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特開2024-155052プリンタおよびプリンタの吐出異常検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155052
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】プリンタおよびプリンタの吐出異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 107
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069434
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】久米 宏明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀章
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 諒
(72)【発明者】
【氏名】柴田 拓歩
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB27
2C056EB36
2C056FA11
(57)【要約】
【課題】印刷品質の低下を抑制する。
【解決手段】プリンタ100では、検出パターン印刷部43は、インクヘッド28が行き方向Y1、帰り方向Y2に移動しているときに、それぞれ複数の第1検出図形L1、複数の第2検出図形L2を印刷して、媒体5に検出パターンPT1を印刷する。位置検出部45は、センサ38を用いて、媒体5に印刷された複数の第1検出図形L1と、複数の第2検出図形L2を検出し、算出部47は、検出パターンPT1の検出組G1毎に、第1検出図形L1と第2検出図形L2との最大ズレ量V1を算出する。特定部49は、最大ズレ量V1が最も小さい検出組G1を最小検出組G20として特定する。検出部51は、最小検出組G20が、予め定められた基準検出組G10と異なるとき、検出パターンPT1を印刷したインクヘッド28に、吐出異常が発生している可能性があることを検出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を支持する支持台と、
前記支持台に支持された媒体にインクを吐出し、第1方向に並んで配置された複数のノズルを有するインクヘッドと、
媒体に印刷された検出パターンを読み取るセンサを有するセンサヘッドと、
印刷時に前記インクヘッドを、前記第1方向と交差する第2方向に移動させ、前記検出パターンを前記センサが読み取るときに前記センサヘッドを前記第2方向に移動させる移動機構と、
制御装置と、
を備え、
前記検出パターンは、
前記第2方向に並び、前記第1方向に延びた複数の第1検出図形を有する第1パターンと、
前記第1検出図形と対になるように前記第2方向に並び、前記第1方向に延びた複数の第2検出図形を有する第2パターンと、
を備え、
前記第2方向のうち一方から他方に向かう方向を行き方向とし、前記第2方向のうち他方から一方に向かう方向を帰り方向としたとき、
対になる前記第1検出図形と前記第2検出図形を検出組としたとき、前記行き方向に向かうにしたがって、前記検出組における前記第1検出図形と前記第2検出図形の間隔は、前記第2方向に所定の検出間隔ずつズレて配置され、
データ上において複数の前記検出組のうち、前記第1検出図形と前記第2検出図形の前記第2方向のズレが最も小さい前記検出組を基準検出組としたとき、
前記制御装置は、
前記インクヘッドが前記行き方向に移動しているときに前記第1パターンを印刷し、前記インクヘッドが前記帰り方向に移動しているときに前記第2パターンを印刷することで、媒体に前記検出パターンを印刷する検出パターン印刷部と、
媒体に印刷された前記検出パターン上を、前記センサヘッドが前記第2方向に移動しているときに、媒体に印刷された複数の前記第1検出図形および複数の前記第2検出図形の位置を前記センサによって検出する位置検出部と、
媒体に印刷された前記検出組毎に、前記第1検出図形と前記第2検出図形との間の前記第2方向の最大ズレ量を算出する算出部と、
前記最大ズレ量が最も小さい前記検出組を最小検出組として特定する特定部と、
前記最小検出組が前記基準検出組と異なるとき、前記検出パターンを印刷した前記インクヘッドに、吐出異常が発生している可能性があることを検出する検出部と、
を備えた、プリンタ。
【請求項2】
前記インクヘッドは、第1インクヘッドと、第2インクヘッドとを有し、
前記第1インクヘッドから吐出されたインクによって印刷された前記検出パターンを第1検出パターンとし、前記第2インクヘッドから吐出されたインクによって印刷された前記検出パターンを第2検出パターンとしたとき、
前記検出パターン印刷部は、前記第1検出パターンおよび前記第2検出パターンを媒体に印刷し、
前記位置検出部は、前記第1検出パターンおよび前記第2検出パターンのそれぞれに対して、複数の前記第1検出図形と複数の前記第2検出図形の位置を検出し、
前記算出部は、前記第1検出パターンおよび前記第2検出パターンのそれぞれに対して、前記検出組毎に前記最大ズレ量を算出し、
前記特定部は、前記第1検出パターンおよび前記第2検出パターンのそれぞれに対して前記最小検出組を特定し、
前記検出部は、前記第1検出パターンと前記第2検出パターンのうち、一方の前記検出パターンの前記最小検出組が前記基準検出組と同じであり、かつ、他方の前記検出パターンの前記最小検出組が前記基準検出組と異なるとき、前記最小検出組が前記基準検出組と異なる方の前記検出パターンを印刷した前記インクヘッドに吐出異常が発生していることを検出する、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項3】
複数の前記インクヘッドを備え、
前記検出パターン印刷部は、複数の前記インクヘッドのそれぞれから吐出されたインクによって形成された複数の前記検出パターンを媒体に印刷し、
前記位置検出部は、複数の前記検出パターンのそれぞれに対して、複数の前記第1検出図形と複数の前記第2検出図形の位置を検出し、
前記算出部は、複数の前記検出パターンのそれぞれに対して、前記検出組毎に前記最大ズレ量を算出し、
前記特定部は、複数の前記検出パターンのそれぞれに対して前記最小検出組を特定し、
前記検出部は、複数の前記検出パターンのうち、少なくとも1つ以上の一方の前記検出パターンの前記最小検出組が前記基準検出組と同じであり、かつ、残りの他方の前記検出パターンの前記最小検出組が前記基準検出組と異なるとき、前記最小検出組が前記基準検出組と異なる方の前記検出パターンを印刷した前記インクヘッドに吐出異常が発生していることを検出する、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項4】
前記検出部は、複数の前記検出パターンの全てにおける前記最小検出組が前記基準検出組と同じように異なるとき、前記移動機構に異常が発生していることを検出する、請求項3に記載されたプリンタ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記検出部によって前記移動機構に異常が発生していることが検出されたとき、前記移動機構に異常が発生していることを通知する通知部を備えた、請求項4に記載されたプリンタ。
【請求項6】
前記制御装置は、前記検出部によって検出された、吐出異常が発生している可能性がある前記インクヘッドが存在することを通知する通知部を備えた、請求項1から4までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項7】
前記検出組における前記第1検出図形に対する前記第2検出図形のデータ上の前記第2方向のズレをデータズレ量としたとき、
前記特定部は、複数の前記検出組における前記最大ズレ量と前記データズレ量とに基づいて、前記データズレ量が大きくなるに連れて前記最大ズレ量が小さくなる第1近似直線と、前記データズレ量が大きくなるに連れて前記最大ズレ量が大きくなる第2近似直線とを算出し、前記第1近似直線と前記第2近似直線との交点から最も近い前記検出組を前記最小検出組として特定する、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項8】
双方向印刷可能なプリンタにおけるインクの吐出異常を、検出パターンを用いて検出する吐出異常検出方法であって、
前記プリンタは、
媒体を支持する支持台と、
前記支持台に支持された媒体にインクを吐出し、第1方向に並んで配置された複数のノズルを有するインクヘッドと、
印刷時に前記インクヘッドを、前記第1方向と交差する第2方向に移動させる移動機構と、
を備え、
前記検出パターンは、
前記第2方向に並び、前記第1方向に延びた第1検出図形を有する第1パターンと、
前記第1検出図形と対になるように前記第2方向に並び、前記第1方向に延びた第2検出図形を有する第2パターンと、
を備え、
前記第2方向のうち一方から他方に向かう方向を行き方向とし、前記第2方向のうち他方から一方に向かう方向を帰り方向としたとき、
対になる前記第1検出図形と前記第2検出図形を検出組としたとき、前記行き方向に向かうにしたがって、前記検出組における前記第1検出図形と前記第2検出図形の間隔は、前記第2方向に所定の検出間隔ずつズレて配置され、
複数の前記検出組のうち、前記第1検出図形と前記第2検出図形の前記第2方向のズレが最も小さい前記検出組を基準検出組としたとき、
前記インクヘッドを前記行き方向に移動させて前記第1パターンを印刷し、前記インクヘッドを前記帰り方向に移動させて前記第2パターンを印刷することで、媒体に前記検出パターンを印刷する検出パターン印刷工程と、
