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特開2024-155051光共振器および外部共振器型レーザー装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155051
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】光共振器および外部共振器型レーザー装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/05 20060101AFI20241024BHJP
   G01N 21/65 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01N21/05
G01N21/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069431
(22)【出願日】2023-04-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超高圧水素インフラ本格普及技術研究開発事業/水素ステーションのコスト低減等に関連する技術開発/半導体レーザーを用いた次世代水素分析装置の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000144991
【氏名又は名称】株式会社四国総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】市川 祐嗣
【テーマコード(参考)】
2G043
2G057
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA09
2G043BA11
2G043BA13
2G043BA17
2G043CA01
2G043DA05
2G043EA03
2G043GA03
2G043GA04
2G043GA08
2G043GB03
2G043GB18
2G043GB21
2G043HA01
2G043HA03
2G043KA02
2G043KA03
2G043LA02
2G057AA02
2G057AB03
2G057AB08
2G057AC03
2G057BA05
2G057BB08
2G057DA03
2G057DA05
2G057DB01
2G057DB02
2G057DB05
(57)【要約】
【課題】コンパクトでありながらも、微量なガスをより高い精度で検出できる光共振器および外部共振器型レーザー装置を提供する。
【解決手段】レーザー素子11から発せられたレーザー光が入射される第1の反射器220と、第1の反射器220と対向して設けられ、レーザー素子11へ反射光をフィードバックする第2の反射器240と、第1の反射器220を透過したレーザー光が入射されるガス流通部210を有する導光部材21と、を備え、導光部材21は、第1の反射器220を保持する第1の保持部材22が収容される第1の凹部213と、第2の反射器240を保持する第2の保持部材24が収容される第2の凹部214と、を備え 第1の保持部材22は、レーザー光が入射される貫通孔223を有し、ガス流通部210と対向する側において第1の反射器220を保持し、第2の保持部材24は、ガス流通部210と対向する側において第2の反射器240を保持する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー素子から発せられたレーザー光が入射される第1の反射器と、
前記第1の反射器と対向して設けられ、前記レーザー素子へ反射光をフィードバックする第2の反射器と、
前記第1の反射器を透過した前記レーザー光が入射されるガス流通部を有する導光部材と、を備え、
前記導光部材は、前記第1の反射器を保持する第1の保持部材が収容される第1の凹部と、
前記第2の反射器を保持する第2の保持部材が収容される第2の凹部と、を備え
前記第1の保持部材は、前記レーザー光が入射される貫通孔を有し、前記ガス流通部と対向する側において前記第1の反射器を保持し、
前記第2の保持部材は、前記ガス流通部と対向する側において前記第2の反射器を保持し、
前記第1の反射器が前記第1の凹部内に収容され、前記第2の反射器が第2の凹部内に収容される、光共振器。
【請求項2】
前記第1の凹部は、断面形状が略凸形であり、当該略凸形を構成する大径部に前記第1の保持部材が収容され、当該略凸形を構成する小径部に前記第1の反射器の少なくとも一部が進入するように配置され、
前記第2の凹部は、断面形状が略凸形であり、当該略凸形を構成する大径部に前記第2の保持部材が収容され、当該略凸形を構成する小径部に前記第2の反射器の少なくとも一部が進入するように配置される、請求項1に記載の光共振器。
【請求項3】
前記第1の保持部材と前記第1の凹部の内壁面とで挟持される環状の第1の弾性部材と、
前記第2の保持部材と前記第2の凹部の内壁面とで挟持される環状の第2の弾性部材と、を有し、
前記第1の弾性部材の内側にある前記第1の凹部の内壁面および前記第1の保持部材の前記ガス流通部と対向する面と、前記第2の弾性部材の内側にある前記第2の凹部の内壁面および前記第2の保持部材の前記ガス流通部と対向する面とに反射防止加工が施されている、請求項1に記載の光共振器。
【請求項4】
前記反射防止加工は、アルマイト加工である、請求項3に記載の光共振器。
【請求項5】
前記第1の保持部材は、前記レーザー光が通過する貫通孔を有し、
前記導光部材は、前記第1の凹部と前記ガス流通部との間に前記レーザー光が通過する第1の貫通孔と、前記第2の凹部と前記ガス流通部との間に前記レーザー光が通過する第2の貫通孔を有し、
前記導光部材の前記第1の貫通孔は、前記第1の保持部材の前記貫通孔よりも孔の径が小さい、請求項1に記載の光共振器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の光共振器と、
前記光共振器に入射するレーザー光を発するレーザー素子と、
前記光共振器に導入されたガスと、レーザー光とが作用して発生した特定波長の光を検出する検出装置と、を有する、外部共振器型レーザー装置であって、
前記光共振器と前記検出装置との間に、前記導光部材を透過した前記特定波長の光を収束して前記検出装置に入射させる光学系を有する、外部共振器型レーザー装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の光共振器と、
一方の端面に無反射層が形成され、他方の端面に全反射層が形成されたレーザー素子と、
