(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155050
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】光共振器および外部共振器型レーザー装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/05 20060101AFI20241024BHJP
G01N 21/65 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01N21/05
G01N21/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069430
(22)【出願日】2023-04-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超高圧水素インフラ本格普及技術研究開発事業/水素ステーションのコスト低減等に関連する技術開発/半導体レーザーを用いた次世代水素分析装置の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000144991
【氏名又は名称】株式会社四国総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】市川 祐嗣
(72)【発明者】
【氏名】朝日 一平
【テーマコード(参考)】
2G043
2G057
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA11
2G043BA13
2G043BA17
2G043CA01
2G043DA05
2G043EA03
2G043GA03
2G043GA04
2G043GB01
2G043GB03
2G043GB18
2G043GB21
2G043HA01
2G043HA03
2G043JA02
2G043JA03
2G043KA02
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2G057AA02
2G057AB01
2G057AB04
2G057AB08
2G057AC03
2G057BA05
2G057BB08
2G057DA03
2G057DB01
2G057DB02
2G057DB05
2G057GA10
(57)【要約】
【課題】検出対象ガスの気密性を維持しながらも、反射器の角度を簡易に調整することが可能な光共振器および外部共振器型レーザー装置を提供する。
【解決手段】レーザー素子11から発せられたレーザー光が入射される第1の反射器230と、第1の反射器230と対向して設けられ、レーザー素子11へ反射光をフィードバックする第2の反射器260と、両端部に第1の反射器230および第2の反射器260が配置される筒体21と、筒体21にガスを導入するガス導入口220および筒体21内のガスを排出するガス排出口250と、第1の反射器230が取り付けられた第1の可動部材23と、第2の反射器260が取り付けられた第2の可動部材26と、第1および第2の可動部材23,26の傾きを調整するアライメント機構241~243,271~273と、を備え、筒体21が、一対の弾性部材28,29を介して第1および第2の可動部材23,26により気密に挟持される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー素子から発せられたレーザー光が入射される第1の反射器と、
前記第1の反射器と対向して設けられ、前記レーザー素子へ反射光をフィードバックする第2の反射器と、
両端部に前記第1の反射器および前記第2の反射器が配置される筒体と、
前記筒体にガスを導入するガス導入口および前記筒体内のガスを排出するガス排出口と、
前記第1の反射器が取り付けられた第1の可動部材と、
前記第2の反射器が取り付けられた第2の可動部材と、
前記第1および第2の可動部材の傾きを調整するアライメント機構と、を備え、
前記筒体が、一対の弾性部材を介して前記第1および第2の可動部材により気密に挟持される、光共振器。
【請求項2】
前記アライメント機構が、前記第1の可動部材の傾きを調整する第1の傾き調整機構と、前記第2の可動部材の傾きを調整する第2の傾き調整機構と、とを有し、
前記第1の可動部材よりも端側に、前記第1の傾き調整機構を有する第1の端部部材を有し、
前記第2の可動部材よりも端側に、前記第2の傾き調整機構を有する第2の端部部材を有する、請求項1に記載の光共振器。
【請求項3】
前記第1の傾き調整機構が、前記第1の可動部材を前記レーザー光の光軸に沿う方向に押圧することで、前記第1の反射器の傾きを調整する複数の第1の押圧部材を備え、前記第2の傾き調整機構が、前記第2の可動部材を前記レーザー光の光軸に沿う方向に押圧することで、前記第2の反射器の傾きを調整する複数の第2の押圧部材を備える、請求項2に記載の光共振器。
【請求項4】
前記第1の可動部材の前記複数の第1の押圧部材により押圧される面に、前記第1の押圧部材よりも高硬度の第1の保護部材が配置されており、
前記第2の可動部材の前記複数の第2の押圧部材により押圧される面に、前記第2の押圧部材よりも高硬度の第2の保護部材が配置されている、請求項3に記載の光共振器。
【請求項5】
前記第1の傾き調整機構が、前記複数の第1の押圧部材の挿入位置を調整する複数の第1の調整部材と、前記複数の第1の調整部材の挿入位置を固定する第1ロック機構を備え、
前記第2の傾き調整機構が、前記複数の第2の押圧部材の挿入位置を調整する複数の第2の調整部材と、前記複数の第2の調整部材の挿入位置を固定する第2ロック機構を備える、請求項3に記載の光共振器。
【請求項6】
前記アライメント機構が、前記第1の可動部材の、光軸と直交する方向における位置を調整する第1の位置調整機構と、前記第2の可動部材の、光軸と直交する方向における位置を調整する第2の位置調整機構と、とを有し、
前記第1の位置調整機構が、前記第1の可動部材を前記光軸と直交する方向に押圧することで、前記第1の反射器の、光軸と直交する方向における位置を調整する第3の押圧部材を備え、