媒体に印刷された前記検出パターンにおける複数の前記第1検出図形および複数の前記第2検出図形の位置を検出する位置検出工程と、
媒体に印刷された前記検出組毎に、前記第1検出図形と前記第2検出図形との間の前記第2方向の最大ズレ量を算出する算出工程と、
前記最大ズレ量が最も小さい前記検出組を最小検出組として特定する特定工程と、
前記最小検出組が前記基準検出組と異なるとき、前記検出パターンを印刷した前記インクヘッドに、吐出異常が発生している可能性があることを検出する検出工程と、
を包含する、プリンタの吐出異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタおよびプリンタの吐出異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、インクを吐出し、かつ、主走査方向に移動可能なインクヘッドを備えたインクジェットプリンタが開示されている。インクヘッドは、インクを吐出する複数のノズルが副走査方向に一直線に並んだノズル列を有している。
【0003】
このインクジェットプリンタは、双方向印刷が可能なプリンタである。双方向印刷では、インクヘッドが主走査方向の往路へ移動しているときと、復路に移動しているときとの両方で媒体に対してインクを吐出して印刷が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-18375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されたインクジェットプリンタでは、インクヘッドに対して、インクが吐出されないノズル抜けや、インクが適切に吐出されずに媒体に対するインクの着弾位置がズレるなどの吐出異常が発生することがあり得る。このようにインクヘッドに吐出異常が発生している状態で印刷が行われると、印刷品質が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクヘッドの吐出異常に起因して印刷品質が低下することを抑制可能なプリンタおよびプリンタの吐出異常検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプリンタは、媒体を支持する支持台と、前記支持台に支持された媒体にインクを吐出し、第1方向に並んで配置された複数のノズルを有するインクヘッドと、媒体に印刷された検出パターンを読み取るセンサを有するセンサヘッドと、印刷時に前記インクヘッドを、前記第1方向と交差する第2方向に移動させ、前記検出パターンを前記センサが読み取るときに前記センサヘッドを前記第2方向に移動させる移動機構と、制御装置と、を備えている。前記検出パターンは、前記第2方向に並び、前記第1方向に延びた複数の第1検出図形を有する第1パターンと、前記第1検出図形と対になるように前記第2方向に並び、前記第1方向に延びた複数の第2検出図形を有する第2パターンと、を備えている。前記第2方向のうち一方から他方に向かう方向を行き方向とし、前記第2方向のうち他方から一方に向かう方向を帰り方向とする。対になる前記第1検出図形と前記第2検出図形を検出組としたとき、前記行き方向に向かうにしたがって、前記検出組における前記第1検出図形と前記第2検出図形の間隔は、前記第2方向に所定の検出間隔ずつズレて配置されている。データ上において複数の前記検出組のうち、前記第1検出図形と前記第2検出図形の前記第2方向のズレが最も小さい前記検出組を基準検出組とする。前記制御装置は、検出パターン印刷部と、位置検出部と、算出部と、特定部と、検出部とを備えている。前記検出パターン印刷部は、前記インクヘッドが前記行き方向に移動しているときに前記第1パターンを印刷し、前記インクヘッドが前記帰り方向に移動しているときに前記第2パターンを印刷することで、媒体に前記検出パターンを印刷する。前記位置検出部は、媒体に印刷された前記検出パターン上を、前記センサヘッドが前記第2方向に移動しているときに、媒体に印刷された複数の前記第1検出図形および複数の前記第2検出図形の位置を前記センサによって検出する。前記算出部は、媒体に印刷された前記検出組毎に、前記第1検出図形と前記第2検出図形との間の前記第2方向の最大ズレ量を算出する。前記特定部は、前記最大ズレ量が最も小さい前記検出組を最小検出組として特定する。前記検出部は、前記最小検出組が前記基準検出組と異なるとき、前記検出パターンを印刷した前記インクヘッドに、吐出異常が発生している可能性があることを検出する。
【0008】
例えば吐出異常が発生している状態のインクヘッドによって検出パターンを印刷すると、行き方向で印刷される第1検出図形の少なくとも一部、および、帰り方向で印刷される第2検出図形の少なくとも一部が主走査方向にズレて印刷される。その結果、吐出異常が発生していない場合には、最大ズレ量が最も小さい最小検出組が基準検出組となるところ、インクヘッドに吐出異常が発生していると、最小検出組が基準検出組と異なる。よって、最小検出組が基準検出組と異なるとき、最小検出組が基準検出組と異なる方の検出パターンを印刷したインクヘッドに吐出異常が発生している可能性があることを検出することで、ユーザは、検出結果からインクヘッドに吐出異常が発生している可能性があることを知ることができる。したがって、印刷前に、検出パターンを媒体に印刷することで、インクヘッドに吐出異常が発生している可能性があることをユーザが知ることができる。そのため、インクヘッドの吐出異常に起因して印刷品質が低下することを抑制することができる。
【0009】
本発明に係るプリンタの吐出異常検出方法は、双方向印刷可能なプリンタにおけるインクの吐出異常を、検出パターンを用いて検出する吐出異常検出方法である。前記プリンタは、媒体を支持する支持台と、前記支持台に支持された媒体にインクを吐出し、第1方向に並んで配置された複数のノズルを有するインクヘッドと、印刷時に前記インクヘッドを、前記第1方向と交差する第2方向に移動させる移動機構と、を備えている。前記検出パターンは、前記第2方向に並び、前記第1方向に延びた第1検出図形を有する第1パターンと、前記第1検出図形と対になるように前記第2方向に並び、前記第1方向に延びた第2検出図形を有する第2パターンと、を備えている。前記第2方向のうち一方から他方に向かう方向を行き方向とし、前記第2方向のうち他方から一方に向かう方向を帰り方向とする。対になる前記第1検出図形と前記第2検出図形を検出組としたとき、前記行き方向に向かうにしたがって、前記検出組における前記第1検出図形と前記第2検出図形は、前記第2方向に所定の検出間隔ずつズレて配置されている。複数の前記検出組のうち、前記第1検出図形と前記第2検出図形の前記第2方向のズレが最も小さい前記検出組を基準検出組とする。本発明に係るプリンタの吐出異常検出方法は、検出パターン印刷工程と、位置検出工程と、算出工程と、特定工程と、検出工程とを包含する。前記検出パターン印刷工程では、前記インクヘッドを前記行き方向に移動させて前記第1パターンを印刷し、前記インクヘッドを前記帰り方向に移動させて前記第2パターンを印刷することで、媒体に前記検出パターンを印刷する。前記位置検出工程では、媒体に印刷された前記検出パターンにおける複数の前記第1検出図形および複数の前記第2検出図形の位置を検出する。前記算出工程では、媒体に印刷された前記検出組毎に、前記第1検出図形と前記第2検出図形との間の前記第2方向の最大ズレ量を算出する。前記特定工程では、前記最大ズレ量が最も小さい前記検出組を最小検出組として特定する。前記検出工程では、前記最小検出組が前記基準検出組と異なるとき、前記検出パターンを印刷した前記インクヘッドに、吐出異常が発生している可能性があることを検出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インクヘッドの吐出異常に起因して印刷品質が低下することを抑制可能なプリンタおよびプリンタの吐出異常検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るプリンタの正面図である。
図2】プリントヘッドの底面の構成を模式的に示す図である。
図3】実施形態に係るプリンタのブロック図である。
図4】検出パターンの一例を模式的に示した図である。
図5】検出パターンとインクヘッドとの関係を示した図である。
図6】検出パターンの第1パターンを模式的に示した図である。
図7】検出パターンの第2パターンを模式的に示した図である。
図8】検出組G1aと検出組G1bとの間の検出間隔を示す図である。
図9】インクヘッドの吐出異常検出方法について示したフローチャートである。
図10】第1インクヘッドに吐出異常が発生している場合に、媒体に印刷された第1検出パターン~第4検出パターンを示す図である。
図11】1つのインクヘッドの一部のノズルに吐出異常が発生している場合に、媒体に印刷された検出パターンの1つの検出組の一例を示す図である。
図12】移動機構に異常が発生している場合に、媒体に印刷された第1検出パターン~第4検出パターンを示す図である。
図13】第1近似直線および第2近似直線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るプリンタ100の正面図である。以下の説明において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、ユーザがプリンタ100を正面から見たとき(ここでは、後述の操作パネル13(図1参照)と対向する位置にいるユーザがプリンタ100を見たとき)の前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。本実施形態では、主走査方向Yは第2方向の一例である。ここでは、主走査方向Yのうち一方から他方(ここでは右方から左方)に向かう方向を行き方向Y1という。主走査方向Yのうち他方から一方(ここでは左方から右方)に向かう方向を帰り方向Y2という。符号Xは副走査方向を示している。副走査方向Xは、平面視において主走査方向Yと交差(ここでは直交)している。副走査方向Xは、例えば前後方向である。本実施形態では、副走査方向Xは第1方向の一例である。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものではない。