前記レーザー素子と前記光共振器との間に設けられた波長選択フィルタと、を備える外部共振器型レーザー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光共振器および外部共振器型レーザー装置に関し、特に、特定のガスを検出するための光共振器および外部共振器型レーザー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光共振器を利用したレーザー装置が知られている。たとえば、特許文献1では、レーザー素子から出力されたレーザー光が、レーザー素子の端面と第1の反射器との間で反射を繰り返す第1の共振部と、第1の反射器を通過したレーザー光が、第1の反射器と第2の反射器との間で反射を繰り返す第2の共振部とを有し、第2の共振部に分析サンプルを導入し、分析サンプルに共振したレーザー光を当て、生じた光相互作用を検出することで、分析サンプルを分析する外部共振器型レーザー装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3878257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、水素ステーションでの水素ガスの品質管理用途などのため、小型で微量のガス成分も検出可能なガス検出装置が希求されている。このようなガス検出装置において、外部共振器を用いることで、レーザー光を、検出対象ガスが導入される2つの反射器の間の空間内で反射により往復させることができ、実効光路長が実際の光路長よりも長くすることができるため、小型でありながらも微量のガスを検出することが可能となる。
しかしながら、外部共振器を用いた従来のガス検出装置でも、持ち運びに適したサイズとは言えず、また、堅牢性も十分ではなかった。
【0005】
本発明は、コンパクトであり、かつ、堅牢性の高い光共振器および外部共振器型レーザー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光共振器は、レーザー素子から発せられたレーザー光が入射される第1の反射器と、前記第1の反射器と対向して設けられ、前記レーザー素子へ反射光をフィードバックする第2の反射器と、前記第1の反射器を透過した前記レーザー光が入射されるガス流通部を有する導光部材と、を備え、前記導光部材は、前記第1の反射器を保持する第1の保持部材が収容される第1の凹部と、前記第2の反射器を保持する第2の保持部材が収容される第2の凹部と、を備え 前記第1の保持部材は、前記レーザー光が入射される貫通孔を有し、前記ガス流通部と対向する側において前記第1の反射器を保持し、前記第2の保持部材は、前記ガス流通部と対向する側において前記第2の反射器を保持し、前記第1の反射器が前記第1の凹部内に収容され、前記第2の反射器が第2の凹部内に収容される。
上記光共振器において、前記第1の凹部は、断面形状が略凸形であり、当該略凸形を構成する大径部に前記第1の保持部材が収容され、当該略凸形を構成する小径部に前記第1の反射器の少なくとも一部が進入するように配置され、前記第2の凹部は、断面形状が略凸形であり、当該略凸形を構成する大径部に前記第2の保持部材が収容され、当該略凸形を構成する小径部に前記第2の反射器の少なくとも一部が進入するように配置される構成とすることができる。
上記光共振器において、前記第1の保持部材と前記第1の凹部の内壁面とで挟持される環状の第1の弾性部材と、前記第2の保持部材と前記第2の凹部の内壁面とで挟持される環状の第2の弾性部材と、を有し、前記第1の弾性部材の内側にある前記第1の凹部の内壁面および前記第1の保持部材の前記ガス流通部と対向する面と、前記第2の弾性部材の内側にある前記第2の凹部の内壁面および前記第2の保持部材の前記ガス流通部と対向する面とに反射防止加工が施されている構成とすることができる。
上記光共振器において、前記反射防止加工は、アルマイト加工である構成とすることができる。
上記光共振器において、前記第1の保持部材は、前記レーザー光が通過する貫通孔を有し、前記導光部材は、前記第1の凹部と前記ガス流通部との間に前記レーザー光が通過する第1の貫通孔と、前記第2の凹部と前記ガス流通部との間に前記レーザー光が通過する第2の貫通孔を有し、前記導光部材の前記第1の貫通孔は、前記第1の保持部材の前記貫通孔よりも孔の径が小さい構成とすることができる。
本発明に係る第1の観点に係る外部共振器型レーザー装置は、上記光共振器と、前記光共振器に入射するレーザー光を発するレーザー素子と、前記光共振器に導入されたガスと、レーザー光とが作用して発生した特定波長の光を検出する検出装置と、を有する、外部共振器型レーザー装置であって、前記光共振器と前記検出装置との間に、前記導光部材を透過した前記特定波長の光を収束して前記検出装置に入射させる光学系を有する。
本発明に係る第2の観点に係る外部共振器型レーザー装置は、上記光共振器と、一方の端面に無反射層が形成され、他方の端面に全反射層が形成されたレーザー素子と、前記レーザー素子と前記光共振器との間に設けられた波長選択フィルタと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コンパクトでありながら、微量なガスをより高い精度で検出できる光共振器および外部共振器型レーザー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る外部共振器型レーザー装置を示す平面断面図である。
図2】第1実施形態に係る外部共振器型レーザー装置を示す側面断面図である。
図3】第1実施形態に係る光共振器の平面断面図である。
図4】(A)は、第1実施形態に係る光共振器の正面図であり、(B)は、第1実施形態に係る光共振器の背面図である。
図5】第1実施形態に係る収容部を説明するための斜視図である。
図6】第2実施形態に係る外部共振器型レーザー装置を示す構成図である。
図7】第2実施形態に係る光共振器の側面断面図である。
図8】第2実施形態に係る光共振器の側面断面の拡大図である。
図9】(A)は、第2実施形態に係る光共振器の正面図であり、(B)は、第2実施形態に係る光共振器の背面図である。
図10図2のX-X線に沿う正面断面図である。
図11】第2実施形態に係る外部共振器型レーザー装置で、空気成分を検出した結果を示すグラフである。
図12】第2実施形態に係る外部共振器型レーザー装置で、水素ガスに混入した酸素ガス、および、アルゴンガスに混入したアンモニアガスを検出した結果を示すグラフである。
図13】第3実施形態に係る外部共振器型レーザー装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図に基づいて、本発明に係る光共振器および外部共振器型レーザー装置の実施形態を説明する。
【0010】
《第1実施形態》
図1は、第1実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1の平面図であり、図2は、第1実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1の側面図である。図1および図2に示すように、本実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1は、主な構成として、半導体レーザー素子11と、光共振器20と、検出装置30と、ビームディフューザー40とを有する。なお、図1および図2においては、説明の便宜のため、導光部材21については断面図を示している。具体的には、図1では、導光部材21を図2に示すI-I線に沿う断面図で示しており、図2では、導光部材21を、図1に示すII-II線に沿う断面図で示している。
【0011】
外部共振器型レーザー装置1は、半導体レーザー素子11からレーザー光を射出し、射出したレーザー光を光共振器20内に導入した後、光共振器20でレーザー光を共振させながら、光共振器20内の測定対象空間Sに導入したガスに共振したレーザー光を照射することで生じた特定の波長の光(本実施形態ではラマン散乱光)を、検出装置30で検出する構成となっている。
【0012】