前記第2の位置調整機構が、前記第2の可動部材を前記光軸と直交する方向に押圧することで、前記第2の反射器の、光軸と直交する方向における位置を調整する第4の押圧部材を備える、請求項2に記載の光共振器。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の光共振器と、
前記光共振器に入射するレーザー光を発するレーザー素子と、
前記光共振器に導入されたガスと、レーザー光とが作用して発生した特定波長の光を検出する検出装置と、を有する、外部共振器型レーザー装置であって、
前記光共振器と前記検出装置との間に、前記筒体を透過した前記特定波長の光を収束して前記検出装置に入射させる光学系を有する、外部共振器型レーザー装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の光共振器と、
一方の端面に無反射層が形成され、他方の端面に全反射層が形成されたレーザー素子と、
前記レーザー素子と前記光共振器との間に設けられた波長選択フィルタと、
を備える外部共振器型レーザー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光共振器および外部共振器型レーザー装置に関し、特に、特定のガスを検出するための光共振器および外部共振器型レーザー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光共振器を利用したレーザー装置が知られている。たとえば、特許文献1では、レーザー素子から出力されたレーザー光が、レーザー素子の端面と第1の反射器との間で反射を繰り返す第1の共振部と、第1の反射器を通過したレーザー光が、第1の反射器と第2の反射器との間で反射を繰り返す第2の共振部とを有し、第2の共振部に分析サンプルを導入し、分析サンプルに共振したレーザー光を当て、生じた光相互作用を検出することで、分析サンプルを分析する外部共振器型レーザー装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、水素ステーションでの水素ガスの品質管理用途などのため、小型で微量のガス成分も検出可能なガス検出装置が希求されている。このようなガス検出装置において、外部共振器を用いることで、レーザー光を、検出対象ガスが導入される2つの反射器の間の空間内で反射により往復させることができ、実効光路長が実際の光路長よりも長くすることができるため、小型でありながらも微量のガスを検出することが可能となる。しかしながら、このようなガス検出装置は、設置時に微妙な調整が必要であり、また長期間にわたり使用すると、外部共振器を構成する両端の反射器の角度などがずれてしまい、その結果、レーザー光の共振が適切に行えず、検出対象ガスを適切に検出できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、検出対象ガスの気密性を維持しながらも、反射器の角度を含む位置を簡易に調整することが可能な光共振器および外部共振器型レーザー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光共振器は、レーザー素子から発せられたレーザー光が入射される第1の反射器と、前記第1の反射器と対向して設けられ、前記レーザー素子へ反射光をフィードバックする第2の反射器と、両端部に前記第1の反射器および前記第2の反射器が配置される筒体と、前記筒体にガスを導入するガス導入口および前記筒体内のガスを排出するガス排出口と、前記第1の反射器が取り付けられた第1の可動部材と、前記第2の反射器が取り付けられた第2の可動部材と、前記第1および第2の可動部材の傾きを調整するアライメント機構と、を備え、前記筒体が、一対の弾性部材を介して前記第1および第2の可動部材により気密に挟持される。
上記光共振器において、前記アライメント機構が、前記第1の可動部材の傾きを調整する第1の傾き調整機構と、前記第2の可動部材の傾きを調整する第2の傾き調整機構と、を有し、前記第1の可動部材よりも端側に、前記第1の傾き調整機構を有する第1の端部部材を有し、前記第2の可動部材よりも端側に、前記第2の傾き調整機構を有する第2の端部部材を有する構成とすることができる。
上記光共振器において、前記第1の傾き調整機構が、前記第1の可動部材を前記レーザー光の光軸に沿う方向に押圧することで、前記第1の反射器の傾きを調整する複数の第1の押圧部材を備え、前記第2の傾き調整機構が、前記第2の可動部材を前記レーザー光の光軸に沿う方向に押圧することで、前記第2の反射器の傾きを調整する複数の第2の押圧部材を備える構成とすることができる。
上記光共振器において、前記第1の可動部材の前記複数の第1の押圧部材により押圧される面に、前記第1の押圧部材よりも高硬度の第1の保護部材が配置されており、前記第2の可動部材の前記複数の第2の押圧部材により押圧される面に、前記第2の押圧部材よりも高硬度の第2の保護部材が配置されている構成とすることができる。
上記光共振器において、前記第1の傾き調整機構が、前記複数の第1の押圧部材の挿入位置を調整する複数の第1の調整部材と、前記複数の第1の調整部材の挿入位置を固定する第1ロック機構を備え、前記第2の傾き調整機構が、前記複数の第2の押圧部材の挿入位置を調整する複数の第2の調整部材と、前記複数の第2の調整部材の挿入位置を固定する第2ロック機構を備える構成とすることができる。
上記光共振器において、前記アライメント機構が、前記第1の可動部材の、光軸と直交する方向における位置を調整する第1の位置調整機構と、前記第2の可動部材の、光軸と直交する方向における位置を調整する第2の位置調整機構と、とを有し、前記第1の位置調整機構が、前記第1の可動部材を前記光軸と直交する方向に押圧することで、前記第1の反射器の、光軸と直交する方向における位置を調整する第3の押圧部材を備え、前記第2の位置調整機構が、前記第2の可動部材を前記光軸と直交する方向に押圧することで、前記第2の反射器の、光軸と直交する方向における位置を調整する第4の押圧部材を備える構成とすることができる。
本発明の第1の観点に係る外部共振器型レーザー装置は、上記光共振器と、前記光共振器に入射するレーザー光を発するレーザー素子と、前記光共振器に導入されたガスと、レーザー光とが作用して発生した特定波長の光を検出する検出装置と、を有する、外部共振器型レーザー装置であって、前記光共振器と前記検出装置との間に、前記筒体を透過した前記特定波長の光を収束して前記検出装置に入射させる光学系を有する。