【0014】
プリンタ100は、媒体5に対して印刷を行う。媒体5は、例えばロール状の記録紙であり、いわゆるロール紙である。なお、媒体5の種類などは特に限定されない。例えば媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。媒体5は、立体物であってもよい。
【0015】
プリンタ100は、インクジェット方式のプリンタであり、いわゆるインクジェットプリンタである。プリンタ100は、いわゆるロールtoロールタイプのプリンタであり、後述の支持台18(図1参照)を副走査方向Xに移動させずに、支持台18に支持された媒体5を副走査方向Xに移動させるように構成されている。ただし、プリンタ100は、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであってもよく、支持台18が副走査方向Xに移動することで、媒体5も副走査方向Xに移動させるように構成されてもよい。また、プリンタ100は、いわゆるガントリータイプのプリンタであってもよく、支持台18に支持された媒体5自体は移動させずに、後述のインクヘッド28(図2参照)が主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動するものであってもよい。
【0016】
図1に示すように、プリンタ100は、プリンタ本体11を備えている。プリンタ本体11は、主走査方向Yに延びたケーシングを有しており、内部に空間を有している。プリンタ本体11には、脚12が設けられている。脚12は、プリンタ本体11を支持し、プリンタ本体11の底面から下方に延びている。
【0017】
プリンタ本体11には、操作パネル13が設けられている。操作パネル13は、ユーザが印刷に関する操作を行うものである。ここでは、操作パネル13は、プリンタ本体11の右側の前面に設けられているが、操作パネル13の設置位置は特に限定されない。操作パネル13は、プリンタ100の各種設定の情報などが表示される表示画面14と、操作キー15とを有している。ユーザは、例えば操作キー15を操作することによって、表示画面14に各種設定の情報を表示したり、各種設定の情報を決定したりすることができる。なお、本実施形態では、操作キー15は、物理的な操作子(例えばボタン)によって構成されているが、例えば表示画面14上に設けられたタッチパネルによって実現されてもよい。
【0018】
プリンタ100は、支持台18と、搬送機構20とを備えている。支持台18は、媒体5を支持する。支持台18に媒体5が支持された状態で、媒体5に対して印刷が行われる。ここでは、媒体5は支持台18の上面に載置されている。支持台18の上面は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっている。
【0019】
搬送機構20は、支持台18に支持された媒体5を副走査方向Xに搬送する機構である。なお、搬送機構20の構成は特に限定されない。本実施形態では、搬送機構20は、グリットローラ21と、ピンチローラ22と、フィードモータ23と、を備えている。グリットローラ21は、支持台18に設けられた円筒状の部材である。ここでは、グリットローラ21は、その上面部を露出させた状態で支持台18に埋設されている。ピンチローラ22は、支持台18の上方に設けられ、媒体5を上から押さえ付けるものである。ピンチローラ22は、グリットローラ21と対向している。フィードモータ23は、例えばグリットローラ21に接続されていてもよい。
【0020】
なお、図1では、ピンチローラ22が2つ配置されているが、実際には、複数(例えば3つ以上)のピンチローラ22が主走査方向Yに並んで配置されている。また、図1では、グリットローラ21も2つ配置されているが、実際には、ピンチローラ22の下方に配置されるようにして、複数のグリットローラ21が主走査方向Yに並んで配置されている。複数のグリットローラ21は、例えば主走査方向Yに延びたシャフト(図示せず)に設けられて連結されている。複数のグリットローラ21のうちの1つのグリットローラ21、または、上記シャフトにフィードモータ23が接続されている。
【0021】
ここでは、グリットローラ21とピンチローラ22との間に媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動する。フィードモータ23の駆動によって、上記シャフトと複数のグリットローラ21が回転し、支持台18に支持された媒体5は、副走査方向Xに搬送される。
【0022】
図1に示すように、プリンタ100は、ガイドレール25と、プリントヘッド26と、センサヘッド36とを備えている。ガイドレール25は、支持台18よりも上方に配置されている。ガイドレール25は、主走査方向Yに延びるようにプリンタ本体11に固定されている。
【0023】
プリントヘッド26は、ガイドレール25に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。図2は、プリントヘッド26の底面の構成を模式的に示す図である。プリントヘッド26は、インクキャリッジ27と、複数のインクヘッド28とを備えている。図1に示すように、インクキャリッジ27は、ガイドレール25に摺動可能に係合している。
【0024】
インクヘッド28は、支持台18に支持された媒体5に向かってインクを吐出する。インクヘッド28の数は特に限定されないが、図2に示すように、ここでは4つである。複数のインクヘッド28は、主走査方向Yに並ぶように配置されている。複数のインクヘッド28は、インクキャリッジ27に支持されている。以下、複数のインクヘッド28のことを、それぞれ第1インクヘッド28A、第2インクヘッド28B、第3インクヘッド28C、および、第4インクヘッド28Dともいう。インクヘッド28は、第1インクヘッド28Aと、第2インクヘッド28Bと、第3インクヘッド28Cと、第4インクヘッド28Dとを有している。以下の説明において、第1インクヘッド28A~第4インクヘッド28Dに対して共通のことは、符号28を適宜用いて説明し、第1インクヘッド28A~第4インクヘッド28Dの個々のことは、符号28A~28Dを適宜用いて説明することとする。
【0025】
1つのインクヘッド28は、インクが吐出され、かつ、副走査方向Xに並んで配置された複数のノズル29を有している。また、インクヘッド28は、複数のノズル29が形成されたノズル面29bを有している。ノズル面29bは、インクヘッド28の底面を構成している。ここでは、1つのインクヘッド28における複数のノズル29の列のことをノズル列29aという。本実施形態では、1つのインクヘッド28に対するノズル列29aの数は1つであるが、2つ以上の複数であってもよい。
【0026】
第1インクヘッド28A~第4インクヘッド28Dは、それぞれ異なる色のインクを吐出する。ここでは、ノズル列29a毎に、異なる色のインクを吐出する。例えばインクヘッド28は、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどのプロセスカラーインク、および、クリアインク、ホワイトインクなどの特色インクなどのうちの何れかの色のインクを吐出する。例えば第1インクヘッド28A、第2インクヘッド28B、第3インクヘッド28C、第4インクヘッド28Dは、それぞれシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクを吐出するように構成されている。
【0027】
図1に示すように、センサヘッド36は、プリントヘッド26と主走査方向Yに並んで配置されており、ガイドレール25に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。ここでは、センサヘッド36は、プリントヘッド26の左方に配置されているが、プリントヘッド26の右方に配置されていてもよい。センサヘッド36は、センサキャリッジ37と、センサ38とを有している。センサキャリッジ37は、ガイドレール25に摺動可能に係合している。
【0028】
センサ38は、センサキャリッジ37に支持されている。センサ38は、媒体5に印刷された、後述の検出パターンPT1(図4参照)を読み取る(言い換えると検出する)ためのセンサである。センサ38は、媒体5に対する検出パターンPT1の位置を読み取るものであり、かつ、検出パターンPT1と媒体5との境界の位置を読み取るものである。センサ38の種類は特に限定されないが、例えば光学式である。センサ38は例えばフォトセンサである。センサ38は、カラーを検出することが可能であり、例えばRGBでカラーを表現することが可能なセンサである。
【0029】
本実施形態では、プリントヘッド26とセンサヘッド36とは連結可能なものである。センサヘッド36は、プリントヘッド26と離反して単独で主走査方向Yに移動可能である。プリントヘッド26は、センサヘッド36と連結し、センサヘッド36と共に主走査方向Yに移動可能である。
【0030】
