュームデータ)を仮想的に貫くレイに沿って、ボリュームデータ内のレイ上の画素値を投影面に投影する投影方法である。MIP像は、3次元画像データ(ボリュームデータ)を貫くレイ上の画素値のうち最大画素値を投影面に投影することによって生成される2次元画像である。すなわち、MIP像には、石灰化などの画素値が大きい組織が映し出される。従って、MIP像を観察することにより乳房内の石灰化の有無が判断できる。
【0027】
一方、AIP像は3次元画像データを貫くレイ上の複数画素値の平均画素値を投影面に投影することによって生成される2次元画像である。AIP像は、MIP像と違って乳房組織や石灰化などの高周波成分はなまってしまうが、一方で滑らかなコントラストが維持された画像となる。
【0028】
図4の(a)は従来の2Dマンモグラフィ画像のイメージ図である。2Dマンモグラフィ撮影においては、乳房の微細な組織や微小石灰化などが見えるように必要なX線量を照射することで、診断可能な画像を取得している。しかしながら、複数回のX線照射を行うトモシンセシス撮影においては一回あたりの照射量が少ない。このため、再構成されたボリュームデータにはノイズが多く含まれる。これにより、ノイズが多いボリュームデータから生成されたMIP像は、図4の(b)のようにさらにノイズが強調された画像となり、読影に必要な鮮鋭性が損なわれてしまう。さらに、レイに沿った最大値のみしか考慮できないため、ノイズに影響されて背景の濃淡を適切に表現することが難しい。
【0029】
一方、AIP像においては、レイに沿った平均値を取るためノイズと背景の濃淡の表現はMIP像に勝るが、図4(c)のように乳房組織や微小石灰化のコントラストが低下し、やはり読影に適した画像を得ることが難しい。
【0030】
つまり、従来の2Dマンモグラフィ画像と同等の読影に適した画像としては、MIP像とAIP像との両方の特長を備えた画像が求められる。
【0031】
(本実施形態における画像データの処理過程)
図5は、第1の実施形態における画像処理の手順の一例を示すフローチャートである。図6は、第1の実施形態における画像データの処理過程の一例を示した図である。以下、図1図5、および図6を用いて、第1の実施形態における画像処理の処理内容を説明する。
【0032】
(ステップS501)
システム制御回路7は、マンモグラフィ装置90全体を制御することにより、トモシンセシス撮影を実行する。例えば、撮影制御回路8は、放射線源(例えばX線管2)を移動させ、複数の線源位置(焦点)から被写体の乳房に放射線を照射する。また、撮影制御回路8による制御のもとで実行されたトモシンセシス撮影により、データ収集回路6は、被写体の乳房に関し、複数の線源位置に対応する複数の投影像を収集する。データ収集回路6は、収集された複数の投影像をメモリ10に記憶させる。
【0033】
(ステップS502)
画像処理回路12は、第1のボリュームデータ生成機能121により、メモリ10に記憶されている複数の投影画像に対してボリューム作成手法1を用いて再構成処理を行う。ボリューム作成手法1による再構成は、乳房の厚さ方向に垂直な面を断面とした多断面の断層画像のデータ(マルチスライス画像データ)である第1のボリュームデータを発生する手法である。すなわち、第1のボリュームデータ生成機能121は、複数の投影像に基づいて第1のボリュームデータを生成する。第1のボリュームデータ生成機能121は、第1のボリュームデータを、メモリ10に記憶させる。第1のボリュームデータ生成機能121を実現する画像処理回路12または処理回路120は、第1のボリュームデータ生成部に相当する。
【0034】
(ステップS503)
ステップS501に続いて、画像処理回路12は、第2のボリュームデータ生成機能122により、第1のボリュームデータの生成とは異なる方法(ボリューム作成手法2)によって第2のボリュームデータを生成する。この異なる方法は、複数の投影像を用いて第1のボリュームデータ生成機能121により実行されるボリューム作成手法1と別の再構成手法や別のパラメータ(他の再構成関数、再構成パラメータなど)によって発生させる手法でもよいし、第2のボリュームデータ生成機能122により第1のボリュームデータに処理を加える形で第2のボリュームデータを発生させる手法でも良い。第2のボリュームデータ生成機能122は、生成された第2のボリュームデータをメモリ10に記憶させる。なお、図5ではステップS502における処理とステップS503における処理とは並列で処理するものとして記載されているが、これに限定されず、任意の順序でステップS502における処理とステップS503における処理とが実施されてもよい。第2のボリュームデータ生成機能122を実現する画像処理回路12または処理回路120は、第2のボリュームデータ生成部に相当する。
【0035】
(ステップS504)
画像処理回路12は、第1の仮想投影機能123により、メモリ10に記憶されている3次元画像データである第1のボリュームデータに基づいて、第1の手法により第1の仮想投影像(第1の仮想投影画像と称してもよい)を生成する。以下、説明のため投影面(本実施形態においては乳房の厚さ方向に対して垂直な面)から垂直に発せられる仮想的な光線をレイと称することにする。第1の仮想投影像は、3次元画像データである第1のボリュームデータを貫くレイに沿って、第1のボリュームデータ内のレイ上の画素値を投影面に投影した画像である。そのため、第1の仮想投影画像は、第1のボリュームデータ内の画素値を反映させた2次元画像と言うこともできる。
【0036】