本発明の第2の観点に係る外部共振器型レーザー装置は、上記光共振器と、一方の端面に無反射層が形成され、他方の端面に全反射層が形成されたレーザー素子と、前記レーザー素子と前記光共振器との間に設けられた波長選択フィルタと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、検出対象ガスの気密性を維持しながらも、反射器の角度を簡易に調整することが可能な光共振器および外部共振器型レーザー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る外部共振器型レーザー装置を示す構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る光共振器の側面断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る光共振器の側面断面の拡大図である。
【
図4】(A)は、第1実施形態に係る光共振器の正面図であり、(B)は、第1実施形態に係る光共振器の背面図である。
【
図6】第1実施形態に係る外部共振器型レーザー装置で、空気成分を検出した結果を示すグラフである。
【
図7】第1実施形態に係る外部共振器型レーザー装置で、水素ガスに混入した酸素ガス、および、アルゴンガスに混入したアンモニアガスを検出した結果を示すグラフである。
【
図8】第2実施形態に係る外部共振器型レーザー装置を示す構成図である。
【
図9】第3実施形態に係る外部共振器型レーザー装置の平面断面図である。
【
図10】第3実施形態に係る外部共振器型レーザー装置の側面断面図である。
【
図11】第3実施形態に係る光共振器の平面断面図である。
【
図12】(A)は、第3実施形態に係る光共振器の正面図であり、(B)は、第3実施形態に係る光共振器の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図に基づいて、本発明に係る光共振器および外部共振器型レーザー装置の実施形態を説明する。
【0010】
《第1実施形態》
図1は、第1実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1を示す構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1は、主な構成として、半導体レーザー素子11と、光共振器20と、複数の検出装置30とを有している。外部共振器型レーザー装置1は、半導体レーザー素子11からレーザー光を射出し、射出したレーザー光を光共振器20内に導入した後、光共振器20でレーザー光を共振させながら、光共振器20内の測定対象空間Sに導入したガスに共振したレーザー光を照射することで、レーザー光がガスと衝突して生じた特定の波長の光(本実施形態ではラマン散乱光)を、検出装置30で検出する構成となっている。
【0011】
なお、本実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1では、たとえばSO2,CO2,O2,CO,N2,H2S,CH4,NH3,H2などを含むガスを導入し、レーザー光を照射することができる。また、本発明は、導入したガスにレーザー光を照射するだけではなく、導入したガスにレーザー光を照射して生じる特定の波長の光を検出することで特定のガスを検出するガス検出装置、検出した特定の波長の光の強度に基づいてガスの濃度を測定するガス測定装置、測定対象空間に存在するガスの種類を特定するガス特定装置、測定対象空間において検出対象とするガスが存在するかを監視する監視装置にも適用することができる。以下に、第1実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1の各構成について説明する。
【0012】
半導体レーザー素子11は、青紫波長域(たとえば416nm付近)のレーザー光を光共振器20に向けて射出する。このような、青紫波長域の半導体レーザー素子11として、たとえば、市販されているGaN系の半導体レーザーやGaInN系の半導体レーザーを用いることができる。また、本実施形態に係る半導体レーザー素子11は、レーザー光の射出側(光共振器20側)と反対側に位置する端面111にレーザー光を反射するための反射コーティングが施されており、一方、レーザー光の射出側(光共振器20側)に位置する端面112にレーザー光の反射を防止するためのコーティングが施されている。半導体レーザー素子11から出力されたレーザー光は、コリメートレンズ12で平行化あるいは収束された後に、バンドパスフィルタ13を経由して、光共振器20内へと導入される。なお、バンドパスフィルタ13は、所望する青紫波長域のレーザー光を透過し、その他の波長のレーザー光を遮断する機能を有する。
【0013】
図2は、第1実施形態に係る光共振器20の側面断面図であり、
図3は、光共振器20の側面断面の部分拡大図である。なお、
図2および
図3は、
図1のII-II線に沿う側面断面図である。また、
図4(A)は、第1実施形態に係る光共振器20の正面図であり、
図4(B)は、第1実施形態に係る光共振器20の背面図である。さらに、
図5は、
図2のV-V線に沿う正面断面図である。
【0014】
図2に示すように、本実施形態に係る光共振器20は、大きく分けて7つの部品から構成されている。具体的に、光共振器20は、筒体21と、第1の環状部材22と、第1の可動部材23と、第1の端部部材24と、第2の環状部材25と、第2の可動部材26と、第2の端部部材27とを有する。また、本実施形態において、光共振器20は、4つのOリング28,29,210,211を有している。
【0015】
ここで、
図1および
図2に示すように、半導体レーザー素子11から射出されたレーザー光は、第1の端部部材24および第1の可動部材23に設けられた貫通孔240,231を通過して、第1の反射器230まで到達する。第1の反射器230まで到達したレーザー光の大部分は第1の反射器230により反射されて、第1の反射器230と半導体レーザー素子11の端面111との間で往復し共振する。そのため、