図1に示すように、プリンタ100は、印刷時にインクヘッド28(図2参照)を主走査方向Y(ここでは、行き方向Y1および帰り方向Y2)に移動させ、検出パターンPT1(図4参照)をセンサ38が読み取るときにセンサヘッド36を主走査方向Yに移動させる移動機構30を備えている。なお、移動機構30の構成は特に限定されない。図1に示すように、移動機構30は、ガイドレール25の左右の両端部の周囲に設けられた左右のプーリ31a、31bと、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられたベルト32と、右のプーリ31bに接続されたキャリッジモータ33とを備えている。ベルト32には、センサヘッド36が固定されているが、プリントヘッド26が固定されてもよい。ここでは、キャリッジモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、左右のプーリ31a、31bの間においてベルト32が走行する。このことによって、センサヘッド36が主走査方向Yに移動する。センサヘッド36にプリントヘッド26が連結されているときには、センサヘッド36と共にプリントヘッド26が主走査方向Yに移動する。
【0031】
図1に示すように、プリンタ100は、制御装置40を備えている。制御装置40は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。制御装置40は、例えばホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリと、を備えている。なお、制御装置40は必ずしもプリンタ100の内部に設けられている必要はなく、例えばプリンタ100の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ100と通信可能に接続されたコンピュータなどであってもよい。
【0032】
図3は、プリンタ100のブロック図である。本実施形態では、図3に示すように、制御装置40は、操作パネル13(詳しくは、表示画面14および操作キー15)、搬送機構20(詳しくはフィードモータ23)、インクヘッド28、移動機構30(詳しくはキャリッジモータ33)、および、センサヘッド36のセンサ38とそれぞれ通信可能に接続されている。制御装置40は、操作パネル13、搬送機構20、インクヘッド28、移動機構30およびセンサ38を制御可能に構成されている。
【0033】
ところで、本実施形態では、インクヘッド28のノズル29(図2参照)に対して吐出異常が発生することがあり得る。以下、ノズル29の吐出異常のことを、インクヘッド28の吐出異常ともいう。例えばノズル29が形成されているインクヘッド28のノズル面29b(図2参照)には、インクが付着して半硬化した状態になることがあり得る。このようにノズル面29bに付着したインクが半硬化した状態で、ノズル面29bに対してワイピングが行われると、半硬化した状態のインクがノズル29に入り込み得る。その結果、ノズル29においてノズル抜けや、インクの着弾位置のズレなどの吐出異常が発生する。また、インクヘッド28が経年劣化することによって、すなわちインクヘッド28の初期状態からの変化(劣化)によって、ノズル29に対して吐出異常が発生する。吐出異常が発生した場合、ユーザは、プリンタ100のメンテナンス作業などを行うサービスマンに連絡をして、吐出異常が発生したインクヘッド28の交換が行われる。従来では、ユーザは、媒体5に印刷された実際の印刷物を目視してインクの抜けなどを発見したときに、インクヘッド28の吐出異常が発生していることを知ることが多かった。上記のようにユーザが吐出異常を知った後に、サービスマンにインクヘッド28を交換する旨の連絡をするため、サービスマンがインクヘッド28を交換するまでプリンタ100を使用することができなかった。その結果、プリンタ100の使用効率が低下することがあった。また、仮にインクヘッド28に吐出異常が発生している状態で印刷が行われると、印刷品質が低下するおそれがあった。
【0034】
そこで、本実施形態では、印刷前にインクヘッド28に吐出異常が発生しているか否かの検出を行うこととする。
【0035】
本実施形態に係るプリンタ100は、いわゆる双方向印刷が可能なプリンタである。双方向印刷とは、主走査方向Yの行き方向Y1にインクヘッド28が移動しているときにインクヘッド28からインクを吐出して媒体5に印刷(以下、行き方向印刷という。)すると共に、主走査方向Yの帰り方向Y2にインクヘッド28が移動しているときにインクヘッド28からインクを吐出して媒体5に印刷(以下、帰り方向印刷という。)することをいう。この双方向印刷の行き方向印刷と帰り方向印刷において、媒体5の同じ位置にインクを吐出しようとしたときに、インクの着弾位置について主走査方向Yにズレが生じることがあり得る。この場合、例えば帰り方向印刷におけるインクの吐出タイミングを調整することで、双方向印刷におけるインクの着弾位置の調整(以下、双方向印刷の調整という。)を行うことができる。図4は、検出パターンPT1の一例を模式的に示した図である。双方向印刷の調整では、媒体5に印刷した検出パターンPT1(図4参照)に基づいて、補正値を決定し、当該補正値を用いて帰り方向印刷におけるインクの吐出タイミングを調整することで、双方向印刷におけるインクの着弾位置を調整する。
【0036】
本実施形態では、インクヘッド28の吐出異常の検出を行う際、双方向印刷の調整で用いられる検出パターンPT1を使用する。
【0037】
次に、図4に示す検出パターンPT1について説明する。以下で説明する検出パターンPT1の構成は、理論上の構成、すなわちデータ上の構成であり、プリンタ100に異常が発生していないときの理想的な構成である。検出パターンPT1は、支持台18に支持された媒体5に印刷されるものである。図5は、検出パターンPT1とインクヘッド28との関係を示した図である。図5に示すように、検出パターンPT1は、インクヘッド28毎(言い換えると、ノズル列29a(図2参照)毎)に存在する。本実施形態では、検出パターンPT1は、第1検出パターンPT1Aと、第2検出パターンPT1Bと、第3検出パターンPT1Cと、第4検出パターンPT1Dとを有している。第1検出パターンPT1Aは、第1インクヘッド28Aから吐出されたインクによって印刷されたパターンである。第2検出パターンPT1Bは、第2インクヘッド28Bから吐出されたインクによって印刷されたパターンである。また、第3検出パターンPT1Cは、第3インクヘッド28Cから吐出されたインクによって印刷されたパターンであり、第4検出パターンPT1Dは、第4インクヘッド28Dから吐出されたインクによって印刷されたパターンである。なお、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dは、インクを吐出する対象のインクヘッド28が異なるのみで、構成は同じである。
【0038】
本実施形態では、図4に示すように、検出パターンPT1は、第1パターンPT11と、第2パターンPT12とを有している。図6は、検出パターンPT1の第1パターンPT11を模式的に示した図である。第1パターンPT11は、インクヘッド28が主走査方向Yの行き方向Y1に移動しているときに印刷されるパターンである。図6に示すように、第1パターンPT11は、複数の第1検出図形L1を有している。第1パターンPT11が有する第1検出図形L1の数は特に限定されないが、ここでは7つである。以下の説明では、第1検出図形L1について、左から順に符号L1a~L1gを適宜付すことにする。本実施形態では、第1検出図形L1は、副走査方向Xに延びた直線である。各第1検出図形L1a~L1gは、同じ長さ、および、同じ太さを有している。
【0039】
複数の第1検出図形L1は、主走査方向Yに第1基準間隔SP1で等間隔に並んで配置されている。ここで第1基準間隔SP1とは、隣り合う第1検出図形L1の主走査方向Yの距離のことをいう。本実施形態では、複数の第1検出図形L1のそれぞれの前端の位置は、副走査方向Xにおいて同じ位置であり、複数の第1検出図形L1のそれぞれの後端の位置は、副走査方向Xにおいて同じ位置である。
【0040】
図4に示す第2パターンPT12は、インクヘッド28が主走査方向Yの帰り方向Y2に移動しているときに印刷されるパターンである。図7は、検出パターンPT1の第2パターンPT12を模式的に示した図である。図7に示すように、第2パターンPT12は、複数の第2検出図形L2を有している。図4に示すように、第2検出図形L2の数は、第1検出図形L1の数と同じであり、ここでは7つである。以下の説明では、第2検出図形L2について、左から順に符号L2a~L2gを適宜付すことにする。本実施形態では、第2検出図形L2は、副走査方向Xに延びた直線である。各第2検出図形L2a~L2gは、同じ長さ、および、同じ太さを有している。第2検出図形L2は、第1検出図形L1と同じ長さ、および、同じ太さを有している。しかしながら、第2検出図形L2は、第1検出図形L1と長さ、または、太さが異なっていてもよい。
【0041】
図7に示すように、複数の第2検出図形L2は、主走査方向Yに第2基準間隔SP2で等間隔に並んで配置されている。第2基準間隔SP2とは、隣り合う第2検出図形L2の主走査方向Yの距離のことをいう。第2基準間隔SP2は、第1基準間隔SP1(図6参照)と異なる値であり、ここでは第1基準間隔SP1よりも大きい。ただし、第2基準間隔SP2は、第1基準間隔SP1よりも小さくてもよい。複数の第2検出図形L2のそれぞれの前端の位置は、副走査方向Xにおいて同じ位置であり、複数の第2検出図形L2のそれぞれの後端の位置は、副走査方向Xにおいて同じ位置である。本実施形態では、図4に示すように、第2検出図形L2は、第1検出図形L1と副走査方向Xにズレて配置されている。ここでは、第1検出図形L1の前端が第2検出図形L2の前端よりも前方に位置するように、第1検出図形L1と第2検出図形L2は配置されている。第2検出図形L2の一部は、第1検出図形L1と副走査方向Xで重なっている。ただし、第2検出図形L2は、第1検出図形L1と副走査方向Xにズレて配置されていなくてもよく、例えば第1検出図形L1と第2検出図形L2とは、前端の位置が副走査方向Xにおいて同じであり、かつ、後端の位置が副走査方向Xにおいて同じであってもよい。