具体的な仮想投影の方法としては、第1の仮想投影機能123は、第1のボリュームデータに対して、第1のボリュームデータの厚さ方向の最大画素値を厚さ方向と鉛直な平面に投影したAIP像または第1のボリュームデータの厚さ方向に沿った重み付け平均値像などを、第1の仮想投影像として生成する。例えば、第1の手法は、第1のボリュームデータに対して平均値投影を実行することに相当する。また、第1の手法は、第1のボリュームデータに対して低周波領域を強調した重みづけ投影を実行してもよい。第1の仮想投影機能123は、生成された第1の仮想投影像をメモリ10に記憶させる。第1の仮想投影機能123を実現する画像処理回路12または処理回路120は、第1の仮想投影部に相当する。
【0037】
(ステップS505)
画像処理回路12は、第2の仮想投影機能125により、メモリ10に記憶されている3次元画像データである第2のボリュームデータに基づいて、上記第1の手法とは異なる第2の手法により第2の仮想投影像(第2の仮想投影画像と称してもよい)を生成する。第2の仮想投影像は、3次元画像データである第2のボリュームデータを貫くレイに沿って、第2のボリュームデータ内のレイ上の画素値を投影面に投影した画像である。そのため、第2の仮想投影画像は、第2のボリュームデータ内の画素値を反映させた2次元画像と言うこともできる。
【0038】
具体的な仮想投影の方法としては、第2の仮想投影機能125は、第2のボリュームデ-―タに対して、第2のボリュームデータの厚さ方向の最大画素値を厚さ方向と鉛直な平面に投影したMIP像または第2のボリュームデータの厚さ方向に沿った重み付け平均値像などを、第2の仮想投影像として生成する。例えば、第2の手法は、第2のボリュームデータに対して最大値投影を実行することに相当する。また、第2の手法は、第2のボリュームデータに対して高周波領域を強調した重みづけ投影を実行してもよい。第2の仮想投影機能125は、生成された第2の仮想投影像をメモリ10に記憶させる。第2の仮想投影機能125を実現する画像処理回路12または処理回路120は、第2の仮想投影部に相当する。なお、図5ではステップS504における処理とステップS505における処理とは並列で処理するものとして記載されているが、これに限定されず、任意の順序でステップS504における処理とステップS505における処理とが実施されてもよい。
【0039】
第1の手法に関する機能と第2の手法に関する機能との相違は、以下のとおりである。第1の手法は、例えば、第1のボリュームデータにおける低密度組織を強調させる透視投影の手法である。一方、第2の手法は、例えば、第2のボリュームデータにおける高密度組織を強調させる透視投影の手法である。換言すれば、第1の手法は、第2の手法に比べて、第1のボリュームデータにおける乳房組織の低周波成分を強調すること(低周波強調の投影)、例えば比較的低周波成分である腫瘤などの大きい構造体(背景)を強調すること(すなわちコントラストを維持すること)ができる。一方、第2の手法は、第1の手法に比べて、第2のボリュームデータにおける乳房組織の高周波成分(微小石灰化などの病変部位、乳腺、乳管などの組織構造に関する領域など)を強調すること(高周波強調の投影)ができる。
【0040】
(ステップS506)
画像処理回路12は、第3の仮想投影機能127より、メモリ10から第1の仮想投影像と第2の仮想投影像とを読み出す。第3の仮想投影機能127は、第1の仮想投影像と前記第2の仮想投影像とを使用して第3の仮想投影像を生成する。具体的には、第3の仮想投影機能127は、第1の仮想投影像と第2の仮想投影像とを合成することにより、第3の仮想投影像である合成2D画像60を生成する。合成2D画像60は、従来のマンモグラフィ撮影によって得られた画像と同様に、画像1枚で病変を発見するなどの目的で使用される。第3の仮想投影機能127は、メモリ10に第3の仮想投影像を記憶させる。第3の仮想投影機能127を実現する画像処理回路12または処理回路120は、第3の仮想投影部に相当する。なお、第3の仮想投影部は、合成部と称されてもよい。
【0041】
ディスプレイ13は、メモリ10に記憶されている任意の画像データを読み込み、表示する。ディスプレイ13は、モニタまたは画像表示部に相当する。ここで、任意の画像データとは生成されたボリュームデータの断層画像、第1のボリュームデータおよび/または第2のボリュームデータに対するボリュームレンダリングの実行により画像処理回路12で生成された疑似3次元画像、第1のボリュームデータおよび第2のボリュームデータから生成された第1の仮想投影像および第2の仮想投影像、合成2D画像(第3の仮想投影像)などである。
【0042】
なお、ディスプレイ13による表示内容は、画像データに限定されず、各種の情報を表示してもよい。例えば、ディスプレイ13は、入力インターフェース109を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示してもよい。また、ディスプレイ13は、被写体の乳房について収集された各種の画像データを表示する。例えば、ディスプレイ13は、トモシンセシス撮影により収集された複数のスライスを順次表示させる。ディスプレイ13は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ13は、デスクトップ型でもよいし、マンモグラフィ装置90本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、ディスプレイ13は、各種モニタにより実現されてもよい。
【0043】