なお、本実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1では、たとえばSO,CO,O,CO,N,HS,CH,NH,Hなどを含むガスを導入し、レーザー光を照射することができる。また、本発明は、導入したガスにレーザー光を照射するだけではなく、導入したガスにレーザー光を照射して生じる特定の波長の光を検出することで特定のガスを検出するガス検出装置、検出した特定の波長の光の強度に基づいてガスの濃度を測定するガス測定装置、測定対象空間に存在するガスの種類を特定するガス特定装置、測定対象空間において検出対象とするガスが存在するかを監視する監視装置にも適用することができる。以下に、第1実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1の各構成について説明する。
【0013】
半導体レーザー素子11は、青紫波長域(たとえば416nm付近)のレーザー光を光共振器20に向けて射出する。このような、青紫波長域の半導体レーザー素子11として、たとえば、市販されているGaN系の半導体レーザーやGaInN系の半導体レーザーを用いることができる。また、本実施形態に係る半導体レーザー素子11は、レーザー光の射出側(光共振器20側)と反対側に位置する端面111にレーザー光を反射するための反射コーティングが施されており、一方、レーザー光の射出側(光共振器20側)に位置する端面112にレーザー光の反射を防止するためのコーティングが施されている。半導体レーザー素子11から出力されたレーザー光は、光共振器20内へと導入される。なお、図示していないが、半導体レーザー素子11と光共振器20との間に、半導体レーザー素子11から出力されたレーザー光を平行化あるいは収束するレンズや、所望する青紫波長域のレーザー光を透過し、その他の波長のレーザー光を遮断するバンドパスフィルタを配置する構成としてもよい。
【0014】
図3は、第1実施形態に係る光共振器20の側面断面図である。なお、図3は、図2のI-I線に沿う側面断面図であり、図2の光共振器20を90度反時計回りに回転して描画している。また、図4(A)は、第1実施形態に係る光共振器20の正面図であり、図4(B)は、第1実施形態に係る光共振器20の背面図である。図3に示すように、本実施形態に係る光共振器20は、導光部材21と、第1の保持部材22と、第1の端部部材23と、第2の保持部材24と、第2の端部部材25とを有する。
【0015】
図1~3に示すように、第1の保持部材22には第1の反射器220が取り付けられており、第2の保持部材24には第2の反射器240が取り付けられている。半導体レーザー素子11から射出されたレーザー光は、第1の端部部材23に設けられた貫通孔230および第1の保持部材22に設けられた貫通孔223を通過して、第1の保持部材22に隣接して設けられた第1の反射器220まで到達する。第1の反射器220まで到達したレーザー光の大部分は第1の反射器220により反射されて反射コーティングが施された半導体レーザー素子11の端面111に到達し、第1の反射器220と半導体レーザー素子11の端面111との間で往復し共振する。そのため、図1および図2に示すように、本実施形態において、第1の反射器220と半導体レーザー素子11の端面111との間の空間が第1の共振部として機能することとなる。
また、半導体レーザー素子11から射出され第1の反射器220へと到達したレーザー光の一部は、第1の反射器220を通過して、ガスセルを構成する、導光部材21内部のガス流通部210を通過し、第2の反射器240まで到達する。ガス流通部210を通過したレーザー光は、第2の反射器240により大部分が反射され、第1の反射器220と第2の反射器240との間で往復することで共振する。そのため、図1および図2に示すように、本実施形態において、第1の反射器220と第2の反射器240との間の空間が第2の共振部として機能することとなる。特に、本実施形態では、第1および第2の共振部においてレーザー光を増強することで、第2の共振部においては、レーザー光の強度が、半導体レーザー素子11から射出した際のレーザー光の強度に対して2000倍以上(たとえば100Wを超える)の強度まで増強することができる。
なお、第2の反射器240へと到達したレーザー光の一部は、第2の反射器240を通過し、第2の保持部材24に設けられた貫通孔243および第2の端部部材25に設けられた貫通孔250を通過した後に、ビームディフューザー40により吸収される。
【0016】
本実施形態において、第1の反射器220および第2の反射器240は、反射ミラーであるが、ミラーに限定されずに、たとえば、光学フィルタ、ガラス基板などの光学研磨された部材を用いることができる。ただし、第1の反射器220は、第2の反射器240よりも反射率が小さい部材とされる。たとえば、本実施形態では、第1の反射器220として、反射率が99.99%の反射ミラーを用いることができ、第2の反射器240として、反射率が99.999%の反射ミラーを用いることができる。なお、第1の反射器220および第2の反射器240は、反射率が100%でないため、一部のレーザー光を反射させずに透過させる性質を有している。また、本実施形態では、第1の反射器220の反射率が、第2の反射器240の反射率よりも小さいため、第1の反射器220を透過するレーザー光の割合が第2の反射器240と比べ高く、その結果、図1に示す第2の共振部においてレーザー光を増強することが可能となっている。
【0017】
続いて、第1実施形態に係る光共振器20を構成する各部材について説明する。導光部材21は、中空の部材であり、内部空間がガス流通部210を構成する。本実施形態において、導光部材21はステンレス鋼で構成されるが、これに限定されず、光共振器において一般的に使用されている素材を用いることができる。また、導光部材21は、図2および図3に示すように、ガス導入口211、ガス排出口212、第1の凹部213、第2の凹部214、第1の細径貫通孔215および第2の細径貫通孔216が形成されており、シリンドリカルミラー217、シリンドリカルレンズ218および光学フィルタ219が配置されている。
【0018】
検出対象ガスは、ガス導入口211からガス流通部210へと導入され、ガス流通部210を通過した後、ガス排出口212から排出される。また、本実施形態において、半導体レーザー素子11から射出されたレーザー光の一部は、第1の反射器220を通過して、導光部材21のガス流通部210内へと入射され、第2の共振部(第1の反射器220と第2の反射器240との間)で繰り返し反射される。これにより、導光部材21のガス流通部210において、ガス導入口211から導入されたガスとレーザー光とが衝突し、ガスに応じたラマン散乱光が発生する。
【0019】
導光部材21のガス流通部210で発生したラマン散乱光は、検出装置30により検出される。具体的に、本実施形態では、図3に示すように、ガス流通部210の側面側(レーザー光の反射方向と直交する側)であって、検出装置30が存在しない側にシリンドリカルミラー217が設けられており、レーザー光とガスとの衝突により生じたラマン散乱光のうち、シリンドリカルミラー217側に放射された光は、シリンドリカルミラー217により、シリンドリカルレンズ218側へと反射される。一方、内部空間Sの側面側(レーザー光の反射方向と直交する側)であって、検出装置30が存在する側にはシリンドリカルレンズ218が設けられており、シリンドリカルレンズ218側に放射されたラマン散乱光は、シリンドリカルレンズ218を通過しながら、直線状(一次元状)に変換された後、光学フィルタ219を通過し、フォーカスレンズ31で集光された後に、検出装置30で検出される。なお、本実施形態において、外部共振器型レーザー装置1は、フィルタ切り替え装置32を有しており、検出装置30で検出する所定波長のラマン散乱光に応じて、異なる波長のラマン散乱光を透過するバンドパスフィルタ33,33を切り替え可能となっている。