【0042】
本実施形態では、第1検出図形L1および第2検出図形L2は、データ上において、それぞれ副走査方向Xに一直線に延びた1本の直線によって構成されている。しかしながら、第1検出図形L1および第2検出図形L2は、副走査方向Xに一直線に延びた複数の直線によって構成されてもよい。この場合、複数の直線は、データ上において、主走査方向Yの位置が揃い、かつ、副走査方向Xに並んで配置されることで第1検出図形L1、または第2検出図形L2を構成してもよい。また、第1検出図形L1および第2検出図形L2の形状は、副走査方向Xに延びた直線に限定されない。例えば第1検出図形L1および第2検出図形L2は、副走査方向Xに延びた(例えば主走査方向Yよりも副走査方向Xに長い)四角形状(言い換えると、ブロック形状)であってもよい。
【0043】
図4に示すように、複数の第2検出図形L2は、それぞれ第1検出図形L1と対になっている。ここで、対になる第1検出図形L1と第2検出図形L2とを検出組G1という。本実施形態では、7つの検出組G1が存在している。以下の説明では、検出組G1について、左から順に符号G1a~G1gを適宜付すことにする。図8は、検出組G1aと検出組G1bとの間の検出間隔SP10を示す図である。本実施形態では、行き方向Y1に向かうにしたがって、検出組G1において第1検出図形L1に対して第2検出図形L2は、主走査方向Yに所定の検出間隔SP10(図8参照)ずつ左方にズレている。図4に示すように、例えば検出組G1aは、検出組G1bの左方に配置されている。例えば図8に示すように、検出組G1aにおける第2検出図形L2aは、検出組G1bにおける第2検出図形L2bと比較して、第1検出図形L1に対して検出間隔SP10だけ左方にズレて配置されている。
【0044】
ここでは、各検出組G1における第1検出図形L1と第2検出図形L2との間の最大の距離を最大ズレ量V1という。本実施形態では、図4に示すように、データ上において、複数の検出組G1のうち、第1検出図形L1と第2検出図形L2との主走査方向Yのズレが最も小さい検出組G1を基準検出組G10という。この基準検出組G10では、他の検出組G1と比較すると最大ズレ量V1が最も小さい。図4の一例では、データ上において、検出組G1dの最大ズレ量V1が、他の検出組G1a~G1c、G1e~G1gの最大ズレ量V1よりも小さく、検出組G1dにおける第1検出図形L1と第2検出図形L2との主走査方向Yのズレが最も小さい。そのため、検出組G1dが基準検出組G10となる。基準検出組G10は、インクヘッド28の吐出異常の有無に関わらず、固定されるものである。本実施形態では、基準検出組G10は、検出組G1dで固定されている。なお、本実施形態では、基準検出組G10において、第1検出図形L1と、第2検出図形L2とは、主走査方向Yにおいて重なっている、すなわち最大ズレ量V1が0である。しかしながら、基準検出組G10において、第1検出図形L1と第2検出図形L2とは、主走査方向Yに所定の間隔だけ離れていてもよく、最大ズレ量V1が0よりも大きくてもよい。
【0045】
以上、検出パターンPT1の理論上(言い換えると、データ上)の構成について説明した。本実施形態では、インクヘッド28の吐出異常を検出するために、図3に示すように、制御装置40は、記憶部41と、検出パターン印刷部43と、位置検出部45と、算出部47と、特定部49と、検出部51と、通知部53とを備えている。なお、制御装置40の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置40の各部は、1つまたは複数のプロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0046】
次に、プリンタ100におけるインクヘッド28の吐出異常検出方法について、図9のフローチャートに沿って説明する。本実施形態では、印刷前において、支持台18に支持された媒体5に、図4のような検出パターンPT1を印刷し、印刷した検出パターンPT1に基づいてインクヘッド28の吐出異常を検出する。
【0047】
本実施形態では、まず図9の検出パターン印刷工程S101では、図4に示すような検出パターンPT1を印刷する。本実施形態では、検出パターン印刷工程S101は、図3の検出パターン印刷部43によって実現される。検出パターン印刷部43は、検出パターンPT1を、支持台18に支持された媒体5(図1参照)に印刷する。上述のように、検出パターンPT1は、双方向印刷によって印刷されるものである。この検出パターン印刷工程S101では、検出パターン印刷部43は、複数のインクヘッド28のそれぞれから吐出されたインクによって形成される複数の検出パターンPT1(図5参照)を媒体5に印刷する。
【0048】
図5に示すように、ここで印刷される検出パターンPT1の数は、インクヘッド28の数(言い換えると、ノズル列29a(図2参照)の数)と同じである。検出パターン印刷部43は、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dを媒体5に印刷する。詳しくは、検出パターン印刷部43は、第1インクヘッド28Aからインクを吐出させて第1検出パターンPT1Aを媒体5に印刷し、第2インクヘッド28Bからインクを吐出させて第2検出パターンPT1Bを媒体5に印刷する。また、検出パターン印刷部43は、第3インクヘッド28Cからインクを吐出させて第3検出パターンPT1Cを媒体5に印刷し、第4インクヘッド28Dからインクを吐出させて第4検出パターンPT1Dを媒体5に印刷する。ここでは、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dの印刷の制御手順は同じである。
【0049】
本実施形態では、図3の記憶部41には、図4の検出パターンPT1の印刷データが記憶されている。検出パターン印刷部43は、記憶部41に記憶された上記印刷データに基づいて、検出パターンPT1を媒体5に印刷する。検出パターン印刷部43は、インクヘッド28が行き方向Y1に移動しているときに第1パターンPT11を印刷する。ここでは、検出パターン印刷部43は、移動機構30を制御して、プリントヘッド26をガイドレール25に沿って主走査方向Yの行き方向Y1に移動させ、プリントヘッド26が行き方向Y1に移動している間に、インクヘッド28からインクを吐出させて、図6に示す第1パターンPT11を印刷する。その後、検出パターン印刷部43は、支持台18に支持された媒体5を副走査方向Xの前方へ所定の距離だけ搬送するように搬送機構20を制御する。次に、検出パターン印刷部43は、インクヘッド28が帰り方向Y2に移動しているときに、図7に示す第2パターンPT12を印刷する。ここでは、検出パターン印刷部43は、移動機構30を制御して、プリントヘッド26をガイドレール25に沿って主走査方向Yの帰り方向Y2に移動させ、プリントヘッド26が帰り方向Y2に移動している間に、インクヘッド28からインクを吐出させて第2パターンPT12を印刷する。以上のようにして、媒体5に検出パターンPT1が印刷される。なお、第2パターンPT12を印刷する際、基準検出組G10(ここでは検出組G1d)では、第1検出図形L1と第2検出図形L2とが主走査方向Yに重なるように印刷される。ただし、本実施形態のように、センサ38によって検出パターンPT1を自動で読み取る場合には、基準検出組G10において、第1検出図形L1と第2検出図形L2とは、主走査方向Yに所定の間隔(例えば5mm以上)だけ離れるように印刷されてもよい。そして、基準検出組G10を基準に基準検出組G10よりも左方の検出組G1(ここでは検出組G1a、G1b、G1c)では、基準検出組G10から離れるに従って、第2検出図形L2が第1検出図形L1に対して検出間隔SP10ずつ左方に離れるように印刷される。また、基準検出組G10を基準に基準検出組G10よりも右方の検出組G1(ここでは検出組G1e、G1f、G1g)では、基準検出組G10から離れるにしたがって、第2検出図形L2が第1検出図形L1に対して検出間隔SP10ずつ右方に離れるように印刷される。
【0050】
なお、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dは、インクヘッド28が行き方向Y1と帰り方向Y2に1回ずつ移動している間に、すなわち主走査方向Yを1往復する間に、まとめて媒体5に印刷されてもよい。この場合、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dは、主走査方向Yに並んで媒体5に印刷されてもよいし、重なって媒体5に印刷されてもよい。また、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dは、それぞれインクヘッド28が行き方向Y1と帰り方向Y2に1回ずつ移動している間に媒体5に印刷されてもよい。すなわち、インクヘッド28が主走査方向Yに1往復する間に1つの検出パターンPT1が印刷され、インクヘッド28が主走査方向Yに4往復することで、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dが印刷されてもよい。この場合、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dは、副走査方向Xに並んで媒体5に印刷されてもよい。