入力インターフェース9は、画像選択、画像表示、画像処理選択、領域指定などの操作を行う。これらの操作に対応する信号は、システム制御回路7により、画像処理回路12、ディスプレイ13に入力される。例えば、入力インターフェース9は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して、システム制御回路7に出力する。また、入力インターフェース9は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。
【0044】
なお、入力インターフェース9は、システム制御回路7と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース9は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、マンモグラフィ装置90本体とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号をシステム制御回路7へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース9の例に含まれる。入力インターフェース9は、操作部(入力部と称されてもよい)に相当する。
【0045】
(合成2D画像の生成方法)
以下、図5および図6に示した本実施形態における画像データの処理内容の具体的な例として、図1図7を参照しながら第1の実施形態における合成2D画像の生成方法について説明する。図7は、第1の実施形態に係わる画像データの処理過程の一例を示す図である。
【0046】
まず、複数のX線照射(トモシンセシス撮影)によって収集(ステップS501)された複数の投影像30が、メモリ10から読み出される。画像処理回路12は、第1のボリュームデータ生成機能121により、複数の投影像30を用いて、3次元断層画像である第1のボリュームデータ40として再構成する(ステップS502)。具体的な再構成手法としては、シフト加算法、フィルタ補正逆投影法(FBP:Filtered Back Projection)、逐次近似画像再構成法(IR(Iterative Reconstruction)法)、深層学習を用いた学習型画像再構成法などの方法が適用可能である。本処理は、第1のボリューム生成処理に相当する。
【0047】
また、画像処理回路12は、第1のボリュームデータ生成機能121により、断層画像のデータに対して座標変換処理及び補間処理を行うことで、ボクセルデータで構成された3次元画像データ(第1のボリュームデータ40)を発生する処理を含んでもよい。この補間処理は、通常、断層画像データ(XY平面)の解像度と断層画像間(Z方向)の解像度とが等しくなるように行われる。3次元画像データの発生する処理の有無に応じて、後述する画像処理回路12で行われる仮想投影において考慮する仮想的な光線(レイ)の通過領域が適切に計算される。
【0048】
次に、第2のボリュームデータ生成機能122により実現されるボリューム改変処理100の詳細な処理内容を図8に示す。図8は、第1の実施形態に係わるボリューム改変処理100の処理過程の一例を示す図である。
【0049】
具体的には、第2のボリュームデータ生成機能122は、n枚の断層画像からなる第1のボリュームデータ40における各断層像V1(j=1~n)全てについて、以下のボリューム改変処理100をそれぞれ実行することで第2のボリュームデータ41を生成する。ボリューム改変処理100は、第2のボリューム生成処理に相当する。ボリューム改変処理100は、帯域画像取得処理110、ノイズ低減処理111、帯域合成処理113を含む。ボリューム改変処理100は、ステップS503において実施される処理に対応する。以下に、帯域画像取得処理110、ノイズ低減処理111、および帯域合成処理113に関して、個々の処理の詳細を説明する。
【0050】
(帯域画像取得処理)
帯域画像取得処理110は、各断層像V1に対して以下の手順に従って多重解像度分解を行うことで、第1の帯域強調画像群Gおよび第2の帯域強調画像群Lを得る(k=1~m)。ここで、mは、任意の帯域の分割数である。各断層像V1(=G)からGk+1、Lを得るために、帯域画像取得処理110は、以下の式(1)および式(2)の操作を再帰的に行う。
【0051】
【数1】
【0052】
【数2】
【0053】
上の式(1)において、Shrink(・)は、以下の操作を表す。
・解像度(H,W)の画像Gを(H/2,W/2)にダウンサンプリング
・画像にガウシアンフィルタを適用
【0054】
k(=1~m)が大きくなるにつれて、画像に対して次々にダウンサンプリングとガウシアンぼかしがかかる。このため、第1の帯域強調画像群Gは、kが大きいほど、画像サイズが小さく、カットオフ周波数の小さいローパスフィルタのかかった画像となる。すなわち、第1の帯域強調画像群Gは、複数のスライス各々(各断層像V1)に対して低周波成分が強調された低周波強調画像に相当する。換言すれば、第2のボリュームデータ生成機能122は、第1のボリュームデータ40に基づいて、第1のボリュームデータ40における複数のスライス各々に対して低周波成分が強調された低周波強調画像を生成する。
【0055】
ここで、式(2)において、Expand(・)は以下の操作を表す。
・解像度(H/2,W/2)の画像を(H,W)にアップサンプリング
・画像にガウシアンフィルタを適用
【0056】
(k=1~m-1)は、異なるカットオフ周波数のローパスフィルタの差分で表される。このため、L(1~m-1)は、中間の周波数帯が強調されたバンドパフィルタのかかった画像となり、kが小さいほど高周波が強調された画像となる。すなわち、第2のボリュームデータ生成機能122は、第1のボリュームデータ40に基づいて、第1のボリュームデータ40における複数のスライス各々に対して異なる周波数帯が強調された帯域強調画像群を生成する。