【0020】
また、本実施形態に係る光共振器20では、導光部材21と、両端に位置する第1の端部部材23および第2の端部部材25とで、第1の保持部材22および第2の保持部材24をそれぞれ挟持する構成となっている。すなわち、導光部材21は、両端に第1の凹部213および第2の凹部214を有しており、第1の凹部213および第2の凹部214は、図3に示すように、孔の径が大きい大径部2131,2141と、孔の径が小さい小径部2132,2142とを有している。大径部2131,2141の内径は、第1の保持部材22および第2の保持部材24の最大外径よりも大きく形成されており、第1の保持部材22全体および第2の保持部材24全体を、第1の凹部213および第2の凹部214にそれぞれ収容することが可能となっている。また、小径部2132,2142の内径は、第1の保持部材22および第2の保持部材24の最大外径よりも小さいが、第1の反射器220および第2の反射器240の外径よりも大きく構成されており、小径部2132,2142により、第1の反射器220および第2の反射器240の周囲を囲むことが可能となっている。本実施形態では、第1の端部部材23および第2の端部部材25を、導光部材21の両端にそれぞれ連結することができ、第1の保持部材22を第1の凹部213に嵌め合わせて第1の端部部材23を導光部材21に連結し、同様に、第2の保持部材24を第2の凹部214に嵌め合わせて第2の端部部材25を導光部材21に連結することで、第1の保持部材22および第2の保持部材24を光共振器20内に収容することができる。
【0021】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、導光部材21の第1の凹部213および第2の凹部214は断面が略凸形であり、略凸形の小径部2132,2142においても第1の反射器220および第2の反射器240の外径よりも大きい内径であり、第1の反射器220および第2の反射器240を挿入可能となっている。そして、第1の保持部材22を第1の凹部213に嵌め込むことで、当該略凸形を構成する大径部2131に第1の保持部材22が収容され、当該略凸形を構成する小径部2132に第1の反射器220の少なくとも一部が進入するように配置され、第1の反射器220が、第1の凹部213と、第1の保持部材22と、Oリング26とで囲われた第1の収容部C1内に収容される。本実施形態では、レーザー光の乱反射によるノイズを低減し、微量なガスの検出精度を高めるために、第1の反射器220を収容する第1の収容部C1に反射防止加工が施されている。ここで、図5は、本実施形態において、第1の反射器220を収容する第1の収容部C1を説明するための斜視図であり、第1の凹部213から第1の保持部材22を取り外した状態を示している。図5に示すように、本実施形態では、第1の反射器220を収容する第1の収容部C1を構成するOリング26の内側にある第1の凹部213の内壁面と、第1の保持部材22のガス流通部210と対向する第2の面222とに、反射防止加工が施されている。同様に、第2の保持部材24を第2の凹部214に嵌め込むことで、当該略凸形を構成する大径部2141に第2の保持部材24が収容され、当該略凸形を構成する小径部2142に第2の反射器240の少なくとも一部が進入するように配置され、第2の反射器240を、第2の凹部214と、第2の保持部材24と、Oリング26とで囲われた第2の収容部C2内に収容される。第2の反射器240を収容する第2の収容部C2についても、レーザー光の乱反射によるノイズを低減し、微量なガスの検出精度を高めるために反射防止加工が施されている。具体的には、第2の反射器240を収容する第2の収容部C2を構成するOリング26の内側にある第2の凹部214の内壁面と、第2の保持部材24のガス流通部210と対向する第2の面242とに、反射防止加工が施されている。なお、反射防止の加工方法は、特に限定されないが、黒色の光吸収塗料を塗布する加工や、黒色アルマイト加工が例示される。
【0022】
また、本実施形態では、第1の収容部C1および第2の収容部C2に加えて、導光部材21のうち、シリンドリカルミラー217およびシリンドリカルレンズ218を除く、ガス流通部210を構成する面にも、反射防止加工が施される。これにより、本実施形態では、光共振器20のうち、第1の反射器220と第2の反射器240との間の第2の共振部のうち、シリンドリカルミラー217およびシリンドリカルレンズ218を除く部分が、反射防止加工されることとなり、レーザー光の乱反射光によるノイズを低減することができる。
【0023】
さらに、本実施形態では、図5に示すように、第1の凹部213とガス流通部210との間には第1の細径貫通孔215が形成されている。第1の細径貫通孔215は、第1の保持部材22の貫通孔223よりも孔の径が小さく形成されている。同様に、第2の凹部214とガス流通部210との間には第2の細径貫通孔216が形成されており、第2の細径貫通孔216は、第2の保持部材24の貫通孔243よりも孔の径が小さく形成されている。これにより、第1の反射器220または第2の反射器240で乱反射したレーザー光が第1の細径貫通孔215および第2の細径貫通孔216を通過しにくくなり、その分、乱反射光によるノイズを低減することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、図3に示すように、導光部材21のガス流通部210が、第1の細径貫通孔215および第2の細径貫通孔216と連通しているが、第1の反射器220を収容する第1の収容部C1および第2の反射器を収容する第2の収容部C2は、Oリング26および第1の保持部材22の第2の面222、並びに、Oリング26および第2の保持部材24の第2の面242によりそれぞれ密閉されており、導入された検出対象ガスが光共振器20から漏出することを防止している。
【0025】
また、本実施形態に係る光共振器20は、第1の反射器220および第2の反射器240の傾きを調整するためのアライメント機構を有している。具体的に、本実施形態において、第1の反射器220が第1の保持部材22に取り付けられており、第2の反射器240が第2の保持部材24に取り付けられている。また、第1の保持部材22および第2の保持部材24は、導光部材21と第1の端部部材23または第2の端部部材25によって挟持されており、第1の面221,241側において傾き調節ネジ231~233,251~253と当接し、第2の面222,242側において弾性部材であるOリング26,26と当接している。
【0026】