【0051】
次に、図9の位置検出工程S103では、媒体5に印刷された検出パターンPT1の複数の第1検出図形L1および複数の第2検出図形L2の位置を検出する。本実施形態では、位置検出工程S103は、図3の位置検出部45によって実現される。位置検出部45は、検出パターン印刷部43によって媒体5に印刷された検出パターンPT1の複数の第1検出図形L1の位置と、複数の第2検出図形L2の位置を検出する。ここでは、図1に示すセンサ38を使用して、媒体5に印刷された検出パターンPT1を検出する。詳しくは、位置検出部45は、媒体5に印刷された検出パターンPT1上(ここでは、第1検出図形L1と第2検出図形L2とが副走査方向Xに重なる部分の上)を、センサ38が通過するように、移動機構30(図1参照)などを制御する。このとき、センサ38を有するセンサヘッド36が移動する方向は、行き方向Y1であってもよいし、帰り方向Y2であってもよい。
【0052】
位置検出部45は、センサヘッド36が主走査方向Yに移動しているときに、媒体5に印刷された複数の第1検出図形L1、および、複数の第2検出図形L2の位置を検出する。ここでは、媒体5に印刷された第1検出図形L1の上をセンサ38が通過するときに、センサ38が媒体5に対する第1検出図形L1の主走査方向Yの位置を読み取ることで、位置検出部45は第1検出図形L1の位置を検出する。また、媒体5に印刷された第2検出図形L2の上をセンサ38が通過するときに、センサ38が媒体5に対する第2検出図形L2の主走査方向Yの位置を読み取ることで、位置検出部45は第2検出図形L2の位置を検出する。本実施形態では、位置検出部45は、複数の検出パターンPT1、すなわち第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dのそれぞれに対して、上記の同様の手順で、複数の第1検出図形L1と複数の第2検出図形L2の位置を検出する。なお、位置検出部45によって検出された第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dのそれぞれにおける複数の第1検出図形L1の位置、および、複数の第2検出図形L2の位置の情報は、図3の記憶部41に記憶される。
【0053】
図10は、第1インクヘッド28Aに吐出異常が発生している場合に、媒体5に印刷された第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dを示す図である。なお、図10では、第2検出パターンPT1B~第4検出パターンPT1Dにおける印刷結果は同じようになるため、1つにまとめて図示している。次に、図9の算出工程S105では、図10に示すように、検出パターンPT1における検出組G1毎に、最大ズレ量V1を算出する。本実施形態では、算出工程S105は、図3の算出部47によって実現される。算出部47は、位置検出部45によって検出された第1検出図形L1および第2検出図形L2の位置に基づいて、媒体5に印刷された検出組G1毎に、第1検出図形L1と第2検出図形L2との間の最大ズレ量V1を算出する。ここで、最大ズレ量V1とは、検出組G1における第1検出図形L1と第2検出図形L2との間の主走査方向Yの最大の距離のことをいう。図10の一例のように、第1検出図形L1および第2検出図形L2の両方が、副走査方向Xに延びた一直線の場合、第1検出図形L1および第2検出図形L2における副走査方向Xのどの部分の主走査方向Yの距離であっても同じになる。そのため、図10の一例の場合、最大ズレ量V1とは、単に第1検出図形L1と第2検出図形L2との主走査方向Yの距離となる。
【0054】
図11は、1つのインクヘッド28の一部のノズル29に吐出異常が発生している場合に、媒体5に印刷された検出パターンPT1の1つの検出組G1の一例を示す図である。例えばインクヘッド28に吐出異常が発生している場合、複数のノズル29のうちの一部のノズル29のみに吐出異常が発生していることがあり得る。この場合、図11に示すように、第1検出図形L1および第2検出図形L2は、副走査方向Xに延びた一直線にならず、第1検出図形L1および第2検出図形L2の一部(ここでは吐出異常が発生しているノズル29からインクによって形成された部分)が他の部分から主走査方向Yにズレた状態になる。この場合、第1検出図形L1および第2検出図形L2における副走査方向Xの部分によっては、主走査方向Yの距離が異なる。図11の一例では、部分A1では、主走査方向Yの距離は距離D1になるが、部分A2では、主走査方向Yの距離は、距離D1よりも長い距離D2になる。そのため、図11の一例では、最大ズレ量V1は、第1検出図形L1と第2検出図形L2との主走査方向Yの最大の距離である距離D2になる。
【0055】
図9の算出工程S105では、図3の算出部47は、各検出パターンPT1(ここでは、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1D)における各検出組G1(ここでは、7つの検出組G1a~G1g)の第1検出図形L1と第2検出図形L2との主走査方向Yの最大ズレ量V1を算出する。ここでは、1つの検出パターンPT1につき、7つの最大ズレ量V1が算出されるため、4つの検出パターンPT1A~PT1Dにおいて、合計28個の最大ズレ量V1が算出部47によって算出される。なお、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dのそれぞれにおける検出組G1a~G1gの最大ズレ量V1であって、算出部47によって算出された最大ズレ量V1は、図3の記憶部41に記憶される。
【0056】
次に、図9の特定工程S107では、検出パターンPT1における最小検出組G20(図10参照)を特定する。本実施形態では、特定工程S107は、図3の特定部49によって実現される。特定部49は、検出パターンPT1において、最大ズレ量V1が最も小さい検出組G1を最小検出組G20として特定する。例えば図10の一例では、第1検出パターンPT1Aにおける検出組G1a~G1gのうち、最大ズレ量V1が最も小さいのは検出組G1fである。よって、第1検出パターンPT1Aにおいて、最大ズレ量V1が最も小さい検出組G1fが最小検出組G20として、特定部49によって特定される。一方、図10の一例における第2検出パターンPT1B~第4検出パターンPT1Dでは、検出組G1a~G1gのうち、最大ズレ量V1が最も小さいのは検出組G1dである。よって、第2検出パターンPT1B~第4検出パターンPT1Dでは、最大ズレ量V1が最も小さい検出組G1dが最小検出組G20として、特定部49によって特定される。本実施形態では、特定部49は、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dのそれぞれに対して、最小検出組G20を特定する。なお、特定部49によって特定された最小検出組G20に関する情報は、図3の記憶部41に記憶される。
【0057】
次に、図9の検出工程S109では、インクヘッド28の吐出異常を検出する。本実施形態では、検出工程S109は、図3の検出部51によって実現される。検出部51は、最小検出組G20が、データ上の基準検出組G10と異なるとき、検出パターンPT1を印刷するときにインクが吐出されたインクヘッド28に、吐出異常が発生している可能性があることを検出する。図10の一例では、第1検出パターンPT1Aにおいて、最小検出組G20が検出組G1fであり、基準検出組G10が検出組G1dであるため、最小検出組G20と基準検出組G10とが異なる。この場合、検出部51は、第1検出パターンPT1を印刷するときにインクが吐出された第1インクヘッド28Aに吐出異常が発生している可能性があることを検出する。
【0058】
なお、上記において、「第1インクヘッド28Aに吐出異常が発生している可能性がある」としているのは、インクヘッド28の吐出異常とは異なる異常である可能性があるからである。ここで、インクヘッド28の吐出異常とは異なる異常とは、移動機構30(図1参照)の異常である。例えば移動機構30のキャリッジモータ33(図1参照)に異常が発生した場合、インクヘッド28が主走査方向Yに移動するときの移動速度に異常が発生し得る。このように、移動機構30に異常が発生している場合、インクヘッド28の理論上(言い換えるとデータ上)の移動速度に比べて、実際のインクヘッド28の移動速度が速くなったり遅くなったりすることがあり得る。移動機構30に異常が発生している場合、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dの全てにおいて、同じように最小検出組G20と基準検出組G10が異なることになる。図12は、移動機構30に異常が発生している場合において、媒体5に印刷した第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dを示す図である。なお、図12では、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dにおける印刷結果は同じようになるため、1つにまとめて図示している。例えば図12の一例では、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dの全てにおいて、最小検出組G20が検出組G1fである。この場合、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dの全てにおいて、最小検出組G20が基準検出組G10と同じように異なるため、検出部51は、移動機構30に異常が発生していることを検出する。