【0057】
上述のように、本実施形態においては多重解像度分解の手段として、ローパスフィルタとしてのガウシアンフィルタとバンドパスフィルタとしての異なるガウシアンフィルタのスケール間差分を用いているが、同様の目的を達することのできる別の手法も適用可能である。例えば、異なる帯域の画像群を取得する手法としてフーリエ変換、ウェーブレット変換などの手法を用いることもできる。
【0058】
(ノイズ低減処理)
ノイズ低減処理111は、帯域画像取得処理110によって得られた第2の帯域強調画像群Lについてバイラテラルフィルタを用いてノイズ低減を行い、第3の帯域強調画像群L を得る。バイラテラルフィルタには距離の差に関するノイズパラメータσ、画素値の差に関するノイズパラメータσがあり、画像に応じてそれぞれのノイズパラメータを適切に設定することによってノイズが良好に除去される。ノイズ低減処理111においては、σに関しては画像サイズに応じた値が、σに関しては事前実験によって得られた経験的な値が予め設定されており、kによって個別のノイズパラメータ(σ)でノイズ低減が実行される。
【0059】
本実施形態では上述のようにノイズ低減フィルタとしてバイラテラルフィルタを用いたが、同様の目的を達することのできる別の手法も適用可能である。例えば、ノンローカルミーンフィルタなどのエッジ保存型の非線形フィルタや、画像の全変動(Total Variation)を最小化する手法などがある。このような場合も、推定される画像のノイズや正則化係数などを画像ごとに適切に設定することで、ノイズ低減の効果を高めることができる。
【0060】
また、ノイズ低減処理111のパラメータは、統計モデルなどを用いて決定することもできる。実際の画像はボリュームの断層ごと、多重解像度分解の帯域ごとに異なるノイズ特性を持っているので、各々の画像から動的に推定された量を使用することでより好ましいノイズ低減の効果が期待できる。
【0061】
(帯域合成処理)
帯域合成処理113では、第2の帯域強調画像群Lと比較してノイズの低減した第3の帯域強調画像群L について、各帯域を合成することによって再び一枚の断層画像V2を得る。帯域強調画像群Lに対する帯域合成処理113は、以下の式(3)をk=m-1からk=1まで再帰的に実行する。
【0062】
【数3】
【0063】
式(3)における左辺が、新たな断層画像V2となる。
【0064】
なお、帯域合成処理113は、特定の帯域を強調した処理であってもよい。具体的には、式(3)を修正した以下の式(4)を用いる。
【0065】
【数4】
式(4)に示すように、周波数帯域ごとに個別の強調係数αを第3の帯域強調画像群L に乗じて、新たな断層画像V2を得ることも可能である。第2のボリュームデータ生成機能122は、新たな断層画像V2を断層像の枚数(n)に亘って合成することで、第2のボリュームデータ41を生成する。
【0066】
以上により、画像処理回路12は、第2のボリュームデータ生成機能122により、第1のボリュームデータ40に基づいて、第2のボリュームデータ41を生成する。具体的には、図8に示すように、第2のボリュームデータ生成機能122は、第1のボリュームデータ40に基づいて、第1のボリュームデータ40における複数のスライス各々に対して異なる周波数帯が強調された帯域強調画像群を生成し、生成された帯域強調画像群に基づいて第2のボリュームデータ41を生成する。より詳細には、第2のボリュームデータ生成機能122は、図8に示すように、帯域強調画像群に対して異なるノイズパラメータを使用したノイズ低減処理111を適用し、当該ノイズ低減処理111を適用した帯域強調画像群を用いて、第2のボリュームデータ41を生成する。
【0067】
次に、画像処理回路12は、第1の仮想投影機能123により、メモリ10に記憶されている3次元画像データである第1のボリュームデータ40に関して、仮想的な光線であるレイ上で平均値投影を行い、第1の仮想投影像50を生成する(ステップS504)。この仮想投影は、第1の仮想投影処理に対応する。また、画像処理回路12は、第2の仮想投影機能125により、第2のボリュームデータ41に関して、レイ上で最大値投影を行い、第2の仮想投影像51を生成する(ステップS505)。この仮想投影は、第2の仮想投影処理に対応する。
【0068】
最後に、画像処理回路12は、第3の仮想投影機能127により、得られた第1の仮想投影像50および第2の仮想投影像51を用いて1枚の合成2D画像60を発生させる(ステップS506)。2枚の画像から1枚の画像を発生させる手法としては、各々の画像画素値をピクセルごとに重み付き平均をとる手法や、周波数帯域ごとに特定の重みを乗じて合成する手法、αブレンディングなどが挙げられるが、その他の手法も本発明の技術思想を逸脱しない範囲で同様に適用可能である。例えば、第3の仮想投影機能127は、第1の仮想投影像50と第2の仮想投影像51とのブレンディングの割合を第1の仮想投影像50と第2の仮想投影像51とに適用して、第3の仮想投影像60を生成する。この仮想投影は、第3の仮想投影処理に対応する。ディスプレイ13は、第3の仮想投影像60を表示する。このとき、ディスプレイ13は、第3の仮想投影像60とともに、ブレンディングの割合を表示してもよい。
【0069】
例えば、高周波成分である乳房の繊維や石灰化など(前景)は第2の仮想投影像51に多く含まれ、比較的低周波成分である腫瘤などの大きい構造体(背景)は第1の仮想投影像50に多く含まれる。
【0070】