図1に示すように、本実施形態において、第1の反射器230と半導体レーザー素子11の端面111との間の空間が第1の共振部として機能することとなる。また、半導体レーザー素子11から第1の反射器230へと到達したレーザー光の一部は、第1の反射器230を通過して、筒体21内部の内部空間Sを進み、第2の反射器260まで到達した後に、第2の反射器260により大部分が反射され、第1の反射器230と第2の反射器260との間で往復することで共振する。そのため、
図1に示すように、本実施形態において、第1の反射器230と第2の反射器260との間の空間が第2の共振部として機能することとなる。特に、本実施形態では、第1および第2の共振部においてレーザー光を増強することで、第2の共振部においては、レーザー光の強度が、半導体レーザー素子11から射出した際のレーザー光の強度に対して2000倍以上(たとえば100Wを超える)の強度まで増強することができる。なお、第2の反射器260へと到達したレーザー光の一部は、第2の反射器260を通過し、第2の可動部材26および第2の端部部材27に設けられた貫通孔261,270を通過した後に、ビームディフューザー40により吸収される。以下において、光共振器20を構成する各部材について説明する。
【0016】
筒体21は、第1の反射器230と、第2の反射器260との間に配置される筒状の部材であり、中空の内部はガスセルを構成する。筒体21の内部空間Sにおいては、第1の反射器230および第2の反射器260でレーザー光が繰り返し反射され、レーザー光の共振が行われる。また、
図2に示すように、筒体21の内部空間Sは、第1の環状部材22のガス導入口220と連通しており、ガス導入口220から導入された検出対象ガスが流通可能となっている。特に、筒体21では、筒体21の長手方向において、レーザー光が往復するとともに、検出対象ガスが流通するため、レーザー光と検出対象ガスとが衝突する機会が増え、レーザー光が検出対象ガスと衝突することで生じるラマン散乱光を検出しやすくなっている。また、筒体21は、主にガラスによって構成されており、レーザー光が検出対象ガスと衝突することで生じるラマン散乱光を、筒体21の側面側に配置された検出装置30で検出可能となっている。なお、筒体21は、内部側面または外部側面にローパスフィルタを設ける構成とすることもできる。また、筒体21は、弾性部材であるOリング210,211を介して、第1の環状部材22および第2の環状部材25に隙間なく挟持されるため、筒体21と、第1の環状部材22および第2の環状部材25との間から検出対象ガスが漏出してしまうことを防止し、気密性を担保することができる。
【0017】
第1の環状部材22は、内部に第1の可動部材23が収容できるように、環状に形成された金属部材である。第1の環状部材22は、
図3に示すように、環の内径が筒体21の外径よりも大きい第1環状部221と、環の内径が第1環状部221よりも小さく、かつ、筒体21の外径よりも小さい第2環状部222とを有している。さらに、第1の環状部材22は、ガス導入口220を有しており、ガス導入口220から検出対象ガスを含むガスを筒体21内に導入することが可能となっている。また、第1の環状部材22と同様に、第2の環状部材25は、内部に第2の可動部材26が収容できるように、環状に形成された金属部材である。第2の環状部材25も、
図3に示すように、環の内径が筒体21の外径よりも大きい第1環状部251と、環の内径が第1環状部251よりも小さく、かつ、筒体21の外径よりも小さい第2環状部252とを有している。さらに、第2の環状部材25は、ガス排出口250を有しており、筒体21内のガスをガス排出口250から排出することが可能となっている。本実施形態においては、ガス導入口220およびガス排出口250は共に筒体21と連通しており、第1の環状部材22のガス導入口220から導入されたガスは、筒体21を流通し、第2の環状部材25のガス排出口250から排出されることとなる。
【0018】
第1の可動部材23は、本体部232と、フランジ部233とを有し、第1の可動部材23を、本体部232側から第1の環状部材22の環内に挿入することで、第1の可動部材23と第1の環状部材22とを嵌め合わせることができる。具体的には、
図3に示すように、第1の環状部材22の第1環状部221の内径が、第1の可動部材23のフランジ部233の外径よりも大きく構成されており、また、第1の環状部材22の第2環状部222の内径が、第1の可動部材23の本体部232の外径よりも大きく構成されている。そのため、第1の可動部材23は、フランジ部233と第1環状部221との間、および、本体部232と第2環状部222との間に一定の隙間ができた状態で、第1の環状部材22内で保持されることとなる。特に、本実施形態では、第1の可動部材23のフランジ部233の外径が本体部232の外径よりも大きく、フランジ部233と本体部232との間に段差面234が形成されているとともに、第1の環状部材22の第1環状部221の外径が第2環状部222の外径よりも大きく、第1環状部221と第2環状部222の外径との間にも段差面223が形成されている。そして、第1の可動部材23の段差面234と、第1の環状部材22の段差面223とが対向しており、対向する段差面234と段差面223との間に弾性部材であるOリング28が配置される。また、本実施形態では、後述するアライメント調節機構により、第1の可動部材23がOリング28を押圧するため、Oリング28が第1の可動部材23の段差面234と第1の環状部材22の段差面223とで圧迫された状態で挟持され、光共振器20の内部空間Sの気密性を担保する。同様に、第2の可動部材26も、本体部262と、フランジ部263とを有し、本体部262側から第2の環状部材25の環内に挿入することで、第2の可動部材26と第2の環状部材25とを嵌め合わせることができる。また、第2の可動部材26も、フランジ部263と第2の環状部材25の第1環状部251との間、および、本体部262と第2の環状部材25の第2環状部252との間に一定の隙間ができた状態で、第2の環状部材25内で保持される。さらに、第2の可動部材26の段差面264と第2の環状部材25の段差面253との間にOリング29が配置されるとともに、弾性部材であるOリング29が段差面264と段差面253とに圧迫された状態で挟持されることで、光共振器20の気密性が担保される。