そのため、傾き調節ネジ231~233を一定の挿入位置まで挿入することで、第1の保持部材22の第1の面221を押圧することができ、押圧された部分を中心として、第1の保持部材22の第2の面222がOリング26を押し潰して変形させることで、第1の反射器220の傾きを変更することが可能となる。同様に、傾き調節ネジ251~253を一定の挿入位置まで挿入することで、第2の保持部材24の第1の面241を押圧することができ、押圧された部分を中心として、第2の保持部材24の第2の面242がOリング26を押し潰して変形させることで、第2の反射器240の傾きを変更することが可能となる。なお、本実施形態では、第1の面221,241のうち、傾き調節ネジ231~233,251~253と当接する部分に板状の保護部材224,244が取り付けられている。保護部材224,244は、傾き調節ネジ231~233,251~253の押圧により第1の面221,241が変形してしまうことを防止するための部材であり、たとえば、サファイア製のコンタクトパッドを用いることができる。
【0027】
さらに、本実施形態では、アクチュエーター27,27およびピエゾコントローラー50により、第1の反射器220および第2の反射器240の傾きを、ユーザが簡易に調整することが可能となっている。たとえば、ユーザは図示しない入力部を介してピエゾコントローラー50に指示を入力することで、ピエゾコントローラー50は、アクチュエーター27,27を動作させて、傾き調節ネジ231~233,251~253の挿入位置を変更することで、第1の反射器220および第2の反射器240の傾きを調整することが可能となっている。
【0028】
このように、本実施形態では、第1の保持部材22、第1の端部部材23、Oリング26、アクチュエーター27およびピエゾコントローラー50が、第1の反射器220の傾きを調整するアライメント機構として機能し、第2の保持部材24、第2の端部部材25、Oリング26、アクチュエーター27およびピエゾコントローラー50が、第2の反射器240の傾きを調整するアライメント機構として機能する。
【0029】
次に、検出装置30について説明する。図1に示すように、第1実施形態では、光共振器20の側面に、検出装置30が配置されている。検出装置30は、導光部材21のガス流通部210において、レーザー光がガスと衝突して生じた特定波長の光を検出する装置である。このような装置として、光電子増倍管を用いた検出装置が例示される。また、本実施形態において、検出装置30は、レーザー光がガスと衝突して生じたラマン散乱光を検出する構成としている。ここで、レーザー光の波長が同じ場合でも、レーザー光と衝突するガスの種類に応じてラマン散乱光の波長は変化する。そのため、本実施形態では、複数のバンドパスフィルタ33,33を用いて、異なる波長のラマン散乱光を検出することで、複数種類のガスを検出可能な構成となっている。具体的には、本実施形態では、検出装置30の前にそれぞれ異なる特定の波長の光のみを透過するバンドパスフィルタ33,33を有するフィルタ切り替え装置32が設けられている。たとえば、バンドパスフィルタ33が、レーザー光がSOガスと衝突することで生じるラマン散乱光を透過する性質を有し、バンドパスフィルタ33が、レーザー光がCOガスと衝突することで生じるラマン散乱光を透過する性質を有する場合、外部共振器型レーザー装置1は、検出装置30により、SOおよびCOに由来する光を検出することが可能となる。
【0030】
また、光共振器20において導入したガスの濃度が高いほど、光共振器20で発生するラマン散乱光の強度は高くなる。そのため、検出装置30は、特定のガスの有無を検出するだけではなく、当該ガスに由来するラマン散乱光の強度に基づいて、ガスの濃度を検出することもできる。
【0031】
以上のように、第1実施形態に係る光共振器20では、ガス流通部210を有する導光部材21と、第1の反射器220を保持する第1の保持部材22と、第2の反射器240を保持する第2の保持部材24と、を有し、導光部材21内にガスを導入するガス導入口211、ガス導入口211から導入されたガスが流通するガス流通部210、および導光部材21内のガスを排出するガス排出口212を有するとともに、両端に、第1の反射器220を挿入可能な第1の凹部213と、第2の反射器240を挿入可能な第2の凹部214とを有し、第1の反射器220を導光部材21の第1の凹部213に挿入した場合に、第1の反射器220が第1の凹部213に収容され、第2の反射器240を導光部材21の第2の凹部214に挿入した場合に、第2の反射器240が第2の凹部214に収容される。これにより、本実施形態では、第1の反射器220、ガス流通部210、第2の反射器240をコンパクトに配置することができ、光共振器20の小型化を図ることができ、外部共振器型レーザー装置全体としての小型化も図ることができる。
【0032】
また、第1実施形態に係る光共振器20では、第1の収容部C1を構成する第1の凹部213および第1の保持部材22の第2の面222と、第2の収容部C2を構成する第2の凹部214および第2の保持部材24の第2の面242とに、アルマイト加工などの反射防止加工が施されるため、レーザー光の乱反射の影響を低減することができ、ノイズを抑制することができるため、検出対象ガスが1ppm未満と微量である場合でも、検出対象ガスを高精度に検出することができる。
【0033】
また、第1実施形態に係る導光部材21では、第1の凹部213とガス流通部210との間にレーザー光が通過する第1の細径貫通孔215と、第2の凹部214とガス流通部210との間にレーザー光が通過する第2の細径貫通孔216を有し、第1の細径貫通孔215は第1の保持部材22の貫通孔223よりも孔の径が小さく、第2の細径貫通孔216は第2の保持部材24の貫通孔243よりも孔の径が小さいため、乱反射したレーザー光が第1の細径貫通孔215および第2の細径貫通孔216を通過しにくく、その分、ノイズを低減することができる。
【0034】
さらに、第1実施形態に係る光共振器20では、アライメント機構として、第1の反射器220が取り付けられた第1の保持部材22を押圧する傾き調節ネジ231~233を有しており、これらネジの挿入位置(挿入の深さ)を調整することで、第1の保持部材22(あるいは第1の反射器220)の傾きおよび位置を調整することが可能となっている。同様に、第1実施形態に係る光共振器20では、アライメント機構として、第2の反射器240が取り付けられた第2の保持部材24を押圧する傾き調節ネジ251~253を有しており、これらネジの挿入位置(挿入の深さ)を調整することで、第2の保持部材24(あるいは第2の反射器240)の傾きおよび位置を調整することが可能となっている。また、本実施形態において、傾き調節ネジ231~233,251~253は、ユーザやメンテナンス担当者が外部から操作することが可能となっており、光共振器20を分解しなくても、第1の反射器220および第2の反射器240の傾きを含む位置を簡易に調節することができる。さらに、本実施形態において、半導体レーザー素子11を用いることで、装置全体として小型化することができ、装置の持ち運びが可能となるが、その分、持ち運びによる振動や外部からの衝撃を受けやすくなり、光共振器20における第1の反射器220および第2の反射器240の傾きや位置が変化しやすくなるところ、ユーザやメンテナンス担当者が簡易に第1の反射器220および第2の反射器240の傾きや位置を調整することが可能とすることで、より持ち運びに適した装置を提供することが可能となる。
【0035】
《第2実施形態》
図6は、第2実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1aを示す構成図である。図6に示すように、第2実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1aは、主な構成として、半導体レーザー素子11と、光共振器20aと、複数の検出装置30とを有している。