第1のボリュームデータ40と比較して第2のボリュームデータ41は、上記処理により、ノイズが低減され鮮鋭性が高いという特長がある。このため、第2の仮想投影像51は、投影像30から再構成された第1のボリュームデータ40の最大値投影を行った場合よりもノイズが目立ちにくいというメリットがある。また、第1のボリュームデータ40は、第2のボリュームデータ41と比較したときに、低周波成分の特徴を多く残している。このため、第1のボリュームデータ40に対して平均値投影を行うことによって背景成分の濃淡がより忠実に再現されるというメリットがある。すなわち、これら2種類の仮想投影像を利用することにより、各々の特長を利用した背景の濃淡表現と鮮鋭性に優れた画像を得ることができる。
【0071】
例えば、ブレンディングの割合は、複数の投影像30の特性(例えば、撮影部位、関心領域(Region Of Interest:ROI)における組織の性状(例えば乳房における石灰化が多めとか、腫瘤が多め等)など)と、放射線の照射に関する条件(撮影条件)と、放射線の照射に関する検査オーダ(被写体の検査オーダ、検査目的など)とのうち少なくとも一つにより設定される。具体的には、被写体の乳房における繊維化および/または石灰化に注視するような検査オーダおよび/または撮影条件でトモシンセシス撮影が実行された場合、画像処理回路12は、第2の仮想投影像51に乗ずる割合を、第1の仮想投影像50に乗ずる割合に比べて大きく設定して、第3の仮想投影像60を生成する。また、被写体に関する検査オーダ(または電子カルテなど)において、腫瘤の経過観察などに関する記載がある場合、画像処理回路12は、第2の仮想投影像51に乗ずる割合を、第1の仮想投影像50に乗ずる割合に比べて小さく設定して、第3の仮想投影像60を生成する。
【0072】
なお、上記ブレンディングの割合は、病院、医師などに応じて予め設定されてもよい。また、上記ブレンディングの割合は、トモシンセシス撮影の撮影条件、検査内容などに応じた複数のモードとして、例えばルックアップテーブルなどで予め設定され、入力インターフェース9を介したユーザの選択により設定されてもよい。複数のモードは、例えば、高周波強調モード、低周波強調モード、エッジ強調モード、ノイズ感低減モードなどであるって適宜設定可能である。
【0073】
また、上記ブレンディングの割合は、入力インターフェース9を介したユーザの操作により適宜調整可能である。上記ブレンディングの割合は、例えば、スライダーにおけるノブの位置としてディスプレイ13に表示される。なお、上記ブレンディングの割合は、数値として、ディスプレイ13に表示されてもよい。
【0074】
入力インターフェース9によりブレンディングの割合が調整される(例えば、スライダーにおけるノブの位置が移動される)と、画像処理回路12は、第3の仮想投影機能127により、調整された割合を用いて、第3の仮想投影像60を再度生成する。ディスプレイ13は、調整された割合と、再度生成された第3の仮想投影像60とを表示する。
【0075】
以上に述べた第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置90は、放射線源を移動させ、複数の線源位置から被写体の乳房に放射線を照射することによって収集される複数の投影像に基づいて第1のボリュームデータ40を生成し、複数の投影像に基づいて、第1のボリュームデータ40とは異なる方法で第2のボリュームデータ41を生成し、第1のボリュームデータ40に基づいて、第1の手法により第1の仮想投影像50を生成し、第2のボリュームデータ41に基づいて、第1の手法と異なる第2の手法により第2の仮想投影像51を生成し、第1の仮想投影像50と第2の仮想投影像51とに基づいて第3の仮想投影像60を生成する。
【0076】
また、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置90において、第1の手法は、第1のボリュームデータ40に対して平均値投影を実行、または第1のボリュームデータ40に対して低周波領域を強調した重みづけ投影を実行する。また、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置90において、第2の手法は、第2のボリュームデータ41に対して最大値投影を実行、または第2のボリュームデータ41に対して高周波領域を強調した重みづけ投影を実行する。
【0077】
また、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置90は、第1のボリュームデータ40に基づいて、第2のボリュームデータ41を生成する。例えば、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置90は、第1のボリュームデータ40に基づいて、第1のボリュームデータ40における複数のスライス各々に対して異なる周波数帯が強調された帯域強調画像群を生成し、生成された帯域強調画像群に基づいて第2のボリュームデータ41を生成する。また、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置90は、帯域強調画像群に対して異なるノイズパラメータを使用したノイズ低減処理111を適用し、当該ノイズ低減処理111を適用した帯域強調画像群を用いて、第2のボリュームデータ41を生成する。
【0078】
これらのことから、本実施形態によれば、投影像から再構成した第1のボリュームデータ40と、ボリュームに多重解像度処理を施したノイズ低減ボリュームデータから作成した2種類の仮想投影像から1枚の画像を得ることで、自然な濃淡を残しつつノイズを良好に取り除いた合成2D画像60を得ることができる。