【0019】
また、第1の可動部材23では、第1の反射器230が本体部232に取り付けられている。具体的には、第1の可動部材23の本体部232は凹部235を有しており、凹部235の中に第1の反射器230が嵌め込まれている。本実施形態では、凹部235内において、第1の反射器230を両面から挟むように、第1の反射器230の両面側に、第1の反射器230の外周縁に沿って一対のOリングが設置されている。第1の可動部材23では、凹部235と連通する貫通孔231が形成されているが、一対のOリングが、第1の反射器230を挟持しながら隙間なく配置されることで、当該Oリングと第1の反射器230とで、光共振器20内の気密を保っている。同様に、第2の可動部材26では、第2の反射器260が本体部262の凹部265の中に嵌め込まれている。また、第2の可動部材26でも、凹部265内において、第2の反射器260を両面から挟むように、第2の反射器260の両面側に、第2の反射器260の外周縁に沿って一対のOリングが設置されており、これにより、第2の反射器260が固定されるとともに、光共振器20の気密が保たれている。
【0020】
また、本実施形態において、第1の反射器230および第2の反射器260は、反射ミラーであるが、ミラーに限定されずに、たとえば、光学フィルタ、ガラス基板などの光学研磨された部材を用いることができる。ただし、第1の反射器230は、第2の反射器260よりも反射率の少ない部材とされる。たとえば、本実施形態では、第1の反射器230として、反射率が99.99%の反射ミラーを用いることができ、第2の反射器260として、反射率が99.999%の反射ミラーを用いることができる。なお、第1の反射器230および第2の反射器260は、反射率が100%でないため、一部のレーザー光を反射させずに透過させる性質を有している。また、本実施形態では、第1の反射器230の反射率が、第2の反射器260の反射率よりも小さいため、第1の反射器230を透過するレーザー光の割合が高く、その結果、
図1に示す第2の共振部においてレーザー光を増強することが可能となっている。
【0021】
第1の端部部材24は、第1の環状部材22に脱着可能となっており、
図2に示すように、第1の環状部材22とともに、第1の可動部材23を保持することができる。第1の端部部材24は、
図3および
図4に示すように、半導体レーザー素子11から射出されたレーザー光を通過させるための貫通孔240に加えて、傾き調節ネジ(押圧部材)241~243を有する。傾き調節ネジ241~243は、第1の端部部材24の本体を貫通し、第1の可動部材23の押圧面236に当接可能となっている。また、傾き調節ネジ241~243は、挿入位置(挿入の深さ)が調整可能となっており、傾き調節ネジ241~243を押圧面236側に挿入するほど、傾き調節ネジ241~243が押圧面236を押圧する圧力が高くなり、Oリング28の変形量を大きくさせることができる。これにより、たとえば、
図4において上部に位置する傾き調節ネジ241のみを押圧面236側に深く挿入させた場合には、傾き調節ネジ241の先端と当接する位置において、第1の可動部材23がOリング28を押し潰し、第1の反射器230を下方向に傾けることが可能となる。また、本実施形態では、
図4および
図5に示すように、第1の可動部材23の左下側および右下側にも、傾き調節ネジ242,243がそれぞれ設けられているため、3本の傾き調節ネジ241~243により、第1の反射器230の傾きを、上下左右において調整することができる。このように、本実施形態では、傾き調節ネジ241~243が、第1の反射器230の傾きを調整するためのアライメント調整機構として機能する。
【0022】
また、本実施形態では、
図5に示すように、第1の環状部材22にも、アライメント機構として、位置調節ネジ224,225および付勢部材226が設けられている。位置調節ネジ224,225は、第1の可動部材23の側面237を押圧することで、第1の可動部材23に保持される第1の反射器230の位置を調整することができる。また、付勢部材226は、コイルばねや板ばねなどの弾性部材であり、第1の環状部材22と第1の可動部材23との間に配置される。本実施形態では、第1の可動部材23を介して、位置調節ネジ224,225と対向する位置に、付勢部材226が配置されるため、第1の可動部材23を位置調節ネジ224,225が配置された方向に付勢する。これにより、位置調節ネジ224,225の挿入位置(挿入の深さ)に応じて、第1の可動部材23の位置を上下方向(Z軸方向)および左右方向(X軸方向)に調整することが可能となっている。さらに、本実施形態では、第1の環状部材22と第2の環状部材25とを金属ロッドなどで連結する構成とすることで、光共振器20の堅牢性を高めることができる。
【0023】
なお、本実施形態では、傾き調節ネジ241~243または位置調節ネジ224,225に押圧される第1の可動部材23の押圧面236または側面237の保護を目的として、押圧面236および/または側面237に、傾き調節ネジ241~243および位置調節ネジ224,225よりも高硬度の保護部材を配置する構成とすることができる。このような保護部材としては、たとえば、サファイア製のコンタクトパットを用いることができる。
【0024】
次に、検出装置30について説明する。
図1に示すように、第1実施形態では、光共振器20(筒体21)の側面に、4つの検出装置30が配置されている。検出装置30は、筒体21内の内部空間Sにおいて、レーザー光がガスと衝突して生じた特定波長の光を検出する装置である。このような装置として、光電子増倍管を用いた検出装置が例示される。また、本実施形態において、検出装置30は、レーザー光がガスと衝突して生じたラマン散乱光を検出する構成としている。ここで、レーザー光の波長が同じ場合でも、レーザー光と衝突するガスの種類に応じてラマン散乱光の波長は変化する。そのため、本実施形態では、4つの検出装置30を用いて、それぞれ異なる波長のラマン散乱光を検出することで、4種類のガスを同時に検出する構成となっている。具体的には、本実施形態では、検出装置30の前にそれぞれ異なる特定の波長の光のみを透過するバンドパスフィルタ31a~31dを設けている。たとえば、バンドパスフィルタ31aが、レーザー光がSO