【0059】
本実施形態では、検出部51は、複数の検出パターンPT1のうち、少なくとも1つ以上の一方の検出パターンPT1において、最小検出組G20が基準検出組G10と同じであり、かつ、残りの他方の検出パターンPT1において、最小検出組G20が基準検出組G10と異なるとき、最小検出組G20が基準検出組G10と異なる方の検出パターンPT1を印刷したインクヘッド28に吐出異常が発生していることを検出する。図10の一例において、第1検出パターンPT1Aでは、最小検出組G20と基準検出組G10とが異なるが、第2検出パターンPT1B~第4検出パターンPT1Dでは、最小検出組G20と基準検出組G10とが同じ検出組G1dである。この場合、検出部51は、最小検出組G20が基準検出組G10と異なる方の第1検出パターンPT1Aを印刷した第1インクヘッド28Aに吐出異常が発生していることを検出する。
【0060】
次に、図9の通知工程S111では、プリンタ100に異常があることを通知する。本実施形態では、通知工程S111は、図3の通知部53によって実現される。通知部53は、検出部51によって検出されたプリンタ100の異常を通知する。ここでは、例えば検出部51によってインクヘッド28に吐出異常が発生している可能性がある(または、インクヘッド28に吐出異常が発生している)と検出された場合、通知部53は、インクヘッド28に吐出異常が発生している可能性がある(または、インクヘッド28に吐出異常が発生している)ことを通知する。
【0061】
例えば図10の一例では、上述のように、検出部51は、第1インクヘッド28に吐出異常が発生していることを検出する。この場合、通知部53は、第1インクヘッド28に吐出異常が発生していることをユーザに通知する。例えば図12の一例では、上述のように、検出部51は、移動機構30に異常が発生していることを検出する。この場合、通知部53は、移動機構30に異常が発生していることをユーザに通知する。
【0062】
本実施形態では、通知部53は、操作パネル13の表示画面14(図1参照)に、プリンタ100に異常が発生した旨(例えば、インクヘッド28に吐出異常が発生した旨、または、移動機構30に異常が発生した旨など)を表示することで、ユーザに通知してもよい。このとき、通知部53は、4つのインクヘッド28のうちのどのインクヘッド28に吐出異常が発生しているかが分かるように通知してもよい。なお、通知部53がユーザに通知する具体的な方法は特に限定されない。例えばプリンタ100には、図示しないブザーが設けられており、通知部53は、ブザーを鳴らすように制御することで、プリンタ100に異常が発生していることをユーザに通知してもよい。また例えばプリンタ100には、LEDなどの発光部(図示せず)が設けられており、通知部53は、発光部を発光させるように制御することで、プリンタ100に異常が発生していることをユーザに通知してもよい。
【0063】
なお、通知部53によって通知された後、ユーザはサービスマンに連絡をし、サービスマンは、プリンタ100に対してメンテナンスを実施する。このとき、インクヘッド28に吐出異常が発生している場合には、サービスマンは、吐出異常が発生しているインクヘッド28を交換する。移動機構30に異常が発生している場合には、サービスマンは、異常の原因となる移動機構30の部品(例えばキャリッジモータ33)を交換する。このように、サービスマンによるメンテンナンスが実施された後、ユーザは、プリンタ100を使用して媒体5に印刷を行う。
【0064】
以上、本実施形態では、図1に示すように、プリンタ100は、媒体5を支持する支持台18と、支持台18に支持された媒体5にインクを吐出し、副走査方向Xに並んで配置された複数のノズル29を有するインクヘッド28(図2参照)と、媒体5に印刷された検出パターンPT1(図4参照)を読み取るセンサ38を有するセンサヘッド36と、移動機構30と、制御装置40とを備えている。移動機構30は、印刷時にインクヘッド28を主走査方向Yに移動させ、検出パターンPT1をセンサ38が読み取るときにセンサヘッド36を主走査方向Yに移動させる。図4に示すように、検出パターンPT1は、主走査方向Yに並び、副走査方向Xに延びた複数の第1検出図形L1を有する第1パターンPT11と、第1検出図形L1と対になるように主走査方向Yに並び、副走査方向Xに延びた複数の第2検出図形L2を有する第2パターンPT12と、を備えている。ここで、対になる第1検出図形L1と第2検出図形L2を検出組G1としたとき、行き方向Y1に向かうにしたがって、検出組G1における第1検出図形L1と第2検出図形L2の間隔は、主走査方向Yに所定の検出間隔SP10(図8参照)ずつズレて配置されている。図4に示すように、データ上において複数の検出組G1のうち、第1検出図形L1と第2検出図形L2の主走査方向Yのズレが最も小さい検出組G1を基準検出組G10とする。図3に示すように、制御装置40は、検出パターン印刷部43と、位置検出部45と、算出部47と、特定部49と、検出部51とを備えている。検出パターン印刷部43は、図9の検出パターン印刷工程S101において、インクヘッド28が行き方向Y1に移動しているときに第1パターンPT11を印刷し、インクヘッド28が帰り方向Y2に移動しているときに第2パターンPT12を印刷することで、媒体5に検出パターンPT1を印刷する。位置検出部45は、図9の位置検出工程S103において、媒体5に印刷された検出パターンPT1上を、センサヘッド36が主走査方向Yに移動しているときに、媒体5に印刷された複数の第1検出図形L1および複数の第2検出図形L2の位置をセンサ38によって検出する。算出部47は、図9の算出工程S105において、媒体5に印刷された検出組G1毎に、第1検出図形L1と第2検出図形L2との間の主走査方向Yの最大ズレ量V1を算出する。特定部49は、図9の特定工程S107において、最大ズレ量V1が最も小さい検出組G1を最小検出組G20として特定する。検出部51は、図9の検出工程S109において、図10に示すように、最小検出組G20が基準検出組G10と異なるとき、検出パターンPT1(図10では第1検出パターンPT1A)を印刷したインクヘッド28(図10では第1インクヘッド28A)に、吐出異常が発生している可能性があることを検出する。
【0065】
本実施形態では、吐出異常が発生している状態のインクヘッド28によって検出パターンPT1を印刷すると、図10の第1検出パターンPT1Aのように、行き方向Y1で印刷される第1検出図形L1の少なくとも一部、および、帰り方向Y2で印刷される第2検出図形L2の少なくとも一部が主走査方向Yにズレて印刷される。その結果、吐出異常が発生していない場合には、図10の第2検出パターンPT1B~第4検出パターンPT1Dのように、最大ズレ量V1が最も小さい最小検出組G20が基準検出組G10となるところ、インクヘッド28に吐出異常が発生していると、図10の第1検出パターンPT1Aのように、最小検出組G20が基準検出組G10と異なる。よって、最小検出組G20が基準検出組G10と異なるとき、最小検出組G20が基準検出組G10と異なる方の検出パターンPT1を印刷したインクヘッド28に吐出異常が発生している可能性があることを検出することで、ユーザは、検出結果からインクヘッド28に吐出異常が発生している可能性があることを知ることができる。したがって、印刷前に、検出パターンPT1を媒体5に印刷することで、インクヘッド28に吐出異常が発生している可能性があることをユーザが知ることができる。そのため、インクヘッド28の吐出異常に起因して印刷品質が低下することを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、プリンタ100の位置検出部45によって、センサ38を使用して検出パターンPT1における第1検出図形L1および第2検出図形L2の位置を自動で検出している。例えば媒体5が白色の場合、媒体5にイエローインクを吐出すると、イエローインクによって形成された第1検出図形L1と第2検出図形L2の位置がユーザなどの目視では分かり難い。しかしながら、本実施形態のように、センサ38によって第1検出図形L1および第2検出図形L2の位置を検出することで、イエローインクなどのユーザなどの目視では見難い色のインクで形成された第1検出図形L1および第2検出図形L2であっても、位置を検出し易くすることができる。
【0067】
本実施形態では、プリンタ100は、複数のインクヘッド28を備えている。検出パターン印刷部43は、複数のインクヘッド28のそれぞれから吐出されたインクによって形成された複数の検出パターンPT1を媒体5に印刷する。位置検出部45は、複数の検出パターンPT1のそれぞれに対して、複数の第1検出図形L1と複数の第2検出図形L2の位置を検出する。算出部47は、複数の検出パターンPT1のそれぞれに対して、検出組G1毎に最大ズレ量V1を算出する。特定部49は、複数の検出パターンPT1のそれぞれに対して最小検出組G20を特定する。検出部51は、複数の検出パターンPT1のうち、少なくとも1つ以上の一方の検出パターンPT1の最小検出組G20が基準検出組G10と同じであり、かつ、残りの他方の検出パターンPT1の最小検出組G20が基準検出組G10と異なるとき、最小検出組G20が基準検出組G10と異なる方の検出パターンPT1を印刷したインクヘッド28に吐出異常が発生していることを検出する。
【0068】