【0079】
また、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置90は、第1の仮想投影像50と第2の仮想投影像51とのブレンディングの割合を第1の仮想投影像50と第2の仮想投影像51とに適用して、第3の仮想投影像60を生成する。例えば、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置90は、複数の投影像の特性と、放射線の照射に関する条件と、放射線の照射に関する検査オーダとのうち少なくとも一つにより、ブレンディングの割合を設定し、第3の仮想投影像60とブレンディングの割合とを表示する。また、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置90は、ブレンディングの割合が調整されると、調整されたブレンディングの割合を用いて第3の仮想投影像60を再度生成し、調整されたブレンディングの割合と、前度生成された第3の仮想投影像60とを表示する。
【0080】
これらのことから、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置90によれば、読影医などのユーザ、病院、投影像における関心領域の性状などに応じて、適切なブレンディングの割合を設定することができる。加えて、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置90によれば、ユーザの所望に応じて、高周波を強調させたり、よりノイズを低減させたりするように、ブレンディングの割合を調整することができる。以上のことから、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置90によれば、被写体の診断および/またはユーザの所望などに応じてブレンディングの割合を調整して第3の仮想投影像60を生成することができる。これにより、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置90によれば、被写体に対する診断のスループットなどを向上させることができる。
【0081】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態における合成2D画像60の生成方法について説明する。合成2D画像は、第3の仮想投影像または第3の投影画像と称されてもよい。第2の実施形態に関するX線撮影台1の構成(図1乃至図3)は、第1の実施形態と同様なので説明は割愛し、合成2D画像60を発生させる図7の処理のうち第1の実施形態と異なる処理を行う構成要素のみを説明する。
【0082】
図9は、第2の実施形態に係わるボリューム改変処理100の処理過程の一例を示す図である。第2の実施形態において、図7に示したボリューム改変処理100は、図9のように帯域画像取得処理110、ノイズ低減処理111、エッジ強調処理112、帯域合成処理113を含む。第1の実施形態と異なる点は、第2の帯域強調画像群Lに対してノイズ低減処理111を行った後、エッジ強調処理112を行って第3の帯域強調画像群L を得る点である。
【0083】
(エッジ強調処理)
エッジ強調処理112では、ノイズが低減された帯域強調画像群の各レベルk(k=1~m)について、画像内の全ての画素についてエッジらしさに基づいた重みを計算し、元の画像に重みを重畳することによってエッジの強調された帯域強調画像群を得る。エッジらしさを求める手法として、画像のx-y方向それぞれについてソーベルフィルタやブリューウィットフィルタを施した画像の二乗和を取って画素値の勾配を計算する方法、またはラプラシアンフィルタやLoGフィルタなどの2次微分を取る方法、キャニーのエッジ検出器、ヘッセ行列の固有値を利用したリッジ検出フィルタなどが利用可能である。上記手法のうち、出力がバイナリ値となるキャニーのエッジ検出器やリッジ検出フィルタなどを用いた場合は、計算されたエッジらしさに適宜ガウシアンフィルタなどの平滑化を施すことがより好ましい。
【0084】
図9に示すように、画像処理回路12は、第2のボリュームデータ生成機能122により、帯域強調画像群の各周波数帯に対して画像のエッジを強調するエッジ強調処理112を適用し、エッジ強調処理112を適用した帯域強調画像群を用いて、第2のボリュームデータ41を生成する。より詳細には、第2のボリュームデータ生成機能122は、図9に示すように、第2の帯域強調画像群Lに対して異なるノイズパラメータを使用したノイズ低減処理111を適用し、ノイズ低減処理111を適用した帯域強調画像群の各周波数帯に対して画像のエッジを強調するエッジ強調処理112を適用し、エッジ強調処理112を適用した帯域強調画像群を(第3の帯域強調画像群L )用いて、第2のボリュームデータ41を生成する。
【0085】
以上に述べた第2の実施形態に係るマンモグラフィ装置90は、帯域強調画像群の各周波数帯に対して画像のエッジを強調するエッジ強調処理112を適用し、エッジ強調処理112を適用した帯域強調画像群を用いて、第2のボリュームデータ41を生成する。具体的には、第2の実施形態に係るマンモグラフィ装置90は、帯域強調画像群に対して異なるノイズパラメータを使用したノイズ低減処理111を適用し、ノイズ低減処理111を適用した帯域強調画像群の各周波数帯に対して画像のエッジを強調するエッジ強調処理112を適用し、エッジ強調処理112を適用した帯域強調画像群を用いて、第2のボリュームデータ41を生成する。
【0086】