2ガスと衝突することで生じるラマン散乱光を透過する性質を有し、バンドパスフィルタ31bが、レーザー光がCOガスと衝突することで生じるラマン散乱光を透過する性質を有し、バンドパスフィルタ31cが、レーザー光がH
2Sガスと衝突することで生じるラマン散乱光を透過する性質を有し、バンドパスフィルタ31dが、レーザー光がCH
4ガスと衝突することで生じるラマン散乱光を透過する性質を有する場合、外部共振器型レーザー装置1は、複数の検出装置30により、SO
2,CO,CH
4,H
2Sに由来する光を一度に同時に検出することができる。
【0025】
また、光共振器20において導入したガスの濃度が高いほど、光共振器20で発生するラマン散乱光の強度は高くなる。そのため、検出装置30は、SO2,CO,CH4,H2Sの有無を検出するだけではなく、SO2,CO,CH4,H2Sに由来するラマン散乱光の強度に基づいて、SO2,CO,CH4,H2Sの濃度を検出することができる。
【0026】
次いで、本実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1の実施例について説明する。本実施例では、第1の反射器230として反射率が99.97%の反射ミラーを用い、第2の反射器260として反射率が99.999%の反射ミラーを用いた。また、本実施例では、レーザー光の波長が416nm、強度が5~50mWの範囲となるように、半導体レーザー素子11を調整することで、光共振器2の内部で増幅されたレーザー光の光強度が5~100Wの範囲となるように調整した。そして、このように調整した外部共振器型レーザー装置1を用いて、空気中の酸素、窒素、二酸化炭素および水蒸気の検出と、水素ガス中の酸素(10ppm)の検出と、アルゴンガス中のアンモニア(1ppm)の検出とを行った。
【0027】
図6は、空気中の酸素、窒素、二酸化炭素および水蒸気を検出した結果を示すグラフである。具体的には、
図6(A)は、酸素および窒素の検出結果を示すグラフであり、
図6(B)は、二酸化炭素の検出結果を示すグラフであり、
図6(C)は、水蒸気の検出結果を示すグラフである。
図6(A)~(C)に示すように、本実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1を用いることで、空気中の酸素、窒素、二酸化炭素、水蒸気を検出できることが確認できた。
【0028】
また、
図7(A)は、水素ガス中に10ppmの酸素ガスを混入した場合の、酸素ガスの検出結果を示すグラフである。酸素ガスが10ppmである場合も、酸素ガスを検出することができることが分かった。なお、
図7(A)に示すグラフでは、水素ガスだけの場合の検出結果も重畳している。
【0029】
さらに、
図7(B)は、アルゴンガス中に1ppmのアンモニアガスを混入した場合の、アンモニアガスの検出結果を示すグラフである。また、
図7(B)に示すグラフでは、アルゴンガスだけの場合の検出結果も重畳している。このように、アンモニアガスが含まれる場合に、アンモニアガスが含まれない場合の検出結果と比較することで、アンモニアガスでは1ppmという微量である場合も、アンモニアガスの存在を検知することが可能となる。
【0030】
以上のように、第1実施形態に係る光共振器20では、アライメント機構として、第1の反射器230が取り付けられた第1の可動部材23を押圧する傾き調節ネジ241~243および位置調節ネジ224,225を有しており、これらネジの挿入位置(挿入の深さ)を調整することで、第1の可動部材23(あるいは第1の反射器230)の傾きおよび位置を調整することが可能となっている。同様に、第1実施形態に係る光共振器20では、アライメント機構として、第2の反射器260が取り付けられた第2の可動部材26を押圧する傾き調節ネジ271~273および位置調節ネジ254,255を有しており、これらネジの挿入位置(挿入の深さ)を調整することで、第2の可動部材26(あるいは第2の反射器260)の傾きおよび位置を調整することが可能となっている。さらに、本実施形態では、傾き調節ネジ241~243,271~273および位置調節ネジ224,225,254,255は、ユーザやメンテナンス担当者が外部から操作することが可能となっており、光共振器20を分解しなくても、第1および第2の反射器230,260の傾きを含む位置を簡易に調節することができる。また、本実施形態において、半導体レーザー素子11を用いることで、装置全体として小型化することができ、装置の持ち運びが可能となるが、その分、持ち運びによる振動や外部からの衝撃を受けやすくなり、光共振器20における反射器230,260の傾きや位置が変化しやくなるところ、ユーザやメンテナンス担当者が簡易に反射器230,260の傾きや位置を調整することが可能とすることで、より持ち運びに適した装置を提供することが可能となる。
【0031】
《第2実施形態》
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図8は、第2実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1aを示す構成図である。第2実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1aは、単一の検出装置30を備え、当該検出装置30が、半導体レーザー素子11および光共振器20と一直線となる位置に配置される。より具体的には、半導体レーザー素子11、光共振器20および検出装置30がともに、半導体レーザー素子11から発せられるレーザー光の光軸上に配置される。また、第2実施形態では、光共振器20においてレーザー光が検出対象ガスと衝突して生じたラマン散乱光が、光共振器20の第2の端部部材27から外部へと放射された後に、検出装置30に入射し、検出装置30により検出される構成となっている。
【0032】
また、第2実施形態では、検出装置30において、ラマン散乱光を効率的に検出するため、筒体21の内面は、たとえば蒸着などの手法により、ラマン散乱光を高反射するための光学コーティングや、アルミニウムなどの金属の反射膜を形成しておくことが好ましい。これにより、筒体21の側面(レーザー光の光軸と交差する方向)からラマン散乱光が外部へと透過することを防止し、レーザー光の光軸上に位置する検出装置30に、ラマン散乱光を効率的に入射させることができる。