【0036】
図7は、第2実施形態に係る光共振器20aの側面断面図であり、図8は、光共振器20aの側面断面の部分拡大図である。なお、図7および図8は、図6のVII-VII線に沿う側面断面図である。また、図9(A)は、第2実施形態に係る光共振器20aの正面図であり、図9(B)は、第2実施形態に係る光共振器20aの背面図である。さらに、図10は、図7のX-X線に沿う正面断面図である。
【0037】
図7に示すように、第2実施形態に係る光共振器20aは、大きく分けて7つの部品から構成されている。具体的に、光共振器20aは、筒体21aと、第1の環状部材28と、第1の保持部材22aと、第1の端部部材23と、第2の環状部材29と、第2の保持部材24aと、第2の端部部材25とを有する。また、本実施形態において、光共振器20aは、4つのOリング26~26を有している。
【0038】
ここで、図6および図7に示すように、第2実施形態に係る光共振器20aも、第1の共振部および第2の共振部を有する。すなわち、半導体レーザー素子11から射出されたレーザー光は、第1の端部部材23および第1の保持部材22aに設けられた貫通孔230,223を通過して、第1の反射器220まで到達する。第1の反射器220まで到達したレーザー光の大部分は第1の反射器220により反射されて、第1の反射器220と半導体レーザー素子11の端面111との間で往復し共振することで、第1の反射器220と半導体レーザー素子11の端面111との間の空間が第1の共振部として機能する。また、半導体レーザー素子11から第1の反射器220へと到達したレーザー光の一部は、第1の反射器220を通過して、筒体21a内部の内部空間Sを進み、第2の反射器240まで到達する。第2の反射器240まで到達したレーザー光の大部分は第2の反射器240により反射され、第1の反射器220と第2の反射器240との間で往復することで共振することで、第1の反射器220と第2の反射器240との間の空間が第2の共振部として機能する。第2の反射器240へと到達したレーザー光の一部は、第2の反射器240を通過し、第2の保持部材24aおよび第2の端部部材25に設けられた貫通孔243,250を通過した後に、ビームディフューザー40により吸収される。
【0039】
筒体21aは、第1の反射器220と、第2の反射器240との間に配置される筒状の部材であり、中空の内部はガスセルを構成する。筒体21aの内部空間Sにおいては、第1の反射器220および第2の反射器240でレーザー光が繰り返し反射され、レーザー光の共振が行われる。また、図7に示すように、筒体21aの内部空間Sは、第1の環状部材28のガス導入口280と連通しており、ガス導入口280から導入された検出対象ガスが流通可能となっている。特に、筒体21aでは、筒体21aの長手方向において、レーザー光が往復するとともに、検出対象ガスが流通するため、レーザー光と検出対象ガスとが衝突する機会が増え、レーザー光が検出対象ガスと衝突することで生じるラマン散乱光を検出しやすくなっている。また、筒体21aは、主にガラスによって構成されており、レーザー光が検出対象ガスと衝突することで生じるラマン散乱光を、筒体21aの側面側に配置された検出装置30で検出可能となっている。なお、筒体21aは、内部側面または外部側面にローパスフィルタを設ける構成とすることもできる。また、筒体21aは、弾性部材であるOリング26,26を介して、第1の環状部材28および第2の環状部材29に隙間なく挟持されるため、筒体21aと、第1の環状部材28および第2の環状部材29との間から検出対象ガスが漏出してしまうことを防止し、気密性を担保することができる。
【0040】
第1の環状部材28は、内部に第1の保持部材22aが収容できるように、環状に形成された金属部材である。第1の環状部材28は、図8に示すように、環の内径が筒体21aの外径よりも大きい第1環状部281と、環の内径が第1環状部281よりも小さく、かつ、筒体21aの外径よりも小さい第2環状部282とを有している。さらに、第1の環状部材28は、ガス導入口280を有しており、ガス導入口280から検出対象ガスを含むガスを筒体21a内に導入することが可能となっている。また、第1の環状部材28と同様に、第2の環状部材29は、内部に第2の保持部材24aが収容できるように、環状に形成された金属部材である。第2の環状部材29も、図8に示すように、環の内径が筒体21aの外径よりも大きい第1環状部291と、環の内径が第1環状部291よりも小さく、かつ、筒体21aの外径よりも小さい第2環状部292とを有している。さらに、第2の環状部材29は、ガス排出口290を有しており、筒体21a内のガスをガス排出口290から排出することが可能となっている。本実施形態においては、ガス導入口280およびガス排出口290は共に筒体21aと連通しており、第1の環状部材28のガス導入口280から導入されたガスは、筒体21aを流通し、第2の環状部材29のガス排出口290から排出されることとなる。
【0041】
第1の保持部材22aは、フランジ部225と、本体部226とを有し、第1の保持部材22aを、本体部226側から第1の環状部材28の環内に挿入することで、第1の保持部材22aと第1の環状部材28とを嵌め合わせることができる。具体的には、図8に示すように、第1の環状部材28の第1環状部281の内径が、第1の保持部材22aのフランジ部225の外径よりも大きく構成されており、また、第1の環状部材28の第2環状部282の内径が、第1の保持部材22aの本体部226の外径よりも大きく構成されている。そのため、第1の保持部材22aは、フランジ部225と第1環状部281との間、および、本体部226と第2環状部282との間に一定の隙間ができた状態で、第1の環状部材28内で保持されることとなる。特に、本実施形態では、第1の保持部材22aのフランジ部225の外径が本体部226の外径よりも大きく、フランジ部225と本体部226との間に段差面227が形成されているとともに、第1の環状部材28の第1環状部281の外径が第2環状部282の外径よりも大きく、第1環状部281と第2環状部282の外径との間にも段差面283が形成されている。そして、第1の保持部材22aの段差面227と、第1の環状部材28の段差面283とが対向しており、対向する段差面227と段差面283との間に弾性部材であるOリング26が配置される。また、本実施形態では、後述するアライメント機構により、第1の保持部材22aがOリング26を押圧するため、Oリング26が第1の保持部材22aの段差面227と第1の環状部材28の段差面283とで圧迫された状態で挟持され、光共振器20aの内部空間Sの気密性を担保する。同様に、第2の保持部材24aも、フランジ部245と、本体部246とを有し、本体部246側から第2の環状部材29の環内に挿入することで、第2の保持部材24aと第2の環状部材29とを嵌め合わせることができる。また、第2の保持部材24aも、フランジ部245と第2の環状部材29の第1環状部291との間、および、本体部246と第2の環状部材29の第2環状部292との間に一定の隙間ができた状態で、第2の環状部材29内で保持される。さらに、第2の保持部材24aの段差面247と第2の環状部材29の段差面293との間にOリング26が配置されるとともに、弾性部材であるOリング26が段差面247と段差面293とに圧迫された状態で挟持されることで、光共振器20aの気密性が担保される。