上記のように、第2の実施形態に係るマンモグラフィ装置90によれば、第1の実施形態の処理に加えてエッジ強調処理112を施すことで、得られる第3の帯域強調画像群L は高周波成分がより際立った画像となる。結果として得られる第1の仮想投影像50および第2の仮想投影像51を用いた合成2D画像60は、乳房組織の鮮鋭性が増した画像となる。
【0087】
以上、本実施形態によれば、ノイズ低減とエッジ強調処理112を含む多重解像度処理を施したボリュームによって仮想投影像を発生させることで、鮮鋭性に優れた合成2D画像60を得ることができる。
【0088】
(第3の実施形態)
以下、第2の実施形態における合成2D画像(第3の仮想投影像)60について説明する。第3の実施形態に関するX線撮影台1の構成(図1乃至図3)は、第1の実施形態と同様なので説明は割愛し、合成2D画像60を発生させる図7の処理のうち第1の実施形態と異なる処理を行う構成要素のみを説明する。
【0089】
図10は、第3の実施形態に係わるボリューム改変処理100の処理過程の一例を示す図である。第3の実施形態において、図7に示したボリューム改変処理100は、図10のように帯域画像取得処理110、ノイズ低減処理111、帯域合成処理113を含む。第1の実施形態と異なる点は、ノイズ低減処理111を行った帯域強調画像群L (k=1~m-1)に対して第1の帯域強調画像群Gの最も小さいサイズの画像Gを加えたものを第3の帯域強調画像群L としている点である。第1の帯域強調画像の中でGは、元の画像V1に対して(m-1)回ぼかしフィルタをかけたものである。このため、第1の帯域強調画像におけるGは、最もカットオフ周波数の低い画像となっている。これを第3の帯域強調画像群L に取り込むことにより、帯域合成処理113を経て得られる第2のボリュームデータ41及び合成2D画像60は、第1の実施形態の場合と比較して背景の濃淡表現がより一層忠実なものとなる。
【0090】
換言すれば、画像処理回路12は、第2のボリュームデータ生成機能122により、第1のボリュームデータ40に基づいて、複数のスライス各々に対して低周波成分が強調された低周波強調画像Gを生成する。次いで、第2のボリュームデータ生成機能122は、低周波強調画像Gと帯域強調画像群とを(第3の帯域強調画像群L )用いて、第2のボリュームデータ41を生成する。
【0091】
以上、本実施形態によれば、第1の帯域強調画像の最低周波成分Gを含んだ帯域合成処理113によって得たボリュームによって仮想投影像を発生させることで、背景の濃淡表現に優れた合成2D画像60を得ることができる。
【0092】
(第4の実施形態)
以下、第4実施形態における合成2D画像(第3の仮想投影像)60の生成方法について説明する。第4の実施形態に関するX線撮影台1の構成(図1乃至図3)は第1の実施形態と同様なので説明は割愛し、合成2D画像60を発生させる図7の処理のうち第1の実施形態と異なる処理を行う構成要素のみを説明する。
【0093】
第1乃至第3の実施形態においては、第1のボリュームデータ40の各断層画像に対して画像処理を施すことによって第2のボリュームデータ41を発生させていたが、第4の実施形態においては第2のボリュームデータ41の発生方法が異なる。本実施形態では、図11に示すように、画像処理回路12は、第2のボリュームデータ生成機能122により、投影像30から直接、第2のボリュームデータ41を発生させる。
【0094】
第2のボリュームデータ41の発生において、第1のボリュームデータ40を発生させる手法と異なる再構成手法が選択されてもよいし、座標補完の次数、逐次近似法の繰り返し回数、投影像にかけるフィルタ特性などの再構成時のパラメータが変更されてもよい。また、逐次近似法の繰り返し計算に用いる正則化項を変更したものでもよい。すなわち、第2のボリュームデータ生成機能122は、第1のボリュームデータ40とは異なる手法もしくは異なるパラメータを用いて複数の投影像を再構成することで、第2のボリュームデータ41を生成する。
【0095】
図11に示すように、画像処理回路12は、第1の仮想投影機能123により、レイ方向の重み付き平均値投影によって第1の仮想投影像50を生成する。また、画像処理回路12は、第2の仮想投影機能125により、レイ方向の重み付き平均値投影によって第2の仮想投影像51を得る。重みについては、異なる再構成手法で生成したボリューム毎の特徴に応じて適宜変更可能である。
【0096】
つまり、第1から第3の実施形態においては、第1のボリュームデータ40に対して画像処理を行うことによって鮮鋭性の優れた第2のボリュームデータ41を発生させていたが、本実施形態では再構成そのものの特性を、第1のボリュームデータ40の再構成時から変えることにより、第2のボリュームデータ41の鮮鋭性を向上させている。
【0097】
以上、本実施形態によれば、異なる再構成の手段によって2種類のボリュームデータを発生させ、それぞれの特徴に応じた仮想投影像を発生させることで、鮮鋭性と背景の濃淡表現に優れた合成2D画像60を得ることができる。
【0098】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明は上記特定の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で実施形態の修正をすることができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
【0099】
例えば、第3の実施形態の処理に第2の実施形態に記載のエッジ強調処理112を併用することも可能である。これにより、乳房組織の鮮鋭性と背景の濃淡表現が各々より好ましく改善された合成2D画像60を得ることが可能となる。
【0100】