【0033】
また、第2実施形態に係る検出装置30は、バンドパスフィルタ31の切り替え機構を有しており、バンドパスフィルタ31を自在に切り替え可能となっている。そのため、バンドパスフィルタ31を検出したいガスの種類に応じて切り替えることで、所望するガスを検出することが可能となっている。
【0034】
以上のように、第2実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1aも、光共振器20に、第1の反射器230および第2の反射器260の傾きや位置を調整可能なアライメント機構を有しており、第1の反射器230および第2の反射器260の傾きを含む位置を容易に調節することが可能となっている。また、第2実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1aでは、単一の検出装置30を有する構成であるとともに、半導体レーザー素子11、光共振器20、検出装置30が一直線に配置されるため、装置全体をより小型化することが可能となる。なお、第2実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1aでは、レーザー光の光軸Lに沿ってラマン散乱光を検出することで、第1実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1と同等以上の感度で、検出対象ガスを検出することが確認された。
【0035】
《第3実施形態》
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図9は、第3実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1bの平面断面図であり、
図10は、第3実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1bの側面断面図である。なお、
図9は、
図10に示すIX-IX線に沿う断面図であり、
図10は、
図9に示すX-Xに沿う断面図である。
【0036】
図9に示すように、第3実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1bは、半導体レーザー素子11と、光共振器50と、ビームディフューザー40と、検出装置30と、フィルタ切り替え装置33とを有する。
【0037】
図11は、第3実施形態に係る光共振器50の平面断面図であり、
図9と同様に、
図10のIX-IX線に沿う光共振器50の断面図である。また、
図12(A)は、第3実施形態に係る光共振器50の正面図であり、
図12(B)は、第3実施形態に係る光共振器50の背面図である。
図11に示すように、第3実施形態に係る光共振器50は、導光部材51と、第1の可動部材52と、第1の端部部材53と、第2の可動部材54と、第2の端部部材55とを有する。
【0038】
図12に示すように、第1の端部部材53は、半導体レーザー素子11から射出されたレーザー光が通過する貫通孔530と、第1の可動部材52の傾きを含む位置を調整するアライメント機構として機能する3本の傾き調節ネジ531~533を有する。傾き調節ネジ531~533の先端部は、第1の可動部材52の第1の面521と当接し、さらに、傾き調節ネジ531~533を深い位置まで挿入することで第1の面521を押圧することが可能である。なお、第3実施形態でも、3本の傾き調節ネジ531~533の挿入位置を調整することで、第1の可動部材52の傾き(第1の反射器520の傾き)を上下左右に調整することが可能となっている。
【0039】
第1の可動部材52には、第1の反射器520が取り付けられている。また、第1の可動部材52は、第1の端部部材53側の第1の面521において、傾き調節ネジ531~533と当接するとともに、第1の面521と反対側の第2の面522において、Oリング56と当接している。具体的には、第2の面522において、Oリング56の形状に合わせて、Oリング56を係合するための溝が形成されており、この溝にOリング56が嵌め込まれている。また、第1の反射器520は、導光部材51の第1の凹部513内に収容されるが、第1の反射器520と第1の凹部513との間には、第1の反射器520の傾きや位置を変えても、第1の反射器520が第1の凹部513に接しない程度の隙間を有する。そのため、傾き調節ネジ531~533により第1の面521が押圧されると、押圧された位置を中心として、第2の面522がOリング56を押圧し、Oリング56を変形させることで、第1の反射器520の傾きを変更することが可能となっている。また、本実施形態では、第1の面521のうち、傾き調節ネジ531~533と当接する部分に板状の保護部材523が取り付けられている。保護部材523は、傾き調節ネジ531~533の押圧により第1の面521が変形してしまうことを防止するための部材であり、たとえば、サファイア製のコンタクトパッドを用いることができる。なお、第3実施形態に係る光共振器50では、第1の反射器520の位置を調整するための位置調節ネジを設けていないが、位置調節ネジを設けて第1の反射器520の位置を調整する構成としてもよい。
【0040】
第2の可動部材54および第2の端部部材55も、第1の可動部材52および第1の端部部材53と同様の構成を有しており、
図12に示すように、第2の端部部材55には、第2の可動部材54の傾きを変えるためのアライメント機構として、傾き調節ネジ551~553が設けられている。
【0041】
また、第3実施形態では、
図9および
図10に示すように、傾き調節ネジ531~533,551~553の挿入位置(挿入の深さ)を調整するためのピエゾコントローラー58およびアクチュエーター59
1,59
2を、アライメント調節機構として有している。たとえば、ユーザは、ピエゾコントローラー58を操作し、傾き調節ネジ531~533,551~553の挿入位置(挿入の深さ)を決定することで、ピエゾコントローラー58がアクチュエーター59
1,59
2の駆動を制御し、アクチュエーター59
1,59
2に傾き調節ネジ531~533,551~553の挿入位置を調節させることができる。また、アクチュエーター59