【0042】
また、第1の保持部材22aでは、第1の反射器220が本体部226に取り付けられている。具体的には、第1の保持部材22aの本体部226は凹部2260を有しており、凹部2260の中に第1の反射器220が嵌め込まれている。本実施形態では、凹部2260内において、第1の反射器220を両面から挟むように、第1の反射器220の両面側に、第1の反射器220の外周縁に沿って一対のOリングが設置されている。第1の保持部材22aでは、凹部2260と連通する貫通孔223が形成されているが、一対のOリングが、第1の反射器220を挟持しながら隙間なく配置されることで、当該Oリングと第1の反射器220とで、光共振器20a内の気密を保っている。同様に、第2の保持部材24aでは、第2の反射器240が本体部246の凹部2460の中に嵌め込まれている。また、第2の保持部材24aでも、凹部2460内において、第2の反射器240を両面から挟むように、第2の反射器240の両面側に、第2の反射器240の外周縁に沿って一対のOリングが設置されており、これにより、第2の反射器240が固定されるとともに、光共振器20aの気密が保たれている。
【0043】
第2実施形態において、第1の端部部材23は、第1の環状部材28に脱着可能となっており、図7に示すように、第1の環状部材28とともに、第1の保持部材22aを保持することができる。第1の端部部材23は、図8および図9に示すように、半導体レーザー素子11から射出されたレーザー光を通過させるための貫通孔230に加えて、傾き調節ネジ(押圧部材)231~233を有する。傾き調節ネジ231~233は、第1の端部部材23の本体を貫通し、第1の保持部材22aの押圧面228に当接可能となっている。また、傾き調節ネジ231~233は、挿入位置(挿入の深さ)が調整可能となっており、傾き調節ネジ231~233を押圧面228側に挿入するほど、傾き調節ネジ231~233が押圧面228を押圧する圧力が高くなり、Oリング26の変形量を大きくさせることができる。これにより、たとえば、図9において上部に位置する傾き調節ネジ231のみを押圧面228側に深く挿入させた場合には、傾き調節ネジ231の先端と当接する位置において、第1の保持部材22aがOリング26を押し潰し、第1の反射器220を下方向に傾けることが可能となる。また、本実施形態では、図9に示すように、第1の保持部材22aの左下側および右下側にも、傾き調節ネジ232,233がそれぞれ設けられているため、3本の傾き調節ネジ231~233により、第1の反射器220の傾きを、上下左右において調整することができる。このように、本実施形態では、傾き調節ネジ231~233が、第1の反射器220の傾きを調整するためのアライメント機構として機能する。
【0044】
また、本実施形態では、図10に示すように、第1の環状部材28にも、アライメント機構として、位置調節ネジ284,285および付勢部材286が設けられている。位置調節ネジ284,285は、第1の保持部材22aの側面229を押圧することで、第1の保持部材22aに保持される第1の反射器220の位置を調整することができる。また、付勢部材286は、コイルばねや板ばねなどの弾性部材であり、第1の環状部材28と第1の保持部材22aとの間に配置される。本実施形態では、第1の保持部材22aを介して、位置調節ネジ284,285と対向する位置に、付勢部材286が配置されるため、第1の保持部材22aを位置調節ネジ284,285が配置された方向に付勢する。これにより、位置調節ネジ284,285の挿入位置(挿入の深さ)に応じて、第1の保持部材22aの位置を上下方向(Z軸方向)および左右方向(X軸方向)に調整することが可能となっている。さらに、本実施形態では、第1の環状部材28と第2の環状部材29とを金属ロッドなどで連結する構成とすることで、光共振器20aの堅牢性を高めることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、傾き調節ネジ231~233または位置調節ネジ284,285に押圧される第1の保持部材22aの押圧面228または側面229の保護を目的として、押圧面228および/または側面229に、傾き調節ネジ231~233および位置調節ネジ284,285よりも高硬度の保護部材を配置する構成とすることができる。このような保護部材としては、たとえば、サファイア製のコンタクトパットを用いることができる。
【0046】
また、第2実施形態では、光共振器20a(筒体21a)の側面に、4つの検出装置30が配置されている。検出装置30は、筒体21a内の内部空間Sにおいて、レーザー光がガスと衝突して生じた特定波長の光を検出する。また、本実施形態において、検出装置30は、レーザー光がガスと衝突して生じたラマン散乱光を検出する構成としている。ここで、レーザー光の波長が同じ場合でも、レーザー光と衝突するガスの種類に応じてラマン散乱光の波長は変化する。そのため、本実施形態では、4つの検出装置30を用いて、それぞれ異なる波長のラマン散乱光を検出することで、4種類のガスを同時に検出する構成となっている。具体的には、本実施形態では、検出装置30の前にそれぞれ異なる特定の波長の光のみを透過するバンドパスフィルタ33a~33dを設けている。これにより、本実施形態において、外部共振器型レーザー装置1aは、複数の検出装置30により、特定の4種類のガスに由来する光を一度に同時に検出することができる。
【0047】
次いで、第2実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1aの実施例について説明する。本実施例では、外部共振器型レーザー装置1aにより、空気中の酸素、窒素、二酸化炭素および水蒸気の検出、水素ガス中の酸素(10ppm)の検出、アルゴンガス中のアンモニア(1ppm)の検出を行った。
【0048】
図11は、空気中の酸素、窒素、二酸化炭素および水蒸気を検出した結果を示すグラフである。具体的には、図11(A)は、酸素および窒素の検出結果を示すグラフであり、図11(B)は、二酸化炭素の検出結果を示すグラフであり、図11(C)は、水蒸気の検出結果を示すグラフである。図11(A)~(C)に示すように、本実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1aを用いることで、空気中の酸素、窒素、二酸化炭素、水蒸気を検出できることが確認できた。
【0049】
また、図12(A)は、水素ガス中に10ppmの酸素ガスを混入した場合の、酸素ガスの検出結果を示すグラフである。酸素ガスが10ppmである場合も、酸素ガスを検出することができることが分かった。なお、図12(A)に示すグラフでは、水素ガスだけの場合の検出結果も重畳している。
【0050】
さらに、図12(B)は、アルゴンガス中に1ppmのアンモニアガスを混入した場合の、アンモニアガスの検出結果を示すグラフである。また、図12(B)に示すグラフでは、アルゴンガスだけの場合の検出結果も重畳している。このように、アンモニアガスが含まれる場合に、アンモニアガスが含まれない場合の検出結果と比較することで、アンモニアガスでは1ppmという微量である場合も、アンモニアガスの存在を検知することが可能となる。
【0051】