本実施形態では、図5に示すように、第1インクヘッド28A~第4インクヘッド28Dによって印刷された検出パターンPT1を、それぞれ第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dとする。検出パターン印刷部43は、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dを媒体5に印刷する。位置検出部45は、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dのそれぞれに対して、複数の第1検出図形L1と複数の第2検出図形L2の位置を検出する。算出部47は、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dのそれぞれに対して、検出組G1毎に最大ズレ量V1を算出する。特定部49は、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dのそれぞれに対して最小検出組G20を特定する。検出部51は、第1検出パターンPT1A~第4検出パターンPT1Dのうち、一方の検出パターンPT1の最小検出組G20が基準検出組G10と同じであり、かつ、他方の検出パターンPT1の最小検出組G20が基準検出組G10と異なるとき、最小検出組G20が基準検出組G10と異なる方の検出パターンPT1(図10では、第1検出パターンPT1A)を印刷したインクヘッド28(図10では、第1インクヘッド28A)に吐出異常が発生していることを検出する。
【0069】
例えばインクヘッド28が複数の場合、複数のインクヘッド28が同時に吐出異常になる可能性は低く、何れかのインクヘッド28のみに吐出異常が発生する可能性が高い。この場合、図10に示すように、複数の検出パターンPT1のうち、吐出異常が発生しているインクヘッド28によって印刷された検出パターンPT1(例えば第1検出パターンPT1A)において最小検出組G20が基準検出組G10と異なり、吐出異常が発生していないインクヘッド28によって印刷された検出パターンPT1(例えば第2検出パターンPT1B~第4検出パターンPT1D)において最小検出組G20が基準検出組G10と同じになる。よって、図10において、複数の検出パターンPT1のうち、少なくとも1つ以上の一方の検出パターンPT1の最小検出組G20が基準検出組G10と同じであり、かつ、残りの他方の検出パターンPT1の最小検出組G20が基準検出組G10と異なるとき、最小検出組G20が基準検出組G10と異なる方の検出パターンPT1を印刷したインクヘッド28(図10では、第1インクヘッド28A)に吐出異常が発生していることを検出することで、印刷前において、インクヘッド28に吐出異常が発生していることをユーザが知ることを可能にすることができる。
【0070】
本実施形態では、図3に示すように、制御装置40は、通知部53を備えている。通知部53は、図9の通知工程S111において、検出部51によって検出された、吐出異常が発生している可能性があるインクヘッド28が存在することを通知する。このように、通知部53によって、吐出異常が発生している可能性があるインクヘッド28が存在することを通知されることで、ユーザは、インクヘッド28に吐出異常が発生している可能性があることを把握し易くすることができる。
【0071】
本実施形態では、検出部51は、図12に示すように、複数の検出パターンPT1の全てにおける最小検出組G20が基準検出組G10と同じように異なるとき、移動機構30に異常が発生していることを検出する。例えば移動機構30に異常が発生している場合、複数のインクヘッド28の全てに対して、双方向印刷におけるインクの着弾位置の位置ズレが発生する。そのため、移動機構30に異常が発生している場合には、図12に示すように、複数の検出パターンPT1の全てに対して、最小検出組G20が基準検出組G10と同じように異なることになる。よって、複数の検出パターンPT1の全てにおける最小検出組G20が基準検出組G10と同じように異なるとき、移動機構30に異常が発生していることを検出することで、印刷前において、移動機構30に異常が発生していることをユーザが知ることを可能にすることができる。
【0072】
本実施形態では、通知部53は、検出部51によって移動機構30に異常が発生していることが検出されたとき、移動機構30に異常が発生していることを通知する。このように、通知部53によって移動機構30に異常が発生していることが通知されることで、ユーザは、移動機構30に異常が発生したことを把握し易い。
【0073】
本実施形態では、プリンタ100には、センサ38を有するセンサヘッド36が設けられていたが、センサヘッド36は省略されてもよい。例えば図9のフローチャートのうち、検出パターン印刷工程S101は、プリンタ100の検出パターン印刷部43によって実行され、位置検出工程S103、算出工程S105、特定工程S107および検出工程S109は、プリンタ100によって自動で実行されずに、ユーザによって手動で実行されてもよい。ここでは、検出工程S109がユーザによって手動で実行されるため、通知工程S111は省略されてもよい。
【0074】
図13は、第1近似直線SL1および第2近似直線SL2を示すグラフである。図13では、図10の第1検出パターンPT1Aにおける第1近似直線SL1および第2近似直線SL2が図示されている。本実施形態では、図3の特定部49は、図9の特定工程S107において、図13に示すような第1近似直線SL1と第2近似直線SL2を使用してもよい。ここで、第1近似直線SL1および第2近似直線SL2は、複数の検出組G1における最大ズレ量V1とデータズレ量V2とに基づいて算出された線である。ここで、データズレ量V2とは、各検出組G1における第1検出図形L1に対する第2検出図形L2のデータ上の主走査方向Yのズレのことである。ここでは、基準検出組G10である検出組G1dにおけるデータズレ量V2が0である。本実施形態では、第2検出図形L2が第1検出図形L1に対して行き方向Y1(例えば左方)にズレているとき、データズレ量V2はマイナスの値になり、第2検出図形L2が第1検出図形L1に対して帰り方向Y2(例えば右方)にズレているとき、データズレ量V2はプラスの値になる。
【0075】
図13に示すように、第1近似直線SL1および第2近似直線SL2は、横軸がデータズレ量V2であり、縦軸が最大ズレ量V1で表される。第1近似直線SL1は、データズレ量V2が大きくなるに連れて最大ズレ量V1が小さくなる直線であり、傾きがマイナスになる直線である。第1近似直線SL1は、実際に第2検出図形L2が第1検出図形L1よりも左方にズレている検出組G1(図10の第1検出パターンPT1Aでは、検出組G1a、G1b、G1c、G1d、G1e)の最大ズレ量V1とデータズレ量V2によって算出される直線である。
【0076】
第2近似直線SL2は、データズレ量V2が大きくなるに連れて最大ズレ量V1が大きくなる直線であり、傾きがプラスになる直線である。第2近似直線SL2は、実際に第2検出図形L2が第1検出図形L1よりも右方にズレている検出組G1(図10の第1検出パターンPT1Aでは、検出組G1f、G1g)の最大ズレ量V1とデータズレ量V2によって算出される直線である。なお、第1近似直線SL1および第2近似直線SL2は、数式で表されることができる。特定部49によって算出された第1近似直線SL1および第2近似直線SL2に関する情報は、図3の記憶部41に記憶される。
【0077】
第1近似直線SL1と第2近似直線SL2とは、交点P1で交差する。特定部49は、交点P1から最も近い検出組G1、すなわち交点P1のデータズレ量V2から最も近いデータズレ量V2を有する検出組G1を最小検出組G20として特定する。図13では、第1近似直線SL1と第2近似直線SL2との交点P1から最も近い検出組G1は、検出組G1fである。そのため、図13において、特定部49は、検出組G1fを最小検出組G20として特定する。その後、図9の検出工程S109と通知工程S111が順に実行される。
【0078】
なお、第1近似直線SL1と第2近似直線SL2を使用する場合、検出工程S109において、図3の検出部51は、第1近似直線SL1と第2近似直線SL2の交点P1のデータズレ量V2が0を基準とした所定の範囲以外の場合、検出パターンPT1を印刷するときにインクが吐出されたインクヘッド28に、吐出異常が発生している可能性があることを検出してもよい。ここで、上記の所定の範囲とは、例えば0を中心とした範囲であり、例えば-X~+Xの範囲である。このXは0であってもよい。このXは、吐出異常が発生している可能性があることを検出する際に許容できる値に設定される。例えばXの値を小さくするほど、交点P1のデータズレ量V2が少しでも0からズレた場合であっても、検出パターンPT1を印刷するときにインクが吐出されたインクヘッド28に、吐出異常が発生している可能性があることを検出することになる。
【0079】
このように、複数の検出組G1における最大ズレ量V1とデータズレ量V2に基づいて算出された第1近似直線SL1と第2近似直線SL2を使用した場合であっても、吐出異常が発生している可能性があるインクヘッド28を検出することができる。
【符号の説明】
【0080】
5 媒体
18 支持台
28 インクヘッド
29 ノズル
30 移動機構
36 センサヘッド
38 センサ
40 制御装置
43 検出パターン印刷部
45 位置検出部
47 算出部
49 特定部
51 検出部
53 通知部
100 プリンタ
G1 検出組
G10 基準検出組
G20 最小検出組
L1 第1検出図形
L2 第2検出図形
PT1 検出パターン
PT11 第1パターン
PT12 第2パターン
SP10 検出間隔
V1 最大ズレ量
X 副走査方向(第1方向)
Y 主走査方向(第2方向)
Y1 行き方向
Y2 帰り方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13