例えば、図12乃至図14は、実施形態におけるその他の投影手段の一例について示した図である。図12図14に示すように、第1のボリュームデータ40および第2のボリュームデータ41から第1の仮想投影像50と第2の仮想投影像51を発生させる投影手段の両方もしくはいずれかに、重み付き平均値投影を用いることも可能である。その他、レイ方向の極大値を選択する手法や統計モデルに基づいた投影手法など、本発明の要旨を逸脱しない範囲で投影手法を選択することができる。
【0101】
上記第1乃至第4の実施形態の応用例として、第1乃至第4の実施形態における技術的思想は、画像処理装置(医用画像処理装置と称されてもよい。)により実現されてもよい。図15は、画像処理装置により実現される画像生成装置101の構成の一例を示す図である。図15に示すように、画像生成装置101は、入力インターフェース9、メモリ10、処理回路120、ディスプレイ13、通信インターフェース14を備えている。画像生成装置101において、通信インターフェース14を除く他の構成要素は、マンモグラフィ装置90に記載の構成要素と同様なため、説明は省略する。
【0102】
通信インターフェース14は、放射線診断装置により収集された複数の投影像30を、ネットワークを介して放射線診断装置から取得する。通信インターフェース14は、取得した複数の投影像30をメモリ10に記憶させる。画像生成装置101による各種機能、処理、画像データの処理過程、および効果は、第1乃至第4の実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0103】
本実施形態における技術的思想を画像生成方法で実現する場合、当該画像生成方法は、放射線源を移動させ、複数の線源位置から被写体の乳房に放射線を照射することによって収集された複数の投影像を用いて、複数の投影像に基づいて再構成された第1のボリュームデータ40を生成する第1のボリューム生成処理と、第1のボリュームデータ40とは異なる方法で第2のボリュームデータ41を生成する第2のボリューム生成処理と、第1のボリュームデータ40から第1の手法により第1の仮想投影像50を生成する第1の仮想投影処理と、第2のボリュームデータ41から第1の手法と異なる第2の手法により第2の仮想投影像51を生成する第2の仮想投影処理と、第1の仮想投影像50と第2の仮想投影像51とに基づいて第3の仮想投影像60を生成する第3の仮想投影処理と、を有する。画像データの処理過程、および効果は、第1乃至第4の実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0104】
実施形態における技術的思想を画像生成プログラムで実現する場合、当該画像生成プログラムは、コンピュータに、放射線源を移動させ、複数の線源位置から被写体の乳房に放射線を照射することによって収集される複数の投影像を用いて、複数の投影像に基づいて再構成された第1のボリュームデータ40を生成する第1のボリューム生成処理と、第1のボリュームデータ40とは異なる方法で第2のボリュームデータ41を生成する第2のボリューム生成処理と、第1のボリュームデータ40から第1の手法により第1の仮想投影像50を生成する第1の仮想投影処理と、第2のボリュームデータ41から第1の手法と異なる第2の手法により第2の仮想投影像51を生成する第2の仮想投影処理と、第1の仮想投影像50と第2の仮想投影像51とに基づいて第3の仮想投影像60を生成する第3の仮想投影処理と、を実現させる。
【0105】
例えば、各種放射線診断装置のコンピュータまたは画像処理装置などのワークステーションのコンピュータに画像生成プログラムをインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても、画像データの処理過程を実現することができる。このとき、コンピュータに当該処理を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。また、画像評価プログラムの頒布は、上記媒体に限定されず、例えば、インターネットを介したダウンロードなど、電気通信機能を用いて頒布されてもよい。画像生成プログラムにおける処理手順および効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0106】
以上説明した少なくともひとつの実施形態等によれば、鮮鋭性と背景の濃淡表現との優れた合成2D画像60を生成し、効率・精度の良い診断を行うことができる。
【0107】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0108】
1 X線撮影台
2 X線管
3 高電圧発生器
4 支持機構
5 平面検出器
6 データ収集回路
7 システム制御回路
8 撮影制御回路
9 入力インターフェース
10 メモリ
12 画像処理回路
13 ディスプレイ
14 通信インターフェース
30 投影像
40 第1のボリュームデータ
41 第2のボリュームデータ
50 第1の仮想投影像
51 第2の仮想投影像
60 第3の仮想投影像(合成2D画像)
90 マンモグラフィ装置
100 ボリューム改変処理
101 画像生成装置
110 帯域画像取得処理
111 ノイズ低減処理
112 エッジ強調処理
113 帯域合成処理
120 処理回路
121 第1のボリュームデータ生成機能
122 第2のボリュームデータ生成機能
123 第1の仮想投影機能
125 第2の仮想投影機能
127 第3の仮想投影機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15