以上のように、第2実施形態に係る光共振器20aでは、導光部材として、筒体21aおよび第1の環状部材28および第2の環状部材29を有し、第1の環状部材28および第2の環状部材29が、第1の保持部材22aおよび第2の保持部材24aを挿入可能な凹部として機能している。そして、第1の保持部材22aと第1の環状部材28とにより囲われた空間である第1の収容部C1内に、第1の反射器220が収容され、第2の保持部材24aと第2の環状部材29とにより囲われた空間である第2の収容部C2内に第2の反射器240が収容される。これにより、第2実施形態に係る光共振器20aでも、第1実施形態に係る光共振器20と同様に、光共振器20aをコンパクトに構成することができる。
【0052】
また、第2実施形態に係る光共振器20aでは、アライメント機構として、第1の反射器220が取り付けられた第1の保持部材22aを押圧する傾き調節ネジ231~233および位置調節ネジ284,285を有しており、これらネジの挿入位置(挿入の深さ)を調整することで、第1の保持部材22a(あるいは第1の反射器220)の傾きおよび位置を調整することが可能となっている。同様に、第2実施形態に係る光共振器20aでは、アライメント機構として、第2の反射器240が取り付けられた第2の保持部材24aを押圧する傾き調節ネジ251~253および位置調節ネジ294,295を有しており、これらネジの挿入位置(挿入の深さ)を調整することで、第2の保持部材24a(あるいは第2の反射器240)の傾きおよび位置を調整することが可能となっている。
【0053】
《第3実施形態》
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図13は、第3実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1bを示す構成図である。第3実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1bは、単一の検出装置30を備え、当該検出装置30が、半導体レーザー素子11および光共振器20aと一直線となる位置に配置される。より具体的には、半導体レーザー素子11、光共振器20aおよび検出装置30がともに、半導体レーザー素子11から発せられるレーザー光の光軸上に配置される。また、第3実施形態では、光共振器20aにおいてレーザー光が検出対象ガスと衝突して生じたラマン散乱光が、光共振器20aの第2の端部部材25から外部へと放射された後に、検出装置30に入射し、検出装置30により検出される構成となっている。
【0054】
また、第3実施形態では、検出装置30において、ラマン散乱光を効率的に検出するため、筒体21aの内面は、たとえば蒸着などの手法により、ラマン散乱光を高反射するための光学コーティングや、アルミニウムなどの金属の反射膜を形成しておくことが好ましい。これにより、筒体21aの側面(レーザー光の光軸と交差する方向)からラマン散乱光が外部へと透過することを防止し、レーザー光の光軸上に位置する検出装置30に、ラマン散乱光を効率的に入射させることができる。
【0055】
また、第3実施形態に係る検出装置30は、バンドパスフィルタ33の切り替え機構を有しており、バンドパスフィルタ33を自在に切り替え可能となっている。そのため、バンドパスフィルタ33を検出したいガスの種類に応じて切り替えることで、所望するガスを検出することが可能となっている。
【0056】
以上のように、第3実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1bも、光共振器20aに、第1の反射器220および第2の反射器240の傾きや位置を調整可能なアライメント機構を有しており、第1の反射器220および第2の反射器240の傾きを含む位置を容易に調節することが可能となっている。また、第3実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1bでは、単一の検出装置30を有する構成であるとともに、半導体レーザー素子11、光共振器20a、検出装置30が一直線に配置されるため、装置全体をより小型化することが可能となる。なお、第3実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1bでは、レーザー光の光軸Lに沿ってラマン散乱光を検出することで、第2実施形態に係る外部共振器型レーザー装置1aと同等以上の感度で、検出対象ガスを検出することが確認された。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0058】
たとえば、第3実施形態では、単一の検出装置30を、半導体レーザー素子11および光共振器20aと一直線となる位置(レーザー光の光軸上となる位置)に配置する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、半導体レーザー素子11および光共振器20aと一直線となる位置(レーザー光の光軸上となる位置)に加えて、第2実施形態のように、筒体21aの側面(レーザー光の光軸と直交する方向)にも、複数の検出装置30を配置し、半導体レーザー素子11および光共振器20aと一直線となる位置および筒体21aの側面でラマン散乱光を検出する構成とすることができる。たとえば、第2実施形態に係る検出装置30の配置構成と、第3実施形態に係る検出装置30の検出構成とを組み合わせることで、5個の検出装置30でラマン散乱光を検出することができるため、同時に5種類のガスを検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1,1a,1b…外部共振器型レーザー装置
11…半導体レーザー素子
111,112…端面
12…レンズ
13…バンドパスフィルタ
20,20a…光共振器
21…導光部材
210…ガス流通部
211…ガス導入口
212…ガス排出口
213…第1の凹部
214…第2の凹部
215…第1の細径貫通孔
216…第2の細径貫通孔
217…シリンドリカルミラー
218…シリンドリカルレンズ
219…光学フィルタ
22,22a…第1の保持部材
220…第1の反射器
221…第1の面
222…第2の面
223…貫通孔
224…保護部材
225…フランジ部
226…本体部
2260…凹部
227…段差面
228…押圧面
229…側面
23…第1の端部部材
230…貫通孔
231~233…傾き調節ネジ
24…第2の保持部材
240…第2の反射器
241…第1の面
242…第2の面
243…貫通孔
244…保護部材
245…フランジ部
246…本体部
2460…凹部
247…段差面
248…押圧面
249…側面
25…第2の端部部材
250…貫通孔
251~253…傾き調節ネジ
26~26…Oリング
27,27…アクチュエーター
28…第1の環状部材
280…ガス導入口
281…第1環状部
282…第2環状部
283…段差面
284,285…位置調節ネジ
286…付勢部材
29…第2の環状部材
290…ガス排出口
291…第1環状部
292…第2環状部
293…段差面
294,295…位置調節ネジ
30…検出装置
31…フォーカスレンズ
32…フィルタ切り替え装置
33,33,33,33a~33d…バンドパスフィルタ
40…ビームディフューザー
50…ピエゾコントローラー

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13