1,59
2は、傾き調節ネジ531~533,551~553の挿入位置(挿入の深さ)を固定するためのロック機構としても機能する。
【0042】
第3実施形態に係る導光部材51は、中空の部材であり、内部に内部空間Sが形成されている。また、導光部材51は、ガス導入口511、ガス排出口512、凹部513、514、細径貫通孔515,516、シリンドリカルミラー517、シリンドリカルレンズ518、光学フィルタ519を有する。第1実施形態に係る筒体21と同様に、検出対象ガスは、ガス導入口511から内部空間S内へと導入され、内部空間Sを通過した後に、ガス排出口512から排出される。また、本実施形態では、導光部材51は、レーザー光の光軸L上に、凹部513,514および細径貫通孔515,516を有しており、半導体レーザー素子11から射出されたレーザー光は、凹部513および細径貫通孔515を通過し、一部が第1の反射器520を通過して、内部空間S内に照射される。また、内部空間S内において、レーザー光は、第1の反射器520と第2の反射器540とで繰り返し反射される間に、内部空間Sに導入されたガスと衝突し、ガスに応じたラマン散乱光が発生する。本実施形態では、内部空間Sの側面側(レーザー光の反射方向と直交する側)であって、検出装置30が存在しない側にシリンドリカルミラー517が設けられており、レーザー光とガスとの衝突により生じたラマン散乱光のうち、シリンドリカルミラー517側に放射された光は、シリンドリカルミラー517により、シリンドリカルレンズ518側へと反射される。一方、内部空間Sの側面側(レーザー光の反射方向と直交する側)であって、検出装置30が存在する側にはシリンドリカルレンズ518が設けられており、シリンドリカルレンズ518側に放射されたラマン散乱光は、シリンドリカルレンズ518を通過しながら、直線状(一次元状)に変換された後、光学フィルタ519を通過し、フォーカスレンズ32で集光された後に、検出装置30で検出される。なお、第3実施形態では、フィルタ切り替え装置33は、異なる波長のラマン散乱光を透過するバンドパスフィルタ31a,31bを有し、検出装置30で検出する所定波長のラマン散乱光に応じて、バンドパスフィルタ31a,31bを切り替え可能となっている。
【0043】
以上のように、第3実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1bでは、導光部材51が、第1実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1の筒体21、第1の環状部材22および第2の環状部材25に相当し、導光部材51と第1の端部部材53との間に第1の可動部材52を収容し、導光部材51と第2の端部部材55との間に第2の可動部材54を収容することで、アライメント機構(傾き調節ネジ531~533,551~553)により、第1の可動部材52および第2の可動部材54の傾きを調節することができる。また、外部共振器型レーザー装置1bでは、第1実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1と比べて、部品数が少なく、小型化することができる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0045】
たとえば、第2実施形態では、単一の検出装置30を、半導体レーザー素子11および光共振器20と一直線となる位置(レーザー光の光軸上となる位置)に配置する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、半導体レーザー素子11および光共振器20と一直線となる位置(レーザー光の光軸上となる位置)に加えて、第1実施形態のように、筒体21の側面(レーザー光の光軸と直交する方向)にも、複数の検出装置30を配置し、半導体レーザー素子11および光共振器20と一直線となる位置および筒体21の側面でラマン散乱光を検出する構成とすることができる。たとえば、第1実施形態に係る検出装置30の配置構成と、第2実施形態に係る検出装置30の検出構成とを組み合わせることで、5個の検出装置30でラマン散乱光を検出することができるため、同時に5種類のガスを検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1,1a,1b…外部共振器型レーザー装置
11…半導体レーザー素子
111,112…端面
12…コリメートレンズ
13…バンドパスフィルタ
20…光共振器
21…筒体
22…第1の環状部材
220…ガス導入口
221…第1環状部
222…第2環状部
223…段差面
224,225…位置調節ネジ
226…付勢部材
23…第1の可動部材
230…第1の反射器
231…貫通孔
232…本体部
233…フランジ部
234…段差面
235…凹部
236…押圧面
237…側面
24…第1の端部部材
240…貫通孔
241~243…傾き調節ネジ
25…第2の環状部材
250…ガス排出口
251…第1環状部
252…第2環状部
253…段差面
254,255…位置調節ネジ
26…第2の可動部材
260…第2の反射器
261…貫通孔
262…本体部
263…フランジ部
264…段差面
265…凹部
266…押圧面
267…側面
27…第2の端部部材
270…貫通孔
271~273…傾き調節ネジ
28~211…Oリング
30…検出装置
31,31a~31d…バンドパスフィルタ
32…フォーカスレンズ
33…フィルタ切り替え装置
40…ビームディフューザー
50…光共振器
51…導光部材
511…ガス導入口
512…ガス排出口
513,514…凹部
515,516…細径貫通孔
517…シリンドリカルミラー
518…シリンドリカルレンズ
519…光学フィルタ
52…第1の可動部材
520…第1の反射器
521…第1の面
522…第2の面
523…保護部材
53…第1の端部部材
530…貫通孔
531~533…調節ネジ
54…第2の可動部材
540…第2の反射器
541…第1の面
542…第2の面
543…保護部材
55…第2の端部部材
550…貫通孔
551~553…調節ネジ
56,57…Oリング
58…ピエゾコントローラー
591,592…アクチュエーター